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第10話
しおりを挟む10 イサフェラの民
装飾品店の大きなガラス窓に自分の姿を見つけた。
コレが俺?
先ず一言で言おう。
いや、言わせてくれ。
見るだけで、チンコがおっ立ちそうだ。
※実際は付いて無い
絶世の美女という表現が当てはまる。
日本人離れした妖精みたいな顔立ち。
まつ毛は長く、クッキリとした二重。
その奥で輝く澄ました鳶色の瞳。
鼻筋の通った小さな鼻に、薄い唇。
肌は透き通るように白く、少しウェーブのかかった金髪のセミロングは、肌の白さに相成って余計に輝いて見えた。
極め付けは、ピンと立った猫耳だ。
数秒間見惚れた後で、ペタペタと自分の顔を触って確認する。
コレが俺?
どうやら、俺みたいだ。
そしてすぐに思考が結び付ける、
この顔で、あの身体か…と。
この顔に、あの大きなおっぱいが付いていて、パイパンで、あの卑猥なクリトリスが付いているのか?
もう……反則じゃないか。
イエローカード飛び越して、1発レッドで退場だわ。
どうしようか…?
自分で自分に惚れそうだ。
悶々とした気持ちを胸に抱き、俺はまた宿に向かって歩き始めた。
その道中でも街行く人達は相変わらずの視線を投げて来る。
中には中年の貴婦人らしく着飾った女性は、舐めるように俺を見て来た。
コイツら全員、俺の事をどんな風に思っているだ?
情報収集も兼ねて2人くらいに心読を使う事にした。
1人目は……。
メインストリートという事で、道行く人の数はパッと見積もっても30人はいる。
急いで歩いて行く人、タバコを吸ってたむろっている若者達、路上でお店を広げているエルフ、大きな荷物を抱えて歩くドワーフ、路上で寝ているホームレスらしき人も数名いた。
その中で俺が目星を付けたのは、使用人らしき取り巻きを3人も連れ立って、道の向こうから歩いて来る中年男性だ。
その服装はお洒落に着飾って、身分の違いを主張している。この街の有力者に違いない。
道行く人達も彼が歩く前を歩かない。
スッと道が開けて行く。
俺も右に習えと、石畳の道の脇に寄った。
それでも中年男性は俺を見つけ、コチラに目線を投げかけて来た。
俺は着飾った中年男性に向けてニコッと微笑み、
すかさず心読!!
(獣人とは珍しいな…)
(遥々イサフェラから旅をしてきたのか?)
(ふん、こちらに微笑んで、私に媚を売るつもりか?)
(それならそれで)
(うーーんなかなかに、遠目で見ても美しい)
(獣人という種族は美男美女が多いと聞くが、ここまで美しい者は見た事が無いな)
(滅び行く種族、イサフェラの民の末裔といったところか?)
(興味深いな)
(少し声をかけてみるか…)
中年男性の男は、取り巻きの使用人を「おい」と呼び出した。
俺はそれに気が付き、中年男性が「おい」と合図を送る前に人混みの中へと消えた。
何故そうしたか?
当たり前の事だ。
あんな権力の塊みたいな者には、最初から近づかない方が身の為だ。
では何故?何故あえてそんな男を選んだかという事になる。
それは情報の為だ。
いつの世も、権力者という者には情報が集まりやすい。
案の定、彼からは4つ有益な情報が得られた。
1、獣人という種族は美男美女が多いという事。
2、獣人という種族はなんらかの要因でとても数が少なく、滅び行く種族だという事。
3、権力がある者でも、獣人という種族はもの珍しく、街行く人達がコチラをジロジロ見ていたのは、もの珍しさからだという事。
4、そして、4つ目がイサフェラというワードの発見。
考察するに、獣人族の事をイサフェラの民と呼ぶみたいだ。
となると、遥々イサフェラから来たと、この男が思ったという事はイサフェラとは場所。
これは大きな収穫だ。
俺の出生を設定する為に、イサフェラという場所がどんな所で何処にあるのか?
現状どうなっているのか?
探る必要があるな。
以上4点を踏まえると、耳と尻尾は隠した方が良さそうだ。
獣人である事はなるたけ隠す。
獣人の出生も、置かれた立場も、セミファスとかいうこの世界の価値観も、何も知らないまま目立つ行為はなるたけ避けたい。
危険過ぎる。
現状、尻尾はマントの下に隠れてはいるが、猫耳はピンと立って獣人である事を主張していた。
宿に行く前に何か被る物を購入した方が良さそうだ。
とりあえずはマントを頭から被り、メインストリートから一本入った裏通りへと抜けた。
後方で、俺の事を探している使用人達の声が聞こえてきたからだ。
やはり、耳が良いのはかなり役に立つ。
一本入った裏通りは、メインストリートとは違って、昼間でも薄暗く、少しカビ臭かった。
それ故に、歩いている人はほぼいないというか、いない。
この道を行っても帽子を売っているお店などまず無いだろう。
それでも街の中心にあるという大きな建物を目指し、とりあえずは裏通りの小道を歩いて行く事にした。
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