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4話 美鈴
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前回のバーチャルレストランのあと、幸一から、美鈴と2人で飲みに行きたいって連絡がきた。2人だけで会おうって。迷ったけど、メタバースで会うなら、別に失うものないし、まあいいかって軽い感じで会うことにしたの。
待ち合わせ場所のメタバース麻布十番で待ち合わせて、幸一が選んだレストランに2人で向かっていた。寒い風が吹いていて、かじかんだ手を自分の息で温めながら歩いていたら、柄の悪い男性3人組が近づいてきたの。
「おい、可愛い女を連れているじゃないか。お前には、もったいないから、その女、貸して、消えよろ。」
「断る。」
「おい、女の前だからと言って、カッコつけるなよ。坊やは、早く退散すればいいんだよ。」
「幸一、スイッチ切ろうよ。危ないから。別の場所でまた会えばいいだけなんだし。」
「いや、せっかく美鈴と一緒にいるのに、少しでも別々の時間があるなんて嫌だ。」
「だって、ここで殴られれば、本当に痛いし、現実世界でもあざとかになっちゃうんでしょ。何の得もないから。」
「僕は、こんな不当な要求には屈しないんだ。後ろで隠れていて。」
「でも。」
「2人でコソコソ話してるんじゃないぞ。まさか、スイッチを切って逃げようなんて、恥ずかしいこと考えてるんじゃないよな。俺たちは、違法のデバイス持っていて、お前たちがスイッチを切ろうとしても、切れなくしてるんだよ。」
「そんな卑怯なことは考えていない。さあ、こいよ。」
「おう、そんなに喧嘩したいか、にいちゃん。3人に勝てるかな。」
男性たちの1人が幸一に近づいた時だった。幸一は、ボクシングのようなポーズから、いきなり、その男性にパンチを放ち、その男性は後ろに吹っ飛んだ。
「幸一・・・。」
私は、いつも優しい幸一が、そんなことをするなんて想像していなかったので言葉を失った。
「さあ、こい。」
もう一人も頬にパンチを受け、横に倒れたの。もう一人は、もう勘弁してくださいと言いながら2人を抱えて逃げていった。
私は、格闘技とか見たこともないし、野蛮だと思っていたから何も知らなかったけど、幸一の動きは、どこにも無駄はなく、真っ直ぐ前に伸びる腕のフォルムは、遠くから照らされる光のシルエットも含めて美しかったわ。
なんだろう、男性の鍛え上げられた、無駄のない、戦う姿って、こんなにかっこいいんだ。これまで考えたこともなかった。華奢な体と思っていたけど、よく見ると、幸一にはそれなりに筋肉もあって、無駄な贅肉がない。だから、そう見えたんだ。
足も、軽やかなフットワークで、日頃から走り込んでいるようにも見えた。これまで、優しく微笑む幸一しか知らなかったけど、よく見ると、しっかりと鍛え上げられている。背中も、広くて固そう。
そんなこと考えていたら、幸一が私を軽々とお姫様抱っこをしている姿を想像していた。いえいえ、まだ、会ったばっかりなのに、ダメダメ。でも、なんか、私の頭には、さっきの手を真っ直ぐ伸ばした時のシルエットが刻まれて、頭から離れなかったの。
「すご~い。幸一って、そんなに強かったんだ。ボクシングとかやっているの?」
「いや、今はやってないんだけど、大学の時にボクシング部に入っていたんだ。1年ぐらいで、すぐやめちゃったけど。」
「なんで、やめちゃったの?」
「闘うというのが、あまり性に合わなくて。」
「そうだよね。幸一、優しいから。でも、今日は、あんな幸一の姿を見れただけでも、よかった。」
「そう言ってくれると嬉しいよ。あ、お店に着いた。入ろう。」
「Shajiってお店なのね。とってもおしゃれな焼き鳥屋。」
私たちは、カウンターの2人のボックス席に通された。席に座り、すぐ横に幸一がいる。ついさっきまで、そんなに気にしていなかったのに、時々、触れ合うような距離感なのが恥ずかしい。どうしてなの。心臓が・・・。
私、服とか乱れてないかしら。幸一からも、近いと、よく見えちゃうから。でも、大丈夫みたい。リップとかもチェックしようとスマホを取り出そうとしたら、幸一に肩が触れちゃった。なんか、びっくりしちゃって、変な人だと思われたかも。
こんなこと考えちゃうって、私、どうしちゃったんだろう。もしかしたら、幸一のさっきの姿にときめいてる? 確かにかっこよかったけど、初めての2人の食事なのよね。そんなに早く、この私が、男性に揺れ動くなんてことある?
でも、これまでにはなかったけど、幸一の顔を見ると、なんか微笑んじゃう私がいる。このたった15分ぐらいで、なんか、幸一に心を盗まれちゃったみたい。
「このカウンター、ボックス席みたいだけど、一つひとつに分かれるのね。なんか、こんなに近づくのかって最初は恥ずかしかったけど、分けると、普通の距離になるわね。」
「急に襲ったりしないから大丈夫だよ。」
「幸一はそんなことしないって知ってるから大丈夫。でも、さっきは、ありがとう。格好よかった。」
「いや、あんな奴らがいるから治安が悪くなるんだよ。美鈴のことはちゃんと守るから。」
「嬉しい。じゃあ、焼き鳥、冷えちゃうし、早くいただこうよ。」
「ああ。」
レストランでは、幸一のことしか見えてなかった。なんか、幸一が横にいてくれるのが嬉しくて、ずっと笑いながら陽気に話していた。それを、幸一は、いつものように、うなづくだけで暖かく微笑みながら、私の顔を見守り続けていたの。
多分、お店の人がワインを出したり、お料理の説明とかもしていたんだと思う。でも、何も覚えていない。覚えているのは、幸一の微笑みと、陽気に喋り続ける自分のことだけ。
なんか、少し、酔っ払ったのか、体が熱ってきたのか、靴を履いてるのが面倒になって、お行儀が悪いって親から怒られそうだけど、靴を脱いで、素足を床に置いていたの。
今日は、おしゃれにワンピ着てきたけど、次回は、バストが目立つように、Tシャツにしようかななんてことも考えていた。私、どうしちゃったんだろう。多分、酔っ払っているんだと思う。酔っ払ったせい。本当の私じゃないから、許されるわよね。
帰る時には、ふらつきながら腕組みもした。なんか、体を触れ合っていたくて。幸一は、酔っぱらわせてしまったねと、そんな私でも、微笑んで見守ってくれた。そして、その後も、何回か2人だけで会った。
幸一と、また会える日が楽しみだったし、会えるまでの時間が寂しく思えるようになっちゃった。これまでの自分を考えると不思議。私って、こんな人だったかしら。そうして、また、待ち遠しい幸一との食事の日がきたの。
いっぱい、いっぱい、話したいことがあって、私から、幸一とあったら、すぐに、顔を近づけて、聞いて、聞いてって話し始めちゃった。
「私ね、あまり友達がいないの。なんか、昔から、積極的に自分の考えとか言えなくて、人の話しばかり聞くことになっちゃうんだ。それはいいんだけど、なんか疲れちゃって、友達と会いたいっていう気分にならずに、そのうち疎遠になっちゃうんだよね。」
「そうなんだ。でも、それでいいんじゃない。無理しても仕方がないよ。自然に生きるのが一番だって。」
「いいのかな。なんか、みんな、いっぱい友達がいて楽しそうだし。」
「友達が大勢いるからって幸せじゃないんだよ。美鈴だって、そう言ってたじゃん。自然にいられる友達が1人でもいれば、人生はそれだけで最高なんだって。」
「いつも、こんな暗い話しに付き合わせてしまって、ごめんね。」
「いや、そんなことないよ。僕は、美鈴と一緒に入れるだけで楽しいんだから。」
「また、そんなこと言って。」
「幸一は、友達っていっぱいいるの?」
「僕も、人見知りだから、そんなにいないよ。」
「え、私には、最初から関係を持ちたいとか、そんなこと言ってた人が、人見知り? 嘘でしょ。」
「本当だよ。なんか、美鈴とは昔から付き合っていたような、そんな感じがして。」
「お上手ね。でも、私、最近、とっても楽しいの。幸一がいてくれて、なんでも聞いてくるし、私のことよく理解してくれている。幸一と一緒にいない時間も、いつも、私は一人じゃないんだって思えるの。ありがとう。」
「いつでも、嫌なことがあったり、悲しいことがあれば、連絡してきて。そのために、僕がいるんだから。」
「ありがとうね。どうして、幸一って、こんなにいい人なの? 何か、企みがあるとか?」
「そんなことないって。本当に、美鈴は面白いね。」
私が横を見ると、ずっと私のことを見続けている幸一の目がすぐ近くにあった。酔っ払ったのかなと思った瞬間、いきなり、幸一は、大胆にも、レストランのカウンターで私の唇に自分の唇を重ねた。
私は目をつぶり、幸一と手を繋いだの。指を1本1本絡ませて。そう、私にも、いつも自然な自分でいられる相手が1人いるのね。幸一は、いつも私のことを、なんでも受け止めてくれる。そんな人に出会えていたことに、今、やっと気づいた。
この後も、何回か会って、幸一と付き合うことにしたの。会ったばかりだけど、今の私は幸一に夢中だし、嫌なことがあれば別れればいいし、試さずに悩んでても時間の無駄だし。他のメンバーには秘密だけど。
待ち合わせ場所のメタバース麻布十番で待ち合わせて、幸一が選んだレストランに2人で向かっていた。寒い風が吹いていて、かじかんだ手を自分の息で温めながら歩いていたら、柄の悪い男性3人組が近づいてきたの。
「おい、可愛い女を連れているじゃないか。お前には、もったいないから、その女、貸して、消えよろ。」
「断る。」
「おい、女の前だからと言って、カッコつけるなよ。坊やは、早く退散すればいいんだよ。」
「幸一、スイッチ切ろうよ。危ないから。別の場所でまた会えばいいだけなんだし。」
「いや、せっかく美鈴と一緒にいるのに、少しでも別々の時間があるなんて嫌だ。」
「だって、ここで殴られれば、本当に痛いし、現実世界でもあざとかになっちゃうんでしょ。何の得もないから。」
「僕は、こんな不当な要求には屈しないんだ。後ろで隠れていて。」
「でも。」
「2人でコソコソ話してるんじゃないぞ。まさか、スイッチを切って逃げようなんて、恥ずかしいこと考えてるんじゃないよな。俺たちは、違法のデバイス持っていて、お前たちがスイッチを切ろうとしても、切れなくしてるんだよ。」
「そんな卑怯なことは考えていない。さあ、こいよ。」
「おう、そんなに喧嘩したいか、にいちゃん。3人に勝てるかな。」
男性たちの1人が幸一に近づいた時だった。幸一は、ボクシングのようなポーズから、いきなり、その男性にパンチを放ち、その男性は後ろに吹っ飛んだ。
「幸一・・・。」
私は、いつも優しい幸一が、そんなことをするなんて想像していなかったので言葉を失った。
「さあ、こい。」
もう一人も頬にパンチを受け、横に倒れたの。もう一人は、もう勘弁してくださいと言いながら2人を抱えて逃げていった。
私は、格闘技とか見たこともないし、野蛮だと思っていたから何も知らなかったけど、幸一の動きは、どこにも無駄はなく、真っ直ぐ前に伸びる腕のフォルムは、遠くから照らされる光のシルエットも含めて美しかったわ。
なんだろう、男性の鍛え上げられた、無駄のない、戦う姿って、こんなにかっこいいんだ。これまで考えたこともなかった。華奢な体と思っていたけど、よく見ると、幸一にはそれなりに筋肉もあって、無駄な贅肉がない。だから、そう見えたんだ。
足も、軽やかなフットワークで、日頃から走り込んでいるようにも見えた。これまで、優しく微笑む幸一しか知らなかったけど、よく見ると、しっかりと鍛え上げられている。背中も、広くて固そう。
そんなこと考えていたら、幸一が私を軽々とお姫様抱っこをしている姿を想像していた。いえいえ、まだ、会ったばっかりなのに、ダメダメ。でも、なんか、私の頭には、さっきの手を真っ直ぐ伸ばした時のシルエットが刻まれて、頭から離れなかったの。
「すご~い。幸一って、そんなに強かったんだ。ボクシングとかやっているの?」
「いや、今はやってないんだけど、大学の時にボクシング部に入っていたんだ。1年ぐらいで、すぐやめちゃったけど。」
「なんで、やめちゃったの?」
「闘うというのが、あまり性に合わなくて。」
「そうだよね。幸一、優しいから。でも、今日は、あんな幸一の姿を見れただけでも、よかった。」
「そう言ってくれると嬉しいよ。あ、お店に着いた。入ろう。」
「Shajiってお店なのね。とってもおしゃれな焼き鳥屋。」
私たちは、カウンターの2人のボックス席に通された。席に座り、すぐ横に幸一がいる。ついさっきまで、そんなに気にしていなかったのに、時々、触れ合うような距離感なのが恥ずかしい。どうしてなの。心臓が・・・。
私、服とか乱れてないかしら。幸一からも、近いと、よく見えちゃうから。でも、大丈夫みたい。リップとかもチェックしようとスマホを取り出そうとしたら、幸一に肩が触れちゃった。なんか、びっくりしちゃって、変な人だと思われたかも。
こんなこと考えちゃうって、私、どうしちゃったんだろう。もしかしたら、幸一のさっきの姿にときめいてる? 確かにかっこよかったけど、初めての2人の食事なのよね。そんなに早く、この私が、男性に揺れ動くなんてことある?
でも、これまでにはなかったけど、幸一の顔を見ると、なんか微笑んじゃう私がいる。このたった15分ぐらいで、なんか、幸一に心を盗まれちゃったみたい。
「このカウンター、ボックス席みたいだけど、一つひとつに分かれるのね。なんか、こんなに近づくのかって最初は恥ずかしかったけど、分けると、普通の距離になるわね。」
「急に襲ったりしないから大丈夫だよ。」
「幸一はそんなことしないって知ってるから大丈夫。でも、さっきは、ありがとう。格好よかった。」
「いや、あんな奴らがいるから治安が悪くなるんだよ。美鈴のことはちゃんと守るから。」
「嬉しい。じゃあ、焼き鳥、冷えちゃうし、早くいただこうよ。」
「ああ。」
レストランでは、幸一のことしか見えてなかった。なんか、幸一が横にいてくれるのが嬉しくて、ずっと笑いながら陽気に話していた。それを、幸一は、いつものように、うなづくだけで暖かく微笑みながら、私の顔を見守り続けていたの。
多分、お店の人がワインを出したり、お料理の説明とかもしていたんだと思う。でも、何も覚えていない。覚えているのは、幸一の微笑みと、陽気に喋り続ける自分のことだけ。
なんか、少し、酔っ払ったのか、体が熱ってきたのか、靴を履いてるのが面倒になって、お行儀が悪いって親から怒られそうだけど、靴を脱いで、素足を床に置いていたの。
今日は、おしゃれにワンピ着てきたけど、次回は、バストが目立つように、Tシャツにしようかななんてことも考えていた。私、どうしちゃったんだろう。多分、酔っ払っているんだと思う。酔っ払ったせい。本当の私じゃないから、許されるわよね。
帰る時には、ふらつきながら腕組みもした。なんか、体を触れ合っていたくて。幸一は、酔っぱらわせてしまったねと、そんな私でも、微笑んで見守ってくれた。そして、その後も、何回か2人だけで会った。
幸一と、また会える日が楽しみだったし、会えるまでの時間が寂しく思えるようになっちゃった。これまでの自分を考えると不思議。私って、こんな人だったかしら。そうして、また、待ち遠しい幸一との食事の日がきたの。
いっぱい、いっぱい、話したいことがあって、私から、幸一とあったら、すぐに、顔を近づけて、聞いて、聞いてって話し始めちゃった。
「私ね、あまり友達がいないの。なんか、昔から、積極的に自分の考えとか言えなくて、人の話しばかり聞くことになっちゃうんだ。それはいいんだけど、なんか疲れちゃって、友達と会いたいっていう気分にならずに、そのうち疎遠になっちゃうんだよね。」
「そうなんだ。でも、それでいいんじゃない。無理しても仕方がないよ。自然に生きるのが一番だって。」
「いいのかな。なんか、みんな、いっぱい友達がいて楽しそうだし。」
「友達が大勢いるからって幸せじゃないんだよ。美鈴だって、そう言ってたじゃん。自然にいられる友達が1人でもいれば、人生はそれだけで最高なんだって。」
「いつも、こんな暗い話しに付き合わせてしまって、ごめんね。」
「いや、そんなことないよ。僕は、美鈴と一緒に入れるだけで楽しいんだから。」
「また、そんなこと言って。」
「幸一は、友達っていっぱいいるの?」
「僕も、人見知りだから、そんなにいないよ。」
「え、私には、最初から関係を持ちたいとか、そんなこと言ってた人が、人見知り? 嘘でしょ。」
「本当だよ。なんか、美鈴とは昔から付き合っていたような、そんな感じがして。」
「お上手ね。でも、私、最近、とっても楽しいの。幸一がいてくれて、なんでも聞いてくるし、私のことよく理解してくれている。幸一と一緒にいない時間も、いつも、私は一人じゃないんだって思えるの。ありがとう。」
「いつでも、嫌なことがあったり、悲しいことがあれば、連絡してきて。そのために、僕がいるんだから。」
「ありがとうね。どうして、幸一って、こんなにいい人なの? 何か、企みがあるとか?」
「そんなことないって。本当に、美鈴は面白いね。」
私が横を見ると、ずっと私のことを見続けている幸一の目がすぐ近くにあった。酔っ払ったのかなと思った瞬間、いきなり、幸一は、大胆にも、レストランのカウンターで私の唇に自分の唇を重ねた。
私は目をつぶり、幸一と手を繋いだの。指を1本1本絡ませて。そう、私にも、いつも自然な自分でいられる相手が1人いるのね。幸一は、いつも私のことを、なんでも受け止めてくれる。そんな人に出会えていたことに、今、やっと気づいた。
この後も、何回か会って、幸一と付き合うことにしたの。会ったばかりだけど、今の私は幸一に夢中だし、嫌なことがあれば別れればいいし、試さずに悩んでても時間の無駄だし。他のメンバーには秘密だけど。
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