犯罪カウンセラー

一宮 沙耶

文字の大きさ
上 下
31 / 53
第7章 パラレルワールド

2話 信じてもらえない苦悩

しおりを挟む
 今日は2回目の接見ということで、前回に話しを聞いてくれた先生が目の前にいる。この先生に、どうしたら、本当のことを信じてもらえるのだろう。確かに、パラレルワールドとか、魔法とか言っても、頭がおかしいと思うわよね。

 でも、それが真実だし、それ以上の説明ができない。この先生に納得してもらえないと、私は本当に人を殺害した人になってしまう。私は、とても厳しい瀬戸際にいるの。どうしよう。

 そういえば、嘘発見機があるとか聞いたことがある。私は殺害したことを知らないということを証明できないのかしら?

「嘘発見機とかあるんですよね。私が殺害について、何も知らないと証明できませんか?」
「それはいいアイディアとは思うのですが、二重人格者は、もう一人の行ったことを知らないこともあり、そういう状態なら、あなたが殺害していないという証拠にはならないと思います。」
「そうなんだ。どうすればいいだろう?」
「あなたは精神病で、自分でコントロールできない状況だったと言えれば、少しは刑は軽減できるかもしれませんね。」
「私は、何もしてないんだし、そういうことじゃないと思う。」

 どうしたら、私のことをわかってくれるんだろう。私は、このまま殺人者として生きるしかないかもしれない。この先生は、私の味方だと思う。でも、その味方も、信じられないと言われちゃうと、私がやっていないと信じてくれる人がいるとは思えない。

「私は、何もしていない。被害者なんだから。」

 私は、大声で叫んでいた。異常者のように。今日は、生理が今夜にもくるからか、精神が不安定で、感情が爆発してしまったの。こんな姿を見せたら、私の味方の先生も、私のことを見放してしまうかもと思ったけど、自分を抑えられなかった。

 どうしよう。私は、誰も信じてもらえず、孤独の時間を過ごすことになったの。もう、だめ。そりゃ、魔法とかいっても、誰も信じてもらえないわよね。

 そんな日々が続き、どんどん暗くなって、生理が終わっても、この気持ちは回復することはできなかった。いつもなら、明るくなれるのに。

 私は、誰とも話す気になれなかった。先生も、私のことは分かってくれない。そういえば、私のこと分かってくれる人は、この世にいるの?

 同期の彼、歯医者、サッカー選手、私のこと愛してくれた。でも、今は、みんな私のことを捨てた。それって、私は、付き合うに値しない人ってことね。

 そういえば、私って、何も取り柄がない人だった。こんな私って、愛される価値がないのよ。殺人とか言われる前に、人間として生きる価値がないんだから。

 それなのに、男性と付き合えただけでも幸せなこと。そんな経験はできたんだから、私は、これ以上、生きる価値がないのよ。

 私は、もう誰とも話す気力はなくなっていた。先生が来ても、もう話しても無理だと思い、先生の顔を見ることもなくなった。

 外では、今はシャクナゲとか、咲き誇っているんだろうね。でも、私は、そんな姿は見えない。だって、私は、みんなから嫌われて、刑務所にいるんだから。死刑が待ってるかも。

 もう、どうでも良くなった。だって、何をやっても、誰も、私のこと信じてくれないんだから。もう、どうでもいいの。このまま消えていくのが、みんなのためかも。

 そう、私は、生まれた時から、みんなから嫌われていたの。それにもかかわらず、今まで生きていたのが間違いなのよ。

 お父さん。お母さん。どうして、私を産んだの。こんなに罪の深い私を。私も苦しかったの。生まれて、みんなに迷惑をかけて、こんなに生きてしまった。早く死ぬべきだったのに。

 でも、そうじゃない。ごめんなさい。こんな子を産もうと思ってなかったね。こんな人になってしまった私が悪いの。私のせい。本当にごめんなさい。

 次の朝、刑務官は、私が食事の時に盗んだフォークで首を刺して自殺している姿を見つけた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖騎士とは名ばかりの私と、時間制限のある彼女と

下菊みこと
恋愛
最強の女聖騎士と最強の女魔法使いとの愛の営みのお話。お互いにとてつもなく重い両思い。結ばれたと言っても過言ではない終わりだと思っています。 普通に二人とも戦場で最期を迎えるので、そして女性同士の愛なので、あと愛の営みが特殊なのでその辺を許してくださる人向けのお話になっています。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。

ゴルゴンゾーラ三国
ファンタジー
 猫アレルギーながらも猫が大好きだった主人公は、猫を助けたことにより命を落とし、異世界の侯爵令嬢・ルティシャとして生まれ変わる。しかし、生まれ変わった国では猫は忌み嫌われる存在で、ルティシャは実家を追い出されてしまう。  しぶしぶ隣国で暮らすことになったルティシャは、自分にネコ科の生物に愛される加護があることを知る。  その加護を使って、ルティシャは愛する猫に囲まれ、もふもふ異世界生活を堪能する!

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

処理中です...