犯罪カウンセラー

一宮 沙耶

文字の大きさ
上 下
8 / 53
第2章 別人として暮らすこと(回想)

3話 殺人

しおりを挟む
 私は、あのメス豚の帰宅ルートと監視カメラを調べた。そうすると、ある住宅地の十字路で、監視カメラはなく、薄暗い場所を見つけたの。あの女は、そこを曲がっていく。

 私は、その十字路の角にレンタカーを置き、彼女が来るのを待っていた。そして、彼女がその角を通ったとき、前から近寄り、ナイフで下からお腹を刺して、ぐるっと一回転させた。そして、刃が上を向いた時に、ぐっと上にあげた。倒れた体に馬乗りになり、ナイフを上から振り落とし、心臓を一刺しにした。

 私の方を見たけど、体が痙攣して声を出せないみたい。そう、あんたは豚なんだからしゃべれなくていいのよ。でも、自業自得ね。どれだけ、悪いことしたかわかっている? あなたが悪いのよ。1分ぐらい経つと、動きも止まった。

 車まで引きずり、ブルーシートを敷いた後部座席に引き入れた。くだらない女なのに重いわね。迷惑かけないでよ。そして、ポリタンクで持ってきた水を道路にまき、血を流した。

 そして、血がついたシャツを着替えて山奥に車を走らせた。数日間かけて掘ってあった穴に、彼女と、さっき脱いだシャツを放り込み、ガソリンで焼いて、その上から土をかぶせたわ。そのときに、私の学生証を、近くの木の下に忍ばせておいたの。

 焼く前に、身分証明書とかスマホとかは全て取っておいたから、発見されても、この女に辿りつかないと思う。普通は、私の学生証があるんだから、私と思うでしょ。しかも、その女、両親はすでに交通事故で亡くなっているって言ってたから、探す人もいないと思うわ。

 これで、隆一さんをたぶらかす、あのメス豚を駆除できた。世の中も、その分だけ良くなったと思う。

 そして、私は、次の日、整形外科に行って、一香の顔に整形してもらった。お金は、私の貯金を現金で引き出しておいたので、そこから出して、余ったお金は、あの女の口座に入れておいた。

 お金はそこそこ出したから、医者は、整形の理由は聞かなかった。そして私もびっくりするぐらい彼女と同じ顔になったの。髪型も彼女と同じにしたら、誰がみても見分けがつかない。あの女は胸も大きかったから豊胸手術もした。

 スマホは顔認証で入れた。そして、その女が暮らしていたワンルームマンションに、死体のポケットに入っていた鍵で入った。だらしない女ね。物が床とかに散乱しているじゃないの。私は綺麗好きなの。片付けないと。

 部屋の中には、隆一との2ショットもあったけど、この顔は今は私のものなんだから、私との2ショットよね。それは残しておくわ。それ以外は、下着とか、気持ち悪いからみんな捨てちゃった。水商売の女みたい。いや、水商売もしていたかもね。

 でも、隆一の好きな料理Bookとかがあった。なんだ、あんな汚れた女でも料理、作れるんだ。隆一は、玉子焼きは甘い派なんだって、知らなかった。

 その時、荷物を預かっているって大家さんが来たけど、私が一香だって、全く疑っていなかったわ。やっぱり、一香でやっていけるわね。

 ところで、父親は、私が突然失踪したので、だいぶ騒いだらしい。何かの事件に巻き込まれたんじゃないかと警察に訴えたけど、家出じゃないかって本気にしてもらえなかったらしい。

 私は、手術前、大学に、一香の名前で休学届けを出して、1年留学することにした。手術で、しばらく籠らなくちゃならないもんね。そして、卒業後、ネットショップの会社に入り、ホームページ制作とかの仕事を始めた。

 そして、2年ぐらいが経った。そろそろ、隆一と再会するタイミングね。隆一は前と同じマンションに暮らしていたので、すぐに所在は分かった。そして、隆一の動きを調べてみたわ。

 隆一は、忙しいのか、大体は家から新宿の会社に往復する毎日で、2週間に1回ぐらい、友達と渋谷で飲んでいた。それなら、渋谷で再会することにするのがいいわね。

 数日後、隆一が渋谷のスクランブル交差点を通るときに、チラッと気づくように顔を見せて、静かに消えた。だって、少しぐらい焦らした方が本当っぽいでしょ。また、隆一が私を探すのが分かっていたから。だって、私たちって、生まれる前から一緒になるって決まっているだもん。

 また、隆一には、私のことを考える時間をいっぱい使って欲しかった。それだけ、愛されてるってことでしょう。

 隆一が私を探し始めて1ヶ月ぐらいがいいと思い、隆一が渋谷駅のホームにいるとき、横を通った。そしたら、隆一から声をかけてきた。やっぱり、運命だったのね。

 声が違うので、どう対応しようかと思ったけど、私の話しを信じてくれたみたい。そして、ドキドキしちゃったから、いっぱい話せなかったけど、昔、見てきた光景を話したら、私のこと一香って信じてくれたみたい。

 隆一は、堰を切るように話し始めた。やっぱり、あんなゲスな女よりも、私の方がいいのよ。また付き合おうって。当然でしょ。運命なんだから。

 私は、ずっと、一生懸命に話す隆一の顔を見つめていた。私の憧れの人が、横で、私を見ながらずっと話している。私に嫌われたくないって。好きだって。ずっと、大切にするって。そう、そういう言葉を待っていたの。

 ずっと汚い女に騙されていたのね。その束縛から解放されて、そんなに饒舌になっているのね。この時間がずっと続けばいいのに。

 でも、今日は終わっても、明日からもずっと一緒なんだからいいわ。もう、あんな女に邪魔されることはない。あのメス豚はもう、この世にいないんだから、私の勝ちね。

 それからの毎日は、本当に幸せの日々だった。そう、夢が実現したの。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

聖騎士とは名ばかりの私と、時間制限のある彼女と

下菊みこと
恋愛
最強の女聖騎士と最強の女魔法使いとの愛の営みのお話。お互いにとてつもなく重い両思い。結ばれたと言っても過言ではない終わりだと思っています。 普通に二人とも戦場で最期を迎えるので、そして女性同士の愛なので、あと愛の営みが特殊なのでその辺を許してくださる人向けのお話になっています。 小説家になろう様でも投稿しています。

婚約破棄されて異世界トリップしたけど猫に囲まれてスローライフ満喫しています

葉柚
ファンタジー
婚約者の二股により婚約破棄をされた33才の真由は、突如異世界に飛ばされた。 そこはど田舎だった。 住む家と土地と可愛い3匹の猫をもらった真由は、猫たちに囲まれてストレスフリーなスローライフ生活を送る日常を送ることになった。 レコンティーニ王国は猫に優しい国です。 小説家になろう様にも掲載してます。

優秀な姉の添え物でしかない私を必要としてくれたのは、優しい勇者様でした ~病弱だった少女は異世界で恩返しの旅に出る~

日之影ソラ
ファンタジー
前世では病弱で、生涯のほとんどを病室で過ごした少女がいた。彼女は死を迎える直前、神様に願った。 もしも来世があるのなら、今度は私が誰かを支えられるような人間になりたい。見知らぬ誰かの優しさが、病に苦しむ自分を支えてくれたように。 そして彼女は貴族の令嬢ミモザとして生まれ変わった。非凡な姉と比べられ、常に見下されながらも、自分にやれることを精一杯取り組み、他人を支えることに人生をかけた。 誰かのために生きたい。その想いに嘘はない。けれど……本当にこれでいいのか? そんな疑問に答えをくれたのは、平和な時代に生まれた勇者様だった。

ネコ科に愛される加護を貰って侯爵令嬢に転生しましたが、獣人も魔物も聖獣もまとめてネコ科らしいです。

ゴルゴンゾーラ三国
ファンタジー
 猫アレルギーながらも猫が大好きだった主人公は、猫を助けたことにより命を落とし、異世界の侯爵令嬢・ルティシャとして生まれ変わる。しかし、生まれ変わった国では猫は忌み嫌われる存在で、ルティシャは実家を追い出されてしまう。  しぶしぶ隣国で暮らすことになったルティシャは、自分にネコ科の生物に愛される加護があることを知る。  その加護を使って、ルティシャは愛する猫に囲まれ、もふもふ異世界生活を堪能する!

俺、貞操逆転世界へイケメン転生

やまいし
ファンタジー
俺はモテなかった…。 勉強や運動は人並み以上に出来るのに…。じゃあ何故かって?――――顔が悪かったからだ。 ――そんなのどうしようも無いだろう。そう思ってた。 ――しかし俺は、男女比1:30の貞操が逆転した世界にイケメンとなって転生した。 これは、そんな俺が今度こそモテるために頑張る。そんな話。 ######## この作品は「小説家になろう様 カクヨム様」にも掲載しています。

外れギフト魔石抜き取りの奇跡!〜スライムからの黄金ルート!婚約破棄されましたのでもうお貴族様は嫌です〜

KeyBow
ファンタジー
 この世界では、数千年前に突如現れた魔物が人々の生活に脅威をもたらしている。中世を舞台にした典型的なファンタジー世界で、冒険者たちは剣と魔法を駆使してこれらの魔物と戦い、生計を立てている。  人々は15歳の誕生日に神々から加護を授かり、特別なギフトを受け取る。しかし、主人公ロイは【魔石操作】という、死んだ魔物から魔石を抜き取るという外れギフトを授かる。このギフトのために、彼は婚約者に見放され、父親に家を追放される。  運命に翻弄されながらも、ロイは冒険者ギルドの解体所部門で働き始める。そこで彼は、生きている魔物から魔石を抜き取る能力を発見し、これまでの外れギフトが実は隠された力を秘めていたことを知る。  ロイはこの新たな力を使い、自分の運命を切り開くことができるのか?外れギフトを当りギフトに変え、チートスキルを手に入れた彼の物語が始まる。

【二章開始】『事務員はいらない』と実家からも騎士団からも追放された書記は『命名』で生み出した最強家族とのんびり暮らしたい

斑目 ごたく
ファンタジー
 「この騎士団に、事務員はいらない。ユーリ、お前はクビだ」リグリア王国最強の騎士団と呼ばれた黒葬騎士団。そこで自らのスキル「書記」を生かして事務仕事に勤しんでいたユーリは、そう言われ騎士団を追放される。  さらに彼は「四大貴族」と呼ばれるほどの名門貴族であった実家からも勘当されたのだった。  失意のまま乗合馬車に飛び乗ったユーリが辿り着いたのは、最果ての街キッパゲルラ。  彼はそこで自らのスキル「書記」を生かすことで、無自覚なまま成功を手にする。  そして彼のスキル「書記」には、新たな能力「命名」が目覚めていた。  彼はその能力「命名」で二人の獣耳美少女、「ネロ」と「プティ」を生み出す。  そして彼女達が見つけ出した伝説の聖剣「エクスカリバー」を「命名」したユーリはその三人の家族と共に賑やかに暮らしていく。    やがて事務員としての仕事欲しさから領主に雇われた彼は、大好きな事務仕事に全力に勤しんでいた。それがとんでもない騒動を巻き起こすとは知らずに。  これは事務仕事が大好きな余りそのチートスキルで無自覚に無双するユーリと、彼が生み出した最強の家族が世界を「書き換えて」いく物語。  火・木・土曜日20:10、定期更新中。  この作品は「小説家になろう」様にも投稿されています。

男女比1:10000の貞操逆転世界に転生したんだが、俺だけ前の世界のインターネットにアクセスできるようなので美少女配信者グループを作る

電脳ピエロ
恋愛
男女比1:10000の世界で生きる主人公、新田 純。 女性に襲われる恐怖から引きこもっていた彼はあるとき思い出す。自分が転生者であり、ここが貞操の逆転した世界だということを。 「そうだ……俺は女神様からもらったチートで前にいた世界のネットにアクセスできるはず」 純は彼が元いた世界のインターネットにアクセスできる能力を授かったことを思い出す。そのとき純はあることを閃いた。 「もしも、この世界の美少女たちで配信者グループを作って、俺が元いた世界のネットで配信をしたら……」

処理中です...