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第8章 優しくさようなら
9話 新宿御苑
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4月になり、私は高校2年生として過ごしていた。今年は、桜が咲くのが少し遅れているようで、始業式の時は、周り全てが桜の花で埋め尽くされているように見えた。
一面、薄ピンク色の世界で、雪景色とは全く違う、暖かさに溢れている。もう少しすると、桜の花は散ってしまうんだろうけど、そんな儚さもあって、満開のこの景色はより美しく感じられるって良く聞くけど、本当にそう思う。
駅から学校の前まで、大通りがあって、そこは桜並木。桜が、ずっと先まで埋め尽くしているなんて、想像してみて。本当に綺麗なんだから。
私は、最近は、少し明るい気持ちになれる時間も増えたんだと思う。そして、周りの風景も、なぜか、以前よりも、とってもカラフルに見える。なぜかしら。女性って、色の感度は男性より高いのかもしれないわね。
莉菜も、前よりは、ずっと笑顔が増えたみたい。今日は、莉菜の誕生日だから、莉菜を誘って新宿御苑に来てみた。
「桜が綺麗ですね。なんか、莉菜さんが、桜の妖精に見える。」
「茶化さないでよ。私は、もう27歳よ。桜の妖精なんて。」
「そんなことないですよ。今日の白いワンピース、風にたなびいて、桜の妖精って、ぴったりだと思うんだけどな。」
「もう、他人が聞いたら、笑われちゃうから。」
新宿御苑では、桜が満開で、幻想的な世界にいる気分になれるけど、遠くに高層ビルとか見えて、現実世界に戻されるようで、なんか不思議な気分だった。
莉菜は、よく立ち止まって、小さなお花が咲いてるって、しゃがんで可愛いお花を見ていた。そんな、花にも声をかけるような可憐な莉菜が愛おしい。
そして、夕方には、新宿のレストランに行って、莉菜の27歳の誕生日をお祝いした。
「あ~あ、なんか誕生日と言われても、嬉しいかっていうと微妙ね。もうアラサーだもの。若い聖奈さんが羨ましい。」
「そんなことないですよ。まだ、27歳って若いじゃないですか。大人のお姉さんっていうのも、かっこいいし。」
「そんなんじゃないわよ。でもね、この前、学校の宮本先生が、私に、一緒に飲みに行きませんかって声をかけてきたの。まだ、そんな気分じゃないから断ったけど、私のこと、気にかけてくれる男性もいるのね。」
「当たり前じゃないですか。莉菜さんは魅力的なんだから、そろそろ彼を作ることも考えないと。私に、男性と仲良くする方がいいなんて言う前に、自分から行動してくださいよ。」
「聖奈さんは、少し、違うかな。なんか男性に関心ないみたいだし、男性のことを想って、心から、その人のことが気になってしかたがないなんていう経験をしてもらいたいの。」
「頑張ってはみますけど。」
「頑張るもんじゃなくて、ふと思うと、その人のことばかり考えちゃうということなのよ。女子校で、男性と会う機会が少ないからなのかしら。」
「そのうちですよ。でも、そんな経験をした莉菜さんは羨ましい。」
「私も、最近は、誠一のこと、懐かしい過去と思えるようになった気がする。誠一のこと考えていても、泣くことがなくなったし。」
私は、そんな莉菜を見て、ホッとした気分になる一方で、過去の自分が忘れられていくことに少し寂しさも覚えた。でも、その方が莉菜にとっていいもの。
私のことといえば、女子校ということもあるけど、今は、男性のことを憧れる気分にはまだなれないわ。そのうち、そんな気持ちになれるのかしら。でも、親は孫が見たいとかいうかもしれないわね。
でも、その前に、莉菜を過去の自分から送り出してあげないと。宮本先生はお断りしたようだけど、きっと、素敵な彼が見つかるはず。そんな気分になるためには、どうしたらいいのかしら。
きっと、私との時間を少なくすれば、寂しい時間を埋めるために、誰か男性との付き合いも始めるのかもしれないわね。でも、私が、もう少し莉菜と一緒にいたいの。許して。
莉菜の笑顔をずっと見ていたい。誠一は死んだのに、ずるいって思う。だけど、莉菜の笑顔は私の心を豊かにしてくれる。莉菜と別れたくない。
この気持ちは抑えられない。だから、ずっと、莉菜を支えていきたい。どうすればいいの。
最近は、莉菜はお酒を飲んでも、お酒に飲まれるようなことはなくなったみたい。高層ビルの窓からは、新宿の高層ビル街が立ち並ぶ夜景が美しかった。光が見える一つひとつの窓に、それぞれの家族や、男女、友達が笑顔で暮らしているんだと思う。
どうして、私と莉菜がそんな関係になれなかったんだろう。暴力団の抗争のせいなのはもちろんだけど、それがなければ、一緒になれたのかな? いえ、絶対に、なれたと思う。だって、莉菜のこと、心から愛しているもの。
窓から見える高層ビルは、直線に立ち並び、凛々しく見えた。その姿は、これまでドロドロして濁っていた莉菜の気持ちが、透明になって、澄み渡るように変わってきたのを映し出しているようね。
良かったわね。悲しみも、時間が解決してくれるって本当なんだと思う。でも、私の寂しさは、時間とともに深まっていった。
一面、薄ピンク色の世界で、雪景色とは全く違う、暖かさに溢れている。もう少しすると、桜の花は散ってしまうんだろうけど、そんな儚さもあって、満開のこの景色はより美しく感じられるって良く聞くけど、本当にそう思う。
駅から学校の前まで、大通りがあって、そこは桜並木。桜が、ずっと先まで埋め尽くしているなんて、想像してみて。本当に綺麗なんだから。
私は、最近は、少し明るい気持ちになれる時間も増えたんだと思う。そして、周りの風景も、なぜか、以前よりも、とってもカラフルに見える。なぜかしら。女性って、色の感度は男性より高いのかもしれないわね。
莉菜も、前よりは、ずっと笑顔が増えたみたい。今日は、莉菜の誕生日だから、莉菜を誘って新宿御苑に来てみた。
「桜が綺麗ですね。なんか、莉菜さんが、桜の妖精に見える。」
「茶化さないでよ。私は、もう27歳よ。桜の妖精なんて。」
「そんなことないですよ。今日の白いワンピース、風にたなびいて、桜の妖精って、ぴったりだと思うんだけどな。」
「もう、他人が聞いたら、笑われちゃうから。」
新宿御苑では、桜が満開で、幻想的な世界にいる気分になれるけど、遠くに高層ビルとか見えて、現実世界に戻されるようで、なんか不思議な気分だった。
莉菜は、よく立ち止まって、小さなお花が咲いてるって、しゃがんで可愛いお花を見ていた。そんな、花にも声をかけるような可憐な莉菜が愛おしい。
そして、夕方には、新宿のレストランに行って、莉菜の27歳の誕生日をお祝いした。
「あ~あ、なんか誕生日と言われても、嬉しいかっていうと微妙ね。もうアラサーだもの。若い聖奈さんが羨ましい。」
「そんなことないですよ。まだ、27歳って若いじゃないですか。大人のお姉さんっていうのも、かっこいいし。」
「そんなんじゃないわよ。でもね、この前、学校の宮本先生が、私に、一緒に飲みに行きませんかって声をかけてきたの。まだ、そんな気分じゃないから断ったけど、私のこと、気にかけてくれる男性もいるのね。」
「当たり前じゃないですか。莉菜さんは魅力的なんだから、そろそろ彼を作ることも考えないと。私に、男性と仲良くする方がいいなんて言う前に、自分から行動してくださいよ。」
「聖奈さんは、少し、違うかな。なんか男性に関心ないみたいだし、男性のことを想って、心から、その人のことが気になってしかたがないなんていう経験をしてもらいたいの。」
「頑張ってはみますけど。」
「頑張るもんじゃなくて、ふと思うと、その人のことばかり考えちゃうということなのよ。女子校で、男性と会う機会が少ないからなのかしら。」
「そのうちですよ。でも、そんな経験をした莉菜さんは羨ましい。」
「私も、最近は、誠一のこと、懐かしい過去と思えるようになった気がする。誠一のこと考えていても、泣くことがなくなったし。」
私は、そんな莉菜を見て、ホッとした気分になる一方で、過去の自分が忘れられていくことに少し寂しさも覚えた。でも、その方が莉菜にとっていいもの。
私のことといえば、女子校ということもあるけど、今は、男性のことを憧れる気分にはまだなれないわ。そのうち、そんな気持ちになれるのかしら。でも、親は孫が見たいとかいうかもしれないわね。
でも、その前に、莉菜を過去の自分から送り出してあげないと。宮本先生はお断りしたようだけど、きっと、素敵な彼が見つかるはず。そんな気分になるためには、どうしたらいいのかしら。
きっと、私との時間を少なくすれば、寂しい時間を埋めるために、誰か男性との付き合いも始めるのかもしれないわね。でも、私が、もう少し莉菜と一緒にいたいの。許して。
莉菜の笑顔をずっと見ていたい。誠一は死んだのに、ずるいって思う。だけど、莉菜の笑顔は私の心を豊かにしてくれる。莉菜と別れたくない。
この気持ちは抑えられない。だから、ずっと、莉菜を支えていきたい。どうすればいいの。
最近は、莉菜はお酒を飲んでも、お酒に飲まれるようなことはなくなったみたい。高層ビルの窓からは、新宿の高層ビル街が立ち並ぶ夜景が美しかった。光が見える一つひとつの窓に、それぞれの家族や、男女、友達が笑顔で暮らしているんだと思う。
どうして、私と莉菜がそんな関係になれなかったんだろう。暴力団の抗争のせいなのはもちろんだけど、それがなければ、一緒になれたのかな? いえ、絶対に、なれたと思う。だって、莉菜のこと、心から愛しているもの。
窓から見える高層ビルは、直線に立ち並び、凛々しく見えた。その姿は、これまでドロドロして濁っていた莉菜の気持ちが、透明になって、澄み渡るように変わってきたのを映し出しているようね。
良かったわね。悲しみも、時間が解決してくれるって本当なんだと思う。でも、私の寂しさは、時間とともに深まっていった。
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