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第4章 レズビアンの裏アカ

2話 彼女

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 目覚めたら男性になっていたなんてびっくりだった。あのおじさんの言っていることは、こういうことだったんだ。どうも、周りを観察していると、私は 鮎川 涼 という名前で暮らしていた。

 私が男性になったのではなく、どうも、大学3年生の鮎川 涼という男性がいて、昨晩、その人と入れ替わったようだった。私はどうなったのかわからない。

 私は、男性の体になって、いくつか変わったと思うことがあった。一つ目は、生理がなくなったことだ。これは、本当に楽だった。男性って、生理がないぶん、どれだけ制約なく過ごせるのか、それならもっと多くのことができると感じた。

 一方、夢精にはびっくりした。自分のあそこが寝ている時に大きくなり、少し触ってたら、いきなり、何かが飛び出し、止められなかった。お漏らししたのかと見たら、白い液体が周りに飛び散ってしまい、どうしようかと困ってしまった。

 それ以降、定期的に、このような体験が襲った。女性の時は、性欲を感じることは全くなかったけど、男性になると、下半身が勝手に走っていってしまう感じで、これは制御できずに困った。でも、週に1、2回、自分で処理することで、少し落ち着くことを学んだ。

 あと、外のトイレでは個室ではなく、横の人がやってるのを見ようと思えば見える状態で用をたすのは、最初はだいぶ困惑した。ただ、回転率が高くて、ほとんど待つことはないこととか楽な面も多かった。

 また、前は視力が弱かったけど、この男性は両目とも視力がよく、裸眼でよく見えることは助かった。

 そして、昔のように大学に通う日々に戻ったんだ。大学では、男性どうしで飲みにいくようなこともあり、男性どうしの会話って、単純で、裏がなく、楽に思えた。そして、昔のように、男性から異性の対象として見られることがなくなったのも楽に感じた。

 ある日、大学の廊下を歩いていると、いきなり、私の前に金髪の顔が飛び込んできて話し始めた。

「涼、おはよう。」
「おはよう。」
「なんか、雰囲気が固くない? 今夜、一緒に飲みにいくよ。18時半に渋谷駅の109前で待っているから、遅れないでね。楽しみにしてるわ。」
「わかった。」

 これは、付き合っている彼女みたいだ。なんか、軽薄そうで、付き合いづらい。私は、女性が好きだと言っても、女性なら誰でもいいわけではなく、特に軽そうで、外見ばかり気にしている女性は、あまり好きになれない。

 そういえば、名前は何て言うんだろう。彼女の名前を忘れたなんていったら怒られるし。横を通った友人に聞いてみることにした。

「そういえば、さっき、僕が話していた人、名前、なんて言ったけ?」
「坂本さんのこと?」
「そうだった。下の名前もわかる?」
「確か、咲だったと思うけど。興味あるのか? 誘おうとか?」
「ありがとう。いや、さっき、声をかけられたんだけど、誰だったかなと思って。」
「なんか軽そうだし、誘ったら来るんじゃない。」
「誘うことはないと思うけど。」

 時間通り109に行くと、少し遅れて彼女がやってきた。

「ごめん、ごめん、少し遅れちゃった。」
「今日はどこ行くの?」
「おしゃれな居酒屋、見つけたの。ついてきて。」

 5分ほど歩いて店につき、席に通された。

「乾杯! なんか、久しぶりだね。」
「乾杯。最近、誘ってなかったね。どう過ごしていた?」
「そんなに変わらない。聞いて、聞いて、1週間ぐらい前、爪、割れちゃって、ネールとか台無しになっちゃった。ひどいと思わない?」
「そりゃ、大変だ。」
「そうだよね。このネール、気に入っていたんだ。そういえば、涼にはまだ見せてなかったよね。この夏の雰囲気、かわいいでしょう。」
「かわいい。」
「本当に、聞いてる? なんか、言葉が少ないなぁ。まあ、気のせいかな。でも、なんか、お酒のペースも遅いよ。もっとペース上げて。」
「咲さん、マイペースで飲むから、気にしないで。」
「本当に涼なの? 今まで咲って呼んでたけど、堅苦しいな。そういえば、涼と同じゼミの清水さん、また男に手を出したってよ。本当に尻軽女なんだから。涼は私がいるんだから、清水さんから声かけられても、ちょっかい出さないでね。大丈夫だと思うけど。そうそう、大学1年の時同じクラスだった酒井さんと水田さん、今度、結婚するだって。まだ大学生なのにね。ありえないでしょ。まあ、あの二人、将来のこと考えてなさそうだもんね。でも、笑える。」

 彼女の話しは、永遠に続いたが、話しの内容よりも、結構、ビールが美味しいとびっくりしていた。体が変わってから、味覚も変わってきた。昔、大好きだったスィーツとかはあまり欲しいと思わなくなくなったし、これまであまり興味のなかったラーメンとか、油っぽいものは食べたいと思うようになった。

 昔はお酒はほとんど飲めなかった、というより飲むと気持ち悪くなったんだけど、この体になってから、ほとんど酔わずに、強いお酒も飲めるようになり、ビールも、この苦さが美味しいと思うようになるとは考えてもみなかった。

 2時間ぐらい経ってからお店を出て、彼女と歩いていたら、彼女が手を引っ張って、行こうと言い出し、どこに行くのかと思っていたら、ラブホの前にいた。そして、ぐいぐいと部屋に連れていかれ、結局、部屋に入ってしまった。

 その後、彼女はキスをしてきて、脱ぎ始め、私の服も脱がせて、ベットに入り、抱きついてきた。女性を抱くことは初めてだったので戸惑ったが、体を重ねた。

「なんか、今日はダメだったけど、そんな日もあるわよ。気にしないで。」
「ごめん。」
「謝らないでよ。そう言えば、ここに入ってくる時、前の客見た? 若い子とおじさんで、歳の差20ぐらいだったけど、あれって、間違いなく金目当ての女だよね。化粧ばっちりだったし。いくらぐらいが相場なの?」
「知らないよ。」
「そうだよね。まあ、おじさんは金でやれて、女はもらった金で遊べるんだから、誰も困らないのに、どうしてだめとか言われているんだろう。まあ、そんな女は、金を貰わないと相手にされないやつばかりだけどね。ところで、今度は、いつにしようか。そういえば、今月末にフェスがあるけど、一緒に行こうよ。チケット取っておくからさ。」

 こんな形で、彼女とは付き合っていたけど、彼女が軽薄で、何も考えずに、その場だけで考えた薄っぺらいことしか話さないことに飽きてきていて、彼女の話しも上の空という時間も増えていった。

 大学での生活自体は、心配していたほどのことはなく、極めて順調に進んでいた。むしろ男性になったことで良いことは多く、特に、男性はブスッとしていても、それほど違和感がなく、女性の時のように愛想笑いとかしなくて良くなったのは、とても気が楽になった。

 半年が過ぎた頃、彼女はなんか言いたそうな顔をして、カフェに行こうと誘ってきた。

「涼、なんか、最近、雰囲気が変わったね。前みたいに、私のバストが大きいって、すぐに触ってくることとかなくなったし、前は、いつも、いずれ俺はこの世界でのしあがってやるなって言って、目をギラつかせていたけど、最近は、なんか気合いを感じない。そんな涼は、かっこよくない。」
「そんなに変わったかな?」
「変わったよ。それでね、私たち、少し距離をおいた方がいいと思うんだ。だから、しばらくの間、連絡とかしないし、連絡してこないで。そっちの方がいいと思う。」
「咲がそういうなら、仕方がないな。」
「わかってもらえたのね。じゃあね。」

 彼女はそう言って、カフェから出ていった。その後、さほどの期間をおかず、彼女は大学の別の男性と付き合っているという噂を聞いた。
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