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4人の王子様
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しおりを挟むび、ビックリした!だって声宮くんの顔が、ドアップで私の目の前にあるんだもん!
「うわああああぁ!?こっちに来ないでヘンタイ!」
「ぶッ!?」
自分の手を、バチッと声宮くんの顔にぶつける。あ、しまった!勢いが強すぎた……っ。
「ご、ごめん……!」
「お前……わざとだろ……」
「ち、違うよ!」
痛かったのか、片手で顔を覆っている声宮くん。ドスの効いた声にビビりながら、私はただ謝っていた。
すると不動先輩が、両手を挙げて「やっと開いた~」と喜んだ。そして、さっそくエレベーターのボタンを押し、次に止まる階の数字が点灯する。
「俺は次で降りるから。あ、楽もだよね?」
「うん」
頷いた楽先輩を見た後、不動先輩は私を見る。
「話せて嬉しかったよ、花畑ちゃん♡また会おうね」
「あ、は、はいッ」
「照れた顔も可愛い~」
ニッコリほほ笑んだ不動先輩は、私に投げキッスを飛ばす。
さすが全ての女の子を虜にする不動先輩……。王子って呼ばれるほどのイケメンだから、何をしても絵になる……。
対する楽先輩は静かなもので、エレベーターが到着した時。私を見て、手をひらりと小さく振るだけ。
「(無言なんだ……。っていうか、)」
あの楽先輩の大きな手に、私の頭はさっき撫でられたんだよね……?そう考えると、ただのバイバイなのに妙にドキドキしちゃった……っ。
先輩二人が降りた後は、歌沢くんの番。エレベーターがチンと鳴って止まった後、歌沢くんは出て行くのかと思いきや……勢いよく振り向いて、私に向かって宣言した。
「今度、デート行きましょうね。花畑先輩」
「え、デート!?」
「また先輩のクラスに行きますね」
「っ!」
目を細められて笑われると……なんでだろう。今の歌沢くんが、小悪魔系男子に見えてしまう。可愛いワンコ系って噂なのに……不思議。
すると隣にいた声宮くんが、また「チッ」と舌打ちをした。
「お花畑がいる教室って、俺もいるじゃねーか。おい歌沢、ウゼーから絶対来んなよ」
「ハエの音ですかね?耳障りですね。じゃあ先輩、また」
「あ゛!?」
「(ひィ~!降りる直前までケンカしないでぇ……!)」
そして歌沢くんが降りていき……エレベーターの中は、一気に静かになる。私と声宮くん、二人だけの空間。
「(き、気まずい……!だけど、)」
こういう時、何も話さない方が良いって分かってるんだけど。「さっきの誤解」は解いておかないと!
「こ、声宮くん!さっきエレベーターの電気がついた時に、私が声宮くんに近かったのはね。あれには理由があって、」
「あぁ、俺を襲おうとしたアレね」
「ち、違うの!誤解だからっ!!」
ニヤリ、と声宮くんが笑う。すっごくイジワルそうな顔で笑う。この顔に比べたら、さっきの歌沢くんの笑顔は――確かにワンコ系だ。かわいいもんだった。
「だから、あれは!ちょっとした理由があって!それで暗い中を歩いただけであって!だから声宮くんに近づいてたなんて、私も知らなかったの!」
「という理由にしておいて、本当は俺を襲いたかったと」
「じゃなくて!無実!無実だから私は!」
実は赤い糸が見えていて、その糸を辿ろうと思って歩いたら、声宮くんの近くにいました――なんて。
そんな事、口が裂けても言えないよ!だって、声宮くんは……絶対にバカにするじゃん。
――前、中学生になってまで”運命の人”とか信じてんの?!マジで!?
――運命の人!ハハ!さすが花畑、頭がお花畑だな!
「(あんな事、もう言われたくないもん……)」
「……」
さっき声宮くんにバカにされた事を思い出してシュンとしていると、声宮くんは「はぁ」とため息をついた。
「なんで真っ暗なのに歩こうとするんだよ。あぶねー奴」
「う……すみません。ちょっと眩暈がして、ふらついて……」
「怪我は?」
「え?」
驚いて、声宮くんを見る。すると声宮くんは、未だ不機嫌な顔で頭の上にクエスチョンマークを浮かべていた。
「どこも怪我してねーのかって聞いてんだよ」
「だ、大丈夫……っ」
すると声宮くんは「あっそ」と言って、私から目を逸らした。だけど私は、そんな声宮くんから目が離せなくて……少しの間、見つめてしまった。
だって、あの声宮くんだよ?すぐ舌打ちするから怖いし、睨むし、私の事を「お花畑」なんて呼ぶ――そんな意地悪な声宮くんが。
――怪我は?
私に、そんな言葉をかけてくれるなんて、思わなかった。
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