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謎のイケメンとバナナ

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『みつけた……』
「!」

 みんなの視線の先には、黒いモヤ。
 モヤが、どんどん大きくなってる!

「急いで隠れないと、って……わあ!?」

 なんと、このヒジョー事態に……
 スカートが小枝に引っかかって、身動きがとれなくなってしまった。
 うう……! あとは隠れるだけなのに!

「主!」

 すると、キキがダッシュで助けにきてくれる。
 ありがとう、キキ!
 でも、タヌキの手で、小枝に引っかかったスカートを取れるの!?
 そんな不安を抱いた瞬間――

 ボワンッ

「主! 今、お助けします!」
「……へ? 男の子!?」

 なんとキキが、同い年くらいの男の子に変化した!
 しかも、顔のパーツがいちいちしっくりくる。
 これは……間違いない。イケメンだ!!!!

「ほ、本当にキキなの!?」
「はい! 僕ですよ、主!」

 わたしの手をギュッと握って、すごく嬉しそうなキキ。
 うぅ。イケメンの笑顔、その破壊力たるや……!
 ポポッ
 わたしの顔が、思わず赤くなる。

 すると、とつぜんに、キキがわたしの前からいなくなった。
「あ~れ~」と言いながら、遠くなるキキの代わりに現れたのは、ネコ千景くん。

「どんくせーな」
「ご、ごめん……」

 ネコの手で、千景くんはスカートから小枝を外してくれる。
 まさに「猫の手も借りたい」状態……。

「ごめんね千景くん、ありがとう」
「!」

 お礼を言うと、千景くんはサッと目を逸らした。
 そして「どういたしまして」の代わりに、千景くんの口から出て来たのは――

「とりあえず、化けタヌキはシメる。
 でも、先に妖怪だ。
 アイツを何とかしねーと……。
 いいか?絶対に出てくるなよ」

 言い終わるやいなや、ネコの手に似合わない力で、千景くんは、ドンとわたしを押した。

「千景くん、キキ!」

 ゴロンと、わたしの体が花壇の中へ入る。
 無事にひまわりの中に隠れることは出来た。
 運のいいことに、わたしはまだ妖怪に見つかってない。
 だけど――

『みつけた……、見つけたぁあ!!』

 ザンッ

「千景くん! キキ!」

 モヤが素早い動きで、空中をグルリと回った。
 すると目に広がる、ビックリする光景。

「木や花が、枯れてる……?」

 動くモヤを中心に、木々や草や花――全てが枯れ始める。
 みずみずしい緑は、一気に姿を消した。
 枯れた茶色の風景が、どんどん広がっていく。

「こんな事って……!」

 その時。わたしは、千景くんがさっき話した事を思い出した。

 ――ここからは情も情けも通じない奴だ

 生きている物を、一瞬にして滅ぼしてしまう大妖怪。
 確かに、この妖怪を相手に、話をするのは無理だ。
 っていうか、怖くて出来ない!

「でも、さっき妖怪は“見つけた”って言ってた。
 それは、いったい……誰のことなの?」

 チラリと妖怪を見る。
 すると妖怪は、だんだんと形を成していき――モヤから、大きなネコへと姿を変える。
 そのネコは、なんと、ネコ千景くんをジーっと見ていた。

「ほほぅ、知り合いとな?」
「な訳あるか。と、言いたいが……知っている。
 この妖怪のこと、俺はイヤっていうほど知ってるぞ」

 千景くんの猫目が、キッと鋭くなる。
 その瞳に浮かんでいるのは、怒り。

「俺に呪いをかけた張本人。
 それが、この妖怪ってこった」

「ほう」
「え!?」

 まさか因縁の対決が、今ここで!?
 ネコ千景くんが、人間に戻れなくてイライラしてる、このタイミングで!?
 これじゃまるで、火に油だよ!

「会いたかったぞ……!」

 呟くネコ千景くんの顔に、シワが寄る。
 二股に分かれた大妖怪のシッポを見ながら、「滅」の構えをした。

「俺に呪いをかけた妖怪――猫又!
 今日こそ、この呪いを解いてやるからな!!」
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