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こわがり花りんと魔王サマ
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しおりを挟む「良かった? なんで?」
「今日、登校中にスゴイ妖気を感じた。
どこから妖気が出てるのか知りたくて、試しに念を送ってみた。
すると、お前が反応した」
「あ! あれって、もしかして……」
――おい、こっちを見ろ
「あれは、俺の念だ。
念を送った瞬間に、お前が挙動不審になって、ダッシュで逃げた――つまり、お前には、俺の声が聞こえたってことだ。
どでかい妖力を感じたから、どんな妖怪がいるかと思ったが……。
まさか人間だったなんて――ラッキーだ」
「え、ラッキー?」
っていうか、さっきキョドーフシンとかなんとか。失礼なこと言わなかった?
けれど、魔王に文句を言うわけにはいかない。
魔王が次にする話を、静かに待つ。
「さっきも言ったが、俺は妖怪に呪いをかけられた。
その呪いを解く方法は、妖怪しか分からない。
となると、妖怪と接触して話を聞くしかねぇって事だ」
「それは……大がかりだね」
途方もない話に、目が点になる。
千景くんも、そう思っているのか「だろ?」と。
腕を組んで、わたしを見た。
「だから、ちょうど助っ人を頼みたかったんだ。
妖怪が視える、人間の助っ人をな」
「あ~……」
それで、わたしが選ばれたんだ。
確かに、魔王からしたら、なんとも「ラッキーな話」だよね。
でも、わたしからしたら……
「アンラッキーすぎる……!」
要は――
妖怪が視えるわたしを利用するって事だよね!?
しかも、わたしは妖怪にからまれやすいから、Gホイホイ的な使い方もできる。
この魔王様、わたしをエサに、妖怪をおびき寄せる気だ!
「すみませんが、この話はなかったことに、」
「へー、次のデザートは、七夕ゼリーか。あれウマいんだよな。
しかも小羽の分が貰えるから、二つ食えるのか」
「!?」
あれ? 人質って、もう戻ってこない感じ!?
しかも七夕ゼリーだって!?
ちょっぴり固めの、あのお星さまが好きなの!
だから……とられるのを、黙って見てるわけにはいかない!
「こ、今回だけの協力って、約束してください……!」
「おー、今回だけだよ。
俺だって……こんな事は、二度とごめんだしな」
「魔王……」
その時、魔王が落ち込んでいるように見えた。
オニよりも怖い、最恐の千景くん。
そんな彼の顔に、めずらしく影が落ちる。
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