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こわがり花りんと魔王サマ

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 教室につくと、クラスのみんなは、もう登校していた。
 わたしは声に振り回されながら来たから、遅くなっちゃった。

「はぁ……」

 朝だっていうのに、疲れた。
 椅子に座って、ランドセルの中を整理する。
 そして、スライムのように、机にダラリと体を置いた。
 だけど――
 ここは窓の近くの席だから、机は、朝日でポカポカ状態。
 よって……

 ジュー

「あっつ……!」

 まるで自分がフライパンの上で焼かれてるのかと思うくらい、熱い。
 ガマンできなくて、勢いよく飛び起きた。
 すると――

 ガンッ

「いったー!?」

 急に立ちあがったわたしの頭に、またもや固い何かが当たる。
 あまりの衝撃に、目にチカチカ星が飛んだ。
 今日は、ぶつかってばかりだよ……!

「ごめんね、大丈夫?」
「へ?」

 声の方へ振り向くと、そこには、クラスの男子が一人。
 確か、名前は……。

野良のら千景ちかげくん……!!」

 この時、わたしの毛穴という毛穴から、汗がプシュッと飛び出した。
 だって、野良千景くんって言ったら、おだやかな雰囲気に、整った顔。
 黒い髪はサラリとさわやかで、なおかつ、優しい性格。
 そう――
 彼は、この学校の「王子様」とウワサされる、超モテ男子なのだ!

「の、ののの、野良くん……?
 ど、どどどどど、どうしたの……?」

 友達ゼロ人のわたしに不足しているもの、それは――コミュニケーション能力。
 とてつもないドモリ方をしたわたしを、野良千景くんは心配そうに見た。

「すごい汗、それに顔が赤いよ。熱でもあるんじゃない?」
「ひえ……!?」

 野良千景くんが、戸惑いなく、わたしのオデコに手を当てる。
 ちょ、ちょっと待って!
 へ―ジョーシン!
 誰か、今すぐわたしに、へ―ジョーシンを持ってきてください!

 だけど、わたし達を見ていたクラスの人が、笑い始める。


「野良~、小羽はお前の事、怖がってんじゃね?」
「なんだって、”こわがり”だもんね~」

「え? こわがり?」
「ッ!」

 まただ。
 また、クラスの人にからかわれた。
 優しくて「王子様」って呼ばれてる野良千景くんを「怖い」なんて……。
 そんなこと、思うはずがないのに。

「ゴメン、俺が怖かったんだね。小羽さん」
「え、あの……」

 申し訳なさそうな顔を浮かべる、野良千景くん。
「ちがうよ!」って言いたかったけど、またクラスの人が口をはさむ。

「そうだ、”こわがりちゃーん”。
 こわがりちゃんが、一番怖いものを教えてよー」
「え……」

 一番、怖いもの――?
 両手をギュッとにぎる。
 わたしにとって一番怖いもの、なんて。
 そんなもの、決まってる。
 それは――

 あなた達、クラスメイトだよ。
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