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ピクニックと委員長3*桂木side
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*桂木side*
『何回言っても分かんないんだから、ダメよねぇ。もう小学生になったっていうのに、そんなんで本当に大丈夫なの?』
『……』
そんな心無い言葉を、母親から聞いた俺。
当時、小学一年生。ランドセルが、まだピカピカだった頃。
昔から、母親は言い方に難癖ある人だった。それは誰に対しても平等に。だからこそ、子供である俺にも平等に、キツイ言葉が降って来た。
その言葉に、毎度。俺の心がどれだけ抉られているか――それを分かっていないのは、母親はもちろん、俺も同じだった。
今思えば、思い込んでいたんだと思う。自分はダメな奴なんだって。幼い頃から母親に言われ続けてたから。
だけど、あの日――
いつもなら流せるキツイ言葉が、なんだか流せなくて。言葉の代わりに涙を流した俺は、家を飛び出して近くの公園に行った。
その時に、同じくらいの女の子と会う。髪が長くてきれいな、元気ハツラツな女の子。
しばらく女の子を観察していると、その子は色んな人を助けていた。
砂場でおもちゃをなくした子。走って転んだ子。登ったはいいものの、遊具からおりられなくなった子。
そんな困った子を見つけては、一直線に助けに行く――いわば「お助けマン」みたいな子だった。
そんな子が、ふと。俺の目の前にやってきた。
そして、こんな事を言ったのだ。
『あなたは? 何に困ってるの?』
『え、僕……?』
『うん。とっても悲しそうな顔をしてるよ?』
『え……』
自分では、全く気が付いてなかった。だけど、やっぱり自分は母親の言葉で傷ついていたんだと。長年にわたりボディーブローを入れ続けられた俺の心は、既にもうボロボロで、限界だったらしい。
『僕、僕は……っ』
色々な事が限界だった俺は、泣いてしまった。全然知らない女の子の前で。すごくみっともなく、泣きわめいた。
『ご、ごめ……止まらなくてっ』
申し訳なくて、格好悪くて。とりあえず女の子に謝りながら「自分の事は放っておいて」と泣きながら伝えた。だけど女の子は、首を横に振らなかった。
ばかりか、俺の手をギュッと握り締めて「大丈夫」と、力強く頷く。
『泣いたらスッキリするって、お母さんが言ってた!』
『す、スッキリ……?』
『そう! だから泣きたいときは泣けばいいの!泣きたい時に泣けるのは、立派なんだよって、お母さんが言ってた!』
『立派……? お母さんが、そう言ってくれるの?』
『うん!』
『そっか……』
自分の母親と違って、この子の母親は、わが子を大事に思っているんだなって分かって。自分と女の子の差に、俺は悲しくなった。だけど女の子は、そんな俺の僻(ひが)みさえも受け止め「大丈夫」と、再び頷く。
『私ね、変身出来るの! 困ってる人を助ける事が出来る、お助けマンだよ!』
『お助けマン……?』
『そう! でも最近、一人じゃ大変だからさ。だから君も一緒にやらない? お助けマン!』
『ぼ、僕が……!?』
驚いて言うと、女の子が頷く。
そして――
『君が最初に助ける”困ってる子”はね、君だよ!』
『僕が、僕自身を助けるって事……?』
『そう!』
体育座りをして泣く俺の前に立って、笑顔で頷く女の子。その子に向かって、お母さんらしき人が「いちか~」と手を振った。
『あ、お母さんが呼んでる!じゃあ、またね!』
『う、うん……』
『お助けマンになってね!約束だよ!』
『わ、わかった、約束する……!』
『うん!』
その子とは、それきり会ってない。
だけど、その子と会った日の事を。あの時間を。
俺は一日だって、忘れた事はなかった。
*桂木side end
『何回言っても分かんないんだから、ダメよねぇ。もう小学生になったっていうのに、そんなんで本当に大丈夫なの?』
『……』
そんな心無い言葉を、母親から聞いた俺。
当時、小学一年生。ランドセルが、まだピカピカだった頃。
昔から、母親は言い方に難癖ある人だった。それは誰に対しても平等に。だからこそ、子供である俺にも平等に、キツイ言葉が降って来た。
その言葉に、毎度。俺の心がどれだけ抉られているか――それを分かっていないのは、母親はもちろん、俺も同じだった。
今思えば、思い込んでいたんだと思う。自分はダメな奴なんだって。幼い頃から母親に言われ続けてたから。
だけど、あの日――
いつもなら流せるキツイ言葉が、なんだか流せなくて。言葉の代わりに涙を流した俺は、家を飛び出して近くの公園に行った。
その時に、同じくらいの女の子と会う。髪が長くてきれいな、元気ハツラツな女の子。
しばらく女の子を観察していると、その子は色んな人を助けていた。
砂場でおもちゃをなくした子。走って転んだ子。登ったはいいものの、遊具からおりられなくなった子。
そんな困った子を見つけては、一直線に助けに行く――いわば「お助けマン」みたいな子だった。
そんな子が、ふと。俺の目の前にやってきた。
そして、こんな事を言ったのだ。
『あなたは? 何に困ってるの?』
『え、僕……?』
『うん。とっても悲しそうな顔をしてるよ?』
『え……』
自分では、全く気が付いてなかった。だけど、やっぱり自分は母親の言葉で傷ついていたんだと。長年にわたりボディーブローを入れ続けられた俺の心は、既にもうボロボロで、限界だったらしい。
『僕、僕は……っ』
色々な事が限界だった俺は、泣いてしまった。全然知らない女の子の前で。すごくみっともなく、泣きわめいた。
『ご、ごめ……止まらなくてっ』
申し訳なくて、格好悪くて。とりあえず女の子に謝りながら「自分の事は放っておいて」と泣きながら伝えた。だけど女の子は、首を横に振らなかった。
ばかりか、俺の手をギュッと握り締めて「大丈夫」と、力強く頷く。
『泣いたらスッキリするって、お母さんが言ってた!』
『す、スッキリ……?』
『そう! だから泣きたいときは泣けばいいの!泣きたい時に泣けるのは、立派なんだよって、お母さんが言ってた!』
『立派……? お母さんが、そう言ってくれるの?』
『うん!』
『そっか……』
自分の母親と違って、この子の母親は、わが子を大事に思っているんだなって分かって。自分と女の子の差に、俺は悲しくなった。だけど女の子は、そんな俺の僻(ひが)みさえも受け止め「大丈夫」と、再び頷く。
『私ね、変身出来るの! 困ってる人を助ける事が出来る、お助けマンだよ!』
『お助けマン……?』
『そう! でも最近、一人じゃ大変だからさ。だから君も一緒にやらない? お助けマン!』
『ぼ、僕が……!?』
驚いて言うと、女の子が頷く。
そして――
『君が最初に助ける”困ってる子”はね、君だよ!』
『僕が、僕自身を助けるって事……?』
『そう!』
体育座りをして泣く俺の前に立って、笑顔で頷く女の子。その子に向かって、お母さんらしき人が「いちか~」と手を振った。
『あ、お母さんが呼んでる!じゃあ、またね!』
『う、うん……』
『お助けマンになってね!約束だよ!』
『わ、わかった、約束する……!』
『うん!』
その子とは、それきり会ってない。
だけど、その子と会った日の事を。あの時間を。
俺は一日だって、忘れた事はなかった。
*桂木side end
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