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一章

二十二話 窃盗事件

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私たちは、青年に誘導されるがまま宿に向かった。
宿に入ると、いつも通りのカウンターがあった。私たちは、そこで青年と別れた。
私たちはカウンターで受付を済ませることにした。

「すみません。今日ここに泊まりたいんですけど…」

私は、カウンターに座っている女性に言った。女性は、笑顔でこちらに向いて言う。

「宿泊ですね。お二人で一つの部屋を?」

私は聞かれて頷いたすると、女性は手元にあった書類を私たちに渡してきた。いつも通りの署名かと、私は速やかに済ませようとしたが…

「待って!」

アズサの声がロビー中に響き渡った。私は思わず手を止めてしまう。アズサが紙の一部分に手を指して言う。

「ちゃんと、見なさい」

私は言われて、紙を声に出して読んだ。するとそこに書かれていたのは、驚きの紙だった。

「借金返済書…」

それからあとは、声に出す内容ではなかった。私は声に出して言う。

「これ…借金返済書じゃねぇか」

私は、声を荒げて言った。すると、カウンターに座っていた女性の人が言う。

「すみません。今この宿では借金が生じておりまして…」

女性は、この宿の状況を丁寧に説明してくれた。私はその説明を聞いて言う。

「この街…ガフユでは。領主による税金徴収で街の経済が回っていないと…」

私は、考え深い声で言うと女性は言う。

「そうです…この街はあの領主のせいで街が変わったのです。これを」

女性は、話の最後に紙を渡してきた。その紙をよく見ると宿の署名の紙だった。
私は、速やかに署名を済ませて言う。

「では、部屋に向かいますね。頑張ってください」

そう言い私は、階段を上って自分たちの部屋に向かおうとしたとき女性の声が私たちを止める。

「最後に…窃盗には気を付けてください」

私は、それを聞いてなんだか物騒な街だなと思ったが澄ました顔をして言う。

「大丈夫ですよ…多分」

私は、そこまで自信がなかったので多分という保険を掛けておいた。
部屋に入ると今まで止まってきた宿より一番きれいだった。なんだかこの綺麗さは異常だなと思った。

私は、部屋に隅に荷物を置いてアズサに言う。

「アズサ、この宿温泉あるみたいだよ」

私が言うと、アズサは周りを見ながら言った。

「なんだか、この部屋…異常に綺麗じゃないですか」

アズサが聞いてくるので私は頷いた。なんだか、アズサが怯えている様子を見るのは新鮮であった。
私は、もう一度アズサに温泉に行くか聞こうとしたがアズサは部屋の壁を触っていた。

「アズサ、壁がどうかしたの?」

私が聞くと、アズサは悟ったかのような顔をして言う。

「この壁…新しいわ」

「それがどうかしたの」

私はアズサに聞き返した。アズサは言う。

「前に、この部屋で殺人が起きたわ」

私は聞いて驚きすぎて動作もできなかった。私が、黙ってアズサを見つめているとアズサが言う。

「見て…これが証拠」

そういいながら、壁の一部をはがしたそれは白いシートらしきもので覆われているだけで、実際の壁は…

「うわぁ…」

見た瞬間言葉を失った。こんなにも酷い惨劇があったとは…
アズサは壁を見て言う。

「これは…血ね…何があったのかしら…」

アズサは首を傾げながら言った。私は、答えたくもなかった。
私は気分を変えようと提案をする。

「ねぇ、やっぱり温泉に行かない?」

そういうと、アズサは大きく頷いた。




私たちは、温泉がある街の中央部に足を運んだ。
街の中央部なのに人通りが少ない。
私たちは、少し警戒をしながら温泉の店に行った。

入ると、そこはカウンターに女性はポツリと座っているだけで…他は誰もいない。私はカウンターに向かった。

「すみません。温泉入りたいんですけど…」

そう言うと、女性は死んだ魚のような目をして言う。

「あら…お客様…二名様ですね…これを」

そう言って渡してきたのはロッカーの番号札だった。私たちはその番号まで行く。

「いや~ほとんど貸切だね~」

そう言うと、アズサはなんだか警戒しながら言う。

「…なんだか…変な気がします…夜なのに…人が少なすぎる…」

「別に、ただ人が今日は少ないだけじゃない?」

私たちは、服を脱ぎながら話した。やがて、脱ぎ終わって私は言う。

「じゃぁ入ろうか…」

「そうね…」

私たちは浴槽へと向かった。体を清めてから湯船に浸かった。アズサは少し警戒しながら入った。

「ひぁあ…」

アズサは変な声を出しながら入った。私は不意の変な声に笑ってしまう。

「笑わないでよ…私こうゆうところに入るの初めてなんだから」

アズサは、顔を赤ながら言った。私は、笑いを収めて行った。

「ごめん、ごめん」

そう謝っていると、男湯の方から声が聞こえてきた。

「そちらにいるお嬢さん?」

なんだか、どこかで聞いたことある声だった。私たちは、その声に反応しないようにした。
すると、相手の方から名乗ってきた。

「前にあなたたちを助けた真の勇者ですよ」

私たちは、とりあえず一安心をした。私は、大声言う。

「真の勇者はなんでこの街に?」

私が聞くと、数秒の沈黙の後返答が来た。

「この街では…悪者がいるみたいですから…ちょっと討伐に…」

なんだか、勇者にしては物騒なことを言っていた。
私たちは、やがて湯船を上がった。服を着て部屋に戻った。

「気持ちよかったね~」

そう言うと、アズサは慌ただしい様子でいう。

「ない…ないよ~!」

「何がないの?」

私はアズサの方に近づいて言う。アズサは、私の顔を見て言う。

「私たちのバックがないの…」

私は、首に巻いていたタオルが勝手に落ちた。

「本当に言ってる…?」

私は、聞き返すしか現実逃避の方法がなかったのだった。
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