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5人の末路(ざまぁ展開あり)

第10話 仲違いと遅かった後悔 トアside

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──どうしてこうなったの? なんで莉亜はあんなに泣いてるの?

 目の前で起きた出来事に私の頭は真っ白になってしまった。

 

 お父さんとお母さんと共に交番に向かったまでは良かった。
 莉亜の友人の両親達と一緒に、警察から軽く説明を受けた。それによると莉亜は友人達と共に交番の近くで見つかったというのだ。
 保護当時手足が拘束されていたものの特に外傷は無く至って健康的だと伝えられた時は心底安心した。警察の話が終わった後、保護された彼女達の元へ通された。

 両親の姿を見て安堵したのか、泣きながら抱きつく莉亜と友人。
 その場面を見れば怪我も無く無事家族と感動の再会を果たした素晴らしい出来事だと、誰もが思うだろう。

 だけど、話はここで終わらなかった。

 沢山泣いて疲れたのか落ち着きを取り戻した莉亜と彼女達は、少し周りを見る余裕ができたようだった。警察官や友人…その両親、それぞれ眺めていく最中、少し離れた場所にいた私を見つけたようだった。


────その瞬間、莉亜と彼女達の表情がみるみるうちに絶望に染まって、次の瞬間……

「ぉねぇ、ちゃ…ん?ぃ……いや、いやだ…来ないでぇ……いやぁぁぁぁあ゙あっ!!!!」

 辺り一帯を絶叫が包み込んだ。
 莉亜の叫び声に驚いた友人達も、私の姿を見た途端に堰を切ったように泣き叫んだ。

「え…?ど、どう、して……?」

 何が起こったのかわからない私はその場で立ち尽くした。
 両親達も突然の絶叫に暫く呆気に取られていたけれど、我に帰ると慌てて彼女達を宥めていた。

 警察の人達は私の顔を見た後に、苦々しい表情で何やら話し始めた。
 そして推測ではあるものの、彼女達が誘拐された際に、特定の人物に対して恐怖や嫌悪感を抱くように刷り込みをしたのではないか、そしてその対象が私ではないかと説明した。
 何故私だったのかは分からないけど、誘拐犯が私の顔を…私のことを知っていることが何よりも恐ろしかった。

 警察はとりあえず保護された莉亜達を連れて家に帰って良いと言っていたけど、莉亜の友人達が車に乗り込むまでは、私の姿が見えて怯えないよう隠れているように指示された。
 莉亜の友人達が帰って行って、漸く私も家に帰れることになった。
 だけど帰り道はお父さんの運転する車の中はとても静かで重苦しかった。

「……」
「トア……大丈夫か?」
「う、うん……」

 本当は怖くて仕方が無かった。あの子達の声も顔も、忘れたくても忘れられない。何より莉亜が、私のことを明確に否定したのがショックだった。
 帰りの車だって今まで後部座席で隣だったのに今はお母さんと場所を交換して莉亜が助手席に座っている。私の姿を見ると泣き出しちゃうから。

「莉亜があんなに取り乱すなんて……」
「…………」
「莉亜が落ち着くまでは、2人がなるべく会わないように気をつけないといけないわね…」
「っ……!」
「確かにな……トアが犯人じゃないってことは分かっている。だが、警察も言っていたことを考えると母さんの言う通り、2人が一緒になる時間を少なくした方がいいな。」

 お父さんの言葉に息を飲んだ。
 今まで仲が良かった家族の関係性に僅かなヒビが入った気がした。



 それから暫くして、私は莉亜のいる小学校で悪名高い有名人になっていた。誘拐された子達の話したことが周りに伝わる過程で徐々に尾ひれが付いていき、今では私が犯人のような扱いになっているらしい。
 でも私にはそれよりももっと重要なことがある。それは……

「もう!来ないでって言ったのに!!」
「莉亜…お願いだから、少しだけお話しさせて?」
「嫌だ!!お姉ちゃんと話すことなんて一つもないっ!!」
「……痛っ」

 莉亜との関係性が一向に改善されないことだった。誘拐直後は他人に対して恐怖心を露わにしていた莉亜も、時間が経つにつれて落ち着いていき、今では以前の笑顔を取り戻している。
 だというのに私の姿を見ると、たちまち莉亜は怒り出して視界に入らない場所に行くまで追い払おうとする。
 今もほんの少しだけ話そうとしただけで、プリントや本を投げつけられている。
 肩に本が当たってじわりと痛みが広がった。

「何回言えばいいの!?来ないでって言っているのに!!」
「……っ…ごめん。」
「うるさいっ!!早くあっちに行って!!お姉ちゃんなんて大っ嫌い!!」
「……ごめん…ごめん、ね。」

 明確に拒絶されて私はその場を離れるしかなかった。嫌われるのは辛いけど、それ以上にあの子にあんな表情をさせてしまったのが何よりも悲しかった。



 少しして高校でも噂がちらほら流れてくるようになった。どうやら弟妹が小学校にいる生徒達から伝播しているらしく、私が犯人じゃないとわかっていても遠巻きに見られることが増えた。周りから腫れ物のように扱われて、人の視線が怖くなった。
 マキネやアサヒの会話が頭に入って来ない。
 私の視線は自然と空席になった机に向かっていた。1月程休学すると言っていた平良樹さんの席…。

(もしかしたら、平良樹さんも私達のせいで学校に来るのが怖くなったのかな…。今ならわかる、常に見られて噂される状況がこんなに息苦しいことだったんだって……!!)

 トアは今更ながら後悔した。
 もう少し優しくすればよかった。

 あんなことしなければ良かった。

 ──そんなことを思っていても遅いのだけれど。

(もし……次があるのなら…平良樹さんに謝りたい…)


 トアはそう願いながら、色褪せた日常を過ごしていった。
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