私のお兄ちゃんは殺心鬼！？ 〜復讐代行、引き受けます〜

第7話 準備

「さて……始めるか」


　そう呟きながら尉吹は、今回の仕事の最後の準備を始める。
　目の前の復讐に集中する為、店の扉には"CLOSED"の看板を掛けたまま、彼は店内の奥にあるパソコンを立ち上げた。

　そこには5人の顔写真と本名、家族構成や住所等…個人情報が事細かに書かれている。

　全員咲菜を虐めた加害者達だ。
　更に結依香が届けてくれた音声データや、高校から提供された校内の映像データもある。

　今日はそんなデータを加味した上で、加害者達へ復讐する内容と順番を決めるのだ。妥協をするつもりは決してない。


　1人目は、トア。女子。3つ下の妹がいる。
　遠くで咲菜に聞こえないように陰口を言っていたのは彼女のようだ。

　2人目は、マキネ。女子。シングルマザーの家庭で育った1人っ子。
　トアとは違い、わざと聞こえるように陰口を言っている。

　3人目は、ショウマ。男子。運動が好きなようでサッカー部に所属している。
　彼もマキネと同じように陰口を言っている。映像には後ろから指を指して笑っているものもある。

　そして…4、5人目。リクトは男子。アサヒは女子だ。彼らは咲菜のコンプレックスを悪意のある言葉で傷付けた。
　その言葉が咲菜の心に決定的な傷を負わせたと言っても良い。この2人には特に苦しんで貰う必要がある。

　彼らの名前を本名で記していないのは、尉吹の彼らに対する最後の慈悲と言ってもいいだろう。

　これから彼らはそれなりの地獄を味わうことになる。

「……よし」

　尉吹はキーボードを叩き、エンターキーを押した。
　すると、画面上に表示されていた文字が次々と消えていき、最後に残ったのは"Finished!"の文字だった。

　これで復讐の準備は全て整った。後は、実行に移すだけだ。

「…さぁ、虐めた報いを受けて貰おうか」



　ーーそう呟く彼の瞳には、冷酷な光が灯っていた。