上 下
30 / 59

クラウス先生

しおりを挟む
 生徒の言い訳を聞かないクラウス先生に連れられて、リンネ、フランネ、マキノ、そして俺。俺たち四人は、職員室に連行される。

「セシル様さすがですね。先生をお呼びする前に、乱闘を制しておしまいになって!!」

 アスナがわざとらしくセシルを褒めて、くっつこうとする。
 乱闘を止めたのは、俺達の力もあってのことだと思うのだが・・・。

「待って下さい。クラウス先生!!」

セシルがアスナを無視して、クラウス先生を止める。

「なんですか? セシル様。たとえ王太子と言えども、教師が生徒を指導するのに、口出しは無用ですぞ?」

眉間に皺を寄せるクラウス先生。

「彼らの協力がなければ、乱闘は止められなかった。彼らは、私の協力者で大切な友達です」

セシルがクラウス先生に訴えてくれる。

「では、乱闘をしていたのは、彼らではないと?」

ジロリと俺達をクラウス先生が睨む。
 うう、全く信じていなさそう。

「では、乱闘をしていたのは?」

嫌なことをクラウス先生が聞く。
そんなの言えるわけがない。言えば、級友を売ったことになりかねない。
 セシルが口ごもる。

「セ、セシル様、ここは逃げて!!! フランネ、マキノ、リンネ! 頼んだ!!」

 俺は、クラウス先生の腕にしがみつく。

 三人が慌てて、無理矢理セシルを引っ張って先生から引きはがす。ずいぶん抵抗してるが、三人掛りで引っ張られて、セシルは先生から見えない所まで、連れ去られていった。

 そう、ここで王太子セシルが嘘をつくのは、今後のためによくない。ここは、将来は辺境でまったりを希望している俺が、罪を被るべきだろう。
 
 おい、アスナ。そそくさと逃げやがったな。
 俺はお前のためにこんな無謀な賭けをしたわけではないぞ?

「リオス君?? キミは何を考えているのだい?」

 大変お怒りのクラウス先生。
 俺は、猫のように首根っこを先生にひっつかまれて、みっちり二時間程度の小言を受けた後、「よりよき学校生活について」という謎のテーマのレポートを追加されてしまった。

 たっぷりの説教を聞き、ようやく解放されて先生の部屋を出て、図書室に俺は向かう。まだジュリエットの方のレポートも終わっていないんだ。
 
 ヨタヨタと廊下を歩けば、チラリとセシルを見かける。
 ? どうしたのだろう?
 セシルは、とても悲しそうな顔をしてこちらを見た後、そのまま視線をそらせて、どこかに行ってしまった。
 

 ヘトヘトの俺を、リンネとマキノとフランネが、図書室で待ってくれていた。

「ジュリエットの方のレポートは、リオス君が叱られている間に、下書きを書いておきましたから、それをそのまま写してくださいね」

 リンネが申し訳なさそうに、そう言ってくれたのは、有難かった。さすがリンネだ。感謝しかない。

「リオス、お前思ったより良い奴だな」

 フランネが、机に突っ伏す俺の頭を撫でる。
 どうやら、これ、フランネも仲間になってくれたのかな?
 それは、嬉しい。

「触るな。俺のだ」

フランネの手を、マキノが振り払う。いや、断じてお前のではない。

「あ、そうだ。セシル様がご心配されていましたよ?」

リンネの言葉に、俺は頭を上げる?

「ふうん。そう?」

 意外だ。勝手なことをして!! と怒っているかと思っていた。
 でも、心配していたなら、廊下でチラリと見かけた時、声もかけて来なかったのは、何故だろう?

「俺が、リオスには関わらないでくれ、と言っておいた」
と、マキノ。

 なんで? え? 今後の作戦的にもそれでいいの?

「まあ、そうですよね。リオス君がセシル様と関わるたびに、なんだか作戦が変になっている気がします。ここは、セシル様の方からも距離を置いてもらう方がよいでしょう」

参謀のリンネに言われれば、そんな気もする。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

おデブな悪役令嬢の侍女に転生しましたが、前世の技術で絶世の美女に変身させます

ちゃんゆ
恋愛
男爵家の三女に産まれた私。衝撃的な出来事などもなく、頭を打ったわけでもなく、池で溺れて死にかけたわけでもない。ごくごく自然に前世の記憶があった。 そして前世の私は… ゴットハンドと呼ばれるほどのエステティシャンだった。 サロン勤めで拘束時間は長く、休みもなかなか取れずに働きに働いた結果。 貯金残高はビックリするほど貯まってたけど、使う時間もないまま転生してた。 そして通勤の電車の中で暇つぶしに、ちょろーっとだけ遊んでいた乙女ゲームの世界に転生したっぽい? あんまり内容覚えてないけど… 悪役令嬢がムチムチしてたのだけは許せなかった! さぁ、お嬢様。 私のゴットハンドを堪能してくださいませ? ******************** 初投稿です。 転生侍女シリーズ第一弾。 短編全4話で、投稿予約済みです。

マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました

東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。 攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる! そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。

Cutie Skip ★

月琴そう🌱*
青春
少年期の友情が破綻してしまった小学生も最後の年。瑞月と恵風はそれぞれに原因を察しながら、自分たちの元を離れた結日を呼び戻すことをしなかった。それまでの男、男、女の三人から男女一対一となり、思春期の繊細な障害を乗り越えて、ふたりは腹心の友という間柄になる。それは一方的に離れて行った結日を、再び振り向かせるほどだった。 自分が置き去りにした後悔を掘り起こし、結日は瑞月とよりを戻そうと企むが、想いが強いあまりそれは少し怪しげな方向へ。 高校生になり、瑞月は恵風に友情とは別の想いを打ち明けるが、それに対して慎重な恵風。学校生活での様々な出会いや出来事が、煮え切らない恵風の気付きとなり瑞月の想いが実る。 学校では瑞月と恵風の微笑ましい関係に嫉妬を膨らます、瑞月のクラスメイトの虹生と旺汰。虹生と旺汰は結日の想いを知り、”自分たちのやり方”で協力を図る。 どんな荒波が自分にぶち当たろうとも、瑞月はへこたれやしない。恵風のそばを離れない。離れてはいけないのだ。なぜなら恵風は人間以外をも恋に落とす強力なフェロモンの持ち主であると、自身が身を持って気付いてしまったからである。恵風の幸せ、そして自分のためにもその引力には誰も巻き込んではいけない。 一方、恵風の片割れである結日にも、得体の知れないものが備わっているようだ。瑞月との友情を二度と手放そうとしないその執念は、周りが翻弄するほどだ。一度は手放したがそれは幼い頃から育てもの。自分たちの友情を将来の義兄弟関係と位置付け遠慮を知らない。 こどもの頃の風景を練り込んだ、幼なじみの男女、同性の友情と恋愛の風景。 表紙:むにさん

悪役令嬢に転生したと思ったら悪役令嬢の母親でした~娘は私が責任もって育てて見せます~

平山和人
恋愛
平凡なOLの私は乙女ゲーム『聖と魔と乙女のレガリア』の世界に転生してしまう。 しかも、私が悪役令嬢の母となってしまい、ゲームをめちゃくちゃにする悪役令嬢「エレローラ」が生まれてしまった。 このままでは我が家は破滅だ。私はエレローラをまともに教育することを決心する。 教育方針を巡って夫と対立したり、他の貴族から嫌われたりと辛い日々が続くが、それでも私は母として、頑張ることを諦めない。必ず娘を真っ当な令嬢にしてみせる。これは娘が悪役令嬢になってしまうと知り、奮闘する母親を描いたお話である。

【完結】虐げられオメガ聖女なので辺境に逃げたら溺愛系イケメン辺境伯が待ち構えていました(異世界恋愛オメガバース)

美咲アリス
BL
虐待を受けていたオメガ聖女のアレクシアは必死で辺境の地に逃げた。そこで出会ったのは逞しくてイケメンのアルファ辺境伯。「身バレしたら大変だ」と思ったアレクシアは芝居小屋で見た『悪役令息キャラ』の真似をしてみるが、どうやらそれが辺境伯の心を掴んでしまったようで、ものすごい溺愛がスタートしてしまう。けれども実は、辺境伯にはある考えがあるらしくて⋯⋯? オメガ聖女とアルファ辺境伯のキュンキュン異世界恋愛です、よろしくお願いします^_^ 本編完結しました、特別編を連載中です!

悪役令嬢の中身が私になった。

iBuKi
恋愛
目覚めたら綺麗な女性が見つめていた。 白い空間に白い衣装を着た女性。 重たい体をベッドに横たえていた私は、彼女を医者だと思った。 会話するうち医者ではなく女神様で。 女神様のお気に入りの魂を持つ私は、特別な転生をさせて貰えるようだ。 神様だというのに、ちょっと思考が過激な女神様。 「ヒロインがヒロインの扱いを受けなかったらどうなるのかしら?」 妙な実験を私の転生先でしないで欲しいんですけど…… 私を愛し子と呼ぶ女神様は、加護の他に色んな能力を授けてくれるらしい。 護衛は聖獣様。 白いモフモフ一体の予定が、いつの間にか二体授けてくれることになる。 転生先ではモフモフパラダイスかしら!? 前世でペットが飼いたくても飼えなかった私は、その事だけでも大満足だ。 魂をゆっくり休めなさいと女神様の言葉に目を閉じると――― 七歳になったその当日に、やっと記憶が蘇る。 どんな能力が私に授けられたんでしょう? 怖いもの見たさでステータスを調べると・・・? 「女神様、これはやり過ぎです!」 女神様に思わず強めに注意してしまった。 女神様は「愛しい子が学園に行くのが今から楽しみなの。ヒロインは学園で出会う事になるわ。」 傍観者の立場にすると仰った言葉に二言はありませんよね? 女神様までがヤバイという性格のヒロインは、私に関わり合いにならないようお願いします。 悪役令嬢らしいけど、一切悪役令嬢しない私の物語。 ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨୧ ⑅ ୨ 恋愛モードには年齢的にすぐ始まら無さそうです。 なので、ファンタジー色強めの恋愛小説として読んで頂ければ(*- -)(*_ _)ペコリ 幼い時期がかなり長くなっています、恋愛になるまで果てしない… カクヨム様、なろう様にも連載しています。

魔性の悪役令嬢らしいですが、男性が苦手なのでご期待にそえません!

蒼乃ロゼ
恋愛
「リュミネーヴァ様は、いろんな殿方とご経験のある、魔性の女でいらっしゃいますから!」 「「……は?」」 どうやら原作では魔性の女だったらしい、リュミネーヴァ。 しかし彼女の中身は、前世でストーカーに命を絶たれ、乙女ゲーム『光が世界を満たすまで』通称ヒカミタの世界に転生してきた人物。 前世での最期の記憶から、男性が苦手。 初めは男性を目にするだけでも体が震えるありさま。 リュミネーヴァが具体的にどんな悪行をするのか分からず、ただ自分として、在るがままを生きてきた。 当然、物語が原作どおりにいくはずもなく。 おまけに実は、本編前にあたる時期からフラグを折っていて……? 攻略キャラを全力回避していたら、魔性違いで謎のキャラから溺愛モードが始まるお話。 ファンタジー要素も多めです。 ※なろう様にも掲載中 ※短編【転生先は『乙女ゲーでしょ』~】の元ネタです。どちらを先に読んでもお話は分かりますので、ご安心ください。

ロールプレイングゲームのヒロイン希望だったけど転生したのは乙女ゲームの悪役令嬢でした

天月せら
恋愛
侯爵令嬢アリーニャ・レンブラントの前世は魔法使いを夢見る少女だった。 ある日、アリーニャは前世の記憶を思い出し、今世の記憶を失っていた。 xxx ずっとずっと憧れていたの。 幼稚園の頃に流行ったテレビアニメが大好きだった。女の子達が不思議な力を授かり、魔法を使いながら悪の組織と戦うそのアニメはビジュアルも可愛く、仲間たちと協力し合いながら戦う姿やストーリーは幼い私のハートをつかんだ。 私のハートを掴んだ数年後、そのアニメは最強最悪最大の敵を倒し、ヒロインとヒーローが両思いとなり終了してしまった。 私は絶望した。だがそのアニメ終了後、次回新番組の予告編が解禁された。 新しいアニメのビジュアルも可愛かったので、さっきの絶望はふっ飛んでいった。 私は単純なのである。 その後も何回か番組が変わったが、ヒロインたち が協力し合いながら成長していく姿は私にとっていつしか憧れになった。 いつか自分にも魔法が使えるようになる日が訪れるのではないかと思うようになるまでそれほど時間はかからなかった。 でも、そんな私の願いが叶うことはなく、気づけば私は高校生になっていた。 高校生になれば、テレビアニメを卒業しているかと思いきや、ますますハマって未だに見ている。 好きなのだからしょうがない。 更に、最近では主人公であるヒロインが過去や異世界に召喚され、歴史を変えたり、世界の危機を救ったり、冒険するような漫画にハマってしまった。 漫画の中で召喚されるヒロインはみんな心の綺麗な上に強く美しく気高い女の子ばかりだった。 主人公たちは大体高校生くらいで色々なきっかけを経て召喚されていたので、私にもチャンスあるのではないかと心待ちにしていた。 そんなある日、私は不思議な夢を見た。 夢の内容は覚えていない。 xxx 次の二章更新遅れております

処理中です...