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キレッキレの悪役令嬢
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ユーカスが引き下がり、一通りの俺の謝罪を聞くだけ聞いたら、「ふうん分かった。だが、二度と上級生の教室には顔を出すな」セシルは、それだけ言って、さっさと教室に戻ってしまった。そっけない。
何だったんだろう? あのイイ感じの笑顔は?
やっぱりセシルは苦手だ。考えていることが、さっぱり分からない。
助けてくれたから、それをきっかけに、ちょっとは分かり合えるかと思ったのだが。セシルと俺が仲良くなるのは、ハードルが高い作業になりそうだ。
「セシル様……」
教室に去るセシルの背中を見ながら、ポヤンとした顔でそうつぶやくシロノ。
やっぱりこれは恋する乙女の顔だろう。できれば、その想いは叶えてあげたい。
午後の授業は、シロノのクラスとの合同授業。
紳士淑女に相応しい嗜みとして、ダンスを学ぶ。
先ほどの恋する乙女の顔はどこへ行ったのだろうというほど、キレッキレのシロノ厳しい言葉が冴えわたる。
「アスナ様。いけませんわ。そのようなステップでは」
「は、はい。シロノ様……」
アスナというのは、あの黒髪の大人しそうな少女のことだろう。
どこか放っておけない雰囲気のあるアスナ。シロノはついアスナが気になって、指導をしてしまっているようだ。
母のような気持ちでアスナに向かっているのは、兄の俺には分かるが、周囲にはそうは見えていまい。
「またよ。どうしてシロノ様は、アスナ様をいじめなさるのかしら」「アスナ様、またシロノ様の不興を買ってしまわれたわ」なんて陰口がちらほら聞こえてくる。
シロノ、駄目だよ。これじゃあ、すっかり悪役令嬢じゃないか。
シロノの友達も良くない。
シロノを味方したいのだろうけれども、「そうよ、シロノ様のおっしゃる通りよ」「まあ、そんなお作法も知らずによくこの学園に入れたものね」なんて言葉をシロノがアスナをたしなめるたびに添える。
そのことが、より一層悪役感をアップさせる。
庇護欲をくすぐる仕草と見た目のアスナ。これは、もう正統派ヒロインは誰でしょう? と問われたら、万人が万人、アスナと答えるだろう。
はあ……。どうしよう。
ダンスは一通りのステップを覚えたら、今度は、男女ペアで踊る。
少しずつペアを順番に変えながら踊って、全員と踊るようにできている。
「アスナ様、申し訳ありません。妹があなたにきつく当たって」
アスナと踊るときにそう声をかけてみる。
「あ、……リオス・エルグ様。シロノ様のお兄様ですね」
どうやら、アスナは俺のことを知っているようだった。
何だったんだろう? あのイイ感じの笑顔は?
やっぱりセシルは苦手だ。考えていることが、さっぱり分からない。
助けてくれたから、それをきっかけに、ちょっとは分かり合えるかと思ったのだが。セシルと俺が仲良くなるのは、ハードルが高い作業になりそうだ。
「セシル様……」
教室に去るセシルの背中を見ながら、ポヤンとした顔でそうつぶやくシロノ。
やっぱりこれは恋する乙女の顔だろう。できれば、その想いは叶えてあげたい。
午後の授業は、シロノのクラスとの合同授業。
紳士淑女に相応しい嗜みとして、ダンスを学ぶ。
先ほどの恋する乙女の顔はどこへ行ったのだろうというほど、キレッキレのシロノ厳しい言葉が冴えわたる。
「アスナ様。いけませんわ。そのようなステップでは」
「は、はい。シロノ様……」
アスナというのは、あの黒髪の大人しそうな少女のことだろう。
どこか放っておけない雰囲気のあるアスナ。シロノはついアスナが気になって、指導をしてしまっているようだ。
母のような気持ちでアスナに向かっているのは、兄の俺には分かるが、周囲にはそうは見えていまい。
「またよ。どうしてシロノ様は、アスナ様をいじめなさるのかしら」「アスナ様、またシロノ様の不興を買ってしまわれたわ」なんて陰口がちらほら聞こえてくる。
シロノ、駄目だよ。これじゃあ、すっかり悪役令嬢じゃないか。
シロノの友達も良くない。
シロノを味方したいのだろうけれども、「そうよ、シロノ様のおっしゃる通りよ」「まあ、そんなお作法も知らずによくこの学園に入れたものね」なんて言葉をシロノがアスナをたしなめるたびに添える。
そのことが、より一層悪役感をアップさせる。
庇護欲をくすぐる仕草と見た目のアスナ。これは、もう正統派ヒロインは誰でしょう? と問われたら、万人が万人、アスナと答えるだろう。
はあ……。どうしよう。
ダンスは一通りのステップを覚えたら、今度は、男女ペアで踊る。
少しずつペアを順番に変えながら踊って、全員と踊るようにできている。
「アスナ様、申し訳ありません。妹があなたにきつく当たって」
アスナと踊るときにそう声をかけてみる。
「あ、……リオス・エルグ様。シロノ様のお兄様ですね」
どうやら、アスナは俺のことを知っているようだった。
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