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そして冒険は始まりて

お夕飯ですよ!

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 火の封印とやらが解かれ城の入り口に立った我々。

「さあ! 御夕飯にしましょうか! 私が腕によりをかけて作りますよ!」

 にこやかに笑うリリーナさん。
 リリーナさんの手料理が食べられるのは嬉しいけれども、材料があれ←宝物トラップモンスターとして出てきた炎を吐くドラゴン。

 それは、美味いのか? 食べて体に影響はないのか?

「リリーナの料理か……」

 ゲボルグさんがため息をつく。
 え、ひょっとしてリリーナさんメシマズ?

「もう! ゲボルグは大げささんです!」
「お父さんは、食べたことあるの?」
「儂? 無いな。儂は定時で退社するからな。昼は母さんの弁当で、夜は家で食う」
「うわっ、じゃあ、異世界の人間が食べられる物かどうか、分からないわけだ……」
「ちょとぉ! 皆さん警戒しすぎです! 見ていて下さい! すごいの作ってお出しします!」

 リリーナさんの手には、さきほどのドラゴンの目玉が握られている。
 今出しているってことは、それ食材だよね?
 それ、アカン部位じゃない?

◇◇◇◇

 城の中の一室に結界を張ってモンスターの侵入を防いだら、本日のキャンプの場所は確保できたらしい。
 できれば、宿屋に帰って疲れを落としたいが、長丁場になる場合は、こんなこともよくあるらしい。
 外では、リリーナさんが料理をしていて、ゲボルグさんがそれを手伝いに出ている。
 ドオン! バキッ! グシャア! 
 とても料理とは思えない音が鳴り響いている。


 部屋には、俺と親父と悠里の三人。

「今日のナイターどうなっただろうか。母さんは録画してくれているかな?」

 凄腕の冒険者とは思えないいつもの親父の言葉。
 悠里は、電波が届くはずのないスマホを片手て悪戦苦闘している。

「駄目だ! やっぱ電波届かないと何もできない」
「当たり前だろ。あきらめろ」

 だって~、と拗ねる悠里。

「疲れたか?」
「そりゃ、てかどうして黙っていたんだよ。こんな世界に出勤しているだなんて」
「規則があって、外の世界でこの世界に話は出来ない。こんぷらいあんす違反になる」

 え、コンプライアンス違反ってそんなのだっけ?

「おふくろは?」
「母さんは知らん。ちゃんとギルドで給与明細も作ってくれて、各種健保も普通の会社員と遜色なく用意してくれているからな。疑いようもないだろう。今日も、ちゃんと言い訳を考えて、母さんには連絡がいっているはずだ」

 すげえな。ギルド。ただの出会いの酒場じゃないんだ。
 そんな完璧なシステムが構築されているんだ。

「さあ! 出来ましたよ~♪♪」

 自信満々のリリーナさん。
 手に持った鍋からは、絶対体に入れてはいけない物の匂いが漂う。
 プクン
 浮かび上がってきたのは、先ほど手に持っていたドラゴンの目玉。
 紫色のぐらぐらと煮えたぎる液体にドラゴンの目は恨めしそうに浮かんでいる。

 食べなくても分かる。これ、絶対アカンヤツ。

「ヒイイイイイイ!!」

 悠里の口から悲鳴がこぼれた。


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