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そして冒険は始まりて

たどり着いた城

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 悠里が、とんでもなく青ざめた顔をしている。


「絶対これ『R』ついているし!」


 悠里は主張する。心にモザイクをかけなければ、なかなか耐えられない目の前の状況。
 ピクピクと痙攣する大きな生物。その肝をより分けて、ギルドに持ち帰るための処理をするゲボルグさん。


「二人とも、良かったですね! とっても生きの良いお肉が手に入りました♪」


 なにやら不穏なことを言うリリーナさん。
 え、これ食べるんですか? さっきまで元気に炎を吐いていましたよ? 絶対毒か何か持っているでしょう?
 うへぇ、と心の全てを表情に出す悠里。


「おにいちゃん、ちょっと私無理かも」

 強気な悠里が弱音を吐く。
 俺だってキツイが、可愛い妹の手前、そういう弱音は頑張って飲み込む。

「な、ならなぁ。悠里、お兄ちゃんの後ろに隠れていろ!」

 悠里を後ろに庇って、俺はダンジョンを進む。
 ようやく、城の入り口に到達したが、扉は固く閉まっている。


 『金の使者よ。土より産まれよ。木の使者よ。水に踊れ。〇の使者により、大地は目覚め、門は開く』
 そう扉には刻まれている。


「おっと、これは分かりやすい。えっと、この〇に当てはまるのは、火だよね?」
「あらすごい! こちらの世界に来たばかりで、魔法も知らないのに!」

 リリーナさんが褒めてくれる。
 こっちは、ずっと厨二病をこじらせている。この程度の魔法知識は簡単だ。
 どっかのボールに入る生き物だって、草や水なんかの属性があって、互いに得意不得意があるのだ。

「イフリートよ。我に祝福を」

 リリーナさんが、手をかざせば、手のひらから小さな炎が飛び出す。
 炎は、扉に刻まれた〇の部分に吸い込まれていく。

 ガコン……。


 大きな扉は、ゆっくりと開いていった。

「すごい。ダンスホール?」

 室内は、大きな広間。赤いじゅうたんが敷かれ、高い天井からは、大きなシャンデリアが下がっている。
 シャンデリアに付けられていたロウソクに炎が灯り、室内は明るくなり、広間に続く廊下のランタンにも炎が次々と灯っていく。


「さあ、炎の封印は解かれたようです♪ これで、この城の魔物も目覚めたことでしょう!」

 リリーナさん? 今なんておっしゃいましたか?

「気を付けろ。この城は、かつて魔王を守った四天王の一人が守っていた。封印が解かれれば、その四天王も復活しているかもしれない」

 ゲボルグさんが、注意してくれる。
 それ、封印を解いて良かったのか?

「ふふ♪ その四天王を倒した時に使ったクーフーリンの槍が欲しいのです♪ きっと、まだ四天王にぶっ刺さったままですよ♪」

 楽しそう~~に、リリーナさんが笑う。美人エルフの笑顔。眩しいが、ちょっと分かってきたことがある。

 リリーナさん、性格がちょっとぶっ飛んでいる。

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