ウチのクソ親父が冒険者だったようです

ねこ沢ふたよ

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冒険者は多くを語らない

親父ッ強えぇ!!!

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 謎の門を出た先は、光あふれる広い丘の上だった。

「あっれ? 門が! 門が閉まる!!」

 俺達がこちらに抜けてすぐ、門は固く閉じられてしまった。
 試しに門を押したり引いたりしてみたが、重い扉は、一向に開く気配は無い。

 悠里と俺は焦るが、門は無情にも閉じられてしまった。
 おかげで、洞窟の中で追いかけてきた、あの蝙蝠の化け物に追い立てられることはない。
 だが……これで、俺も悠里も、元の場所に戻ることは出来ない。
 
「ここが『マッサンドルフ』なのよね? マニア過ぎない?」

 まだキャバクラ説を捨てきれない悠里。
 気持ちは分かる。目の前の光景が、信じられないのだ。

 だが、ここは、どう考えても屋外。
 空は青く大地は広い。
 バーチャル空間とか? それならば、物凄い技術だ。足元の下草や土を踏む感覚。頬の撫でる風。太陽の温かさ。風の運ぶ木々の匂い。遠くに見える石造りの街の様子。

 どれをとっても、これがバーチャルだというなら一級品。へっぽこメタバースで話題になったザッカーバーグに技術者を紹介してあげたいレベルだ。

 完全に完璧に、屋外にいるとしか思えない。
 どうしよう。どうしたらいい?
 思わぬ状況に、何をどうすれば良いのか分からないで、俺達は戸惑う。
 と、とにかく親父を……


「グギャアアアア!!!」

 突然大きな叫び声がして俺達はそちらを見る。

 デカい恐竜みたいなのが、ドスドスと大きな音を立ててこちらへ走ってくるのが見える。
 
 ヤバイ、踏みつぶされる? 喰われる?
 
 大きな口を開けて、涎を垂らしながらこちらへと迫ってくる怪物。
 金のギョロ目が、こちらの存在を獲物とロックオンしている。

 逃げなきゃ!
 本能はそう訴えるのに、足がすくんで動けない。

 怪物の奴! 大きいくせに動きは早い。
 俺も悠里も、突然のことに身動きが取れない。

「あぶないぃぃぃぃ!!!!」

 ズバァァァァ!!!

 突然、どこからともなく表れた一人の人間によって、名も知らぬ怪物は、一瞬に縦に真っ二に剣で切り裂かれた。
 
 俺達の前に立つ背中には、見覚えがある。


「お、親父?」
「お父さん?」

 俺と悠里は、目の前の信じられない光景に、我が目を疑う。
 まだピクピクと痙攣する怪物のまで佇《たたず》む親父の眼鏡は、いい感じに光っている。

 シュッと剣を一振りして鞘に戻す親父の動きは、無駄など一つもない熟練者のそれ。
 
「子どもがうろつくところでは無いな。ここは、大人の仕事場だ」

 くたびれたスーツ姿で腰に帯刀した親父が、決め台詞を吐く。

「意味わかんない」

 悠里、その意見には、お兄ちゃんも全面的に百パー賛同する。
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