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一年目の結婚記念日
結婚記念日1年目 2
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モドキに呆れられた。
そんな事では、年がら年中、何あげようか悩み続けることになるぞ……なんて。
そうなのだ。モドキの言う通りなのだ。
プレゼントを交換するような年間行事は、意外と多い。
誕生日、結婚記念日、クリスマス、バレンタイン。
人によっては、婚約記念とか、付き合った日記念なんて物も祝うらしい(幸恵談)ので、このままでは、ずっと考え続けなければならなくなる。
それはもう、ネタが尽きたお笑い芸人のように、頭を抱えなければならなくならないか。いや、別に笑いは取らないでもいいけれど、でも、せっかくプレゼントをあげるならば、優一さんには喜んでもらいたい。
何をあげても、優しい優一さんは、にこやかに「ありがとうございます」なんて喜んでくれるだろうけれども、……何というか、その……驚かせたい? 感動させたい? そういう欲が出てくる。
「何が良いのやら……」
ネットの情報の海で遭難しかけて、この時期に大盛況のお中元のハムの画像を見飽きた私は、気分転換を兼ねて外へと出る。
外と言っても、お腹に子どももいることだし、途中で気分が悪くなったら困るから、最寄り駅前の商店街をフラフラと。シャッターが閉まっている店も多くなってきたけれども、それでも人通りがあり小さなお店が頑張って陳列したディスプレイや商品の紹介は、見ていて楽しい。
本屋さん……あの小説の新刊が出たのね。店頭に平積みしている。今日は無理だけれど、今度買いに来よう。……そうね、料理好きの優一さんに、綺麗な写真の入ってレシピ本も良いかも。動物好きだし、猫の写真集とかも有り?
金物屋さんか……お、この猫の足跡柄の急須、可愛い。これ、喜ばれるんじゃない? マグカップは……すでに可愛いのをいくつか持っていた気がする。じゃあ……このスプーンは? たまには、ワンコ柄も可愛くない?
紅茶専門店……ルイボスティーなら、カフェインないじゃない。妊婦に優しいし、一緒にお茶を楽しめるのは嬉しい。これは……プレゼントには関係なく、今買っておくか。
化粧品……ごめん。実験で手が荒れがちな優一さんに、無香料のハンドクリームないかと思ったのだけれど、無理。この匂いは、今の私には、きつくて結界があるように入れない。化粧品関係のお仕事されている妊婦さんは、平気なのだろうか? 職業柄慣れていらっしゃる?
あれこれ、プレゼントとは関係ないことも考えながら、私は商店街を歩く。
ネットの情報の海では分からない、新しい発見もあるから、こういう街歩きは楽しい。
思わぬ出会いがある。
それは有り難いのだけれど……。何も決まらないまま歩き続けて、疲れてきた。
やはり、お腹に子どもがいるからか、疲れやすくなった気がする。
七月になったばかり梅雨明け前でも、お日様の日差しはじりじりと暑くてキツイ。
じっとりと汗もかいてきた。
どうしよう……一旦、諦めて帰ろうかな。この後、スズメ御用達のいつものパン屋さんも覗きたかったけれども、それには体力が続かない。
ふと、目に付いたのは写真店。結婚した日に写真を撮った店だ。
優一さん……実験で写真は撮ることはあっても、カメラに凝ってはいなのよね。
そのまま通り過ぎようと思って、目に付いたのは『オリジナルグッズを作ろう!』という宣伝文。
Tシャツやエコバッグ、ハンカチに、子どもや動物の写真をプリントしてオリジナルグッズをつくるのだそうだ。
ああ、あれか……高校生の時に、体育祭でクラスTシャツ作ったな。クラスの絵が上手な子が、皆で決めたテーマに沿った絵を作成してくれて、その絵を元に作るのよね。
あれ、楽しかったよね。制服とは違う、クラスの出一体感。
毎年、あのTシャツを作ったけれども、外に来ていくには何だか恥ずかしいから寝間着代わりにしたり、記念品として飾っておくのよ。私も、良い想い出として実家のタンスにしまいっぱなししていたのだけれど、お母さんが引っ張り出してもったいないからって着ていたの、びっくりした。
基本、服なんて何を着ようが本人の自由だとは思うんのだが……。
お母さん……あのドラゴン柄で『必勝』って書いた真っ赤なTシャツで、スーパーに買い物に行くのはやめてほしかったな……。当時の同級生に見つかって、『マジ懐かしい!』って、メールが来ちゃったじゃない。
おっと、黒歴史を思い出している場合ではない。
さて、今作るとなると、モドキやマロンのプリントされたエコバッグやハンカチかな?
モドキ柄のハンカチ……。
一瞬、モドキ柄のハンカチを、猫ガチ勢の優一さんが満面の笑みで握りしめている絵柄が脳裏に浮かんだが……待て、本田薫。確かにそれは喜ぶけれども、結婚記念日には違うと思う。
一年目の記念すべきプレゼントまで、モドキに支配されてはいけない気がする。
全く、ただでさえ、我が本田家では、モドキの影響力は絶大なのに。
ブンブンと首を振るけれども、写真店の広告を見ていて、一つのアイデアが浮かぶ……これ、良いんじゃない?
良いかも……。絶対喜んでくれる。
私は、完璧なアイデアを手に入れて、この日は家に帰った。
そんな事では、年がら年中、何あげようか悩み続けることになるぞ……なんて。
そうなのだ。モドキの言う通りなのだ。
プレゼントを交換するような年間行事は、意外と多い。
誕生日、結婚記念日、クリスマス、バレンタイン。
人によっては、婚約記念とか、付き合った日記念なんて物も祝うらしい(幸恵談)ので、このままでは、ずっと考え続けなければならなくなる。
それはもう、ネタが尽きたお笑い芸人のように、頭を抱えなければならなくならないか。いや、別に笑いは取らないでもいいけれど、でも、せっかくプレゼントをあげるならば、優一さんには喜んでもらいたい。
何をあげても、優しい優一さんは、にこやかに「ありがとうございます」なんて喜んでくれるだろうけれども、……何というか、その……驚かせたい? 感動させたい? そういう欲が出てくる。
「何が良いのやら……」
ネットの情報の海で遭難しかけて、この時期に大盛況のお中元のハムの画像を見飽きた私は、気分転換を兼ねて外へと出る。
外と言っても、お腹に子どももいることだし、途中で気分が悪くなったら困るから、最寄り駅前の商店街をフラフラと。シャッターが閉まっている店も多くなってきたけれども、それでも人通りがあり小さなお店が頑張って陳列したディスプレイや商品の紹介は、見ていて楽しい。
本屋さん……あの小説の新刊が出たのね。店頭に平積みしている。今日は無理だけれど、今度買いに来よう。……そうね、料理好きの優一さんに、綺麗な写真の入ってレシピ本も良いかも。動物好きだし、猫の写真集とかも有り?
金物屋さんか……お、この猫の足跡柄の急須、可愛い。これ、喜ばれるんじゃない? マグカップは……すでに可愛いのをいくつか持っていた気がする。じゃあ……このスプーンは? たまには、ワンコ柄も可愛くない?
紅茶専門店……ルイボスティーなら、カフェインないじゃない。妊婦に優しいし、一緒にお茶を楽しめるのは嬉しい。これは……プレゼントには関係なく、今買っておくか。
化粧品……ごめん。実験で手が荒れがちな優一さんに、無香料のハンドクリームないかと思ったのだけれど、無理。この匂いは、今の私には、きつくて結界があるように入れない。化粧品関係のお仕事されている妊婦さんは、平気なのだろうか? 職業柄慣れていらっしゃる?
あれこれ、プレゼントとは関係ないことも考えながら、私は商店街を歩く。
ネットの情報の海では分からない、新しい発見もあるから、こういう街歩きは楽しい。
思わぬ出会いがある。
それは有り難いのだけれど……。何も決まらないまま歩き続けて、疲れてきた。
やはり、お腹に子どもがいるからか、疲れやすくなった気がする。
七月になったばかり梅雨明け前でも、お日様の日差しはじりじりと暑くてキツイ。
じっとりと汗もかいてきた。
どうしよう……一旦、諦めて帰ろうかな。この後、スズメ御用達のいつものパン屋さんも覗きたかったけれども、それには体力が続かない。
ふと、目に付いたのは写真店。結婚した日に写真を撮った店だ。
優一さん……実験で写真は撮ることはあっても、カメラに凝ってはいなのよね。
そのまま通り過ぎようと思って、目に付いたのは『オリジナルグッズを作ろう!』という宣伝文。
Tシャツやエコバッグ、ハンカチに、子どもや動物の写真をプリントしてオリジナルグッズをつくるのだそうだ。
ああ、あれか……高校生の時に、体育祭でクラスTシャツ作ったな。クラスの絵が上手な子が、皆で決めたテーマに沿った絵を作成してくれて、その絵を元に作るのよね。
あれ、楽しかったよね。制服とは違う、クラスの出一体感。
毎年、あのTシャツを作ったけれども、外に来ていくには何だか恥ずかしいから寝間着代わりにしたり、記念品として飾っておくのよ。私も、良い想い出として実家のタンスにしまいっぱなししていたのだけれど、お母さんが引っ張り出してもったいないからって着ていたの、びっくりした。
基本、服なんて何を着ようが本人の自由だとは思うんのだが……。
お母さん……あのドラゴン柄で『必勝』って書いた真っ赤なTシャツで、スーパーに買い物に行くのはやめてほしかったな……。当時の同級生に見つかって、『マジ懐かしい!』って、メールが来ちゃったじゃない。
おっと、黒歴史を思い出している場合ではない。
さて、今作るとなると、モドキやマロンのプリントされたエコバッグやハンカチかな?
モドキ柄のハンカチ……。
一瞬、モドキ柄のハンカチを、猫ガチ勢の優一さんが満面の笑みで握りしめている絵柄が脳裏に浮かんだが……待て、本田薫。確かにそれは喜ぶけれども、結婚記念日には違うと思う。
一年目の記念すべきプレゼントまで、モドキに支配されてはいけない気がする。
全く、ただでさえ、我が本田家では、モドキの影響力は絶大なのに。
ブンブンと首を振るけれども、写真店の広告を見ていて、一つのアイデアが浮かぶ……これ、良いんじゃない?
良いかも……。絶対喜んでくれる。
私は、完璧なアイデアを手に入れて、この日は家に帰った。
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