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旅行へ行こう
源助と絹江
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どうも。パサパサ女、本田薫です。
モドキの機転で助かったけれども、かなり引っ掛かる言い方。
そんなパサパサしているかな。あの熊のあの冷たい視線、どう考えても、私を見て「こいつは確かにパサパサだ」って納得していたよね? 私、見た目でパサパサ認定されたよね?
明日家に帰ったらとりあえず保湿はしておこう。
私は密かに決意を固めた。
ともかく、朝から疲れ果てた私達は、それから観光らしいこともできずに、一日をほとんど部屋で過ごしてしまった。
絹江が用意してくれたご飯は有り難いことに美味しかったし、優一さんはモドキやマロンとゆっくり過ごせて満足そうだったけれども、ほぼいつもの部屋で過ごす休日と変わらない。
モフモフのモドキとマロンに囲まれて、優一さんは幸せそうにウトウトしている。
旅行とは? そう問いたくなる現状に、悔しくなった私は、夕食の後にも眠れずに別荘の中を徘徊する。
いや、外を散歩するのは怖いし。今度こそ、お母さん熊に遭遇しそうだし。
古い別荘の中も、あの世的な何かに遭遇しそうな怖さはあるなだが、熊よりはましだろう。
食堂の横を通り過ぎた時に、まだ絹江が席に座っているのが見える。
「あれ? まだ片付け残っていました? 手伝いますよ」
私が声を掛ければ、絹江が顔を上げる。
「あら、大丈夫よ。薫さんと優一君がほとんどやってくれたから、もう片付けは終わっているの」
だったら、何をしていたのだろう。
絹江の手元を見ると、アルバムが一つ。
「懐かしくなっちゃって、つい見るのが止まらなくなっちゃって」
絹江に促されて、私は絹江の隣に座る。
愛おしそうに撫でる白黒写真には、若い男女が紋付袴と白無垢を着て並んでいる。
「源助さんと私なの」
「わ、イケメンと美女」
「ふふ、ありがとう」
むすっとした顔でそっぽを向く源助と、嬉しそうな表情で源助を見上げる絹江。
これは、結婚した時の写真だろうか。
「出会ったのはね、お見合いが嫌で私が木を伝って逃げようとした時なの」
窓から出て木の枝に乗った時に足を滑らせた絹江を、その日、綾小路家に使用人になるべく面接に来ていた源助が受け止めたのだと、絹江は語る。
「大恋愛!」
「そうなの! もう一目惚れで、その日から源助さんを追いかけ回して!」
源助は、最初のうちは、絹江を相手にしなかったのだそうだ。
そりゃ、仕事先のお嬢様の絹江だ。手を出せば大変なことになる。グイグイと言い寄ってくるお嬢様の絹江に源助はずいぶん困ったことだろう。
「どのくらい追いかけ回したかしら。その内に源助さんも私を愛して下さって、周囲の反対を押し切って結婚したのよ」
写真をよく見れば、絹江の手を源助がしっかりと握っている。
なんだ、源助め。そっぽを向ているくせに。
なんだかんだ言いながら、絹江に惚れていたんじゃないか。
ツンデレか?
絹江は、アルバムをめくりながら、あれこれと語る。
絹江が料理した焦げた物を黙って食べた源助、海で溺れそうになった絹江を慌てて助けにきた源助、山で遭難しそうになった絹江を見つけてくれた源助。
源助がトラブルの時にどんな風に助けてくれたのかを、絹江は嬉しそうに話す。
なんだかトラブルメーカーだな。絹江よ。
源助、偉いな。
「いつでも源助さんが助けてくれたの」
ペラリとめくったページに写るのは、歳を取った源助が横たわるベッドの横で微笑む絹江。
写真もこの時には、カラーになっている。
それだけ月日が経ったということだろう。
「でもね。源助さん、病気になっちゃったの」
写真の絹江は、エプロンを締めて腕まくりしている。笑顔は明るいが、大変だったのではないだろうか? 目の下には隈ができている。
「源助さんの介護を、絹江さんが?」
「ええ! 源助さんが好きだったこの別荘で二人きりで過ごしたのよ。お料理も苦手だったけれど、やれば出来るものね。今では得意になっちゃった!」
でも、だんだんと弱っていったの……源助さん。
悲しそうな絹江の声。
愛しい人が、介護の甲斐なく弱っていくのは、相当に辛いことではないだろうか。
この写真の源助の切なそうな表情は、きっと絹江に世話をかけてしまっている源助の心が現れているのだろう。
ダメだ。
想像したら、涙が我慢出来なくなってきた。
ダメなのだ。こういうの。
大切な人が、努力の甲斐なく弱っていってしまう系のお話。
ズビ……。
私の顔は、鼻水と涙で大変なことになっている。
「あら……まぁ……」
絹江が、笑いながらタオルを私に差し出す。
私は素直にタオルを受け取り、タオルに顔を埋める。
「薫さんで良かった」
「え?」
「モドキちゃん。優しい薫さんが拾ってくれたから、あんなに楽しそうに」
ありがとう……。
なんて優しい顔で笑っているの? 絹江……。
「ちょ、ちょっと待っていて下さい!」
私はガタガタと立ち上がって部屋に戻る。
部屋には、優一さんの上で丸くなって眠るモドキがいる。
てか、モドキよ。優一さんの顔面を腹で覆うでない。息が出来なくって死んじゃうでしょうが。
優一さんも、そんな幸せそうな寝顔で寝てないで。無防備過ぎるぞ。
少しは抵抗しようよ。
私は新婚早々、愛しい夫を失いたくはないのだ。
私は、状況を把握できないでいるモドキをむんずと掴むと、食堂に引き換えす。
「な、なんじゃ、薫! せっかく寝ておったのに! どうした、そんな鼻水だらけの顔で!」
「ごめん! モドキ、今日だけ!」
事情の分からないモドキを食堂の絹江に突き出す。
「モドキは、私にとっても大切です! ですから、お渡しすることは出来ませんが、せめて今日は、モドキと一緒にお過ごし下さい!」
私の言葉に、ひやぁ! と、モドキが悲鳴をあげる。
「ちょっと待て! 薫! そんなことをしたら、絹江のマシンガントークで、儂は眠れなくなる」
「いいの? 薫さん! ありがとう!」
ガッシリと絹江がモドキを掴む。
もう、モドキに逃げ場はない。
私の気が変わることを恐れたのか、絹江はモドキを掴んでそそくさと自分の部屋へと走っていってしまった。
「裏切り者めー!!」
モドキの叫びが、虚しく廊下にこだましていた。
翌朝、ぐったりと疲れたモドキが私の元に返された。家に帰りつくまでの間、車内でモドキが爆睡していたのは、言うまでもない。
モドキの機転で助かったけれども、かなり引っ掛かる言い方。
そんなパサパサしているかな。あの熊のあの冷たい視線、どう考えても、私を見て「こいつは確かにパサパサだ」って納得していたよね? 私、見た目でパサパサ認定されたよね?
明日家に帰ったらとりあえず保湿はしておこう。
私は密かに決意を固めた。
ともかく、朝から疲れ果てた私達は、それから観光らしいこともできずに、一日をほとんど部屋で過ごしてしまった。
絹江が用意してくれたご飯は有り難いことに美味しかったし、優一さんはモドキやマロンとゆっくり過ごせて満足そうだったけれども、ほぼいつもの部屋で過ごす休日と変わらない。
モフモフのモドキとマロンに囲まれて、優一さんは幸せそうにウトウトしている。
旅行とは? そう問いたくなる現状に、悔しくなった私は、夕食の後にも眠れずに別荘の中を徘徊する。
いや、外を散歩するのは怖いし。今度こそ、お母さん熊に遭遇しそうだし。
古い別荘の中も、あの世的な何かに遭遇しそうな怖さはあるなだが、熊よりはましだろう。
食堂の横を通り過ぎた時に、まだ絹江が席に座っているのが見える。
「あれ? まだ片付け残っていました? 手伝いますよ」
私が声を掛ければ、絹江が顔を上げる。
「あら、大丈夫よ。薫さんと優一君がほとんどやってくれたから、もう片付けは終わっているの」
だったら、何をしていたのだろう。
絹江の手元を見ると、アルバムが一つ。
「懐かしくなっちゃって、つい見るのが止まらなくなっちゃって」
絹江に促されて、私は絹江の隣に座る。
愛おしそうに撫でる白黒写真には、若い男女が紋付袴と白無垢を着て並んでいる。
「源助さんと私なの」
「わ、イケメンと美女」
「ふふ、ありがとう」
むすっとした顔でそっぽを向く源助と、嬉しそうな表情で源助を見上げる絹江。
これは、結婚した時の写真だろうか。
「出会ったのはね、お見合いが嫌で私が木を伝って逃げようとした時なの」
窓から出て木の枝に乗った時に足を滑らせた絹江を、その日、綾小路家に使用人になるべく面接に来ていた源助が受け止めたのだと、絹江は語る。
「大恋愛!」
「そうなの! もう一目惚れで、その日から源助さんを追いかけ回して!」
源助は、最初のうちは、絹江を相手にしなかったのだそうだ。
そりゃ、仕事先のお嬢様の絹江だ。手を出せば大変なことになる。グイグイと言い寄ってくるお嬢様の絹江に源助はずいぶん困ったことだろう。
「どのくらい追いかけ回したかしら。その内に源助さんも私を愛して下さって、周囲の反対を押し切って結婚したのよ」
写真をよく見れば、絹江の手を源助がしっかりと握っている。
なんだ、源助め。そっぽを向ているくせに。
なんだかんだ言いながら、絹江に惚れていたんじゃないか。
ツンデレか?
絹江は、アルバムをめくりながら、あれこれと語る。
絹江が料理した焦げた物を黙って食べた源助、海で溺れそうになった絹江を慌てて助けにきた源助、山で遭難しそうになった絹江を見つけてくれた源助。
源助がトラブルの時にどんな風に助けてくれたのかを、絹江は嬉しそうに話す。
なんだかトラブルメーカーだな。絹江よ。
源助、偉いな。
「いつでも源助さんが助けてくれたの」
ペラリとめくったページに写るのは、歳を取った源助が横たわるベッドの横で微笑む絹江。
写真もこの時には、カラーになっている。
それだけ月日が経ったということだろう。
「でもね。源助さん、病気になっちゃったの」
写真の絹江は、エプロンを締めて腕まくりしている。笑顔は明るいが、大変だったのではないだろうか? 目の下には隈ができている。
「源助さんの介護を、絹江さんが?」
「ええ! 源助さんが好きだったこの別荘で二人きりで過ごしたのよ。お料理も苦手だったけれど、やれば出来るものね。今では得意になっちゃった!」
でも、だんだんと弱っていったの……源助さん。
悲しそうな絹江の声。
愛しい人が、介護の甲斐なく弱っていくのは、相当に辛いことではないだろうか。
この写真の源助の切なそうな表情は、きっと絹江に世話をかけてしまっている源助の心が現れているのだろう。
ダメだ。
想像したら、涙が我慢出来なくなってきた。
ダメなのだ。こういうの。
大切な人が、努力の甲斐なく弱っていってしまう系のお話。
ズビ……。
私の顔は、鼻水と涙で大変なことになっている。
「あら……まぁ……」
絹江が、笑いながらタオルを私に差し出す。
私は素直にタオルを受け取り、タオルに顔を埋める。
「薫さんで良かった」
「え?」
「モドキちゃん。優しい薫さんが拾ってくれたから、あんなに楽しそうに」
ありがとう……。
なんて優しい顔で笑っているの? 絹江……。
「ちょ、ちょっと待っていて下さい!」
私はガタガタと立ち上がって部屋に戻る。
部屋には、優一さんの上で丸くなって眠るモドキがいる。
てか、モドキよ。優一さんの顔面を腹で覆うでない。息が出来なくって死んじゃうでしょうが。
優一さんも、そんな幸せそうな寝顔で寝てないで。無防備過ぎるぞ。
少しは抵抗しようよ。
私は新婚早々、愛しい夫を失いたくはないのだ。
私は、状況を把握できないでいるモドキをむんずと掴むと、食堂に引き換えす。
「な、なんじゃ、薫! せっかく寝ておったのに! どうした、そんな鼻水だらけの顔で!」
「ごめん! モドキ、今日だけ!」
事情の分からないモドキを食堂の絹江に突き出す。
「モドキは、私にとっても大切です! ですから、お渡しすることは出来ませんが、せめて今日は、モドキと一緒にお過ごし下さい!」
私の言葉に、ひやぁ! と、モドキが悲鳴をあげる。
「ちょっと待て! 薫! そんなことをしたら、絹江のマシンガントークで、儂は眠れなくなる」
「いいの? 薫さん! ありがとう!」
ガッシリと絹江がモドキを掴む。
もう、モドキに逃げ場はない。
私の気が変わることを恐れたのか、絹江はモドキを掴んでそそくさと自分の部屋へと走っていってしまった。
「裏切り者めー!!」
モドキの叫びが、虚しく廊下にこだましていた。
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