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それからの生活
これが陣痛 38
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唐突ですが、産まれました。
これが陣痛? という弱い痛みが断続的に続いて、その後次第にその痛みが強くなって。
夜には、私は、柏木家の車に送られて病院にいた。
出産の時は、基本は救急車は使ってはいけないことになっている。
なので、タクシーか自家用車で病院に向かうことになるのだが、私の場合、最寄りのタクシー会社に問い合わせたが上手く配車を頼めなかった。丁度、タクシーが出払う時間帯で手配できないと言われてしまった。
良かった。優一さんの実家の柏木家に車があって。
そして診察後に入院して。
その日の明け方には、私は分娩台にいた。
「子宮口、もう開いてきているね。もうちょっといきむのは待ってね」
ベテランの助産師さんが、気軽にそう言う。
「え、待つんですか? まだですか?」
もうお腹は十分痛い。もう、分娩台には乗っている。
そろそろ産んでこの痛みから、ヘタレの私は解放されたいのだが。
「うーん。前の人の出産が長引いていてね。まだ先生がこっちに手が回らないのよ」
は? そんな理由???
自分のことで精一杯だったから気づかなかったけれど、確かにカーテンの向こうからいきむ声が聞こえる。
とても一生懸命にいきむ奥様の声。それを支える旦那様の励ます声。
立ち合い分娩なのね。
優一さんは、立ち合いを申し出てくれたけれども、私がなんだか恥ずかしくて、優一さんの立ち合いを断ってしまった。ヘタレの私だから、きっとうろたえて挙動不審だろうし。
知らない夫婦だけれども、新しい命の誕生のために頑張っているのはカーテン越しに分かる。
が、がんばれぇ~!!
痛みを堪えながら、知らない夫婦をカーテン越しに心で応援する。
「ごめんね~。向こうも初産でね、時間が掛かっているみたいなの」
えっと、普段なら「仕方ないですね~。いいですよ~」と、私も答えるのだけれども、私も切羽詰まっているのですが?
「とにかくいきんだら、出産が進んじゃうからね。いきみを逃がす呼吸法は勉強したでしょ? はい、頑張ってね」
ええ! なんだっけ、ヒッヒッフーだっけ?
「フー」が、吐く動作だよね? どう考えても。ということは、「ヒッ」が、吸う方法? そうよね? だって、吐いてばかりなら呼吸にならないし、吸ってばかりでも、それは呼吸ではない。
突然に繰り広げらる実地テスト。そういうのが苦手な私は、必死になって正解の「ヒッ」と「フー」を探る。
「ヒッ」とは、どんな呼吸のことだっけ? 「フー」って、どれくらいの長さの「フー」??
痛みの中で、私は、絵にかいたようなパニックだ。
四苦八苦して様々な呼吸を繰り返している内に、隣から産声が聞こえてくる。
「あら、終わったようね! 間に合ったわ♪」
相変わらず、とっても気軽そうな助産師さん。
大丈夫なのか? この病院。一抹の不安が頭をよぎるが、とにかく先生は、手があいたようだ。
もういきんでいいんだ!!
ついに、レッツ出産なのだ!!
限界まで我慢していたからか、我が子が見かねて頑張ってくれたからか。
思った以上にすんなりと、我が子は胎から出てきた。
大きな産声。
ヘトヘトになって分娩台で聞いた。
これが陣痛? という弱い痛みが断続的に続いて、その後次第にその痛みが強くなって。
夜には、私は、柏木家の車に送られて病院にいた。
出産の時は、基本は救急車は使ってはいけないことになっている。
なので、タクシーか自家用車で病院に向かうことになるのだが、私の場合、最寄りのタクシー会社に問い合わせたが上手く配車を頼めなかった。丁度、タクシーが出払う時間帯で手配できないと言われてしまった。
良かった。優一さんの実家の柏木家に車があって。
そして診察後に入院して。
その日の明け方には、私は分娩台にいた。
「子宮口、もう開いてきているね。もうちょっといきむのは待ってね」
ベテランの助産師さんが、気軽にそう言う。
「え、待つんですか? まだですか?」
もうお腹は十分痛い。もう、分娩台には乗っている。
そろそろ産んでこの痛みから、ヘタレの私は解放されたいのだが。
「うーん。前の人の出産が長引いていてね。まだ先生がこっちに手が回らないのよ」
は? そんな理由???
自分のことで精一杯だったから気づかなかったけれど、確かにカーテンの向こうからいきむ声が聞こえる。
とても一生懸命にいきむ奥様の声。それを支える旦那様の励ます声。
立ち合い分娩なのね。
優一さんは、立ち合いを申し出てくれたけれども、私がなんだか恥ずかしくて、優一さんの立ち合いを断ってしまった。ヘタレの私だから、きっとうろたえて挙動不審だろうし。
知らない夫婦だけれども、新しい命の誕生のために頑張っているのはカーテン越しに分かる。
が、がんばれぇ~!!
痛みを堪えながら、知らない夫婦をカーテン越しに心で応援する。
「ごめんね~。向こうも初産でね、時間が掛かっているみたいなの」
えっと、普段なら「仕方ないですね~。いいですよ~」と、私も答えるのだけれども、私も切羽詰まっているのですが?
「とにかくいきんだら、出産が進んじゃうからね。いきみを逃がす呼吸法は勉強したでしょ? はい、頑張ってね」
ええ! なんだっけ、ヒッヒッフーだっけ?
「フー」が、吐く動作だよね? どう考えても。ということは、「ヒッ」が、吸う方法? そうよね? だって、吐いてばかりなら呼吸にならないし、吸ってばかりでも、それは呼吸ではない。
突然に繰り広げらる実地テスト。そういうのが苦手な私は、必死になって正解の「ヒッ」と「フー」を探る。
「ヒッ」とは、どんな呼吸のことだっけ? 「フー」って、どれくらいの長さの「フー」??
痛みの中で、私は、絵にかいたようなパニックだ。
四苦八苦して様々な呼吸を繰り返している内に、隣から産声が聞こえてくる。
「あら、終わったようね! 間に合ったわ♪」
相変わらず、とっても気軽そうな助産師さん。
大丈夫なのか? この病院。一抹の不安が頭をよぎるが、とにかく先生は、手があいたようだ。
もういきんでいいんだ!!
ついに、レッツ出産なのだ!!
限界まで我慢していたからか、我が子が見かねて頑張ってくれたからか。
思った以上にすんなりと、我が子は胎から出てきた。
大きな産声。
ヘトヘトになって分娩台で聞いた。
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