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5黄金狐
旅立ち
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古来中国の奇書、『山海経』にもあるように、神に仕える、瑞獣の四霊として、応竜、麒麟、鳳凰、霊亀がある。天の四方の方位を司り、それぞれの獣、妖を統べていた。
応竜は、鱗のある一族を、麒麟は、毛皮を纏った一族を、鳳凰は、翼のある一族を、霊亀はそれ以外の獣妖を、それぞれ統べている。
だが、九尾の狐は、そのどの四霊にも属さず、独立した瑞獣として、世にあると言われている。神に直接仕え、神の加護の元に成る妖である。
それゆえ、その特性は、どの妖よりも自由で、神聖で、残忍である。
九尾の狐の出現は、賢帝の出現の約束であるとされながら、もし、九尾の狐の機嫌を損なえば、忽ち、革命がおき国が亡ぶ。人間を食らうことまで辞さないという。
妖狐の中から、限られた者のみが、九尾となりうる才能の器として成り、神気・妖力・それに見合う器、その全てが そろって初めて、妖狐は九尾の狐となる。
九尾になった妖狐は、稲荷神の傍に侍ることを許され、天界の稲荷の社に上がり稲荷神に仕えることとなる。これは、妖狐の誉れであり、妖狐の存在意義そのものであり、妖狐が修練を積む意味となっている。
これは、昔。白金がまだ七尾の妖狐であった時の物語
「旅に出ようと思う」
黄金がそういったのは、まだ白金の尾が七尾であった頃だった。
妖狐の集まる狐の里。長老狐、紫檀の庇護のもとで、のんびりと暮らしていた。
「俺の尾は、ようやく八尾になった。九尾になれはしなくとも、自分の力を試し、修行を積もうと思う。白金、お前も共に行こう」
真面目な黄金らしい言葉に、白金は戸惑う。
ここ狐の里にいれば、何も不自由なことはない。
子狐達の面倒をみて、日々を過ごすことは、楽しい。
もちろん、大人になった妖狐たちは、外の世界へ出て修行を積む者も多いが、あまり修行に身の入らない白金にとっては、あまり取りたくない選択肢だった。
だが、同じ日に生まれたことから、『対の狐』として育ってきた白金にとって、黄金と別の道を歩むことは、考えられないことだった。
「あまり、乗り気にはなれないのだがね。黄金が行くなら、私も行くさ」
白金は、ため息と共に答えた。
同じ日の同じ時に、金と銀の妖狐が生まれた。
これは縁起の良いことと、二匹を対の狐として、共に育てることとなった。
金の毛並み黒い瞳の妖狐と、白銀の毛並み金の眼の妖狐。
それが、黄金と白金であった。
長き時を共に過ごし、修練を積み、遊び、それぞれがそれぞれを、かけがえのない自分の一部として、存在していた。
だから、白金には、黄金の考えがよく分かった。
もちろん、妖狐として成人した、黄金自身の力を試したいという気持ちが主な動機なのだろう。
だが、黄金には、まだ七尾で、修行にも身の入らない白金を案じ、妖狐の義務ともいえる修練を課すことで、成長を促そうという動機もちらほら見え隠れしている。
私は、別にこのままでいいのだが。
白金は、ため息をつきながらも、黄金に従った。
応竜は、鱗のある一族を、麒麟は、毛皮を纏った一族を、鳳凰は、翼のある一族を、霊亀はそれ以外の獣妖を、それぞれ統べている。
だが、九尾の狐は、そのどの四霊にも属さず、独立した瑞獣として、世にあると言われている。神に直接仕え、神の加護の元に成る妖である。
それゆえ、その特性は、どの妖よりも自由で、神聖で、残忍である。
九尾の狐の出現は、賢帝の出現の約束であるとされながら、もし、九尾の狐の機嫌を損なえば、忽ち、革命がおき国が亡ぶ。人間を食らうことまで辞さないという。
妖狐の中から、限られた者のみが、九尾となりうる才能の器として成り、神気・妖力・それに見合う器、その全てが そろって初めて、妖狐は九尾の狐となる。
九尾になった妖狐は、稲荷神の傍に侍ることを許され、天界の稲荷の社に上がり稲荷神に仕えることとなる。これは、妖狐の誉れであり、妖狐の存在意義そのものであり、妖狐が修練を積む意味となっている。
これは、昔。白金がまだ七尾の妖狐であった時の物語
「旅に出ようと思う」
黄金がそういったのは、まだ白金の尾が七尾であった頃だった。
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「俺の尾は、ようやく八尾になった。九尾になれはしなくとも、自分の力を試し、修行を積もうと思う。白金、お前も共に行こう」
真面目な黄金らしい言葉に、白金は戸惑う。
ここ狐の里にいれば、何も不自由なことはない。
子狐達の面倒をみて、日々を過ごすことは、楽しい。
もちろん、大人になった妖狐たちは、外の世界へ出て修行を積む者も多いが、あまり修行に身の入らない白金にとっては、あまり取りたくない選択肢だった。
だが、同じ日に生まれたことから、『対の狐』として育ってきた白金にとって、黄金と別の道を歩むことは、考えられないことだった。
「あまり、乗り気にはなれないのだがね。黄金が行くなら、私も行くさ」
白金は、ため息と共に答えた。
同じ日の同じ時に、金と銀の妖狐が生まれた。
これは縁起の良いことと、二匹を対の狐として、共に育てることとなった。
金の毛並み黒い瞳の妖狐と、白銀の毛並み金の眼の妖狐。
それが、黄金と白金であった。
長き時を共に過ごし、修練を積み、遊び、それぞれがそれぞれを、かけがえのない自分の一部として、存在していた。
だから、白金には、黄金の考えがよく分かった。
もちろん、妖狐として成人した、黄金自身の力を試したいという気持ちが主な動機なのだろう。
だが、黄金には、まだ七尾で、修行にも身の入らない白金を案じ、妖狐の義務ともいえる修練を課すことで、成長を促そうという動機もちらほら見え隠れしている。
私は、別にこのままでいいのだが。
白金は、ため息をつきながらも、黄金に従った。
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