八代とお嬢

えりー

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八代

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暗闇の中八代に担がれたみくるは落下していることにパニックに陥っていた。
「きゃぁぁぁぁ!」
「うるさいな」
「むぐ」
空いている方の手でみくるの口を閉じた。
「あまり叫ぶと舌を噛むぞ」
「んん!」
落下はまだ続いている。
段々冷静になってきたみくるは自分の手でゆっくりと八代の手を外した。
「・・・いつまでこの落下は続くの?」
「もうすぐだ」
それから暫くして落下はおさまり地上に降り立った。
気が付くと自分の家だった。
ほんのり血の香りがする。
「八代!!怪我は!?」
「大丈夫だ。鵺の所に行くときは無理やり時空をこじ開けたからこんな怪我を負ったが帰りはみくるがいるから怪我をしないように配慮してくれたようだな」
「あの鵺って妖は優しいの?」
「優しい妖は襲い掛かったりしない!俺が来なかったら今頃どうなっていたと思っている!?」
「あ・・・」
みくるは押し倒されたときの事を思い出した。
そして真っ赤になった。
「優しい妖なんていない。皆、自分の欲求に正直な生き物なんだ」
「・・・八代は違うじゃない。いつも優しいし」
その言葉に八代は驚いた。
「・・・優しいだけだと思うのか?」
「え・・・」
八代はみくるを担いだままみくるの部屋に来た。
そしてみくるをベッドに押し倒し強引にキスをしてきた。
「や・・・」
「鵺にはさせて俺は嫌なのか?」
「違う!なんか怖いよ八代・・・」
両手をシーツに縫い付け八代はみくるに執拗にキスを繰り返す。
「分かるか?俺が今ブチ切れてんの?」
「分かった・・・から・・・もう、やめて」
2人共呼吸を乱していた。
キスからは解放されたがいまだにみくるは押し倒されたままだった。
ふと美しく煌く黒い瞳と目が合った。
「俺はみくるが幼い頃から守ってきた。最初は義務感からだった。そういう風に作られたしな」
「・・・」
「でも、今は違うみくるが好きだから・・・守りたいと思っている」
そういうとさっきの荒々しいキスと違い優しいキスをされた。
みくるも驚いて身動きが取れなかったが今は大人しくキスをされている。
「みくる、頼むから何でも一人で解決しようとするな」
「八代・・・」
「今回の事も俺の油断が原因だ」
「違うわ!私が勝手に付いていっただけなの!!」
鵺は別れ際に言っていた。
諦めたわけではないと。
きっとまた来るに違いない。
「私が・・・好きなのは八代だけよ」
そう告げると両手の力が弱まった。
「本当か?」
「・・・嘘言ってどうするのよ・・・」
照れ隠しでつい強い口調になってしまう。
八代はもう一度触れるだけのキスをして覆いかぶさっていた体をどかした。
「みくる・・・好きになってくれてありがとう・・・」
まさかみくるが自分の事を好きになるとは思わなかった。
このまま強引に抱いてしまいたい気持ちに駆られたが嫌われたくないのでやめておくことにした。
「みくる、俺のどこが好きなんだ?」
「・・・わからない」
「そうか」
苦笑しながら八代はそう答えた。
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