八代とお嬢

えりー

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みくる

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あの日から結界が二重に張られるようになった。
結界の綻びも修復されてしまった。
もう二度と危険な目に合わせたくない八代の配慮だったのだが別の意味にみくるはとった。
(これじゃ、軟禁だわ)
「外が危ないのは分かったわ」
「ならこの屋敷で大人しくしておいてくれ、お嬢」
「その呼び方嫌い!!」
みくるは腕を組みそっぽを向いた。
「じゃあ、何と呼べば満足なんだ?」
「・・・この前みたいに名前で呼んでよ」
「・・・何故?」
「分からないのならもういいわ」
みくるがそう言い残し部屋へ入ろうとした瞬間八代は小さな声でみくるの名を呼んだ。
彼は柄にもなく照れていた。
みくるはじわじわと胸が熱くなるのを感じた。
年頃になってからみくるは八代を”異性”として見るようになっていた。
その事を知らない八代はみくるの事を子ども扱いしてくる。
その事がみくるは嫌いだった。
一緒にお風呂に入ろうとか、下着を干そうとした時だって、一緒に眠ろうとかまるで眼中にないといったような言動を八代は繰り返してきた。
何故か八代のその行為がみくるを傷つけた。
みくるはもう”女”なのだ。
もう少し意識して欲しかった。
そう考えた時自分は八代に恋をしていると自覚した。
八代はみくるを護る為だけに生まれた妖刀だ。
告白すればきっと気持ちを受け止めてくれるだろう。
でもそれでは意味がない。
「どうやったら”私”を見てくれるのかな・・・」
はーっと重たい溜息をついた。
(守ってもらえるのは嬉しいと思う。でもそれは義務感からでしょう?)
だからみくるは八代と気まずくて距離を取った。
(私はどうしたいんだろう)
どうしたら八代から”女”として見てもらえるのかー・・・。
不安な日々を過ごした。

そんなある日事件が起こった。家のポストに見知らぬ名前の送り主からみくるへの手紙だった。
その手紙には今夜使者を送るから自分のところへ来て欲しい。決して危害を加えないというものだった。
送り主の名前は鵺と書かれていた。
(鵺?鵺ってあの大妖怪!?)
今夜は満月だ。妖魔たちの力が強くなる日だった。
手紙や使者の話をしたほうがいいのだろうが守られてばかりではいけないと思ったみくるは黙っておくことにした。
みくるは少しの術なら使う事が出来る。
この間は驚いて逃げる事しかできなかったが冷静なときは護身術程度ではあるが使える。
みくるは誰にも言わないで行くことにした。
あとでお説教をくらうかもしれないが自分の事だから自分で解決したかった。
そうすれば少しは”女”として見てもらえるかもしれないとも思った。
使者が来てもこの結界を壊さなければ外に出られない。
結界を壊せば異変に気が付いた八代が駆け付けるだろう。
でも壊さなければ外には出られない。
「もー・・・どうしろっていうのよ」
みくるの悩みは尽きることが無かった。

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