淡恋

えりー

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手紙

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湊が手紙を結んだ翌日同じ木の枝にまた新しく手紙が結び付けられていた。
「え?」
湊は急いでその手紙に手を伸ばした。
その手紙にはこう書かれていた。

中村 湊様へ
お気持ちは分かります。
ですが今のままではいけないと思います。
学校が怖い気持ちも私にはわかります。
私が虐めから守ります。
だからどうか一度来てください。

(あの虐めからどうやって守るというのよ・・・)
(私を庇ったら次はこの手紙を書いてくれたあなたが危険な目に合うのよ?)
そう思い湊はその場に座り込み川の流れに目をやった。
でも湊は”守る”という言葉に胸を打たれた。
危険を顧みず、自分を守ると言ってくれている。
その気持ちが嬉しかった。
ただ無責任に学校に来いと言われているわけではない。
そう思うと少し、前向きな気持ちになってきた。
でも、やはり学校へはまだ行けそうにない。
(だって怖いんだもの)
手紙を本に挟みこの日も湊は手紙の送り主が現れないか待つことにした。
しかし、この日も現れなかった。
湊は手紙の送り主が気になりだしていた。
でも手紙の送り主は現れてはくれない。
心がざわめきだした。
「どうして姿を見せてくれないのかしら?」

翌日、返事を書いて桜の枝に結び付けた。
もう桜が散り始めていた。
桜は綺麗だけれども散る時は儚く寂しい気持ちにさせる。
今、湊の感情がまさにその状態だった。
(1人は寂しいわ・・・)
湊は学校へ行くかどうか迷いながら本を読み進めていった。
本の内容はあまり頭に入ってこなかった。
早くこの状況を何とかしなくてはと焦る一方だった。
しかも、あんな手紙を受け取ってしまった。
湊はあの手紙に対してこう返していた。

学校で私に関わると虐めの対象があなたに移ってしまいます。
ごめんなさい。私には学校に行く勇気がありません。

湊は複雑な思いでそう書いた。
すると翌日また木の枝に紙が結び付けられていた。
湊は驚いた。
もう手紙は来ないものだと思っていたからだ。
「どうして・・・」
そう言いながらそっと手紙に手を伸ばした。

中村 湊様へ
私は虐めは怖くありません。
以前の私ならきっと今の湊様のように怯えた事だと思います。
でも、このままではいけないと思えるようにしてくれた湊様に感謝しています。
きっと私の事は湊様は覚えていないでしょう。
それでもいいです。
もし学校に来たら改めてお礼に行きたいと思っています。

「感謝?何のことを言っているの?」
湊は手紙の内容に困惑した。
(この人は一体誰なの?どうして私の事をここまで気にかけてくれるの?)
(この人と私の接点は何?)
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