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1ヶ月後

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それから1ヶ月後魔王交代の儀と花嫁のお披露目の儀が行われることが決まった。
和樹は唯奈とずっと一緒に過ごしてくれた。
たまに外に出ると魔獣や魔物に遭遇した。
彼らはまだ唯奈が王妃になる人間だとは知らずに襲ってきた。
しかし、和樹がそれらを追い払ってくれた。
時に大きな怪我を負う事もあった。
だが、魔王との約束なのか必ず何があっても唯奈の事を守ってくれた。
そうしている間にあっという間に1ヶ月が過ぎた。
お披露目の日の当日、魔王から贈り物が届いた。
魔王は唯奈にドレスとアクセサリーと靴を贈った。
「え?受け取てもいいのかな?」
和樹にそう訊ねると和樹は面白くなさそうな顔をした。
「それも決まりなんだ」
「どういう事?」
「前魔王が新しい花嫁に婚礼の衣装を贈る習わしがある」
「そうなんだ・・・」
(ん?今、和樹は婚礼と言わなかった?)
「和樹?今日私達の結婚式だったりする?」
「ああ。そうだが?」
「初耳なんだけど・・・」
「魔界では花嫁お披露目の儀は結婚式を意味している」
「もっと早く教えてくれたら良かったのに」
唯奈は肝心なことをいつも教えてくれない和樹に不満を抱いている。
「お披露目の儀で私は何をすればいいの?」
「俺とキスをするだけだ」
「え!?」
驚いていると不機嫌な和樹が言った。
「人間界の結婚式でもそういう風な事を人前でするだろう?」
「するけど・・・いきなり言われても心の準備が出来てない」
「では、今から練習しておくか?」
そう言いソファでくつろいでいた和樹が立ち上がり唯奈の方へ向かってきた。
「か・・・和樹?」
「んっ!」
宣言通りキスをされた。
舌を絡ませられ歯列をなぞられる。
それだけで体が熱くなる。
唯奈の体は和樹によって作り替えられてしまったようだった。
(これ以上キスされると・・・濡れちゃう・・・)
「や・・・!」
ドンっと和樹を押しのけた。
しかしがっちり腰を固定されている為彼から離れることが出来なかった。
「嫌?」
唯奈のスカートの中に手を入れて下着の隙間から指を差し込んだ。
「嫌がっている割には少し濡れていたぞ?」
指を舐めながらそう言った。
「~っ!!」
羞恥で真っ赤に染まった唯奈の顔を見て面白そうに笑っている。
「式典までまだ時間がある」
「な、何よ・・・」
「体の火照りを収めてやろうか?」
「結構です!!」
唯奈は抱きしめられたままジタバタと暴れた。
その時ノックの音が聞こえた。
「は、はい」
「唯奈様の着付けに参りました」
「はい、宜しくお願いします」
唯奈がそう言うと戸が開き数人の使用人が入ってきた。
「カズキ様、魔王様がお呼びになっています」
「行ってきて和樹。今から私着替えるんだから」
「わかったよ」
ガシガシと頭を掻きながら部屋から和樹は出て行った。
「それでは唯奈様お召しかえいたしましょう」
「はい」
使用人たちは馴れた手つきで着替えさせていく。
あっという間にドレスを身につけることが出来た。
ドレスは純白の白百合を思わせるデザインのドレスだった。
シンプルなドレスだが生地は絹で出来ていた。
(わぁ・・・高価そう・・・)
アクセサリーはアクアマリンを使っている。
白いドレスによく映えた。
仕上げにヴェールとティアラをつけた。
靴も白で低いヒールの歩きやすい靴だった。
式典で転ばない様にの配慮かもしれない。
手紙が一緒に添えられていた。
唯奈はその手紙を読み一瞬涙が出そうになった。
手紙には”本気で愛していた。どうか幸せになってくれ”と書かれていた。
悪魔は嘘つきだと言いながらこんな手紙をくれるだなんて・・・。
唯奈はこの手紙は魔王の本心のような気がした。
この手紙が和樹に見つかると厄介なので和樹が開けそうもない机の引き出しの一番下の方にしまった。
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