魔王の息子に惚れられました

花嫁

和樹のお気に入りになってしまったことで花嫁にされてしまった唯奈はまだ納得がいかなかった。
自分の居場所は人間界なのだ。
媚薬の効果が切れ自由に動けるようになり脱がされた服を身につけた。
「何だ、もう起きたのか」
「・・・」
唯奈は自分の純潔を奪った男を無言で睨んだ。
「何でそんな顔をする。昨日の事を謝ればいいのか？」
「そういう問題じゃないわ！」
「どうした？まだ心臓が痛むのか？術が効いていないのか？」
「心臓は・・・治っているみたい」
脈は安定しているし、今までみたいな倦怠感はない。
むしろすっきりしている。
変化があるとすれば下腹部と秘部の鈍痛位なものだ。
今までの心臓の発作に比べれば可愛いものだ。
「昨日の花嫁云々は本気なの？」
「ああ、本気だが？」
「好きでもない女と結婚するのに抵抗はないの？」
「・・・ああ、まだ告白していなかったな。俺は唯奈の事好きだ」
「え？」
それは初耳だ。
「う、嘘よ。私たち同じクラスだったけど一度も会話したことなかったじゃない」
「会話したことはある。唯奈は雨の日俺に傘を貸してくれたじゃないか」
そんな事あっただろうか？
「それがきっかけで唯奈を観察するようになった」
「観察って・・・」
（私は珍獣か）
心の中でそう突っ込みながら彼の話に耳を傾けた。
「唯奈はいつも一生懸命に何でも取り組んでいたな。でも不器用な部分が多くて殆どが失敗に終わっていたな」
失礼な事を言ってくれるが全て本当の事だ。
クラスの役にたとうと思いクラス委員に立候補してみてもうまくいかず、結局クラスの皆に迷惑をかけたり、色々あった。
勉強も一生懸命取り組んでみたが、心臓の発作でいつも保健室で過ごしていた。
保健室で1人で勉強していた。
「いつからか色々不器用に頑張っている唯奈を放っておけないと感じるようになったんだ」
「でも、教室では声をかけてくれなかったじゃない」
「・・・それは、お前が話かけて欲しくなさそうだったからだ」
「！」
「お前、人間が苦手なんだろう？」
唯奈は図星だった。
入退院を繰り返しているうちに他人との接し方がわからなくなったのだ。
今も学校では友人と呼べる人は1人もいない。
「何で分かったの？」
「勘だ。ずっと観察していたからな」
「・・・気にかけてくれてて、ありがとう」
唯奈は正直にお礼を言った。
自分は孤独だとずっと思っていたから気にかけてくれる相手が現れて唯奈は少し嬉しかった。
そのお礼に気を良くした和樹は唯奈を抱きしめた。
「これで俺の気持ちは分かっただろう？」
「・・・うん。でも強引に抱くのはどうかと思うの」
「ああでもしないとお前は魔界の瘴気にあてられて死んでいたところだぞ」
「瘴気？」
「しかも、心臓の発作まで起こしていて昨日の唯奈は俺から言わせれば瀕死の状態だった」
「だから、抱いたっていうの？」
「それもあるが、唯奈を抱きたかった」
唯奈はその言葉を聞き真っ赤になった。
「・・・でも私はまだ花嫁にはなれないわ」
「どうしてだ？もう契りも交わしたじゃないか」
「無理やりにでしょう！？」
「そうだ」
まるで悪びれていない和樹に少し苛立ちを覚えた唯奈だった。