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真相

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「何故、こんな僕をそんなに慕えるんだ?」
「・・・まだ思い出せませんか?」
「すまない」
「ふふふ、また謝った・・・治りませんね」
そう言い真由子は祐樹にキスをした。
一瞬の出来事だった。祐樹は目を見開き驚いた。
2人共顔を赤くして話し始めた。
「それじゃあ、お話ししましょうか」
「すべて知りたい。ちょっと待っていて」
祐樹は店休日の看板を外に掛け替えた。
2人はホットコーヒーを入れ2階へ移動した。
従業員の更衣室兼休憩室へ行くと思っていた真由子は驚いた。
何故ならその隣にある鍵のかかった部屋へ招かれたからだ。
「ここは?」
「僕の家だ」
「ここの方がゆっくり話せると思ったんだけど・・・」
「入ってもいいんですか?」
真由子が控えめに聞いてきた。
僕は頷いた。
「包み隠さず本当の事を僕に教えてくれ」
「はい」

「あれは雨の日でした。母を亡くしたばかりで家に帰ると父が泣き叫んでいました」
「・・・」
「それを聞いていたくなくて私は外へ飛び出しました」
「すると見知らぬ男に声をかけられました。もちろん相手にはしませんでした。でも相手はひとりではなかったんです。車に押し込められそうになっていたところを通りかかったマスターに助けられました」
「あの時の娘が君だったのか!?」
「はい、私は怖くてその場からすぐ逃げました」
「でも何で僕だとわかったんだ?顔もろくに合わせていなかったのに」
「顔はしっかり見ました。そしてカフェのネームプレートを逃げる時、拾ったんです」
そう言いながら真由子はポケットから取り出した”カフェ中島”その下に”祐樹”と書いてあるプレートを見せてくれた。確かに3年前に無くしたものだった。
(あの時は両親を亡くし自暴自棄になていた頃だ。だから覚えていなかったのか)
「助けてくれなかったらきっと大変なことになっていたと思うんです」
「あの時は無我夢中だったから・・・それにこてんぱんにやられたよ」
「知っています。翌日カフェを見に行った時怪我だらけだったから」
(3年前から僕の事を見ていたのか)
「店に入って来てくれれば良かったのに」
「両親を亡くすきっかけを作った女の娘なのに入れるはずないじゃないですか」
ふっと僕は自嘲気味に笑った。
「僕たちは同じなんだな」
「そうですね。マスター」
そう言いながら真由子は微笑んだ。
「でも違う所があります」
真由子は急に顔を赤らめた。
「どこが違うんだ?」
「私は3年間ずっとマスターに片想いしていました」
突然の告白に今度は祐樹が真っ赤になった。
「えぇ!?」
「これでも初恋なんですよ。伝えるのに3年もかかってしまいましたが」
真由子は祐樹にキスをした。
祐樹はそれを受け入れた。
「マスターは私の事どう思っていますか?」
今度は祐樹の方からキスをした。
「もちろん好きに決まっている」
「いつからですか?」
「うっ」
祐樹はあの声をかけた日からずっと真由子を想っていた。
「正直に答えてください」
「僕のメイドになってくださいって初めて声をかけた日からだよ」
(ああ、恥ずかしい・・・)
「もう恨むとか憎むとかそんな感情いらないです」
真由子にそう言われ今まで苦しんできた感覚がすぅと消えていくのを感じた。
「本当にこんな僕が好きなのか?」
「信じられないんですか?」
「・・・」
祐樹はつい黙ってしまった。
すると真由子がいきなりドレスを脱ぎ始めた。
「な・・・っ」
「証明します。抱いてください・・・」
目のやり場に困り狼狽えるしかできない祐樹の手を取り自分の胸に押し当てた。
「~っ・・・!」
柔らかい感触が手、一杯に広がる。
甘い痺れのような感覚まである。
もっと触れたいと本能が言っている。
「後悔しないのかい?」
「はい、3年間の片想いが実るんですよ?」
真由子は愛らしい笑みを浮かべているが少し手が震えている。
ぐっと堪えて祐樹はドレスを着せなおした。
「え?しないんですか!?」
「もっとしっかりして真由子のお父さんに会いに行けるようになって真由子を抱きたい」
「?」
「気持ちだけ受け取っておくよ。ヘタレでごめ・・・」
謝ろうとして途中でやめた。
そんな様子を見て真由子は笑った。
3年前自分も被害者面していた。
その事を真由子の父親に責められ、逆切れしたことがあった。
あの時の事は今でも覚えている。
まだ自分も幼かったのだ。
でも今ならきちんと謝罪の言葉を言える気がする。
祐樹は今日、真由子を送った時に真由子の父親に謝罪しようと思った。
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