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奈々の想い

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行為が終わり、奈々はハインツに腕枕をされて横になっていた。
窓から差し込む月の光に手にはめているブレスレッドをかざしてみるとキラキラと輝いていた。
その様子を見たハインツが訊ねてきた。
「そのブレスレット、そんなに気に入っているんですか?」
「うん」
「そんなものでよければいくらでも用意しますよ」
奈々は慌ててハインツに言った。
「いい!!これだけで十分なの」
ハインツは不思議そうな顔をしている
「?」
「これは貴方と初めて会った記念品みたいなものだから」
そう言うとハインツは少し照れていた。
奈々はこう言ったが一時これを捨ててやろうかとも思っていた。
あまりにも初めての夜の出来事が忘れられなくてハインツを憎んでいたこともある。
今は、ハインツの事が好きになったのでそう思えるようになった。
「ハインツは・・・今、幸せ?」
「もちろんです。貴方を伴侶にできたんですから」
ハインツは即座に答えた。
「・・・」
ハインツはいつだって素直だ。
たまに恥ずかしくなるような事を平気で言ってくる。
奈々はそんなハインツも気に入っている。
「奈々は私を選んでくださいましたが・・・今、幸せですか?」
「うん。だって、ハインツ以外の相手なんて考えられないんだもの」
他の男から触られると体が拒否反応を起こす。
凄い嫌悪感に襲われる。
ハインツだと平気でむしろもっと触れてほしくなる。

「ハインツ、”不思議の国のアリス”って話、知ってる?」
「ええ、少女が別の世界に迷いこむお話ですよね?」
「うん。私、ずっとアリスみたいになりたいと思っていたの。本当に異世界があるなら行ってみたいって」
「そうですか。実際連れてきたときはパニックになってませんでしたか?」
当たり前だ。おとぎ話が現実になれば誰だってパニックにもなるというものだ。
「そうだけど、その夢も叶った。ありがとうハインツ」
でもまさか帰れなくなるなんて思いもしなかった。
「ハインツ、私の両親が心配していると思うの」
「はい。そうでしょうね」
「今度手紙を書くから家まで持っていってくれないかな?」
このままじゃ失踪者扱いされていつかTVで大騒ぎされてしまう。
「分かりました。貴方の望みなら何なりと申し付けください。この世界に強引に連れてきた私にも責任がありますから」
そう言いながらまたキスをしてきた。
「帰ることが出来ないって初めに教えてくれたらよかったのに」
「そうすると奈々はあの場で大暴れして大人しく来てくれなかったでしょう?」
「それはそうだけど・・・」
どのみちハインツは誘拐犯に変わりはない。
でも、私はハインツと恋に落ち、今こうしてここに居る。
ハインツも私の事を深く愛してくれている。
結果的にこれが私の中でのハッピーエンドなのかもしれない。
奈々はそう思った。


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みんなの感想(2件)

マナ
2017.02.21 マナ

女性のいない世界
帰る方法が変える方法に

えりー
2017.02.21 えりー

どこの何行目あたりですか!?
たまにやてしまいます・・・
誤字。

解除
大陸
2017.02.21 大陸

「ハインツっと彼は名乗った」の所ですが「」はいらないのではないのでしょうか

えりー
2017.02.21 えりー

訂正しました。ありがとうございます!!

解除

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