竜王と契約の花嫁

えりー

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美乃梨の目覚め

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温かい・・・。
ふと目を覚ますと温かさに包まれていた。
懐かしい匂いがする。
そう思い視線を上にやると瞳を閉じた竜王の顔が間近にあった。
自分が竜王の膝の上で眠っていたことに気が付いた。
美乃梨は眠っている竜王の頬に触れた。
「りゅう」
そう呼ぶと竜王はすぐ目覚めた。
記憶が戻った美乃梨はもう竜王に怯えない。
「記憶が戻ったみたいだな」
美しい顔で微笑みかけられドキリとした。
幼い自分はどうしてあんなに竜王に懐いていたのか今となっては分からないけれど・・・。
今の美乃梨は彼は寂しい思いをしたのだろうなと思った。
だからいつ美乃梨が帰って来てもいいようにこの国の時の流れを止め、帰りを待っていた。
少しでも幼い美乃梨と過ごした時を変えたくなかったのだろう。
(竜王にとって幼い美乃梨はきっと特別な存在だったんだ)
少し昔の自分に嫉妬しながらもそう思った。
「記憶は戻ったよ・・・でも、自分で思い出したかった」
そう言うと竜王は困った顔で笑った。
「悪いな、俺はせっかちなんだ」
「知ってる」
真顔になり竜王の顔が近づいてきた。
(キスされる・・・)
そう思い身構えると竜王は美乃梨の頬や、額に唇を落とした。
「口づけしてもいいか?」
改めて問われると照れる。
「す、好きにしていいよ。私はりゅうの花嫁なんだから」
「じゃあ、好きにさせてもらう」
ドサッとベッドに押し倒された。
「きゃっ」
柔らかいベッドに体が沈む。
「りゅう・・・?」
「今から美乃梨を抱く」
好きにして良いとは言ったがそこまで許していない。
「待って・・・」
「もう待てん」
言いながら美乃梨に深いキスをした。
「んん、ふぅ、はぁ・・・」
竜王の口づけは長く頭に上手く酸素がまわらない。
キスに翻弄されているとあっという間に服が脱がされていた。
「や、見ないで・・・」
「美しく成長したな。何故隠す必要がある?」
美乃梨はシーツに包まり体を隠した。
「俺の事を思い出してくれて嬉しい」
竜王は心底嬉しそうな声で言った。
その声は昔聞いていた声音だった。
懐かしさで涙が込み上げてきた。
そんな美乃梨を見て竜王は笑った。
「成長しても中身は昔のままなのか?」
「そんな事無いもん」
美乃梨は拗ね、そっぽを向いた。
「美乃梨、冗談だ」
「・・・りゅうは寂しかったよね?」
美乃梨は小さな声で言った。
「ああ、迎えに行ったら忘れられていたしな」
「それは・・・ごめん」
「移動の際、記憶を失くしたんだろう」
竜王には全て分かっていた。
あの移動は幼い体には負担がかかると言う事を。
しかし、記憶が消えるほどの負担がかかってしまうとは思わなかった。
「美乃梨、本当の花嫁にして良いか?俺は5年間待った」
(ずるい、そんな切なそうな顔でそんなこと言うなんて)
「俺の事、嫌いではないのなら受け入れて欲しい」
(嫌いなはずない)
言葉で言うのが恥ずかしかったので美乃梨は竜王に軽くキスをした。
すると竜王はお返しと言わんばかりに深い口づけをしてきた。
2人は目を合わせ笑い合い。
ベッドで抱き合った。
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