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レイの訪問

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それから毎日同じように・・・いや初日よりは優しく抱いてもらえるようになったが拓真はランが気を失うまで抱くようになった。気がつくと何時間も立っていて入浴するので精いっぱいとなった。
食事は拓真が作り寝室へ持ってきてくれるようになっていた。
「ラン、今日もあまり食べてないじゃないか」
「・・・食欲がなくて」
ランは拓真を怯えるようになっていた。
拓真が近づくと体が無意識にビクつくのだった。
(拓真さんはまだ怒っているのかしら・・・?)
それは怖くて聞けなかった。
きっとまだ怒っているのだだからあんな風に抱くのだ。
ランはそう思った。
鎖でつながれた手を見ると、虚しくなる。
自分はただ拓真を守りたかっただけなのにどうしてこうなってしまったのだろう。
その思いが彼女の心を占めた。
自然とルビー色の瞳から大粒の涙が零れ落ちてきた。
(悲しい、こんな生活一体いつまで続くのだろう)
ランは虚しさでいっぱいになった。
一方、拓真は森の外で異変がないか偵察に行き、森に何かしようとする人間を追い払った。
レイの言った通り拓真は強くなっていた。
ただ、まだまだ実力が足りない。実践もそんなに積んでいない。
伝書鳩を使いレイを呼んだ。
レイに稽古をつけてもらうためだ。
レイは三日後にやってきた。
「おい、ランは?」
「・・・部屋にいる。それより稽古をつけてくれないか?俺はもっと強くなりたい」
「わかったよ。一体どうしたんだ?前と雰囲気が違うし、何かあったのか?」
レイは殺気立っている拓真の事を心配した。
「俺の事は放っておいてくれ。俺は大丈夫だ。今日は手加減なしで頼む」
「手加減なしで頼むって言われてもなぁ・・・俺が手加減しなかったらお前死ぬぞ?」
レイは真剣な口調でそう言った。
確かにレイの実力を考えると手加減されて丁度いいくらいだろう。
だが、拓真は焦っていた。
(町の連中は何とか蹴散らすことが出来るようになったが、まだ力が足りない)
森に剣と剣のぶつかり合う音が響き渡る。
それを見たランは一生懸命レイに助けを求めたが気づいてもらえなかった。
(稽古が終わったらここに来てくれるかもしれない)
ランはレイがここにきてこの鎖を外してくれることを期待した。
ランは拓真とレイの稽古をじっと眺めた。
レイの言う通り確かに拓真は強くなっていた。
(あんなに傷だらけになってまで私を守ろうとしてくれていたのね)
彼は毎日、ひどい怪我で帰ってくることが増えた。
それなのにランを抱くことを止めなかった。
それはランの為なのだとランはこの時初めて知った。
(それなのに私は・・・)
ランは今になって一人で戦っていたことを後悔した。
彼はいつだってランの事を思って戦っていたのだ。
そしてこの軟禁も全てランの為なのだ。
しかし、少しいきすぎているように感じた。
ランにはもう何が正しくて何が間違いなのかわからなくなっていた。
レイとの稽古を終えボロボロになり、拓真はレイに担がれて帰ってきた。
その様子を見ていたランは部屋から飛び出て拓真とレイの元へ駆け寄った。
「拓真さん!大丈夫ですか?」
拓真の意識はない。
レイは彼女が鎖でつながれているのを見ると眉間にしわを寄せた。
はこいつの仕業か?」
レイは低い声音でランに訊ねた。
ランは頷いた。
レイは拓真の頭を掴み、床に叩きつけた。
すると拓真はその衝撃で意識を取り戻した。
「痛いなっ急に何するんだよ!!」
拓真はレイに怒った。
「お前こそ何してんだよ。ランを鎖でつなぐなんて・・・どういつもりだ」
レイは拓真に怒っていた。
「・・・ランを守るためだ」
「違うだろう?お前、自分が不安だからこういうことしたんじゃねぇか!!」
レイはランから鎖を外し、拓真に投げつけた。
「ランをこんな風に扱うのなら俺が連れ帰る」
レイはランを担ぎ上げた。
「待てよ!俺だってこんな事したくなかったんだよ。でも、こうしておかないとまたランが危険な目に合うかもしれないじゃないか!!」
レイは淡々とした口調で言った。
「今、彼女にとって危険なのはお前に見えるが?」
「俺はランに危害を加えたりしない」
暫くレイと拓真の睨み合いが続いた。
「・・・レイさん、降ろしてください」
「良いのか?」
「はい」
つかつかと拓真の元へ歩いていき、拓真の頬を叩いた。
その音が室内に響き渡った。
「これでチャラにします」
そう言って彼女は救急箱を取りに行った。
「拓真、今回は見逃してやるが次あんなことをランにしたら許さないからな」
「悪かったよ」
拓真の返事を聞き、レイは拓真の腹部を殴った。
「かはっ」
「俺も今回はこれくらいで許してやるよ。だが、次はないと思えよ」
そう言ってレイは帰って行った。
「拓真さん、早く手当しましょう」
ランのその行動に拓真は驚いた。
「ランは、俺を許してくれるのか?」
「いいえ、許したわけではありません。あんな風に無理やり毎日抱かれたんですから・・・怒っていますよ?」
そう言うとにっこり笑て見せた。
彼女の顔は笑っていたが目が笑っていなかった。




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