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仲直り
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翌日、美優は”お披露目の儀”が行われることが決まったと悠里から聞いた。
「・・・」
美優は喜ばなかった。
そして自分の我儘で”お披露目の儀”が早まったことに申し訳なさも感じていた。
泣きはらした美優の目を見て悠里が心配してくれた。
「昨晩はよく眠れましたか?」
「・・・はい」
もちろんこれ以上彼女に心配をかけないための噓だ。
悠里もそれが嘘だとわかっている。
「さぁ、日取りも決まりましたし、体調管理には気をつけましょうね。まずは朝食を食べましょう」
そう言うと手早く用意してくれた。
湯気が上るお茶を飲むと少し落ち着いてきた気がした。
「ありがとう、悠里さん。昨日は取り乱してすみませんでした」
「いいえ、とんでもありません!!結城王が悪いんですから!」
悠里は結城に対して怒っていた。
傷つけるなと念を押したのにもかかわらず自分の妹のような存在の美優を泣かせたのだ。
とてもじゃないがそう簡単に許せそうになかった。
「違うんです、私がはっきり結城様に言っておけばよかったんです・・・」
「・・・あまり思い詰めないでくださいね。私はいつでも美優様の味方ですからね」
優しく声をかけられるとまた泣きそうになった。
「もう大丈夫です。元気になりましたから!」
そう言って両手を胸の前に握り締め当てて見せた。
「美優様はお強いですね」
悠里は美優が無理していることは分かっていても気づかないふりをしてくれた。
「あの、悠里さん。私、結城様に会いたいです」
「うーん、そうですね私たちの方から会いに行くことは禁止されていますので・・・こちらに来られるのを待つしかありません」
「それじゃ、今すぐには会えないんですか?」
「・・・手紙を書いてみてはいかがですか?美優様」
(手紙?)
「それを私が紀藤様にお渡ししてきます」
「はい。ではそれでお願いします」
美優は机に向かい今の想いを手紙に綴った。それを悠里に託し、悠里が部屋から出て行くのを見守った。
「わんわん」
励ますように膝の上に結が乗っかってきた。
(癒される・・・結は優しいのね)
動物は人の心に敏感だ。
今、美優は落ち込んでいるからきっと本当に励ましてくれているのだろう。
ベッドにすわりそのまま横になった。
昨日はあまり眠れなかったから少し眠ろうそう思い、結を引き寄せ抱きしめた。
こうして、美優は仮眠をとることにした。
夕方になると手紙を読んだと部屋に結城がやってきた。
「・・・結城様」
「美優。俺は別にお前に怒っていたんじゃない」
「え?」
(どういうことだろう。私に怒っていたわけじゃない・・・?)
美優は小首をかしげた。
結城は美優のところまで歩いてきて強い力で抱きしめキスをした。
「俺は俺自身に怒っていたんだ。お前がそんなこと考えてるなんて思いもしなかった」
「・・・」
美優は黙って耳を傾けた。
「俺が、”お披露目の儀”を先延ばしにした本当の理由は、お前を独占しておきたかったんだ」
「独占?」
「お披露目ってことは国民にお前を見せる儀式の事だ。可愛いお前を人前にまだ出したくなかったんだ。誰の目にも触れさせず、俺だけの美優でいて欲しかったんだ」
「・・・!!」
あまりの恥ずかしいセリフに思わず顔が赤くなる。
両手で美優は顔を隠した。
「でも、それでお前が不安になっていたのなら申し訳ない。昨日も泣かせてしまったようだしな。すまなかった」
そう言い美優に頭を下げた。
一国の王が頭を下げたのだ。
「やめてください!!わかりましたから!!頭をあげてください!」
美優は涙目になりながら懇願した。
「許してくれるか?」
「はい、私のほうこそすみませんでした」
「じゃぁ、仲直りだな」
「はい」
そう言い向かい合い二人は唇を再び重ねた。
美優の不安はこれでなくなったが、一国の王に頭を下げさせた責任について頭を抱えた。
「・・・」
美優は喜ばなかった。
そして自分の我儘で”お披露目の儀”が早まったことに申し訳なさも感じていた。
泣きはらした美優の目を見て悠里が心配してくれた。
「昨晩はよく眠れましたか?」
「・・・はい」
もちろんこれ以上彼女に心配をかけないための噓だ。
悠里もそれが嘘だとわかっている。
「さぁ、日取りも決まりましたし、体調管理には気をつけましょうね。まずは朝食を食べましょう」
そう言うと手早く用意してくれた。
湯気が上るお茶を飲むと少し落ち着いてきた気がした。
「ありがとう、悠里さん。昨日は取り乱してすみませんでした」
「いいえ、とんでもありません!!結城王が悪いんですから!」
悠里は結城に対して怒っていた。
傷つけるなと念を押したのにもかかわらず自分の妹のような存在の美優を泣かせたのだ。
とてもじゃないがそう簡単に許せそうになかった。
「違うんです、私がはっきり結城様に言っておけばよかったんです・・・」
「・・・あまり思い詰めないでくださいね。私はいつでも美優様の味方ですからね」
優しく声をかけられるとまた泣きそうになった。
「もう大丈夫です。元気になりましたから!」
そう言って両手を胸の前に握り締め当てて見せた。
「美優様はお強いですね」
悠里は美優が無理していることは分かっていても気づかないふりをしてくれた。
「あの、悠里さん。私、結城様に会いたいです」
「うーん、そうですね私たちの方から会いに行くことは禁止されていますので・・・こちらに来られるのを待つしかありません」
「それじゃ、今すぐには会えないんですか?」
「・・・手紙を書いてみてはいかがですか?美優様」
(手紙?)
「それを私が紀藤様にお渡ししてきます」
「はい。ではそれでお願いします」
美優は机に向かい今の想いを手紙に綴った。それを悠里に託し、悠里が部屋から出て行くのを見守った。
「わんわん」
励ますように膝の上に結が乗っかってきた。
(癒される・・・結は優しいのね)
動物は人の心に敏感だ。
今、美優は落ち込んでいるからきっと本当に励ましてくれているのだろう。
ベッドにすわりそのまま横になった。
昨日はあまり眠れなかったから少し眠ろうそう思い、結を引き寄せ抱きしめた。
こうして、美優は仮眠をとることにした。
夕方になると手紙を読んだと部屋に結城がやってきた。
「・・・結城様」
「美優。俺は別にお前に怒っていたんじゃない」
「え?」
(どういうことだろう。私に怒っていたわけじゃない・・・?)
美優は小首をかしげた。
結城は美優のところまで歩いてきて強い力で抱きしめキスをした。
「俺は俺自身に怒っていたんだ。お前がそんなこと考えてるなんて思いもしなかった」
「・・・」
美優は黙って耳を傾けた。
「俺が、”お披露目の儀”を先延ばしにした本当の理由は、お前を独占しておきたかったんだ」
「独占?」
「お披露目ってことは国民にお前を見せる儀式の事だ。可愛いお前を人前にまだ出したくなかったんだ。誰の目にも触れさせず、俺だけの美優でいて欲しかったんだ」
「・・・!!」
あまりの恥ずかしいセリフに思わず顔が赤くなる。
両手で美優は顔を隠した。
「でも、それでお前が不安になっていたのなら申し訳ない。昨日も泣かせてしまったようだしな。すまなかった」
そう言い美優に頭を下げた。
一国の王が頭を下げたのだ。
「やめてください!!わかりましたから!!頭をあげてください!」
美優は涙目になりながら懇願した。
「許してくれるか?」
「はい、私のほうこそすみませんでした」
「じゃぁ、仲直りだな」
「はい」
そう言い向かい合い二人は唇を再び重ねた。
美優の不安はこれでなくなったが、一国の王に頭を下げさせた責任について頭を抱えた。
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