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ウィザード、戦へ
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ある日の夜帰って来るなりウィザードはこう切り出した。
「リーゼ、今から戦に行くことになった」
「え?」
それが軍の仕事なのだから仕方のない事だった。
「い、いつお戻りですか?」
震える声でリーゼが訊ねた。
無表情なままウィザードは答えた。
「わからん。だが、隣国との戦だからそんなに遅くはならない」
「勝算はあるんですか?」
「俺を誰だと思ている鬼神ウィザードだぞ?」
ウィザードはふざけて言ってみせた。
しかし顔は怖いままだ。
「留守の間フィナン屋敷を頼む」
「はい、心得ております」
リーゼは驚いた。
これがいつもの光景なのだと。
将軍を務めているウィザードは度々戦へ赴く。
メイドたちも暗い顔をしている。
リーゼも俯いたままだ。
リーゼは明るく振舞うことにした。
「ウィザード様怪我などされないでくださいね!」
にっこり笑ってそう言った。
本当は心の中では(行かないで)と思っている。
だが、これは軍の責任者であるウィザードの仕事だ。
決して邪魔してはいけない。
その気持ちが通じたのかメイドたちも明るさを取り戻した。
「では、私たちは美味しいお弁当を作ります」
「・・・ピクニックに行くわけじゃないんだぞ?」
「うーん、私は屋敷を管理するしかできませんね」
「それはいつものお前の仕事だろうフィナン」
「私は、毎日神様にお祈りしながら待っています」
「ああ、リーゼが祈ってくれているのなら安心だな」
顔は怖いが優しいウィザードは皆に突っ込みを入れていく。
「リーゼ様が来られてから屋敷が明るくなったような気がします」
「そんなことありませんよ!」
「皆さんがもともと明るい方達だから屋敷が明るいんですよ」
「リーゼ様二階で少しの間お2人で過ごしてください」
「はい」
リーゼとウィザードは二階の夫婦寝室へ行った。
そして抱き合った。
「無事に帰ってきてくださいね!?」
「それは・・・約束できないな・・・」
「それではあまり無茶なさらないでくださいね?」
「ああ」
「リーゼ、どこにも行かずこの屋敷で待っていてくれるか?」
「当り前じゃないですか!私の居場所はウィザード様のお傍です」
「・・・それなら良いが」
(おかしなウィザード様)
ウィザードの謎の発言に困惑した。
その発言の意味は後々知る事になる。
「リーゼからまだ好きだと言ってもらっていない」
「!」
「聞かせてくれないか?」
「私は・・・ウィザード様が好きです・・・」
真っ赤になりながらそう言われるとウィザードは嬉しくなった。
「その言葉は本当か?」
「は、はい」
「これでやる気が出た」
そう言い口の端を上げてニヤリと笑った。
(うん、笑ってもやっぱり怖い顔だわ)
口にこそ出さないがリーゼはそう思った。
ウィザードは荷物を鞄に詰め始めた。
そうしてリーゼにキスをした。
「行ってくる」
「はい、行ってらっしゃいませ」
リーゼがそう言うとウィザードは急いで屋敷から出て行った。
「リーゼ、今から戦に行くことになった」
「え?」
それが軍の仕事なのだから仕方のない事だった。
「い、いつお戻りですか?」
震える声でリーゼが訊ねた。
無表情なままウィザードは答えた。
「わからん。だが、隣国との戦だからそんなに遅くはならない」
「勝算はあるんですか?」
「俺を誰だと思ている鬼神ウィザードだぞ?」
ウィザードはふざけて言ってみせた。
しかし顔は怖いままだ。
「留守の間フィナン屋敷を頼む」
「はい、心得ております」
リーゼは驚いた。
これがいつもの光景なのだと。
将軍を務めているウィザードは度々戦へ赴く。
メイドたちも暗い顔をしている。
リーゼも俯いたままだ。
リーゼは明るく振舞うことにした。
「ウィザード様怪我などされないでくださいね!」
にっこり笑ってそう言った。
本当は心の中では(行かないで)と思っている。
だが、これは軍の責任者であるウィザードの仕事だ。
決して邪魔してはいけない。
その気持ちが通じたのかメイドたちも明るさを取り戻した。
「では、私たちは美味しいお弁当を作ります」
「・・・ピクニックに行くわけじゃないんだぞ?」
「うーん、私は屋敷を管理するしかできませんね」
「それはいつものお前の仕事だろうフィナン」
「私は、毎日神様にお祈りしながら待っています」
「ああ、リーゼが祈ってくれているのなら安心だな」
顔は怖いが優しいウィザードは皆に突っ込みを入れていく。
「リーゼ様が来られてから屋敷が明るくなったような気がします」
「そんなことありませんよ!」
「皆さんがもともと明るい方達だから屋敷が明るいんですよ」
「リーゼ様二階で少しの間お2人で過ごしてください」
「はい」
リーゼとウィザードは二階の夫婦寝室へ行った。
そして抱き合った。
「無事に帰ってきてくださいね!?」
「それは・・・約束できないな・・・」
「それではあまり無茶なさらないでくださいね?」
「ああ」
「リーゼ、どこにも行かずこの屋敷で待っていてくれるか?」
「当り前じゃないですか!私の居場所はウィザード様のお傍です」
「・・・それなら良いが」
(おかしなウィザード様)
ウィザードの謎の発言に困惑した。
その発言の意味は後々知る事になる。
「リーゼからまだ好きだと言ってもらっていない」
「!」
「聞かせてくれないか?」
「私は・・・ウィザード様が好きです・・・」
真っ赤になりながらそう言われるとウィザードは嬉しくなった。
「その言葉は本当か?」
「は、はい」
「これでやる気が出た」
そう言い口の端を上げてニヤリと笑った。
(うん、笑ってもやっぱり怖い顔だわ)
口にこそ出さないがリーゼはそう思った。
ウィザードは荷物を鞄に詰め始めた。
そうしてリーゼにキスをした。
「行ってくる」
「はい、行ってらっしゃいませ」
リーゼがそう言うとウィザードは急いで屋敷から出て行った。
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