暗殺者と少女

ライン

ラインは眠っているミーナを鎖でつなぎ家を出た。
仕事の件でどうしても行かなければならいない場所があったからだ。
場所は警察署だ。仕事後の報告に行かなくてはならない。
「今回はいつもより残虐な殺し方をしたものだな・・・後処理が大変だったぞ」
「・・・」
そう言われラインは黙った。
「まぁ、いい。それより保護した娘はどうした？」
「家に連れ帰った」
「・・・何故？」
警察署長は不思議そうに尋ねた。
「あれは、もともと俺のものだったから」
「？相変わらずよくわからないことを言うな。その娘が無事ならいい親元へ帰してやれ・・・」
「俺たちに親はいない」
ラインがここまで話してようやく合点がいったようだった。
「お前が探していたミーナという娘だったのか？」
「ああ」
「だから、あいつは帰る場所なんてないんだ。俺のそばに置いておく」
「お前の傍って・・・一番危険じゃないのか！？」
「・・・」
フッと笑いラインは部屋から出て行った。
その笑みを見た警察署長は背筋に冷たいものを感じていた。
（ミーナという娘・・・気の毒だな。あんな奴に執着されて・・・）
警察署長は裏では暗殺リストを作る仕事をしている。
もちろん仕事後の片づけにもいくが今回みたいなことは初めてだった。
それほど残虐な殺し方をしていたのだ。
一緒に片付けに行った警官が吐いてしまった。
実を言うと警察署長も吐きそうになった。
部下の手前何とか堪えたが・・・。
「しばらくあいつには休暇を出そう」
彼はそう呟いた。

家に帰ると鎖につながれたミーナが何とか家から出ようと必死にもがいていた。
鎖の長さは長くしてあった。トイレや洗面、風呂にも入れるように気を回したつもりだったが彼女はそんなことより何とかして鎖をはずすことを優先させたようだ。
「ただいまミーナ」
「・・・これ、外して」
「ただいま」
そう凄まれミーナは小さな声で言った。
「おかえ・・・り・・・」
「うん」
「寂しくなかったか？不便はなかったか？あっ、新しい服買ってきたぞ。着て見せてくれ」
今朝の事なんてなかったかのようなラインの態度にミーナは怒りを覚えた。
「そんなことよりこれ外して！！」
「外したらミーナ逃げちゃうだろう？」
飄々と言ってのけるあたりがまた憎いらしい。
「当り前じゃない。だって、またあんなことされるかもしれないじゃない！それに私の育ての親を殺しておいて・・・」
「だから、あいつらは人身売買の犯人何だって・・・よく考えてみろよ。あいつらと一緒にいる間おかしいと思ったことは無かったか？お前を守るためとか言ってあんなところに閉じ込めるか？」
（確かにおかしいと思ったことはあったわ）
「他の部屋にも同じように鳥かごがあったぞ。きっと他にもお前のような娘がたくさんいたんだろう」
でもそう簡単に信じれない。
「・・・皆そうだ。優しいふりをして洗脳して絶対的な信頼を得る。そうすることで逃げることを防ぐ。そうして高い教養を身につけさせ他の貴族の慰め者として売り飛ばす」
「その話本当なの・・・？」
「ああ」
ラインはそう短く答えた。
「それよりこの服を着ろ、ずっとシーツに包まっているつもりか？俺はまた襲ってもいいが・・・」
「・・・」
ミーナは黙ってラインが買ってきた服を着ようとしたが鎖が邪魔でうまく着替えられない。
「・・・とりあえず逃げないから着替える間だけでも鎖をはずして」
「・・・もし逃げようとしたら足の健を切るからな」
その言葉はきっと嘘じゃないだろう。彼なら平気でやるに違いない。
ミーナは無言でうなずいた。