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2章
アナザーゲートキーパーズ 『14年後の世界』
しおりを挟むユウヤが驚いて言う
「え!?監視をっ!?」
ユーノスが言う
「ああ、ゲートキーパーズのメンバーは全員あの作戦の後から監視がされていた 聖域の中でも そこを出た後も …今日までずっとな?」
ユウヤが言う
「そ、そうだったんですか…」
ユーノスが言う
「それはユウヤ君も同じだ 如何に私の古い知り合いであっても 特別扱いをする事は出来なかった …すまなかったな」
ユウヤが苦笑して言う
「いえ 大丈夫です …そうですよね?疑われるのは当然ですゲートキーパーズは… 人間とヴァンパイアの組織だったんですから… …あ、それじゃ?」
ユウヤが気付いて言う
「他のメンバーは?」
ユウヤが思う
(皆は?一体どうしてるんだ?今は…?)
ユーノスが言う
「彼らのその後の足取りに付いては… 一応、一般市民と言う事で 彼らの個人情報には守秘義務があり詳しくは伝えられないのだが… ゲートキーパーズのメンバー5名は それぞれの故郷へ戻り問題なく生活している」
ユウヤが思う
(5名… ヤウとキウとラシェ… それからユキとテール …そっかゲートキーパーズの皆は全員)
ユウヤがホッとする ユーノスが言う
「唯1人 …ゲートキーパーズのリーダーであったテール殿だけは」
ユウヤが一瞬驚いて言う
「えっ?…あ!」
ユウヤが思う
(そうかっ 5名って言うのは俺を入れての5名だっ …なら後の1名とされた そのテールはっ!?)
ユーノスが間を置いて言う
「故郷のミルス街へ戻った後 …行方不明となってしまった」
ユウヤが驚いて言う
「行方不明っ!?」
ユーノスが言う
「現状確認の取られない彼に関しての守秘義務は無い従って詳細を伝えるが 彼は作戦が終了した あの日から3日後に釈放された… その際ユウヤ君から彼へ宛て預かっていた伝言は 伝えておいたよ」
ユウヤが思う
(伝言… 俺がヴァンパイアの遺体処理に行くので伝えられなかった事… 俺は故郷のミルス街で作戦の後始末を手伝う もし俺を許してくれるのなら酒場のマスターに名前と居場所を伝えておいて欲しいと …そうしたら俺がテールに会いに行くから…と …けど、結局マスターからテールの名前を聞く事は無かった)
ユーノスが言う
「彼の耳にはしっかり届いた筈だが彼はまず聖域を出た その足でミルス城へと向かった」
ユウヤが言う
「ミルス城へ?」
ユウヤが思う
(ミルス城… 正確に聞いた訳じゃないけど多分ミルス城はリックの城だ… でも?)
ユーノスが言う
「しかしミルス城には… いや、何処の城もそうだが現在は警察が厳重に警備を行っており部外者の侵入は許されていない 従って彼は文字通り門前払いを受け その場を去った… そして次に向かった先は」
ユーノスがユウヤを見る ユウヤが疑問する ユーノスが苦笑して言う
「今日、ユウヤ君が向かったのと同じくゲートキーパーズのアジトとされていた あの建物だった」
ユウヤが言う
「なるほど… そうですね リックのミルス城へ入れなければテールなら きっとアジトへ向かう筈です」
ユウヤが思う
(そうだよな?実際 自分の居場所を失った俺が向かった位なんだ テールなら尚更… 元々 あの場所はテールの家だと言っても過言じゃない)
ユーノスが言う
「そこで我々は彼を見失った」
ユウヤが呆気にとられて言う
「え?見失ったって…?」
ユウヤが思う
(見失うって?どういう意味だ?建物に入ったのなら その監視方法だって警察なら いくらでも…?)
ユーノスが言う
「彼には最初から多くの監視を付けていた あちらの建物に関しても… そもそも彼が戻るより以前に我々はあの建物の家宅捜索を行っていた 間取りから内装に至るまで他の出入り口の有無も含めて全て確認をしてあった」
ユウヤが言う
「その状態で?」
ユーノスが言う
「ああ それもあって今日ユウヤ君が あのアジトへ現れたと聴いて もしやと思ったのだが …ユウヤ君は その後 普通に建物から出て来てくれた それに建物内での行動も窓から確認された様子や予め取り付けていた盗聴器の内容からも何一つ不審な点は見受けられなかった」
ユウヤが苦笑して言う
「う…っ 盗聴器の内容 …あぁ 俺 独り言とかも言ってたし… 恥ずかしいな」
ユーノスが微笑して言う
「いや?とても素直な感想だったよ むしろ その録音を聞いて私は安心をした位だ」
ユウヤが照れ隠しに頭を掻く ユーノスが微笑した後言う
「しかし、そのユウヤ君とは異なり 彼の時は異様だった」
ユウヤが呆気に取られて言う
「…えっ?異様って?」
ユーノスが言う
「彼があのアジトへ入るのは多くの監視の目に… 正確に言ってしまえば5人の目に確認がされていた しかし、彼の姿は その後一度も窓には見えなかった しかも建物内に備えられていた録音機材には一切の音が残されていなかったんだ」
ユウヤが驚いて言う
「え?そんな…?」
ユーノスが言う
「ユウヤ君の時にはユウヤ君の独り言はもちろん足音やドアの開閉音 溜息の音すら機材は音を拾っていた それに あの建物の通路には割と多くの窓があり最初の部屋へ向かうだけでも 最低2箇所の窓を過ぎる事となるが… 彼の時には そこを過ぎる事も無かった」
ユウヤが呆気に取られる ユーノスが言う
「もちろん そちらの窓に関して言えば身を屈める等して我々の目に映らないようにする事も出来るだろう しかし彼は監視の目が付けられていたとは言え罪を負っている者ではないんだ 我々のその目から逃れる必要も無ければ息を潜める必要も無い それなのに彼があの建物へ入ってから5日間 我々は彼の一切を伺う事が出来なかった …そこで」
ユウヤが注目する ユーノスが言う
「6日目となったその日 我々は一般の者を装って彼を訪問した …しかし、建物の外から声を掛けても返答を得られなかった事から改めて家宅捜索へ踏み切ったのだが」
ユウヤが言う
「…テールは居なかった?」
ユーノスが頷いてから言う
「ああ… そして先ほども話した通り その時回収した録音機材からも我々の侵入以前に何者かが建物へ入った音などは 一切 記録されていなかった」
ユウヤが沈黙する ユーノスが言う
「…何か心当たりはあるだろうか?」
ユウヤが視線を落としたまま言う
「…いえ …まったく」
ユーノスが頷いて言う
「まぁ そうだろうな?あの建物の内部は調べ尽くしてある 抜け道や他の出入り口なども存在しない …そうと言うのに」
ユウヤが思う
(一体どう言う事だ?アジトへ戻った筈のテールが消えただなんて…っ!?)
ユウヤが言葉を飲み手を握り締める ユーノスがユウヤの様子を見て間を置いてから軽く息を吐いて言う
「…彼の捜索は これからも続ける予定だ」
ユウヤが言い掛ける
「あ、あのっ それではっ!」
ユーノスが微笑して言う
「もし何か分かれば その時はユウヤ君へも伝えよう …とは言え もちろん彼が無事見付かってくれさえすれば それはそれで彼はやはり一般市民と言う事で伝えられない内容も あるかもしれないが そうであろうとも彼の確認が取られたと言う事だけは伝えると約束する」
ユウヤが微笑して言う
「有難う御座います ユーノス警部」
ユーノスが頷いて言う
「うむ」
ユウヤが心配そうな表情で言う
「テール…」
ユーノスがユウヤの様子に表情を落としてから 思い出したように言う
「おっと、それから…」
ユウヤがユーノスを見る ユーノスが懐を探りながら言う
「すまない大切な事を忘れていた いや、もちろん彼の事を確認する事も重要な事ではあったのだが そもそも私が今夜お邪魔をしたのは…」
ユーノスが封筒を取り出して言う
「これをユウヤ君へ渡しに来たんだ」
ユウヤが向けられた封筒に疑問して言う
「えっと…?これは…?」
ユーノスが微笑して言う
「もちろん こちらはユウヤ君が この1ヶ月間我々と共に頑張ってくれた その作業に対する報酬だ」
ユウヤが驚いて言う
「えっ!?でも!?あれは元々俺が お願いして…っ!?」
ユーノスが言う
「確かにユウヤ君の参加はユウヤ君の志願ではあったが それを受け入れたのは我々警察だ そうとなれば我々と共に同じ作業に勤しんだユウヤ君へ相応の報酬が宛がわれるのは当然だ」
ユウヤが慌てて言う
「いえっ そんなっ 受け取れません!」
ユウヤが身振り手振りで否定して見せる ユーノスが苦笑し ユウヤの手を取り封筒を握らせて言う
「いや、ユウヤ君 君には これを受け取る権利があるのだから受け取りなさい」
ユウヤが呆気に取られて言う
「受け取る権利…」
ユウヤの脳裏にユキの言葉が蘇る
ユキが言う
『仲間じゃないって言うなら受け取らなくても良いけど …それならもちろん アジトへ戻る車にも乗らないでくれる?』
ユウヤが封筒を見詰めて思う
(これも 同じか…)
ユウヤが苦笑してからユーノスへ向いて言う
「…分かりました 有難う御座います」
ユーノスが微笑して頷いて言う
「うむ ご苦労だったな?」
ユウヤが微笑して言う
「はい それに… 俺、やっぱり参加出来て良かったです …最後まで自分の手で終わらせたいと …責任を持ちたいと思っていたので」
ユーノスが言う
「そうか …やはり親子か」
ユウヤが呆気に取られて言う
「え?」
ユーノスが微笑して言う
「そんな所は本当にタカヤにそっくりだ」
ユウヤが気付いて言う
「あ… そ、そうですか?俺自身は… あまり親父の事は覚えていないんですが」
ユーノスが苦笑する ユウヤが言う
「それに俺は 結局… 何も…」
ユウヤが思う
(何も得る事は出来なかった 親父と違って家族を得る事も… 守る事さえ…)
ユーノスがユウヤを見る ユウヤが軽く笑って言う
「あっ でも その…っ た、助かりました!このお金!」
ユウヤが封筒を見てから改めて言う
「明日から働く先を探そうと思っていたので これがあれば しばらくは職探しに専念出来そうです 俺… 今までちゃんとした仕事に就いていなくて バイトの掛け持ちばかりしていたもので… だから今度は… しっかりした所を探さないと」
ユーノスが言う
「バイトの掛け持ちをしていたと言うのは ユウヤ君は… 警察学校へ通っていた為 …と言う事だろうか?」
ユウヤが衝撃を受けて言う
「うっ!…ご、ご存知だったのですね?」
ユーノスが微笑して言う
「タカヤの友人として気にしていたと言う事もあったが 実際はゲートキーパーズのメンバーとしての確認でな?」
ユウヤが苦笑して言う
「あぁ… それじゃ もしかして… 成績なんかも?だとしたら」
ユーノスが言う
「いや、流石にそちらまでは確認していないが 昨年は警察官の試験を受けなかったそうだな?実の所もし、ユウヤ君が試験を受けていたら 私の方でも力を貸そうと思っていたのだが …と言っても それ程大幅な点数アップは難しいが」
ユウヤが言う
「そ、そうだったんですか?有難う御座います… けど… 多分ユーノス警部のお力をお借りしても俺は駄目だったかな…?いや、多分 駄目でした 俺… 本試験前の模擬テストで落第点だったので… それで止めたんです …もし、そんな状態で お力を借りたりなんかしたらユーノス警部の顔にまで泥を塗る事になる所でした …ホント良かった…」
ユウヤがホット息を吐く ユーノスが言う
「…それで警察官にはならずに ゲートキーパーズのメンバーへ?」
ユウヤが一瞬呆気に取られてから言う
「あ、いえ それとこれとは…っ でも… そうですね?俺はそれで… 警察官になる夢は諦めて自分自身の力で貴族を退治しようと …出来る様になろうと思って」
ユウヤが思う
(ああ… そうだった それで俺は…)
ユウヤが言う
「銃は …昔 親父に貰った物があったので まずは その銃の腕を磨こうと …賞金稼ぎをやろうと思っていたんです そうしたら その時バーのマスターにゲートキーパーズのアジトが ミルス街にあるって話しを聞いて… 最初はそれで話をしようと… 依頼をしようと思ってミルス街へ向かったのが切欠でした」
ユーノスが言う
「なるほど?ゲートキーパーズのメンバーになるのではなく 依頼をするつもりで…?」
ユウヤが言う
「はい、それで… 話の流れでメンバーになったんですが… 俺はゲートキーパーズに入られて良かったと思いました お陰で この街の貴族を退治することも出来ましたし ただ依頼をするんじゃ無くて俺自身も… 一緒に戦う事が出来ましたので」
ユウヤが思う
(そうだ俺は… 俺を含めたゲートキーパーズの人間たちは大して役に立たなかったかもしれない 貴族を退治したのはゲートキーパーズのヴァンパイアたちだ …けど 俺はそのメンバーの1人だった だから… 否定はしない 俺も一緒に戦ったと言う事を)
ユーノスが言う
「確かに各街の貴族たちを退治したのは我々警察ではなく ユウヤ君たちのゲートキーパーズだったな?世論はもちろんだが あの頃は我々でさえゲートキーパーズの活躍を影ながら称えていたよ 何せユルス街では その貴族に捕らえられた警察の者たちを助け出す依頼をしたのだからな?はっはっは…」
ユウヤが苦笑して言う
「そ、そう… ですね…」
ユウヤが思う
(そうだったな… そんな事もあった あのユルス城で… ヴィンの城で …それで その時ヴィンが仲間になって 俺は そのヴィンの獲物になったんだよな?それも やっぱりゲートキーパーズのメンバーになった時と同じで話の流れで…?いや あれはもう… 強制以外の何物でもなかったかもしれないけど…)
ユウヤが苦笑する ユーノスが言う
「それでユウヤ君は…」
ユウヤがハッとして言う
「あ、はい?」
ユーノスが苦笑して言う
「今でもやはり ゲートキーパーズの方が良いのかな?」
ユウヤが呆気にとられて言う
「え…?あ、いやゲートキーパーズは もう…」
ユウヤが思う
(もう 無くなってしまったんだ …俺が 壊した)
ユウヤが表情を悲しませる ユーノスが言う
「いや、つまり私が聞きたいのは …そうだな?ここで濁していてもしょうがない 単刀直入に聞くが …ユウヤ君?」
ユウヤが疑問して顔を上げて言う
「はい?」
ユーノスが微笑して言う
「警察官にならないか?」
ユウヤが呆気に取られて言う
「…は?」
ユーノスが言う
「私はユウヤ君を我々メルス警察の仲間へと加えたいんだ」
ユウヤが呆気に取られた状態から慌てて言う
「え…?…えぇええっ!?いえっ!で、でも 俺っ!本当に点数が悪くて…っ!」
ユーノスが軽く笑って言う
「あっはははっ まぁ… そちらは困ったものだが」
ユウヤが衝撃を受け苦笑して言う
「う…っ は、はい… すみません… 仮にも警察官の息子でありながら 自分でも… 恥ずかしいです」
ユーノスが言う
「いや、しかしな?確かに試験は大切だが あの試験はやはり警察官と言うよりも刑事に必要な知識の方が多いと言うのも事実なんだ」
ユウヤが疑問して言う
「え?」
ユーノスが言う
「警察官と刑事は似て異なる者であり 刑事は難解で大きな事件を解決する 警官はより身近な事故や事件を解決する …従って今回のテール殿の失踪に付いては我々ではもうお手上げとなり街中の捜索に関しては協力するが その他 本格的な捜査の方は刑事たちへ任せる事となった」
ユウヤが言う
「そ、そうですか… あっ で、ではっ 俺もっ!出来るだけ俺の方でも街中を注意して見るようにしますっ もしかしたら彼らのミルス街では無い街へ …この街にいると言う可能性も」
ユーノスが頷いて言う
「そうだな?そうやって街中の巡回パトロールを行い 小さな事件から人探しまで… そう言った より身近な所で人々の平和と安全を守る それが各街の警察官の在り方であると 私は思うのだよ」
ユウヤが呆気に取られて言う
「な… なるほど そう… かもしれませんね?」
ユーノスが微笑して言う
「ユウヤ君には この世界を救うと言うほどの大きな事を成し遂げてもらった その様なユウヤ君へ言うのも失礼かもしれないが… 君には そう言った大きな事件よりも小さな… とまでは言わないが このユルス街を守る程度の範囲である 警察官の仕事が向いていると思うんだ」
ユウヤが呆気に取られる ユーノスが言う
「それに このユルス街の警察署へ警察官候補生として入る分には筆記試験は… 一応はあるが重要なのは実地実技試験となる この街はユウヤ君の生まれ故郷だ そちらの試験であるなら きっと上手くこなせるのではないだろうか?」
ユウヤが言う
「は、はい… この街で行われる模擬逮捕試験だったら… 多分…っ」
ユウヤが思う
(警察学校で行われた試験では 俺は当日渡された資料を読み解く事が出来なくて… おまけに やっと犯人役へたどり着いた時には頭に叩き込んで居た筈の犯人逮捕における手順や射撃技術なんかが全て吹っ飛んで散々な結果だった… …けど、今なら資料の読解は兎も角 他の事へ対する心構えなんかは大丈夫な気がする)
ユーノスが微笑して言う
「警察官候補生の試験には期日なども無い応募さえ行えば いつでも受けられる一度本気で考えてもらえないか?もちろん正規の警察官試験を受けるのも良い どちらであっても私は協力させてもらうからな?」
ユウヤが微笑して言う
「有難う御座います ユーノス警部 …では本気で考えてみます」
ユーノスが頷いて言う
「うむ それでは 私は そろそろ」
ユーノスが言う
「長居をしてしまって すまなかった 良い返事を待っているよ」
ユウヤが言う
「こちらこそ 本当に色々と有難う御座います」
ユーノスが微笑して言う
「警察関係の事以外でも何かあれば いつでも声を掛けてくれ タカヤはもちろん ユウヤ君にも我々は世話になった」
ユウヤが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「俺はそんな… けど、そう言って頂けると …救われます」
ユーノスが苦笑してから言う
「…余り自分1人で抱え込まない様にな?」
ユウヤがハッとした後 微笑して言う
「…はい」
ユーノスが頷き部屋を出て行く
翌日
ユウヤが街中を見渡しながら歩いていた状態から立ち止まり息を吐いて思い出す
ユーノスが微笑して言う
『警察関係の事以外でも何かあれば いつでも声を掛けてくれ』
ユウヤが苦笑して言う
「あそこまで言ってくれたのなら本当に… 良いって事か?」
ユウヤが顔を向ける 視線の先に警察署がある ユウヤが一度視線を逸らして考えてから 気を取り直し 警察署の入り口へ向かう
ユウヤの独白
≪ こうして俺は幼い頃からの夢を1つ叶える事となった いや、2つ目か… ≫
ユーノスが微笑して言う
「おめでとう ユウヤ君 …いや、ユウヤ巡査」
ユウヤが真新しい警察官の格好でユーノスのデスクの前に居て苦笑して言う
「有難う御座います… ユーノス警部」
ユウヤの独白
≪ でも、何だか夢のような気がして… 明日 目が覚めたら これも全て 夢だったとか…?それで… ≫
ユーノスが言う
「どうした?もっと喜ぶかと思っていたのだが?」
ユウヤが慌てて言う
「いえっ すみませんっ その…っ 何て言うか… まだ夢みたいで実感が沸かないんです」
ユーノスが嬉しそうに言う
「何だ、そう言う事か まぁ今はそうかもしれないが 明日からは早速、街のパトロールへ向かってもらうからな?」
ユウヤが言う
「はいっ」
ユウヤの独白
≪ その明日にはヴィンやリック… テールたちも皆居て 俺は… 警察官じゃなくて …やっぱりゲートキーパーズのメンバーで… ≫
ユーノスが言う
「今日の所は各部署への挨拶回りを兼ねて館内の施設を確認しておくと良い …難なら早速射撃場で訓練をしても良いし 少し離れているが この街の拘留所へも行って様子を見て来るも良し」
ユウヤが言う
「あ、はいっ」
ユウヤの独白
≪ いや?もしかしたら俺は そのゲートキーパーズのメンバーだったって事すら… ≫
ユーノスが言う
「拘留所へ行くのなら署の車を使っても構わないからな?しかし、正式にはユウヤ巡査の登録は明日の朝からと言う事になるから 街中で何かあったとしてもパトカーのサイレンを鳴らす事はしないように 現状でそれを行うと偽装罪になってしまう そして、私も偽装補助罪だ」
ユウヤが苦笑して言う
「そ、そうですね…?では… 取り合えず館内の確認からしてきます」
ユーノスが言う
「うむ」
ユウヤが言う
「失礼します」
ユウヤが立ち去ろうとして気付き ユーノスへ向き直る
ユウヤの独白
≪ いや、そうだとしたら 俺はきっと警察官になれた この夢を心から喜んだ筈だ… だから≫
ユウヤが敬礼をする ユーノスが微笑して敬礼を返す ユウヤが敬礼を解除して その場を後にする ユーノスがユウヤの後姿に苦笑する
ユウヤの独白
≪ だからこれは… 残念だけど 全て現実なんだと… 俺は そう 諦めた ≫
夜 ユウヤの家
ユウヤがリボルバーを見詰めて言う
「親父… 母さん… 俺は… 父さんと同じ警察官になったよ それに… 母さんの仇を… ヴァンパイアを退治したんだ… 喜んでくれる …かな?」
ユウヤが表情を落とす ユウヤの前には家族の写真がある
ユウヤの独白
≪ そもそも俺は… 何をしようとしていたんだ?母さんの仇を取る為にヴァンパイアを退治したかった… でも、あの記憶はとても曖昧で 親父が何故ヴァンパイアを敵視していたのかさえ… 俺は分からないんだ… ≫
ユウヤが写真を手に取って言う
「親父… 本当に死んでしまったのか?誰にも見付からない場所で …1人で?…俺を残して」
ユウヤの独白
≪ 警察はあの時 聖域に避難した住民を全て把握していた 万が一に備えてと言う事だったが その名簿の中にも… 親父の名前は無かった… もしかしたら限られたその場所でなら 会えるんじゃないかと 心の何処かで期待していたが 現実的に考えればヴァンパイアを追って向かった警察官が10年以上行方知れずとなれば 結果は分かっていた…≫
ユウヤが苦笑して言う
「…それでもさ?せめて… 遺品だけでも …骨一本でも見付かれば母さんと一緒の墓に 入れてやれたのにな?一体何処で?」
ユウヤが写真を置いて息を吐き 何気に時計を見てハッとして言う
「あっ まずい 初日から遅刻なんかしたら大変だっ!早く寝ようっ!」
ユウヤが慌てて立ち去る
ユウヤの独白
≪ 翌日から俺は警察官として 多忙な日々を過ごした ≫
ユウヤが驚いて言う
「えっ!?こ、これを全部ですかっ!?」
ユウヤの周囲に書類の山がある ユーノスが苦笑して言う
「ああ、すまないが頑張ってくれ …何しろヴァンパイア退治が終わった途端ごっそりと警察官が減ってしまってな?」
ユウヤが言う
「え!?ヴァンパイア退治が終わったと言うのに何故!?」
ユーノスが言う
「ああ、それは あの一件で本望を遂げたと 大部分の者が依願退職をしてしまったのだよ」
ユウヤが驚いて言う
「えぇえっ!?そ、そんな…っ」
ユウヤが思う
(た、確かに… ヴァンパイア退治の作業や その後の作業を行っていた警察官たちは皆… 家族や大切な人をヴァンパイアに奪われたと言う人が多かったけど… だからって?)
ユウヤが言う
「だ、だからって… 何も警察を辞めなくても…?」
ユーノスが苦笑して言う
「ヴァンパイアの居なくなった平和な世界で平穏に暮らしたいとな?皆 大方それに近い事を 言って去って行った」
ユウヤが言う
「平和な世界で平穏に… なるほど、それは確かに そうかもしれませんが…」
ユウヤが思う
(仇を討ったから それで… 全て忘れて1からやり直そうと…?その気持ちは分からないでもないけど)
ユーノスが言う
「だからと言ってな?その平和になった世界の平和を維持するのが 警察のそもそもの勤めである訳だから やはり警察官が激減してしまった 現状は とても困った状態なんだ… ユウヤ君が1人でも入ってくれて助かったよ」
ユウヤが言う
「あ…」
ユウヤが思う
(…なるほど そう言う事だったのか)
ユーノスが苦笑して言う
「いや、まぁ… だから声を掛けたと言う訳ではないんだがな?はっはっは …あ、では この書類と午後には街中のパトロールを宜しく頼む それで もし退社時間までに余裕があるようだったら…」
夜
ユウヤが署内で書類に向かっている 先輩警察官が苦笑して言う
「ユウヤ巡査 そんなに頑張らなくても…」
疲れを見せていたユウヤが ハッと気を取り直して言う
「あ、いえっ 自分は新人で!…ユーノス警部のお力添えで警察官になった様な者ですから!これ位やりませんと!」
ユウヤの独白
≪ 俺がユーノス警部の知り合いだと言う事は 俺がゲートキーパーズのメンバーだったと言う事もあり この街だけに留まらず他の街の警察にも知れ渡っていた …だから俺を優遇してくれたユーノス警部の為にも俺自身の保身の為にもと 俺は出来るだけ他の警察官よりも 率先して仕事を行っていた ≫
先輩警察官が微笑して言う
「そうか それなら…」
ユウヤの前に書類の山が追加される ユウヤが驚く 先輩警察官が笑んで言う
「悪いな!先輩の俺の分までやってくれるだなんてな?それじゃ宜しく頼むわ!後輩!」
先輩警察官が鼻歌交じりに立ち去って行く ユウヤが苦笑して言う
「あ… あぁ…」
ユウヤが苦笑して思う
(後 少しだったのに…)
ユウヤが肩を落としてから気合を入れ直して作業に向かう
ユウヤの独白
≪ お陰で本当に多忙だった… でも そのお陰で俺は現実の罪悪感から逃れる事が出来ていた 1人で何もしないで居る時間が出来ると… すぐに あの楽しかった日々を思い出してしまう… 彼らの事を… だから、これがずっと続くのも悪くは無いかと… しかし、俺のそんな願いは長くは続かず ≫
先輩警察官が衝撃を受けて言う
「えっ!?な、なんで…っ!?」
ユーノスが書類を叩き付けて言う
「分からないと思ったか?まぁ 最初の内は多少の新人イビリは仕方がないと そして、これも ユウヤ巡査の強行訓練になるかとも思って見逃していたが 君は自分が出来る範囲さえもユウヤ巡査へ押し付けているだろう?」
先輩警察官が言う
「そんな事はっ!」
ユーノスが言う
「そんな事は?無いと言うのかね?与えられた仕事をこなす事もせず行う仕事にも不備が多い そして君の勤務態度はとても乱れている」
先輩警察官がハッとして慌てて ずれていたネクタイを直す ユーノスが言う
「…これは今 警察全体にも言えている事だが あのヴァンパイア退治が完了してから気が弛んでいるんだ …しかし、それも時間が立つにつれて少しずつ戻って来たが 君はあの頃と相変わらずで …むしろ悪化しているな?ここまで来れば もう後は無い」
先輩警察官が言葉を失う ユウヤが呆気に取られた状態から言い辛そうに言う
「あ、あの… 俺が… いえっ 自分が書類処理の手伝いを願い出たので…っ」
ユーノスが言う
「ああ、お陰で 随分と書類の処理が早くなった様だな?ユウヤ巡査?」
ユウヤが微笑して言う
「は、はいっ お陰さまで!」
ユーノスが微笑して言う
「これなら午後のパトロールの範囲を半分程度にすれば 彼の書類も全て終わらせた上で定時に… 少なくとも1時間の残業程度で帰宅出来るだろう?」
ユウヤが呆気に取られて言う
「え?あ、はい… それは出来ると思いますが…?」
ユーノスが先輩警察官へ向いて言う
「と言う事だ 今日からユウヤ巡査のパトロール範囲の半分を君が受け持つ様に」
先輩警察官が怒りを押し殺して言う
「…分かりました」
先輩警察官が立ち去る ユウヤが呆気に取られてから ユーノスへ向いて言う
「あの… 本当に良かったのでしょうか?街中のパトロールは自分の様な新人の仕事で…?」
ユーノスが苦笑して言う
「ああ、まったく それさえも出来ないとなれば 彼の事は本当に考えなければならないな?」
ユウヤが表情を落として言う
「は、はぁ…」
ユーノスが気を取り直して言う
「まぁ、とりあえず そう言う事だ ユウヤ巡査は自分の受け持った仕事を しっかりこなしてくれれば それで良い …君の頑張りは今やこの署の者であれば誰もが知っている」
ユウヤが呆気に取られて言う
「え?」
ユウヤが思わず振り返る 署内の警察官たちが微笑している ユウヤが呆気に取られる ユーノスが微笑して言う
「と、言う事で もう必要以上に頑張らなくて良いからな?余り無理をして重要な時に倒れられでもしたら それこそ大変だ 警察官は身体あってのものだぞ?」
ユウヤが言う
「はい 分かりました」
ユウヤが敬礼して立ち去る
ユウヤの独白
≪ こうして俺は再び 何も無い時間を得る事になり そうなると… ≫
ユウヤの家
ユウヤがぼーっと手に持った試験管を蛍光灯の光に当ててから息を吐く
ユウヤの独白
≪ 俺の罪悪感に囚われる日々が また戻って来た… でも それも程なくして今度は… ≫
ユウヤが試験管をテーブルへ置き 椅子から立ち上がって言う
「…風呂でも入るか それで…」
ユウヤが思う
(少しは忘れられ…)
ユウヤが歩き始めた時 ドアがノックされる ユウヤが疑問して言う
「え…?誰だ…?」
ユウヤが時計を確認してから ドアへ向かい思う
(こんな時間に来る人なんて…?以前はユーノス警部が来たけど… あれは…)
ユウヤが言う
「はい?誰ですか?」
ユウヤがドアへ向かおうとしていた足を止め 視線をテーブルへ戻す テーブルには4本の試験管があり ユウヤが無印の試験管を見る ドアの外から声が届く
「ユウヤ君?…リマです」
ユウヤが驚き言う
「えっ!?」
ユウヤの視線が テーブルに置かれている試験管から 隣にある雑誌の表紙へ移され 呆気に取られて言う
「リ、リマって…!?」
リマが言う
「ご、ごめんね…?こんな時間に… その…」
ユウヤがハッとして慌ててドアの鍵を外しながら言う
「ああっ!いやっ!?」
ユウヤがドアを開ける ドアの前にリマが変装した姿で居て 顔を上げ一瞬微笑してから ハッとして視線を泳がせて言う
「こんな時間に迷惑だと思ったんだけど… 明日は、この街の仕事が終わったら すぐにヨルス街へ戻らなくちゃいけなくて… だから… でも、やっぱり迷惑だった?」
ユウヤが言う
「そんなっ まさか!?超売れっ子のモデルに家に来て貰えるなんてっ!?」
リマが苦笑して言う
「それじゃ… 少しだけ良いかな?中に入れてもらっても…?」
ユウヤが言う
「も、もちろんだよ!…あっ そっか!?どうぞ急いでっ!誰かに見られたら困るんだよな!?」
ユウヤがリマをドアの中へ通す リマが微笑してから部屋へ入る ドアが閉まる
ユウヤの独白
≪ リマが俺の家を訪ねる事は それからも割りと頻繁にあり… ≫
別の日
ユウヤがドアを開けた先 そこに居るリマが微笑して言う
「また来ちゃった」
ユウヤが微笑して言う
「うん 今日は仕事が早い時間に終わるって言ってたから …だからって言う訳じゃないんだけどさ?」
部屋の中に夕食の支度がされている リマが驚いてユウヤの顔を見る ユウヤが微笑して言う
「その… 今日って俺とリマが… 初めて会った日だから…」
ユウヤが思う
(…と言うのは 実は今日巡回パトロールで立ち寄ったワインの店で見掛けた広告を見て思い出した事だったんだけど)
ユウヤが苦笑して言う
「…けど、やっぱこう言う事 覚えてる男って ちょっとカッコ悪いかな?それに… あ、あのっ 別に そう言った変な意味合いは無くて!た、たまたま、今日…っ」
ユウヤが慌てる リマが微笑して言う
「あれ?なんだ… そんな意味合いが あってくれるならって…?」
ユウヤが呆気に取られて言う
「…え?」
リマがユウヤを見て微笑して言う
「嬉しい」
ユウヤがリマの微笑に見惚れて頬を染めるがハッとして慌てて言う
「あっ ああ!そ、それじゃっ 早速食べよう!?買ってきた物ばっかりだからさ?早く食べないと 冷めちゃうから…っ」
リマが微笑して言う
「うん!早速 食べよう!私、お腹空いちゃった!」
ユウヤが言う
「う、うん!」
ユウヤが言う
「飲み物は何が良い?」
リマが言う
「え?飲み物?」
ユウヤが言う
「エールもあるけど最近はウォッカとか流行ってるよな?リマはやっぱり そう言う流行ってるお酒とか好きなのかな?ってさ?」
リマが苦笑して言う
「そう言えば昔の私はいつも… 最新の流行物の話ばっかりユウヤ君にしてたもんね?」
ユウヤが言う
「うん …あ、でも良いんじゃないか?だってモデルは そういった流行物に敏感じゃないと やっていけないだろ?」
リマが言う
「うん そうだね そう言う意味では今は本当に毎日 新しい物ばかり目にしてる」
ユウヤが言う
「そうなのか… 毎日… 俺なんて逆に毎日古いものばかりを目にしてるよ?」
リマが言う
「え?古いものって?」
ユウヤが酒瓶からリマへ顔を向けて言う
「ああ だってさ?俺の仕事は人探しから物探し… 犯人探しだって全部過去の物を探す様なものだから見るものも資料も古いものばっかりだよ?…おまけに」
ユウヤが酒瓶の中からワインを取り出して言う
「好きな酒までさ?古ければ古いほど良いって言われるワインが今は一番好きで飲んでるんだ… ウォッカも試したけど なんか… 俺にはさっぱりし過ぎて味気ないって感じがするんだよな」
リマが言う
「さっぱりし過ぎて味気ない… そっか そうだね?流行り物は廃りも早くて現れては消えて行く…」
ユウヤが疑問して言う
「え?」
リマが苦笑して言う
「3ヶ月前には流行していた お洋服もね?そのたったの3ヶ月で流行が終わっちゃったりするの …本当 早過ぎて その良さに気付ける時間なんて無い位」
ユウヤが言う
「…そっか …あ、けどっ リマはそんな世界の中でも流行りに乗って その最先端で活躍してるんだもんな?ホント凄いよ!俺なんて とても付いていけそうに無いな?」
リマが言う
「…うん …だから ちょっと疲れちゃったかも」
ユウヤが言う
「え…?」
リマが言う
「ここに来てユウヤ君と話していると とても落ち着くの… 自分の街に戻るのが嫌になっちゃう位…」
ユウヤが呆気に取られている リマがユウヤの手にあるワインを見て言う
「…私も飲んでみたいな?ユウヤ君が好きだって言う そのワインを」
ユウヤがハッと我に返り手に持っているワインを見てから慌てて言う
「あ、ああ!そ、そう?それなら…」
ユウヤがワイングラスを用意し手際よくワインの栓を抜いてグラスへワインを注ぐ リマがその作業を見詰める ユウヤがワイングラスを向けて言う
「はい」
リマがハッとしてグラスを受け取ろうとして言う
「あ、有難う …えっと この細い所を持つの?」
ユウヤが一瞬疑問してから言う
「え?ああ そうだよ?そうすればワインの注がれている部分には触れないで済むだろ?…それから飲む前には こうやって…」
ユウヤが軽くワイングラスを回してから飲んでみせる リマが面白そうに見詰めて言う
「ふふふ… 凄い 何だか貫禄がある感じだね!」
ユウヤが呆気に取られ 苦笑して言う
「え?貫禄?いや、そんな… あぁ、でも こんな感じで飲むと 一番美味しいからさ?」
リマが微笑して言う
「うん!」
ユウヤが思う
(そっか… リマのご両親は亡くなってるし お婆ちゃんの家で暮らしていたんだっけ?それで お爺ちゃんは居なかったって言っていたから ワインを飲むのも見るのも初めてなんだな?俺は…)
ユウヤがヴィンやリック、デュークの姿を思い出す リマがワインを一口飲んで言う
「わぁ… ホント ヴォッカなんかとは違って凄く奥深い味が… …ユウヤ君?」
ユウヤがハッとして顔を上げて言う
「え?…あ!ど、どう?ワインの味は…?」
リマが言う
「ユウヤ君… 何か辛い事でもあった?」
ユウヤが言う
「え…?」
リマが言う
「なんだかとっても 寂しそうな顔してたから」
ユウヤが言う
「あ、ああっ ごめん そんな事無いよ?」
リマが苦笑して言う
「…同じだね?私たち」
ユウヤが言う
「え?」
リマが言う
「だから… うん!今日は私から白状しちゃう!」
ユウヤが言う
「白状って?」
リマが言う
「何からが良いかな?う~ん でも、やっぱり こっちから!」
ユウヤが疑問して言う
「こっちからって?」
ユウヤが思う
(こっちって?じゃぁ…?いや、それとも?逆側が 俺だって事か?)
リマが言う
「1つ目の嘘」
ユウヤが言う
「嘘?」
リマが言う
「…ううんっ 嘘って言うか そうじゃなくて… うん、間違えちゃってた事!…勘違いしちゃってた …って言うのかな?」
ユウヤが言う
「勘違い?」
リマが言う
「うん… 私… ね?モデルになる事が夢じゃ… なかったの」
ユウヤが呆気に取られて言う
「え…?いや?そんな事無いだろう?だって、リマがモデルになる為に一生懸命だったって事は当時の… 彼氏だった俺が一番良く知ってるよ 凄く勉強してたし健康的で良いスタイルを作ろうと色々やってただろ?食事制限だけじゃなくて運動とかストレッチとかもさ?」
ユウヤが思う
(そうだ それで俺と2人でランニングしたりもしたよな?俺も警察官になる為にトレーニングをしていたから その俺に付いて来られるのは凄いと思っていた)
リマが言う
「うん、それはね?一生懸命やってたよ?だからモデルになろうと頑張っていた事は嘘じゃないの だけどそうじゃなくて… 私が本当に目指していたのは」
ユウヤが言う
「リマが本当に目指していた事は…?」
リマが言う
「私は… 私のお母さんを目指してたの」
ユウヤがハッとして驚く リマが苦笑して言う
「馬鹿だよね?私… 本当に自分がなりたいと思っていたのは …なりたいって言うか近付きたいと思っていたのは 私のお母さんだった …ユウヤ君にも話したと思うけど 私のお母さんは 当時の街でもちょっと有名な位 綺麗な人だったみたいで… モデル業界のスカウトなんかも受けていたんだって?それを私、小さい頃から聞いていたから… だからそのお母さんに近付きたくて それが自分もモデルになる事だと思っちゃってたみたいなの …それで頑張ってたんだって 気付いた …そうしたら 今は… すっかり…」
リマが苦笑して息を吐く ユウヤが呆気に取られたまま言う
「…そうか 同じだ」
リマが言う
「え?」
ユウヤが言う
「俺も… そうなのかもしれない」
リマが言う
「え?ユウヤ君もって?私、一緒だって言ったのは ユウヤ君も私に隠し事してるんじゃないかなって事だよ?でも… ユウヤ君の場合は私に優しくしようとしてくれて 自分の抱えている事は いつも教えてくれないって言う… その相変わらずな所なんだけど?」
ユウヤが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「え…っ ああ!その事か?あ…ははっ けど、相変わらず… リマには すぐバレちゃうんだけどな?けどその… リマの今の話は?」
リマが言う
「うん、だからね?私… もう辞めようかなって?」
ユウヤが驚いて言う
「辞めるって… 何をっ?」
リマが苦笑して言う
「モデルの仕事」
ユウヤが表情を悲しめて言う
「そんなっ!折角ここまで頑張って来たのに?それは ちょっと… 勿体ないんじゃ無いか?確かにリマがモデルを目指したのは勘違いだったかもしれない お母さんに近付こうと思う気持ちがモデルの仕事に就くと言う事と勘違いしたって言う… けど、だけどさ?実際に なろうと頑張ったって必ずなれるものじゃないだろう?その… 例えば俺の場合は なろうと思って 頑張って勉強すれば誰でも きっとなれると思うよ?けど、リマの場合は…」
リマがユウヤを見る ユウヤが微笑して言う
「リマがリマのお母さんと同じくらい人を惹き付ける力を持っていたから… きっと お母さんと同じくらいリマには素質があったんだよ?それで、お母さんから継いだ その素質とリマの頑張りで得られたものなんだから」
リマが目に涙を浮かべて言う
「…ありがとう ユウヤ君」
ユウヤが微笑する
ユウヤの独白
≪ しかし、リマの決意は固く 程なくして人気絶頂であったモデルのリマは その世界から忽然と消えた… 平和になった世の中は彼女の急な引退に盛り上がり雑誌から新聞に至るまで その記者たちは こぞって彼女を追い回し …彼女もまた それから逃れる為に ≫
ユウヤがドアを開けた先にリマが居て ユウヤが直ぐに招き入れドアを閉める 記者たちがカメラのシャッターを切っている
室内
ユウヤがドアの外に聞こえるシャッター音に不満そうに言う
「…まったく 一般市民所か 仮にも警察官の家と分かっていてカメラを…」
リマが言う
「ごめんね… ユウヤ君…」
ユウヤが言う
「いや、リマが謝る事は無いよ 公務時間外であっても俺は警察官だから彼らがこれ以上踏み込んで来る様だったら住居不法侵入罪で現行犯逮捕出来るし リマは心配しないで いつでも ここに来て良いよ」
リマが微笑して言う
「うん… 本当にいつも有難う」
ユウヤが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「え?ああ、だから気にするなって?いつまで居ても良いからさ?」
リマが言い辛そうに言う
「それじゃ… ずっと… 居ても良い?」
ユウヤが外の様子を伺いながら言う
「ああ、構わないよ?」
リマが驚いて言う
「…え?本当?」
ユウヤが一度ドアを開け 外を伺ってからホッとしてドアを閉めながら言う
「うん… あ、もう諦めて帰ったみたいだ 彼らもリマがここに入れば明日まで出て来ないって 学んだかな?」
ユウヤがリマへ向き直る リマがユウヤに抱き付く ユウヤが驚いてリマを見る リマが顔を埋めたまま言う
「私… 何でもするから… だから…」
ユウヤが呆気に取られたまま言う
「え?リマ…?」
リマがユウヤを見上げて悲しそうに言う
「以前 私がユウヤ君に言った言葉 …あれを取り消させて貰えない?」
ユウヤが言う
「以前って それは…?」
リマが言う
「…これ以上ユウヤ君と一緒には居られないって …私はモデルになる為に生きるんだって 言った あれを…」
ユウヤが言う
「あ、ああ… あれか?それは…」
ユウヤが思う
(それは以前リマが俺と別れる時に言った言葉だ …それで俺は)
ユウヤが言う
「別に取り消さなくても?俺だって あの時は… 頑張れって言っただろ?リマなら絶対に夢を叶えられるってさ?それに実際リマはモデルになる夢を叶えたじゃないか?だから やっぱり 俺 応援して良かったよ」
リマが言う
「だけど私… その夢を叶える為に大切なものを失ったの 本当は何よりも… 1番大切だったのに」
ユウヤが呆気に取られて言う
「そんなに大切な…?」
リマが言う
「我侭だって分かってる… 自分の都合ばかりで こんな事言うのは はしたないと思う でも… 私には やっぱりユウヤ君しか居ない!」
リマが涙を浮かべる ユウヤが呆気に取られた状態から言う
「リ、リマ…?俺は…」
ユウヤが表情を落として思う
(俺はリマの事が好きだ だから こうして身を寄せられれば抱き締めてしまいたくなる …だけど それが出来ないのは俺が一度リマにフラれたからと言う訳じゃない 俺は…)
ユウヤがリマの肩を押さえて身を離して言う
「リマ… 俺は …リマの気持ちは とても嬉しいし 俺の方こそリマともう一度… でも 出来ないんだ」
リマが言う
「どうしてっ?」
ユウヤが言う
「俺は… 彼らを殺した 本当に多くのヴァンパイアたちを…」
リマが呆気に取られる ユウヤの脳裏に城から見た ヴァンパイアの大量の遺体の記憶が蘇る ユウヤが手を握り締めて言う
「だから 俺は 逮捕はされないけど 罪人なんだ」
リマが言う
「どうして?」
ユウヤがリマを見る リマが言う
「ヴァンパイアは人間の敵だったっ だからユウヤ君はっ!」
ユウヤが言う
「仲間のヴァンパイアだって居たんだっ」
リマが驚く ユウヤが言う
「…リマも もう知っているだろう?ゲートキーパーズには ヴァンパイアが居たって…」
リマが言う
「うん… だけど」
ユウヤが言う
「彼らは人間の敵なんかじゃなかった… むしろ人間とヴァンパイアの共存を望み その方法を探していたヴァンパイアまで居たんだ …それなのにっ」
ユウヤが思う
(俺が…)
リマが言う
「…ユウヤ君は 自分が許せないのね?」
ユウヤが言う
「許されて良い筈が無い」
ユウヤが思う
(増して 幸せになる資格なんか…)
ユウヤが驚く リマがユウヤを抱きしめて言う
「それなら 私も一緒に背負うから」
ユウヤが驚いてリマを見て言う
「え…?でも?」
ユウヤが思う
(リマにとってのヴァンパイアは お母さんの仇であった筈だ …けど、それも実際は)
リマが言う
「だから全部教えて?ユウヤ君が知ったヴァンパイアの事… 仲間だった その… ヴァンパイアの事も」
ユウヤが驚いて言う
「そのヴァンパイアの…?」
リマが言う
「私も少しは調べたよ?お母さんの仇だって思っていたから」
ユウヤが驚いて思う
(それじゃっ まさかっ!?)
リマが苦笑して言う
「…でも 結局 お母さんを あんな目に合わせたのは 人間だったんでしょう?」
ユウヤがリマを見る リマが言う
「ヴァンパイアは人の血を吸うけど… お母さんや お城へ集めた女性たちへ あんな酷い怪我を負わせたのは …あのお城に居た人間の貴族だった …他の街だってそうだった だから …ユウヤ君が悩んでいるのは そう言う事なんじゃない?」
ユウヤの独白
≪ リマにそうと言われただけで 俺の苦しみは半分近くにまで減っていた それは… 俺がリマに嘘をついていたから… そのせいもあったのかもしれないけど ≫
ユウヤが言う
「…そっか …知ってたんだな?」
リマが頷いて言う
「うん… それに その事は他の人たちだって きっと皆知ってると思う …だけど その貴族たちにだって ヴァンパイアが味方していたんでしょう?」
ユウヤが驚く リマが言う
「だって そうじゃなかったら いくら貴族に権力があったって ラウンスターク家のたった1家族で私たち人間を全て統括するなんて出来た筈無いもの 皆で逆らえば何とでもなったんじゃない?だって私のお父さんは立ち向かったんだよ?他のお父さんたちだって自分の奥さんや娘たちを取り戻そうとしたんだもの …だけど出来なかった それは」
ユウヤが言う
「…そうか ヴァンパイアが居たから」
リマが言う
「そうだよ ヴァンパイアが居たせいで… でも そうだよね?ユウヤ君の言う様に その貴族に味方したヴァンパイアを退治してくれたのは やっぱりゲートキーパーズのヴァンパイアだったって事だから… だからユウヤ君の言う事も… ユウヤ君が苦しいんだって事も分かるよ?」
ユウヤが言う
「うん… そうだな …そうなんだ だから俺は…」
リマが言う
「でも… これで人間だけの世界になったんでしょ?この世界でなら人間は自分たち以上の力を持つ事も使う事もなくなる… それでも きっと争いはなくならないと思う だけど少なくとも自分たちの力以上の力に制される事はなくなったんだから それは…」
ユウヤが言う
「うん… そうだな…?俺は ずっと …自分のやった事が 正しかったかどうかって事だけを考えていた でも …それ以外の視野で見るって事も 必要だったのかもしれない」
ユウヤが思う
(そうだ 確かに命を奪ったと言う事だけで考えるなら 俺のやった事は間違いになる …だけどヴァンパイアには人間を遥かに越える力と知能がある …その彼らに酷く劣る俺たち人間が 共存すると言う事は …やっぱり難しかった …いや)
ユウヤが言う
「…不可能なんだ 人間とヴァンパイアの共存なんて…」
ユウヤが思う
(無理なんだよ ヴィン… だから俺は選んだんだ 自分が人間であるから その人間の味方をする …ヴァンパイアを退治する)
リマがユウヤの手を包んで言う
「ユウヤ君」
ユウヤが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「ありがとう リマ… お陰で楽になったよ …すごく」
リマが苦笑して言う
「やっと 笑った」
ユウヤが呆気に取られて言う
「え?」
リマが微笑して言う
「久しぶりに見た ユウヤ君の笑顔」
ユウヤが言う
「え?いや… そんな?」
リマが言う
「ユウヤ君 作戦が終わってから ずっと辛そうで… 苦しそうで… それはもちろん遺体の処理なんかしてたって言うから そのせいかと思ってたけど そうじゃなかった… ずっと1人で悩んでいたんだね?」
ユウヤが呆気に取られた後苦笑して言う
「…ああ、ずっと苦しかったんだ」
リマが微笑してユウヤを抱いて言う
「もう 良いんだよ?」
ユウヤが表情を苦しめた後 リマを強く抱き締める
ユウヤの独白
≪ 俺はリマに救われた そして俺は 人間として もう一度 生きる事を考えた… リマと一緒に ≫
――14年後
警察署
ユウヤが書類を見ている
ユウヤの独白
≪ あれから14年… 俺はリマと結婚して 俺たちの間には子供も生まれた そして俺は 警察官として 今日も平穏に過ごしている ≫
ユウヤが書類の内容にホッとして言う
「今日の捜索願いは家族の… 猫?」
ユウヤがため息を吐いて苦笑して言う
「平和は平和でも警察を何だと…」
ユウヤが書類を置き立ち上がりながら思う
(でも、良いか?今日の巡回パトロールの時は塀の上なんかも しっかり見て置かないとな)
ユウヤが言う
「特徴は… 毛の色は黒か目はブルーで …とても可愛らしいって」
ユウヤが苦笑して思う
(それは特徴とは言わないんじゃ…)
ユウヤが歩きながら言う
「とは言っても猫の特徴なんて それくらいか?」
AJが走って来て叫ぶ
「ユウヤ先輩ー!ちょっと待って下さいッスー!」
ユウヤが立ち止まり軽く息を吐く AJが隣に到着して息を整えながら言う
「はぁ… はぁ… はぁ~ 間に合ったぁ!」
ユウヤが呆れて言う
「AJ… 君のその遅刻癖は何とかならないのか?」
AJが苦笑して言う
「あっはは… いつも サーセン ユウヤ先輩」
ユウヤが言う
「ああ、いつもいつも 一体どうして そんなに毎日遅刻をするんだよ?起きれないなら 目覚ましを使うなり誰かに頼むなりしないと駄目だろ?」
AJが言う
「あ、いや?起きてますよ?起きられては いるんッスけどね?」
ユウヤが言う
「え?それじゃ… 何で遅刻をするんだ?起きられているのなら…」
AJが苦笑して言う
「いやぁ~ ちゃんと起きてはいるんスけど~ なんっつーか ほら?やっぱ 朝の一発目の時は あんま動けなくって… そのせいかイクまでに時間かかっちゃうんッスよね~?」
ユウヤが呆気に取られて言う
「え?動けなくて 行くまでにって それは…」
AJが笑んで言う
「はいっ やっぱ朝は一発ヤってからじゃないと!その日1日のテンションが上がらないっしょ!?…ちなみにユウヤ先輩は朝の一発目は何分くらいでイケます?俺はいくらピストン頑張っても… いや、それ以前に挿れられる位まで勃たせるのに若干のタイムロスが…」
ユウヤが呆気に取られた状態からぷっと吹き出し笑い出す AJがユウヤの反応に驚き呆気に取られる ユウヤがAJを見ながら思う
(そう言えば以前もAJの様に そう言った事を物凄くオープンに話す人が居たよな…?)
AJが喜んで言う
「やったね!レアゲット!」
ユウヤが呆気に取られて言う
「…え?何を?」
AJが言う
「ユウヤ先輩が笑ったの!俺、初めて見たッスよ!これって激レア!」
ユウヤが言う
「え?…そうだったっけ?」
AJが言う
「そうッスよ!?ユウヤ先輩って人当たりは良くて優しいッスけど 全然 笑うって事をしないッスから… 俺、人を笑わせるのが好きなんで!今までだって色々と話題振ってたんスよ?けど ユウヤ先輩 全然 笑ってくれないんッスから」
ユウヤが言う
「あ… そうだったか?ごめん… 多分…」
ユウヤの独白
≪ リマのお陰で俺は1人の人間として 幸せに生きる事は出来ていた しかし だからと言って俺は一度だって彼らの事を忘れた事は無い …未だに消息の掴めないテールの事も ≫
ユウヤとAJが出動装備を整えている AJが言う
「けど、今日は ついにユウヤ先輩のツボを掴みましたからね!これからはバッチリッスよ!」
ユウヤがお守りの試験管を銃ホルダーへセットしていた状態で疑問して言う
「え?俺のツボを掴んだって?」
AJが言う
「隠さなくっても良いじゃないッスか!?ユウヤ先輩も真面目そうな顔して… やっぱ あっち系の話題が好みだったんッスね!?」
ユウヤが衝撃を受けて言う
「なっ!?ち、違うよ…っ!」
AJが言う
「またまた~!隠し事は無しッスよ!?俺ら一応コンビじゃないッスか!?」
ユウヤが言う
「それはそうでも さっきのは誤解で…」
巡回パトロール 車内
AJが運転しながら言う
「え?ゲートキーパーズ?」
ユウヤが外を見ながら言う
「うん… あ、もしかして知らないか?でも名前くらいは…?」
ユウヤが思う
(知ってるよな?何しろゲートキーパーズは あのヴァンパイア退治をした組織だと… 当時は誰もが知っていた …そもそも それ以前からゲートキーパーズは貴族を退治した人々の…)
AJが言う
「知らないッスね?」
ユウヤが驚いてAJを見て言う
「え?本当に?」
AJが言う
「はい 聞いた事も無いッスよ?けど、ユウヤ先輩がそこに居たって事は… つまり警察の中で そう言ったチームか何かが あったって事ッスか?」
ユウヤが呆気に取られつつ言う
「いや… 警察では無くて…」
ユウヤが思う
(そうか… 14年も経った今ではヴァンパイア所か貴族だって居ない… そんな この世界にはゲートキーパーズだって必要ない だから…)
ユウヤが苦笑して言う
「…いや、良いんだ」
AJがユウヤを見て言う
「え?」
ユウヤが外を見ながら言う
「今の世界には もう必要の無い組織だよ」
AJが言う
「組織?…って事は その… ゲートキーパーズって言うのは何をやってた組織なんッスか?」
ユウヤが言う
「うん なら… 正義の味方!…かな?」
AJが呆気に取られて言う
「はぁ?」
ユウヤが軽く笑って言う
「っははは…」
AJが呆気に取られたまま言う
「は、はぁ…?正義の味方ッスか…?けど、それって俺ら警察の事じゃないッスか?普通?」
ユウヤが言う
「うん… けど、警察じゃ手に負えない事があったんだよ 昔は…」
ユウヤが思う
(そう あの頃には まだ)
ユウヤが言う
「ヴァンパイアが居たからな?」
AJが呆気に取られて言う
「ヴァンパイアが…?…ぷっ …くくくっ」
ユウヤが呆気に取られて言う
「え?」
AJが大笑いして言う
「あっははははは!いやっ マジ超ウケる!ユウヤ先輩!もしかして天才じゃないッスか!?」
ユウヤが呆気に取られて言う
「は…?う、受けるって…?それに天才?」
AJが言う
「笑いの天才ッス!」
ユウヤが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
ユウヤが思う
(そんな天才には 俺は正直なりたくは無いんだけど…)
AJが笑いを収めて言う
「いやぁ~ なるほどなぁ?通りで今まで俺の笑いがウケなかった訳だ!?ユウヤ先輩の笑いのセンスぱねぇえ!」
ユウヤが言う
「あ、あのさ…?それはさっきの… ゲートキーパーズが正義の味方って言ったのは… それは ちょっと確かに冗談は入ってたけど」
ユウヤが思う
(それでも まったくの冗談と言う訳でもないと俺は思ってるんだけど…)
ユウヤが言う
「だけど!?AJだってヴァンパイアは知ってるだろ?実際に見た事は無くてもっ!?」
AJが言う
「あ~ そりゃ~?聞いた事位は有りますよ?爺ちゃんとか婆ちゃんとかに?」
ユウヤが呆気に取られて言う
「え?それだけ…か?…いや、だってAJなら親御さんは俺とそれ程変わらないだろう?だったらっ!?」
AJが言う
「親父やお袋からヴァンパイアの話を聞いた事は無いッスね?あ、でも昔は各街にある あの城に貴族が居たって話なら聞いた事ありますよ?けど、ヴァンパイアは?」
ユウヤが言う
「そんな…?貴族の話をして置きながらヴァンパイアの話はしないなんて…?」
ユウヤが思う
(それは何故だ?だって その貴族にヴァンパイアが力を貸していたから… だからラウンスターク家の貴族は人々を支配出来ていたと言うのに?)
AJが言う
「爺ちゃんや婆ちゃんに聞いた話だとヴァンパイアって言うのは人間の血を吸う奴だとか?けど、そんな奴 本当に居たんッスかね?うちでは爺ちゃんや婆ちゃんが その話をすると両親がすっげー怒ったんッスよ?んな話 子供たちに聞かせないでくれって だから」
ユウヤが気付いて思う
(そうか… なるほど?判った気がする)
AJが言う
「俺はてっきりヴァンパイアって言うのは爺ちゃんたちの世代の… おとぎ話って言うんスか?夜とか遅くまで子供たちを外に居させない為の躾みたいなもんかと思ってました」
ユウヤが思う
(俺と同世代か その少し上の世代は一番 貴族とヴァンパイアの支配を受けていた世代だ だから… 話したく無い 聞きたくも無いと そう思うんだろう実際…)
ユウヤが言う
「俺もそう言えば自分の子供に話した事 無かったな…」
AJがチラっとユウヤを見てから言う
「ユウヤ先輩の息子さんって… 確か今10~?」
ユウヤが言う
「うん、14歳になった つい、この間な… AJは今20だっけ?若いよな…?そう言えば俺は20の時…」
ユウヤが思う
(そうだ俺は今のAJと同じ頃にゲートキーパーズに入った そして…)
AJが言う
「ユウヤ先輩が20の時?」
ユウヤが間を置いてから思う
(…いや、止めよう 自分の子供にも話していないんだ AJのご両親だって話していないと言うのだから それを俺が話すなんて それは…)
ユウヤが気を取り直して言う
「俺が20の時は もっと しっかりしてたけどな?」
AJが衝撃を受けて言う
「えっ!?」
ユウヤが言う
「少なくとも時間は守ってたよ?AJ… 明日こそ遅刻はしないように!これ以上遅刻されたら 俺だって上司へ報告しない訳には行かないぞ?」
AJが言う
「そ、そんなぁ~ マジ勘弁して下さいよ~?」
ユウヤが軽く笑い そのまま笑い出す AJが呆気に取られてから言う
「え?笑ってるって?それは… つまりマジなんッスか!?それとも!?」
ユウヤが笑っている AJが慌てて言う
「ちょっ!?ユウヤ先輩マジでどっちなんッスかっ!?そこん所は マジでっ!?」
ユウヤが言う
「ああ、そこは右だよ?」
AJが慌てて言う
「そおじゃなくってスねーっ!?」
ユウヤが笑う
パトカーが停車している 助手席のユウヤが周囲を見渡している 近くの店からAJが紙袋を手に出て来てパトカーに乗り込んで言う
「お待たせしましたー!いや~いつもサーセン ユウヤ先輩!待ーたせちゃって!」
ユウヤが苦笑して言う
「良いよ これくらいなら それに車は止めて居たって ここからなら この道を見渡せるからな?一応パトロールにはなってるだろ?」
AJが車を発車させつつ言う
「まぁ 確かに そうと言えば そうッスけど…」
ユウヤがAJの買って来た荷物を見てから言う
「所で、今日も昼は あの店のサンドイッチなのか?」
AJが言う
「はい!今ちょっと あの店のサンドイッチにハマってて!ユウヤ先輩も一度食べてみたら どうッスか!?激ウマッスよ?」
ユウヤが言う
「うん… それじゃ今度の休みの日にでも試してみるよ?」
AJが苦笑して言う
「折角の休みの日に…?やっぱユウヤ先輩って面白いッスよね~?」
ユウヤが言う
「え?そうかな…?」
AJが言う
「はい!けど そう言えばユウヤ先輩は いつも弁当持って来てますもんね?やっぱ… 奥さんが作ってくれるんッスか?」
ユウヤが言う
「うん息子の分のついでだけどな?」
AJが軽く笑って言う
「っははっ そう言えば俺もガッコー行ってた頃は お袋が作ってくれてましたよ!」
ユウヤが言う
「それじゃ今は作ってくれないのか?」
AJが言う
「今は彼女と同棲してるんで」
ユウヤが言う
「あぁそっか… それじゃ その彼女は?」
AJが言う
「彼女は朝は俺の相手で忙しいッスし?もちろん俺も忙しいッスからね!」
ユウヤが衝撃を受けて言う
「う…っ あぁそうだったな?」
AJが言う
「それこそ もう1人位 彼女が居れば~?作ってもらえるかもしれないッスけどね~…?」
ユウヤが思う
(え?もう1人って…)
AJが言う
「あ~… けど俺サンドイッチも捨て難いし… だとしたらどうするかなぁ…?」
ユウヤが思う
(ちょっと悩む所が間違っている気がするんだけど… まぁそれを指摘するのも無粋だしな?ここはあえて流すか…)
ユウヤが苦笑して言う
「俺もファーストフードは身体に良くないから駄目だって言われているんだけど …でも、たまには食べたくなるよな?」
AJが言う
「そうッスよね!俺も今はあの店のサンドイッチにハマってますけど!またちょっとしたらバーガーとか食いたくなりそうッスから!」
ユウヤが苦笑して言う
「以前は モ●バーガーの店の前で待たされてたっけ?じゃぁ また あの店になるのか…」
ユウヤが思う
(そして、流石に昼時のあの手の店の待ち時間を路駐で待っている事は出来なくて 仕方なくその間は1人でパトロールしてたっけ…)
AJが言う
「あ~ やっべ… バーガーの話してたら食いたくなって来ちゃいました…」
ユウヤが苦笑して言う
「それじゃ早速 明日の昼前の10分間は俺1人でパトロールか?」
AJが言う
「いや!今度はモスは止めますよ!どっか別のバーガー屋で買いますから!…あ!」
パトカーがマ●ドナルドの前を通る AJが言う
「久しぶりにマックとか良いかもしんないッスね!期間限定とか出てるかもしれないッスし!?」
ユウヤが苦笑して言う
「マックも やっぱり相変わらず昼時は混んでるよ… 俺の1人パトロールは決定か」
AJが困りながら言う
「あぁ~っ!けど俺サンドイッチも捨て難いしっ 今の彼女も捨て難いしっ 手作り弁当も捨てがたくて もう一人の彼女って言うのも捨てがたい…っ!どうしたら良いッスかね!?ユウヤ先輩っ!?」
AJがユウヤへ詰め寄る ユウヤが呆気に取られて言う
「え…?」
ユウヤが思う
(あれ?えっと…?)
AJが悪戯っぽく笑む ユウヤが気付いて思う
(あぁなるほど?これがAJ流の笑いの取り方なのか?…そう言えば今までも こんな様な事を言われて意味が分からなかったけど今ならやっと… なら)
AJが表情を歪めて言う
「あ… 俺また滑りました?」
ユウヤが言う
「それならAJは その2人と一緒にマックに行ってさ?」
AJが疑問して言う
「へ?その2人とって…?」
ユウヤが笑んで言う
「ダブルビックバーガーでも食べれば良いんじゃないか?バンズ2人に挟まれてAJは丁度良いだろ?それから たっぷりのマヨネーズは零さないように食べさせろよ?」
AJが驚きに呆気に取られて 間を置いた後 爆笑して言う
「…う、うっはーっ!まぢチョーウケるっ!ユウヤ先輩やっぱ天才ッスよーっ!あっはははははっ!」
ユウヤが苦笑して言う
「まぁこれは誰かさんの受け売りなんだけど でも… 本人は…」
ユウヤが思う
(それで本当に お祝いをしたんだよな?しかも俺のおごりで…)
ユウヤが苦笑する
警察署 内
ユウヤが弁当を食べながら資料を見ていて言う
「捜索願の出ている黒猫… 見付からなかったな… そもそも猫を見なかったし …ん?」
ユウヤが弁当を食べつつ思う
(そう言えば… 最近 野良猫も見掛けないな?最後に見たのは何時だったっけ…?)
ユーノスがやって来て言う
「ユウヤ巡査」
ユウヤが呼び掛けに慌てて立ち上がって言う
「あっ!はいっ!」
ユウヤが敬礼する ユーノスが苦笑して言う
「いや、休憩中にすまない これから直ぐに別の街の署へ出向しなければならないので その前に これを渡しに来たんだ」
ユーノスが書類を渡す ユウヤが受け取って見ながら言う
「あ また 捜索願いですか?」
ユウヤが思う
(今度は何色の猫だ…?)
ユウヤが資料を見て気付いて言う
「…あれ?」
ユーノスが言う
「ああ、久しぶりにペットや痴呆のお年寄りではなく対象は学生だ 年齢は16歳男性 学校での成績も平均的 家族との関係も悪くないと言う ごく普通の少年だ」
ユウヤが言う
「珍しいですね?その様子では家出と言うのも考え辛いですし… 何か事件に巻き込まれたと言う可能性も?」
ユーノスが言う
「ああ、他の街に比べても治安が良いと言われて来た この街では久しい事だが その線も有り得ると言う事で午後のパトロールは治安維持ではなく本格的に こちらの捜索を行ってくれ」
ユウヤが言う
「はいっ 分かりました!」
ユウヤが敬礼する ユーノスが敬礼を返してから立ち去る ユウヤが資料を見直す
装備室
AJが資料から目を外して言う
「唯の家出じゃないッスかねぇ~?」
ユウヤが出動装備を整えながら言う
「そうであっても捜索願が出されている以上は俺たちで探し出して親御さんへ引き渡さないと」
AJが不満そうに言う
「16歳の男子学生ッスよ?腹でも減れば戻って来ますって!」
ユウヤが言う
「彼が居なくなったのは もう3日も前だ腹ならとっくに減ってるだろう?」
AJが苦笑して言う
「え…?いや… だからそうじゃなくってッスね…?」
ユウヤが言う
「悪いけど本格的な出動命令が出ている時は冗談には付き合えない」
AJが言う
「あ… サーセン…」
ユウヤが不満の咳払いをしてから言う
「…うんっ それから AJ?」
AJが気を取り直して言う
「すみませんでしたっ!」
ユウヤが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「…何だ ちゃんとした言葉 知ってたんだな?」
AJが衝撃を受けて慌てて言う
「そ、そりゃっ 知ってますって!?」
ユウヤが軽く笑って言う
「そうか それなら良かった」
AJが呆気に取られた後 苦笑して言う
「分かりましたよ… 本格的な命令が出てる時はマジでッスね?」
ユウヤが呆気に取られた後 苦笑して言う
「うん… 心構えさえしてくれているなら そのAJ流でも良いよ」
AJが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「え?…あ、はいッス 心構えはバッチリ!それじゃ張り切って行きますかっ!?ユウヤ先輩!」
ユウヤが言う
「うん!」
ユウヤがロッカーを閉めようとして気付いて言う
「…っと 危ない忘れる所だった」
ユウヤがロッカーの棚に仮置きしていた お守りの試験管を手に取って銃ホルダーへ入れる AJがそれを見ていて不思議そうに考える
パトロール中
ユウヤが周囲を見ている AJが運転をしながら間を置いて言う
「…あのぉ?ユウヤ先輩?1つ質問 良いッスか?」
ユウヤが言う
「真面目な質問だったらな?」
AJが言う
「真面目って…」
ユウヤがAJを見てから 苦笑して言う
「冗談じゃなければ良いって事だよ?」
AJが気付いて言う
「ああ!それなら大丈夫ッス!」
ユウヤが言う
「うん それなら?なんだ?」
AJが言う
「あの ずっと気になってたんッスけど… ユウヤ先輩が何時も持ってる その… 試験管でしたっけ?確かガッコーでそう習った様な気がするんスけど …持ってますよね?」
ユウヤが言う
「え?ああ…」
AJが言う
「その… さっきも…?」
ユウヤが苦笑してお守りを出して言う
「コレの事だろう?」
AJが言う
「そう!それッス!それ… なんなんッスか?一体?」
ユウヤが言う
「ああ、これは …お守り なんだ」
AJが疑問して言う
「お守り?…え?けど… 試験管…ッスよね?」
ユウヤが苦笑して言う
「うん、試験管だし中に入っているのが何の液体なのかも分からないんだけど …でも お守りだから肌身離さずに持っていてくれって言われて それで…」
ユウヤが試験管を見て表情を落とす AJが気付き気不味そうに言う
「あの… 俺 何か悪い事聞きました…?」
ユウヤが苦笑して言う
「…いや、良いんだ …と、いけない 今日は しっかり見て置かないとっ」
ユウヤが試験管をしまいながら 外を見渡す AJが苦笑して言う
「ユウヤ先輩は いつだって しっかり見てると思いますけどね?」
ユウヤが真剣に外を見ながら言う
「そうでもないよ 俺 油断すると すぐぼーっとしちゃうから… うん?あれは?」
AJがユウヤの視線の先に気付いて言う
「あ、なんか人が集まってますね?行って見ますか?」
ユウヤが言う
「うん!AJ!何処か適当な所に車止めてくれっ」
パトカーが路肩に止まる ユウヤが車を降りて走る AJが遅れて車を降りてユウヤを追う ユウヤが人集りへ言う
「警察です!何か あったんですか!?」
野次馬の1人が言う
「あっ お巡りさん!」
AJが追い付く ユウヤが人集りを押し開きながら進んで言う
「ちょっと すみません そこ通して…」
ユウヤが人集りを越えてたどり着き そこにあるモノに驚く AJが遅れて到着して言う
「ユウヤ先輩っ?何が… …げっ!?」
AJが驚き表情を強張らせる ユウヤが近付いて行く AJが立ち止まったまま言う
「マ、マジで… し、死体… ッスか!?」
AJが視線を向ける ユウヤが遺体を確認している AJが呆気に取られて言う
「す、すげぇ… 流石 先輩…」
ユウヤが遺体の目を確認して脈を取ってから言う
「この冷たさは…?亡くなってから時間が経過しているのか?身体が冷え切っている …こんな人通りのある場所で?…彼女を最初に見付けた方!いらっしゃいませんか!?」
店主が出て来て言う
「ああ、私だよ 店の開店準備をしていたら悲鳴が聞こえて それで外へ出たら…」
ユウヤが言う
「彼女が倒れていた?」
店主が言う
「いや、その時は …もう1人男が居て」
ユウヤが言う
「男が!?」
店主が言う
「ああ、少年が… それで てっきり私は その少年が彼女を助けたのかと思ったんだ …なにしろ彼女は少年に抱き付いていたから それで私は安心して店へ戻ろうとしたら …そうしたら急に何かが倒れた様な音がして 振り返った時には彼女が倒れていてっ それっきり…」
野次馬が言う
「どう言う事だ?」 「刺されでもしたのか?」
ユウヤが言う
「刺された?」
ユウヤが路面を見て思う
(いや、それなら 路面に血溜りが出来ている筈 それに遺体には その様な出血をともなう外傷は…)
ユウヤが遺体を仰向けにして胴体を見てから顔を見て そのまま胴体へ視線を戻そうとしてふと気付いて言う
「…うん?」
ユウヤが思う
(今、何か…?)
ユウヤが遺体の顔を横へ向かせる 左首に2つの痕がある ユウヤが目を見開いて言う
「そんな…っ!?」
AJが言う
「あ…?首に何か刺された痕が… 2箇所ありますね?」
野次馬の中の一部の者が驚き言う
「お、おいっ!あの痕はっ!」 「嘘だろう!?まさかっ!?」
AJが疑問して言う
「え?」
ユウヤが言う
「…ヴァンパイア」
AJが呆気に取られて言う
「ヴァンパイア…?」
近くの建物で悲鳴が響く
「キャァアアーッ!!」
AJがビクッと身を震わせる ユウヤが瞬時に駆け出して行く AJが驚いて言う
「せ、先輩っ!?ユウヤ先輩っ!?」
ユウヤが建物近くで声の聞こえた場所を探していると 近くの一室から悲鳴と同じ声が聞こえる
「誰かっ!誰か お願いっ!お母さんを 助けてっ!!」
ユウヤが部屋へ飛び込んで リボルバーを向けるが 目の前の光景に目を見開いて息を飲む ユウヤの視線の先 ヴァンパイアが女性の首に牙を立てている その女性の前で少女が怯えて居て 少女がユウヤに気付き振り返り叫ぶ
「お巡りさん!お願いっ!お母さんをっ!」
ユウヤが言う
「ヴァンパイアが…っ!?何故!?…はっ!?」
ユウヤが思う
(しまったっ!)
ユウヤが息を飲んだ瞬間 リボルバーの先に居た筈のヴァンパイアが消えて女性が倒れるのと同時に ユウヤの銃が叩き落され 続いてユウヤが床へ押さえ付けられる ユウヤが衝撃に言う
「ぐぅっ!」
ユウヤが思う
(ビクともしない…っ 人間の力を遥かに越える この力は…っ 間違いなくヴァンパイアの力…っ)
ヴァンパイアが牙を剥き ユウヤの首へ噛み付こうとする ユウヤが思う
(駄目だっ 吸われるっ!)
ユウヤが観念して強く目をつぶる 瞬間 お守りの試験管が破裂し瞬時にガスが発生してヴァンパイアの皮膚が焼け始める ヴァンパイアが驚き悲鳴を上げる
「うあぁあー!?熱い…っ!熱いぃー!あぁああーっ!!」
ユウヤが驚きヴァンパイアを見る 焼けただれたヴァンパイアが膝を着き倒れる ユウヤが呆気に取られて驚いていると 女性が意識を取り戻して言う
「…アル?アルフレット?何処なの…?い、いま… 今 ここにっ?」
少女が怯えて言う
「お母さん… お兄ちゃんなら…」
少女が指差す 少女の示しの先 ユウヤが呆気に取られたまま見つめている先に居る 焼けただれたヴァンパイアを見た女性が悲鳴を上げて言う
「アル…?アルなの…?アル…?アルフレット!?アルフレットーーッ!!」
女性が泣き崩れる ユウヤが呆気に取られたまま資料を取り出して見る 資料にある写真がヴァンパイアと同じ顔をしている
≪ あれから 14年 ヴァンパイアが 戻って来た ≫
続く
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