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1-14 変わらぬ友情
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アシルが一息吐いて言う
「…聞け へっぽこ王子」
ザッツロードがアシルへ視線を向けて言う
「この状況では…っ!」
アシルが強く言う
「こいつらはっ!」
ザッツロードが言葉を止める アシルが静かに続ける
「…捕獲用のロボットだ さっきのとは違って 人も乗ってねぇし武器も持ってねぇだろ?」
ザッツロードが一瞬驚き捕獲ロボットを見る 捕獲ロボット2体が徐々に距離を近づけている アシルが言う
「人が乗ってねぇのなら こいつらはただの機械だ」
ザッツロードが疑問する アシルが言う
「機械ってぇのは 人より何倍も力があるが …人より何倍も馬鹿だ」
ザッツロードが呆気に取られる アシルが言う
「どんな事があっても 与えられた命令を 順番通りに上からやるしか脳がねぇ …だから 見ろ」
アシルが言い終えると共にザッツロードの背を押し自分も少し前へ出る ザッツロードが僅かに驚いて1、2歩前につんのめる 捕獲ロボット2体が一瞬アシルへ動く ザッツロードが呆気に取られる アシルが言う
「あいつらの順番はこうだ まず 俺を捕らえる 次に お前…」
ザッツロードが驚く アシルが言う
「ソルベキアが求めているのは セントラルコンピュータを動かす為のお前より 別大陸の王との繋がりが有るかもしれねぇ 俺の方だ セントラルコンピュータやお前に関しては ソルベキアならローレシアとの取引を行う事が出来るが 王位を失った俺に関して スプローニとの取引は出来ねぇ …と、なれば」
ザッツロードが見つめる アシルが両手にナイフを持って言う
「囮は俺にしかできねぇ あの先へは お前が行け」
ザッツロードが驚き慌てて言う
「しかしっ!それでは アシル王子が!」
アシルが言う
「元っ!」
ザッツロードが呆気に取られる アシルが視線を強めて言う
「…お前には 戻るべき国があるだろう?お前の… その可笑しな力を貸すべき 仲間が居る …今なら お前が ガルバディア国王に選ばれた理由が 何となくだが 分かる気がするぜ…」
ザッツロードが呆気に取られる 捕獲ロボットが更に近づく アシルが言う
「チャンスは一度切りだ 今度こそ 一発で決めろよ!?へっぽこ王子!」
ザッツロードが息を飲んで言う
「…しかしっ」
アシルが叫ぶ
「行くぞっ!」
アシルが捕獲ロボットへ立ち向かう ザッツロードが一瞬 共に向かおうとした足を踏み止め ぐっと目を瞑ってから逆方向へ走り出す 捕獲ロボット2体がアシルを見る アシルが声を上げて片方の捕獲ロボットへ斬りかかる
「うおぉおおおーっ!」
アシルがナイフで捕獲ロボットを斬る ナイフが音を立てて砕ける ザッツロードがはっとして振り返って叫ぶ
「アシル王子っ!」
アシルが振り返って叫ぶ
「行けっ!ザッツロード!」
ザッツロードが一瞬驚いた後 悔しそうに走り去る 1体の捕獲ロボットがアシルを掴み 後ろ手に引き上げ 電撃を送る アシルが悲鳴を上げる
「ぐあぁああっ!」
アシルがナイフの柄を落とす もう1体の捕獲ロボットがザッツロードの去った方へ向く ザッツロードがアシルの悲鳴に振り返る ザッツロードの目に意識を失ったアシルが捕獲ロボの手に握られているのが見える ザッツロードが表情を悲しめて言う
「アシル王子っ!」
ザッツロードが悔しそうに目を瞑り 進行方向へ向き直って言う
「僕は…っ!…っ」
ザッツロードが驚き呆気に取られる ザッツロードの前方に既に居たロボット兵が足音を立てて振り返り ザッツロードを見下ろす ザッツロードが脱力する ロボット兵が機関銃をザッツロードへ向ける ザッツロードが悲しそうに言う
「僕は…」
ザッツロードの後方でタービン音が1つ響き 捕獲ロボ1体がアシルを掴んだまま飛び去って行く もう一体の捕獲ロボがザッツロードの後方に立つ ザッツロードが目を閉じ俯いて言う
「僕は… 何て 無力なのだろう… もう すぐ… そこだったのに…」
ザッツロードがスファルツ邸への抜け道へ視線を向けてから ロボット兵を見上げる ロボット兵が機関銃を向けたままもう一方の手をザッツロードへ向け捕らえようとする ザッツロードが諦めて肩を落とす 声が聞こえる
「そのまま動くな ザッツロード7世」
ザッツロードが驚いて顔を上げて言う
「え?」
ジークライトがザッツロードの頭上すれすれにジャンプして来て言う
「おわっ 馬鹿!動くなって 言われてるだろっ!?」
ザッツロードが呆気に取られて見上げる ジークライトの振り上げた大剣にプログラムが纏る ザッツロードが言う
「あれはっ」
ジークライトがロボット兵の頭上まで上り詰め 一気に大剣を振り下ろして叫ぶ
「いやぁあー!」
大剣がロボット兵を一刀両断に切り裂く ザッツロードが呆気に取られる ジークライトが着地と共に振り返りザッツロードへ大剣を向けて言う
「次っ!」
ザッツロードが驚いて言う
「えっ!?」
ジークライトがザッツロードの横をすり抜け大剣を横一線に振りかぶる 大剣に纏っていたプログラムが衝撃波の様に 捕獲ロボットの体を横一線に切り裂き 捕獲ロボットが倒れる ジークライトが嬉しそうに笑んで大剣を肩に担いで言う
「へっへー!楽勝!」
ザッツロードが呆気に取られたまま言う
「あ… 貴方は?アバロンの… 大剣使い …でも プログラムの力を…?ガルバディアの相棒を得ている者は ヘクターと」
ジークライトが反応して言う
「あ?アンタ ヘクター国王を知ってるのか?」
デスが現れて言う
「当然だ ザッツロード7世は ガルバディア国王こと シリウス国王が作り上げた 意識のみの世界を経験した 我々メンバーの1人だ」
ザッツロードが驚いて叫ぶ
「デスっ!?どうして貴方がっ!?」
デスが苦笑して言う
「それはこちらの台詞だ ザッツロード7世」
ザッツロードが言う
「僕は…っ …アシル王子と共に スファルツ卿の下へ向かおうと…」
デスが疑問した後に言う
「アシル王子と…?…なるほど もう一組の“逃亡犯”とは お前たちの事だったか」
【 ローゼント城 近郊 】
伝達兵がローゼント城を見下ろしている 瞳にプログラムが流れている
【 ソルベキア城下町 】
デスが周囲にプログラムを発生させていて言う
「…うん ローゼントへの襲撃が開始された やはりこちらの状況次第だった様だな…」
デスがザッツロードを見る ザッツロードが視線を落としていて次にソルベキア城を見上げて言う
「もっと早く 後一歩早く 彼らと出会えていれば…」
ジークライトが腕組みをして首を傾げた後デスへ言う
「デス?もう一組の襲撃犯の正体がこいつなら こいつ1人じゃなくて 俺らみたいに2人組みなんじゃないのか?」
デスがジークライトの言葉にザッツロードを見て言う
「ああ そうであったのだろう ザッツロード7世 先程お前が口にしていた アシル王子とは スプローニ国の元王子である アシル殿の事か?それで?どういった経緯かは知らないが そのもう1人はどうした?」
ザッツロードが視線を落として言う
「…アシル王子は 僕を 助ける為に…」
ジークライトが見つめて言う
「死んだのか?」
ザッツロードが衝撃を受け慌てて言う
「勝手に殺さないで下さい!」
ジークライトが苦笑して言う
「そんなに怒るなよ?あんまりにもお前が落ち込んでたから そうなのかなーと思っちまっただけだろ?」
ザッツロードが表情を落として言う
「捕まってしまったんですっ …もっと早く もう少し早く貴方方と合流していれば…っ」
ザッツロードがジークライトへ詰め寄る ジークライトが困って言う
「んな事言われてもなぁ?俺らだって 初めて戦うロボット兵の部隊を 1個半もぶっ倒すのにちょっと手間取っててよ」
デスが微笑して言う
「いや、初めてにしては上出来だ お前の力には本当に驚かされる」
ジークライトが嬉しそうに照れて言う
「いやぁ~ デスのお陰だって!」
デスが微笑して言う
「それはもちろんだがな?」
ジークライトが一瞬呆気に取られた後笑う ザッツロードがはっとして言う
「デスっ これから 僕と共にソルベキア城へ向かって アシル王子を助け出してもらえませんか!?貴方なら… アバロンの大剣使いとガルバディアのプログラマーなら 不可能はないのでしょうっ!?」
ジークライトとデスが顔を見合わせた後デスが苦笑して言う
「確かにその通りだが 残念ながら 今の我々が向かうべきは ソルベキア城ではなく スファルツの屋敷なのだ ザッツロード7世」
ザッツロードが呆気に取られる ジークライトが微笑して言う
「デスの友達 スファルツ卿さんを 早く助けてやらないといけないもんな?」
ザッツロードが驚いて言う
「スファルツ卿に何かっ!?」
デスが微笑して言う
「そう心配をするな 彼の身に何かあった訳ではない ただ 彼の力が封じられてしまっている 私たちは その状況を解除してやろうと ここまでやって来たのだ」
ジークライトが言う
「それじゃ 行こうぜ デス?もうすぐなんだろ?折角ここまで来たんだから 早く助けてやらねーと」
デスが言う
「ああ もう少しだ あと少しで 奴の為に通してやった この場所までの通信回路の復旧に 奴自身が気付き…」
言葉の途中で施錠解除の音がする ザッツロードとジークライトが音の方へ顔を向ける デスが微笑して言う
「秘密通路への扉が解除された ジーク そこの壁に見える扉をどかしてくれ」
ジークライトが呆気に取られつつ言う
「あ?壁に見える扉?…この辺りか?」
ジークライトが壁に見える扉をずらす 扉が外れる ジークライトが驚く デスが微笑して言う
「この扉の施錠は 奴でなければ外せない …とは言え その奴であっても 先程までのように通信回路を遮断されていては 解除は不可能だった」
ザッツロードが言う
「それでは… 貴方方が居なければ 僕らだけが来たのでは 開かれなかったと言う事ですね?」
デスが振り向き 苦笑して言う
「ふむ… そうかもしれないし… そうでもなかったのかもしれない …お前には不思議な力が備わっているからな?」
ザッツロードが驚く ジークライトが壁に見える扉の奥を見て言う
「デス!この先に 通路があるぜ!?」
デスが苦笑して頷き言う
「ああ、それがスファルツの屋敷へ続く 秘密通路 私たちが探していたものだ」
デスが通路を確認する ジークライトがザッツロードを見て言う
「お前も行くのか?」
ザッツロードが一瞬驚いた後言う
「え?あ… はい…」
デスが振り向いて言う
「では行こう ロボット兵の類は殲滅させたが 残った兵士に来られても困る」
デスが通路へ入る ザッツロードが来てジークライトを見る ジークライトが扉を持ったまま頷く ザッツロードが頷き通路へ入る ジークライトが周囲を警戒した後通路へ入り扉を閉める ジークライトが入るとデスが周囲を見ている ザッツロードが言う
「デス… 何か?」
デスがザッツロードへ向き直って言う
「いや 目視にて 状況を確認していた」
ザッツロードが苦笑して言う
「なら 僕が先行するよ?スファルツ卿の屋敷はこっちだ」
ザッツロードが歩き出す デスが続き ジークライトがやって来て言う
「あ そういえば、お前よ?どうでも良いけど… さっきから聞いていれば デス デス って 随分馴れ馴れしいだろ?デスはこう見えても アバロンの第二国王なんだぞ?」
ザッツロードが呆気に取られて言う
「え…?あ、はい そうですね?」
ジークライトが言う
「『そうですね?』って… お前 それなら…」
ジークライトが不満そうに腕組みをしてザッツロードを見る デスが苦笑して言う
「ジーク 彼もまた ローレシアの第二王子だ」
ジークライトが衝撃を受け驚いて言う
「あぁ!?ローレシアの!?」
デスが言う
「共に あの夢の世界にて 私とも 出会っている」
ザッツロードが一瞬驚いて言う
「あっ そうか… デスとも 現実世界で会うのは 初めてだったんだ」
デスが微笑する ザッツロードが苦笑する ジークライトが不満そうに言う
「…うーん こんな へなちょこな奴が 王子様だったり ガルバディア国王様に選ばれたりするのか…?」
ザッツロードが苦笑して言う
「“へなちょこ” か… あは… ならせめて へっぽこと言って下さい えっと…?」
ジークライトが笑んで言う
「ああ 俺はジークライト ジークで良いぜ?えーっと ザッツロード7世王子様?」
ザッツロードが苦笑して言う
「なら 僕もザッツで良いですよ もしくは… へっぽこ王子でも?」
ジークライトが一瞬呆気に取られた後笑って言う
「あっはははっ 何だコイツ 面白い王子様だな!?へっぽこ王子様か… でも ま、デスの仲間なら ザッツって呼ぶぜ?」
ザッツロードが苦笑して頷いて言う
「うん…」
デスがプログラムを発生させながら言う
「…その“へっぽこ”と言うのは 東大陸の方言だな?西大陸にあるローレシアの第二王子が 何故その方言を使用する?」
ザッツロードが呆気に取られて言う
「え?方言…?」
ジークライトがデスを見る デスが言う
「そうだ この大陸の言語は 現在一つに絞られているが そうであっても 方言と呼ばれるものは いくつか残されている へっぽこもその一つで アバロンの有る中央大陸であれば へなちょこに当たる」
ザッツロードが呆気に取られた後苦笑して言う
「そうなんだ… 知らなかった それじゃ ジークが最初に僕を へなちょこ王子と言ったのは 中央大陸の方言であったのだね?」
デスが言う
「そう言う事だ」
ジークライトが面白がって言う
「なら ローレシアの西大陸じゃ 何て言うんだ?」
ザッツロードが呆気に取られた後考える デスが苦笑して言う
「西大陸はお前も言う通り やはりローレシアの国風が強く 余りそう言った 柔らかく人を愚弄する言葉は 多用されていない… が、そうだな 強いて言えば」
ジークライトとザッツロードが注目する
【 ローレシア城 玉座の間 】
ルーゼックが怒って叫ぶ
「あの ボンクラ王子の行方は まだ分かっておらぬのかっ!?」
ローレシア兵が言う
「はっ!申し訳ありません …現在 あらゆる手法を試しておりますが ザッツロード王子との連絡 共に居場所の確認は取られておりません」
ルーゼックが玉座へ腰を下ろし腕組みをして険しい表情で言う
「ソルベキアが ついにローゼントへ攻め込んで来おった…っ あのボンクラ王子がまかりなりにも ソルベキアの補佐官として座しておったのなら この様な事はせなんだった筈 つまり、この現状こそが あ奴の身に何かがありおった証拠なのだっ …キルビーグ!」
ルーゼックがキルビーグへ向く キルビーグは目を瞑り考えている ルーゼックが言う
「やはり ローゼントではなく 追加投入した魔法使いらは ソルベキアへ向かわせ ザッツロード7世の救出へ向かわせるべきではあらぬのかっ!?前線でソルベキア軍を潰す事へ力を注ぐより その方が遥かにっ!」
キルビーグが目を開き顔を上げて言う
「ローゼントへの進軍を任されていると言う ソルベキア軍のロボット兵部隊総隊長… 奴こそが キルビーグ2世の命を奪った その当人なのだ 従って… 今は このチャンスを 逃す訳にはいかぬ」
ルーゼックが一度考えてから改めて言う
「だが しかしっ!ザッツロード7世が 現状どうなって居るのか!…それこそ 生きておるのか死んでおるのかすら 分からんのだぞっ!?キルビーグ!今は 既にこの世を去った者の 仇を討つよりもっ」
伝達兵がやって来て言う
「申し上げます!通信が閉ざされていた ソルベキアのスファルツ卿より キルビーグ陛下へ通信が入っております!」
キルビーグとルーゼックが驚き キルビーグが焦って言う
「すぐに繋げっ!」
伝達兵が返事をする
「はっ!」
照射機に照らされ スファルツの映像が現れる キルビーグが言う
「スファルツ卿 無事であったか」
スファルツが言う
『はっ キルビーグ陛下 この様な重大事に通信路を閉ざされ 真に申し訳御座いませんでした』
キルビーグが僅かに表情を和らげて言う
「いや… 貴公程の者が その力を抑えられるとは ソルベキアはそれ程までに 今戦いへ力を注いでいるのだろう」
スファルツが言う
『お恥ずかしながら ソルベキアがローゼントへ進軍していると言う事態でさえ 私はたった今 彼らから聞き及んだ所でありまして …すぐさま 事態の収集を行う所存にございますが まずは取り急ぎ 陛下へのご連絡をと思い 通信を繋がせて頂きました』
通信画面にデスとジークライトが映っている キルビーグが頷いて言う
「うむ 貴公の無事が分かった事は 我らにとって十分安堵の材料となった これからも 何か有れど無かれども 連絡を送ってくれ」
スファルツが言う
『はっ 陛下からの身に余るお言葉を頂き 光栄の極みにございます されど陛下 私がお伝えするべきご連絡は 私めの安否などより もっと重大な事にございます 陛下 恐れ多くもソルベキアは…』
キルビーグが疑問する ルーゼックが覗き込む モニターにザッツロードが映り ザッツロードが言う
『父上っ』
キルビーグが呆気に取られ ルーゼックが叫ぶ
「なっ!?渦中のボンクラ王子ではあらぬかっ!一体 何故 貴様がそこにっ!?」
【 ソルベキア国 スファルツ邸 】
壁モニターにキルビーグと 思わず通信機へ近付くルーゼックの姿が映っている ザッツロードが言う
「父上 申し訳ありません 私は ソルベキアの補佐官の位を任されながらも そのソルベキアに捕らえられ 先程までソルベキア城地下牢にて幽閉されておりました」
通信モニターのルーゼックが怒って叫ぶ
『馬鹿者っ!ザッツロード7世!貴様はそんなであるからにして ボンクラ王子と呼ばれるのだっ!』
ザッツロードが苦笑する ジークライトが聴いていて言う
「へぇ… ローレシアでは ボンクラって言うのか」
デスが苦笑して言う
「フ…ッ 元々は ガルバディアの王が 言ったと言う話だがな?」
ジークライトがデスへ向いて言う
「シリウス国王が?」
デスが苦笑して言う
「さぁな…?ローレシアの歴史によるところの ガルバディアの王が言ったとしか 残されていないが」
ジークライトが言う
「へぇ~…?」
【 ローゼント国 城下町 】
爆撃が起きる 城壁が壊され 複数隊のロボット兵が壊された城壁を超えて入り込んで来る ヴェルアロンスライツァーが剣を引き抜いて叫ぶ
「皆の者!我らが女王アンネローゼ様の在される ローゼント城を守るのだ!反撃ー!」
ローゼント兵たちが声を上げ 剣を引き抜いて走り出す ラントが銃を抜いて言う
「スプローニの精鋭よ!我らが友!ローゼントの騎士を守るのだ!一斉援護射撃用意!撃てー!」
スプローニ兵たちが銃を撃ち始める ヴェルアロンスライツァーがローゼント兵たちと銃弾の向かう先へ向かい 長剣を振りかざして叫ぶ
「ローレシアの同胞よ!我らに力を!」
ローレシアの魔法使いたちが魔法詠唱を終え ヴェルアロンスライツァーの長剣へ魔力を灯す それを切欠に 次々とローゼント兵たちの長剣に魔力が灯され 続いてスプローニサイドの魔法使いたちがスプローニ兵たちの銃へ魔力を灯す ヴェルアロンスライツァーが雄叫びと共にロボット兵へ斬りかかる
「ちぇすとぉおおー!」
ロボット兵が一刀両断され 操縦者が慌てて逃げ出す ロボット兵が爆発する ローゼント兵が叫ぶ
「殿下に続けーっ!」
ローゼント兵たちが声を上げる
【 ソルベキア国 スファルツ邸 】
デスが周囲にプログラムを発生させていて 目を細めて言う
「…始まったか」
ザッツロードが反応してデスを見る べハイムが言う
「祖父上!回線が復旧しました」
スファルツが操作盤を操作して言う
「メモリ最大使用にて!すぐさまローゼントの監視カメラを ジャックなさい!」
べハイムが操作盤を操作して言う
「はいっ」
モニターにプログラムが映し出される スファルツが操作盤を操作するとプログラムが映像に変わる ジークライトが言う
「あぁ…」
ザッツロードが焦って言う
「これは… 戦争だっ …あ!あれはっ ローレシアの魔法使いたち!?」
デスがザッツロードへ向いて言う
「ローゼントには現在 ローゼント在中の魔法使いと共に スプローニから戻された魔法使いが居る筈だ」
ザッツロードがデスへ向いて言う
「それだけじゃない 後方支援に当たっているあの部隊は 本来ローレシアに置かれる筈の者たちだ きっと父上が… 新たに派遣した者だと」
スファルツが操作盤を操作して言う
「…どうやら ザッツロード王子の仰る通りの様です 彼らローレシア第二第三部隊には キルビーグ陛下からの命にて ローゼントへ派遣命令が出されております」
デスが疑問して言う
「ローレシアが既存の部隊の上に 更なる応援を…?それも 本来ローレシア本国を守らせる 上位3部隊の2つを送るとは…」
ジークライトがデスを見て言う
「何か おかしい事なのか?」
デスが考えながら言う
「ふむ… おかしいと言うより 少々異常ではないだろうか?これでは ローレシア本国の国防が余りにも…」
ジークライトが困り悩んで言う
「ローレシアとローゼントは同盟国だろ?だから 強いソルベキア相手に 沢山戦力を貸したってだけなんじゃないのか?」
デスが言う
「現状ソルベキアと手を切ったローレシアが 今 これほどに戦力を他へ送ってしまえば ソルベキアが ローゼントと同時にローレシアを襲撃した際は 自国を守りきれない」
スファルツが言う
「しかも… これほど戦力を強化したローゼントであっても このソルベキア部隊を撃退する事は… いえ 抑える事でさえ難しいでしょう デス アンネローゼ女王が どのような対処をお考えなのか 貴方の方で密かに 覗き見る事は出来ますか?」
デスが言う
「ふん… 無論その程度の事は出来るが」
ジークライトがデスを見る ザッツロードが言う
「アンネローゼ女王に 何らかの策があるのなら!直接聞いて 僕らも手を貸したら良いのでは!?」
デスがザッツロードを見て言う
「では… ザッツロード王子 お前は ローゼントに味方するつもりなのか?」
ザッツロードが一瞬驚き怒って言う
「え?そんなの… そんな事は 当然ではありませんかっ!?ローゼントはローレシアの同盟国であり 王配のヴェルアロンスライツァーは僕らの仲間です!」
デスが腕組みをしてスファルツを見る スファルツが苦笑する ザッツロードが疑問し少し怒って言う
「違うと言うのですか!?確かに この記憶は 夢の世界での出来事だったのかもしれないっ それでもっ 僕らはあの世界で!」
デスが苦笑して言う
「ああ… 我らは共に戦う 仲間であった」
ザッツロードが呆気に取られた後視線を強めて言う
「それならっ!」
デスが言う
「だが これは ソルベキアとローゼントの 戦争だ ザッツロード王子 一国の王位を持つ お前や私が そのどちらかに付くとなれば それは ローレシアやアバロンが どちらかに付くと言う事になる」
ザッツロードが呆気に取られてから困り怒って言う
「それじゃ… デス!?貴方は ヴェルの援護に行かないつもりですか!?」
デスが言う
「そのつもりだ 私はアバロンの第二国王であり 現状 アバロンの王レクターはローゼントへも 無論ソルベキアへも手を貸していない 言わば中立の立場を取っている そしてお前のローレシアは ローゼントへ兵を出してはいるものの 国王であるキルビーグ王は お前へ命じた筈だ」
ザッツロードが目を見開く
回想
モニターに映るキルビーグへザッツロードが言う
『父上!ソルベキアに再び捕らえられた アシル王子の釈放をお願いします!私はこのまま 彼らと共に ローゼントへ向かい…っ!』
キルビーグが言う
『ザッツ お前は ローレシアへ戻れ』
ザッツロードが呆気に取られて言う
『え…?』
キルビーグがデスへ向いて言う
『デス第二国王 ローレシア王としてお願い申す ザッツロード7世の異端地からの移動魔法を一度限り お許し願いたい』
デスが腕組みをして言う
『まぁ良いだろう …アバロンの第二国王としてではなく ガルバディアの民として 我が王へ その旨の願い 通す事を約束する』
キルビーグが頷いてからザッツロードへ向いて言う
『ザッツ 非合法場所からの移動魔法許可が下りた お前はそこから 直接ローレシアへ戻るのだ 良いな?』
ザッツロードが慌てて言う
『父上っ』
回想終了
デスが言う
「異端地からの移動魔法許可は その離着場所の特定は無い お前が今後行うであろう 1度限りの移動魔法を許可しただけだ」
ザッツロードが視線を強めて言う
「…父上は アシル王子の釈放に付いても 言及してくれなかった …きっと」
ジークライトが苦笑して言う
「俺が言うのも難だけどよ?この戦争の最中に… 囚人の釈放なんて やってる暇ないんじゃないか?」
ザッツロードが困って言う
「移動魔法の許可は一度だけ… アシル王子を助けるには 一度きりでは足りないし… 僕1人がローゼントへ行っても… 一体どうしたら」
ザッツロードの脳裏に記憶が思い出される
アシルが視線を強めて言う
『…お前には 戻るべき国があるだろう?お前の… その可笑しな力を貸すべき 仲間が居る …今なら お前が ガルバディア国王に選ばれた理由が 何となくだが 分かる気がするぜ…』
ナイフが音を立てて砕ける ザッツロードがはっとして振り返って叫ぶ
『アシル王子っ!』
アシルが振り返って叫ぶ
『行けっ!ザッツロード!』
ザッツロードが視線を強めて言う
「僕は… 戻らなきゃ…」
デスが微笑する ザッツロードがデスへ向いて表情を悲しめて言う
「…皆の元へ ローレシアへ戻ります」
デスが頷いて言う
「それで良い」
【 ローゼント城下町 第二防衛地 】
ロボット兵たちが横一線になって向かって来る ヴェルアロンスライツァーが悔やみつつ叫ぶ
「第二防衛を破棄する!総員第三防衛へ後退!」
兵士たちが一斉に退避する ラントがヴェルアロンスライツァーの近くへやって来て言う
「あちらのロボット兵は 一向に減る様子が…」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「うむぅ… ソルベキアは 本気でローゼントを… 世界を巻き込んでの戦いを 始めるつもりか…っ …こうなっては」
ヴェルアロンスライツァーがローゼント城を振り返る ラントが叫ぶ
「ヴェルアロンスライツァー副隊長っ!」
ヴェルアロンスライツァーがハッとする ロボット兵がヴェルアロンスライツァーへメイスを振りかぶる ヴェルアロンスライツァーが表情を険しくして盾を構える 二丁銃が放たれヴェルアロンスライツァーの両膝の後ろの鎧に当たる ヴェルアロンスライツァーが驚いて言う
「なぁあっ!?」
ヴェルアロンスライツァーが足をすくわれる様に後ろへ倒れる 倒れたヴェルアロンスライツァーの目前をメイスが空振られる 号令が掛かる
「今だ!撃てー!」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られている目の上を大量の銃弾が過ぎ去る 一瞬の間を置いてロボット兵が倒れる ヴェルアロンスライツァーが身を起こしてロボット兵を見る ヴェルアロンスライツァーの横に人物が現れ言う
「…ロボット兵の攻撃を 盾でなど防げるものではない その重装甲で動けないのであれば 回避する方法を考えろ」
ヴェルアロンスライツァーが振り向きホッと笑んで言う
「ロキ!まさか 貴殿が来てくれるとはっ!」
ロキが両手に銃を持った状態で ヴェルアロンスライツァーを見下ろし 一瞬間を置いてから苦笑し 片手の銃をしまい ヴェルアロンスライツァーへ手を向けて言う
「…家臣たちには 呆れられたがな」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「いつか挽回する その片棒を担がせてくれ」
ヴェルアロンスライツァーがロキの手を取る ロキが微笑して言う
「…当然 担がせる」
ヴェルアロンスライツァーが立ち上がりつつ言う
「先程のは…?」
ロキが言う
「…機関銃部隊 二丁銃を扱えない 一丁でも戦力として足りない連中を 起用した部隊だ」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「以前より 貴殿が気に掛けていた 戦力上昇を諦めた 低ランク銃使いたちか」
ロキが言う
「…スプローニの銃使いとしてのプライドも薄れていた連中には 丁度良いと思ってな」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「なるほど…」
2人がロボット兵たちを見る ロボット兵たちが迫って来る ロキが銃を持って言う
「…その一部隊を連れては来たが それでも」
ヴェルアロンスライツァーが頷いて言う
「ああ… ソルベキアが本気である事が分かった この期に及んでは 我らに残された道は一つ …ロキ 貴殿に頼みがある 私はアンネローゼ様と共に ギリギリまでこのローゼントに留まる よって、貴殿には先行し…」
ロキが言う
「…分かった 奴らへの指示は 卿へ任せる」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して頷いて言う
「了解した ロキ そちらは頼む」
ロキが頷いて言う
「…任せろ」
ロキが去る
玉座の間
伝達兵が言う
「申し上げます!現在ローゼント部隊 及び 応援部隊は ヴェルアロンスライツァー殿下の指示にて!最終防衛ラインにての 防戦体制に入りました!」
大臣がアンネローゼへ向いて言う
「アンネローゼ様っ」
アンネローゼが言う
「はい 残念ながら このローゼントの地を手放さねばならない その時が来てしまった様ですね」
大臣が表情を悲しませる アンネローゼが言う
「城内に避難している住民を 退避路へ向かわせなさい」
大臣がぐっと息を飲んで答える
「…はっ!直ちにっ!」
【 ローレシア城 玉座の間 】
キルビーグが大臣らへ指示を送っている ルーゼックがそれを不満そうに見ていると伝達兵が言う
「ザッツロード王子の御帰城です!」
ルーゼックが表情を明るめる ザッツロードが入って来て キルビーグの前で礼をして言う
「ザッツロード7世 只今戻りました」
ルーゼックが微笑してからキルビーグへ向く キルビーグが軽く微笑して頷く
【 ローゼント城 玉座の間 】
ヴェルアロンスライツァーが現れて言う
「アンネローゼ様っ」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られる 大臣が振り返って言う
「おおっ ヴェルアロンスライツァー殿下」
ヴェルアロンスライツァーが大臣の前にやって来て言う
「アンネローゼ様はどちらへ?」
大臣が微笑して言う
「はい、陛下は予てよりの作戦通り 殿下の部隊が最終防衛線まで後退したとの連絡を受け 城内へ避難していた住民たちと共に エド町へご退避をされました」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られて言う
「む?…確かにそれは 事前の打ち合わせの通りであるが …その一団にアンネローゼ様も加われたのか?」
大臣が作り笑いで言う
「はいっ 何せ エド町とこのローゼントは 前王ハリッグ陛下の折に 少々問題がございまして 従ってアンネローゼ陛下は そのイザコザを処理した上で ローゼントの住民を受け入れて頂けるようにと 住民たちの先頭に立って向かわれました ヴェルアロンスライツァー殿下にも 機を見て エド町へ退避する様にとの御伝言でございます」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られた状態から視線を落としつつ考えて言う
「うむ… そうか 確かにローゼントの多くの民を受け入れてもらうには 国王立っての申し入れが必要にもなるのかもしれん 増してや以前より問題を抱えている町が相手ともなれば… しかし、あのアンネローゼ様が」
大臣が焦る ヴェルアロンスライツァーが首を傾げて考えた後軽く顔を左右に振ってから言う
「いや、何にせよ アンネローゼ様がローゼントを後にしたとあれば 王配とは言え王位を持つ私が 最後までローゼントへ残り始末を付けるのが道理!」
ヴェルアロンスライツァーが気を切り替えて言う
「よし、では住民たちの移動が終わり次第 兵士たちを後退させ 共にエド町へ向かう 大臣 全体の確認を頼む 私も最終防衛線にて周囲の状況を見つつ 前線の兵たちと共に退路へと向かう」
大臣が強く返事を返す
「はっ!」
ヴェルアロンスライツァーが頷き玉座の間を去って行く 大臣が間を置いてから表情を悲しめ横を向く 柱の影にアンネローゼが居る
【 ソルベキア城 地下牢 】
両手両足を拘束されたアシルがニヤリと笑う 看守が怒りに表情を歪め怒って言う
「おのれっ!アシル!貴様ぁ~ よくも脱獄してくれたなぁ!?」
アシルが笑って言う
「あーははははっはー!なぁ~に 俺がその気になれば ざっとそんなもんよ?」
看守がアシルを指差して叫ぶ
「何がざっとだっ!?大体 それが 再び檻に入れられた奴の言う台詞か!」
アシルが微笑して言う
「ふん… まぁ 今回は ローレシアのへっぽこ王子が一緒だったからな そのへっぽこを無事国へ返してやれたんだ 行き場の有る奴を そこへ送ってやれた… それで十分だ」
看守が棍棒を自身の手に振るいながら言う
「くそ…っ 本来であるなら コイツでボコボコに仕置きをしてやる所…」
看守が背を向けて言う
「陛下の客人だと言うのでは仕方が無いっ せいぜい 陛下の求める情報をしっかり思い出してくれる事だっ」
アシルがあざけて言う
「はっはーん?そいつを教えたら お前にボコボコにされた上 情報隠蔽の為 消される… それが分かっていて 俺が何か言うと思うのか?」
看守が悔しそうに歯噛みする ソルベキア兵が看守へ言う
「陛下がお呼びだ 至急 玉座の間へ」
看守が表情を困らせて言う
「陛下が俺を…?…分かった」
アシルが疑問する 看守がアシルを見てムッとしてから立ち去る アシルが微笑して言う
「俺の代わりに たっぷり仕置きをされて来るんだな?」
看守が顔を向け怒りを押し殺して立ち去りつつ独り言を言う
「くそっ もしそうとなったら 例え禁じられておろうとも 1、2発 奴を殴ってやらねば気が済まんっ …そうか、顔でなければ 背や腹であるなら 殴ったとあっても気付かれんな!?よぉ~し」
看守がニヤリと笑んで言う
「ククッ アシルめっ 待っていろ?俺が陛下にお叱りを受けた後は 今までの腹いせも込め お前をっ!」
看守が嬉しそうに棍棒を自身の手に受ける
アシルが上の空で軽く息を吐いて言う
「ふぅ… とは言え いくら何でも ずっと閉じ込めて置くって訳じゃねぇ筈だ おまけに相手はソルベキア ローレシアの監視が完全に離れたとあれば 奴らはいくらだって人畜無常な事をやって来る 俺もこのまま いつまでも無事では済まんだろうな…」
アシルが苦笑して言う
「…ははっ やっぱり 逃げておくべきだったか …何で あいつを庇って捕まったりなんかしちまったんだか …らしくもねぇ事しちまった」
アシルが牢屋の扉を見て言う
「電子錠 あれじゃもう開けられねぇな 今度こそ 外からの助けを待つしかねぇが…」
アシルが苦笑して言う
「あのへっぽこ王子じゃなぁ~ …当てにならねぇな?」
【 エド町 】
ロキが振り返って言う
「…では エドの長へは 貴女が挨拶を?」
エレーナが頷いて言う
「はい アンネローゼ陛下とハリッグ前王陛下の書状を従え 僭越ながら 私めがご挨拶をさせて頂きました」
ロキが言う
「…そうか それで?…エドの町は 貴女たちローゼントの民を受け入れると?」
エレーナが表情を困らせて言う
「はい… とは申しましても それは 一時的にと言う事で エドの町は 今まで通り 中立の立場を崩さず ローゼントの民を一時的に受け入れはしても 守る事は致さず また 一時的にの その言葉の示す通り 例え 両王の書状がありましても 事態が収まり次第 エドの町を去るようにと」
ロキが言う
「…そうか」
エレーナが目を閉じ胸に手を当て静かに案ずる ロキが間を置いて言う
「…それで?」
エレーナがロキを見る ロキが周囲を見渡してから言う
「…その両王 …いや その他にも」
エレーナが疑問する ロキがエレーナを見て言う
「…俺が知る限り 現在ローゼントには 他国を含めた 多くの前王たちが 在城で有った筈だが?」
【 ローゼント国 城下町 】
ローゼックが剣を振り終えた状態で振り返って叫ぶ
「であるからにしてっ!私は貴様との決闘を果たす為 ここに居るのであって!断じて ソルベキアによるローゼントへの奇襲に 参戦している訳ではあらなんだぞっ!?ハリッ…」
ローゼックの顔のぎりぎりを銃弾が掠め ローゼックが目を丸くする ラグヴェルスが硝煙の上がる銃を構えた状態で言う
「…そうであるのなら ロボット兵と満足に戦えぬ卿は下がれ ハリッグを支援する俺の邪魔だ」
ローゼックが怒って叫ぶ
「黙れっ!この6割銃使い!その様な腕では ハリッグの支援すらままならぬわっ!貴様こそ下がらぬか!残りの4割がいつか私を撃ち抜いたらどうするつもりだっ!?見よ!この頬の傷を!」
ローゼックの頬に軽いかすり傷が出来て血が滲む ハリッグが顔を背けて言う
「…力を持たぬ卿が うろうろとするからだ」
ローゼックが怒りを押し殺して言う
「なぁ~にぃ~~っ!?」
ハリッグが通信機をしまい振り返って言う
「二人とも 急な戦いに 巻き込んでしまって済まなかった お陰でローゼントの民は無事 エド町へ逃れたとの事だ これも 諸公が力を合わせ 時間稼ぎをしてくれたおかげである …もっとも そのお陰で」
3人の周囲をロボット兵たちが囲んでいる ハリッグが苦笑笑顔で言う
「我々は 見事に敵の一部隊を引き付け 挙句 周囲を完全に囲われてしまったわけだが はっはっは…っ」
ローゼックが怒って叫ぶ
「馬鹿者っ!ハリッグ!これと言うのも 貴様の即席な作戦 ローレシア、ローゼントの兵らの退避路を確保するが為に 敵部隊を引き付けようと言う作戦を決行した結果だ!お陰で 奴ら兵らの退避路は確保されたが 我々の退避路は絶縁された!この始末を どう致すつもりだっ!?」
ラグヴェルスがハリッグを見る ハリッグが微笑して頷いて言う
「うむ その通り 我々はしっかり ローレシア、ローゼントの兵らへの退避路を確保した上 この場所へ来る事が出来た 私1人では 到底出来なかった事だ 2人には感謝している」
ローゼックが呆気に取られ ラグヴェルスが疑問して 2人が顔を見合わせる ハリッグが懐から宝玉を取り出して言う
「実は これを アンネから 託されていたのだ」
ローゼックとラグヴェルスが驚き ローゼックが言う
「宝玉…!?ソルベキアの王 ガライナをガルバディアから 帰す代わりに ローゼントへ戻されたと言う話であったが… そうか 確かに アンネローゼ女王やあの王配が持っていては」
ラグヴェルスが言う
「…では この奇襲 …ソルベキアの狙いはそれであると?」
ハリッグが軽く顔を左右に振って言う
「それは分かりかねる しかし そうであろうが無かろうが この力を再びソルベキアへ渡す事だけは 何としても 防がなければならない」
ローゼックが表情を困らせて言う
「そうは申そうともっ 現状がこれであっては それすらも ままならぬではあらぬかっ!?」
ラグヴェルスが頷く ハリッグが微笑して言う
「いや、これで良いのだ この場所へたどり着く事が 宝玉を任された私の責務であった」
ハリッグがローゼックとラグヴェルスの間を通って 小さな祠の中へ身を屈める ローゼックとハリッグが疑問して覗き込む ハリッグが小さな祠の祭壇へ宝玉を置く ローゼックが疑問して言う
「うん?…これは …ふむ何処かで見たような?」
ラグヴェルスが言う
「…祭壇っ 宝玉の祭壇が こんな場所に?」
ハリッグが言う
「この祠にはガルバディアより 宝玉の返還を受けると共に頂いた 特別な結界が張られている」
ラグヴェルスが言う
「…つまり ガルバディアの力が 祠を守っていると言う事か?」
ハリッグが頷いて言う
「ああ、ここへ宝玉を置くと同時に その力は起動すると言う事だ 私には分かりかねるが 祭壇へ宝玉を置いた時点で 祠はソルベキアの力では 触れる事も破壊する事もできなくなっているのだろう」
ローゼックが苦笑して言う
「その様な力が存在していたとは …ハリッグ 何故今まで黙って居った?」
ハリッグが苦笑して言う
「うむ それは…」
ラグヴェルスが目を閉じ不満そうに言う
「…どこぞの 誰かが 決闘だ決闘だと 騒ぎ立てていたお陰で 戦略を説明する間が持てなかったのだろう?」
ローゼックが衝撃を受け視線を巡らせ考えた後 慌ててラグヴェルスを指差して言う
「そ… それは…っ …え、ええいっ 黙れっ!6割銃使い!貴様がパンパンと4割も無駄な弾を打ち鳴らしていた騒音のお陰で ろくに言葉を交わす余裕もあらなかったのだっ!」
ラグヴェルスが怒って言う
「なにぃ!?大体っ 先程から黙っておればっ!俺の命中率は7割半であって 決して6割ではないっ!」
ローゼックがあざけて言う
「7割半か!?落ちたものだな!?ラグヴェルス!?かつてのスプローニにおいて 天才銃使いと言われた貴様が!」
ラグヴェルスが怒って言う
「黙れっ!不信王がっ!人の言葉もろくに信じぬ貴様が そんな所だけ素直に信じるなっ!」
ハリッグが苦笑し ローゼックとラグヴェルスがいがみ合っている ロボット兵が動き出す ローゼックとラグヴェルスがはっとして向き直り武器を構える ハリッグが言う
「さあ… これで私の任務は遂行された 後は…」
ローゼックが苦笑して言う
「後は」
ラグヴェルスが閉じていた目を開いて言う
「…こいつらの 相手か」
ローゼックが言う
「ふんっ …こんな機械のポンコツどもが 我が相棒イシュラーンが居れば 我らだけで鉄屑にしてやれたものっ!」
ラグヴェルスが言う
「…その大切な …卿の存在よりよっぽど大切なイシュラーン殿が居らんのだ 従って ただうろちょろして 奴らに振り払われるだけの卿は下がっていろ」
ローゼックが衝撃を受け怒って言う
「ええいっ!今何と申した!?一つ一つに対して怒らせよ!7.5割銃使い!」
ラグヴェルスがそっぽを向く ハリッグが一歩踏み出して言う
「いや、…2人共 ここまで良くぞ付き合ってくれた 私は貴公たちの友情を あの世で自慢させてもらおう」
ローゼックとラグヴェルスがいがみ合っていた状態から驚きハリッグへ向いて ラグヴェルスが言う
「…何を言う ハリッグ」
ローゼックがムッとして言う
「そうであるっ まだ我々は ここで尽きると決まった訳ではっ」
ハリッグが顔を向けないまま頷いて言う
「うむ …尽きるのは 私だけで十分 …ローゼントも 私と共にここで一度絶やされる だが、しかし いつか… いつの日か きっとこの土地はソルベキアから開放され 再び 美しいバラの咲き乱れる ローゼント国として 立ち上がるだろう …貴公たちには その片鱗でも目にして欲しい …ここで塵行く 私の代わりに」
ローゼックが呆気に取られてから周囲を見渡す 見渡す限りに有る多くのバラの花壇は ロボット兵たちに踏み荒らされている ローゼックが表情を落とす ラグヴェルスが言う
「…それは どういう意味だ ハリッグ この状況では …ここで塵行くのは 卿だけに留まらぬはずだ」
ハリッグが微笑して振り返って言う
「あの祠は小さいが ただ身を潜めるだけであるなら 諸公2人が何とか入られるだろう あの中へ入ってさえ居れば 後は ソルベキアのロボット兵たちが去るのを待てば良い」
ローゼックとラグヴェルスが呆気に取られて祠と互いを見る ハリッグが苦笑して言う
「残念ながら 私の様な 大柄なローゼントの男が入るようには作られておらぬのだ ガルバディアの民が小柄である事も去ることながら 我らローゼントの民は 重装備に耐えられるようにと 少々背丈を大きくし過ぎた様だな はっはっはっ」
ローゼックが表情を困らせる ラグヴェルスが沈黙の後言う
「… …そうであろうとも 卿1人であれば それこそ ソルベキアが兵を引くまでの間だけでも 身を隠しておく事は出来た」
ローゼックが言う
「我らは… 協力していたつもりが 逆に 事態を悪化させたと言う事か」
ハリッグが顔を横に振って言う
「いや、それはまったく持ってあらぬ ローゼック殿 そして ラグヴェルス 諸公が居てくれねば 私は間違いなくこの場所までたどり着く事は出来なかった 諸公は 私と 再び宝玉を託された このローゼントの救世主であったのだ」
ロボット兵がハリッグの前に立ち武器を振り上げる ハリッグが微笑して言う
「さぁ、行ってくれ ローゼントが例え一時とは言え 絶えるのであれば その地で塵行くのはローゼントの王族である私であって当然!…ありがとう 2人とも 諸公は 私の 最高の親友であった」
ローゼックとラグヴェルスが呆気に取られる ハリッグがロボット兵へ向き直り剣を引き抜いて言う
「我が名は ハリッグ・レーンツェ・ローゼント!ローゼントに光をもたらす者!例え今 貴様たちソルベキアに討ち取られようとも 我が光は再びこのローゼントの地を 照らすであろう!」
ロボット兵が武器を振り下ろす ハリッグが盾を構える 銃声が鳴り ロボット兵の目が破壊され ロボット兵の武器がハリッグの横に振り下ろされる ハリッグが呆気に取られ振り返る ラグヴェルスが銃を撃ち終えた状態で言う
「…ラグヴェルス スファルタス メルロルン ベイク ワイッサ シュトルゼリン フォルラー 友情の名の下に 自国の任務を終えた後に その真価を見出す銃使い …まさか 我が命名を まっとう出来る場に遭遇するとは その名を与えた当の父とて 今頃あの世で驚いているだろう」
ハリッグが呆気に取られて言う
「ラグヴェルス…」
ハリッグが困り怒って言う
「ラグヴェルスっ 貴公はローゼック殿と共に 祠へっ!」
ローゼックが剣を振りかざして言う
「何をしている!?ハリッグ ラグヴェルス!邪魔な機械人形などさっさと潰し 再び周囲を 美しいバラで飾った舞台にて 我らの決闘の決着を付けねばならぬ!」
ハリッグが驚いてローゼックを見る ローゼックが剣を構えニヤリと笑んで言う
「いいや… やはり 私はバラの花が再び咲くまでと 悠長に待っては居れぬな 代わりに この機械人形どもの残骸で飾った舞台と言うのも 悪くない」
ラグヴェルスが笑んで言う
「…卿には そちらの方がお似合いだな …イシュラーン殿ならともかくとして 花の美しさなど卿には分かるまい?」
ローゼックが笑んで言う
「それは貴様も同じではあらぬのか?ラグヴェルススファルタスメルロルンベイクワイッサシュトルゼリンフォルラー?」
ラグヴェルスが苦笑して言う
「…ふん 否定はしない この機械人形たちの残骸で作られた 舞台であるというのなら 俺も 好みだ」
ローゼックが笑う
「ククッ… では その舞台での決闘は 互いの相棒を交えての 決闘ぞ!」
ラグヴェルスが笑んで言う
「…良いだろう ならば 今この瞬間だけは ここに居らん イシュラーン殿の代わりに 卿のサポートも俺が行ってやる」
ローゼックが呆気に取られる ラグヴェルスが言う
「…今までの戦いで 卿の動きも把握した …今なら ハリッグと共に 卿のサポートも可能だ」
ローゼックが驚いて言う
「…では 今までの あの 危なっかしい4割の銃弾は」
ラグヴェルスが言う
「…卿のサポートを行う練習だった 完全ではないが 今を置いて 他に実践する時が無い …きっと また外れるものがあるだろうが」
ローゼックが笑んで剣を構えて言う
「構わぬ!どんと来るが良い!一、二発くらい 間違って撃たれようが 私は倒れはせなんだっ!」
ラグヴェルスが微笑して言う
「…そうか、では 5,6発くらいの覚悟を」
ローゼックが慌てて言う
「5,6発は厳しいわっ!それより 可能な限り 当たらぬように致さぬかっ!馬鹿者っ!」
ロボット兵たちが近づく ローゼックが気を切り替えて言う
「…っと」
ラグヴェルスが言う
「…卿との無駄話も これで終わりだ」
ローゼックが笑んで言う
「後は …あの世とやらで ゆっくり致そうではあらぬか?」
ハリッグが言う
「ラグヴェルス ローゼック殿まで…っ!?」
ラグヴェルスが言う
「…俺は あの祠の中から 俺の相棒が散り行くのを 黙って見てなどは居られん」
ローゼックが笑んで言う
「そして、ここまで来たのだ 好い加減 ローゼック“殿”と言う 他人行儀は改めよ ハリッグ」
ラグヴェルスが言う
「…デネシアの我流剣士殿は ローゼックと言う名らしい 俺も今初めて知った」
ローゼックが怒って言う
「黙れっ!7.5割り銃使いっ!」
ラグヴェルスが衝撃を受ける ハリッグが苦笑して言う
「…すまない 2人とも しかし …ありがとう 我が相棒 ラグヴェルス そして 我が親友 ローゼック」
ローゼックとラグヴェルスが微笑する ローゼックが叫びながら向かう
「礼など要らぬわ!剣士とは戦場で戦い 戦場で散る者よ!」
ラグヴェルスが銃を構えて言う
「…ソルベキアとの因果 今ここで 全てを撃ち晴らす!」
ハリッグが剣を振りかざして言う
「ローゼントは 永遠に ソルベキアには従わぬ!例えこの地を踏み荒らされようとも!」
3人がロボット兵へ立ち向かう 祠の中で宝玉が輝いている
【 ローレシア城 玉座の間 】
ザッツロードが怒って叫ぶ
「何故です!?父上!」
ザッツロードが踏み出して言う
「ローレシアが この度の事態へ対する抗議文を ソルベキアへ送れないだなんてっ」
キルビーグは目を閉じて聞いている ザッツロードが怒って叫ぶ
「ローレシアは!何故ソルベキアを恐れているのですか!?これでは ソルベキアと手を切る以前の方が よっぽどましでした!ローレシアはいつからソルベキアの配下にっ!」
ルーゼックが言う
「その辺にしておくのだ ザッツロード王子」
ザッツロードがルーゼックを見て言う
「ルーゼック陛下…!?しかしっ!」
ルーゼックが言う
「キルビーグとて 何か打てる手があるのならば行っている …無論 私も」
ザッツロードが一瞬呆気に取られた後 視線を落とし巡らせてからキルビーグへ向いて言う
「私の収監へ対する抗議の文を送った所で 謝罪の言葉が返ってくるとは思っていません しかし!ローレシアとして ソルベキアへ 私を助けてくれたアシル王子の身柄の 引渡しを要求する事でしたらっ 可能性はあります!アシル王子のスプローニは 今ならこのローレシアとも縁があり その国の王子を救おうとするのは ローレシアにとって何ら不利になるような事にはなりません!ですから 父上!」
キルビーグが沈黙する ザッツロードが叫ぶ
「父上っ!」
ルーゼックがキルビーグを横目に見てからザッツロードへ言う
「…その件に関しても」
ザッツロードがルーゼックを見て言う
「ルーゼック陛下っ」
ルーゼックが間を置いて言う
「…その件に関しても 打てる手立てがあるのであれば 貴様の脱獄へ手を貸したと聞き及んだ時点で行っていた」
ザッツロードが呆気に取られる ルーゼックが言う
「ザッツロード王子 キルビーグはローレシアの王として 貴様の父親としても 行えうる事は行い 常に最良を求めておる …そして、経緯はともかく 貴様はローレシアへ戻った」
ザッツロードが慌てて言う
「しかしっ!まだ アシル王子が!」
ルーゼックが言う
「アシル “元” 王子であろう?きゃつは今 スプローニの王位を失った その者の釈放を求める事は 自国の王子の釈放を求めるより難しいのだ」
ザッツロードが表情を困らせ 再び言い及ぼうとする
「し、しかしっ」
ルーゼックが言う
「しかしっ!…貴様が世話になったとあっては ローレシアとて動く理由にもなりよる …よって 再び最良の手段を講じ 勤める努力は行うっ!…今はそれで精一杯だ 理解せよザッツロード」
ザッツロードが呆気に取られた後視線を落とし 一度目を閉じてから改めてルーゼックへ言う
「…分かりました ルーゼック陛下 そして、父上」
ザッツロードがキルビーグを見て言う
「何らかの手段を講じるのでしたら その際は 必ず 私にも協力をさせて下さい!」
キルビーグが目を開き頷いて言う
「うむ …お前の思いは分かった」
ザッツロードが表情を落としつつ礼をして言う
「…有難うございます」
ザッツロードが立ち去る キルビーグが息を吐く ルーゼックが言う
「…で?どう致すつもりだ?」
キルビーグが視線を落として言う
「先程 ローゼントへ向かわせていた魔力者たちが帰還した ローゼントはソルベキアの手に落ちたとの事だ しかしながら 犠牲は最小限に 民や多くの兵士は生きながらえたと」
ルーゼックが言う
「…とは申そうとも 国を追われた その者たちはどうなる?そして ソルベキアの狙いは?」
キルビーグが顔を左右に振ってから言う
「分からぬ ソルベキアの真意も ローゼントの今後も そして…」
ルーゼックが疑問して言う
「そして?」
キルビーグが言う
「ガルバディアの… 我らの神の動きも」
ルーゼックが視線を強める
【 ガルバディア城 】
美しい草原の上 暖かい日差しの下 ヴィクトールが気持ち良さそうに眠っている そこへ バーネットの叫び声が届く
「だぁああっ!くそぉおお!ド畜生がぁああっ!」
ヴィクトールが驚き飛び上がって言う
「え?何っ!?バーネット!?」
ヴィクトールが立ち上がって駆け出すと 周囲のホログラム光景が消え ガルバディア城玉座の間に戻る ヴィクトールが玉座に座るバーネットの元へ駆け付け 顔を覗き込んで言う
「バーネット!?どうしたの!?バーネット!?」
バーネットが不満そうに言う
「…どうもしねぇ」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後困って言う
「どうもしないって!?だったら さっきのは?何かあったんでしょ!?バーネット!?」
バーネットが不満そうに言う
「…何もねぇ」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後表情を困らせて言う
「何もねぇって… そんな訳ないよっ バーネット!教えて!一体何がどーしたのっ!?」
バーネットが怒って言う
「うるせぇええ!何もねぇえんだ どいつもこいつも 何もどーも言って来ねぇえんだ!畜生がぁああ!!」
バーネットがヴィクトールを鞭で縛り上げる ヴィクトールが痛がりながら言う
「いたぁ~いっ バーネットっ 何!?一体 何も どーも言って来ないって それって どー言う意味ぃい!?」
バーネットが不満そうに玉座に頬杖を突いて言う
「どー言うも何もねぇ!そのまんまの意味だぁ… 別大陸へぶっ飛ばした連中へ送った連絡に 返信が来ねぇ… シリウス国王へ送った通信にも返事がねぇ シリウスBに送った状況確認の連絡にも返事がねぇ… ローゼントへ攻撃を仕掛けやがった ソルベキアへ送った通信も遮断しやがった …誰一人 俺からの連絡に何も返事を返さねぇえ!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「それは… バーネット」
バーネットが不満そうに視線をヴィクトールへ向けて言う
「あぁ?」
ヴィクトールが苦笑笑顔で首を傾げて言う
「別大陸へ向かわせた彼らは 何か重要な事が起きたり分かったりした時まで 極力通信は避けるようにしようって事だったし、シリウス国王に通信が繋がらないのは ずっと以前からだし シリウスBと連絡は しばらく取らない事に決まっていたし ソルベキアは元々 他国と通信連絡をするような国じゃなかったじゃない?それら何処からも返事が来ないのは 当然なんじゃないかな~?えへっ」
バーネットが不満そうに視線を逸らして舌打ちして言う
「チッ… んな事は分かってやがるが… てめぇは 猫の癖に んな難しいこと言いやがるんじゃねぇっ!」
ヴィクトールの付け猫耳が目立つ ヴィクトールが苦笑する バーネットが溜息を吐いて言う
「まぁ 最初の3つはそうとしてもだ …こっちとら 代理とは言えガルバディア様の王だぞ? その俺からの通信を無視しやがるなんざ ソルベキアは何考えてやがる?まさか 本当にこの大陸の連中や このガルバディア様に歯向かおうってぇのかぁ?」
ヴィクトールが首を傾げて考えて言う
「う~ん… それじゃぁ」
バーネットが疑問する ヴィクトールが微笑して言う
「僕が行って 直接聞いてこようか?」
バーネットが驚いて言う
「あぁっ!?な、何言ってやがるんだっ!?てめぇえはぁあっ!?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「ガルバディア城から出ないで 何でも出来るバーネットと違って 僕はこの城で ただ昼寝をしたり 遊んだりしてるだけで 正直 何の役にも立って居ないじゃない?ソルベキアなら 僕も少し暮らした事があるから 迷わず行けるし これで バーネットの 通信の返事がなかった事へのイライラを 一つでも解消できるなら!…って訳で!さっそく!」
バーネットが怒りを爆発させて言う
「何勝手な事言ってやがる!馬鹿野郎がぁああ!!」
ヴィクトールが驚いて目をぱちくりさせる バーネットが凄んで言う
「んな事しやがったら… てめぇが この城から居なくなっちまうじゃねぇか…?」
ヴィクトールが疑問して首を傾げて言う
「え?…う、うん そうだね ソルベキアへ行っている間 僕はこの城には」
バーネットがヴィクトールの襟首を掴んで言う
「…それとも てめぇは なにかぁ?そんなに 俺の側から離れてぇのか?あぁっ!?」
ヴィクトールが言う
「ち、違うよ バーネットっ 僕はただ 君の苦しみを少しでも 拭ってあげたいと思ってっ」
バーネットが怒ってヴィクトールを縛り上げて言う
「だったら 離れようとなんざ しやがるんじゃねぇえよ!この馬鹿野郎がぁ!!」
ヴィクトールが痛がりながら言う
「ああぁ~~っ わ、分かったよバーネットっ ごめんなさいっ 僕 そんなつもりは ああっ!そ、そこはっ!君の愛が…っ 愛が痛いよぉお~~ バーネット~」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「なぁっ!?て、てめぇは またそんな誤解を招く言葉をっ」
鞭の音が響く
【 エド町 】
ローゼントの兵士たちが消沈している ヴェルアロンスライツァーが周囲を見渡しながら歩いて来て叫ぶ
「アンネローゼ様っ!?誰かっ アンネローゼ様を知らぬかっ!?」
ロキが現れて言う
「…ヴェル 卿も来たか」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚いて言う
「ロキ!…助かった 貴殿のお陰で ローゼントの民は皆 無事このエドの地まで退避出来た」
ロキが視線を逸らして言う
「…ああ、彼らの退避の手伝い程度なら可能だったが …やはり俺自身は ソルベキアの兵へ 直接銃を向ける事は出来ない」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「うむ、分かっている スプローニからは更なる援軍を送ってもらった 十分感謝している」
ロキが目を閉じて言う
「…俺が 一兵士のままであれば その援軍に加わる事も可能であったのだがな」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「それは このヴェルアロンスライツァーも同じ 互いにそれは仕方なしとしようではあらぬか?」
ロキが微笑して言う
「…そうだな」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して頷く エレーナが現れて言う
「殿下…」
ヴェルアロンスライツァーがエレーナへ振り返って言う
「エレーナ!貴女も無事で何よりだ!…して、アンネローゼ様はどちらに?」
ロキがヴェルアロンスライツァーへ向いて言う
「…卿は 一緒ではなかったのか?」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「私は兵士たちとともに 皆の退避が終了するまで戦うようにとされていた アンネローゼ様は先にエドへ向かい 民の受け入れを願い入れるとの事であったのだが …この様子からして その願は受け入れられたものと」
エレーナが言う
「はい、民の受け入れは 一時的に許可されました しかし、長期の受け入れは許容出来ないと」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「…そうか うむ それでは それを理由に アンネローゼ様は 他国への申し入れにでも?」
エレーナが言う
「いえ、そちらの申し入れは ヴェルアロンスライツァー殿下に 行っていただけないものかと…」
ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「私に?…それは かまわぬが アンネローゼ様からの御指示か?」
エレーナが表情を困らせて言う
「いえ… 私めの勝手な判断にございます」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬呆気に取られてから言う
「うん?それは如何なる意味か…?」
ヴェルアロンスライツァーが気を取り直して言う
「…では それを私が致すにせよ まずはアンネローゼ様へ御報告と 今後の御予定を伺わねば エレーナ、アンネローゼ様はどちらに居られるのか?貴女ならば 知っている筈」
エレーナが目を伏せる ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「エレーナ?」
ロキが間を置いて言う
「…なるほど 可笑しいとは思って聞いていたが やはり」
ヴェルアロンスライツァーが疑問してロキを見た後 エレーナへ向いて言う
「それは…?一体どう言う事かっ?エレーナっ!?」
エレーナが伏せていた目を開き 表情を悲しめて言う
「ヴェルアロンスライツァー殿下 実は 姫様は…」
ヴェルアロンスライツァーが目を見開く ロキがヴェルアロンスライツァーを見る エレーナが泣き崩れる ヴェルアロンスライツァーが走り出す ロキが叫ぶ
「待て!ヴェル!ヴェルアロンスライツァーっ!」
ヴェルアロンスライツァーが走り去って行く
【 ローゼント城 門前 】
戦火の中 アンネローゼが強い意志の元立っている 周囲をロボット兵が囲い 軍隊長がアンネローゼの前に立っていて タブレットモニターを見て言う
「ふん… 最後まで足掻くから 何があるのかと思って見ていたが …ローゼントの前王 ハリッグは 自国の最期を知り 悪足掻きに戦っただけの様だ お前も見るか?父親の最期の顔だぞ?」
アンネローゼが一瞬驚き視線を落とした後 再び視線を強めて軍隊長を見て言う
「このローゼント国の王族である 私と私の父が この地で倒れるのは当然の事です 国が敗れた以上 王が生き延びる事は許されません」
軍隊長が笑んで言う
「フンッ… 気丈だな?ローゼントの赤い薔薇 アンネローゼか… その美しさは ローゼントの他 2つの国を虜にしたと言う だが その2つの国 ツヴァイザーもシュレイザーも お前の最期には 何の助けも送ってくれぬようだなぁ?所詮は 唯のお飾りに過ぎなかったわけか?」
アンネローゼが言う
「何とでも仰りなさい ツヴァイザーもシュレイザーも この戦いに加勢してくれると いち早く声を掛けて下さりました しかし、戦いの中ではなく 他の事柄で加勢して頂く事に致したのです 貴方の様な下位の者には分からないお話です」
軍隊長がムッとして言う
「なんだとっ この女がっ!」
軍隊長がアンネローゼの頬を引っ叩く アンネローゼが一瞬目を閉じ叩かれるが すぐにキッと強い視線で見返す 軍隊長がムッとして言う
「クッ… 気の強い女だ 流石は女王様といった所か だが…」
軍隊長がアンネローゼの体をいやらしい目で見て笑んで言う
「伊達に3つの国にチヤホヤされるだけはある 歳は行っても ローゼントの薔薇とは 美しいものだなぁ?クックック…」
アンネローゼが強い視線で言う
「私を殺し その映像を ソルベキアへ送るのが 貴方の役目ではないのですか?父にした様に!」
軍隊長が笑んで言う
「ああ お前の死に姿と この城の破壊された映像を ソルベキアへ送るのが俺の役目だ ハリッグ前王は指示に無かったが これは 特別報酬にもなり兼ねるだろう ツイてたぜ」
アンネローゼがムッとする 軍隊長が笑んで言う
「ハッハッハー まったく 今日の俺はツキまくっている ハリッグ前王の特別報酬に継いで お前ほどの …良い女を頂けるチャンスまで 得られたんだからなぁ?」
軍隊長がタブレットモニターを確認しながら言う
「ソルベキアの城下で ちょいと問題が起きたお陰で 制圧を終えたうちの部隊を急遽向かわせる事になった …お陰で 今ここに居るのは お前と俺の2人きり… 後は俺の命令で動く このロボット兵たちだけだ… これがどう言う事か 分かるか?女王様?」
アンネローゼがムッとする 軍隊長がアンネローゼの胸元に手を掛ける アンネローゼが驚き怒って手を振り払って叫ぶ
「何をするのですっ!戦時においても 他国の王を辱める事は許されませんっ!あなたは自国の …ソルベキアの地位を 落とすつもりですかっ!?」
軍隊長がニヤリと笑んで言う
「へっへ… そんな事 証人が居なければ分からん事だ 大人しく俺にやられろっ 女王様よぉおっ!?」
軍隊長がアンネローゼの胸元のドレスを破る アンネローゼが悲鳴を上げる
「きゃぁあっ!」
軍隊長が嬉しそうに笑んで言う
「はははっ 良いぞ!その反応だ!やっぱり いくら気丈だろうと 所詮は女だな?」
軍隊長がアンネローゼを押し倒す アンネローゼが逃れようともがきながら言う
「お止めなさいっ!」
軍隊長が喜んでアンネローゼの胸を片手で鷲掴みにして もう片方の手で アンネローゼの手を押さえつけて言う
「残念だったな?ここにはもう お前を守ってくれるローゼントの騎士様は いねぇえんだよっ!」
軍隊長がアンネローゼを襲う アンネローゼが悲鳴を上げて叫ぶ
「嫌ぁっ!止めてっ!助けて…っ ヴェル… ヴェルアロンスライツァーっ!」
軍隊長がニヤリと笑む アンネローゼが怯える ヴェルアロンスライツァーの声が届く
「アンネローゼ様っ!!」
アンネローゼがハッとする 軍隊長が驚き言う
「な?…まさかっ!?」
軍隊長が驚いた表情のまま顔を上げた瞬間 ヴェルアロンスライツァーの右ストレートに悲鳴を上げ吹っ飛ばされる
「ぎゃあっ!」
軍隊長がロボット兵にぶち当たり地に腰を落とす ヴェルアロンスライツァーがマントでアンネローゼの乱れたドレスを隠し 荒れる息のまま言う
「アンネローゼ様… はぁはぁ… 遅く… なり 申し訳… はぁっ ありません…」
アンネローゼが喜びと安堵で涙ぐみながら ヴェルアロンスライツァーに抱き付いて言う
「ヴェルアロンスライツァー… 来てくれたのですね…」
ヴェルアロンスライツァーが微笑してアンネローゼを支える 軍隊長が殴られた頬を押さえつつ 痛そうに立ち上がって言う
「…くっ まさか まだ残っていたのかっ センサーには 映らなかったと言うのに…」
ヴェルアロンスライツァーが軍隊長へ顔を向け アンネローゼを庇いつつ立ち上がらせる 軍隊長が笑んで言う
「とは言え たった一人が 今更来たところで 何も変わらんわっ!精々俺のロボット兵たちに 今の何倍もの力で殴り潰されるが良いっ!」
アンネローゼがハッとしてヴェルアロンスライツァーを見上げる ヴェルアロンスライツァーが軍隊長を見据えている 軍隊長がタブレットモニターを操作して言う
「なるほど… ヴェルアロンスライツァー このローゼントの王配か それならここに残った理由も頷ける そして …ククッ 特別賞与の倍増か!こいつは良いっ!」
軍隊長が手を振り払って叫ぶ
「ロボット兵たちよ!命令変更だ!そこに居るヴェルアロンスライツァーを殺せ!」
アンネローゼが驚きヴェルアロンスライツァーを見上げる ヴェルアロンスライツァーが軍隊長を見たまま笑んで言う
「よし… これで良い」
アンネローゼが驚いて言う
「『良い』とは?ヴェルアロンスライツァー… そ、そうだわ!わ、私は 貴方に ローゼントの民たちを任せようとっ!」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼへ向き微笑して言う
「アンネローゼ様 申し訳ありません 私は エレーナを通じ仰せ付かった そちらの御命令には従えません」
アンネローゼが驚く ヴェルアロンスライツァーがすまなそうに微笑して言う
「私は… このヴェルアロンスライツァーは 王を守る剣 アンネローゼ様 貴女様の御傍に居られず 残された命にのみに従って 生きのびられるほど 私は器用な男ではないのです …どうか お許しを」
アンネローゼが苦笑して頬を染める ロボット兵が近くへ寄ってくる その足音にアンネローゼがハッとして周囲を見る 軍隊長が言う
「良いか!?その女は傷付けるな その女には まだ用があるからな…?そいつを済ませるまでは 生かしておくんだぞ?」
軍隊長が笑う アンネローゼがムッとする ヴェルアロンスライツァーがロボット兵へ視線を向けたまま言う
「アンネローゼ様」
アンネローゼがハッとしてヴェルアロンスライツァーを見上げて言う
「はい ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが視線を向けないまま言う
「奴ら ロボット兵たちは 私を標的としました そして 程良い事に アンネローゼ様の身を傷付けるなと」
アンネローゼが不満そうな表情をする ヴェルアロンスライツァーが続ける
「よって、どうかこの隙に アンネローゼ様は ローゼントから お逃げ下さいっ」
アンネローゼが驚いて言う
「えっ…!?」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼへ向き苦笑して言う
「残念ながら そう長い時間は稼がれないでしょう ですから エド町への脱出路を 急ぎ走って下さい きっと その先には 私と共に アンネローゼ様の事態を知った ローゼントの兵たちが迎えに上がっている筈 どうか その場所まで」
アンネローゼが驚き呆気に取られ 慌てて言う
「そ、それでは 貴方がっ!」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「はっ!このヴェルアロンスライツァー 最期の時まで アンネローゼ様を守る剣として 戦い抜くと誓います!ですので どうか…っ!」
アンネローゼが泣きそうな表情で言う
「そんな… そんな…っ」
軍隊長が叫ぶ
「やれー!その男を叩き斬れー!」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼから離れ 剣を引き抜いて言う
「さあっ!行って下さいっ アンネローゼ様!」
アンネローゼが言う
「ヴェルアロンスライツァーっ!」
ヴェルアロンスライツァーがロボット兵へ叫びながら立ち向かう
「うおぉおおーー!」
ヴェルアロンスライツァーの剣がロボット兵の装甲に弾かれる ロボット兵が武器を振りかざす ヴェルアロンスライツァーがそれを避ける 別のロボット兵が武器を振り下ろす
アンネローゼが胸元で手を握り締めつつ 表情を困らせる ヴェルアロンスライツァーがロボット兵の武器を盾で防ぐ 盾が武器の衝撃に歪む ロボット兵が武器を振り下ろす ヴェルアロンスライツァーが退避する アンネローゼが一歩後づ去る
ロボット兵が武器を振るう ヴェルアロンスライツァーが盾で防ぐ 盾ごとヴェルアロンスライツァーが衝撃に押される ロボット兵がヴェルアロンスライツァーの盾を掴み上げる アンネローゼがハッとして見上げる
ヴェルアロンスライツァーが持ち上がられロボット兵の顔の近くまで上がると ヴェルアロンスライツァーが剣でロボット兵の首筋に有る配線を叩き斬る ロボット兵が感電して動きを止める ヴェルアロンスライツァーが盾を手放し 地に下りると剣を構える アンネローゼがぐっと目を閉じ逃げ出す
軍隊長がヴェルアロンスライツァーへ怒りの視線を向けて言う
「くそっ!あの程度の攻撃に 1体やられただとっ!?…何をしている!早くそいつを殺せ!」
ヴェルアロンスライツァーが剣を構えた状態で 先程までアンネローゼが居た場所を見る アンネローゼは居ない ヴェルアロンスライツァーがホッとして言う
「…良し、後は 何とかもう少し 時間さえ稼がれれば」
ヴェルアロンスライツァーが剣を構える ロボット兵が武器を振るい下ろす ヴェルアロンスライツァーが微笑してそれを避ける と同時に後方からロボット兵の武器が振るわれ ヴェルアロンスライツァーの背に直撃する ヴェルアロンスライツァーが目を見開き吐血する ヴェルアロンスライツァーが前のめりに一二歩行くと 前方から再びロボット兵の武器が振るわれヴェルアロンスライツァーが 後方へ吹っ飛ばされ城壁に叩き付けられる ヴェルアロンスライツァーが目を見開いたまま衝撃に身を歪ませそのまま地へ落ちる 軍隊長が笑んで言う
「よーうしっ!いいぞ!そこだ!そこでトドメを刺せっ!」
ロボット兵がヴェルアロンスライツァーへ武器を突き向ける ヴェルアロンスライツァーが顔を上げ 向かって来る武器を見て苦笑して言う
「これ まで… か…」
ヴェルアロンスライツァーがゆっくり目を閉じようとして思う
『アンネローゼ様…』
肉を突き抜く音と共に ヴェルアロンスライツァーへ向けられていた武器が反れ ヴェルアロンスライツァーの横の城壁に突き刺さる ヴェルアロンスライツァーの閉じようとしてた目が止まり 再び開かれ 共に驚きの表情に変わる 軍隊長が驚いて言う
「なぁっ!?」
ロボット兵が一瞬間を置いてから 武器を引き戻す 武器が城壁から抜け ヴェルアロンスライツァーの目の前で ロボット兵の武器が貫いた アンネローゼの胸を抜けて 戻って行く ヴェルアロンスライツァーが声を出せないままに見つめる先で アンネローゼが地に崩れる 軍隊長が悔しそうに言う
「な…っ!何と言う事だっ!折角の上玉をっ!死体では何の価値もないっ!このポンコツどもがっ!」
ヴェルアロンスライツァーがショックに声も出せないまま アンネローゼの身に近寄る アンネローゼが苦しそうに目を開き 自分に触れようとしているヴェルアロンスライツァーの手に触れて言う
「ご… め… な… さい… ヴェル… ア ロ… ラ… ァ… わ たし…」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼの傷を見て呆気に取られたまま涙を流す アンネローゼが微笑して言う
「わ…たし だっ て… あ…なた の… そ… ばに… い… たいの… … あ…なた のこと… を… ずっと… ず…っと…」
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見上げて言う
「ヴェル… アロ… ツァ…」
ヴェルアロンスライツァーが必死に声を出す
「ア、アンネローゼ… 様…っ」
アンネローゼが微笑んで言う
「愛して る わ…」
ヴェルアロンスライツァーが目を見開く アンネローゼが微笑んでから静かに息絶える ヴェルアロンスライツァーが叫ぶ
「あ… あ… あぁああああーーーっ!!」
軍隊長が言う
「くっそぉ… こうなれば任務の完了と 特別賞与2つで我慢するか… よし!ロボット兵たちよ 命令だ もう一度 ヴェルアロンスライツァーを…」
軍隊長が言い掛けた所で 軍隊長の顔の横を銃弾が掠める 軍隊長が目を見開き視線を上げる 城壁の上にロキが銃を撃ち終えた状態で言う
「…フリーズ その命令の続きを言おうものなら」
軍隊長が驚きに呆気に取られ口を開けたまま止まる ロキが言う
「…卿が発する事の許される言葉は1言 “撤退” だ」
軍隊長が悔やんで言う
「ぐぅう~~~っ」
ロキが視線を強め 引き金の指を動かす 軍隊長が慌てて言う
「…っ …て、 撤退っ!」
ロボット兵たちが顔を上げ ゆっくり退路に付く 軍隊長が悔しそうに視線を落とす ロキが銃を向けたまま軍隊長の前へやって来て言う
「…無論 撤退は ロボット兵だけにあらず」
軍隊長が慌てて叫ぶ
「くそぉっ!覚えていろっ!」
軍隊長が逃げて行く ロキが銃をむけたまま 視線をヴェルアロンスライツァーへ向ける ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼを抱きしめたまま動かない ロキが軍隊長の逃げた先と ヴェルアロンスライツァーを交互に見た後 銃と視線はそのままにヴェルアロンスライツァーの元へ近づいて言う
「…俺は スプローニの王として 奴を撃つ事は出来ない … … …すまない」
ロキがヴェルアロンスライツァーを横目に見る ヴェルアロンスライツァーに反応は無い ロキが軍隊長の逃げた先を見る ロボット兵も軍隊長も遠くに居る ロキが構えを解除しヴェルアロンスライツァーへ向き直る ヴェルアロンスライツァーは動かない ロキがヴェルアロンスライツァーを見た後 視線を泳がせ ローゼント城を見上げてから一息吐いて 銃をしまって ヴェルアロンスライツァーの横に屈んで言う
「…卿の後を追って それほど間を置かず到着した だが あの指揮官を狙える機を …得られなかった アンネローゼ女王が卿を庇わなければ 俺も 打つ手が無かっただろう」
ロキがアンネローゼを見る アンネローゼの傷を見て 視線を落とす 一度目を閉じ 気を取り直してヴェルアロンスライツァーを呼ぶ
「…ヴェル?」
ヴェルアロンスライツァーに反応は無い ロキが一度困ってから 再び呼んで言う
「…ヴェル 卿の気持ちは分かるが ここは危険だ エドへ向かおう …立てるか?」
ロキがヴェルアロンスライツァーの反応を待つ ヴェルアロンスライツァーは動かない ロキが驚き強く呼ぶ
「ヴェル?…ヴェル!?返事をしろっ!?ヴェルアロンスライツァーっ!?」
ロキがヴェルアロンスライツァーの肩を押す ヴェルアロンスライツァーの身が少し上がり ロキがヴェルアロンスライツァーの顔を覗き込んで呼ぶ
「おいっ ヴェルっ!」
ヴェルアロンスライツァーは目を開いたまま放心状態で止まっている ロキが呆気に取られた後 一度目を伏せ 立ち上がって通信機を取り出し 通信して言う
「…俺だ 直ぐにローゼントへ救護班を 怪我人は2名 内 1名は… …既に 亡くなっている」
ロキがヴェルアロンスライツァーを見下ろす ヴェルアロンスライツァーは放心したまま動かない
【 ソルベキア城 地下牢への道 】
看守が視線を落として歩いている 脳裏に回想が浮かぶ
回想
玉座の間
看守が驚いて言う
『へ、陛下っ!?今っ な、何とっ!?』
ガライナが視線を細めて言う
『地下牢へ置いている あのアシルを 始末しろと言ったのだ もはや奴に用は無い 何処かからでも 釈放を要求されたり 万が一再び脱獄などされたら 他国へ情報が漏れる事となろう 従って …今すぐに奴を 殺せ!』
回想終了
看守が一度目を閉じてから言う
「奴を… この手で殴ってやりたいと 何度思った事か… この棍棒で 思いの限り 殴り付けてやろうと… だが…」
看守が棍棒をしまい 拳銃を取り出して見つめて言う
「コイツを使う日が… 来るなどとは 思っても居なかった…」
看守が目を細め瞑ってから気を取り直して言う
「ええいっ!何を言っているのだっ!?俺はっ!?殴るでも殴りつけてやるのでもない!一思いにやれるのだ!ここは 胸を張りっ!意気揚々とっ!」
看守が言い放った後 脱力して言う
「…はぁ 何故だ 何故 …こんな気分になる?もう一度… 今こそ もう一度 脱獄していて 欲しいなどと…」
看守が目を開きギョッとして言う
「…のわぁっ!?」
看守の目の前に 1匹の犬が居て嬉しそうに吠える
「わんっ!」
看守が呆気に取られたまま瞬きして言う
「な… なんで 犬が?城内に…?…はっ!ま、まさかっ!?」
看守が視線を強めて言う
「まさか 貴様は スプローニの先住民族のっ!?アシル王子を助けに来たのかっ!?」
犬のベルグルが嬉しそうに尻尾を振って吠える
「わんっ!」
看守が慌てて言う
「こ、こうしては居れんっ!大変だっ!スプローニのっ…」
看守が声を上げようとして止まる 犬のベルグルが尻尾を振って嬉しそうに息をする
「ハッ ハッ ハッ…」
看守が唇をかみ締め 犬のベルグルへ向いて言う
「ガライナ陛下は 俺へ アシル王子の始末を 命じられた」
犬のベルグルが真剣な表情で唸って言う
「うぅ~… うぅ~」『知ってるッス!さっき聞こえてたッスよ!』
看守が言う
「だが… 俺には… くそっ こうなれば もう 仕舞だっ!」
犬のベルグルが疑問して首を傾げる 看守がカードキーを差し出して言う
「奴の居場所は分かるだろう?これが… 奴を閉じ込めている 牢の鍵だ 分からなければ 奴へ渡せば分かるっ」
犬のベルグルが喜んで吠える
「わんっ!」
犬のベルグルが看守の手から カードキーを受け取って咥え 嬉しそうに尻尾を振って看守を見上げる 看守が苦笑して言う
「俺は一足先に ここで逃げさせてもらうからな?後はお前たちだけで何とかしろよ?それから …奴に一言伝えてくれ」
犬のベルグルが去ろうとして振り返る 看守が笑んで言う
「この借りは いつか返してもらうぞ!?…それから そのとき一発ぐらいは 殴らせろってな?はっはっはっ!」
犬のベルグルが呆気に取られた後嬉しそうに吠える
「わんっ!」
看守が立ち去る 犬のベルグルが走って向かう
アシルが両手を縛られた状態で顔を上げて目を瞑っている その耳に4本足の走る音が聞こえ 疑問して片目を開けて言う
「…うん?空耳か?今 犬の走る音が聞こえたような…?」
徐々に音が高まり アシルが驚いて檻の外を見る 犬のベルグルが現れ嬉しそうに息をする アシルが驚いて言う
「お前はっ!スプローニの!?」
犬のベルグルが嬉しそうに吠える
「わんっ!」
その拍子に咥えていたカードキーが落ちそうになり 慌てて咥え直す
『とととっ!』
アシルが呆気に取られた後苦笑して言う
「はは… へっぽこ王子でも来てくれるかと思っていたが まさか お前が来てくれるとはな?よぅし…」
アシルが表情を苦しませつつ 手械から手の間接を緩めて引き抜く 地に足を着き自由になった両手をさすってから コートの裾から針金を取り出して 足枷のカギ穴へ入れて言う
「…なるほど?これなら 以前の牢屋の鍵よりは簡単に…」
言っている間にも片方の枷が外れる アシルが一瞬呆気に取られてから口角を上げもう片方の足枷も外すと檻の近くへ来て 犬のベルグルの前に屈む 犬のベルグルがカードキーを差し出す アシルが微笑してそれを受け取り 犬のベルグルの頭を撫でて言う
「よしよしっ 良く持って来てくれたな?だが… こいつが この檻の物であってくれれば良いんだが… 流石に そこまでの偶然は…」
アシルが言いながら カードキーをスキャンする 扉がピッっと鳴り 牢が開かれる アシルが呆気に取られて言う
「って…?ほ、本当に開いちまった…?お前…?」
アシルが犬のベルグルの前に屈み 顔を覗き込んで言う
「まさか?…電子情報の匂いでも 嗅ぎ分けられるのか?」
犬のベルグルが変な声で鳴く
「ウゥ~ヴァゥアウゥ~ヴォンッ」 『いやぁ~そうじゃないッス 話すと長くなるんッスけど 今は話せないし 話す時間もないッスよぉ~』
アシルが立ち上がって言う
「ふん… そうか それもそうだな …よし なら」
アシルが笑んで言う
「まずは この薄暗れぇ 汚ねぇ場所から おさらばしねぇとだな?」
犬のベルグルが嬉しそうに吠えて言う
「わんっ …ゥウウ~ワフッ!」『はいッス!他の皆も 外で待ってるッスよ!』
アシルが歩きながら言う
「うん?なんだ?お前の他の奴らも 来てくれてるのか?」
犬のベルグルがアシルに続きながら吠えて言う
「わふっ!ウゥ~ゥ~ワフッ… ゥウゥ?」『来てるッスよ!皆で来たッス!…にしても 何でアシル王子は 相変わらず 犬の言葉が分かるッスか?』
アシルが言う
「そうだったのか!?あぁ… まぁ そっちは 何となくだけどな?」
犬のベルグルが驚いて吠えて言う
「わんっ!わわんっ!」『凄いッス!やっぱ アシル王子は 俺たちの王子様ッスよ!』
アシルが笑って言う
「犬の王子様だなんて 止めてくれよ?…いや、それが嫌だって訳じゃねぇ 俺にはもったいな過ぎるって事だ …先住民族には 本当の王様が居るんだからなぁ?」
犬のベルグルが驚いて吠える
「わっ?」『本当の王?』
アシルが犬のベルグルを手で静止して言う
「…と、話はここまでだ ここからは…」
犬のベルグルが気を切り替えて頷く
『ここからは 戦いッスね!』
アシルが視線を向けずに言う
「…俺が先に行く お前は まず逃げろ その後で …可能であれば 俺も逃げ出す 正直… 俺1人じゃ この城を抜け出すのは難しい だから… お前だけは」
犬のベルグルが驚いて思う
『アシル王子… それじゃ 俺が助けに来たのを褒めてくれて それで、俺をもう一度外へ出す為に…!?』
アシルが振り返り微笑して言う
「ありがとな お前たちの気持ちは分かった …まさか 戦いを好まねぇお前たちが こんな危険を犯してまで 俺を助けに来てくれるとは …正直思ってもみなかったぜ だが、もう二度と こんな危険な事はするなよ?約束だ」
犬のベルグルが呆気に取られてアシルを見上げている その頭をアシルが撫でて言う
「良いな?全力で外へ逃げるんだぞ?」
犬のベルグルが強く顔を左右に振って言う
『駄目ッス!俺はっ!俺たちはアシル王子を助けに来たッス!ただ褒めてもらう為に来た訳じゃ無いッスよ!それに俺たちは!唯の犬じゃ無いッス 強い意志を持った 先住民族の!スプローニの犬なんッスから!』
犬のベルグルが駆け出して階段を駆け上る アシルが驚いて叫ぶ
「なっ!?あ!おいっ お前っ!!」
犬のベルグルが階段の先に立ち止まり 遠吠えをする
「わおーーーっ!」
周囲に居たソルベキア兵たちが驚いてベルグルを見る 城の外から犬たちの遠吠えが帰って来る ソルベキア兵が慌てて叫ぶ
「な、なんだっ!?」 「その犬を捕らえろ!」
アシルが慌てて駆け出て叫ぶ
「こ、この犬には 指一本ふれさせんっ!」
ソルベキア兵が驚いて叫ぶ
「あーーっ!奴は!囚人の!だ、脱獄…っ!」
ソルベキア兵が言い終える前に ソルベキア城の出入り口から大量の犬が駆け込んで来る ソルベキア兵たちが驚いて逃げ惑う アシルがその数に驚き呆気にとられる 犬のベルグルが嬉しそうに振り返って吠えて言う
「わんっ!」『さあ!アシル王子!今のうちッス!』
アシルがハッとして慌てて返事をする
「お、おうっ」
犬のベルグルが走る アシルがそれを追う 犬たちがそれを確認して皆で後を追う ソルベキア兵たちが呆気に取られた後慌てて叫ぶ
「だ、脱獄だー!囚人1名が 大量の犬を引き連れて 脱獄したー!直ちに…」
ソルベキア兵が一度口ごもってから慌てて言う
「囚人と犬どもを ひっ捕らえよー!」
玉座の間
ガライナが怒って言う
「何っ!?アシルが大量の犬を使って 脱獄しただとっ!?」
ソルベキア兵が言う
「はっ!現在 兵を動員し アシルと犬の捕獲を行おうと」
ガライナが怒って言う
「兵の動員は不要だ!ローゼントへ向かわせていた ロボット兵の一団が戻っている筈だ 直ちに奴らを動員し アシルを殺せ!犬などは どうでも良い!」
ソルベキア兵が一瞬呆気に取られた後敬礼して言う
「はっ!」
ロボット兵 兵舎
軍隊長が疲れた表情で言う
「なにぃ?ローゼントから帰還した途端 今度は城下に逃げ出した 囚人の抹殺だとぉ?」
ソルベキア兵が敬礼して言う
「はっ!直ちに行えとの ガライナ陛下の御命令です!囚人は現在城下のF6ブロックを逃走中 急がねば北門を突破され兼ねません」
軍隊長が溜息を吐いて言う
「なら 直ちに北門を封鎖するのが先ではないのか?ロボット兵の収容はとっくに完了した そうでなくともローゼントへ戦争を仕掛けた今 国の門を開いておく事は危険だろう?」
ソルベキア兵が言う
「はっ 北門は現在来客を迎え入れる為 閉じる事は許されません よって直ちに囚人の抹殺へ向かって頂けるよう お願い致します」
軍隊長が言う
「来客?…まったく 陛下は何をお考えなのか?ローゼントへ攻撃を仕掛けた今 この世界の何処国の者であっても 来客として迎え入れるなど適わんだろうに…」
ソルベキア兵が間を置いて言う
「…軍隊長 自分は 陛下からの御言葉を 間違いなくお伝え致しました」
軍隊長が不満そうに言う
「うん?だから何だ?」
ソルベキア兵がタブレットモニターを出して言う
「…囚人は 既にF6ブロックからF9ブロックまで移動 間もなく 北門を突破されます」
軍隊長が驚いて叫ぶ
「何ぃいっ!?ば、馬鹿を言うなっ!F6ブロックからF9ブロックまで 何キロあると思っている!?」
ソルベキア兵がタブレットモニターを操作しながら言う
「囚人はおよそ時速18kmから19km 犬並みの脚力にて逃走中 …犬に またがってでも居るのだろうか?」
ソルベキア兵が首を傾げる 軍隊長が慌てて叫ぶ
「ロボット兵たちよ!直ちにソルベキアF9ブロックから 北門エリアへ移動!脱獄した囚人を抹殺せよ!」
ロボット兵たちが光を放ち前傾姿勢になり止まる 軍隊長が疑問する ソルベキア兵が首を傾げる 軍隊長が衝撃を受けて叫ぶ
「しまったぁー!日々の終了処理が面倒であるからにして オートオフ機能をセットしていた事を忘れていた!こいつらは兵舎へ戻ると自動的に自らの電源を遮断してしまうのだっ」
ソルベキア兵が呆れて言う
「…では その再起動に掛かる時間の程は?」
軍隊長が言う
「15分… いや、14… 13分54秒!」
ソルベキア兵が呆れて言う
「…大して差は有りません このままで行けば 囚人は間もなくF10ブロックへ およそ6、7分後には北門を抜けます」
軍隊長がイライラして言う
「ええいっ ならば やはり北門を閉めよ!客人が来るというのでは尚更!凶悪な囚人に対面させる事の無い様 門を閉じて安全を確保したとでも言い訳れば良い!」
ソルベキア兵が言う
「…しかし、現北門の開放は 陛下の御命令 それを勝手に」
軍隊長が怒って言う
「これは緊急事態なのだぞ!?言った筈だ!大切な客人を 凶暴な囚人に合わせる事の無いようにと!」
ソルベキア兵が不満そうに言う
「それは 先程聞きました …凶悪や凶暴と言葉は変わろうとも」
軍隊長が怒って言う
「ええいっ!だったら さっさと動かぬか!こうしている間にも逃亡犯が門を超えてしまう!」
ソルベキア兵が困って言う
「…とは言え 確かに あの囚人を他国へ渡す事だけは 避けねばならないと陛下は仰っていた …ここは軍隊長の言葉もあながちではないか」
軍隊長が言う
「何だ!?何か言ったか!?」
ソルベキア兵が敬礼して言う
「いえっ!では 軍隊長の命の下 北門を閉じる様命じて参ります!」
軍隊長が言う
「うむ!直ちに言って参れ!」
ソルベキア兵が言う
「はっ!」
ソルベキア兵が立ち去る 軍隊長がロボット兵を見上げる
【 ソルベキア城下町 F9ブロック 】
犬たちと共にアシルが全力で走りながら言う
「ハッハッ… ハハッ!流石に 久しぶりにこうやってお前らと走ると くたびれるぜっ!」
犬たちと共に犬のベルグルが振り返って吠えて言う
「ハッハッハ… わんっわんっわんっ!」『けどっ アシル王子はやっぱり凄いッス!後住民族の人で 俺たちと同じ速さで走れるのは やっぱり アシル王子だけッスよ!』
アシルが笑んで言う
「ガキの頃は… もっと速く走られた気がするんだけどなぁ?もっともっと… いくらでも速く走れるんじゃねぇかってなぁっ!?」
犬のベルグルが楽しそうに笑い後方を見る アシルが同じく後方をチラっと確認してから言う
「…追っ手は無しか?追う必要が無くなったか?もしくは この先にたっぷりの兵が 銃を構えていたりしてなぁ?」
犬のベルグルが驚き前方へ向け鼻を利かせる アシルがベルグルの様子に気付いて言う
「どうだっ!?」
犬のベルグルがアシルへ向いて嬉しそうに吠える
「わんっ!わん わんっ!」
アシルが笑んで言う
「そうか!火薬やロボット兵どもの匂いは無しか!そうとなれば… 後は!」
アシルと犬たちが曲がり角を曲がって先を見て 喜んで言う
「門が開いてるぜ!?こいつは 一体何の罠だ?恐ろしい位だ だがっ!」
アシルが視線を強めて言う
「例え罠だとしても あれを通るしか 俺たちに道はねぇえ!」
アシルたちが向かおうとする 門の先に光が降り アシルが疑問すると 1つの人影が降り立つ アシルが疑問して言う
「なんだ?あいつは…?とっ おいっ!?」
アシルの視線の先 北門が音を立て閉まろうとする アシルが舌打ちをして言う
「チッ!後少しだったって言うのに!…間に合わねぇっ!」
急ぐアシルたちの目前で 北門が閉じられる アシルたちが立ち止まり 荒い息をしながら門を見据え アシルが言う
「くそ… はぁ はぁ はぁ… 他の門へ向かうか… とは言え ここが閉じられるんじゃ 他だって…」
アシルが息を整えていると 犬のベルグルの耳が音を捉え ハッとして慌てて吠える アシルが驚き 犬のベルグルを見て言う
「…何だって?」
犬のベルグルがアシルへ向いて吠えて言う
「わんっわんっ!わんっ!」『本当ッス!何か分からないッスけど!チョー危険ッス!すぐに離れるッスよ!』
アシルが慌てて言う
「お、おうっ!」
アシルと犬たちが横へ退避すると 間もなく強力な力で北門が吹き飛ばされる アシルと犬たちが爆風から身を守る 崩れ落ちる北門の残骸の動きが収まると その場所をゆっくりと人影が踏み入って来る アシルが顔を上げる アシルの前をゆっくりと人が過ぎ行く アシルが驚いたまま去り行く人の背を目で追う アシルを過ぎた人の背が立ち止まり僅かにアシルへ視線を向ける 碧い瞳に長い金髪 藍色のローブと大きな帽子で身を包んだ人物が アシルを見て僅かに時を止めるが 僅かな時を持って 視線を前方へ戻し再び歩いて行く アシルが呆気に取られていた状態から言う
「…ローレシアの魔法使い …って訳でもなさそうだな?あんな化け物染みた力を 使う奴が居るだなんて話は 聞いた事がねぇ」
犬のベルグルが崩れた北門の残骸の匂いを嗅いでいる アシルが振り返って言う
「…とは言え 今はそんな事詮索してる余裕もねぇか …運が良かったって事で 抜けさせてもらうぜ 行くぞっ!?」
アシルが呼んで北門を抜ける 犬たちが続いて行く アシルと犬たちがソルベキアを後にする
【 ソルベキア城 兵舎 】
軍隊長が驚いて言う
「なっ!?何だとっ!?」
ソルベキア兵が言う
「はっ!閉鎖した北門は破壊され 囚人は犬らと共にローゼントの森へと逃亡 捜索は困難とされております」
軍隊長が呆気にとられて言う
「ば… 馬鹿な ソルベキアの北門は 最も頑丈な鋼鉄製の重層門だぞ!?その破壊は ロボット兵であっても困難である筈っ それを 一体どうやって!?」
ソルベキア兵が言う
「詳細は不明ですが… 門兵の話しによれば 魔法使いの様な者が門外に現れ 閉じられた門を破壊したと」
軍隊長が言う
「魔法使い?…では ローレシアからの援軍と言う事か?」
ソルベキア兵が言う
「分かりません ただ、逃亡した囚人とは違い その者は 外部からソルベキアへ入り 先程 この城に入ったと言う情報が」
軍隊長が驚いて叫ぶ
「何だとぉおっ!?それは 一大事では有らぬかっ!?この城に入ったとは!?今何処に居るのだ!?すぐさま起動したロボット兵たちを向かわせ ひっ捕らえねばっ!」
ソルベキア兵が言う
「は… はぁ…?しかし 現在その者が居る場所は」
軍隊長が叫ぶ
「何処だっ!?何処に居る!?」
玉座の間
ガライナが微笑して言う
「お待ち致しておりました 出迎えがままならず申し訳ない 貴方様がいつ こちらへ参られるのか その時が計りかねましたが故に…」
先ほどの人物が静かに言う
「…出迎えは 不要であると 事前に伝えておいた よって そちらの謝罪は不要 …とは言え 出迎えは 行おうと思えば可能であった筈だ 従って あの者らが 出迎えなのかと思いはしたのだが …その様子では やはり違っていたようだな」
ガライナが疑問して言う
「『あの者ら』と… 仰いますのは?」
先ほどの人物が目を閉じて言う
「…良い …それより 時は伝えずとも この城へ招き入れる あの厚い門を閉じてしまうのは 如何なものか?私でなければ そこを抜ける事が出来ず 途方に暮れるか 国へ戻るかのどちらかしか 選べる道は無かっただろう」
ガライナが驚いて言う
「あの分厚い門?…と申しますと 北門が…?いや、あの門は 貴方様の御来国を聞き及んでからは 常に開いて置くようにと」
玉座の間の後方でロボット兵たちの大きな足音が響くと共に 軍隊長が叫び入る
「陛下っ!?ご無事であられますか!?」
ガライナが驚いて言う
「むっ!?何事か!?」
軍隊長が入り込んで来て言う
「先程!北門を破壊した 異国の魔力者が 恐れ多くも このソルベキア城に踏み入ったと!彼奴は 脱獄犯の仲間であるだけでなく!北門を軽く破壊できるほどの化け物染みた魔力を持つものであると!」
先ほどの人物がゆっくり首を傾げて言う
「脱獄犯…?」
軍隊長が先ほどの人物へ向き直りつつ言う
「はいっ しかし お任せを!脱獄犯は逃そうとも 北門を破壊した 化け物のような魔法使いなど 我らソルベキアのロボット兵で 一捻りにしてご覧に… …っ!?」
軍隊長が先ほどの人物の姿に呆気にとられる 先ほどの人物が視線を細めて言う
「化け物のような魔法使い…か 数年前に 言われた事があったな …そして 数年ぶりに耳にしても やはり 不愉快な言葉だ」
軍隊長が 焦りガライナを横目に見る ガライナが怒りを押し殺し怒って言う
「この無礼者がっ!誰か!そこの無礼な兵を 地下牢へ叩き込んでおけ!」
ソルベキア兵が敬礼して言う
「はっ!」
軍隊長が驚きソルベキア兵を指差して言う
「なぁあ!?き、貴様っ 知って居ったのかっ!?」
ソルベキア兵が軍隊長を連行しながら言う
「…気付かない 貴方の方が可笑しいでしょうに?」
軍隊長が呆気に取られ 泣きせがむ様にガライナを振り返って言う
「陛下っ!?俺はっ 自分は…っ 陛下のご無事をと 陛下ー!」
軍隊長が退場させられると ガライナが苦笑して言う
「申し訳ない あの者には しっかりと刑を執行し 以後二度とこの様な不始末を行わぬようにと…」
化け物のような魔法使いが視線を細めて言う
「…必要ない」
ガライナが疑問して言う
「は…?」
化け物のような魔法使いがガライナへ向いて言う
「刑など… 使えない兵士は捨て 新しい兵士を使う方が合理的… 過ちを犯す兵は更生など出来ない 同じ過ちを繰り返すだけだ…」
ガライナが呆気に取られる 化け物のような魔法使いが冷たい視線を向けて言う
「…お前も 使えない駒であるなら 我らが神は 容赦なく お前をお捨てになられるだろう」
ガライナが怯えて言う
「ヒィッ… わ、私は兵士等ではない この国のっ この世界で1、2を争う機械技術を持つ ソルベキアの王であるのだぞっ!?」
化け物のような魔法使いが言う
「王であろうが 兵士であろうが… 所詮は人… 人の皮を被った動物か…?ふんっ …何であれ 使えぬ者は切り捨てる それが 我らが神 ベガ様のお考え」
ガライナが驚き疑問して言う
「ベガ様?…どう言う事か?貴方方の神の名は リゲル様では!?」
化け物のような魔法使いが微笑して言う
「…愚かな まだ気付いて居なかったのか?貴様たちが送ったリゲル殿への通信は全て我らが神ベガ様の目に止まり そして 私がこの地に降り立った」
ガライナが驚いて目を丸くする 化け物のような魔法使いが笑んで言う
「ふっ… 安心しろ 先程も言った通りベガ様は 使える駒に対しては お優しい方だ 貴様も そうなられる様に勤めるが良い」
ガライナが呆気に取られる
【 ? 】
リジル、リゲルが存在する場所に ベガが姿を現す リジル、リゲルが気付き顔を向け リジルが言う
「ベガ お前も 遂に第2プラントへ兵を送ったそうだな?」
ベガが言う
「勘違いはしてくれるな?私は お前たちとは異なり シリウスへ手を出すつもりは無い」
リゲルが反応して言う
「それはどう言う事だ?お前も我らと同様に アウグスタへ反旗を翻すであろうシリウスの化けの皮を剥いでやろうというのでは無いのか?」
ベガが言う
「言った筈だ 私は シリウスへ手を出すつもりは 無いと」
リジルが言う
「では…?」
ベガが言う
「かの者が… 我らの 新たなる皇帝として 相応しいのか それを見極めるが為だ」
リジルが驚いて言う
「皇帝…?我らの新たなる とはっ!?それは一体っ!?」
リジルとリゲルが顔を見合わせる ベガが言う
「第2プラントの管理者 シリウスは アウグスタの命により 神殿に迎え入れられた …アウグスタは かの者を 我らがエンペラーとして 君臨させるおつもりだ」
リジルとリゲルが驚き リゲルが叫ぶ
「なんだとっ!?」
リジルが言う
「馬鹿なっ!奴はっ!シリウスは 前世にて アウグスタを暗殺しようと 目論んだ張本人であるのだぞ!?」
【 神殿 】
シリウスAが目を開き 天上の美しい装飾に目を細める ヴィクトール11世の心配そうな声が届く
「シリウス~…?」
シリウスAが苦笑しゆっくり横を向くと 犬のように施錠をされたヴィクトール11世が 少し離れた位置からシリウスAを見つめている シリウスAが微笑して言う
「ヴィクトール… ふふっ… その様な声を出すではない… お前は… このシリウスの猫じゃろう?…我は 大丈夫じゃ…」
ヴィクトール11世が心配して言う
「で、でもっ シリウスは今までずっと プログラムの補助を受けて生きていたのに それを 急に全て止めてしまうだなんて…っ 呼吸だって苦しいんでしょ?他のプログラムも使えなくされてしまって もし ま、また あのオバサンが来たらっ」
機械扉がスライドして ヴィクトール11世が驚き部屋の隅へ慌てて逃げながら言う
「にゃぁ!?き、来たッ!」
ヴィクトール11世が怯えながら見つめる アウグスタが入室して来て 一度ヴィクトール11世へ目を向けた後 ベッドに横たわっているシリウスAの元へ来て微笑して言う
「シリウス…」
アウグスタがシリウスAの頬に触れる シリウスAが微笑して 息苦しそうに言う
「我の 神… 我らが アウグスタ…」
アウグスタが微笑して言う
「フフ… 苦しいか?シリウス それが 余の力を失った お前本来の状態だ お前は… お前たちは 余の力無しには 呼吸すらままならぬ その様な お前など 今こうして 余が軽く口を押さえてやるだけで…」
アウグスタがシリウスAの口を押さえる シリウスAが僅かに表情を苦しめ 息苦しそうにする
「う… はっ あぅ…」
アウグスタが微笑して言う
「…しかし、お前は 軽く失わせるには やはり惜しい シリウス… それでも 生まれ変わったお前も やはり 余に歯向かうのか?」
アウグスタが手を離すと シリウスAが僅かに表情を歪めつつも微笑して言う
「我らは… 常に貴女を 崇め… 貴女の 思いの成すままに…」
アウグスタが苦笑して言う
「シリウス… 余は お前の真意が知りたい その言葉が… お前の口を吐いて余へ送られる言葉が お前の本意となる時が 余は待ち遠しいのだ」
シリウスが息を荒くしつつ アウグスタを見上げる アウグスタが微笑して言う
「シリウス 余はお前を必ず手に入れよう お前は 余のモノだ 美しいお前は 余の夫と成り 共に 我らの子たちを守るのだ… そうであろう?シリウス?」
シリウスAが苦しそうな息でアウグスタを見上げている アウグスタが微笑する シリウスAの視界がぼやけ シリウスAが意識を失う アウグスタが微笑して言う
「強情な男だ… だが そうであってこそ 余の夫に相応しい…」
アウグスタがシリウスAの顔に顔を近づける ヴィクトール11世がハラハラして見つめていて 驚き思わず声を出す
「にゃぁあっ!?」
アウグスタがシリウスAへの口付けを離しつつ 横目にヴィクトール11世を見る ヴィクトール11世がハッとして泣きそうな表情で怯える アウグスタが苦笑して言う
「フッ 新人類の実験体… シリウスが何故そこまで お前を気に留めているのか 余には分からぬ お前程度の遺伝子操作など 余の手に掛かれば 巨万と出来ようモノ…」
ヴィクトール11世が泣きそうな表情でムッとしている アウグスタが苦笑して言う
「ふふっ… まぁ良い シリウスがどうしてもと 連れて来たモノだ そこで大人しくしているが良い」
アウグスタが立ち去る ヴィクトール11世が悔しそうな表情をした後 シリウスAを見て困って言う
「シリウスぅ…っ どうしてこんな事っ… 僕 帰りたいよ シリウスも一緒に… ガルバディアへ帰ろうよ!?もう これ以上… シリウスがあの人の好きにされるのを 僕は見たくない…っ こんなの こんなのっ!シリウスらしくないよ!?ねぇ!?シリウスぅ!」
シリウスAは意識を失っている
【 ローゼント城 近郊 】
アシルが崖の上から ローゼント城を見下ろし視線を細めて言う
「あれが… ローゼントだとっ?クッ… なんてこった あれじゃまるで ソルベキアそのものじゃねぇか…っ」
アシルが顔を逸らす ローゼントの土地には ロボット兵が大量に配備されている 犬のベルグルがローゼントを見て呆気に取られている アシルが立ち去ろうとして犬のベルグルの状態に気付き 振り返って言う
「どうした?こんなローゼントじゃ意味がねぇ このままエドの町まで向かうぞ?今後の事は エドの町で決め…」
アシルの言葉の途中で通信機が着信する アシルが驚き衣服を探りながら言う
「通信?いや… 俺の通信機は… ソルベキアに没収される前に 自分でぶっ壊して…っ」
アシルが衣服を探るのを止めて言う
「うん… やっぱり持ってねぇ… てぇと?」
アシルが音源に気付き 犬のベルグルを覗き込んで言う
「…何だ?お前 犬の癖に 通信機なんて持ってるのか?」
犬のベルグルが衝撃を受け困る アシルが苦笑して言う
「はは… なんだ お前は飼い犬なのか?その様子じゃ 飼い主にちゃんと説明して来なかったんだろう?」
犬のベルグルが困って吠えて言う
「わうぅ~ わんっ わぅ~…」『いや その… 説明はしたんッスけど でも…』
アシルが犬のベルグルの前に屈んで まだ止まない通信機の着信音に微笑して言う
「きっと 心配しているに違いねぇ 人の姿になって通信に出てやるんだ 良いな?」
犬のベルグルがアシルを見上げて吠えて言う
「わふっ!」『アシル王子…っ』
アシルが微笑して衣服を探り 宝玉の欠片を見せてから言う
「ほら?やるぞ?」
犬のベルグルが意を決して吠えて言う
「わんっ!」『分かりましたッス!アシル王子!』
アシルが頷いて言う
「よし!」
アシルが目を閉じて宝玉の欠片に意識を集中させる 犬のベルグルが目を閉じて意識を集中させる 宝玉の欠片が輝き 白い光が犬のベルグルを覆うと 間を置いて 人の姿になったベルグルが現れる アシルが目を開く ベルグルが笑顔で言う
「アシル王子!有難うございますッス!」
アシルが微笑して言う
「おう!…さ、早く出てやれ?」
アシルの促しに ベルグルがハッとして 慌てて通信機を取り出しながら言う
「は、はいッス!」
ベルグルが通信機を着信させて言う
「お、お待たせしましたッス!ロキ隊長!」
アシルが衝撃を受け呆気に取られて言う
「『ロキ隊長』?」
アシルが通信機を覗き込み衝撃を受ける 通信モニターに映っていたロキが言い掛ける
『ベルグル 無事だったか… 今何処… ぬぁっ!?』
ロキが通信モニターに映ったアシルに驚く アシルが通信モニターに映っていたロキに驚いて言う
「お、お前っ!?」
ベルグルが疑問して アシルとロキを交互に見る アシルがベルグルとロキを交互に見てから言う
「こ、この犬は… お前の犬だったのかっ」
通信モニターのロキが間を置いて言う
『…アシル王子 どうやら本当に馬鹿犬どもは卿の脱獄に手を… いや、足を貸したと言うべきか?』
通信モニターのロキが首を傾げて悩む アシルが焦って言う
「どうでも良い所で悩むなっ!そんな事よりっ!」
通信モニターのロキがハッとして言う
『…そうだ そんな事より』
アシルが言う
「…お前の犬には世話になった 礼を言う お前は 優秀な犬の飼い主だ」
通信モニターのロキが呆気に取られた後 ハッとして言う
『…い、いや そうではなく …そもそも 俺は卿の脱獄へ加担する事は 止めろと命じたのだが』
アシルが怒って言う
「んだとっ!?なら お前の犬は優秀だが 飼い主のお前は低脳だっ!」
通信モニターのロキが怒って言う
『なっ!?…それは納得しかねるっ!と、そんな事より!』
ベルグルが言う
「そうッス!そんな事より ロキ隊長!ヴェルアロンスライツァー副隊長は!?ローゼントが 大変な事になってるっスよ!?」
アシルがハッとして通信モニターを見る 通信モニターのロキが気を切り替えて頷き言う
『…ローゼントの現状を 諸卿も確認したのであれば話は早い ベルグル』
ベルグルとアシルが通信モニターを見つめ ベルグルが返事を返す
「は、はいッス ロキ隊長!」
ロキが言う
『今すぐ スプローニ国 元王子 アシル殿を …スプローニ国へ お連れしろ』
アシルが驚いて言う
「何だと?!」
ベルグルが驚いて呆気に取られる 通信モニターのロキが言う
『スプローニは… ローゼントの民を受け入れる だが 正直 俺1人では手に負えん アシル元王子 …卿の力を お借りしたい』
ベルグルが呆気に取られたままロキとアシルを交互に見る アシルが表情を険しくして言う
「ローゼントの民をスプローニへ受け入れるだと?何を言ってる?その者たちは 事前にツヴァイザーかシュレイザー… もしくは両国に受け入れ準備がなされているだろう?ローゼントは かのアンネローゼ女王の国 その国に何か有れば 両国が力を貸すのが当然にして 妥当と言える」
通信モニターのロキが言う
『…それは 確かに その通りと言える だが、現在においては その両国が力を貸す理由が 失われてしまった』
アシルが疑問して通信モニターを見る ベルグルが話を理解出来ず疑問している 通信モニターのロキが言う
『ローゼントは 女王を失い 共に 王配も… 命はあるものの その意識が 放心状態のまま戻らない よって ローゼントは完全に国も 王すらも 失ってしまった …この状態では ツヴァイザーもシュレイザーも 残されたローゼントの民を受け入れる理由を持てない』
ベルグルが驚いて言う
「え!?ヴェ、ヴェルアロンスライツァー副隊長が 意識が戻らないって!?それはどういう意味ッスか!?命はあるもののって それなら ヴェルアロンスライツァー副隊長は 無事なんッスよねっ!?」
アシルが目を閉じて言う
「例え無事であろうとも 意識が保てぬのであれば 王として 民を導き守る事は出来ん」
ベルグルが慌てて言う
「そんなっ 何でッスか!?分からないッス!だって 今までだって 色んな国の王様たちは ガルバディアのシリウス国王に眠らされて 皆意識の無い状態になってたッスよ!?」
通信モニターのロキが言う
『…それは ガルバディア国王の名の下に 皆がそうであったからこそ 認められていた事だ 今回は… ソルベキアとの戦いにおいて 敗北し そして至った』
ベルグルが呆気に取られる アシルが言う
「…それで その様になった 貴様の相棒を匿うために ローゼントの民を受け入れると?」
通信モニターのロキが沈黙の後言う
『…俺の身勝手である事は 重々承知している だが 俺には… やはり 捨て置く事は出来ない ヴェルアロンスライツァーは 俺の相棒だ 奴の国と 奴の民を …助けてやりたい』
ベルグルが表情を喜ばせる アシルが黙る 通信モニターのロキが言う
『…とは言え、国王として日の浅い俺では 分からぬ事ばかりだ 大臣らの手を借りようとも その彼らにも 出来かねる事があると… それ程の事だと言うのを 今更になって痛感している そこで』
アシルが不満そうに言う
「必要となれば 国を追い出した 元王子ですら 使おうというのか?」
通信モニターのロキが苦笑して言う
『…追い出したつもりはない 卿が勝手に国を出られたのだろう?その証拠に… 卿の部屋には 指一本触れさせていない 全て 卿が国を出られた その日のままだ』
アシルが苦笑して言う
「単に 俺の部屋へ入る理由が 無かっただけだろ?」
通信モニターのロキが苦笑してから言う
『…それは一理あるが もし本当に 卿をスプローニから追い出し 完全に王位を我が物にするのであれば 卿の部屋も何もかもを 片付けさせる事は容易であっただろう』
アシルがフンッと鼻を鳴らす ロキが言う
『…アシル元王子 …ローゼントの民を受け入れるのに 必要であるというのなら 俺は 卿へ スプローニの王位を…』
アシルがロキの言葉をかき消すように咳払いをしてから言う
「うううんっ!スプローニか… まぁ やっぱり俺の口に合う酒は スプローニのブランデーだな?…丁度 そろそろ恋しくなっていた所だ」
通信モニターのロキが 一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
『…アシル王子っ それではっ!』
アシルが気付き 不満そうに言う
「元!王子だろ…?国王は貴様だ… 俺は 親父からスプローニの王位に 相応しくないと 言われた男だからな?」
通信モニターのロキが苦笑する アシルが歩き出しながら言う
「俺が戻るまで 余計な事を命じるんじゃねぇぞ?国王ってぇのは たかが一兵士に出来るもんじゃねぇんだ そいつを… たっぷり教え込んでやるぜ」
ベルグルが呆気に取られてアシルの後姿を見つめる 通信モニターのロキが苦笑して言う
『…ベルグル アシル王子の護衛を頼む』
ベルグルが一瞬驚いてから 通信モニターを見て 喜んで言う
「はいッス!任せて下さいッス!ロキ隊長!」
ロキが言う
『…なるべく 急がせてくれ エド町からの臨時船を用意させる』
ベルグルが喜んで言う
「了解ッス!」
ロキが頷き 通信が消える ベルグルが嬉しそうに通信機をしまい アシルを追いかけ走りながら言う
「アシル王子!急いでスプローニへ帰るッス!また 走るッスよー!?」
アシルが言う
「嫌だ」
ベルグルが衝撃を受け慌てて言う
「なぁ!?何でッスか!?さっきまでは 久しぶりに俺たちと走るのは 気持ち良いって言ってたッス!」
アシルが言う
「…気分が萎えた」
ベルグルが言う
「えーっ!?」
アシルが言う
「…腹も減った」
ベルグルが言う
「えーっ!?」
アシルが言う
「追って来るもんがねーと 逃げる気にもならねー」
ベルグルが言う
「えーっ!?アシル王子!スプローニに帰れると分かった途端 また我がまま王子の気持ちが 戻ってきちゃったッスー!」
アシルが怒って振り返り言う
「るせぇ!誰が我がまま王子だ この野郎っ!」
アシルがベルグルの頭を殴る ベルグルが痛がって言う
「痛ーっ ア、アシル王子っ こっちの姿の時でも 優しくして欲しいッスよ どうして ロキ隊長もアシル王子も 俺が人の姿の時は いぢわるなんッスかー!?」
アシルがベルグルの頭を殴って言う
「るせぇ!黙って付いて来い!この馬鹿犬が!」
ベルグルが驚いて言う
「えー!?何でアシル王子は 俺が馬鹿犬って呼ばれている事を知ってるっすかー!?やっぱ アシル王子は凄いッスー!」
アシルが怒って言う
「るせぇっ!」
「…聞け へっぽこ王子」
ザッツロードがアシルへ視線を向けて言う
「この状況では…っ!」
アシルが強く言う
「こいつらはっ!」
ザッツロードが言葉を止める アシルが静かに続ける
「…捕獲用のロボットだ さっきのとは違って 人も乗ってねぇし武器も持ってねぇだろ?」
ザッツロードが一瞬驚き捕獲ロボットを見る 捕獲ロボット2体が徐々に距離を近づけている アシルが言う
「人が乗ってねぇのなら こいつらはただの機械だ」
ザッツロードが疑問する アシルが言う
「機械ってぇのは 人より何倍も力があるが …人より何倍も馬鹿だ」
ザッツロードが呆気に取られる アシルが言う
「どんな事があっても 与えられた命令を 順番通りに上からやるしか脳がねぇ …だから 見ろ」
アシルが言い終えると共にザッツロードの背を押し自分も少し前へ出る ザッツロードが僅かに驚いて1、2歩前につんのめる 捕獲ロボット2体が一瞬アシルへ動く ザッツロードが呆気に取られる アシルが言う
「あいつらの順番はこうだ まず 俺を捕らえる 次に お前…」
ザッツロードが驚く アシルが言う
「ソルベキアが求めているのは セントラルコンピュータを動かす為のお前より 別大陸の王との繋がりが有るかもしれねぇ 俺の方だ セントラルコンピュータやお前に関しては ソルベキアならローレシアとの取引を行う事が出来るが 王位を失った俺に関して スプローニとの取引は出来ねぇ …と、なれば」
ザッツロードが見つめる アシルが両手にナイフを持って言う
「囮は俺にしかできねぇ あの先へは お前が行け」
ザッツロードが驚き慌てて言う
「しかしっ!それでは アシル王子が!」
アシルが言う
「元っ!」
ザッツロードが呆気に取られる アシルが視線を強めて言う
「…お前には 戻るべき国があるだろう?お前の… その可笑しな力を貸すべき 仲間が居る …今なら お前が ガルバディア国王に選ばれた理由が 何となくだが 分かる気がするぜ…」
ザッツロードが呆気に取られる 捕獲ロボットが更に近づく アシルが言う
「チャンスは一度切りだ 今度こそ 一発で決めろよ!?へっぽこ王子!」
ザッツロードが息を飲んで言う
「…しかしっ」
アシルが叫ぶ
「行くぞっ!」
アシルが捕獲ロボットへ立ち向かう ザッツロードが一瞬 共に向かおうとした足を踏み止め ぐっと目を瞑ってから逆方向へ走り出す 捕獲ロボット2体がアシルを見る アシルが声を上げて片方の捕獲ロボットへ斬りかかる
「うおぉおおおーっ!」
アシルがナイフで捕獲ロボットを斬る ナイフが音を立てて砕ける ザッツロードがはっとして振り返って叫ぶ
「アシル王子っ!」
アシルが振り返って叫ぶ
「行けっ!ザッツロード!」
ザッツロードが一瞬驚いた後 悔しそうに走り去る 1体の捕獲ロボットがアシルを掴み 後ろ手に引き上げ 電撃を送る アシルが悲鳴を上げる
「ぐあぁああっ!」
アシルがナイフの柄を落とす もう1体の捕獲ロボットがザッツロードの去った方へ向く ザッツロードがアシルの悲鳴に振り返る ザッツロードの目に意識を失ったアシルが捕獲ロボの手に握られているのが見える ザッツロードが表情を悲しめて言う
「アシル王子っ!」
ザッツロードが悔しそうに目を瞑り 進行方向へ向き直って言う
「僕は…っ!…っ」
ザッツロードが驚き呆気に取られる ザッツロードの前方に既に居たロボット兵が足音を立てて振り返り ザッツロードを見下ろす ザッツロードが脱力する ロボット兵が機関銃をザッツロードへ向ける ザッツロードが悲しそうに言う
「僕は…」
ザッツロードの後方でタービン音が1つ響き 捕獲ロボ1体がアシルを掴んだまま飛び去って行く もう一体の捕獲ロボがザッツロードの後方に立つ ザッツロードが目を閉じ俯いて言う
「僕は… 何て 無力なのだろう… もう すぐ… そこだったのに…」
ザッツロードがスファルツ邸への抜け道へ視線を向けてから ロボット兵を見上げる ロボット兵が機関銃を向けたままもう一方の手をザッツロードへ向け捕らえようとする ザッツロードが諦めて肩を落とす 声が聞こえる
「そのまま動くな ザッツロード7世」
ザッツロードが驚いて顔を上げて言う
「え?」
ジークライトがザッツロードの頭上すれすれにジャンプして来て言う
「おわっ 馬鹿!動くなって 言われてるだろっ!?」
ザッツロードが呆気に取られて見上げる ジークライトの振り上げた大剣にプログラムが纏る ザッツロードが言う
「あれはっ」
ジークライトがロボット兵の頭上まで上り詰め 一気に大剣を振り下ろして叫ぶ
「いやぁあー!」
大剣がロボット兵を一刀両断に切り裂く ザッツロードが呆気に取られる ジークライトが着地と共に振り返りザッツロードへ大剣を向けて言う
「次っ!」
ザッツロードが驚いて言う
「えっ!?」
ジークライトがザッツロードの横をすり抜け大剣を横一線に振りかぶる 大剣に纏っていたプログラムが衝撃波の様に 捕獲ロボットの体を横一線に切り裂き 捕獲ロボットが倒れる ジークライトが嬉しそうに笑んで大剣を肩に担いで言う
「へっへー!楽勝!」
ザッツロードが呆気に取られたまま言う
「あ… 貴方は?アバロンの… 大剣使い …でも プログラムの力を…?ガルバディアの相棒を得ている者は ヘクターと」
ジークライトが反応して言う
「あ?アンタ ヘクター国王を知ってるのか?」
デスが現れて言う
「当然だ ザッツロード7世は ガルバディア国王こと シリウス国王が作り上げた 意識のみの世界を経験した 我々メンバーの1人だ」
ザッツロードが驚いて叫ぶ
「デスっ!?どうして貴方がっ!?」
デスが苦笑して言う
「それはこちらの台詞だ ザッツロード7世」
ザッツロードが言う
「僕は…っ …アシル王子と共に スファルツ卿の下へ向かおうと…」
デスが疑問した後に言う
「アシル王子と…?…なるほど もう一組の“逃亡犯”とは お前たちの事だったか」
【 ローゼント城 近郊 】
伝達兵がローゼント城を見下ろしている 瞳にプログラムが流れている
【 ソルベキア城下町 】
デスが周囲にプログラムを発生させていて言う
「…うん ローゼントへの襲撃が開始された やはりこちらの状況次第だった様だな…」
デスがザッツロードを見る ザッツロードが視線を落としていて次にソルベキア城を見上げて言う
「もっと早く 後一歩早く 彼らと出会えていれば…」
ジークライトが腕組みをして首を傾げた後デスへ言う
「デス?もう一組の襲撃犯の正体がこいつなら こいつ1人じゃなくて 俺らみたいに2人組みなんじゃないのか?」
デスがジークライトの言葉にザッツロードを見て言う
「ああ そうであったのだろう ザッツロード7世 先程お前が口にしていた アシル王子とは スプローニ国の元王子である アシル殿の事か?それで?どういった経緯かは知らないが そのもう1人はどうした?」
ザッツロードが視線を落として言う
「…アシル王子は 僕を 助ける為に…」
ジークライトが見つめて言う
「死んだのか?」
ザッツロードが衝撃を受け慌てて言う
「勝手に殺さないで下さい!」
ジークライトが苦笑して言う
「そんなに怒るなよ?あんまりにもお前が落ち込んでたから そうなのかなーと思っちまっただけだろ?」
ザッツロードが表情を落として言う
「捕まってしまったんですっ …もっと早く もう少し早く貴方方と合流していれば…っ」
ザッツロードがジークライトへ詰め寄る ジークライトが困って言う
「んな事言われてもなぁ?俺らだって 初めて戦うロボット兵の部隊を 1個半もぶっ倒すのにちょっと手間取っててよ」
デスが微笑して言う
「いや、初めてにしては上出来だ お前の力には本当に驚かされる」
ジークライトが嬉しそうに照れて言う
「いやぁ~ デスのお陰だって!」
デスが微笑して言う
「それはもちろんだがな?」
ジークライトが一瞬呆気に取られた後笑う ザッツロードがはっとして言う
「デスっ これから 僕と共にソルベキア城へ向かって アシル王子を助け出してもらえませんか!?貴方なら… アバロンの大剣使いとガルバディアのプログラマーなら 不可能はないのでしょうっ!?」
ジークライトとデスが顔を見合わせた後デスが苦笑して言う
「確かにその通りだが 残念ながら 今の我々が向かうべきは ソルベキア城ではなく スファルツの屋敷なのだ ザッツロード7世」
ザッツロードが呆気に取られる ジークライトが微笑して言う
「デスの友達 スファルツ卿さんを 早く助けてやらないといけないもんな?」
ザッツロードが驚いて言う
「スファルツ卿に何かっ!?」
デスが微笑して言う
「そう心配をするな 彼の身に何かあった訳ではない ただ 彼の力が封じられてしまっている 私たちは その状況を解除してやろうと ここまでやって来たのだ」
ジークライトが言う
「それじゃ 行こうぜ デス?もうすぐなんだろ?折角ここまで来たんだから 早く助けてやらねーと」
デスが言う
「ああ もう少しだ あと少しで 奴の為に通してやった この場所までの通信回路の復旧に 奴自身が気付き…」
言葉の途中で施錠解除の音がする ザッツロードとジークライトが音の方へ顔を向ける デスが微笑して言う
「秘密通路への扉が解除された ジーク そこの壁に見える扉をどかしてくれ」
ジークライトが呆気に取られつつ言う
「あ?壁に見える扉?…この辺りか?」
ジークライトが壁に見える扉をずらす 扉が外れる ジークライトが驚く デスが微笑して言う
「この扉の施錠は 奴でなければ外せない …とは言え その奴であっても 先程までのように通信回路を遮断されていては 解除は不可能だった」
ザッツロードが言う
「それでは… 貴方方が居なければ 僕らだけが来たのでは 開かれなかったと言う事ですね?」
デスが振り向き 苦笑して言う
「ふむ… そうかもしれないし… そうでもなかったのかもしれない …お前には不思議な力が備わっているからな?」
ザッツロードが驚く ジークライトが壁に見える扉の奥を見て言う
「デス!この先に 通路があるぜ!?」
デスが苦笑して頷き言う
「ああ、それがスファルツの屋敷へ続く 秘密通路 私たちが探していたものだ」
デスが通路を確認する ジークライトがザッツロードを見て言う
「お前も行くのか?」
ザッツロードが一瞬驚いた後言う
「え?あ… はい…」
デスが振り向いて言う
「では行こう ロボット兵の類は殲滅させたが 残った兵士に来られても困る」
デスが通路へ入る ザッツロードが来てジークライトを見る ジークライトが扉を持ったまま頷く ザッツロードが頷き通路へ入る ジークライトが周囲を警戒した後通路へ入り扉を閉める ジークライトが入るとデスが周囲を見ている ザッツロードが言う
「デス… 何か?」
デスがザッツロードへ向き直って言う
「いや 目視にて 状況を確認していた」
ザッツロードが苦笑して言う
「なら 僕が先行するよ?スファルツ卿の屋敷はこっちだ」
ザッツロードが歩き出す デスが続き ジークライトがやって来て言う
「あ そういえば、お前よ?どうでも良いけど… さっきから聞いていれば デス デス って 随分馴れ馴れしいだろ?デスはこう見えても アバロンの第二国王なんだぞ?」
ザッツロードが呆気に取られて言う
「え…?あ、はい そうですね?」
ジークライトが言う
「『そうですね?』って… お前 それなら…」
ジークライトが不満そうに腕組みをしてザッツロードを見る デスが苦笑して言う
「ジーク 彼もまた ローレシアの第二王子だ」
ジークライトが衝撃を受け驚いて言う
「あぁ!?ローレシアの!?」
デスが言う
「共に あの夢の世界にて 私とも 出会っている」
ザッツロードが一瞬驚いて言う
「あっ そうか… デスとも 現実世界で会うのは 初めてだったんだ」
デスが微笑する ザッツロードが苦笑する ジークライトが不満そうに言う
「…うーん こんな へなちょこな奴が 王子様だったり ガルバディア国王様に選ばれたりするのか…?」
ザッツロードが苦笑して言う
「“へなちょこ” か… あは… ならせめて へっぽこと言って下さい えっと…?」
ジークライトが笑んで言う
「ああ 俺はジークライト ジークで良いぜ?えーっと ザッツロード7世王子様?」
ザッツロードが苦笑して言う
「なら 僕もザッツで良いですよ もしくは… へっぽこ王子でも?」
ジークライトが一瞬呆気に取られた後笑って言う
「あっはははっ 何だコイツ 面白い王子様だな!?へっぽこ王子様か… でも ま、デスの仲間なら ザッツって呼ぶぜ?」
ザッツロードが苦笑して頷いて言う
「うん…」
デスがプログラムを発生させながら言う
「…その“へっぽこ”と言うのは 東大陸の方言だな?西大陸にあるローレシアの第二王子が 何故その方言を使用する?」
ザッツロードが呆気に取られて言う
「え?方言…?」
ジークライトがデスを見る デスが言う
「そうだ この大陸の言語は 現在一つに絞られているが そうであっても 方言と呼ばれるものは いくつか残されている へっぽこもその一つで アバロンの有る中央大陸であれば へなちょこに当たる」
ザッツロードが呆気に取られた後苦笑して言う
「そうなんだ… 知らなかった それじゃ ジークが最初に僕を へなちょこ王子と言ったのは 中央大陸の方言であったのだね?」
デスが言う
「そう言う事だ」
ジークライトが面白がって言う
「なら ローレシアの西大陸じゃ 何て言うんだ?」
ザッツロードが呆気に取られた後考える デスが苦笑して言う
「西大陸はお前も言う通り やはりローレシアの国風が強く 余りそう言った 柔らかく人を愚弄する言葉は 多用されていない… が、そうだな 強いて言えば」
ジークライトとザッツロードが注目する
【 ローレシア城 玉座の間 】
ルーゼックが怒って叫ぶ
「あの ボンクラ王子の行方は まだ分かっておらぬのかっ!?」
ローレシア兵が言う
「はっ!申し訳ありません …現在 あらゆる手法を試しておりますが ザッツロード王子との連絡 共に居場所の確認は取られておりません」
ルーゼックが玉座へ腰を下ろし腕組みをして険しい表情で言う
「ソルベキアが ついにローゼントへ攻め込んで来おった…っ あのボンクラ王子がまかりなりにも ソルベキアの補佐官として座しておったのなら この様な事はせなんだった筈 つまり、この現状こそが あ奴の身に何かがありおった証拠なのだっ …キルビーグ!」
ルーゼックがキルビーグへ向く キルビーグは目を瞑り考えている ルーゼックが言う
「やはり ローゼントではなく 追加投入した魔法使いらは ソルベキアへ向かわせ ザッツロード7世の救出へ向かわせるべきではあらぬのかっ!?前線でソルベキア軍を潰す事へ力を注ぐより その方が遥かにっ!」
キルビーグが目を開き顔を上げて言う
「ローゼントへの進軍を任されていると言う ソルベキア軍のロボット兵部隊総隊長… 奴こそが キルビーグ2世の命を奪った その当人なのだ 従って… 今は このチャンスを 逃す訳にはいかぬ」
ルーゼックが一度考えてから改めて言う
「だが しかしっ!ザッツロード7世が 現状どうなって居るのか!…それこそ 生きておるのか死んでおるのかすら 分からんのだぞっ!?キルビーグ!今は 既にこの世を去った者の 仇を討つよりもっ」
伝達兵がやって来て言う
「申し上げます!通信が閉ざされていた ソルベキアのスファルツ卿より キルビーグ陛下へ通信が入っております!」
キルビーグとルーゼックが驚き キルビーグが焦って言う
「すぐに繋げっ!」
伝達兵が返事をする
「はっ!」
照射機に照らされ スファルツの映像が現れる キルビーグが言う
「スファルツ卿 無事であったか」
スファルツが言う
『はっ キルビーグ陛下 この様な重大事に通信路を閉ざされ 真に申し訳御座いませんでした』
キルビーグが僅かに表情を和らげて言う
「いや… 貴公程の者が その力を抑えられるとは ソルベキアはそれ程までに 今戦いへ力を注いでいるのだろう」
スファルツが言う
『お恥ずかしながら ソルベキアがローゼントへ進軍していると言う事態でさえ 私はたった今 彼らから聞き及んだ所でありまして …すぐさま 事態の収集を行う所存にございますが まずは取り急ぎ 陛下へのご連絡をと思い 通信を繋がせて頂きました』
通信画面にデスとジークライトが映っている キルビーグが頷いて言う
「うむ 貴公の無事が分かった事は 我らにとって十分安堵の材料となった これからも 何か有れど無かれども 連絡を送ってくれ」
スファルツが言う
『はっ 陛下からの身に余るお言葉を頂き 光栄の極みにございます されど陛下 私がお伝えするべきご連絡は 私めの安否などより もっと重大な事にございます 陛下 恐れ多くもソルベキアは…』
キルビーグが疑問する ルーゼックが覗き込む モニターにザッツロードが映り ザッツロードが言う
『父上っ』
キルビーグが呆気に取られ ルーゼックが叫ぶ
「なっ!?渦中のボンクラ王子ではあらぬかっ!一体 何故 貴様がそこにっ!?」
【 ソルベキア国 スファルツ邸 】
壁モニターにキルビーグと 思わず通信機へ近付くルーゼックの姿が映っている ザッツロードが言う
「父上 申し訳ありません 私は ソルベキアの補佐官の位を任されながらも そのソルベキアに捕らえられ 先程までソルベキア城地下牢にて幽閉されておりました」
通信モニターのルーゼックが怒って叫ぶ
『馬鹿者っ!ザッツロード7世!貴様はそんなであるからにして ボンクラ王子と呼ばれるのだっ!』
ザッツロードが苦笑する ジークライトが聴いていて言う
「へぇ… ローレシアでは ボンクラって言うのか」
デスが苦笑して言う
「フ…ッ 元々は ガルバディアの王が 言ったと言う話だがな?」
ジークライトがデスへ向いて言う
「シリウス国王が?」
デスが苦笑して言う
「さぁな…?ローレシアの歴史によるところの ガルバディアの王が言ったとしか 残されていないが」
ジークライトが言う
「へぇ~…?」
【 ローゼント国 城下町 】
爆撃が起きる 城壁が壊され 複数隊のロボット兵が壊された城壁を超えて入り込んで来る ヴェルアロンスライツァーが剣を引き抜いて叫ぶ
「皆の者!我らが女王アンネローゼ様の在される ローゼント城を守るのだ!反撃ー!」
ローゼント兵たちが声を上げ 剣を引き抜いて走り出す ラントが銃を抜いて言う
「スプローニの精鋭よ!我らが友!ローゼントの騎士を守るのだ!一斉援護射撃用意!撃てー!」
スプローニ兵たちが銃を撃ち始める ヴェルアロンスライツァーがローゼント兵たちと銃弾の向かう先へ向かい 長剣を振りかざして叫ぶ
「ローレシアの同胞よ!我らに力を!」
ローレシアの魔法使いたちが魔法詠唱を終え ヴェルアロンスライツァーの長剣へ魔力を灯す それを切欠に 次々とローゼント兵たちの長剣に魔力が灯され 続いてスプローニサイドの魔法使いたちがスプローニ兵たちの銃へ魔力を灯す ヴェルアロンスライツァーが雄叫びと共にロボット兵へ斬りかかる
「ちぇすとぉおおー!」
ロボット兵が一刀両断され 操縦者が慌てて逃げ出す ロボット兵が爆発する ローゼント兵が叫ぶ
「殿下に続けーっ!」
ローゼント兵たちが声を上げる
【 ソルベキア国 スファルツ邸 】
デスが周囲にプログラムを発生させていて 目を細めて言う
「…始まったか」
ザッツロードが反応してデスを見る べハイムが言う
「祖父上!回線が復旧しました」
スファルツが操作盤を操作して言う
「メモリ最大使用にて!すぐさまローゼントの監視カメラを ジャックなさい!」
べハイムが操作盤を操作して言う
「はいっ」
モニターにプログラムが映し出される スファルツが操作盤を操作するとプログラムが映像に変わる ジークライトが言う
「あぁ…」
ザッツロードが焦って言う
「これは… 戦争だっ …あ!あれはっ ローレシアの魔法使いたち!?」
デスがザッツロードへ向いて言う
「ローゼントには現在 ローゼント在中の魔法使いと共に スプローニから戻された魔法使いが居る筈だ」
ザッツロードがデスへ向いて言う
「それだけじゃない 後方支援に当たっているあの部隊は 本来ローレシアに置かれる筈の者たちだ きっと父上が… 新たに派遣した者だと」
スファルツが操作盤を操作して言う
「…どうやら ザッツロード王子の仰る通りの様です 彼らローレシア第二第三部隊には キルビーグ陛下からの命にて ローゼントへ派遣命令が出されております」
デスが疑問して言う
「ローレシアが既存の部隊の上に 更なる応援を…?それも 本来ローレシア本国を守らせる 上位3部隊の2つを送るとは…」
ジークライトがデスを見て言う
「何か おかしい事なのか?」
デスが考えながら言う
「ふむ… おかしいと言うより 少々異常ではないだろうか?これでは ローレシア本国の国防が余りにも…」
ジークライトが困り悩んで言う
「ローレシアとローゼントは同盟国だろ?だから 強いソルベキア相手に 沢山戦力を貸したってだけなんじゃないのか?」
デスが言う
「現状ソルベキアと手を切ったローレシアが 今 これほどに戦力を他へ送ってしまえば ソルベキアが ローゼントと同時にローレシアを襲撃した際は 自国を守りきれない」
スファルツが言う
「しかも… これほど戦力を強化したローゼントであっても このソルベキア部隊を撃退する事は… いえ 抑える事でさえ難しいでしょう デス アンネローゼ女王が どのような対処をお考えなのか 貴方の方で密かに 覗き見る事は出来ますか?」
デスが言う
「ふん… 無論その程度の事は出来るが」
ジークライトがデスを見る ザッツロードが言う
「アンネローゼ女王に 何らかの策があるのなら!直接聞いて 僕らも手を貸したら良いのでは!?」
デスがザッツロードを見て言う
「では… ザッツロード王子 お前は ローゼントに味方するつもりなのか?」
ザッツロードが一瞬驚き怒って言う
「え?そんなの… そんな事は 当然ではありませんかっ!?ローゼントはローレシアの同盟国であり 王配のヴェルアロンスライツァーは僕らの仲間です!」
デスが腕組みをしてスファルツを見る スファルツが苦笑する ザッツロードが疑問し少し怒って言う
「違うと言うのですか!?確かに この記憶は 夢の世界での出来事だったのかもしれないっ それでもっ 僕らはあの世界で!」
デスが苦笑して言う
「ああ… 我らは共に戦う 仲間であった」
ザッツロードが呆気に取られた後視線を強めて言う
「それならっ!」
デスが言う
「だが これは ソルベキアとローゼントの 戦争だ ザッツロード王子 一国の王位を持つ お前や私が そのどちらかに付くとなれば それは ローレシアやアバロンが どちらかに付くと言う事になる」
ザッツロードが呆気に取られてから困り怒って言う
「それじゃ… デス!?貴方は ヴェルの援護に行かないつもりですか!?」
デスが言う
「そのつもりだ 私はアバロンの第二国王であり 現状 アバロンの王レクターはローゼントへも 無論ソルベキアへも手を貸していない 言わば中立の立場を取っている そしてお前のローレシアは ローゼントへ兵を出してはいるものの 国王であるキルビーグ王は お前へ命じた筈だ」
ザッツロードが目を見開く
回想
モニターに映るキルビーグへザッツロードが言う
『父上!ソルベキアに再び捕らえられた アシル王子の釈放をお願いします!私はこのまま 彼らと共に ローゼントへ向かい…っ!』
キルビーグが言う
『ザッツ お前は ローレシアへ戻れ』
ザッツロードが呆気に取られて言う
『え…?』
キルビーグがデスへ向いて言う
『デス第二国王 ローレシア王としてお願い申す ザッツロード7世の異端地からの移動魔法を一度限り お許し願いたい』
デスが腕組みをして言う
『まぁ良いだろう …アバロンの第二国王としてではなく ガルバディアの民として 我が王へ その旨の願い 通す事を約束する』
キルビーグが頷いてからザッツロードへ向いて言う
『ザッツ 非合法場所からの移動魔法許可が下りた お前はそこから 直接ローレシアへ戻るのだ 良いな?』
ザッツロードが慌てて言う
『父上っ』
回想終了
デスが言う
「異端地からの移動魔法許可は その離着場所の特定は無い お前が今後行うであろう 1度限りの移動魔法を許可しただけだ」
ザッツロードが視線を強めて言う
「…父上は アシル王子の釈放に付いても 言及してくれなかった …きっと」
ジークライトが苦笑して言う
「俺が言うのも難だけどよ?この戦争の最中に… 囚人の釈放なんて やってる暇ないんじゃないか?」
ザッツロードが困って言う
「移動魔法の許可は一度だけ… アシル王子を助けるには 一度きりでは足りないし… 僕1人がローゼントへ行っても… 一体どうしたら」
ザッツロードの脳裏に記憶が思い出される
アシルが視線を強めて言う
『…お前には 戻るべき国があるだろう?お前の… その可笑しな力を貸すべき 仲間が居る …今なら お前が ガルバディア国王に選ばれた理由が 何となくだが 分かる気がするぜ…』
ナイフが音を立てて砕ける ザッツロードがはっとして振り返って叫ぶ
『アシル王子っ!』
アシルが振り返って叫ぶ
『行けっ!ザッツロード!』
ザッツロードが視線を強めて言う
「僕は… 戻らなきゃ…」
デスが微笑する ザッツロードがデスへ向いて表情を悲しめて言う
「…皆の元へ ローレシアへ戻ります」
デスが頷いて言う
「それで良い」
【 ローゼント城下町 第二防衛地 】
ロボット兵たちが横一線になって向かって来る ヴェルアロンスライツァーが悔やみつつ叫ぶ
「第二防衛を破棄する!総員第三防衛へ後退!」
兵士たちが一斉に退避する ラントがヴェルアロンスライツァーの近くへやって来て言う
「あちらのロボット兵は 一向に減る様子が…」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「うむぅ… ソルベキアは 本気でローゼントを… 世界を巻き込んでの戦いを 始めるつもりか…っ …こうなっては」
ヴェルアロンスライツァーがローゼント城を振り返る ラントが叫ぶ
「ヴェルアロンスライツァー副隊長っ!」
ヴェルアロンスライツァーがハッとする ロボット兵がヴェルアロンスライツァーへメイスを振りかぶる ヴェルアロンスライツァーが表情を険しくして盾を構える 二丁銃が放たれヴェルアロンスライツァーの両膝の後ろの鎧に当たる ヴェルアロンスライツァーが驚いて言う
「なぁあっ!?」
ヴェルアロンスライツァーが足をすくわれる様に後ろへ倒れる 倒れたヴェルアロンスライツァーの目前をメイスが空振られる 号令が掛かる
「今だ!撃てー!」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られている目の上を大量の銃弾が過ぎ去る 一瞬の間を置いてロボット兵が倒れる ヴェルアロンスライツァーが身を起こしてロボット兵を見る ヴェルアロンスライツァーの横に人物が現れ言う
「…ロボット兵の攻撃を 盾でなど防げるものではない その重装甲で動けないのであれば 回避する方法を考えろ」
ヴェルアロンスライツァーが振り向きホッと笑んで言う
「ロキ!まさか 貴殿が来てくれるとはっ!」
ロキが両手に銃を持った状態で ヴェルアロンスライツァーを見下ろし 一瞬間を置いてから苦笑し 片手の銃をしまい ヴェルアロンスライツァーへ手を向けて言う
「…家臣たちには 呆れられたがな」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「いつか挽回する その片棒を担がせてくれ」
ヴェルアロンスライツァーがロキの手を取る ロキが微笑して言う
「…当然 担がせる」
ヴェルアロンスライツァーが立ち上がりつつ言う
「先程のは…?」
ロキが言う
「…機関銃部隊 二丁銃を扱えない 一丁でも戦力として足りない連中を 起用した部隊だ」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「以前より 貴殿が気に掛けていた 戦力上昇を諦めた 低ランク銃使いたちか」
ロキが言う
「…スプローニの銃使いとしてのプライドも薄れていた連中には 丁度良いと思ってな」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「なるほど…」
2人がロボット兵たちを見る ロボット兵たちが迫って来る ロキが銃を持って言う
「…その一部隊を連れては来たが それでも」
ヴェルアロンスライツァーが頷いて言う
「ああ… ソルベキアが本気である事が分かった この期に及んでは 我らに残された道は一つ …ロキ 貴殿に頼みがある 私はアンネローゼ様と共に ギリギリまでこのローゼントに留まる よって、貴殿には先行し…」
ロキが言う
「…分かった 奴らへの指示は 卿へ任せる」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して頷いて言う
「了解した ロキ そちらは頼む」
ロキが頷いて言う
「…任せろ」
ロキが去る
玉座の間
伝達兵が言う
「申し上げます!現在ローゼント部隊 及び 応援部隊は ヴェルアロンスライツァー殿下の指示にて!最終防衛ラインにての 防戦体制に入りました!」
大臣がアンネローゼへ向いて言う
「アンネローゼ様っ」
アンネローゼが言う
「はい 残念ながら このローゼントの地を手放さねばならない その時が来てしまった様ですね」
大臣が表情を悲しませる アンネローゼが言う
「城内に避難している住民を 退避路へ向かわせなさい」
大臣がぐっと息を飲んで答える
「…はっ!直ちにっ!」
【 ローレシア城 玉座の間 】
キルビーグが大臣らへ指示を送っている ルーゼックがそれを不満そうに見ていると伝達兵が言う
「ザッツロード王子の御帰城です!」
ルーゼックが表情を明るめる ザッツロードが入って来て キルビーグの前で礼をして言う
「ザッツロード7世 只今戻りました」
ルーゼックが微笑してからキルビーグへ向く キルビーグが軽く微笑して頷く
【 ローゼント城 玉座の間 】
ヴェルアロンスライツァーが現れて言う
「アンネローゼ様っ」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られる 大臣が振り返って言う
「おおっ ヴェルアロンスライツァー殿下」
ヴェルアロンスライツァーが大臣の前にやって来て言う
「アンネローゼ様はどちらへ?」
大臣が微笑して言う
「はい、陛下は予てよりの作戦通り 殿下の部隊が最終防衛線まで後退したとの連絡を受け 城内へ避難していた住民たちと共に エド町へご退避をされました」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られて言う
「む?…確かにそれは 事前の打ち合わせの通りであるが …その一団にアンネローゼ様も加われたのか?」
大臣が作り笑いで言う
「はいっ 何せ エド町とこのローゼントは 前王ハリッグ陛下の折に 少々問題がございまして 従ってアンネローゼ陛下は そのイザコザを処理した上で ローゼントの住民を受け入れて頂けるようにと 住民たちの先頭に立って向かわれました ヴェルアロンスライツァー殿下にも 機を見て エド町へ退避する様にとの御伝言でございます」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られた状態から視線を落としつつ考えて言う
「うむ… そうか 確かにローゼントの多くの民を受け入れてもらうには 国王立っての申し入れが必要にもなるのかもしれん 増してや以前より問題を抱えている町が相手ともなれば… しかし、あのアンネローゼ様が」
大臣が焦る ヴェルアロンスライツァーが首を傾げて考えた後軽く顔を左右に振ってから言う
「いや、何にせよ アンネローゼ様がローゼントを後にしたとあれば 王配とは言え王位を持つ私が 最後までローゼントへ残り始末を付けるのが道理!」
ヴェルアロンスライツァーが気を切り替えて言う
「よし、では住民たちの移動が終わり次第 兵士たちを後退させ 共にエド町へ向かう 大臣 全体の確認を頼む 私も最終防衛線にて周囲の状況を見つつ 前線の兵たちと共に退路へと向かう」
大臣が強く返事を返す
「はっ!」
ヴェルアロンスライツァーが頷き玉座の間を去って行く 大臣が間を置いてから表情を悲しめ横を向く 柱の影にアンネローゼが居る
【 ソルベキア城 地下牢 】
両手両足を拘束されたアシルがニヤリと笑う 看守が怒りに表情を歪め怒って言う
「おのれっ!アシル!貴様ぁ~ よくも脱獄してくれたなぁ!?」
アシルが笑って言う
「あーははははっはー!なぁ~に 俺がその気になれば ざっとそんなもんよ?」
看守がアシルを指差して叫ぶ
「何がざっとだっ!?大体 それが 再び檻に入れられた奴の言う台詞か!」
アシルが微笑して言う
「ふん… まぁ 今回は ローレシアのへっぽこ王子が一緒だったからな そのへっぽこを無事国へ返してやれたんだ 行き場の有る奴を そこへ送ってやれた… それで十分だ」
看守が棍棒を自身の手に振るいながら言う
「くそ…っ 本来であるなら コイツでボコボコに仕置きをしてやる所…」
看守が背を向けて言う
「陛下の客人だと言うのでは仕方が無いっ せいぜい 陛下の求める情報をしっかり思い出してくれる事だっ」
アシルがあざけて言う
「はっはーん?そいつを教えたら お前にボコボコにされた上 情報隠蔽の為 消される… それが分かっていて 俺が何か言うと思うのか?」
看守が悔しそうに歯噛みする ソルベキア兵が看守へ言う
「陛下がお呼びだ 至急 玉座の間へ」
看守が表情を困らせて言う
「陛下が俺を…?…分かった」
アシルが疑問する 看守がアシルを見てムッとしてから立ち去る アシルが微笑して言う
「俺の代わりに たっぷり仕置きをされて来るんだな?」
看守が顔を向け怒りを押し殺して立ち去りつつ独り言を言う
「くそっ もしそうとなったら 例え禁じられておろうとも 1、2発 奴を殴ってやらねば気が済まんっ …そうか、顔でなければ 背や腹であるなら 殴ったとあっても気付かれんな!?よぉ~し」
看守がニヤリと笑んで言う
「ククッ アシルめっ 待っていろ?俺が陛下にお叱りを受けた後は 今までの腹いせも込め お前をっ!」
看守が嬉しそうに棍棒を自身の手に受ける
アシルが上の空で軽く息を吐いて言う
「ふぅ… とは言え いくら何でも ずっと閉じ込めて置くって訳じゃねぇ筈だ おまけに相手はソルベキア ローレシアの監視が完全に離れたとあれば 奴らはいくらだって人畜無常な事をやって来る 俺もこのまま いつまでも無事では済まんだろうな…」
アシルが苦笑して言う
「…ははっ やっぱり 逃げておくべきだったか …何で あいつを庇って捕まったりなんかしちまったんだか …らしくもねぇ事しちまった」
アシルが牢屋の扉を見て言う
「電子錠 あれじゃもう開けられねぇな 今度こそ 外からの助けを待つしかねぇが…」
アシルが苦笑して言う
「あのへっぽこ王子じゃなぁ~ …当てにならねぇな?」
【 エド町 】
ロキが振り返って言う
「…では エドの長へは 貴女が挨拶を?」
エレーナが頷いて言う
「はい アンネローゼ陛下とハリッグ前王陛下の書状を従え 僭越ながら 私めがご挨拶をさせて頂きました」
ロキが言う
「…そうか それで?…エドの町は 貴女たちローゼントの民を受け入れると?」
エレーナが表情を困らせて言う
「はい… とは申しましても それは 一時的にと言う事で エドの町は 今まで通り 中立の立場を崩さず ローゼントの民を一時的に受け入れはしても 守る事は致さず また 一時的にの その言葉の示す通り 例え 両王の書状がありましても 事態が収まり次第 エドの町を去るようにと」
ロキが言う
「…そうか」
エレーナが目を閉じ胸に手を当て静かに案ずる ロキが間を置いて言う
「…それで?」
エレーナがロキを見る ロキが周囲を見渡してから言う
「…その両王 …いや その他にも」
エレーナが疑問する ロキがエレーナを見て言う
「…俺が知る限り 現在ローゼントには 他国を含めた 多くの前王たちが 在城で有った筈だが?」
【 ローゼント国 城下町 】
ローゼックが剣を振り終えた状態で振り返って叫ぶ
「であるからにしてっ!私は貴様との決闘を果たす為 ここに居るのであって!断じて ソルベキアによるローゼントへの奇襲に 参戦している訳ではあらなんだぞっ!?ハリッ…」
ローゼックの顔のぎりぎりを銃弾が掠め ローゼックが目を丸くする ラグヴェルスが硝煙の上がる銃を構えた状態で言う
「…そうであるのなら ロボット兵と満足に戦えぬ卿は下がれ ハリッグを支援する俺の邪魔だ」
ローゼックが怒って叫ぶ
「黙れっ!この6割銃使い!その様な腕では ハリッグの支援すらままならぬわっ!貴様こそ下がらぬか!残りの4割がいつか私を撃ち抜いたらどうするつもりだっ!?見よ!この頬の傷を!」
ローゼックの頬に軽いかすり傷が出来て血が滲む ハリッグが顔を背けて言う
「…力を持たぬ卿が うろうろとするからだ」
ローゼックが怒りを押し殺して言う
「なぁ~にぃ~~っ!?」
ハリッグが通信機をしまい振り返って言う
「二人とも 急な戦いに 巻き込んでしまって済まなかった お陰でローゼントの民は無事 エド町へ逃れたとの事だ これも 諸公が力を合わせ 時間稼ぎをしてくれたおかげである …もっとも そのお陰で」
3人の周囲をロボット兵たちが囲んでいる ハリッグが苦笑笑顔で言う
「我々は 見事に敵の一部隊を引き付け 挙句 周囲を完全に囲われてしまったわけだが はっはっは…っ」
ローゼックが怒って叫ぶ
「馬鹿者っ!ハリッグ!これと言うのも 貴様の即席な作戦 ローレシア、ローゼントの兵らの退避路を確保するが為に 敵部隊を引き付けようと言う作戦を決行した結果だ!お陰で 奴ら兵らの退避路は確保されたが 我々の退避路は絶縁された!この始末を どう致すつもりだっ!?」
ラグヴェルスがハリッグを見る ハリッグが微笑して頷いて言う
「うむ その通り 我々はしっかり ローレシア、ローゼントの兵らへの退避路を確保した上 この場所へ来る事が出来た 私1人では 到底出来なかった事だ 2人には感謝している」
ローゼックが呆気に取られ ラグヴェルスが疑問して 2人が顔を見合わせる ハリッグが懐から宝玉を取り出して言う
「実は これを アンネから 託されていたのだ」
ローゼックとラグヴェルスが驚き ローゼックが言う
「宝玉…!?ソルベキアの王 ガライナをガルバディアから 帰す代わりに ローゼントへ戻されたと言う話であったが… そうか 確かに アンネローゼ女王やあの王配が持っていては」
ラグヴェルスが言う
「…では この奇襲 …ソルベキアの狙いはそれであると?」
ハリッグが軽く顔を左右に振って言う
「それは分かりかねる しかし そうであろうが無かろうが この力を再びソルベキアへ渡す事だけは 何としても 防がなければならない」
ローゼックが表情を困らせて言う
「そうは申そうともっ 現状がこれであっては それすらも ままならぬではあらぬかっ!?」
ラグヴェルスが頷く ハリッグが微笑して言う
「いや、これで良いのだ この場所へたどり着く事が 宝玉を任された私の責務であった」
ハリッグがローゼックとラグヴェルスの間を通って 小さな祠の中へ身を屈める ローゼックとハリッグが疑問して覗き込む ハリッグが小さな祠の祭壇へ宝玉を置く ローゼックが疑問して言う
「うん?…これは …ふむ何処かで見たような?」
ラグヴェルスが言う
「…祭壇っ 宝玉の祭壇が こんな場所に?」
ハリッグが言う
「この祠にはガルバディアより 宝玉の返還を受けると共に頂いた 特別な結界が張られている」
ラグヴェルスが言う
「…つまり ガルバディアの力が 祠を守っていると言う事か?」
ハリッグが頷いて言う
「ああ、ここへ宝玉を置くと同時に その力は起動すると言う事だ 私には分かりかねるが 祭壇へ宝玉を置いた時点で 祠はソルベキアの力では 触れる事も破壊する事もできなくなっているのだろう」
ローゼックが苦笑して言う
「その様な力が存在していたとは …ハリッグ 何故今まで黙って居った?」
ハリッグが苦笑して言う
「うむ それは…」
ラグヴェルスが目を閉じ不満そうに言う
「…どこぞの 誰かが 決闘だ決闘だと 騒ぎ立てていたお陰で 戦略を説明する間が持てなかったのだろう?」
ローゼックが衝撃を受け視線を巡らせ考えた後 慌ててラグヴェルスを指差して言う
「そ… それは…っ …え、ええいっ 黙れっ!6割銃使い!貴様がパンパンと4割も無駄な弾を打ち鳴らしていた騒音のお陰で ろくに言葉を交わす余裕もあらなかったのだっ!」
ラグヴェルスが怒って言う
「なにぃ!?大体っ 先程から黙っておればっ!俺の命中率は7割半であって 決して6割ではないっ!」
ローゼックがあざけて言う
「7割半か!?落ちたものだな!?ラグヴェルス!?かつてのスプローニにおいて 天才銃使いと言われた貴様が!」
ラグヴェルスが怒って言う
「黙れっ!不信王がっ!人の言葉もろくに信じぬ貴様が そんな所だけ素直に信じるなっ!」
ハリッグが苦笑し ローゼックとラグヴェルスがいがみ合っている ロボット兵が動き出す ローゼックとラグヴェルスがはっとして向き直り武器を構える ハリッグが言う
「さあ… これで私の任務は遂行された 後は…」
ローゼックが苦笑して言う
「後は」
ラグヴェルスが閉じていた目を開いて言う
「…こいつらの 相手か」
ローゼックが言う
「ふんっ …こんな機械のポンコツどもが 我が相棒イシュラーンが居れば 我らだけで鉄屑にしてやれたものっ!」
ラグヴェルスが言う
「…その大切な …卿の存在よりよっぽど大切なイシュラーン殿が居らんのだ 従って ただうろちょろして 奴らに振り払われるだけの卿は下がっていろ」
ローゼックが衝撃を受け怒って言う
「ええいっ!今何と申した!?一つ一つに対して怒らせよ!7.5割銃使い!」
ラグヴェルスがそっぽを向く ハリッグが一歩踏み出して言う
「いや、…2人共 ここまで良くぞ付き合ってくれた 私は貴公たちの友情を あの世で自慢させてもらおう」
ローゼックとラグヴェルスがいがみ合っていた状態から驚きハリッグへ向いて ラグヴェルスが言う
「…何を言う ハリッグ」
ローゼックがムッとして言う
「そうであるっ まだ我々は ここで尽きると決まった訳ではっ」
ハリッグが顔を向けないまま頷いて言う
「うむ …尽きるのは 私だけで十分 …ローゼントも 私と共にここで一度絶やされる だが、しかし いつか… いつの日か きっとこの土地はソルベキアから開放され 再び 美しいバラの咲き乱れる ローゼント国として 立ち上がるだろう …貴公たちには その片鱗でも目にして欲しい …ここで塵行く 私の代わりに」
ローゼックが呆気に取られてから周囲を見渡す 見渡す限りに有る多くのバラの花壇は ロボット兵たちに踏み荒らされている ローゼックが表情を落とす ラグヴェルスが言う
「…それは どういう意味だ ハリッグ この状況では …ここで塵行くのは 卿だけに留まらぬはずだ」
ハリッグが微笑して振り返って言う
「あの祠は小さいが ただ身を潜めるだけであるなら 諸公2人が何とか入られるだろう あの中へ入ってさえ居れば 後は ソルベキアのロボット兵たちが去るのを待てば良い」
ローゼックとラグヴェルスが呆気に取られて祠と互いを見る ハリッグが苦笑して言う
「残念ながら 私の様な 大柄なローゼントの男が入るようには作られておらぬのだ ガルバディアの民が小柄である事も去ることながら 我らローゼントの民は 重装備に耐えられるようにと 少々背丈を大きくし過ぎた様だな はっはっはっ」
ローゼックが表情を困らせる ラグヴェルスが沈黙の後言う
「… …そうであろうとも 卿1人であれば それこそ ソルベキアが兵を引くまでの間だけでも 身を隠しておく事は出来た」
ローゼックが言う
「我らは… 協力していたつもりが 逆に 事態を悪化させたと言う事か」
ハリッグが顔を横に振って言う
「いや、それはまったく持ってあらぬ ローゼック殿 そして ラグヴェルス 諸公が居てくれねば 私は間違いなくこの場所までたどり着く事は出来なかった 諸公は 私と 再び宝玉を託された このローゼントの救世主であったのだ」
ロボット兵がハリッグの前に立ち武器を振り上げる ハリッグが微笑して言う
「さぁ、行ってくれ ローゼントが例え一時とは言え 絶えるのであれば その地で塵行くのはローゼントの王族である私であって当然!…ありがとう 2人とも 諸公は 私の 最高の親友であった」
ローゼックとラグヴェルスが呆気に取られる ハリッグがロボット兵へ向き直り剣を引き抜いて言う
「我が名は ハリッグ・レーンツェ・ローゼント!ローゼントに光をもたらす者!例え今 貴様たちソルベキアに討ち取られようとも 我が光は再びこのローゼントの地を 照らすであろう!」
ロボット兵が武器を振り下ろす ハリッグが盾を構える 銃声が鳴り ロボット兵の目が破壊され ロボット兵の武器がハリッグの横に振り下ろされる ハリッグが呆気に取られ振り返る ラグヴェルスが銃を撃ち終えた状態で言う
「…ラグヴェルス スファルタス メルロルン ベイク ワイッサ シュトルゼリン フォルラー 友情の名の下に 自国の任務を終えた後に その真価を見出す銃使い …まさか 我が命名を まっとう出来る場に遭遇するとは その名を与えた当の父とて 今頃あの世で驚いているだろう」
ハリッグが呆気に取られて言う
「ラグヴェルス…」
ハリッグが困り怒って言う
「ラグヴェルスっ 貴公はローゼック殿と共に 祠へっ!」
ローゼックが剣を振りかざして言う
「何をしている!?ハリッグ ラグヴェルス!邪魔な機械人形などさっさと潰し 再び周囲を 美しいバラで飾った舞台にて 我らの決闘の決着を付けねばならぬ!」
ハリッグが驚いてローゼックを見る ローゼックが剣を構えニヤリと笑んで言う
「いいや… やはり 私はバラの花が再び咲くまでと 悠長に待っては居れぬな 代わりに この機械人形どもの残骸で飾った舞台と言うのも 悪くない」
ラグヴェルスが笑んで言う
「…卿には そちらの方がお似合いだな …イシュラーン殿ならともかくとして 花の美しさなど卿には分かるまい?」
ローゼックが笑んで言う
「それは貴様も同じではあらぬのか?ラグヴェルススファルタスメルロルンベイクワイッサシュトルゼリンフォルラー?」
ラグヴェルスが苦笑して言う
「…ふん 否定はしない この機械人形たちの残骸で作られた 舞台であるというのなら 俺も 好みだ」
ローゼックが笑う
「ククッ… では その舞台での決闘は 互いの相棒を交えての 決闘ぞ!」
ラグヴェルスが笑んで言う
「…良いだろう ならば 今この瞬間だけは ここに居らん イシュラーン殿の代わりに 卿のサポートも俺が行ってやる」
ローゼックが呆気に取られる ラグヴェルスが言う
「…今までの戦いで 卿の動きも把握した …今なら ハリッグと共に 卿のサポートも可能だ」
ローゼックが驚いて言う
「…では 今までの あの 危なっかしい4割の銃弾は」
ラグヴェルスが言う
「…卿のサポートを行う練習だった 完全ではないが 今を置いて 他に実践する時が無い …きっと また外れるものがあるだろうが」
ローゼックが笑んで剣を構えて言う
「構わぬ!どんと来るが良い!一、二発くらい 間違って撃たれようが 私は倒れはせなんだっ!」
ラグヴェルスが微笑して言う
「…そうか、では 5,6発くらいの覚悟を」
ローゼックが慌てて言う
「5,6発は厳しいわっ!それより 可能な限り 当たらぬように致さぬかっ!馬鹿者っ!」
ロボット兵たちが近づく ローゼックが気を切り替えて言う
「…っと」
ラグヴェルスが言う
「…卿との無駄話も これで終わりだ」
ローゼックが笑んで言う
「後は …あの世とやらで ゆっくり致そうではあらぬか?」
ハリッグが言う
「ラグヴェルス ローゼック殿まで…っ!?」
ラグヴェルスが言う
「…俺は あの祠の中から 俺の相棒が散り行くのを 黙って見てなどは居られん」
ローゼックが笑んで言う
「そして、ここまで来たのだ 好い加減 ローゼック“殿”と言う 他人行儀は改めよ ハリッグ」
ラグヴェルスが言う
「…デネシアの我流剣士殿は ローゼックと言う名らしい 俺も今初めて知った」
ローゼックが怒って言う
「黙れっ!7.5割り銃使いっ!」
ラグヴェルスが衝撃を受ける ハリッグが苦笑して言う
「…すまない 2人とも しかし …ありがとう 我が相棒 ラグヴェルス そして 我が親友 ローゼック」
ローゼックとラグヴェルスが微笑する ローゼックが叫びながら向かう
「礼など要らぬわ!剣士とは戦場で戦い 戦場で散る者よ!」
ラグヴェルスが銃を構えて言う
「…ソルベキアとの因果 今ここで 全てを撃ち晴らす!」
ハリッグが剣を振りかざして言う
「ローゼントは 永遠に ソルベキアには従わぬ!例えこの地を踏み荒らされようとも!」
3人がロボット兵へ立ち向かう 祠の中で宝玉が輝いている
【 ローレシア城 玉座の間 】
ザッツロードが怒って叫ぶ
「何故です!?父上!」
ザッツロードが踏み出して言う
「ローレシアが この度の事態へ対する抗議文を ソルベキアへ送れないだなんてっ」
キルビーグは目を閉じて聞いている ザッツロードが怒って叫ぶ
「ローレシアは!何故ソルベキアを恐れているのですか!?これでは ソルベキアと手を切る以前の方が よっぽどましでした!ローレシアはいつからソルベキアの配下にっ!」
ルーゼックが言う
「その辺にしておくのだ ザッツロード王子」
ザッツロードがルーゼックを見て言う
「ルーゼック陛下…!?しかしっ!」
ルーゼックが言う
「キルビーグとて 何か打てる手があるのならば行っている …無論 私も」
ザッツロードが一瞬呆気に取られた後 視線を落とし巡らせてからキルビーグへ向いて言う
「私の収監へ対する抗議の文を送った所で 謝罪の言葉が返ってくるとは思っていません しかし!ローレシアとして ソルベキアへ 私を助けてくれたアシル王子の身柄の 引渡しを要求する事でしたらっ 可能性はあります!アシル王子のスプローニは 今ならこのローレシアとも縁があり その国の王子を救おうとするのは ローレシアにとって何ら不利になるような事にはなりません!ですから 父上!」
キルビーグが沈黙する ザッツロードが叫ぶ
「父上っ!」
ルーゼックがキルビーグを横目に見てからザッツロードへ言う
「…その件に関しても」
ザッツロードがルーゼックを見て言う
「ルーゼック陛下っ」
ルーゼックが間を置いて言う
「…その件に関しても 打てる手立てがあるのであれば 貴様の脱獄へ手を貸したと聞き及んだ時点で行っていた」
ザッツロードが呆気に取られる ルーゼックが言う
「ザッツロード王子 キルビーグはローレシアの王として 貴様の父親としても 行えうる事は行い 常に最良を求めておる …そして、経緯はともかく 貴様はローレシアへ戻った」
ザッツロードが慌てて言う
「しかしっ!まだ アシル王子が!」
ルーゼックが言う
「アシル “元” 王子であろう?きゃつは今 スプローニの王位を失った その者の釈放を求める事は 自国の王子の釈放を求めるより難しいのだ」
ザッツロードが表情を困らせ 再び言い及ぼうとする
「し、しかしっ」
ルーゼックが言う
「しかしっ!…貴様が世話になったとあっては ローレシアとて動く理由にもなりよる …よって 再び最良の手段を講じ 勤める努力は行うっ!…今はそれで精一杯だ 理解せよザッツロード」
ザッツロードが呆気に取られた後視線を落とし 一度目を閉じてから改めてルーゼックへ言う
「…分かりました ルーゼック陛下 そして、父上」
ザッツロードがキルビーグを見て言う
「何らかの手段を講じるのでしたら その際は 必ず 私にも協力をさせて下さい!」
キルビーグが目を開き頷いて言う
「うむ …お前の思いは分かった」
ザッツロードが表情を落としつつ礼をして言う
「…有難うございます」
ザッツロードが立ち去る キルビーグが息を吐く ルーゼックが言う
「…で?どう致すつもりだ?」
キルビーグが視線を落として言う
「先程 ローゼントへ向かわせていた魔力者たちが帰還した ローゼントはソルベキアの手に落ちたとの事だ しかしながら 犠牲は最小限に 民や多くの兵士は生きながらえたと」
ルーゼックが言う
「…とは申そうとも 国を追われた その者たちはどうなる?そして ソルベキアの狙いは?」
キルビーグが顔を左右に振ってから言う
「分からぬ ソルベキアの真意も ローゼントの今後も そして…」
ルーゼックが疑問して言う
「そして?」
キルビーグが言う
「ガルバディアの… 我らの神の動きも」
ルーゼックが視線を強める
【 ガルバディア城 】
美しい草原の上 暖かい日差しの下 ヴィクトールが気持ち良さそうに眠っている そこへ バーネットの叫び声が届く
「だぁああっ!くそぉおお!ド畜生がぁああっ!」
ヴィクトールが驚き飛び上がって言う
「え?何っ!?バーネット!?」
ヴィクトールが立ち上がって駆け出すと 周囲のホログラム光景が消え ガルバディア城玉座の間に戻る ヴィクトールが玉座に座るバーネットの元へ駆け付け 顔を覗き込んで言う
「バーネット!?どうしたの!?バーネット!?」
バーネットが不満そうに言う
「…どうもしねぇ」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後困って言う
「どうもしないって!?だったら さっきのは?何かあったんでしょ!?バーネット!?」
バーネットが不満そうに言う
「…何もねぇ」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後表情を困らせて言う
「何もねぇって… そんな訳ないよっ バーネット!教えて!一体何がどーしたのっ!?」
バーネットが怒って言う
「うるせぇええ!何もねぇえんだ どいつもこいつも 何もどーも言って来ねぇえんだ!畜生がぁああ!!」
バーネットがヴィクトールを鞭で縛り上げる ヴィクトールが痛がりながら言う
「いたぁ~いっ バーネットっ 何!?一体 何も どーも言って来ないって それって どー言う意味ぃい!?」
バーネットが不満そうに玉座に頬杖を突いて言う
「どー言うも何もねぇ!そのまんまの意味だぁ… 別大陸へぶっ飛ばした連中へ送った連絡に 返信が来ねぇ… シリウス国王へ送った通信にも返事がねぇ シリウスBに送った状況確認の連絡にも返事がねぇ… ローゼントへ攻撃を仕掛けやがった ソルベキアへ送った通信も遮断しやがった …誰一人 俺からの連絡に何も返事を返さねぇえ!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「それは… バーネット」
バーネットが不満そうに視線をヴィクトールへ向けて言う
「あぁ?」
ヴィクトールが苦笑笑顔で首を傾げて言う
「別大陸へ向かわせた彼らは 何か重要な事が起きたり分かったりした時まで 極力通信は避けるようにしようって事だったし、シリウス国王に通信が繋がらないのは ずっと以前からだし シリウスBと連絡は しばらく取らない事に決まっていたし ソルベキアは元々 他国と通信連絡をするような国じゃなかったじゃない?それら何処からも返事が来ないのは 当然なんじゃないかな~?えへっ」
バーネットが不満そうに視線を逸らして舌打ちして言う
「チッ… んな事は分かってやがるが… てめぇは 猫の癖に んな難しいこと言いやがるんじゃねぇっ!」
ヴィクトールの付け猫耳が目立つ ヴィクトールが苦笑する バーネットが溜息を吐いて言う
「まぁ 最初の3つはそうとしてもだ …こっちとら 代理とは言えガルバディア様の王だぞ? その俺からの通信を無視しやがるなんざ ソルベキアは何考えてやがる?まさか 本当にこの大陸の連中や このガルバディア様に歯向かおうってぇのかぁ?」
ヴィクトールが首を傾げて考えて言う
「う~ん… それじゃぁ」
バーネットが疑問する ヴィクトールが微笑して言う
「僕が行って 直接聞いてこようか?」
バーネットが驚いて言う
「あぁっ!?な、何言ってやがるんだっ!?てめぇえはぁあっ!?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「ガルバディア城から出ないで 何でも出来るバーネットと違って 僕はこの城で ただ昼寝をしたり 遊んだりしてるだけで 正直 何の役にも立って居ないじゃない?ソルベキアなら 僕も少し暮らした事があるから 迷わず行けるし これで バーネットの 通信の返事がなかった事へのイライラを 一つでも解消できるなら!…って訳で!さっそく!」
バーネットが怒りを爆発させて言う
「何勝手な事言ってやがる!馬鹿野郎がぁああ!!」
ヴィクトールが驚いて目をぱちくりさせる バーネットが凄んで言う
「んな事しやがったら… てめぇが この城から居なくなっちまうじゃねぇか…?」
ヴィクトールが疑問して首を傾げて言う
「え?…う、うん そうだね ソルベキアへ行っている間 僕はこの城には」
バーネットがヴィクトールの襟首を掴んで言う
「…それとも てめぇは なにかぁ?そんなに 俺の側から離れてぇのか?あぁっ!?」
ヴィクトールが言う
「ち、違うよ バーネットっ 僕はただ 君の苦しみを少しでも 拭ってあげたいと思ってっ」
バーネットが怒ってヴィクトールを縛り上げて言う
「だったら 離れようとなんざ しやがるんじゃねぇえよ!この馬鹿野郎がぁ!!」
ヴィクトールが痛がりながら言う
「ああぁ~~っ わ、分かったよバーネットっ ごめんなさいっ 僕 そんなつもりは ああっ!そ、そこはっ!君の愛が…っ 愛が痛いよぉお~~ バーネット~」
バーネットが衝撃を受け怒って言う
「なぁっ!?て、てめぇは またそんな誤解を招く言葉をっ」
鞭の音が響く
【 エド町 】
ローゼントの兵士たちが消沈している ヴェルアロンスライツァーが周囲を見渡しながら歩いて来て叫ぶ
「アンネローゼ様っ!?誰かっ アンネローゼ様を知らぬかっ!?」
ロキが現れて言う
「…ヴェル 卿も来たか」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚いて言う
「ロキ!…助かった 貴殿のお陰で ローゼントの民は皆 無事このエドの地まで退避出来た」
ロキが視線を逸らして言う
「…ああ、彼らの退避の手伝い程度なら可能だったが …やはり俺自身は ソルベキアの兵へ 直接銃を向ける事は出来ない」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬呆気に取られた後苦笑して言う
「うむ、分かっている スプローニからは更なる援軍を送ってもらった 十分感謝している」
ロキが目を閉じて言う
「…俺が 一兵士のままであれば その援軍に加わる事も可能であったのだがな」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「それは このヴェルアロンスライツァーも同じ 互いにそれは仕方なしとしようではあらぬか?」
ロキが微笑して言う
「…そうだな」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して頷く エレーナが現れて言う
「殿下…」
ヴェルアロンスライツァーがエレーナへ振り返って言う
「エレーナ!貴女も無事で何よりだ!…して、アンネローゼ様はどちらに?」
ロキがヴェルアロンスライツァーへ向いて言う
「…卿は 一緒ではなかったのか?」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「私は兵士たちとともに 皆の退避が終了するまで戦うようにとされていた アンネローゼ様は先にエドへ向かい 民の受け入れを願い入れるとの事であったのだが …この様子からして その願は受け入れられたものと」
エレーナが言う
「はい、民の受け入れは 一時的に許可されました しかし、長期の受け入れは許容出来ないと」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「…そうか うむ それでは それを理由に アンネローゼ様は 他国への申し入れにでも?」
エレーナが言う
「いえ、そちらの申し入れは ヴェルアロンスライツァー殿下に 行っていただけないものかと…」
ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「私に?…それは かまわぬが アンネローゼ様からの御指示か?」
エレーナが表情を困らせて言う
「いえ… 私めの勝手な判断にございます」
ヴェルアロンスライツァーが一瞬呆気に取られてから言う
「うん?それは如何なる意味か…?」
ヴェルアロンスライツァーが気を取り直して言う
「…では それを私が致すにせよ まずはアンネローゼ様へ御報告と 今後の御予定を伺わねば エレーナ、アンネローゼ様はどちらに居られるのか?貴女ならば 知っている筈」
エレーナが目を伏せる ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「エレーナ?」
ロキが間を置いて言う
「…なるほど 可笑しいとは思って聞いていたが やはり」
ヴェルアロンスライツァーが疑問してロキを見た後 エレーナへ向いて言う
「それは…?一体どう言う事かっ?エレーナっ!?」
エレーナが伏せていた目を開き 表情を悲しめて言う
「ヴェルアロンスライツァー殿下 実は 姫様は…」
ヴェルアロンスライツァーが目を見開く ロキがヴェルアロンスライツァーを見る エレーナが泣き崩れる ヴェルアロンスライツァーが走り出す ロキが叫ぶ
「待て!ヴェル!ヴェルアロンスライツァーっ!」
ヴェルアロンスライツァーが走り去って行く
【 ローゼント城 門前 】
戦火の中 アンネローゼが強い意志の元立っている 周囲をロボット兵が囲い 軍隊長がアンネローゼの前に立っていて タブレットモニターを見て言う
「ふん… 最後まで足掻くから 何があるのかと思って見ていたが …ローゼントの前王 ハリッグは 自国の最期を知り 悪足掻きに戦っただけの様だ お前も見るか?父親の最期の顔だぞ?」
アンネローゼが一瞬驚き視線を落とした後 再び視線を強めて軍隊長を見て言う
「このローゼント国の王族である 私と私の父が この地で倒れるのは当然の事です 国が敗れた以上 王が生き延びる事は許されません」
軍隊長が笑んで言う
「フンッ… 気丈だな?ローゼントの赤い薔薇 アンネローゼか… その美しさは ローゼントの他 2つの国を虜にしたと言う だが その2つの国 ツヴァイザーもシュレイザーも お前の最期には 何の助けも送ってくれぬようだなぁ?所詮は 唯のお飾りに過ぎなかったわけか?」
アンネローゼが言う
「何とでも仰りなさい ツヴァイザーもシュレイザーも この戦いに加勢してくれると いち早く声を掛けて下さりました しかし、戦いの中ではなく 他の事柄で加勢して頂く事に致したのです 貴方の様な下位の者には分からないお話です」
軍隊長がムッとして言う
「なんだとっ この女がっ!」
軍隊長がアンネローゼの頬を引っ叩く アンネローゼが一瞬目を閉じ叩かれるが すぐにキッと強い視線で見返す 軍隊長がムッとして言う
「クッ… 気の強い女だ 流石は女王様といった所か だが…」
軍隊長がアンネローゼの体をいやらしい目で見て笑んで言う
「伊達に3つの国にチヤホヤされるだけはある 歳は行っても ローゼントの薔薇とは 美しいものだなぁ?クックック…」
アンネローゼが強い視線で言う
「私を殺し その映像を ソルベキアへ送るのが 貴方の役目ではないのですか?父にした様に!」
軍隊長が笑んで言う
「ああ お前の死に姿と この城の破壊された映像を ソルベキアへ送るのが俺の役目だ ハリッグ前王は指示に無かったが これは 特別報酬にもなり兼ねるだろう ツイてたぜ」
アンネローゼがムッとする 軍隊長が笑んで言う
「ハッハッハー まったく 今日の俺はツキまくっている ハリッグ前王の特別報酬に継いで お前ほどの …良い女を頂けるチャンスまで 得られたんだからなぁ?」
軍隊長がタブレットモニターを確認しながら言う
「ソルベキアの城下で ちょいと問題が起きたお陰で 制圧を終えたうちの部隊を急遽向かわせる事になった …お陰で 今ここに居るのは お前と俺の2人きり… 後は俺の命令で動く このロボット兵たちだけだ… これがどう言う事か 分かるか?女王様?」
アンネローゼがムッとする 軍隊長がアンネローゼの胸元に手を掛ける アンネローゼが驚き怒って手を振り払って叫ぶ
「何をするのですっ!戦時においても 他国の王を辱める事は許されませんっ!あなたは自国の …ソルベキアの地位を 落とすつもりですかっ!?」
軍隊長がニヤリと笑んで言う
「へっへ… そんな事 証人が居なければ分からん事だ 大人しく俺にやられろっ 女王様よぉおっ!?」
軍隊長がアンネローゼの胸元のドレスを破る アンネローゼが悲鳴を上げる
「きゃぁあっ!」
軍隊長が嬉しそうに笑んで言う
「はははっ 良いぞ!その反応だ!やっぱり いくら気丈だろうと 所詮は女だな?」
軍隊長がアンネローゼを押し倒す アンネローゼが逃れようともがきながら言う
「お止めなさいっ!」
軍隊長が喜んでアンネローゼの胸を片手で鷲掴みにして もう片方の手で アンネローゼの手を押さえつけて言う
「残念だったな?ここにはもう お前を守ってくれるローゼントの騎士様は いねぇえんだよっ!」
軍隊長がアンネローゼを襲う アンネローゼが悲鳴を上げて叫ぶ
「嫌ぁっ!止めてっ!助けて…っ ヴェル… ヴェルアロンスライツァーっ!」
軍隊長がニヤリと笑む アンネローゼが怯える ヴェルアロンスライツァーの声が届く
「アンネローゼ様っ!!」
アンネローゼがハッとする 軍隊長が驚き言う
「な?…まさかっ!?」
軍隊長が驚いた表情のまま顔を上げた瞬間 ヴェルアロンスライツァーの右ストレートに悲鳴を上げ吹っ飛ばされる
「ぎゃあっ!」
軍隊長がロボット兵にぶち当たり地に腰を落とす ヴェルアロンスライツァーがマントでアンネローゼの乱れたドレスを隠し 荒れる息のまま言う
「アンネローゼ様… はぁはぁ… 遅く… なり 申し訳… はぁっ ありません…」
アンネローゼが喜びと安堵で涙ぐみながら ヴェルアロンスライツァーに抱き付いて言う
「ヴェルアロンスライツァー… 来てくれたのですね…」
ヴェルアロンスライツァーが微笑してアンネローゼを支える 軍隊長が殴られた頬を押さえつつ 痛そうに立ち上がって言う
「…くっ まさか まだ残っていたのかっ センサーには 映らなかったと言うのに…」
ヴェルアロンスライツァーが軍隊長へ顔を向け アンネローゼを庇いつつ立ち上がらせる 軍隊長が笑んで言う
「とは言え たった一人が 今更来たところで 何も変わらんわっ!精々俺のロボット兵たちに 今の何倍もの力で殴り潰されるが良いっ!」
アンネローゼがハッとしてヴェルアロンスライツァーを見上げる ヴェルアロンスライツァーが軍隊長を見据えている 軍隊長がタブレットモニターを操作して言う
「なるほど… ヴェルアロンスライツァー このローゼントの王配か それならここに残った理由も頷ける そして …ククッ 特別賞与の倍増か!こいつは良いっ!」
軍隊長が手を振り払って叫ぶ
「ロボット兵たちよ!命令変更だ!そこに居るヴェルアロンスライツァーを殺せ!」
アンネローゼが驚きヴェルアロンスライツァーを見上げる ヴェルアロンスライツァーが軍隊長を見たまま笑んで言う
「よし… これで良い」
アンネローゼが驚いて言う
「『良い』とは?ヴェルアロンスライツァー… そ、そうだわ!わ、私は 貴方に ローゼントの民たちを任せようとっ!」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼへ向き微笑して言う
「アンネローゼ様 申し訳ありません 私は エレーナを通じ仰せ付かった そちらの御命令には従えません」
アンネローゼが驚く ヴェルアロンスライツァーがすまなそうに微笑して言う
「私は… このヴェルアロンスライツァーは 王を守る剣 アンネローゼ様 貴女様の御傍に居られず 残された命にのみに従って 生きのびられるほど 私は器用な男ではないのです …どうか お許しを」
アンネローゼが苦笑して頬を染める ロボット兵が近くへ寄ってくる その足音にアンネローゼがハッとして周囲を見る 軍隊長が言う
「良いか!?その女は傷付けるな その女には まだ用があるからな…?そいつを済ませるまでは 生かしておくんだぞ?」
軍隊長が笑う アンネローゼがムッとする ヴェルアロンスライツァーがロボット兵へ視線を向けたまま言う
「アンネローゼ様」
アンネローゼがハッとしてヴェルアロンスライツァーを見上げて言う
「はい ヴェルアロンスライツァー」
ヴェルアロンスライツァーが視線を向けないまま言う
「奴ら ロボット兵たちは 私を標的としました そして 程良い事に アンネローゼ様の身を傷付けるなと」
アンネローゼが不満そうな表情をする ヴェルアロンスライツァーが続ける
「よって、どうかこの隙に アンネローゼ様は ローゼントから お逃げ下さいっ」
アンネローゼが驚いて言う
「えっ…!?」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼへ向き苦笑して言う
「残念ながら そう長い時間は稼がれないでしょう ですから エド町への脱出路を 急ぎ走って下さい きっと その先には 私と共に アンネローゼ様の事態を知った ローゼントの兵たちが迎えに上がっている筈 どうか その場所まで」
アンネローゼが驚き呆気に取られ 慌てて言う
「そ、それでは 貴方がっ!」
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「はっ!このヴェルアロンスライツァー 最期の時まで アンネローゼ様を守る剣として 戦い抜くと誓います!ですので どうか…っ!」
アンネローゼが泣きそうな表情で言う
「そんな… そんな…っ」
軍隊長が叫ぶ
「やれー!その男を叩き斬れー!」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼから離れ 剣を引き抜いて言う
「さあっ!行って下さいっ アンネローゼ様!」
アンネローゼが言う
「ヴェルアロンスライツァーっ!」
ヴェルアロンスライツァーがロボット兵へ叫びながら立ち向かう
「うおぉおおーー!」
ヴェルアロンスライツァーの剣がロボット兵の装甲に弾かれる ロボット兵が武器を振りかざす ヴェルアロンスライツァーがそれを避ける 別のロボット兵が武器を振り下ろす
アンネローゼが胸元で手を握り締めつつ 表情を困らせる ヴェルアロンスライツァーがロボット兵の武器を盾で防ぐ 盾が武器の衝撃に歪む ロボット兵が武器を振り下ろす ヴェルアロンスライツァーが退避する アンネローゼが一歩後づ去る
ロボット兵が武器を振るう ヴェルアロンスライツァーが盾で防ぐ 盾ごとヴェルアロンスライツァーが衝撃に押される ロボット兵がヴェルアロンスライツァーの盾を掴み上げる アンネローゼがハッとして見上げる
ヴェルアロンスライツァーが持ち上がられロボット兵の顔の近くまで上がると ヴェルアロンスライツァーが剣でロボット兵の首筋に有る配線を叩き斬る ロボット兵が感電して動きを止める ヴェルアロンスライツァーが盾を手放し 地に下りると剣を構える アンネローゼがぐっと目を閉じ逃げ出す
軍隊長がヴェルアロンスライツァーへ怒りの視線を向けて言う
「くそっ!あの程度の攻撃に 1体やられただとっ!?…何をしている!早くそいつを殺せ!」
ヴェルアロンスライツァーが剣を構えた状態で 先程までアンネローゼが居た場所を見る アンネローゼは居ない ヴェルアロンスライツァーがホッとして言う
「…良し、後は 何とかもう少し 時間さえ稼がれれば」
ヴェルアロンスライツァーが剣を構える ロボット兵が武器を振るい下ろす ヴェルアロンスライツァーが微笑してそれを避ける と同時に後方からロボット兵の武器が振るわれ ヴェルアロンスライツァーの背に直撃する ヴェルアロンスライツァーが目を見開き吐血する ヴェルアロンスライツァーが前のめりに一二歩行くと 前方から再びロボット兵の武器が振るわれヴェルアロンスライツァーが 後方へ吹っ飛ばされ城壁に叩き付けられる ヴェルアロンスライツァーが目を見開いたまま衝撃に身を歪ませそのまま地へ落ちる 軍隊長が笑んで言う
「よーうしっ!いいぞ!そこだ!そこでトドメを刺せっ!」
ロボット兵がヴェルアロンスライツァーへ武器を突き向ける ヴェルアロンスライツァーが顔を上げ 向かって来る武器を見て苦笑して言う
「これ まで… か…」
ヴェルアロンスライツァーがゆっくり目を閉じようとして思う
『アンネローゼ様…』
肉を突き抜く音と共に ヴェルアロンスライツァーへ向けられていた武器が反れ ヴェルアロンスライツァーの横の城壁に突き刺さる ヴェルアロンスライツァーの閉じようとしてた目が止まり 再び開かれ 共に驚きの表情に変わる 軍隊長が驚いて言う
「なぁっ!?」
ロボット兵が一瞬間を置いてから 武器を引き戻す 武器が城壁から抜け ヴェルアロンスライツァーの目の前で ロボット兵の武器が貫いた アンネローゼの胸を抜けて 戻って行く ヴェルアロンスライツァーが声を出せないままに見つめる先で アンネローゼが地に崩れる 軍隊長が悔しそうに言う
「な…っ!何と言う事だっ!折角の上玉をっ!死体では何の価値もないっ!このポンコツどもがっ!」
ヴェルアロンスライツァーがショックに声も出せないまま アンネローゼの身に近寄る アンネローゼが苦しそうに目を開き 自分に触れようとしているヴェルアロンスライツァーの手に触れて言う
「ご… め… な… さい… ヴェル… ア ロ… ラ… ァ… わ たし…」
ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼの傷を見て呆気に取られたまま涙を流す アンネローゼが微笑して言う
「わ…たし だっ て… あ…なた の… そ… ばに… い… たいの… … あ…なた のこと… を… ずっと… ず…っと…」
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーを見上げて言う
「ヴェル… アロ… ツァ…」
ヴェルアロンスライツァーが必死に声を出す
「ア、アンネローゼ… 様…っ」
アンネローゼが微笑んで言う
「愛して る わ…」
ヴェルアロンスライツァーが目を見開く アンネローゼが微笑んでから静かに息絶える ヴェルアロンスライツァーが叫ぶ
「あ… あ… あぁああああーーーっ!!」
軍隊長が言う
「くっそぉ… こうなれば任務の完了と 特別賞与2つで我慢するか… よし!ロボット兵たちよ 命令だ もう一度 ヴェルアロンスライツァーを…」
軍隊長が言い掛けた所で 軍隊長の顔の横を銃弾が掠める 軍隊長が目を見開き視線を上げる 城壁の上にロキが銃を撃ち終えた状態で言う
「…フリーズ その命令の続きを言おうものなら」
軍隊長が驚きに呆気に取られ口を開けたまま止まる ロキが言う
「…卿が発する事の許される言葉は1言 “撤退” だ」
軍隊長が悔やんで言う
「ぐぅう~~~っ」
ロキが視線を強め 引き金の指を動かす 軍隊長が慌てて言う
「…っ …て、 撤退っ!」
ロボット兵たちが顔を上げ ゆっくり退路に付く 軍隊長が悔しそうに視線を落とす ロキが銃を向けたまま軍隊長の前へやって来て言う
「…無論 撤退は ロボット兵だけにあらず」
軍隊長が慌てて叫ぶ
「くそぉっ!覚えていろっ!」
軍隊長が逃げて行く ロキが銃をむけたまま 視線をヴェルアロンスライツァーへ向ける ヴェルアロンスライツァーがアンネローゼを抱きしめたまま動かない ロキが軍隊長の逃げた先と ヴェルアロンスライツァーを交互に見た後 銃と視線はそのままにヴェルアロンスライツァーの元へ近づいて言う
「…俺は スプローニの王として 奴を撃つ事は出来ない … … …すまない」
ロキがヴェルアロンスライツァーを横目に見る ヴェルアロンスライツァーに反応は無い ロキが軍隊長の逃げた先を見る ロボット兵も軍隊長も遠くに居る ロキが構えを解除しヴェルアロンスライツァーへ向き直る ヴェルアロンスライツァーは動かない ロキがヴェルアロンスライツァーを見た後 視線を泳がせ ローゼント城を見上げてから一息吐いて 銃をしまって ヴェルアロンスライツァーの横に屈んで言う
「…卿の後を追って それほど間を置かず到着した だが あの指揮官を狙える機を …得られなかった アンネローゼ女王が卿を庇わなければ 俺も 打つ手が無かっただろう」
ロキがアンネローゼを見る アンネローゼの傷を見て 視線を落とす 一度目を閉じ 気を取り直してヴェルアロンスライツァーを呼ぶ
「…ヴェル?」
ヴェルアロンスライツァーに反応は無い ロキが一度困ってから 再び呼んで言う
「…ヴェル 卿の気持ちは分かるが ここは危険だ エドへ向かおう …立てるか?」
ロキがヴェルアロンスライツァーの反応を待つ ヴェルアロンスライツァーは動かない ロキが驚き強く呼ぶ
「ヴェル?…ヴェル!?返事をしろっ!?ヴェルアロンスライツァーっ!?」
ロキがヴェルアロンスライツァーの肩を押す ヴェルアロンスライツァーの身が少し上がり ロキがヴェルアロンスライツァーの顔を覗き込んで呼ぶ
「おいっ ヴェルっ!」
ヴェルアロンスライツァーは目を開いたまま放心状態で止まっている ロキが呆気に取られた後 一度目を伏せ 立ち上がって通信機を取り出し 通信して言う
「…俺だ 直ぐにローゼントへ救護班を 怪我人は2名 内 1名は… …既に 亡くなっている」
ロキがヴェルアロンスライツァーを見下ろす ヴェルアロンスライツァーは放心したまま動かない
【 ソルベキア城 地下牢への道 】
看守が視線を落として歩いている 脳裏に回想が浮かぶ
回想
玉座の間
看守が驚いて言う
『へ、陛下っ!?今っ な、何とっ!?』
ガライナが視線を細めて言う
『地下牢へ置いている あのアシルを 始末しろと言ったのだ もはや奴に用は無い 何処かからでも 釈放を要求されたり 万が一再び脱獄などされたら 他国へ情報が漏れる事となろう 従って …今すぐに奴を 殺せ!』
回想終了
看守が一度目を閉じてから言う
「奴を… この手で殴ってやりたいと 何度思った事か… この棍棒で 思いの限り 殴り付けてやろうと… だが…」
看守が棍棒をしまい 拳銃を取り出して見つめて言う
「コイツを使う日が… 来るなどとは 思っても居なかった…」
看守が目を細め瞑ってから気を取り直して言う
「ええいっ!何を言っているのだっ!?俺はっ!?殴るでも殴りつけてやるのでもない!一思いにやれるのだ!ここは 胸を張りっ!意気揚々とっ!」
看守が言い放った後 脱力して言う
「…はぁ 何故だ 何故 …こんな気分になる?もう一度… 今こそ もう一度 脱獄していて 欲しいなどと…」
看守が目を開きギョッとして言う
「…のわぁっ!?」
看守の目の前に 1匹の犬が居て嬉しそうに吠える
「わんっ!」
看守が呆気に取られたまま瞬きして言う
「な… なんで 犬が?城内に…?…はっ!ま、まさかっ!?」
看守が視線を強めて言う
「まさか 貴様は スプローニの先住民族のっ!?アシル王子を助けに来たのかっ!?」
犬のベルグルが嬉しそうに尻尾を振って吠える
「わんっ!」
看守が慌てて言う
「こ、こうしては居れんっ!大変だっ!スプローニのっ…」
看守が声を上げようとして止まる 犬のベルグルが尻尾を振って嬉しそうに息をする
「ハッ ハッ ハッ…」
看守が唇をかみ締め 犬のベルグルへ向いて言う
「ガライナ陛下は 俺へ アシル王子の始末を 命じられた」
犬のベルグルが真剣な表情で唸って言う
「うぅ~… うぅ~」『知ってるッス!さっき聞こえてたッスよ!』
看守が言う
「だが… 俺には… くそっ こうなれば もう 仕舞だっ!」
犬のベルグルが疑問して首を傾げる 看守がカードキーを差し出して言う
「奴の居場所は分かるだろう?これが… 奴を閉じ込めている 牢の鍵だ 分からなければ 奴へ渡せば分かるっ」
犬のベルグルが喜んで吠える
「わんっ!」
犬のベルグルが看守の手から カードキーを受け取って咥え 嬉しそうに尻尾を振って看守を見上げる 看守が苦笑して言う
「俺は一足先に ここで逃げさせてもらうからな?後はお前たちだけで何とかしろよ?それから …奴に一言伝えてくれ」
犬のベルグルが去ろうとして振り返る 看守が笑んで言う
「この借りは いつか返してもらうぞ!?…それから そのとき一発ぐらいは 殴らせろってな?はっはっはっ!」
犬のベルグルが呆気に取られた後嬉しそうに吠える
「わんっ!」
看守が立ち去る 犬のベルグルが走って向かう
アシルが両手を縛られた状態で顔を上げて目を瞑っている その耳に4本足の走る音が聞こえ 疑問して片目を開けて言う
「…うん?空耳か?今 犬の走る音が聞こえたような…?」
徐々に音が高まり アシルが驚いて檻の外を見る 犬のベルグルが現れ嬉しそうに息をする アシルが驚いて言う
「お前はっ!スプローニの!?」
犬のベルグルが嬉しそうに吠える
「わんっ!」
その拍子に咥えていたカードキーが落ちそうになり 慌てて咥え直す
『とととっ!』
アシルが呆気に取られた後苦笑して言う
「はは… へっぽこ王子でも来てくれるかと思っていたが まさか お前が来てくれるとはな?よぅし…」
アシルが表情を苦しませつつ 手械から手の間接を緩めて引き抜く 地に足を着き自由になった両手をさすってから コートの裾から針金を取り出して 足枷のカギ穴へ入れて言う
「…なるほど?これなら 以前の牢屋の鍵よりは簡単に…」
言っている間にも片方の枷が外れる アシルが一瞬呆気に取られてから口角を上げもう片方の足枷も外すと檻の近くへ来て 犬のベルグルの前に屈む 犬のベルグルがカードキーを差し出す アシルが微笑してそれを受け取り 犬のベルグルの頭を撫でて言う
「よしよしっ 良く持って来てくれたな?だが… こいつが この檻の物であってくれれば良いんだが… 流石に そこまでの偶然は…」
アシルが言いながら カードキーをスキャンする 扉がピッっと鳴り 牢が開かれる アシルが呆気に取られて言う
「って…?ほ、本当に開いちまった…?お前…?」
アシルが犬のベルグルの前に屈み 顔を覗き込んで言う
「まさか?…電子情報の匂いでも 嗅ぎ分けられるのか?」
犬のベルグルが変な声で鳴く
「ウゥ~ヴァゥアウゥ~ヴォンッ」 『いやぁ~そうじゃないッス 話すと長くなるんッスけど 今は話せないし 話す時間もないッスよぉ~』
アシルが立ち上がって言う
「ふん… そうか それもそうだな …よし なら」
アシルが笑んで言う
「まずは この薄暗れぇ 汚ねぇ場所から おさらばしねぇとだな?」
犬のベルグルが嬉しそうに吠えて言う
「わんっ …ゥウウ~ワフッ!」『はいッス!他の皆も 外で待ってるッスよ!』
アシルが歩きながら言う
「うん?なんだ?お前の他の奴らも 来てくれてるのか?」
犬のベルグルがアシルに続きながら吠えて言う
「わふっ!ウゥ~ゥ~ワフッ… ゥウゥ?」『来てるッスよ!皆で来たッス!…にしても 何でアシル王子は 相変わらず 犬の言葉が分かるッスか?』
アシルが言う
「そうだったのか!?あぁ… まぁ そっちは 何となくだけどな?」
犬のベルグルが驚いて吠えて言う
「わんっ!わわんっ!」『凄いッス!やっぱ アシル王子は 俺たちの王子様ッスよ!』
アシルが笑って言う
「犬の王子様だなんて 止めてくれよ?…いや、それが嫌だって訳じゃねぇ 俺にはもったいな過ぎるって事だ …先住民族には 本当の王様が居るんだからなぁ?」
犬のベルグルが驚いて吠える
「わっ?」『本当の王?』
アシルが犬のベルグルを手で静止して言う
「…と、話はここまでだ ここからは…」
犬のベルグルが気を切り替えて頷く
『ここからは 戦いッスね!』
アシルが視線を向けずに言う
「…俺が先に行く お前は まず逃げろ その後で …可能であれば 俺も逃げ出す 正直… 俺1人じゃ この城を抜け出すのは難しい だから… お前だけは」
犬のベルグルが驚いて思う
『アシル王子… それじゃ 俺が助けに来たのを褒めてくれて それで、俺をもう一度外へ出す為に…!?』
アシルが振り返り微笑して言う
「ありがとな お前たちの気持ちは分かった …まさか 戦いを好まねぇお前たちが こんな危険を犯してまで 俺を助けに来てくれるとは …正直思ってもみなかったぜ だが、もう二度と こんな危険な事はするなよ?約束だ」
犬のベルグルが呆気に取られてアシルを見上げている その頭をアシルが撫でて言う
「良いな?全力で外へ逃げるんだぞ?」
犬のベルグルが強く顔を左右に振って言う
『駄目ッス!俺はっ!俺たちはアシル王子を助けに来たッス!ただ褒めてもらう為に来た訳じゃ無いッスよ!それに俺たちは!唯の犬じゃ無いッス 強い意志を持った 先住民族の!スプローニの犬なんッスから!』
犬のベルグルが駆け出して階段を駆け上る アシルが驚いて叫ぶ
「なっ!?あ!おいっ お前っ!!」
犬のベルグルが階段の先に立ち止まり 遠吠えをする
「わおーーーっ!」
周囲に居たソルベキア兵たちが驚いてベルグルを見る 城の外から犬たちの遠吠えが帰って来る ソルベキア兵が慌てて叫ぶ
「な、なんだっ!?」 「その犬を捕らえろ!」
アシルが慌てて駆け出て叫ぶ
「こ、この犬には 指一本ふれさせんっ!」
ソルベキア兵が驚いて叫ぶ
「あーーっ!奴は!囚人の!だ、脱獄…っ!」
ソルベキア兵が言い終える前に ソルベキア城の出入り口から大量の犬が駆け込んで来る ソルベキア兵たちが驚いて逃げ惑う アシルがその数に驚き呆気にとられる 犬のベルグルが嬉しそうに振り返って吠えて言う
「わんっ!」『さあ!アシル王子!今のうちッス!』
アシルがハッとして慌てて返事をする
「お、おうっ」
犬のベルグルが走る アシルがそれを追う 犬たちがそれを確認して皆で後を追う ソルベキア兵たちが呆気に取られた後慌てて叫ぶ
「だ、脱獄だー!囚人1名が 大量の犬を引き連れて 脱獄したー!直ちに…」
ソルベキア兵が一度口ごもってから慌てて言う
「囚人と犬どもを ひっ捕らえよー!」
玉座の間
ガライナが怒って言う
「何っ!?アシルが大量の犬を使って 脱獄しただとっ!?」
ソルベキア兵が言う
「はっ!現在 兵を動員し アシルと犬の捕獲を行おうと」
ガライナが怒って言う
「兵の動員は不要だ!ローゼントへ向かわせていた ロボット兵の一団が戻っている筈だ 直ちに奴らを動員し アシルを殺せ!犬などは どうでも良い!」
ソルベキア兵が一瞬呆気に取られた後敬礼して言う
「はっ!」
ロボット兵 兵舎
軍隊長が疲れた表情で言う
「なにぃ?ローゼントから帰還した途端 今度は城下に逃げ出した 囚人の抹殺だとぉ?」
ソルベキア兵が敬礼して言う
「はっ!直ちに行えとの ガライナ陛下の御命令です!囚人は現在城下のF6ブロックを逃走中 急がねば北門を突破され兼ねません」
軍隊長が溜息を吐いて言う
「なら 直ちに北門を封鎖するのが先ではないのか?ロボット兵の収容はとっくに完了した そうでなくともローゼントへ戦争を仕掛けた今 国の門を開いておく事は危険だろう?」
ソルベキア兵が言う
「はっ 北門は現在来客を迎え入れる為 閉じる事は許されません よって直ちに囚人の抹殺へ向かって頂けるよう お願い致します」
軍隊長が言う
「来客?…まったく 陛下は何をお考えなのか?ローゼントへ攻撃を仕掛けた今 この世界の何処国の者であっても 来客として迎え入れるなど適わんだろうに…」
ソルベキア兵が間を置いて言う
「…軍隊長 自分は 陛下からの御言葉を 間違いなくお伝え致しました」
軍隊長が不満そうに言う
「うん?だから何だ?」
ソルベキア兵がタブレットモニターを出して言う
「…囚人は 既にF6ブロックからF9ブロックまで移動 間もなく 北門を突破されます」
軍隊長が驚いて叫ぶ
「何ぃいっ!?ば、馬鹿を言うなっ!F6ブロックからF9ブロックまで 何キロあると思っている!?」
ソルベキア兵がタブレットモニターを操作しながら言う
「囚人はおよそ時速18kmから19km 犬並みの脚力にて逃走中 …犬に またがってでも居るのだろうか?」
ソルベキア兵が首を傾げる 軍隊長が慌てて叫ぶ
「ロボット兵たちよ!直ちにソルベキアF9ブロックから 北門エリアへ移動!脱獄した囚人を抹殺せよ!」
ロボット兵たちが光を放ち前傾姿勢になり止まる 軍隊長が疑問する ソルベキア兵が首を傾げる 軍隊長が衝撃を受けて叫ぶ
「しまったぁー!日々の終了処理が面倒であるからにして オートオフ機能をセットしていた事を忘れていた!こいつらは兵舎へ戻ると自動的に自らの電源を遮断してしまうのだっ」
ソルベキア兵が呆れて言う
「…では その再起動に掛かる時間の程は?」
軍隊長が言う
「15分… いや、14… 13分54秒!」
ソルベキア兵が呆れて言う
「…大して差は有りません このままで行けば 囚人は間もなくF10ブロックへ およそ6、7分後には北門を抜けます」
軍隊長がイライラして言う
「ええいっ ならば やはり北門を閉めよ!客人が来るというのでは尚更!凶悪な囚人に対面させる事の無い様 門を閉じて安全を確保したとでも言い訳れば良い!」
ソルベキア兵が言う
「…しかし、現北門の開放は 陛下の御命令 それを勝手に」
軍隊長が怒って言う
「これは緊急事態なのだぞ!?言った筈だ!大切な客人を 凶暴な囚人に合わせる事の無いようにと!」
ソルベキア兵が不満そうに言う
「それは 先程聞きました …凶悪や凶暴と言葉は変わろうとも」
軍隊長が怒って言う
「ええいっ!だったら さっさと動かぬか!こうしている間にも逃亡犯が門を超えてしまう!」
ソルベキア兵が困って言う
「…とは言え 確かに あの囚人を他国へ渡す事だけは 避けねばならないと陛下は仰っていた …ここは軍隊長の言葉もあながちではないか」
軍隊長が言う
「何だ!?何か言ったか!?」
ソルベキア兵が敬礼して言う
「いえっ!では 軍隊長の命の下 北門を閉じる様命じて参ります!」
軍隊長が言う
「うむ!直ちに言って参れ!」
ソルベキア兵が言う
「はっ!」
ソルベキア兵が立ち去る 軍隊長がロボット兵を見上げる
【 ソルベキア城下町 F9ブロック 】
犬たちと共にアシルが全力で走りながら言う
「ハッハッ… ハハッ!流石に 久しぶりにこうやってお前らと走ると くたびれるぜっ!」
犬たちと共に犬のベルグルが振り返って吠えて言う
「ハッハッハ… わんっわんっわんっ!」『けどっ アシル王子はやっぱり凄いッス!後住民族の人で 俺たちと同じ速さで走れるのは やっぱり アシル王子だけッスよ!』
アシルが笑んで言う
「ガキの頃は… もっと速く走られた気がするんだけどなぁ?もっともっと… いくらでも速く走れるんじゃねぇかってなぁっ!?」
犬のベルグルが楽しそうに笑い後方を見る アシルが同じく後方をチラっと確認してから言う
「…追っ手は無しか?追う必要が無くなったか?もしくは この先にたっぷりの兵が 銃を構えていたりしてなぁ?」
犬のベルグルが驚き前方へ向け鼻を利かせる アシルがベルグルの様子に気付いて言う
「どうだっ!?」
犬のベルグルがアシルへ向いて嬉しそうに吠える
「わんっ!わん わんっ!」
アシルが笑んで言う
「そうか!火薬やロボット兵どもの匂いは無しか!そうとなれば… 後は!」
アシルと犬たちが曲がり角を曲がって先を見て 喜んで言う
「門が開いてるぜ!?こいつは 一体何の罠だ?恐ろしい位だ だがっ!」
アシルが視線を強めて言う
「例え罠だとしても あれを通るしか 俺たちに道はねぇえ!」
アシルたちが向かおうとする 門の先に光が降り アシルが疑問すると 1つの人影が降り立つ アシルが疑問して言う
「なんだ?あいつは…?とっ おいっ!?」
アシルの視線の先 北門が音を立て閉まろうとする アシルが舌打ちをして言う
「チッ!後少しだったって言うのに!…間に合わねぇっ!」
急ぐアシルたちの目前で 北門が閉じられる アシルたちが立ち止まり 荒い息をしながら門を見据え アシルが言う
「くそ… はぁ はぁ はぁ… 他の門へ向かうか… とは言え ここが閉じられるんじゃ 他だって…」
アシルが息を整えていると 犬のベルグルの耳が音を捉え ハッとして慌てて吠える アシルが驚き 犬のベルグルを見て言う
「…何だって?」
犬のベルグルがアシルへ向いて吠えて言う
「わんっわんっ!わんっ!」『本当ッス!何か分からないッスけど!チョー危険ッス!すぐに離れるッスよ!』
アシルが慌てて言う
「お、おうっ!」
アシルと犬たちが横へ退避すると 間もなく強力な力で北門が吹き飛ばされる アシルと犬たちが爆風から身を守る 崩れ落ちる北門の残骸の動きが収まると その場所をゆっくりと人影が踏み入って来る アシルが顔を上げる アシルの前をゆっくりと人が過ぎ行く アシルが驚いたまま去り行く人の背を目で追う アシルを過ぎた人の背が立ち止まり僅かにアシルへ視線を向ける 碧い瞳に長い金髪 藍色のローブと大きな帽子で身を包んだ人物が アシルを見て僅かに時を止めるが 僅かな時を持って 視線を前方へ戻し再び歩いて行く アシルが呆気に取られていた状態から言う
「…ローレシアの魔法使い …って訳でもなさそうだな?あんな化け物染みた力を 使う奴が居るだなんて話は 聞いた事がねぇ」
犬のベルグルが崩れた北門の残骸の匂いを嗅いでいる アシルが振り返って言う
「…とは言え 今はそんな事詮索してる余裕もねぇか …運が良かったって事で 抜けさせてもらうぜ 行くぞっ!?」
アシルが呼んで北門を抜ける 犬たちが続いて行く アシルと犬たちがソルベキアを後にする
【 ソルベキア城 兵舎 】
軍隊長が驚いて言う
「なっ!?何だとっ!?」
ソルベキア兵が言う
「はっ!閉鎖した北門は破壊され 囚人は犬らと共にローゼントの森へと逃亡 捜索は困難とされております」
軍隊長が呆気にとられて言う
「ば… 馬鹿な ソルベキアの北門は 最も頑丈な鋼鉄製の重層門だぞ!?その破壊は ロボット兵であっても困難である筈っ それを 一体どうやって!?」
ソルベキア兵が言う
「詳細は不明ですが… 門兵の話しによれば 魔法使いの様な者が門外に現れ 閉じられた門を破壊したと」
軍隊長が言う
「魔法使い?…では ローレシアからの援軍と言う事か?」
ソルベキア兵が言う
「分かりません ただ、逃亡した囚人とは違い その者は 外部からソルベキアへ入り 先程 この城に入ったと言う情報が」
軍隊長が驚いて叫ぶ
「何だとぉおっ!?それは 一大事では有らぬかっ!?この城に入ったとは!?今何処に居るのだ!?すぐさま起動したロボット兵たちを向かわせ ひっ捕らえねばっ!」
ソルベキア兵が言う
「は… はぁ…?しかし 現在その者が居る場所は」
軍隊長が叫ぶ
「何処だっ!?何処に居る!?」
玉座の間
ガライナが微笑して言う
「お待ち致しておりました 出迎えがままならず申し訳ない 貴方様がいつ こちらへ参られるのか その時が計りかねましたが故に…」
先ほどの人物が静かに言う
「…出迎えは 不要であると 事前に伝えておいた よって そちらの謝罪は不要 …とは言え 出迎えは 行おうと思えば可能であった筈だ 従って あの者らが 出迎えなのかと思いはしたのだが …その様子では やはり違っていたようだな」
ガライナが疑問して言う
「『あの者ら』と… 仰いますのは?」
先ほどの人物が目を閉じて言う
「…良い …それより 時は伝えずとも この城へ招き入れる あの厚い門を閉じてしまうのは 如何なものか?私でなければ そこを抜ける事が出来ず 途方に暮れるか 国へ戻るかのどちらかしか 選べる道は無かっただろう」
ガライナが驚いて言う
「あの分厚い門?…と申しますと 北門が…?いや、あの門は 貴方様の御来国を聞き及んでからは 常に開いて置くようにと」
玉座の間の後方でロボット兵たちの大きな足音が響くと共に 軍隊長が叫び入る
「陛下っ!?ご無事であられますか!?」
ガライナが驚いて言う
「むっ!?何事か!?」
軍隊長が入り込んで来て言う
「先程!北門を破壊した 異国の魔力者が 恐れ多くも このソルベキア城に踏み入ったと!彼奴は 脱獄犯の仲間であるだけでなく!北門を軽く破壊できるほどの化け物染みた魔力を持つものであると!」
先ほどの人物がゆっくり首を傾げて言う
「脱獄犯…?」
軍隊長が先ほどの人物へ向き直りつつ言う
「はいっ しかし お任せを!脱獄犯は逃そうとも 北門を破壊した 化け物のような魔法使いなど 我らソルベキアのロボット兵で 一捻りにしてご覧に… …っ!?」
軍隊長が先ほどの人物の姿に呆気にとられる 先ほどの人物が視線を細めて言う
「化け物のような魔法使い…か 数年前に 言われた事があったな …そして 数年ぶりに耳にしても やはり 不愉快な言葉だ」
軍隊長が 焦りガライナを横目に見る ガライナが怒りを押し殺し怒って言う
「この無礼者がっ!誰か!そこの無礼な兵を 地下牢へ叩き込んでおけ!」
ソルベキア兵が敬礼して言う
「はっ!」
軍隊長が驚きソルベキア兵を指差して言う
「なぁあ!?き、貴様っ 知って居ったのかっ!?」
ソルベキア兵が軍隊長を連行しながら言う
「…気付かない 貴方の方が可笑しいでしょうに?」
軍隊長が呆気に取られ 泣きせがむ様にガライナを振り返って言う
「陛下っ!?俺はっ 自分は…っ 陛下のご無事をと 陛下ー!」
軍隊長が退場させられると ガライナが苦笑して言う
「申し訳ない あの者には しっかりと刑を執行し 以後二度とこの様な不始末を行わぬようにと…」
化け物のような魔法使いが視線を細めて言う
「…必要ない」
ガライナが疑問して言う
「は…?」
化け物のような魔法使いがガライナへ向いて言う
「刑など… 使えない兵士は捨て 新しい兵士を使う方が合理的… 過ちを犯す兵は更生など出来ない 同じ過ちを繰り返すだけだ…」
ガライナが呆気に取られる 化け物のような魔法使いが冷たい視線を向けて言う
「…お前も 使えない駒であるなら 我らが神は 容赦なく お前をお捨てになられるだろう」
ガライナが怯えて言う
「ヒィッ… わ、私は兵士等ではない この国のっ この世界で1、2を争う機械技術を持つ ソルベキアの王であるのだぞっ!?」
化け物のような魔法使いが言う
「王であろうが 兵士であろうが… 所詮は人… 人の皮を被った動物か…?ふんっ …何であれ 使えぬ者は切り捨てる それが 我らが神 ベガ様のお考え」
ガライナが驚き疑問して言う
「ベガ様?…どう言う事か?貴方方の神の名は リゲル様では!?」
化け物のような魔法使いが微笑して言う
「…愚かな まだ気付いて居なかったのか?貴様たちが送ったリゲル殿への通信は全て我らが神ベガ様の目に止まり そして 私がこの地に降り立った」
ガライナが驚いて目を丸くする 化け物のような魔法使いが笑んで言う
「ふっ… 安心しろ 先程も言った通りベガ様は 使える駒に対しては お優しい方だ 貴様も そうなられる様に勤めるが良い」
ガライナが呆気に取られる
【 ? 】
リジル、リゲルが存在する場所に ベガが姿を現す リジル、リゲルが気付き顔を向け リジルが言う
「ベガ お前も 遂に第2プラントへ兵を送ったそうだな?」
ベガが言う
「勘違いはしてくれるな?私は お前たちとは異なり シリウスへ手を出すつもりは無い」
リゲルが反応して言う
「それはどう言う事だ?お前も我らと同様に アウグスタへ反旗を翻すであろうシリウスの化けの皮を剥いでやろうというのでは無いのか?」
ベガが言う
「言った筈だ 私は シリウスへ手を出すつもりは 無いと」
リジルが言う
「では…?」
ベガが言う
「かの者が… 我らの 新たなる皇帝として 相応しいのか それを見極めるが為だ」
リジルが驚いて言う
「皇帝…?我らの新たなる とはっ!?それは一体っ!?」
リジルとリゲルが顔を見合わせる ベガが言う
「第2プラントの管理者 シリウスは アウグスタの命により 神殿に迎え入れられた …アウグスタは かの者を 我らがエンペラーとして 君臨させるおつもりだ」
リジルとリゲルが驚き リゲルが叫ぶ
「なんだとっ!?」
リジルが言う
「馬鹿なっ!奴はっ!シリウスは 前世にて アウグスタを暗殺しようと 目論んだ張本人であるのだぞ!?」
【 神殿 】
シリウスAが目を開き 天上の美しい装飾に目を細める ヴィクトール11世の心配そうな声が届く
「シリウス~…?」
シリウスAが苦笑しゆっくり横を向くと 犬のように施錠をされたヴィクトール11世が 少し離れた位置からシリウスAを見つめている シリウスAが微笑して言う
「ヴィクトール… ふふっ… その様な声を出すではない… お前は… このシリウスの猫じゃろう?…我は 大丈夫じゃ…」
ヴィクトール11世が心配して言う
「で、でもっ シリウスは今までずっと プログラムの補助を受けて生きていたのに それを 急に全て止めてしまうだなんて…っ 呼吸だって苦しいんでしょ?他のプログラムも使えなくされてしまって もし ま、また あのオバサンが来たらっ」
機械扉がスライドして ヴィクトール11世が驚き部屋の隅へ慌てて逃げながら言う
「にゃぁ!?き、来たッ!」
ヴィクトール11世が怯えながら見つめる アウグスタが入室して来て 一度ヴィクトール11世へ目を向けた後 ベッドに横たわっているシリウスAの元へ来て微笑して言う
「シリウス…」
アウグスタがシリウスAの頬に触れる シリウスAが微笑して 息苦しそうに言う
「我の 神… 我らが アウグスタ…」
アウグスタが微笑して言う
「フフ… 苦しいか?シリウス それが 余の力を失った お前本来の状態だ お前は… お前たちは 余の力無しには 呼吸すらままならぬ その様な お前など 今こうして 余が軽く口を押さえてやるだけで…」
アウグスタがシリウスAの口を押さえる シリウスAが僅かに表情を苦しめ 息苦しそうにする
「う… はっ あぅ…」
アウグスタが微笑して言う
「…しかし、お前は 軽く失わせるには やはり惜しい シリウス… それでも 生まれ変わったお前も やはり 余に歯向かうのか?」
アウグスタが手を離すと シリウスAが僅かに表情を歪めつつも微笑して言う
「我らは… 常に貴女を 崇め… 貴女の 思いの成すままに…」
アウグスタが苦笑して言う
「シリウス… 余は お前の真意が知りたい その言葉が… お前の口を吐いて余へ送られる言葉が お前の本意となる時が 余は待ち遠しいのだ」
シリウスが息を荒くしつつ アウグスタを見上げる アウグスタが微笑して言う
「シリウス 余はお前を必ず手に入れよう お前は 余のモノだ 美しいお前は 余の夫と成り 共に 我らの子たちを守るのだ… そうであろう?シリウス?」
シリウスAが苦しそうな息でアウグスタを見上げている アウグスタが微笑する シリウスAの視界がぼやけ シリウスAが意識を失う アウグスタが微笑して言う
「強情な男だ… だが そうであってこそ 余の夫に相応しい…」
アウグスタがシリウスAの顔に顔を近づける ヴィクトール11世がハラハラして見つめていて 驚き思わず声を出す
「にゃぁあっ!?」
アウグスタがシリウスAへの口付けを離しつつ 横目にヴィクトール11世を見る ヴィクトール11世がハッとして泣きそうな表情で怯える アウグスタが苦笑して言う
「フッ 新人類の実験体… シリウスが何故そこまで お前を気に留めているのか 余には分からぬ お前程度の遺伝子操作など 余の手に掛かれば 巨万と出来ようモノ…」
ヴィクトール11世が泣きそうな表情でムッとしている アウグスタが苦笑して言う
「ふふっ… まぁ良い シリウスがどうしてもと 連れて来たモノだ そこで大人しくしているが良い」
アウグスタが立ち去る ヴィクトール11世が悔しそうな表情をした後 シリウスAを見て困って言う
「シリウスぅ…っ どうしてこんな事っ… 僕 帰りたいよ シリウスも一緒に… ガルバディアへ帰ろうよ!?もう これ以上… シリウスがあの人の好きにされるのを 僕は見たくない…っ こんなの こんなのっ!シリウスらしくないよ!?ねぇ!?シリウスぅ!」
シリウスAは意識を失っている
【 ローゼント城 近郊 】
アシルが崖の上から ローゼント城を見下ろし視線を細めて言う
「あれが… ローゼントだとっ?クッ… なんてこった あれじゃまるで ソルベキアそのものじゃねぇか…っ」
アシルが顔を逸らす ローゼントの土地には ロボット兵が大量に配備されている 犬のベルグルがローゼントを見て呆気に取られている アシルが立ち去ろうとして犬のベルグルの状態に気付き 振り返って言う
「どうした?こんなローゼントじゃ意味がねぇ このままエドの町まで向かうぞ?今後の事は エドの町で決め…」
アシルの言葉の途中で通信機が着信する アシルが驚き衣服を探りながら言う
「通信?いや… 俺の通信機は… ソルベキアに没収される前に 自分でぶっ壊して…っ」
アシルが衣服を探るのを止めて言う
「うん… やっぱり持ってねぇ… てぇと?」
アシルが音源に気付き 犬のベルグルを覗き込んで言う
「…何だ?お前 犬の癖に 通信機なんて持ってるのか?」
犬のベルグルが衝撃を受け困る アシルが苦笑して言う
「はは… なんだ お前は飼い犬なのか?その様子じゃ 飼い主にちゃんと説明して来なかったんだろう?」
犬のベルグルが困って吠えて言う
「わうぅ~ わんっ わぅ~…」『いや その… 説明はしたんッスけど でも…』
アシルが犬のベルグルの前に屈んで まだ止まない通信機の着信音に微笑して言う
「きっと 心配しているに違いねぇ 人の姿になって通信に出てやるんだ 良いな?」
犬のベルグルがアシルを見上げて吠えて言う
「わふっ!」『アシル王子…っ』
アシルが微笑して衣服を探り 宝玉の欠片を見せてから言う
「ほら?やるぞ?」
犬のベルグルが意を決して吠えて言う
「わんっ!」『分かりましたッス!アシル王子!』
アシルが頷いて言う
「よし!」
アシルが目を閉じて宝玉の欠片に意識を集中させる 犬のベルグルが目を閉じて意識を集中させる 宝玉の欠片が輝き 白い光が犬のベルグルを覆うと 間を置いて 人の姿になったベルグルが現れる アシルが目を開く ベルグルが笑顔で言う
「アシル王子!有難うございますッス!」
アシルが微笑して言う
「おう!…さ、早く出てやれ?」
アシルの促しに ベルグルがハッとして 慌てて通信機を取り出しながら言う
「は、はいッス!」
ベルグルが通信機を着信させて言う
「お、お待たせしましたッス!ロキ隊長!」
アシルが衝撃を受け呆気に取られて言う
「『ロキ隊長』?」
アシルが通信機を覗き込み衝撃を受ける 通信モニターに映っていたロキが言い掛ける
『ベルグル 無事だったか… 今何処… ぬぁっ!?』
ロキが通信モニターに映ったアシルに驚く アシルが通信モニターに映っていたロキに驚いて言う
「お、お前っ!?」
ベルグルが疑問して アシルとロキを交互に見る アシルがベルグルとロキを交互に見てから言う
「こ、この犬は… お前の犬だったのかっ」
通信モニターのロキが間を置いて言う
『…アシル王子 どうやら本当に馬鹿犬どもは卿の脱獄に手を… いや、足を貸したと言うべきか?』
通信モニターのロキが首を傾げて悩む アシルが焦って言う
「どうでも良い所で悩むなっ!そんな事よりっ!」
通信モニターのロキがハッとして言う
『…そうだ そんな事より』
アシルが言う
「…お前の犬には世話になった 礼を言う お前は 優秀な犬の飼い主だ」
通信モニターのロキが呆気に取られた後 ハッとして言う
『…い、いや そうではなく …そもそも 俺は卿の脱獄へ加担する事は 止めろと命じたのだが』
アシルが怒って言う
「んだとっ!?なら お前の犬は優秀だが 飼い主のお前は低脳だっ!」
通信モニターのロキが怒って言う
『なっ!?…それは納得しかねるっ!と、そんな事より!』
ベルグルが言う
「そうッス!そんな事より ロキ隊長!ヴェルアロンスライツァー副隊長は!?ローゼントが 大変な事になってるっスよ!?」
アシルがハッとして通信モニターを見る 通信モニターのロキが気を切り替えて頷き言う
『…ローゼントの現状を 諸卿も確認したのであれば話は早い ベルグル』
ベルグルとアシルが通信モニターを見つめ ベルグルが返事を返す
「は、はいッス ロキ隊長!」
ロキが言う
『今すぐ スプローニ国 元王子 アシル殿を …スプローニ国へ お連れしろ』
アシルが驚いて言う
「何だと?!」
ベルグルが驚いて呆気に取られる 通信モニターのロキが言う
『スプローニは… ローゼントの民を受け入れる だが 正直 俺1人では手に負えん アシル元王子 …卿の力を お借りしたい』
ベルグルが呆気に取られたままロキとアシルを交互に見る アシルが表情を険しくして言う
「ローゼントの民をスプローニへ受け入れるだと?何を言ってる?その者たちは 事前にツヴァイザーかシュレイザー… もしくは両国に受け入れ準備がなされているだろう?ローゼントは かのアンネローゼ女王の国 その国に何か有れば 両国が力を貸すのが当然にして 妥当と言える」
通信モニターのロキが言う
『…それは 確かに その通りと言える だが、現在においては その両国が力を貸す理由が 失われてしまった』
アシルが疑問して通信モニターを見る ベルグルが話を理解出来ず疑問している 通信モニターのロキが言う
『ローゼントは 女王を失い 共に 王配も… 命はあるものの その意識が 放心状態のまま戻らない よって ローゼントは完全に国も 王すらも 失ってしまった …この状態では ツヴァイザーもシュレイザーも 残されたローゼントの民を受け入れる理由を持てない』
ベルグルが驚いて言う
「え!?ヴェ、ヴェルアロンスライツァー副隊長が 意識が戻らないって!?それはどういう意味ッスか!?命はあるもののって それなら ヴェルアロンスライツァー副隊長は 無事なんッスよねっ!?」
アシルが目を閉じて言う
「例え無事であろうとも 意識が保てぬのであれば 王として 民を導き守る事は出来ん」
ベルグルが慌てて言う
「そんなっ 何でッスか!?分からないッス!だって 今までだって 色んな国の王様たちは ガルバディアのシリウス国王に眠らされて 皆意識の無い状態になってたッスよ!?」
通信モニターのロキが言う
『…それは ガルバディア国王の名の下に 皆がそうであったからこそ 認められていた事だ 今回は… ソルベキアとの戦いにおいて 敗北し そして至った』
ベルグルが呆気に取られる アシルが言う
「…それで その様になった 貴様の相棒を匿うために ローゼントの民を受け入れると?」
通信モニターのロキが沈黙の後言う
『…俺の身勝手である事は 重々承知している だが 俺には… やはり 捨て置く事は出来ない ヴェルアロンスライツァーは 俺の相棒だ 奴の国と 奴の民を …助けてやりたい』
ベルグルが表情を喜ばせる アシルが黙る 通信モニターのロキが言う
『…とは言え、国王として日の浅い俺では 分からぬ事ばかりだ 大臣らの手を借りようとも その彼らにも 出来かねる事があると… それ程の事だと言うのを 今更になって痛感している そこで』
アシルが不満そうに言う
「必要となれば 国を追い出した 元王子ですら 使おうというのか?」
通信モニターのロキが苦笑して言う
『…追い出したつもりはない 卿が勝手に国を出られたのだろう?その証拠に… 卿の部屋には 指一本触れさせていない 全て 卿が国を出られた その日のままだ』
アシルが苦笑して言う
「単に 俺の部屋へ入る理由が 無かっただけだろ?」
通信モニターのロキが苦笑してから言う
『…それは一理あるが もし本当に 卿をスプローニから追い出し 完全に王位を我が物にするのであれば 卿の部屋も何もかもを 片付けさせる事は容易であっただろう』
アシルがフンッと鼻を鳴らす ロキが言う
『…アシル元王子 …ローゼントの民を受け入れるのに 必要であるというのなら 俺は 卿へ スプローニの王位を…』
アシルがロキの言葉をかき消すように咳払いをしてから言う
「うううんっ!スプローニか… まぁ やっぱり俺の口に合う酒は スプローニのブランデーだな?…丁度 そろそろ恋しくなっていた所だ」
通信モニターのロキが 一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
『…アシル王子っ それではっ!』
アシルが気付き 不満そうに言う
「元!王子だろ…?国王は貴様だ… 俺は 親父からスプローニの王位に 相応しくないと 言われた男だからな?」
通信モニターのロキが苦笑する アシルが歩き出しながら言う
「俺が戻るまで 余計な事を命じるんじゃねぇぞ?国王ってぇのは たかが一兵士に出来るもんじゃねぇんだ そいつを… たっぷり教え込んでやるぜ」
ベルグルが呆気に取られてアシルの後姿を見つめる 通信モニターのロキが苦笑して言う
『…ベルグル アシル王子の護衛を頼む』
ベルグルが一瞬驚いてから 通信モニターを見て 喜んで言う
「はいッス!任せて下さいッス!ロキ隊長!」
ロキが言う
『…なるべく 急がせてくれ エド町からの臨時船を用意させる』
ベルグルが喜んで言う
「了解ッス!」
ロキが頷き 通信が消える ベルグルが嬉しそうに通信機をしまい アシルを追いかけ走りながら言う
「アシル王子!急いでスプローニへ帰るッス!また 走るッスよー!?」
アシルが言う
「嫌だ」
ベルグルが衝撃を受け慌てて言う
「なぁ!?何でッスか!?さっきまでは 久しぶりに俺たちと走るのは 気持ち良いって言ってたッス!」
アシルが言う
「…気分が萎えた」
ベルグルが言う
「えーっ!?」
アシルが言う
「…腹も減った」
ベルグルが言う
「えーっ!?」
アシルが言う
「追って来るもんがねーと 逃げる気にもならねー」
ベルグルが言う
「えーっ!?アシル王子!スプローニに帰れると分かった途端 また我がまま王子の気持ちが 戻ってきちゃったッスー!」
アシルが怒って振り返り言う
「るせぇ!誰が我がまま王子だ この野郎っ!」
アシルがベルグルの頭を殴る ベルグルが痛がって言う
「痛ーっ ア、アシル王子っ こっちの姿の時でも 優しくして欲しいッスよ どうして ロキ隊長もアシル王子も 俺が人の姿の時は いぢわるなんッスかー!?」
アシルがベルグルの頭を殴って言う
「るせぇ!黙って付いて来い!この馬鹿犬が!」
ベルグルが驚いて言う
「えー!?何でアシル王子は 俺が馬鹿犬って呼ばれている事を知ってるっすかー!?やっぱ アシル王子は凄いッスー!」
アシルが怒って言う
「るせぇっ!」
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※見切り発進です。
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