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1-5 守られた神の身体
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【 ツヴァイザー城 城門前 】
ロドウが声を上げ暴れ出す
「戦うっ!戦わなきゃ!僕はっ!僕はぁああーーっ!」
ガイが驚き ロドウの斧を避けロドウへ叫ぶ
「ロドウ副隊長っ!?」
リーザロッテがロドウの様子に気付き カイッズ巨人族へ向いて叫ぶ
「巨人族の皆っ!今でしてよ!今ならきっと 貴方方の力でも!」
デス2ndが顔を上げて言う
「1st!プロテクトが解除された!奴の意識の活性をサポートする!」
デス1stがプログラムを発生させて言う
「彼の人としての意識が 彼自身の力を抑える!今なら リーザロッテ女王の言う通り 巨人族の力であれば取り抑えられるぞ!」
ヘクターが叫ぶ
「おいっ!巨人族のお前らっ!お前らの力を もう一度リーザに見せてやれ!」
カイッズ巨人族たちが顔を見合わせ頷きあって ロドウへ向かう ロドウが斧を落とし頭を抱える カイッズ巨人族たちがロドウを取り押さえる リーザロッテが微笑む ヘクターがリーザロッテの横に来て笑んで言う
「やったな!」
リーザロッテがヘクターへ向いて苦笑して言う
「貴方方のお陰でしてよ」
ヘクターが苦笑して言う
「へっへ…まぁ、少しだけな?」
リーザロッテが一瞬驚いた後笑んで言う
「ええ!もちろん!少しだけでしてよ!」
ヘクターの下へやって来たデス1stとデス2ndがリーザロッテの言葉に顔を見合わせる リーザロッテが手を腰に当てて堂々と言う
「この私の優秀勇敢なる仲間たちと カイッズの皆が居たのですものっ!その私たちが負けるはずなんて 万に一つも無くってよー!オーホッホッホッホッホ!」
デス1stとデス2ndが呆れる ヘクターが笑顔になる リーザロッテが気を取り直して言う
「とは言え、貴方方には助けられたのでしてよ それに、あちらの方にも」
ヴェインがガイを連れて来る デス1stがガイを見て言う
「お前は 以前ガルバディアに現れた 旧世界の… ガイという名の」
ガイがニヤリと笑んで言う
「ああ、ガイ隊長は 俺たち多国籍部隊の隊長 俺たちの英雄だぜ」
皆が疑問する ガイの周囲にプログラムが発生し ガイの姿がフォーリエルになる 皆が驚き デス1stが言う
「お前はっ!夢の世界に現れたっ!?どう言う事だ!?お前の存在は 私と同じ… プログラムのみのものであった筈っ!?」
テスクローネがやって来て言う
「それは シリウスB様が創られた 我々の情報を元に作られたプログラムの事でしょう こちらの世界の状況を確認する為 使ったのだと 仰っていました」
テスクローネがフォーリエルの横に立つ フォーリエルがロドウを見て言う
「ロドウ副隊長は 本当は凄く優しくて良い人なんだ それが何でこんな事になっちまったのかは分からねぇけど… 頼むからっ 酷い仕打ちはしないでくれよ ロドウ副隊長もガイ隊長と同じ 俺たちの世界を救ってくれた 大英雄なんだ!」
リーザロッテが笑んで言う
「御安心なさい!私たちツヴァイザーの者は 理由も分からないままに極刑を架したり等は 致さなくってよ!」
フォーリエルがリーザロッテを見て苦笑して言う
「そっか… なら良かった」
デス1stが少しプログラムを発生させて言う
「…なるほど 先ほどの犯人はお前か」
ヘクターが疑問する テスクローネが一瞬疑問した後 理解して言う
「犯人…?ああ、ロドウ副隊長を庇った バリアプログラムの事ですね?はい、そうです 如何にロドウ副隊長であろうとも あれ程の攻撃を受けてはと思い 咄嗟に行いました」
デス2ndが驚いて言う
「…あの攻撃を無効化するプログラムを 咄嗟に組み上げたと言うのか」
デス1stが微笑して言う
「流石は ベネテクト 最上級プログラマーだ」
デス2ndがデス1stを見た後少し考えて言う
「ベネテクト、最上級… なるほど、テスクローネは ソルベキアの読みか デス・グローテ」
テスクローネが苦笑する デス1stが言う
「その名からも推測は可能だったが 先ほどのプログラムにおいても ガルバディアのシステムを使用する認証コードを転送していた こちらの世界では 数百年前に使用者が居なくなった ベネテクト、グローテクラスの識別コード 旧世界の民をこちらへ転送させてから 幾度か見掛けていたが …お前だったのだな」
テスクローネが苦笑して言う
「貴方からの探査プログラムを撒くのには 何時も苦労させられました」
デス1stが衝撃を受ける デス2ndがデス1stを見て言う
「…負けたな?ガルバディア第二王子ともあろう者が 格下のグローテクラスのプログラマーに」
デス1stが怒りを抑えて言う
「…黙れ 私と同等の力を持つ お前であっても同じだっ」
デス2ndが衝撃を受ける テスクローネが笑顔で居る
【 ベネテクト城 バーネット2世の部屋 】
ベーネットが扉をノックして言う
「父上 よろしいでしょうか?」
部屋の中からバーネットの声が届く
「3世かぁ?ああ 構わねぇ 入りやがれ」
ベーネットが扉を開け 中の様子に衝撃を受け 後頭部に汗をかいて言う
「あの… 一体何がどうなって その様な事になっているのか…?貴方の息子として 是非とも明確な説明を 伺いたいのですが」
ベーネットの視線の先 ヴィクトールが猫耳にメイド服でバーネットの鞭に捕らえられ泣いている バーネットが怒りの視線を向けて言う
「あん?明確には面倒臭ぇ… 簡単に言っちまえば この馬鹿猫野郎の願望と この馬鹿猫野郎の構想を 両方 この馬鹿猫野郎にしてやっただけだぜぇ はっはー!」
ヴィクトールが泣きながら言う
「わーんっ酷いよバーネット 頭の耳は僕で正解だけど この服は バーネットが着なきゃぁ」
ベーネットがヴィクトールを踏み付けて黙らせる ベーネットが呆れて言う
「はぁ… まぁ良いでしょう 父上とヴィクトール13世様のご趣味です 私の胸にのみ秘めて置く事に致します」
バーネットが衝撃を受け 怒って言う
「おいっ 待ちやがれ!こいつぁ俺の趣味なんかじゃねぇ!誤解しやがるんじゃねぇよ!」
ベーネットが言う
「…と、それより父上 ベネテクトの王である私を差し置いて 第二国王であるバーネット2世に会いたいと言いやがる野郎が 先ほどやって来たのですが」
バーネットが言う
「あん?俺に会いてぇだぁ?わざわざ第二国王の俺を指名しやがるたぁ… そいつは なかなかの目利きじゃねぇかぁ?はっはー!」
バーネットがニヤリと笑む ヴィクトールが衝撃を受け怒って言う
「あー!駄目だよバーネット!バーネットをご指名して良いのは 相棒の僕だけだよーっ!他の誰かがご指名なんてしちゃ 駄目なんだからーっ!」
バーネットがさっさと部屋を出ながら言う
「何処のどいつだぁ?第二国王とは名ばかりで 結局何の権限もありやがらねぇ俺へ てめぇを差し置いての ご指名ってぇえんなら 会ってやるぜぇ 玉座の間かぁ?」
ベーネットがバーネットに続きながら言う
「いえ、今は別の場所に居ります」
ヴィクトールが慌てて言う
「あー!駄目だって言ってるのに!酷いよ バーネット!僕が駄目って言うから会うんでしょ!?いつもなら面倒くせぇえ 第一国王のてめぇで何とかしやがれぇ とか言うくせにぃ~!」
バーネットが無視して言う
「別の場所に居やがるだぁあ?何処に居やがる?まぁ、今なら何処までだって 会いに行ってやるけどなぁ?はっはー!」
バーネットが立ち去る ヴィクトールが慌てて追い駆けて言う
「待って!バーネット!待ってったら!僕も行くよぉおっ!置いていかないでーっ!」
ベーネットが振り返って言う
「ヴィクトール様っ 一緒にいらっしゃるのでしたら このベネテクトの第二国王の猫として せめてその服は何とかしやがって下さいっ!」
ベネテクト城 地下牢
ベーネットが通路を行く バーネットが付いて行きながら疑問して言う
「おい、3世!どう言う事だぁ?何処の世界に 客人を地下牢で待たせる 国がありやがるってぇえんだよ?」
ベーネットが言う
「勿論、通常の客人でしたら 私もこの様な場所にぶち込みはしません しかし、身柄を確認しました所 この野郎には この場所が正しいんじゃねぇかと 思いまして」
ベーネットが牢の前で立ち止まり中の人物を示す バーネットが覗き込んで言う
「あぁ…?」
カイザが檻に縋って言う
「ちょっとぉ~!?何でいきなりこんな所に ぶち込まれなきゃいけないの!?俺はベネテクトの領海で 海賊業はしてないのよ~!?」
バーネットがカイザの顔をマジマジと見て言う
「海賊…?てめぇ海賊なのかぁ?…はっはー!なぁ~んだ それじゃ とっ捕まえ次第 縛りっ首じゃねぇかぁ?あーっはっはっはっはー」
バーネットが爆笑する カイザが衝撃を受け叫ぶ
「げーっ!?マジでーっ!?ちょっと待ってよ!旦那ぁ!そんなの無いって!」
バーネットが軽く笑って言う
「ハッ!…でぇ?それはそうと 何処の誰だか知らねぇが その海賊の てめぇが このバーネット2世・ベネテクトを 御指名しやがったってぇえのかぁ?あぁ?何ったって 第一国王のこいつを差し置いて わざわざ俺を呼びやがった?吊るされる前に吐きやがれ」
カイザが表情を困らせて言う
「うぅ… やっぱり駄目だ 夢の中と現実と共通の ベネテクトの慈愛の王様って言っても… 海賊の俺が王様に頼み事なんて間違えだったよなぁ~ 例え夢の中で見たあの顔と同じだとしても その夢の中と違って 会った事もねぇ海賊じゃ この扱いだよなぁ…」
バーネットが考えて言う
「…うん?夢の中だぁ?俺の記憶にはねぇが …確か 11回目と12回目の夢の世界で 俺は海賊に助けられやがった とか言うシナリオだった気が… えっと 名前は何て言いやがったか… おい、てめぇ 名は?」
バーネットがカイザへ問う カイザが一瞬驚いて言う
「え?…あぁ 名前ね?俺は海賊カイザ!世界最速の海賊船 フェリペウス号の船長だぜ!」
カイザが胸を張る 間を置いて 落ち込んで言う
「…て、言っても 今はその出力アップに掛けた ツケから逃げる方法に頭を悩ませて …おまけに また!変な天使様に導かれちまって また!このベネテクトで殺されかけてるしっ!俺って何て不思議な不幸に 何時も悩まされるんでしょぉ~!?」
カイザが落ち込む バーネットが苦笑して言う
「はっはー!そうだったぜぇ カイザか そう言えばそんな名だったなぁ …と、まさかこれまで あのシリウス国王のシナリオじゃねぇよなぁ?」
カイザが疑問して言う
「え?…も、もしかして!俺の事を知ってる!?まさか!旦那まであの夢を?スカルの奴も 俺と同じ夢を見たって言うんだ 信じられねー話だけど!もしかして、あの夢に出て来た旦那も あのっ夢を!?」
ヴィクトールが猫耳の付いた状態で顔を出して言う
「え~?なになに?バーネットをご指名した人は あの夢の世界を経験した メンバーだったの?」
カイザが衝撃を受けヴィクトールを指差して叫ぶ
「出たーっ!あんたはあの夢の中の とんでもない アバロンの王様!」
ヴィクトールが一度カイザを見た後 バーネットへ向いて言う
「バーネット?誰ー この人?僕 全然 知らな~い」
カイザが衝撃を受け怒って叫ぶ
「アンタは覚えてても 絶対!そう言うよなっ!?俺知ってるから!けど、その頭の耳は何ー!?」
ヴィクトールが照れる バーネットがニヤリと笑い ベーネットが呆れる
【 スプローニ城 玉座の間 】
監守が走って来て跪いて言う
「ロキ陛下!申し訳ありません!地下牢へ収監しておりました シュリ殿が脱獄致しました!直ちに警備兵を招集し 捜索に向かいます!」
ロキが言う
「…捜索は不要だ」
監守が向かおうとしていた身を戻し疑問して言う
「し、しかしっ!?」
ロキが言う
「…その代わり」
監守が呆気に取られて言う
「…え?」
【 ツヴァイザー城 地下牢 】
フォーリエルが軽く笑んで言う
「…って訳で、俺やテス、リジューネ陛下とベハイム殿で わざと旧世界のシリウスB様を悪者に仕立ててさ、こっちの新世界の人たちの戦力を強化させようって してたんだぜ?こっちの世界はほんっとに 魔物も機械兵も居ないせいか 皆弱っちぃのなぁ?スプローニに行くまでの間 いくつかの国の兵士と戦ってみたけどさ 全然?この俺にも勝てない様じゃ 話しにもなんねーよ」
ヘクターが笑んで言う
「へぇ?お前、そんなに強いのか?後で俺とも戦ってくれよ!?」
フォーリエルがヘクターへ向いて苦笑して言う
「あんたは別だよ ヘクター国王 なんってったって あんたには ガルバディアのプログラマーが2人も付いてるんだ しかも その2人が揃ってガルバディアの王子様クラスだって言うんじゃ 俺の相棒のテスじゃ 敵わないだろ?」
ヘクターが笑んで言う
「ははっ!俺とお前で試合するんなら 相棒のサポートはお互い無しで良いじゃねーか!?お前も 大剣使いなんだろ?」
ヘクターがフォーリエルの腰に在る大剣を見る フォーリエルがヘクターの様子に気付いて言う
「あ… いや、これは…」
ヘクターが疑問する リーザロッテとレイトがやって来て リーザロッテが言う
「スプローニのロキ国王には 私から貴方方の事をお伝えして 禁固刑を無効にして差し上げたわ これで、貴方の相棒 テスクローネが捜索される心配も無くってよ?」
フォーリエルとヘクターがリーザロッテへ向く フォーリエルが言う
「有難う助かったぜ ツヴァイザーの姫様 俺の姿はシュリの姿で見せていたから良かったけど テスの姿はスプローニの第二国王様や 監守の目に見られちまってたから… これで安心だ」
リーザロッテが微笑する レイトが言う
「禁固刑とは言っても その期間はたったの2週 短期収容であっては テスクローネ殿が貴殿へ面会するのは 難しかったのではないか?」
フォーリエルが軽く笑って言う
「それが、テスの話じゃ 堅物だって噂のスプローニの第二国王様は すげー愛嬌のある 犬みてーな人だったって」
レイトが呆気に取られて言う
「愛嬌のある犬の様な?スプローニの第二国王は ローゼントの王配でもあり、私の父でもある ヴェルアロンスライツァーの筈だが?」
リーザロッテがレイトへ向いて言う
「それが、現在は 代理の第二国王である ベルグル殿になっていらっしゃるそうでしてよ?」
レイトが一瞬驚いて言う
「え?…ああ、そうでしたか なるほど、それなら 愛嬌のある犬で 間違いはありませんね」
レイトが微笑む リーザロッテとヘクターが軽く笑う リーザロッテがあっと思い出して言う
「あ、そうでしてよ 忘れる所だったわ フォーリエル」
リーザロッテがフォーリエルへ向く フォーリエルが疑問し 皆がリーザロッテへ向く リーザロッテが言う
「ロキ陛下から 今回の禁固刑、並びに スプローニ国民への薬物使用を大目に見る代わりに ベルグル代理第二国王が 美味しい団子に釣られて 面会許可書を出して下さった事を 口外なさらない様にと仰っていらしてよ?よろしくって?」
皆が呆気に取られる
【 スプローニ城 地下牢 】
ベルグルが檻の中から柵にしがみ付いて言う
「ごめんなさいッス ロキ隊長ーっ!俺、あのチョー美味い団子を ロキ隊長にもあげようと思ってたのに 気が付いたら部屋で爆睡しちゃっててッスねー?おまけに 起きた時には ロキ隊長に残しておいた団子が どっか行っちゃってたッスよー!これ本当ッス!全部俺が食べちゃった訳じゃ 無いッスよー!ロキ隊長ーっ!」
ロキが怒って言う
「黙れ!馬鹿犬が!俺は俺に団子を残さなかったと怒っているんじゃない!代理とは言え第二国王ともある者が 餌に釣られて面会許可書を発行するとはっ!やはり卿に 第二国王の代理などは務まらないのだっ!おまけに 先住民族の犬の癖に 団子に盛られていた睡眠薬にも気付かなかったとはっ!卿は第二国王としても 犬としても失格だ!」
ベルグルが一瞬呆気に取られた後 驚いて叫ぶ
「えーっ!?あの団子に 睡眠薬が入ってたッスかー!?俺全然分からなかったッスよ!ロキ隊長ー!」
ロキが衝撃を受け怒って言う
「黙れ!馬鹿犬!せめて 少しおかしいと思った位の嘘が言えないのか!?牢屋の監守が眠りこけている事に気付いた 交代の監守から連絡を受け 爆睡中の卿の部屋にあった団子を確認したんだ!どちらも同じ成分が込められた あの面会にやって来たテスクローネが持ち込んだ団子だ!奴が薬を盛った事に間違いはない!…卿が優しそうだと言った あのテスクローネだ 卿は人を見る目すら無いのだ!」
ベルグルが呆気に取られる ロキがハッとして顔を逸らして言う
「…い、今のは 少し言い過ぎた …だが、国王とは 素直な気持ちだけでは出来ないもの 故に 諸卿先住民族には やはり 難しいのだろう そこで少し反省した後は 大人しく俺の飼い犬に戻れ」
ベルグルがロキを見る ロキが顔を逸らし視線を合わせないまま立ち去る ベルグルがロキの去った後を見詰める
【 ツヴァイザー城 地下牢 】
牢の前に立ってプログラムを行っていた デス1st、デス2nd、テスクローネが作業を止め溜息を吐く ヘクターとフォーリエル、リーザロッテ、レイトがやって来てヘクターが言う
「デス どうだ?そいつの体から 魔物の何とか情報ってぇのは 外せたのか?」
デス1stが振り返って言う
「…いや、残念ながら 私とデス2nd デス・グローテの3人掛りでも 彼に入力されている 魔物の遺伝子情報を無効化する事は出来なかった」
デス2ndが顔を向けないまま言う
「シリウスBの完璧なプログラムも然る事ながら 彼自身が それから開放される事を拒んでいる様にも思える…」
テスクローネがデス2ndへ向いて言う
「人の思いと言う力は シリウス様のプログラムととても相性が良いのです それを お二人の強引なプログラムで解除するのは やはり難しいでしょう」
デス1stとデス2ndが衝撃を受け テスクローネへ詰め寄って怒って言う
「誰が強引に解除しようとしていると!?あくまで私は 奴の遺伝子情報の解析から やんわりとっ!」
「攻撃プログラムは使用せず 無効化を行う為のプログラム入力を行う事の 何処が強引だと言うのだ!?」
テスクローネが苦笑して言う
「ですから、それはどちらも解析ではなく… どちらかと言うと ハッキングに近いものかと?もしや、御二方はハッカーなのですか?」
テスクローネが微笑する デス1stが衝撃を受け怒って叫ぶ
「この無礼者がぁああ!グローテごときが!プリンスクラスの我々へ物申すとはっ!しかも ハッカーであるのかだとぉおーっ!?」
デス1stが怒りのプログラムを周囲に発生させる デス2ndが慌てて抑える テスクローネが苦笑する ヘクターが呆気に取られる フォーリエルが慌ててテスクローネの前に入って大剣を抜き デス1stへ構えて言う
「あっ!テスに危害を加えるなよ!俺が相手だ!」
デス1stが怒りの視線をフォーリエルへ向ける デス1stのプログラムがフォーリエルの大剣に当たりショートして激しく光る 皆が驚く 大剣からデス1stへ雷撃が走り デス1stが感電して叫ぶ
「なっ!?あぁああっ!」
デス2ndが呆気に取られる デス1stが倒れる ヘクターが驚いた後 慌てて叫んで駆け寄る
「デス!?」
ヘクターがデス1stを助け起こし 怒りの視線をテスクローネへ向けて言う
「おいっ!何するんだよ!?」
フォーリエルが驚きテスクローネへ向く テスクローネが呆気に取られた後言う
「今のは… 私の行いではありません しかし、不用意に攻撃プログラムを発生させるのは 控えた方が良いですよ?反発するのは この大剣だけでは ないかもしれませんから」
テスクローネが苦笑を見せる デス2ndが驚きフォーリエルの大剣を見て言う
「その大剣が 1stのプログラムに 反発したというのか?」
デス2ndがフォーリエルの大剣に近づき手をかざしてプログラムを発生させる テスクローネが言う
「礼儀正しくこちらから先に 身分情報の提供を行ってからでなければ 何も教えてはくれません」
デス2ndが一度テスクローネを見てから大剣へ視線を戻し 呆気に取られて言う
「この大剣は…」
デス1stとヘクターが近くに来て デス1stが言う
「旧世界の… アバロンの大剣使いが 使用していたものではないのか?随分と古い物の様だが」
ヘクターが大剣を見て言う
「ああ 本当だ この刃はもう駄目じゃねぇか こんなんじゃ 戦いには使えねぇぜ?」
フォーリエルが言う
「この大剣自体は もう駄目なんだ けど、こいつは どんな剣にも変身出来て どんな剣よりも強くなるんだぜ?テスのプログラムでな?」
テスクローネがフォーリエルの横に来て言う
「いや、私は大剣の見た目を変えているだけであって 実際にその剣を守っているのは 600年前に命を落とした 私の父が施したプログラムなんだ」
フォーリエルが驚いて言う
「え…?テスの…?」
テスクローネが微笑して言う
「私の父は 最期の時まで この剣を持ったアバロンの大剣使いと共に戦い 共に命を落とした… もしかしたら 父だけではなく その大剣使いの力も 一緒に 今もこの剣を守っているのかもしれないな?」
テスクローネがそっと大剣に手を添える デス1stが言う
「600年も昔に入力されたプログラムが 今も… そんな事が…」
デス2ndがプログラムを終えて言う
「…ああ、どうやら その通りらしい 時を越えても失われないプログラムを作るとは …とても グローテクラスだとは思えないな」
皆が大剣とテスクローネを見る テスクローネが微笑して大剣から手を離す ヘクターの通信機が着信する 皆が一瞬驚き ヘクターが通信機を取り出して言う
「どうした?こっちは今、ひと段落した所だけど アバロンで何かあったなら そこの兄貴に」
ヘクターの通信モニターに大臣Aが映り その後ろに玉座がありレクターが笑顔で座っている 大臣Aが表情を困らせて言う
『それがっ!ヘクター陛下!陛下の留守をお任せした レクター殿下は!』
通信モニターの中で 大臣Bがレクターの体に何度も手を通す 通信モニターを見ていたデス1stとデス2ndが衝撃を受ける ヘクターが表情を困らせて言う
「あちゃぁ~… 兄貴の奴 また、何処に出張しちまったんだぁ~?」
【 ガルバディア城 城門前 】
レクターが笑顔で言う
「私の精神はたまに ガルバディアへ出張しちまう事があるのだ しかし、今日は少し奮発して 精神だけではなく 本体も出張した だから私は 代わりにアバロンに置いて来た抜け殻がバレねー内に ヘクターの留守を任されたアバロンへ 帰らなければならねー!…そんな気がする」
レクターの通信機が着信する レクターが疑問して通信機を取り出して苦笑して言う
「しかし、残念ながら 私の抜け殻は もうバレちまったらしい」
レクターが通信機を着信させる
【 ツヴァイザー城 通路 】
ヘクターが通路を歩きながら通信機に言う
「兄貴っ アバロンの留守番はどうしちまったんだよ!?今回は精神の方をアバロンに置いて 体だけガルバディアへ行っちまったのか?俺が居ねー時は せめて体の方をアバロンに置いといてくれなきゃ 急に戦いでも起きたらどうするんだよ!?」
通信モニターのレクターが笑顔で困って言う
『すまないヘクター 私も頭では分かっていたと思うのだが 精神が勝手に体を出張させちまったんだ もしかしたら 今回は私も 私の中のアバロンの力が 何となくそうしちまったのかもしれねー …おまけに 何の備えも無く 極寒のガルバディアに飛んで来ちまったせいで 今にも凍え死んじまいそうなんだ』
通信モニターのレクターが苦笑する ヘクターが衝撃を受け慌てて言う
「な!?防寒具もなしに ガルバディアへ行っちまったのか!?兄貴っ!しっかりしてくれよ!?」
デス2ndがヘクターへ向いて言う
「レクターが居ないのでは やはり一度アバロンへ戻るか?」
デス1stがヘクターへ向いて言う
「シュレイザーのヴァッガスに続き ツヴァイザーにロドウが現れた 前回の奇襲を考慮すると その時ガルバディアに現れた ガイの事が気になるが」
ヘクターがデス1stへ向いて言う
「もし、あいつらが前と同じ様に来るとしたら ガルバディアに 今度は本物のガイって奴が来るって事か?だったら…」
ヘクターが通信機へ向いて言う
「兄貴!もしかしたら これからガルバディアに 以前兄貴と戦った ガイって奴がまた来るかもしれねーぜ!?兄貴のアバロンの力は それを感知したのかも知れねー!だから、兄貴はそのままガルバディアに居てくれ 俺がアバロンに戻るからよ!」
デス1stとデス2ndが顔を見合わせて デス2ndが言う
「レクターのアバロンの力が発動する確立は 過去の実績を元に算出すると1.01%… アバロンの民として考えれば はっきり言って絶望的だ」
デス1stが言う
「レクターはガルバディアの理性が強いんだ その中に埋もれた 本能的なアバロンの力を発揮させる事は難しい… それはそうとして、ヘクターの提案は良案だ レクターは前回のガイとの戦いに勝利している その上、レクターは以前より数段戦力を増している これなら ロドウやヴァッガス同様に ガイが前回比24%の戦闘力アップで現れても 対応出来るだろう」
ヘクターがデス1stとデス2ndの会話を聞いてから通信モニターへ向き直って言う
「って事だから 聞こえたか?兄貴?」
通信モニターのレクターが笑顔で言う
『ああ、しっかりと聞こえた 私のアバロンの力が発動する確立は 1.01%と絶望的なのだな!』
ヘクターが衝撃を受け慌てて言う
「いや、そこじゃなくって!」
通信モニターのレクターが照れながら言う
『大丈夫だヘクター 自分で言うのも難だが 実は… 私も自信を持って そんな気がしていた!』
通信モニターのレクターが満足そうに笑顔になる ヘクターが衝撃を受け怒って言う
「そんな所に自信を持たねーでくれよ!」
【 ガルバディア城 城門前 】
レクターが照れて頭を掻きながら言う
「ああ、それから ヘクターがアバロンに戻るから 私はこのまま 来るかどうかも分かんねー ガイを待って このガルバディアの地で凍死しちまうかもしれねー とも言ってたか?」
通信モニターのヘクターが焦って言う
『大体あってっけど!凍死するんじゃねーって!軽装で行っちまったんなら 城の中で待てば良いだろ!?兄貴はガルバディアの民としても認められてるんだったら ガルバディア城の城門だって開けられる筈だ!城門に手を付けるんだぜ!?分かんなかったら シリウス国王に頼めよ!?』
レクターが一瞬呆気に取られた後 困った様子で頭を掻く 通信モニターのヘクターが言う
『こっちは各国に連絡取って これからどーするとか 考えっからな!?デスが!』
通信モニターのデス1stとデス2ndが衝撃を受け声を揃える
『『私がっ!?』』
通信モニターのヘクターが言う
『もし、そっちで何か問題があったら 兄貴からも連絡をくれよ!?それから、ガイって奴が本当に来たら 頑張れよな!』
通信モニターのヘクターが強気に笑んでモニターにガッツサインを見せる レクターが呆気に取られた後 笑顔で同じサインを送り返して言う
「ああ!任せてくれヘクター!間抜け大剣使いの私が 優秀な弟であるヘクターに応援してもらえて 私は今とても嬉しい!」
通信モニターのヘクターが笑んで言う
『おう!それじゃーなっ!』
レクターが笑顔で言う
「ああ!」
通信が切れる レクターが笑顔で間を置いた後 呆気に取られて言う
「うん?…ああ、私はヘクターに応援され 嬉しかった!しかし、それに喜んでいたお陰で…」
猛吹雪の中レクターが苦笑して言う
「ガルバディア城の城門がロックされていて ガルバディアの関係者である私ですら 中に入れない と言う事を伝えるのを忘れた!ついでに、デスや私からの連絡がシリウス国王に繋がらないのは どうやら シリウス国王が 何処かへ出張しちまって居る事が原因らしい!…と言う事をデスたちに伝える事も忘れてしまった!そして、私は このまま外で ガイという奴が来るのを 待つしかねーらしい!」
激しい吹雪が吹き荒む
【 ツヴァイザー城 城門前 】
ヘクターとデス1st、デス2ndが城から出て来て立ち止まる デス2ndがヘクターへ言う
「では、アバロンへの移動プログラムを組む」
デス1stがデス2ndを見た後ヘクターへ向いて言う
「ヘクター?先のシュレイザーでの戦いで重傷を負った ヴィクトール13世の事が気掛かりだと言っていたが 良いのか?ツヴァイザーの援護が終わったら 立ち寄りたいと言っていただろう?」
デス2ndが周囲に現していたプログラムを止めヘクターを見上げる ヘクターが少し表情を渋らせて言う
「あぁ… 気になるっちゃー気になるけど 多分、ヴィクトールはバーネットが居れば大丈夫だろう それに、ヴィクトールが動けねーなら きっとバーネットも動けねーと思うんだ そうなったら 俺は アバロンの王として この世界の為に動かなきゃいけねーだろ?」
デス1stが一瞬驚いてから苦笑して言う
「フッ… 変わったな ヘクター」
ヘクターが疑問して言う
「あ?」
デス1stが微笑して言う
「夢の世界を経験する以前のお前は アバロンの王となっても 自身の思いを先行させる男だった …あの頃の私は お前の相棒ではなかったが そんなお前をずっと見ていたのだ」
ヘクターが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「ああ!知ってたぜ?」
デス1stが驚いて言う
「え?」
ヘクターが微笑して言う
「この前ふと思い出したんだけどよ?俺は昔からずっと誰かに見られてる感じがしてたんだよ …最初は気が散って困るって思ってたんだけど 試合で戦ってる時なんかは そいつが後押ししてくれてる気がしてさ それからは…」
デス1stが微笑する ヘクターが笑顔になって言う
「死んだじーちゃんが 守護霊にでもなって 俺を守護してくれてるんだと思ってよ!良く 悩み相談とかしたよなー!?けど、本当はお前だったんだな!デス!」
デス1stが衝撃を受けて言う
「しゅ…守護霊… それも お前の祖父の…」
デス2ndが密かに笑う デス1stがデス2ndへ怒りの視線を向ける ヘクターがデス1stへ向いて言う
「まぁ、どっちにしても ずっと一緒に居て 戦ったりもしてたんだ!なら、姿は見えなかったけど 昔っから相棒だったって事だろ!?だから… これからもよろしくな!デス1st?」
デス1stが苦笑して言う
「まぁ… お前の祖父ではないが 守護はしていた …ついでに幽霊でもないが 私は今も昔も変わらず お前の相棒だ こちらこそ よろしく頼む ヘクター」
ヘクターが微笑する デス1stが微笑を返す デス2ndがムッとして言う
「では!さっさと アバロンへ帰るぞ!そのプログラムを作ってやるのは 私だ ヘクター!」
ヘクターが一瞬呆気に取られた後 笑顔で言う
「ああ!よろしく頼むぜ!俺のもう1人の相棒!デス2nd!」
デス1stとデス2ndが呆気に取られる ヘクターが微笑する デス2ndが苦笑して言う
「それで良い」
ヘクターとデス1st、デス2ndが飛んで行く
【 ベネテクト国 港 】
バーネットが手で太陽光を遮りながら言う
「でぇえ?そのガルバディアに行きてぇって言ってやがる 天使様は てめぇの船に居やがるのかぁ?何で城まで連れて来やがらなかったぁ?この慈愛の王様バーネット2世様が とっ捕まえて焼き鳥… 焼き天使様にでもしちまうとでも 思いやがったのかぁ?はっはー!」
バーネットが笑う カイザが衝撃を受けて言う
「ちょっとー!?何て罰当たりな事言っちゃうの?!この第二国王様は!?神様の使いである天使様を 焼き鳥にしちまおーとかー!?」
ヴィクトールが首を傾げて言う
「天使様って事は… やっぱり絵に描かれる天使様の様な 背中に白い羽がある人なの?」
バーネットが疑問してカイザへ向く カイザが言う
「ああ、背中に羽があって… けどぉ あの天使様の羽は白くねぇんだ… ついでに 俺たちが想像する天使様と違って 夢でも現実でも 男なんだよなぁ…」
カイザが落ち込む バーネットとヴィクトールが顔を見合わせる
【 フェリペウス号 】
カイザが先行して船内への階段を降り通路を歩きながら言う
「落っこちてきた時の怪我は大した事無かったんだけどよ?喉が渇くって言うから水をやっても 飲めねーみたいなんだわ やっぱり天使様に俺たちが飲む水は飲めねーのかねぇ?んで、医者に見せようと思ったんだけど 本人がガルバディアにガルバディアにって必死に言うんだよ で、そのガルバディアに近いベネテクトまで連れて来たまでは良かったけど …今って冬だろぉ?背負って行くにも きっとガルバディア城の近くは すげー雪なんじゃねーかって思ってさ」
バーネットが言う
「すげぇ雪なんてもんじゃねぇだろうよ きっと今頃は猛吹雪だぜ そこへ歩いて… 増してや人を背負って行くだなんてぇえのは… あぁ 人じゃなくって 天使様だったかぁ?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「でも、お陰で僕らが天使様に会えるだなんて ラッキーだったよね?その天使様のお願いを叶えて ガルバディアへ送ってあげたら 僕らのお願いも 叶えてもらえるのかなぁ?」
ヴィクトールが考える バーネットが表情を渋らせて言う
「例え そうだとしても てめぇ… 間違ってもまた 可笑しな願いを言いやがるんじゃねぇぞぉ?」
ヴィクトールが呆気に取られ不満そうに言う
「えー?可笑しな願いなんて言わないよぉ 心外だなー 僕はただ バーネットがもっと僕の事を 好きになってくれる様にって それに もっと素直で優しくなって もっと僕を大切にしてくれて… 出来れば毎朝 朝の」
ヴィクトールがバーネットの鞭に縛られ踏まれている カイザが傍目に見て言う
「これが夢の中とは言え 2人してアバロン帝国の皇帝様だったなんてなぁ…?やっぱあれ夢だわ」
カイザが部屋の前にやって来て ドアノブへ手を掛けて言う
「とにかく、俺はこの天使様のお願いを叶えるために ベネテクトに来たんであって ベネテクトの町や村に危害を加えるつもりは まったく無いの そんな訳だから これで、俺は無罪放免って事で」
カイザがドアを開ける バーネットとヴィクトールが部屋の中を見る カイザは部屋の中へは顔を向けずに澄ましている ヴィクトールが疑問して首をかしげ バーネットが怒りを忍ばせて言う
「…でぇ?てめぇは てめぇの下らねぇホラ話を信じて のこのこ付いて来やがった ベネテクトの第二国王とその飼い猫をとっ捕まえて ベネテクトの王バーネット3世でも 強請るつもりでいやがったのかぁ?あぁっ!?この海賊野郎がぁあ!」
バーネットがカイザの襟首を掴んで凄む カイザが驚き慌てて指差して言う
「な!?何言ってるのよ!?そこの大柄な天使様が 見えないって言う の… あら…?」
カイザが呆気に取られ自分が指差した先 空になったベッドを見て衝撃を受ける バーネットが鞭を構えて怒りに燃えて言う
「覚悟は出来てやがるんだろうなぁあ…?あぁあ!?世界最速の海賊船 フェリペウス号の船長 カイザさんよぉお!?」
カイザが目を丸くする
船外
青い海にフェリペウス号の船体 カイザの悲鳴と鞭の音が響く
「きゃぁあーーっ!天使様ぁあーーっ!?無垢な俺を残して 何処行っちまったのーっ!?」
【 ガルバディア城 城門前 】
レクターが眠りそうになってハッと目を覚まして苦笑して言う
「はっ!…いけねぇいけねぇ 雪山で気持ちよく寝ちまう所だった… それとも 私はもう寝ちまったのか…?何だか意識が朦朧と… ん?」
レクターが空を見上げて目を細めて言う
「デカイ鳥… こんな吹雪の中に来る鳥だなんて… もしかして 私を迎えに来ちまった天使様か…?へぇ~?近頃の天使様は 随分と黒いんだなぁ?あははははっ は?」
レクターが瞬時に大剣を引き抜き攻撃を受け止め後方へスライドする 攻撃を受け止めた状態で止まる レクターが力を込め瞑っていた目を開き驚いて言う
「お前はっ!」
ガイが荒い息で怒りに満ちた目でレクターを凝視する レクターが周囲にプログラムを発生させて言う
「極度の飢餓状態 脱水症状 意識レベルが低い… それに 魔物化現象の初期症状がっ!」
ガイの攻撃をレクターが弾き 間合いを開くと レクターが顔を上げて言う
「今ならまだ間に合う!強い聖魔力エネルギー… 宝玉があれば!」
ガイが襲い掛かる レクターが攻撃を受け止めて言う
「…くっ!以前より数段力を増して …私も力を付けたが その私でも 押さえ付けてアバロンへ連れて行く事は出来ねーっ 応援を呼ばせてもらえる余裕もねーか」
レクターが周囲にプログラムを発生させる ガイが怒りを高め力を増す レクターが歯を食いしばって言う
「なら仕方ねー 動けなくなる程度に痛め付けて それから…」
ガイが荒い息をする レクターがプログラムを見て気付いて言う
「駄目か これ以上動かして体の水分を奪ったら…っ 剣で斬り付けて血でも流させたら 終わっちまう」
レクターが剣を振り払い ガイが飛ばされる ガイが翼を広げて着地した後 苦しそうに顔を向け身を浮かせる レクターが周囲にプログラムを発生させて言う
「うん?他の奴とは違って 意識レベルの保護は健在なのか… なら身体の枯渇状態さえ落ち着かせれば 人の意識を取り戻せる筈だ!シュレイザーとツヴァイザーに現れた旧世界の戦士たちが その意識を失っちまってる中で こいつは唯一可能性がある おまけに、奴らのリーダーであるガイなら きっと全てを知っている!…そんな気がする!」
レクターがガイへ向く ガイが武器を構える レクターが意を決して大剣を構える ガイが猛スピードで飛び掛る レクターが直前になって大剣を手放しガイを見る ガイが自分に向けられていた武器が消えた事に気付き 剣を捨てレクターの身に掴みかかる レクターが強く目を瞑り痛みに声を上げる
「うっ!」
レクターが雪の上に倒れる ガイが圧し掛かっている レクターが横目にガイを見て言う
「こ…これで… 意識を取り戻したら アバロンに… 行ってくれ… ガルバディアは今 誰も居ねーんだ… シリウス 国王も… だから… アバロンに行って ヘクターに…」
ガイがレクターの首筋に牙を立て血を吸っている レクターが苦笑して言う
「ガイに使われていた 魔物の遺伝子情報が… ヴァンパイアで良かったぜ… 他の魔物だったら… 骨まで食われちまってた か な… はは…」
レクターが空を見上げて言う
「ヘクター… 一度… お前と本気で 戦ってみたかった… 1人の 大剣使いとして… アバロンの 民として…」
レクターの視界が霞んでいく
【 アバロン城 玉座の間 】
大臣Aが言う
「デス第二国王陛下のご指示の通り ヘクター陛下のお名前を使い ローレシアを始めとする各国へ シュレイザーとツヴァイザーの事態を踏まえ 早急に話し合いの場を持ちたいとの連絡を行いました所 ローレシア、ローゼント、カイッズ、ソルベキア、ツヴァイザー、スプローニ、シュレイザー… ガルバディアとベネテクト、デネシアを除きます 各国より アバロンにて行われるのであれば 直ぐにでも向かう とのご返答を頂きました」
ヘクター、デス1st、デス2ndが入室して 玉座へ向かいながらヘクターが疑問して言う
「ガルバディアはともかく ベネテクトはどうしちまったんだ?それに デネシアは?ベネテクトはアバロンからの連絡にはいつも 直ぐに返事をくれるんじゃ無かったか?」
大臣Aが手元の資料をめくりながら言う
「ベネテクトに関しましては 私も二つ返事で良いお返事を頂けるものと思い 他の国々への連絡を優先致しました と言う事もあったのですが 未だにベーネット陛下並びにバーネット陛下からも ご連絡を頂けておりません」
ヘクターが表情を心配そうにする デス1stが言う
「先ほど確認した情報によると ヴィクトール13世の重傷情報はデマであったとの事だ ヘクター、そちらを心配する必要は無い」
ヘクターがデス1stの言葉に言う
「デマ…?そっか、なんだ なら良かったぜ!」
ヘクターが微笑する デス1stが頷く デス2ndが言う
「とは言え その2人が居るベネテクトとの連絡が 途絶えていると言う事は問題だ 私から直接 ベーネット国王かバーネット第二国王へ」
ベーネットの声が響く
『失礼致します ヘクター陛下』
皆が疑問する ヘクターの前にベーネットが礼をした状態でホログラムを現す ヘクターが気付き微笑して言う
「ベーネット!今、丁度 お前たちの事を心配してたんだぜ!」
ベーネットが顔を上げ微笑して言う
『ご心配をお掛け致しまして申し訳ありません 更には、アバロンからの連絡に 返答が遅れてしまい失礼致しました こちらで少々トラブルがありまして 遅くなりましたが 先のご連絡内容へ対する 私並びに我らベネテクトの返答は アバロンの決定を補佐する との返答を示させて頂きます』
デス1stとデス2ndが頷き合う ヘクターが笑んで言う
「おう!ありがとな!」
ベーネットが微笑む ヘクターが言う
「で?そっちであった トラブルってーのは?大丈夫だったのか?」
ベーネットが呆気に取られた後軽く笑って言う
『ええ、大丈夫です トラブルと言いましても ベネテクト程の小さな国での出来事など アバロンには何の危害も無いでしょう』
ベーネットが苦笑する ヘクターが呆気に取られてから微笑して言う
「んな事はねーぜ!?ベネテクトはアバロンの友好国だろ!?ベネテクトになんかありゃー いつだって手を貸すぜ!?それに、お前らだって アバロンを助けてくれるんだろ?」
ベーネットが呆気に取られてから微笑して言う
『はい、もちろんです …しかし、我らベネテクトは こちらの現実世界に置いては ベネテクトと共にガルバディア その両国へ王の猫を提供して下さる デネシアとの手を切る事は 出来ませんが?』
ヘクターが一瞬呆気に取られた後苦笑し気付いて言う
「おうっ そう言えば そのデネシアからの返答はどうしちまったんだろうな?現実世界では アバロンとデネシアは喧嘩してねーよなぁ?」
ヘクターがデス1stとデス2ndを見る ベーネットが同じく顔を向ける デス1stとデス2ndが周囲にプログラムを発生させながら デス1stが言う
「この現実世界に置いても デネシアは何かとアバロンをライバル視している部分はあったが その当時国王であった ルーゼックがローレシアの第二国王となり その後の王位継承を経た今に置いては まったくと言って 互いを敵視する事も 向こうが勝手にこちらをライバル視する事も無くなった」
デス2ndがプログラムを見ながら言う
「しかも、現デネシアの王 ファニア女王はアバロンよりも むしろベネテクトへ友好関係を築こうとしている様だな これはやはり 魔法剣士傭兵部隊の事が大きいか… 自分の父や兄が住む国という事もあるかもしれんが…?」
ベーネットがヘクターへ向いて言う
『私の知る限り ファニア女王は お若くとも、聡明で何事にも迅速に行動して下さるお方です アバロンからの連絡に遅れを出すと言う事は 何かあったのかもしれません もし宜しければ 私がここへ ファニア女王との通信を繋ぎますが』
ヘクターが一瞬呆気に取られた後デス1stとデス2ndを一度見てから微笑して言う
「そっか!悪ぃなベーネット!頼むぜ!」
ベーネットが微笑んで言う
『お安い御用です』
ベーネットが後ろを振り返る ヘクターがふと気付いて言う
「…あ そういやー ガルバディアに行っちまった兄貴の奴 大丈夫だったかなぁ?兄貴はガルバディアの力が使えたり アバロンの力を使えたり… 最近は ローゼックのとっつぁんに あの中途半端な剣を教わったりっで 色々出来る様になったのは良いけど 相っ変わらず間抜けてっからなぁ~」
ヘクターが心配そうに表情を渋らせる ベーネットが苦笑している
【 ガルバディア城 城門前 】
薄暗い空間の中 レクターが薄く目を開いて言う
「うん…?今… 誰かが私の事を… 褒めてくれていた様な… そんな気がする」
レクターが笑顔で照れる レクターが間を置いて気付いて言う
「…と、ここは?確か私は…?」
レクターがガイに吸血されていた時の事を思い出す レクターが苦笑して言う
「…では私は あのままコロっと逝っちまったのだろう ここは天国か?程よく暖かい このままもう一度 二度寝三度寝をしちまいたい気分だ」
レクターが笑顔になる レクターの直ぐ近くに赤い瞳が光り ガイが言う
「レクター殿 気が付かれたか」
レクターが驚きガイへ顔を向ける 上部が少し開き 光りと共に吹雪の音と僅かに吹雪が入り込む レクターが一度目を細めてから ガイへ向き直る ガイが微笑して言う
「この翼は 我が王の力により強化され 吹雪にも強い攻撃にも耐えうるが 貴殿に このまま眠られては 少々困ってしまう」
レクターが呆気に取られた後 微笑んで言う
「ガイ!意識を取り戻したんだな!?けど残念ながら お前も あの吹雪の中でコロっと逝っちまったのか!では 二人で仲良く 天国へ向かえば良い!そんな気がする!」
ガイが衝撃を受けわずかに呆れて言う
「いや、そんな気は されないで頂きたい」
レクターが笑顔になる ガイがレクターを抱え飛んで行く
【 アバロン城 玉座の間 】
ベーネットの振り返った先 ホログラムモニターにファニアが映っていて言う
『…と申します事で ガルバディア城の前で 旧世界の戦士ガイ殿を正気に戻らせたレクター殿下は そちらのガイ殿が持ち合わせていた エリクサーにて奇跡的に命を取り留め 私どものデネシアへと 運ばれました』
皆が呆気に取られてファニアを見ている ファニアが言う
『私どもも、突如上空から現れた ヴァンパイアの姿に最初は驚き 兵を招集致しましたが レクター殿下のお姿を確認し 慌てて保護を致したのです 現在レクター殿下は私どもの城にて 御身の回復をさせて頂いております お命の心配は無いとの事ですので ヘクター国王 どうかご安心下さい』
ヘクターが息を吐き苦笑して言う
「兄貴の奴 無茶しちまって… もし、ガイがエリクサーを持ってなかったら どうするつもりだったんだ?」
デス1stが言う
「エリクサーの有無などより ガイがレクターの命が失われるより前に 意識を取り戻す事が出来た事 それ自体が奇跡的だ」
デス2ndが周囲にプログラムを発生させながら言う
「更に、極度の枯渇状態にあったヴァンパイア… いや、人であろうとも その渇きを癒し通常の精神状態へと意識を落ち着かせて間もなく 自身が持ち合わせているエリクサーの事に気付き 倒れようとしている者を救うなど… それを行える確立は限りなく低い」
デス1stが言う
「エリクサーを与えた後 レクターの体温が上昇するまでの間 己の身を盾にして吹雪の中を耐えた …これらは実に正しい判断だ 回復処理を行い 直後に空を飛んでいたら レクターは間違いなく助からなかっただろう ガイという戦士は 知識共に優秀な戦士の様だな」
ヘクターが表情を渋らせる ベーネットが言う
『レクター殿下のお陰で 旧世界との架け橋となるであろう ガイ殿も命も取り留め そして、人の意識を取り戻す事も出来た レクター殿下の行いは自傷的ではありましたが 我々新世界の民 共に 旧世界を救う為の 最たる結果をもたらしたのでしょう ファニア女王 そのガイ殿は?』
皆の視線がファニアへ向く ベーネットを見詰めていたファニアがハッとして 頬を僅かに染めつつ慌てて言う
『はっ はいっ!…ガ、ガイ殿は 私から アバロンとヘクター国王の説明を聞き 旧世界で起きた事を 直接ヘクター国王へお伝えしたいと 先ほどアバロンへ向かいました デネシアの大臣 ハレルトが同行しておりますので どうかご確認下さいませ』
ヘクターが顔を向けた先 デス1stが周囲にプログラムを発生させ皆に見られる様ホログラムモニターに映す 映像の中でハレルトがアバロンの衛兵と話していて その後ろにローブを纏ったガイが居て ガイが気付き振り返る デス2ndがプログラムを現しつつ言う
「間違いなく 以前ガルバディアに現れた 旧世界の戦士ガイだ」
ヘクターが首を傾げて言う
「ツヴァイザーでフォーリエルが化けた奴とは… ちょっと感じが違うな?」
デス1stがヘクターへ向いて言う
「ああ、見た目は変わらないが 彼の身に入力されている ヴァンパイアの遺伝子情報が 大幅に増加している …お前はそれを見抜いているのだろう」
まもなく 玉座の間の衛兵が言う
「デネシア国大臣 ハレルト殿と 旧世界からの使者 ガイ殿です!」
皆の視線が玉座の間出入り口へ向く ハレルトに続き ガイが現れ ヘクターを見て僅かに怒りを込め目を細める ヘクターがそれに気付き疑問する
ガイがヘクターへ説明をしている
「旧世界ガルバディアの王 シリウスB様は 新世界のシリウス様や 両世界の戦士たちと共に 異世界の王との戦いを開始する事を考えておられました その為にも 新世界のシリウス様と連絡を取りたいと ご自身のご子息であられる ルシフェル様と私を新世界へ向かわせようとしていたのです …しかし」
回想
【 旧世界ガルバディア城 転送室 】
ルシフェルが転送装置に手をかざし終え振り返って言う
「転送先は 新世界の最南端にある ソルベキアだ 転送距離を短くする分 お前の身に影響を及ぼす悪魔力の使用を 最小限に留める事が出来る」
ガイが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「お心遣いを 有難うございます ルシフェル様」
ルシフェルが一瞬驚き顔を背け頬を染めて言う
「べ、別にお前を気遣った訳ではない 私は お前を心配していた父上の為にと…っ」
ガイが微笑する ルシフェルが平静を装って転送装置へ向かいガイが続く 外からラーニャの悲鳴が響く
「きゃぁあーーっ!」
ガイとルシフェルが驚いて振り返る
ルシフェルとガイが通路を走って来る 2人の目の前 玉座の間の入り口で立ち尽くしているメテーリの横に 一足先に来たヴァッガスが目を丸くした後 怒りと共に叫んで駆け込んで行く
「てめぇええーーっ!」
ルシフェルに続きガイがメテーリの横に立ち止まりメテーリへ言う
「メテーリ!何事か!?」
ルシフェルが玉座の間を見て目を丸くしている メテーリがガイへ向いて目を怯えさせて言う
「ガイ…っ わ、私たち… どうなっちゃうの…っ!?」
ガイが驚く ルシフェルが叫ぶ
「父上っ!」
ルシフェルが玉座の間へ駆け込んで行く ガイが視線をルシフェルを追って玉座の間へ移し驚いて言う
「シリウス様っ!」
ガイの視線の先 シリウスBが血の滲んでいる床に倒れ苦しそうな表情で誰かを見上げている ガイがシリウスBの元へ駆け寄り シリウスBの視線の先を見て驚いて言う
「き… 貴殿がっ!?何故っ!?」
ガイの前に ラインツが血の滴る大剣を持ってシリウスBを見下ろしている
回想 終了
ヘクターが驚き呆気に取られて言う
「お… 親父が?俺の親父である ラインツが 旧世界のシリウスBをっ!?」
その場に居る者が驚き顔を見合わせる ガイがヘクターを見て言う
「…貴殿は 貴殿の父が何故 シリウス様の御命を狙ったのか その理由を存じないのか?」
ヘクターが一瞬驚いてから困惑して言う
「そんなの 知る訳もねーっ!それにもし!親父にそんな気があるって分かってたんなら 俺は親父をぶん殴ってでもこっちの世界に留まらせたぜ!…親父は あの旧世界の戦いの後 俺たちと別れて ガルバディアに… 相棒のシリウス国王の所へ戻ったんだとばかり…っ」
デス1stとデス2ndが顔を見合わせ デス2ndが言う
「ラインツ前王が旧世界へ向かったのは シリウス国王の計らいか?」
デス1stが周囲にプログラムを発生させて言う
「いや、あの戦いの後 シリウス国王による転送処理が行われた形跡は無い …とは言え シリウス国王との連絡が取られない今 確かな事だとは言い難いが」
ヘクターが言う
「どんな理由があろうと シリウスBは旧世界を守ってる王なんだろ!?その奴をぶっ殺そうとするだなんて… 本当にそいつは俺の親父ラインツなのか!?」
ガイが言う
「彼の身柄は 以前貴殿らが旧世界に現れた際に取られた 映像や生体情報と共に 貴殿らのお仲間でもある ラーニャ殿も確認を行い ラインツ殿であると 明言したのだ」
ベーネットがガイへ向いて言う
『それで、そのラインツ殿は現在どの様に?そして、シリウスB殿のご容態は?』
皆がガイに注目する ガイがベーネットのホログラムへ向いて言う
「…シリウス様は 現在お体の時を止める事で 辛うじて御命を保たれている しかし、それも こちらの世界のシリウスA様にお力を借りる事が出来ねば 二度とあの機械から出る事も 意識を取り戻される事も無いと言う」
ガイの脳裏に シリウスBが生命維持装置の中で眠り ガイとルシフェルが見つめる姿が思い出される ガイがヘクターへ向いて言う
「そして、シリウス様を傷つけた ラインツ殿は」
回想
ルシフェルがシリウスBへプログラムによる処置を施している その横でヴァッガスがロドウに抑えられている状態で叫ぶ
『離せ ロドウ!離せよっ!』
ロドウが表情を困らせて言う
『ダメだよヴァッガス 僕だって… 気持ちは分かるけど』
ガイがヴァッガスからラインツへ視線を移して言う
『ラインツ殿 お聞かせ願いたい 貴殿は何故 シリウスB様を?この行いは 貴殿の相棒であられる シリウスA殿も同意の事なのか!?』
皆がラインツを見る ラインツが呆気に取られている ヴァッガスが一瞬間を置いてから怒って言う
『答えろよっ!てめぇは知らねぇのか!?てめぇが傷つけたシリウス様はな!この旧世界だけじゃねぇ!てめぇらの新世界まで守ってたんだぞ!?それをっ!』
ラインツが呆気に取られた様子でヴァッガスたちを見た後言う
『…こ ここは?俺は…?』
ラインツが自分の手に握られている大剣を見て言う
『この剣は…?』
大剣から血が滴り ラインツが驚く ガイたちがラインツの様子に驚いた後ヴァッガスが怒って叫ぶ
『てめぇが!てめぇがシリウス様を殺そうとしたんだろ!?とぼけるのもいい加減にしやがれぇええーっ!』
ルシフェルがラインツへ向けていた視線を大剣へ向け気付き悔しそうに言う
『しまったっ その剣か…っ ヴァッガス… そいつの言っている事は事実だ そいつは… 記憶を封じられてしまった その剣に備えられている凍結プログラムの解除は私でも難しい… 父上から力を受け継いだ 私を越えるプログラムを操る者 考えられるのは…』
ヴァッガスが呆気に取られ怒りロドウの制止を振り切り 玉座の間を飛び出して行く ガイが慌てて叫ぶ
『ヴァッガス!?』
回想終了
ガイが言う
「ラインツ殿は 記憶をプログラムによって封じられているとの事だ よって、現在は 旧世界のガルバディアにて 私の部下であるメテーリと 貴殿の仲間であるラーニャ殿が保護をしている」
ヘクターが視線を落として考える デス1stとデス2ndがヘクターを見た後顔を見合わせ ベーネットがデス1stへ向いて言う
『ラインツ殿が何故事に及んだのか それは 記憶を封じられた現状のラインツ殿と共に ヘクター国王にも分からない事なのでしょう しかし、少なくともこれで 旧世界の戦士ヴァッガス殿と 共に恐らくロドウ殿も この世界に来て行おうとしていた事は シリウスB殿の復讐… そうであるのなら 和平を結んだはずの彼らが この世界を襲った理由も納得が行きます』
ガイが言う
「ヴァッガスは シリウス様の御容態を確認する事も無く その怒りのままに 私とルシフェル様が使用する予定であった転送装置を用いて こちらの世界へ向かってしまった あの転送装置を使用する事は 魔物の遺伝子情報を悪化させてしまう… ヴァッガスは我らの中で最も多く悪魔力を受けていた それ故に シリウス様もヴァッガスではなく 私に向かわせようとしていた …しかし、ヴァッガスだけでなく 私が去った後に ロドウまで新世界へ向かってしまったとは」
デス2ndが言う
「他の2人とは違い お前だけは意識の完全回復を行えた お前は彼らとは違う方法で こちらの新世界へやって来たのか?」
ガイが言う
「私は ルシフェル様にお力添えを頂き こちらの世界へ参りました …とは言え 装置はヴァッガスを転送させるのにエネルギーを使用していたため 目的の場所まで飛ぶ事は適わず 更に悪魔力の影響を抑えるプログラムも連続転送により負荷が掛かると… 恐らくそれ故に 私の魔物の遺伝子情報が予定より悪化した様で 不覚にもガルバディアを死守していた レクター殿へ危害を加えてしまいました 彼には後ほど改めて謝罪を行わせて頂きたい」
ガイがハレルトへ向く ハレルトが微笑んで頷く ガイが言う
「…それと、ガルバディアまでの道すがら 私に協力して下された とある船の船長殿へ… 危害を加える事だけは自制する事が出来ましたが 彼に助けられなければ 私は今頃深い海の底に沈んでいたかもしれません 名を尋ねる事さえ叶わなかったが あの特徴的な船ならきっと見付けられる筈 彼にも船を壊してしまった事への謝罪と共に改めて礼を言わねば」
ベーネットが驚いて言う
『船長殿…?もしや…』
【 ベネテクト城 地下牢 】
カイザが鉄格子にしがみ付いて言う
「本当だってーっ!信じて頂戴よー!黒い天使様が 俺にガルバディアへ連れてってくれって 必死に頼んでよぉー そうじゃなかったら 何で借金取りから逃亡中の俺が わざわざ お国の王様へ会いに来るってぇ~の~?」
ヴィクトールが猫耳を付け嬉しそうに微笑んで言う
「さぁ~?僕は猫だから 難しい話は分か~んな~い」
カイザが衝撃を受け怒って言う
「アンタ俺の夢の中では アバロンの王様だったり 皇帝様だったりしたんだぞー!それが現実世界では猫だとか?訳分かんないから マジ止めてくれっ!…ってーか いい歳して その耳は止めろって!」
ヴィクトールが不満そうに言う
「え~?心外だなぁ 外ではダメだけど ベネテクト城の中では良いって バーネットにさっき許可してもらったんだよ?きっとバーネットは口には出さなくても 僕のこの姿を気に入ってくれたんじゃないかな?バーネットはね?あー見えて 意外と可愛い物が好きなんだよ?えへへ」
カイザが衝撃を受けて言う
「え!?あの旦那が?…ま、まじで?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「うん!ほら、僕だってその1人!…あ、1匹だもの!てへっ」
カイザが衝撃を受け呆れる
【 ベネテクト城 バーネットの部屋 】
バーネットが椅子にだらけて腰掛けて居て 片手に首輪を弄びながら言う
「んだよ 親父もシリウス国王とは連絡出来てねぇのかぁ?ならぁついでに、シリウス国王は今 ガルバディアに居やがらねぇんじゃねぇかって 俺の猫が そんな気がするなんて言いやがるんだが そっちも知らねぇか?」
バーネットの前 バーネット1世のホログラムが言う
『ハッ!知らねぇなぁ …大体、俺様はなぁ この新世界を守ってやがった防壁が 急に消えちまいやがったってぇんで その対応に追われてやがるんんだぁ こっちこそ そのシリウス国王殿に しっかり守りやがれってぇ 一言文句でも言ってやりてぇくれぇだぜぇ』
バーネットが衝撃を受けて言う
「なぁ!?防壁が消えやがったって そら、どう言う事だぁ!?それこそ シリウス国王に文句じゃぁなくって 特別回線で緊急連絡しなけりゃ ならねぇえってもんだろぉが!?」
バーネット1世が気付いて言う
『あぁ…?あ そうか?んな回線がありやがったなぁ?何も 代わりに この俺様が必死こいて 消えちまった防壁プログラムの復旧サポートをしてやる必要なんざ ありやがらねぇんじゃねぇか!?んあー畜生っ!気付かなかったぜぇ…』
バーネット1世がバツの悪そうに視線を落とす バーネットが衝撃を受け慌てて言う
「親父っ!てめぇえ 相っ変わらず 変な所で間抜けやがって!」
バーネット1世が衝撃を受け怒って言う
『るせぇえ!俺は昔っから 何でもてめぇえでやらなけりゃならねぇって 思っちまうんだよぉお!畜生ぉおっ!』
バーネットが怒って言う
「だから そこが間抜けてやがるんだろぉお!それから、いい加減 俺や3世の奴に頼るって事を覚えやがれぇええ!」
【 ローレシア城 客室 】
テスクローネが映像を消して振り返る 振り返った先 リジューネが言う
「…なるほど 彼らの奇襲は シリウスB殿の敵討ちであったのか」
フォーリエルが言う
「通りで おかしいと思ったんだ 旧世界に最後まで残るって言い切ったヴァッガス副隊長が シリウス様の居る旧世界から飛び出して来ちまうだなんて」
テスクローネが苦笑して言う
「しかし、ガイ殿のお話からして シリウスB様は 何とかお命を取り留めたそうですね?」
リジューネが言う
「そして今は ガイの言っていた ルシフェルと言う者が シリウスB殿の代わりに 旧世界を守っているのだな」
テスクローネが言う
「シリウスB様のご子息とは言え 彼に旧世界の防衛は難しい筈です 通常時ならともかく 今は 異世界の王たちが 旧世界…いや、こちらの新世界すら 狙っているのですから」
リジューネが悔しそうに言う
「こちらの世界にさえ来れば シリウス様に… シリウスA様にお力添えを頂け 我らの旧世界を救えると思っていたのが 甘かったか… 新世界の戦力を上げさせる事よりも早く ガルバディアへ向かい お話をするべきであったな」
フォーリエルが笑んで言う
「俺は 新世界に到着したら リジューネ陛下は 真っ先にガルバディアへ行くんだと思ってたんだけど 意外だったよなぁ?」
リジューネが衝撃を受け 視線を逸らして言う
「わ、私は 旧ローレシア帝国の王なのだっ まずは… 共に参った旧世界の民たちが 無事こちらの世界に受け入れられた事を確認した上で こちらの世界の状況を確認し 更に それなりの手筈を経てからでなければ シリウス様にお目通りするなど…っ」
テスクローネが苦笑して言う
「しかし、それらの事を差し置いてでも 本当は向かいたかったのですよね?そして、そのお気持ちのままに 行動されていれば 少なくとも ガルバディアを出られる以前のシリウスA様と 一度でも言葉を交わす事が出来たでしょう …現在は 誰もがそのシリウスA様の居場所を探し そして 誰もお会い出来ては いない様です」
リジューネが残念そうな表情をする フォーリエルが苦笑して言う
「俺思うんだけどよ?リジューネ陛下は きっとローレシアの王だとか なんだとかに囚われないで アバロンの民として ありのままに動いた方が 色々上手くいくと思うんだよなぁ?…何となくだけどよ?」
リジューネが驚く テスクローネが一瞬呆気に取られた後 笑顔で言う
「フォーリエル だいぶアバロンの民の真似が 上手くなってきたじゃないか?何となくだなんて アバロンの力まで 真似出来るようになったのか?」
フォーリエルが喜んで言う
「お!テスもそう思うか!?俺も最近 このアバロンの民の真似が 板についてきたかなーなんて 思い始めたんだよなー!」
フォーリエルが照れて頭を掻く リジューネが怒って言う
「貴殿こそ!ありのままに!エド町の民として動くべきではあらぬのか!フォーリエル!」
テスクローネとフォーリエルが笑顔で居る
ローレシア城 玉座の間
スファルツが映像を消して振り返る キルビーグが納得の息を吐き ルーゼックが耳を塞いでいる スファルツが言う
「これで、旧世界の戦士たちによる 今回の襲撃理由 共に 新旧両世界の危機である事が判明致しました」
キルビーグが言う
「ふむ… スファルツ卿の言う通りであったな この世界を守る力が衰えてしまったと… しかし、まさかそれが 旧世界のシリウスBが倒れた事が原因であったとは 更にそのシリウスBを倒したのが…」
キルビーグがルーゼックへ向く ルーゼックが耳を塞いだまま顔を横に振って言う
「私は何も聞こえはせなんだったっ!私に聞こえた言葉は 新世界と旧世界を救う為に 今一度 皆で力を合わせようと!そう言いよったヘクターの言葉だけなんだ!」
キルビーグとスファルツが呆気に取られた後顔を見合わせ苦笑し キルビーグがルーゼックへ言う
「そうか… それは残念だったな ルーゼック?アバロンやベネテクトのベーネット殿 並びに デネシアのファニア女王までもが その皆で力を合わせる方法として やはり、我らローレシアを 帝国としようと 申しておったのだぞ?」
ルーゼックが衝撃を受け怒って言う
「そなんだ事は一言も申しておらんかったわ 馬鹿者っ!皆はラインツ殿の事は広めぬままに 皆で集結するべきであると申してっ!…大体 貴様はこの機に及んで まだローレシア帝国の設立を 目論んでおったのか!?」
キルビーグが苦笑して言う
「なんだ、聞こえてしまっておったのか?折角、程よく お前に我らローレシアの復興へ 意欲を燃やしてもらおうと思ったのだが?」
ルーゼックが衝撃を受け バツの悪そうに顔を背けて言う
「き… 聞きたくは無かったが聞いてしまった… ラインツ殿が… ヘクターの父上 私にとっても まったく関係があらなんだ訳ではない その者が… あろう事か新旧両世界を守っておった シリウスBを斬り付けるとは…」
キルビーグが表情を落として言う
「まだ、そうと決まった訳ではないであろう?もしや、あのフォーリエルの様に ラインツ殿へ化けた他の者であると言う事も」
ルーゼックが言う
「今は 倒れたシリウスBの代わりに そのシリウスBの子息と言う者が 旧世界の防衛を行って居るのだろう?それ程の者であるなら 父であるシリウスBを斬り付けた者が ラインツ殿であるのか 他の化けた者であるのか位は 分かりよる筈 …その者はやはりラインツ殿なんだ」
スファルツが言う
「とは言え、ラインツ元アバロン国王の行いは 不可解です 彼が何故 シリウスBを手に掛け様としたのか 誰に記憶を封じられたのか… そして 彼がどの様に旧世界へ向かったのかさえ 分かってはおりません 更に そのラインツ元国王の相棒であられた シリウス国王とも 現在は連絡の取られない状態 これらの事は すべて一連の事なのでしょうか?」
キルビーグとルーゼックが顔を見合わせてから ルーゼックが言う
「一連ではあらなんだと申すのか?」
キルビーグが考えながら言う
「私にはシリウス国王が旧世界のシリウスBの命を 奪おうなどとは考えられなんだ 何故なら 我らローレシアに残されている古き書物には シリウス国王は旧世界の王を 最も大切なパートナーとして 常に気に掛けていると書き記されておる 先の旧世界との戦いの折にも シリウス国王はシリウスBへ まったく攻撃をせなんでおった」
ルーゼックが考えながら言う
「うむ… あの戦いの一番の目的は 旧世界ローレシアの民を転送させるための時間稼ぎであったが そうであったとしても 攻撃を致さなかった事への理由にはならぬな」
スファルツが言う
「ラインツ元国王の行ないが シリウス国王と無関係であるとしたら ラインツ元国王がどの様にして旧世界へ向かったのかが 何より重要であるかと思われます シリウス国王が力を貸さなければ 今はこのローレシアでさえ 旧世界への転送を行う事は難しいのですから」
皆が考える キルビーグが言う
「ふむ… それにしても 当のシリウス国王は一体何処へ行ってしまったのだろうか?」
ルーゼックが怒って言う
「まったく!この大変な時にっ 何処をほっつき歩いて居るのか!?アバロンへの召集へ向かうより まずはそのシリウス国王をひっ捕らえるのが 先ではあらなんだかっ!?」
ルーゼックが怒っている キルビーグとスファルツが苦笑する
ローレシア国 城下町
シリウスAが街中でダウジングしている ヴィクトール11世が首をかしげて言う
「ねぇ シリウス?僕思うんだけど… それってダウジングだよね?確か ローゼントで温泉発掘に使うって言う~?」
シリウスAが言う
「そうじゃ ダウジングじゃ しかし、これは何も 地下水脈だけを調べる方法ではあらぬのじゃ 例えば地下に埋められておる 不純物… っ!?」
シリウスAが衝撃を受け強く顔を左右に振って否定する ヴィクトール11世が疑問する シリウスAが気を取り直して言う
「う、うんっ …いや、地下に封じられておる物なども 探り出す事が出来よるのじゃ」
ヴィクトール11世が目をぱちくりさせた後言う
「地下にある不純物… もしかして それがシリウスの本体なの?」
シリウスAが衝撃を受け怒って言う
「こりゃ!ヴィクトール!わざわざ言い直してやったのに それを繋げて言うではないっ!わざとじゃな!?」
ヴィクトール11世が照れる シリウスAがムッとして言う
「これにはれっきとした理由があるのじゃ!我の身を封じたローレシアの王ラグハーンは 我の身を封じたのであって 消滅はさせなかったのじゃ つまり 我がこの世界を守る者であると言う事を 知らなかった奴とて 我を消滅させる事は危険であると言う事を 自ずと分かっておったのじゃろう 従って その封印は 我の捜索プログラムでは分からぬ様に封じると共に 他の方法を持って その場所を探し出せる様にと 致した筈なのじゃ」
ヴィクトール11世が考えて言う
「それで、その方法がダウジング?」
シリウスAが言う
「そうじゃ ダウジングは科学的根拠がまったく無いのじゃ にも拘らず ローレシアの友好国ローゼントの民… 古くは旧世界エド国の民は これで地下水脈を探り出すのじゃ プログラムの力を用いる我から見れば とても不可思議な現象じゃが もしかしたら 彼らにはダウジングによって アバロンの民の様な何となくそんな気がする力が 発揮されるのかもしれんのぉ?」
シリウスAが笑う ヴィクトール11世が言う
「ねぇ?シリウス?だとしたら… やっぱりシリウスがダウジングしても 本体は見付からないんじゃないのかな?僕… 何となくそんな気がするよ!」
ヴィクトール11世が笑顔になる シリウスAが一瞬考えた後 衝撃を受け焦って言う
「そ…そうじゃった 我とした事が… 例え方法は正しくとも 我自身はプログラムの塊なのじゃ… おまけに 我はローゼントの民でもエドの者でも…」
遠くからフォーリエルとテスクローネがやって来て テスクローネが気付いて言う
「うん?あそこに居るのは…」
フォーリエルがテスクローネの言動に疑問して 視線の先を同じくしながら言う
「ん?…あ!ありゃぁ!」
フォーリエルが ヴィクトール11世へ目掛け走って来て言う
「おーい!ヴィクトール様ー!」
ヴィクトール11世がフォーリエルへ向いて言う
「うん?あ!君は!」
フォーリエルがヴィクトール11世の前で立ち止まり テスクローネが遅れてやって来る シリウスAが振り向くとヴィクトール11世が笑顔で言う
「旧世界では良く会っていたのに こっちへ戻ってからは久しぶりだね!えっとー… ポーリエル!」
フォーリエルが衝撃を受けて言う
「フォ…フォーリエルっす」
ヴィクトール11世が笑顔になる テスクローネがシリウスAを見て言う
「お初にお目にかかります 貴方様こそ この新世界の神シリウスA様ですね?」
テスクローネの周囲にプログラムが動く フォーリエルが驚いてシリウスAを見る シリウスAがテスクローネへ不満そうな顔を向けて言う
「こりゃ デス・グローテ 不用意に我の名を呼ぶではない この髪色が見えぬのか?」
シリウスAがフードに少し隠れた髪を見せる テスクローネが気付き苦笑して言う
「身分をお隠しになられる際の黒髪… これは失礼致しました 初めてお会いする我が王の姿に 少々気をせかしてしまいました」
シリウスAが微笑して言う
「分かれば良いのじゃ 貴重なベネテクトの生き残り 我はお前に会えて嬉しいぞ お前の父は優秀なグローテであったわ」
テスクローネが一瞬驚いた後嬉しそうに微笑する フォーリエルがテスクローネの様子に微笑んだ後改めて言う
「それで!?この世界の神様 シリウスAガルバディア国王様が ローレシアの町中で 何やってんだ!?」
シリウスAが衝撃を受けて言う
「それを言うなと申しておったのを お前は聞いておらなかったのか!?」
フォーリエルが笑顔で言う
「そんなダウジングみてーな事やっちまってー 今どき旧世界でもそんな根拠のねー事してる奴 居ねーぜ!?」
シリウスAが衝撃を受ける テスクローネが苦笑する ヴィクトール11世が笑って言う
「あっははっ ほら シリウス!ペーリエルも言ってるじゃない?しかも それをシリウスがやっちゃうだなんて!僕 びっくり!」
シリウスAが鋭い視線で怒り 雷鳴の鞭を振り上げて叫ぶ
「ヴィクトール!我はお前をそんな猫に育てた覚えはあらぬ!さっきのわざと言った言葉も 今更ながらに許せぬのじゃ!そんな行儀の悪い猫にはお仕置きじゃ!そこへ直れ!」
ヴィクトール11世が慌てて叫ぶ
「ニャーッ!シ、シリウス ごめんなさいニャ!シリウスが本気で僕にお仕置きするなんて 僕、思わなかったニャー!」
ヴィクトール11世が逃げる シリウスAが衝撃を受け叫ぶ
「あ!?待たぬかっ!ヴィクトール!」
フォーリエルとテスクローネが呆気に取られている シリウスAが振り返りダウジングの道具をフォーリエルへ押し付けて言う
「フォーリエル!お前はエドの民じゃろう!元祖専売特許じゃ!それを使い必ずや 我の身を探し出すのじゃぞ!」
フォーリエルが衝撃を受けて叫ぶ
「え?…えーっ!?俺がーっ!?」
シリウスAが怒りに燃えて言う
「探し出さなかったら ただではおかぬのじゃ!例え古風な方法であろうとも 死ぬ気でやれば お前の中のエドの力が覚醒されるはずじゃ!ついでに 見つけ出せなかった時は~っ!」
シリウスAがテスクローネを指差して言う
「このデス・グローテを お前の相棒の座から 引き離してやるわ!良いな!?」
フォーリエルが呆気に取られる シリウスAがヴィクトール11世へ向き直って叫ぶ
「ヴィクトール!」
少し離れた場所で見ていたヴィクトール11世が衝撃を受け慌てて逃げて行く シリウスAがヴィクトール11世を見た後 一瞬でヴィクトール11世の後方に現れ踏みつける テスクローネが呆気に取られた後苦笑してフォーリエルへ向いて言う
「シリウスA様は プログラムを完全に遮断して ご自身の本体を探されていたのか… ふふっ それに、あの様子では どうやらキルビーグ国王やルーゼック第二国王 そして、ソルベキアのスファルツ殿 彼らが心配していた ラインツ殿との関わりは無さそうだ」
テスクローネが微笑してフォーリエルを見る フォーリエルが表情を困らせて言う
「そーだな!で、それはそうと… これ どーするんだ?」
フォーリエルがダウジングの道具を構えてみる テスクローネが見ると 間を置いて フォーリエルの持つダウジング道具が反応し 2人が驚く
【 ローゼント城 沐浴室 】
アンネローゼが湯船に漬かっていて 心配そうに考えている
回想
アンネローゼが通信モニターへ向いて言う
『では、ヴェルアロンスライツァーは今 スプローニに居りませんのですか!?』
通信モニターのロキが言う
『…奴は先日 スプローニを去った …俺は貴女の元へ戻ったのだとばかり 思っていたのだが?』
アンネローゼが心配そうに言う
『ローゼントには戻っておりません 先日とは 具体的に何日以前のお話でしょう?移動魔法陣を使用せず アバロンを経由する陸路や ベリオルから船で戻るのであれば 少々時間は掛かりますが… それでも』
ロキが言う
『…最も時間の掛かる 陸路を行ったとしても スプローニからローゼントまでは 丸3日もあれば到着する 何より あの男が貴女の元へ戻るのであれば わざわざ時間の掛かる方法を取るとは考えにくい …奴がスプローニを出たのは 恐らく4日前 俺の前から去ったのと同日であると 推測される』
アンネローゼが言う
『4日も以前に…?それなら もうとっくに…』
アンネローゼが視線を落とす ロキが心配して言う
『…俺はただ 奴は貴女の元へ戻る事だけを 考えているのだと思っていたが もしかしたら 奴は奴なりに考え 行動しているのかもしれん』
アンネローゼがロキへ向く ロキが言う
『…だとすれば 俺にも多少の非はある 奴の捜索に手を貸そう 丁度 …奴を探し出すのに 程良い方法がある』
アンネローゼが心配そうに言う
『ヴェルアロンスライツァーを捜索する 良い方法が…?』
ロキが頷いてモニターを消す アンネローゼが心配そうに消えたモニターを見つめる
回想終了
アンネローゼが心配そうに言う
「ヴェルアロンスライツァー… 貴方は今 何処に…?」
アンネローゼが一瞬間を置いた後 湯船から上がる
【 ? 】
ヴェルアロンスライツァーが目を閉じている
回想
ローゼント城 沐浴室 扉前
ヴェルアロンスライツァーが跪いて居る 室内から声が掛かる
『ヴェルアロンスライツァー そこに居りますか?』
ヴェルアロンスライツァーが敬礼して言う
『はっ!アンネローゼ様っ ヴェルアロンスライツァーは ここに』
沐浴室内
アンネローゼが微笑して言う
『でしたら その様な冷える場所に留まらず こちらへ入らして下さい』
室外からヴェルアロンスライツァーの声が聞こえる
『えっ!?』
アンネローゼが苦笑して言う
『ヴェルアロンスライツァー… 貴方はこのローゼントの王配であると共に 私の夫です いつまでも 私に傅く必要は無いのです』
アンネローゼが微笑んで湯をすくい 視線を出入り口へ向ける
沐浴室の外
ヴェルアロンスライツァーが困惑している 室内からアンネローゼの声が届く
『ですから こちらへ入らして下さい 今日はとても良い湯加減ですよ?この様な寒空の夜には 心まで温まる様です さあ…』
室内から湯の音が聞こえる ヴェルアロンスライツァーが赤面している 間を置いて アンネローゼの声が届く
『ヴェルアロンスライツァー?』
ヴェルアロンスライツァーがハッとして慌てて言う
『は、はいっ!その…っ わ、私は今 それほど身を冷やしてはおりませんのでっ で、ですから ローゼントの湯は 今の私には少々熱いのではとっ 思われますっ し、従いましてっ 私はこのままっ こちらで涼んで居りますので ご心配には及びません!どうかっ アンネローゼ様は ごゆるりと湯をご堪能下さいっ!』
アンネローゼの苦笑と声が聞こえる
『そうですか… では またの機会に…』
ヴェルアロンスライツァーがホッとして汗を拭い 間を置いて寒さに震える
沐浴室内
室外からヴェルアロンスライツァーのくしゃみが聞こえる
『はっくしゅんっ!』
アンネローゼが呆気に取られた後苦笑して言う
『もう…』
アンネローゼがくすくすと笑う
回想終了
猛吹雪の雪の中にヴェルアロンスライツァーが倒れていてうわごとの様に言う
「私は… こちらで 涼んで…」
遠くから犬がヴェルアロンスライツァーを見つけ走って来る 犬のベルグルがヴェルアロンスライツァーの顔を見て何度も吠える
「わん!わん!わん!わん…ッ!」 『ヴェルアロンスライツァー副隊長!起きて下さいッス!そこで眠っちゃ駄目ッスよ!』
ベルグルの声にヴェルアロンスライツァーが寝苦しそうに言う
「申し訳…ありませ… アンネローゼ様… やはり 私も湯を頂き たく…」
ベルグルが困った後一度吠える
「わんっ!」 『ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ベルグルがヴェルアロンスライツァーの頬を舐める ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚いて言う
「あっ!?アンネローゼ…様っ!?」
ヴェルアロンスライツァーの幻覚
アンネローゼが微笑んでヴェルアロンスライツァーの頬にすくったお湯を掛ける ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「アンネローゼ様… 分かりました…」
現実
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「すぐに そちらへ 参ります…」
ベルグルが衝撃を受け慌てて吠える
「わんわんっ!わぉおおんっ!」 『逝っちゃ駄目ッスよ!ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ベルグルが困り間を置いて…
ヴェルアロンスライツァーの幻覚
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーに手を差し伸べ抱きしめる様に首筋へ顔を寄せる ヴェルアロンスライツァーが驚き頬を染めながら アンネローゼにされるがままに待つと…
現実
ヴェルアロンスライツァーが叫ぶ
「ああぁーっ!痛いっ!アンネローゼ様っ!?」
ヴェルアロンスライツァーが目を覚ます ベルグルがヴェルアロンスライツァーの首筋に噛み付いて唸り声を上げている ヴェルアロンスライツァーが慌てて立ち上がり 剣に手を向けて言う
「おのれっ ヴォーガウルフ!…と?違う、貴殿は…?」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られながらベルグルを見て言う
「ベルグル?貴殿であるか?」
ベルグルが嬉しそうに尻尾を振ってひと吠えする
「わんっ!」
ヴェルアロンスライツァーが呆気にとられた後一息吐いて言う
「そうか… 夢で あったのか…」
ヴェルアロンスライツァーがベルグルに噛まれた首筋をなでつつ ベルグルの首に付いている小樽に気付いて言う
「うん?それは… ベルグル?貴殿は もしや 私を助けに?」
ベルグルが嬉しそうに吠えて近くに来る ヴェルアロンスライツァーが屈んで小樽を取って言う
「かたじけない ベルグル 貴殿は私の命の恩人… いや、恩犬だな?」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑する ベルグルが尻尾を振って吠える ヴェルアロンスライツァーが小樽の栓を抜き 中身のブランデーをぐいっと飲んで言う
「ぷはーっ!」
ベルグルが衝撃を受け心配そうに鳴く
「わっ… わふっ!?」 『ヴェ、ヴェルアロンスライツァー副隊長!?』
ヴェルアロンスライツァーが顔を上げ赤い顔で言う
「この酒は スプローニのブランデー…っ ロキか…?ロキ… ロキめーっ!うおおおーーっ!」
ヴェルアロンスライツァーが叫ぶ ベルグルが衝撃を受けハッとして思う
『あーっ!まずいッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長は 実は アルコールにすっごく弱いッスー!』
ヴェルアロンスライツァーが酔った勢いのままに気合を入れて言う
「ロキーっ!この私に ガルバディアの力を持って来いだとーっ!このヴェルアロンスライツァーを!王を守る剣である私を!奴は 何と思っているのか!?」
ベルグルが慌てて吠える
「わんっわんっ わんっ!」
ヴェルアロンスライツァーが他方を向く その場所にロキの幻影が見え ヴェルアロンスライツァーをあざけてニヤリと笑む ヴェルアロンスライツァーが怒って叫ぶ
「おのれー!ロキー!貴殿という男はっ!いつもいつも 平静を装いつつ 本当はその様に私をあざけて居ったのかっ!だが!私とて分かっている!貴殿は!私が 尻尾を巻いてローゼントへ逃げ帰ると思って居たのだろう!だが違う!何を隠そう この私は ヴェルアロンスライツァーなのだ!」
ベルグルが慌てて吠える
「わんわんっ!わんわんっ!」 『ヴェルアロンスライツァー副隊長!ヴェルアロンスライツァー副隊長!とりあえず 落ち着いて下さいッス!』
ヴェルアロンスライツァーが嬉しそうにベルグルへ向いて言う
「おおっ!貴殿もそう思うか ベルグル!そうだ!奴は私の!このヴェルアロンスライツァーの力を見縊(みくび)っているのだ!」
ベルグルが衝撃を受け慌てて吠える
「わんっわんっ!わんわんっ!」 『そんな事言ってないッス!それに!そんな事ないッスよ!ヴェルアロンスライツァー副隊長!ロキ隊長はッスね!』
回想
【 スプローニ城 地下牢 】
牢の前にロキがやって来る ベルグルがハッとして格子にしがみついて言う
『ロキ隊長!俺、ちゃんと反省したッス!もう 勝手に面会許可書を出したりしないッス!何をやるにもちゃーんと ロキ隊長の言う通りにするッスよー!』
ロキがベルグルを見て 間を置いて言う
『…そうか ならば 今すぐに犬の姿へ戻れ』
ベルグルが衝撃を受ける ロキが言う
『…どうした?俺の言う通りにするのだろう?』
ベルグルが表情を悲しませて言う
『うー… そ、それはそうッス… け、けどっ 犬の姿じゃ 俺、第二国王様は出来ないッスよ!?』
ロキが言う
『…必要ない 前にも言ったはずだ そこで反省した後は 俺の飼い犬へ戻れと』
ベルグルが衝撃を受け 悲しそうに視線を落とす ロキが言う
『…早くしろ』
ベルグルがロキを見上げて言う
『で、でも… 俺もっとロキ隊長と話がしたいッス 俺、現実世界では 初めて人の姿になったッスよ?だからっ …ロキ隊長にはっ 俺っ 今までのお礼を もっとちゃんと!たくさん言いたいッス!他にもっ 犬の俺に優しくしてくれた スプローニの皆にもッスね!?』
ロキが言う
『…礼は不要だ 卿が先住民族である事は 多くの民に知られた そして、スプローニの民は 礼など言われずとも 犬からの気持ちは分かるものだ …諸卿 犬は特に意思表示が激しいからな』
ベルグルが一瞬呆気に取られた後言う
『う… な、なら ロキ隊長!犬に戻る前に 俺、一つだけお願いッス!ロキ隊長は ヴェルアロンスライツァー副隊長の気持ちも 分かる様に もっと頑張って欲しいッス!俺は人の姿の時も犬の姿の時も いっつも心配なんッスよ!?』
ベルグルがロキを見詰める ロキが無表情に居る ベルグルが表情を落としてから間を置いて仕方なく犬の姿に戻る 犬のベルグルが悲しそうな声を出して落ち込む 牢の鍵が開けられる音がして ベルグルの首に小樽が付けられる ベルグルが驚いて顔を上げる ロキがベルグルの顔を見て言う
『…移動魔法陣の警備兵へ確認を取った 奴は ローゼントではなく ガルバディアへ向かおうとしたらしい』
ベルグルが驚く ロキが言う
『…しかし、現在ガルバディアは 移動魔法陣による移動を受け付けていない それを聞いた奴はベネテクトへと向かった ガルバディアへ向かうにはベネテクトから北上するのが最短ルート だが、ベネテクトの王ベーネット殿へ確認をした所 この季節にベネテクトからガルバディアへ向かう事は 自殺行為だと言う それでも… 俺の知る奴は その道を向かう筈だ』
ベルグルが呆気に取られて口を開けてロキを見ている ロキが立ち上がって言う
『…王である俺の言葉を 奴は真に受け ガルバディアの力を得ようと向かったのだろう そして、奴はヴェルアロンスライツァーだ 一度、王の命令を耳にした以上 戻れと言っても素直に戻っては来ない …だから 人ではなく犬である卿が行き 連れ戻して来い』
ベルグルが呆気に取られていた状態から 気を引き締め了解を示してひと吠えする ロキが頷き立ち去ろうとして 止まり言う
『…それと …俺はこれでも 奴の気持ち… 考えを分かろうと 努力しているつもりだ… 心配するなと言っても無駄だろうが… これ以上 頑張る事は難しい …な?』
ロキがベルグルを見下ろして 軽く苦笑する ベルグルが呆気に取られた後 尻尾を振って喜んで吠える
『わんっ!』
回想終了
ベルグルが吠える
「わんわんっ!わんっ!わんわんっ!」 『だからッスね!ロキ隊長は ヴェルアロンスライツァー副隊長の事を!』
ヴェルアロンスライツァーが残りのブランデーを飲み干して言う
「ぷっはー…」
ベルグルが衝撃を受けて吠える
「…わっ!?わんぅ~?」 『…って聞いてたッスか!?ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ヴェルアロンスライツァーが小樽を投げ捨てて言う
「よーし分かった!良いだろう!そこまで私を馬鹿にするというのであれば!このヴェルアロンスライツァー!見事!ガルバディアの力を持ち帰ってくれようぞ!」
ベルグルが衝撃を受けて思う
『駄目ッス!やっぱ犬の姿じゃ 何を言っても無駄ッス!って言うより チョー正反対に伝わってるッスよーっ!ロキ隊長は何時も分かってくれるのに 何でヴェルアロンスライツァー副隊長には 全然伝わらないッスかっ!?』
ヴェルアロンスライツァーが歩き出す ベルグルが衝撃を受け慌てて近くへ行って何度も吠える
『ヴェルアロンスライツァー副隊長!ガルバディアへ向かっちゃ駄目ッス!スプローニへ帰るッスよ!ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ヴェルアロンスライツァーが歩きながら言う
「うむ!分かった!貴殿も応援してくれるのだなベルグル!では、共に向かい!あのロキのど肝を抜いてくれようぞ!」
ベルグルが衝撃を受け困った様子で何度も鳴く
『違うッス!二人じゃなくって 1人と1匹ッス!…って 違ったッス そうじゃなくってッスね!』
ベルグルがヴェルアロンスライツァーのマントに噛み付き後方へ引いて思う
『行っちゃ駄目ッスってばーッスー!』
ヴェルアロンスライツァーが立ち止まり振り返って言う
「なっ!?何をするベルグル!?…まさか貴殿はっ 私がガルバディアへ向かう事を…!?…そうかっ!この私よりも 飼い主であるロキの味方をすると言うのだなぁあーっ!?ならば構わぬ!私は1人で行くのだ!離せ!離さぬか!ベルグル!」
ベルグルを引きづりながら ヴェルアロンスライツァーが進む ベルグルが困って思う
『うーっ 駄目ッス このままじゃいつまで経っても ヴェルアロンスライツァー副隊長を連れ戻せないッス!こんな時 ロキ隊長ならどうするッスか!?きっと今のヴェルアロンスライツァー副隊長にはッスね!?言葉が通じても きっと駄目ッス!聞いてくれないッスよ!絶対ガルバディアへ行こうとするッス!さっきは 俺が来た事に喜んでくれたのにッスー!』
ベルグルがハッとして マントを離す ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚き転びそうになるのを堪えて言う
「のわっ ととととと…っ!?」
ヴェルアロンスライツァーが転びかけていた上体を正すと 自分の先でベルグルが振り返って嬉しそうに吠える ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られ疑問する ベルグルが再び嬉しそうに吠えて先行して走って行く ヴェルアロンスライツァーが微笑んで言う
「…おおっ!ベルグル!貴殿もついに分かってくれたか!?そうだ!それで良い!よーし!では その調子で ガルバディアへの道案内を頼むぞ!」
ヴェルアロンスライツァーがベルグルを追って歩き出す ベルグルが嬉しそうに立ち止まって振り返り思う
『こうやって ガルバディアへの道案内をしてるフリをしながら 少しずつベネテクトへ向かうッスよ!後住民族の人は みーんな方向音痴ッス!感覚だけじゃ どっちが北だか 分らないんッス!だから!ぐるぐる回ってゆっくり南へ向かうっすよ!』
ベルグルの道案内にヴェルアロンスライツァーが続く ベルグルが一度視線を落として思う
『ヴェルアロンスライツァー副隊長… ごめんなさいッス 俺、後でちゃーんと謝るッス!だから、今回だけは許して欲しいッス!』
ベルグルが俯いていた顔を上げ 再び嬉しそうに吠えて先行して行く ヴェルアロンスライツァーが微笑みながら追って言う
「ベルグル 待ってくれ!我ら後住民族の二本足では 貴殿の様に速くは向かえんのだ!」
ベルグルが嬉しそうにぐるぐる駆け回りながら進んで行く ヴェルアロンスライツァーがまっすぐ追って行く
【 ローレシア城 客室 】
キルビーグが言う
「そうでありましたか… シリウス国王はプログラムの類を止め ご自身の御身を探されておられたと」
ヴィクトール11世が電磁鞭に締められ苦笑の表情で高級絨毯の上に倒れており その上にシリウスAがボジョレーの入ったグラスを回しながらのんびり言う
「そうじゃ~ ダウジングに余計な電磁波は邪魔になりよるからのぉ?…とは言え その間に旧世界では その様な事が起き 共に それらを知らせようと 使者まで来て居ったとは …なら もっと早ようから 我の体を捜すのは 元祖専売特許に任せておけば良かったかのぅ?」
キルビーグが苦笑する ルーゼックが呆れて言う
「いや… そうはなされずで結構だった これ以上… ローレシアに 温泉は不要だっ!」
ルーゼックが窓の外を指差す その先で温泉の柱が立ち昇る シリウスAが苦笑して言う
「ふむぅ… またハズレの温泉を探し当ておったか… とは言え これで あのフォーリエルのダウジング的中率は120%じゃぁ?流石、元祖は違いよるのぉ?」
シリウスAが笑顔になる ルーゼックが怒って言う
「であるからにして!温泉を掘り当てるダウジングは止めさせよと申して居るのだ!ローレシアの民は 温泉を好まぬ!何故なら あの硫黄の匂いが臭くて堪らんと 今ローレシアは大騒ぎだ!」
シリウスAが笑顔で言う
「そう言えば ローレシアの土地は温泉が良く出る土地でありながら その民が匂いを嫌って 偶然に見つけおっても すぐに埋めてしまうのじゃったのぉ?折角の自然の恵みであると言うのに もったいない話じゃぁ?」
ルーゼックが怒りを押し堪える キルビーグが苦笑した後言う
「シリウス国王 我らローレシアの王は この数百年 かのローレシア王ラグハーンが封じたと言う シリウス様の御神体を 探しておりました しかし…」
シリウスAが言う
「知っておる 未だ 手がかりさえも 見出せてはおらぬそうじゃな?」
キルビーグが頭を下げて言う
「謝罪の言葉もございません…」
シリウスAが言う
「謝罪は不要じゃ キルビーグ 我はお前たちローレシアの王はもちろん ラグハーンの事でさえ 少しも悪くは思って居らぬのじゃ」
キルビーグとルーゼックが驚いて キルビーグが言う
「なんと…?いや、シリウス国王 お言葉はありがたくは御座いますが ラグハーンはシリウス国王の御信頼を踏みにじった者です その罪は ローレシアの王である我らも 背負うべき事であると」
シリウスAが言う
「罪などはあらぬ 従って お前たちが背負うものもあらぬのじゃ」
キルビーグが呆気に取られてシリウスAを見る シリウスAが窓の外を見て言う
「我はローレシアの王を信じる事にしたのじゃ 現代のお前たちは勿論 それはラグハーンとて同じ 我は 我の民であるお前たちを皆 信じておる 我らは皆… 仲間なのじゃ 疑いの気持ちは 真実さえも捻じ曲げる 我は それを思い出したのじゃ もう二度と忘れぬ」
キルビーグが呆気に取られていた状態からゆっくりと微笑む 窓の外に温泉の柱が上がる ルーゼックが衝撃を受ける シリウスAが笑顔で言う
「おおっ!また 掘り当ておったわ!この調子で いつか我の身も掘り当ててくれよるかのぉ~?」
ルーゼックが怒って叫ぶ
「その前に このローレシアが 温泉だらけになってしまうわ!馬鹿者ーっ!」
【 アバロン城 玉座の間 】
ヘクターが通路から顔を出して言う
「デスー?行くぜー?」
デス2人がヘクターへ向いて言う
「「ヘクター?」何処へ行く気だ?」
2人の問いに 玉座の間を後にしようとしていたヘクターが振り返って言う
「何処って?ローレシアにシリウス国王が居るんだろ?丁度 旧ローレシアのリジューネ女帝も居るんだし あのテスクローネも居るんだ なら 俺はこの際 皆、ローレシアに集まっちまった方が 早えーんじゃねーかと思ってよ?」
ヘクターが笑顔になる 皆が衝撃を受け 家臣たちが慌てて駆け寄って来て 家臣Aが言う
「なっ 何を申されるのです ヘクター陛下!?」
家臣Bが言う
「そうです!折角、他国の皆が 我らアバロンへ集結しようとしております この時に!」
家臣Cが言う
「そのアバロンの王であられる ヘクター陛下がローレシアへ向かおうなどと!」
ヘクターが呆気に取られてから苦笑して言う
「あ?うーん けど…?俺 もう皆に 連絡しちまったぜ?」
家臣たちが悲鳴を上げる
「「「なんですとーっ!?」」」
家臣たちがデス2人を見る 2人が呆気に取られて顔を見合わせ互いに顔を横に振る ヘクターが微笑して言う
「ああ、お前らはプログラムとかなんとかで 忙しそうだったからよ?自分の部屋で兄貴の通信機に連絡したついでに 皆にも連絡したんだ!」
デス2人が衝撃を受けデス2ndが言う
「ヘクターが 通信を行っていたのか!?その様な記録は…!?」
デス2ndが周囲にプログラムを発生させる デス1stが俯いて言う
「王の部屋には ラインツ国王より以前にヴィクトール11世国王が設置した ガルバディア、ベネテクトへの直通の通信機がある… とは言え 直通と言うのは単に記録されているコードが両国の王への直通であると言うだけで 他の用途に使用する事も可能だ それを用いてデネシアに居るレクターの通信機へ連絡を行い その際に… 他の連絡先コードでも聞いたのか?」
ヘクターが笑顔で言う
「いや?俺は通信機の使い方は あんま分かんねーから 兄貴が変なプログラムで 全国の王様直通にしてくれたんだ!すげー便利な通信機になったぜ!?」
デス2人が表情を顰め デス2ndが言う
「あいつめ…っ 余計な事をっ」
デス1stが言う
「これでは 今後もヘクターが 我らへの確認もなしに直感のまま 他国の王とのやり取りを行うと言う可能性が…」
ヘクターが表情を困らせて言う
「けどよー?流石兄貴って言うか… 困るんだよなぁ~?重要な話をしてる途中で 通信が他の誰とも知らねー奴に 切り替わっちまったりするんだよ?まぁ… 少しすれば戻るから 良いんだけどよ?」
デス2人が衝撃を受け怒って言う
「「二度と使うな!」」
ヘクターが疑問して言う
「あ?何で?」
【 雪山 】
ベルグルが嬉しそうに駆け回りながら進み 振り返って吠える ヴェルアロンスライツァーが歩いて来て立ち止まり息を切らして言う
「はぁ…はぁ… なんの… これしき…っ」
ヴェルアロンスライツァーが再び歩き始める ベルグルが首を傾げて不思議そうな声を出して思う
『ベネテクトへ向かってる事を 気付かれたらヤバイッスと思って ちょっと大回りし過ぎたッスかね?ヴェルアロンスライツァー副隊長の体力なら 大丈夫だと思ったんッスけど?』
ヴェルアロンスライツァーがベルグルに近づいて来ているのを確認したベルグルが わざと元気に吠えて進む ヴェルアロンスライツァーが顔を上げ ベルグルを見て苦笑して歩みを続けるが ふと立ち止まる ベルグルが駆け回ってから振り返り目を回して思う
『ととと…ッス?俺もちょっと張り切り過ぎたッスか?なんか急に目が回ったッスよ…?』
ベルグルが顔を左右に振って ヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーがハッと顔を上げて叫ぶ
「王…?私を呼ぶ王は誰かっ!?」
ベルグルが衝撃を受け 心配そうにヴェルアロンスライツァーを見て思う
『ヴェ、ヴェルアロンスライツァー副隊長!?』
ヴェルアロンスライツァーが振り返って言う
「答えよ!このヴェルアロンスライツァーを呼ぶのは 何処の王であるのかっ!?」
ヴェルアロンスライツァーが歩き出す ベルグルが衝撃を受け慌てて吠える
「わんわんっ!?わんっ!…」 『ヴェルアロンスライツァー副隊長!?何処に行くッスか!?そっちはガルバディアでも ベネテクトでもないッスよ!?ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ヴェルアロンスライツァーがずんずんと歩いて行く ベルグルが急いで追い掛けヴェルアロンスライツァーのマントに噛み付いて引きとめようとするが ヴェルアロンスライツァーの力が勝って引きずられて行く ベルグルが思う
『ヴェルアロンスライツァー副隊長!?まだ酔ってるッスか!?ロキ隊長の声でも聞こえてるッスかー!?』
ヴェルアロンスライツァーが歩きながら言う
「うむ!そこまで言うのであれば!このヴェルアロンスライツァー!何処までも貴殿の声に従おうぞ!」
ベルグルが衝撃を受け慌てて思う
『ま、まさかっ 死神の声でも聞こえちゃってるッスか!?やばいッス!それチョーやばいッスよー!ヴェルアロンスライツァー副隊長!しっかりして下さいッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ベルグルがヴェルアロンスライツァーの行く先を見て衝撃を受けて思う
『あーっ!やっぱりッス!ストップ!!ストップッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長!目の前の岩壁が見えないッスかっ!?』
ヴェルアロンスライツァーが岩壁へ向かい 正面から当たり向かう ベルグルがきつく目を閉じて思う
『激突しちゃうッスーーっ!!』
ベルグルが4足で突っ張るがヴェルアロンスライツァーがそのまま進む 一瞬の後 ベルグルが目を閉じたまま 空間が変わった事に気付き疑問して恐る恐る目を開いて思う
『…あ、あれ?音が…?匂いも?変わった…ッス?』
ベルグルが呆気に取られる ヴェルアロンスライツァーがハッとして周囲を見渡して言う
「ここは…?」
ヴェルアロンスライツァーが後ろに居るベルグルを振り返って見て疑問してから 微笑んで言う
「おおっ ベルグル 私を吹雪から守るため 洞窟へ案内してくれたのか!?うむ、そうだな そう言えばベネテクトを出てから 一度も休息を取っていなかった ここならば 暖を取り休む事も出来よう」
ベルグルが衝撃を受けて思う
『ヴェルアロンスライツァー副隊長…?自分でここへ来た事を 覚えていないッスか…?』
ベルグルが首を傾げる ヴェルアロンスライツァーがベルグルの様子に疑問した後 苦笑して言う
「うん?…ああ、貴殿は大丈夫であるかもしれないが 私はもうへとへとなのだ 良く覚えていないが 貴殿を追い 随分と長く歩いていた様だ」
ベルグルが衝撃を受ける ヴェルアロンスライツァーが微笑んで言う
「アルコールのお陰で記憶は余りはっきりしないが これほど疲労するほどに歩いたと言う事は ガルバディアはもう直ぐであろう?」
ベルグルが表情を引きつらせて思う
『は… はいッス… “ベネテクトは” もう直ぐそこッス…』
ベルグルがすまなそうに顔を下げて鳴く
「クゥ~ン…」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「ならば直ぐに向かうべきであるか?はは…っ まぁ、はやる気持ちは分かるが ガルバディアへ到着後は 休んでも居られまい?何しろあの ガルバディア国王と議論せねばならぬのだ 従って 一度 ここで息を整えておこう」
ヴェルアロンスライツァーが洞窟の奥を見ながら言う
「…と、その前に 何やらあちらが気になる 休むからには 安全の確認が第一ではあるが… 何と言うか…?この私が?どうしても行かねばならぬ様な この感覚は…?」
ヴェルアロンスライツァーが洞窟の奥へ向かう ベルグルが衝撃を受け慌てて追い掛けて思う
『えーっ!?もしかして!まだ酔ってたんッスか!?ヴェルアロンスライツァー副隊長!その招き声には 従っちゃ駄目ッスよー!?』
ベルグルが慌てて追った先 ヴェルアロンスライツァーが立ち止まっていて ベルグルが焦って思う
『おわーっ!』
ベルグルが慌てて止まろうとするが止まりきれず ヴェルアロンスライツァーの横を過ぎて止まるベルグルがホッと息を吐いて思う
『あ… 危なかったッス …って!?』
ベルグルが慌てて顔を上げて思う
『も、もしかして!?ヴェルアロンスライツァー副隊長を追い越して 俺があの世へ行っちゃったッスかっ!?』
ベルグルの目の前に骸骨がある ベルグルが衝撃を受け驚いて鳴き叫ぶ
「わおぉおおおっ!?」 『ぎゃぁあーッスーっ!やっぱりッスー!ここは間違いなく あの世ッスよー!』
ベルグルがおびえている横をヴェルアロンスライツァーがゆっくり歩いて来て 跪いて言う
「私は ヴェルアロンスライツァー ローゼント国の女王アンネローゼ様の剣にして スプローニ国の王ロキとの約束を守る剣 その私へ声を掛けられた貴方様は 一体どちらの王であられるのか?」
ベルグルがハッと気を取り直してヴェルアロンスライツァーを見てから 改めて骸骨を見る 骸骨は王冠を被り立派な甲冑を着た状態で 大剣を握り締めている ベルグルが骸骨の様子に呆気に取られた後 匂いを確認する ヴェルアロンスライツァーが骸骨の手に持たれている紙に気付いて言う
「うん?これは…?」
ベルグルがヴェルアロンスライツァーを見上げる ヴェルアロンスライツァーがそっと紙を取り広げて言う
「手紙…?」
ヴェルアロンスライツァーが手紙を目視で読む ベルグルが首をかしげ疑問の鳴き声を上げる ヴェルアロンスライツァーが気付き苦笑して言う
「ああ、すまん 貴殿にも見せよう ベルグル」
ヴェルアロンスライツァーが地面に手紙を置く ベルグルが喜んで尻尾を振ってから手紙を見る
【 ローレシア城 玉座の間 】
ヘクターが首を傾げて言う
「あ?おっかしーなぁ?確かに ベネテクトのバーネットと ツヴァイザーのレイト スプローニのロキにも 『皆でローレシアに集まろうぜ』 って言ったんだけどなぁ?」
玉座に座るキルビーグとルーゼックを前に ヘクターが続けて言う
「旧世界の王を俺の親父が半殺しにしちまったせいで 旧世界もこの世界もやべーんだって …聞こえなかったのかな?」
ヘクターが首をかしげる ルーゼックが怒って叫ぶ
「であるからにして!ラインツ元国王の件は伏せるようにと話し合って置きながら!何故!貴様はそれを わざわざ他国の王へ申し伝えてしまうのか!?馬鹿者っ!」
ヘクターの近くにいるアンネローゼが驚いて言う
「ラインツ元国王殿下がっ 旧世界の王を!?それは…?確かなお話なのですか?ヘクター国王?」
ヘクターがアンネローゼの言葉に疑問し アンネローゼへ向き直って言う
「確かな話しか?って…?あんたにも話しただろ?あの時の通信で?」
アンネローゼが顔を左右に振って言う
「いいえ、伺っておりません …と申しますより ヘクター国王からの通信は とても状態が悪く 時折途切れては繋がりを繰り返しておりました為、私が確認出来ましたのは こちらのローレシアへ皆で集まろうと言う そちらのお言葉と…」
ヘクターが呆気に取られて言う
「あぁ?」
デス2人が呆れ デス2ndが言う
「そんな様子では ベネテクトやツヴァイザー、スプローニの者たちが ここに来ない理由も分かったな?」
ヘクターが困った様子で頭を掻きながら言う
「けどよー?あんた言ったじゃねーか?俺が親父の件は本当に悪いって言ったら 『今は過ぎた事を悔やむより これからの事を考えるべきだ 力及ばずとて 私にも出来る事を探そう』ってよぉ?俺、あんたは意外と強気で 頼りになる女だったんだなって?見直してたんだぜ?」
皆の視線がアンネローゼへ向く アンネローゼが驚いた様子で言う
「わ…っ 私がその様な事を!?いいえ、申しておりませんっ 私は現在行方不明の我が夫 ヴェルアロンスライツァーをアバロンで見掛けられませんでしたか?とお伺いした所 ヘクター国王が 『おう!俺も探すぜ!』と仰って下さり とても心強く思っておりましたのに…」
ルーゼックとキルビーグが顔を見合わせる デス1stが言う
「なるほど… あのレクターのプログラムのせいで ヘクターの通信が他者へと繋がり その何処の誰とも分からぬ者との会話の後 アンネローゼ女王の通信へ戻ったと…」
デス2ndがデス1stへ向いて言う
「それでは その何処の誰とも分からぬ “強気で頼りになる女” には この世界と旧世界の危機が知られてしまったのだな?」
キルビーグが言う
「それだけではなく もしや ベネテクトやその他の国へ送った通信も 他の者へ漏洩してしまった可能性があると言う事ではなかろうか?とりあえず まずはローレシアからそれらの3国へ向け 改めて通信を送ろう」
デス1stがヘクターへ向いて言う
「ヘクター?因みに その女の声に聞き覚えは?アンネローゼ女王に似ていたのか?」
皆の視線がヘクターへ向く ヘクターが一瞬呆気に取られてから困った様子で言う
「あー… いや?良く考えたら 聞いた事のねー声だったかなぁ?けど、女の声だって事は分かったもんだから… 俺もまさか 通信先が他の奴に変わっちまうだなんて その時は考えもしなかったからよ?」
ヘクターがすまなそうな表情を見せる ルーゼックが言う
「ふむ… 確かに その様なおかしな通信機は 何らかの問題の元にもなりよろう 今後は二度とこの様な事が起こらぬよう その通信機は処分しておくが良い」
ヘクターが言う
「あ?いや 処分じゃなくて 修理すれば良いんだろ?なぁ?デス?」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stが表情を顰めて言う
「…いや、あのレクターが 一度手に掛けた物を修理すると言うのは御免だ 正直 完全な通常の通信機の状態へと戻せる自信がない」
ヘクターが言う
「あぁ?何だよデス 最近のお前は随分弱気じゃねーか?」
デス1stが言う
「慎重だと言ってくれ 夢の世界とは違い 現在のこの現実世界には 我らの父であるシリウス国王を初めとする 旧世界からやって来た 初代ベネテクトのデス・グローテ そして、我らの敵 異世界の王たちが あらゆるプログラムを用いている 今回の通信機の件は 確かにレクターの行いが元凶であろうが どんな些細な隙にも 異世界の王たちは入り込んで来る筈だ」
アンネローゼが言う
「異世界の…王?」
ヘクターがアンネローゼへ向いて言う
「ああ、皆がそろってから ちゃんと説明するつもりだったんだけどよ?」
ローレシアの大臣がキルビーグへ連絡を伝える キルビーグが頷いてから皆へ言う
「ヘクター国王 ここに居らぬベネテクトの王とツヴァイザーの女王なのだが 彼らは現在 スプローニへ集合しておるとの事だ」
皆がキルビーグへ向き ルーゼックが言う
「スプローニへ?何故スプローニに…?ベネテクトへ集まるのならまだしも」
ルーゼックがヘクターへ向く ヘクターが一瞬呆気に取られてから言う
「俺はスプローニの国名に関しては 通信では一言も言ってねーぜ?」
キルビーグが苦笑して言う
「更に、いつの間にやら このローレシアの客室に居られたシリウス国王を初め リジューネ女帝 更にはフォーリエルとテスクローネも向かっておったらしい」
ルーゼックが衝撃を受け叫ぶ
「なにぃいーーっ!?」
ヘクターが困った表情で言う
「あちゃぁ~?何だよ?その3人が居るからって ローレシアにしたのに… なぁ?」
キルビーグとルーゼックが衝撃を受ける アンネローゼが苦笑する デス2人が周囲にプログラムを発生させていて衝撃を受け デス1stがあわてて言う
「そっ!?それらの者が スプローニへ向かった理由が分かったっ!彼らは…っ!」
【 スプローニ城 玉座の間 】
ロキが言う
「…俺は確かに卿へ 『この世界で最強の力 ガルバディアの力でも持ち帰って来い』 と …そう言ったが…」
ヴェルアロンスライツァーが満足そうに笑んで言う
「御意!私は スプローニ王との約束を守る剣!ヴェルアロンスライツァースプローニガイントロブロワイヤーでもある!スプローニの第二国王の王位を頂いた際 共に授かったこの名の通り 私は今!スプローニの王との約束を守り これを持ち帰った!見よ!これぞ 紛う事なき 『最強の力!ガルバディアの力』 である!」
ヴェルアロンスライツァーがガルバディアの生態維持装置を示す ロキが焦って叫ぶ
「最強過ぎるだろーーっ!」
シリウスAが笑顔で言う
「まさか ローゼントの王配で ついでにスプローニの第二国王である者が 我の本体を見つけてくれよるとはのぉ?時代は変わったものじゃ~?」
シリウスAが軽く首を傾げて考えながら言う
「これからの時代は ローレシアでもアバロンでもなく… ローゼントかスプローニ辺りかのぉ?」
ロキが衝撃を受けまんざらでもない様子でシリウスAを見る テスクローネが手紙を読んでいて フォーリエルがそれを覗き込んで言う
「『かの者は 私の答えを聞くと その後様々な者へと化けては シリウス様の御神体を差し出させようと図った 私は これ以上ローレシアにシリウス様の御神体を置く事へ危惧を覚え ガルバディアへ シリウス様の元へ御神体をお届けする事にした だが、もはや ローレシアだけではなく 他の誰一人として信用の置ける者は居ない 私は1人 人知れず シリウス様の御神体を隠し持つと共に ガルバディアへの道を デネシアを迂回する形で向かった しかし その道中…』」
シリウスAが表情を落として言う
「ラグハーンはローレシアの王であると共に アバロンの大剣使いだったのじゃ あの平和な世で あやつに敵う者など居らなかった ラグハーンの判断は間違いではあらなかったのじゃ しかし、我の猫が… 我が悪かったのじゃ 我はヴィクトールを守れなかった その上我は取り乱しておったとはいえ ヴィクトールの身に 操りのプログラムを実行されておった事にすら 気付けなかったのじゃな…」
フォーリエルがシリウスAを見る テスクローネが手紙を見たまま言う
「『雪山を進む私の前に現れたヴィクトール様は その青き瞳を 真っ赤に染められ 私へ襲い掛かられた 私は何度も言葉を掛けたが やはり 動物であるヴィクトール様に 人である私の言葉は届かないのか 何故私を襲うのか 私に敵意は無いと伝え続けたが とうとう私は ヴィクトール様を斬り付け シリウス様の大切な猫の その御命を奪ってしまった』」
シリウスAが目を閉じて言う
「じゃが、操りのプログラムは その者の命が途絶えようとも 僅かながら身を操る事が出来よるのじゃ ヴィクトールの死を確認し ガルバディアへ向かおうとしたラグハーンは それに背後から襲われてしもうた… 我はずっと愛嬌を持たせる為に あれを猫と呼んでおったが ヴィクトールはこの世界でも既に絶滅した 大ライオンの生き残り 人の命を奪う事など その片腕だけでも十分なのじゃ」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「それでもかの王は 傷付いた己の身を叱咤し シリウス国王の体が封じられた機械を担ぎ あの洞窟までの道を進んだ後 そこで命を失った… その上 息絶えた後も」
シリウスAが目を閉じ 生態維持装置へ手を置いて言う
「ラグハーンはアバロンの力で 我を守り続けてくれおった… 今日この日の為 誰にも我の本体の在りかが分からぬ様 隠し通してくれよったのじゃ やはり… アバロンの力は… 幻想を現実とする力は凄いのぉ」
シリウスAが笑顔で言う
「やっぱり 我らガルバディアの相棒は アバロンじゃな!」
ロキが衝撃を受け顔をそらす シリウスAが生命維持装置に手を乗せた状態で目を瞑り周囲に軽くプログラムを現してから目を開き微笑して言う
「うむ、状態も良好じゃ これなら直ぐにでも戻れそうじゃ」
バーネットが腕組みをしていて言う
「本体にさえ戻っちまえば 新旧両世界を守る プログラムが出来やがるんだろ?親父が早くしろって伝えやがれってよ 直接言やぁ良いものを わざわざ俺へ通信を送って来やがったぜぇ?」
シリウスAがバーネットへ向いて言う
「わざわざ人伝にしよるなど あやつはプログラマーとしても 人としてもまだまだじゃなぁ?それとも 我へ通信を繋ぐ事がそんなに恐ろしかったのかのぉ?」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「シリウスがいじめるからだよ~ バーネット1世は昔からシリウスに暇つぶしにいじめられてたから その苦い思い出が 300年振りに戻っちゃったんじゃないの?」
ヴィクトールが衝撃を受けバーネットへ向いて慌てて言う
「バーネット!?今のホント!?バーネット1世様は 300年も前から生きてたって事ぉっ!?って事は 今は300歳!?」
バーネットがバツの悪そうに言う
「んあぁ~ 正確に言いやがれば314年前からだぜぇ でもって 中身はまぁそうだが 体はそんな歳じゃねぇよ 何回か入れ替えてやがるって言ってやがったからなぁ?大体見た目だって てめぇの父親より 1、2歳若ぇだろ?」
ヴィクトールが泣きそうな表情で言う
「そ、それじゃ バーネットも何回か入れ替わっちゃってるのぉ?だとしたらっ バーネットは僕以外の猫とだって 遊んじゃってたりしちゃってたって事だよねっ!?酷いよ!バーネット!僕以外の猫と遊んでたなんて!僕はっ!僕は バーネットの何人目… 何匹目の猫なのぉおお~っ!?」
ヴィクトールが大泣きする バーネットが衝撃を受け慌てて言う
「だぁああ!待て!待ちやがれっ!早とちりして泣きやがるんじゃねぇえよっ!ちったぁ考えやがれ!てめぇは 何代目のヴィクトールで居やがるんだ!?」
ヴィクトールが泣き止んで言う
「…え~?何代目…13代目」
バーネットが呆れた様子で言う
「でぇ…?てめぇの先代ヴィクトールは 何処のどいつだぁ?」
ヴィクトールが微笑して言う
「僕の先代はヴィクトール12世!僕の父上だ …ついでに11世の祖父上!」
ヴィクトールがヴィクトール11世を指差す ヴィクトール11世が気付いた後笑顔になる バーネットが溜息を吐いて言う
「はぁ… なら分かりやがるだろぉ?」
ヴィクトールが不思議そうに首を傾げる バーネットが衝撃を受け表情を困らせ説明する
「だぁっ!?…つまり、俺の親父 バーネット1世は314年前に作られやがったが 相棒としてヴィクトール12世を貰いやがったのは53年前だぁ ついでに 親父が俺を作りやがったのは 今から34年前なんだよ てめぇが生まれやがった1年後だ」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「猫って呼ばれるけど 人である僕らの祖先ヴィクトール1世が シリウスに拾われたのが今から500年位前だからね それまでの間シリウスは大ライオンのヴィクトールを失って ついでにローレシアの民から ラグハーンがシリウスを裏切って体を封じちゃったんだって聞いて ショックで引き篭もっちゃってたんだよ」
シリウスAが言う
「あの大ライオンは 新世界の王であったシリウスBから貰ろうた 大切な贈り物だったのじゃ 我はそのヴィクトールを可愛がりながら 良くBと通信をしておった じゃがそのヴィクトールが 新世界の… それも 我が一番に信頼しておったラグハーンの剣に斬られておった事で 我はすっかり取り乱してしもうた… 我も若かったものじゃなぁ」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「若かったって言っても その当時でも シリウスは軽く800歳を越えてたらしいけどね?」
一瞬場が凍る
シリウスAが言う
「さて、これで全ての準備が整ったのじゃ」
皆の視線がシリウスAの足元に向く その場所でヴィクトール11世が苦笑して電磁鞭に縛られ踏まれている バーネットが気を引き締めて言う
「てめぇが本体に戻りやがったら 旧世界と通信を繋ぎやがるのか?それなら 俺やその辺の奴らで 異世界の王やらなんやらからのハッキングを全力で止めてやるぜぇ?」
バーネットがデス2人とテスクローネを示す 示された3人が反応して テスクローネが言う
「ガイ隊長の話では 現在旧世界を守っているのは シリウスB様のご子息 ルシフェル様であると そうだとしたら こちらからの通信を完全に守っても あちらからの発信をフォローする者が居りませんよ?」
シリウスAが言う
「案ずるな 全ては計算付くじゃ 我は 神と呼ばれた者じゃぞ?」
シリウスAが微笑する 皆が呆気に取られる ヴィクトール11世が立ち上がって言う
「シリウス…っ 本当の体に戻るの?シリウスの本当の姿って…」
ヴィクトール11世が身震いする シリウスAが表情を悲しめて言う
「ヴィクトール… お前にまで嫌われてしもうたら 我はやはり悲しいのぉ …しかし もはやこの義体では 手に負えぬのじゃ」
シリウスAが微笑してヴィクトール11世の頭を軽く撫でる ヴィクトール11世が不安そうに言う
「シリウス 僕は…」
シリウスAが生命維持装置へ向き直り目を閉じてプログラムを発生させる 皆が見詰める シリウスAの体に大量のプログラムが纏わり そのプログラムが全て生命維持装置へ流れ込む 皆が呆気に取られ プログラムの入った生命維持装置へ視線を向ける ヴィクトール11世の横でシリウスAが倒れる ヴィクトール11世がハッとして慌てて抱き止めて言う
「シリウス!?」
生命維持装置が起動して音と共に蓋が僅かに開き やがてすべてが開く ヴィクトール11世と共にシリウスAの義体へ視線を向けていた皆が 生命維持装置へ視線を戻す 装置中に立ち込めていた水蒸気が消え 本体のシリウスAが目を開く
大陸を覆うほどの大量のプログラムが解放される
新世界に居る生命を持つ者たちが 一瞬の出来事に疑問して辺りを見渡す
生命維持装置の周囲にいた皆が得体のしれない力を前に 人知れず息が止められている シリウスAの上体が起き上がる ヴィクトール11世がシリウスAの義体を抱き止めた状態で屈んでおり ハッと気付いて立ち上がる シリウスAが僅かに顔を向けヴィクトール11世を見る ヴィクトール11世がシリウスAを見詰め一瞬間を置いてから言う
「シリ ウス…?」
シリウスAが苦笑して言う
「我が恐ろしいか?ヴィクトール」
ヴィクトール11世が呆気に取られた後 笑顔になってシリウスAへ抱き付いて言う
「シリウスーっ」
周囲にいた皆が呼吸を取り戻し シリウスAとヴィクトール11世を見る シリウスAが微笑んでヴィクトール11世の頭を撫でて言う
「我の義体を 守ってくれおったのじゃな?良い子じゃ」
ヴィクトール11世が呆気に取られた後 自分の片手に抱いていたシリウスAの義体を見て シリウスAの顔を見て微笑して言う
「うんっ けど、僕 シリウスは 元々女性っぽい人なのかなー?って思ってた けど 違ったんだね?」
シリウスAが苦笑して言う
「その姿は お前たちが好んだ姿じゃ ヴィクトール 我はお前の先祖が理想としおった人の姿を 我の息子の姿にしたのじゃ お前の血族が我の息子を 未来永劫好んでくれよる様にとのぉ?」
バーネットが衝撃を受ける ヴィクトールが呆気に取られ瞬きした後 笑顔になって言う
「なんだ?そーなんだ!通りで 僕の初恋の人が バーネッ…」
皆の視線の先 ヴィクトールが苦笑の表情で バーネットの鞭に縛られ踏まれている シリウスAが笑顔で言う
「ほれ、性格も お前好みじゃろ?」
皆が呆れる ロキが息を吐いて言う
「…先ほどの威圧は」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「ああ、まるで何処へやらと 行ってしまったようだ」
ベルグルが呆気に取られている フォーリエルが呆気に取られている テスクローネが微笑する
【 ローレシア城 玉座の間 】
キルビーグが驚いて言う
「なんとっ シリウス国王のお体が 発見されたと!?」
皆がキルビーグを見る キルビーグの前に跪き報告していた伝達の兵が言う
「はっ スプローニより先ほど入りました連絡です キルビーグ陛下へ取り急ぎお伝えして欲しいと シリウス国王の御神体は 既にシリウス国王陛下、並びに ベネテクト国第二国王陛下バーネット2世様や その他 関係者が揃い 間違いなく確認を済ませた との事です」
キルビーグが苦笑して一息吐いて言う
「そうか… 無事見つかったのか それは良かった 我らローレシアの者が見つけ出せなんだった事は残念だが これで 僅かながら肩の荷が下りたと言うもの…」
ルーゼックが言う
「では、そのシリウス国王は 己の真の体へと戻ったのだろうか?それにより… 何らかの変化が起こりよるのか?」
キルビーグが言う
「ふむ… 私も詳しい事は分かりかねるが シリウス国王の神の力が より強力になるのではなかろうか?現在でも ガルバディアのプログラムと言う力は 我らにとっては神の力に等しいもの それが強まると言う事は この世界や旧世界を救う力になるだろう」
アンネローゼが言う
「神の力… ガルバディアのあの力が 更に強まり その力を持って世界をお守り頂けるのでしたら この新世界も旧世界も きっと救われるのでしょうね」
ヘクターが笑んで言う
「すげーな!どれほど強ぇのか 俺と決闘してくれねーかな!?」
キルビーグ、ルーゼック、アンネローゼが衝撃を受ける ヘクターが笑顔になる ルーゼックが呆れて言う
「ヘクター 貴様は今までの話を 聞いて居らなかったのか?」
ヘクターが疑問して言う
「あ?聞いてたぜ?シリウス国王がすげー強くなるんだろ?だったら 世界一の大剣使いの俺と世界一のプログラマーのデスたちの俺たちで どっちが強ぇーか 戦ってみてーって 思うだろ!?」
キルビーグとアンネローゼが苦笑する ルーゼックが怒って言う
「思わぬわ 馬鹿者っ!大体 神と呼ばれる者と戦おうなどとっ!考えるまでもなかろう!?」
ヘクターが不思議そうに首を傾げて言う
「そっか…?俺は最初に考えたけどなー?」
ヘクターがデスを見る デス2人がプログラムを行っていて デス2ndが言う
「1st、ではやはり 先ほどの膨大なデータの送信は」
デス1stが言う
「ああ、たった今 使用コードの確認が取られた 今までとは比にならない容量だが シリウス国王の物で間違いない …それにしても、これ程の膨大なデータを あの一瞬で作り上げ実行するとは… それに完成度も100% ミス所か 隙もない… 一体何のデータであったのか その解析を行おうにも 私では進入の糸口さえ見出せない…っ」
デス2ndが気付いて言う
「うん?これは…?1st ガルバディアの生命製造装置が」
デス1stが気付き驚いて言う
「凍結していた 生命製造装置を起動させたのか?…いや、それどころじゃないっ」
【 スプローニ城 玉座の間 】
シリウスAがヴィクトール11世の頭を撫でていて気付いて言う
「うむ、やっと整いおったか 少々時間が掛りおったのぉ やはり 久方振りの本体では 調子がイマイチじゃ この程度の事に232秒も時を掛けよる様では まだまだ 実戦には向かぬわ」
皆が疑問する シリウスAがヴィクトール11世の抱えるシリウスAの義体へ触れて言う
「我はこの義体を持って 一度旧世界へと向かう 後の事は… そこのバーネットへ任せてやるからのぉ?せいぜい励むのじゃ」
バーネットが衝撃を受けあわてて言う
「なぁ!?お、俺にっ!?冗談じゃねぇ!?何言ってやがるんだっ てめぇえはぁあ!?」
シリウスAが微笑して言う
「案ずるな非力な孫よ 義体の我が作った軟弱なお前だけでは この世界のせの字も守れぬわ 我は“そこの”バーネットと言ったのじゃ 何ならついでに そこの下手なハッキングを行っておるハッカー 我が示したバーネットを弾き出して見せよれ?」
シリウスAの視線の先に一瞬火花が散り ホログラムのバーネット1世が弾き出され 慌てて振り返って怒る
『だあっ!?て、てめぇえ!このスットコハッカーがぁあ!折角上手く隠れてやがった俺様を 弾き出しやがるんじゃねぇえ!』
バーネット1世が怒りの視線を向けた先に雷が落ち ホログラムのスファルツが手を押さえた状態で現れ慌てて言う
『い、痛いではありませんかっ!何をなさるのです!?大体、仕方がないではありませんか!ご依頼は貴方のお父様 偉大なるシリウス国王 直々のものなのですよ!?』
バーネット1世がスファルツへ迫って怒って言う
『だからスットコだって言ってやがるんだぁ!シリウス国王がご指名しやがったハッカーは てめぇえじゃねぇえ!』
スファルツが呆気に取られて言う
『は?私では…?では こちらでしたか?』
スファルツが顔を向けた先 火花が散り ホログラムのベハイムが現れて言う
『痛いっ!何をなさるのです!?私は探し人を求め たまたま通り掛っただけの 電波ですのにっ!?』
シリウスAが微笑して言う
「ふむ、全員出揃いおったのぉ?では お前たち全員へ命令じゃ」
スファルツとベハイムが衝撃を受けて言う
『『え!?』』
バーネット1世が溜息を吐いて言う
『ハッ… 分かんねぇのかぁ?相手はこの世界の万物を操るってぇえ 神様クラスのプログラマーだぜぇ?てめぇらの存在と行動なんざ 全てお見通しの計算尽くなんだよ?』
ベハイムが慌てて言う
『お、お待ち下さい シリウスA様 私は本当に ただ、ここを通り掛っただけなのですっ 私は先ほども申しました通り 大切な人探しを…っ』
シリウスAがベハイムへ向いて言う
「生憎 お前の用事などに構っておる時間はあらぬのじゃ 事は一刻を争う 故に程よく集まりおったお前たちプログラムを行う力のある者は我の命に従うのじゃ これより我は旧世界へ向かいシリウスBの意識を この義体へ移さねばならぬのじゃぞ?」
バーネット1世が腕組みをして言う
『さっきは黙ってたが 叩き出されちまったからには これ以上黙ってられねぇ てめぇえが旧世界に行ってやりてぇ事が そのシリウスBの意識を移しやがる作業だってぇんなら そいつは 俺が代わってやってやるぜ』
皆がホログラムのバーネット1世を見る バーネット1世が続ける
『てめぇが この新世界を離れる事は 危険過ぎやがる この話をしてやがる今でさえ 異世界の王どものプログラムが この世界へ入り込んでやがるんだからなぁ?』
シリウスAが言う
「Bの持つ情報量は我と同等じゃ お前の手に負えるものではあらぬ 例え ここに居るお前たち全員を向かわせた所で いつまでに どれほど正確に出来よるかも分からぬ 従って 我自らが向かうのじゃ」
シリウスAが周囲にプログラムを発生させる バーネット1世が焦って言う
『おいっ 待ちやがれ!てめぇは 本気で言ってやがるのかぁ!?この新世界は 異世界の王どもから 総攻撃を受けてやがるんだぜ!?この状態で てめぇがこの世界から離れやがったら!奴らは一気に攻め込んで来やがる筈だ!この際もう 殆ど民の居やがらねぇ 旧世界の事は諦めてでも てめぇはこの新世界に留まらなけりゃ ならねぇ時だろうがぁあっ!?』
シリウスAがバーネット1世を見上げて言う
「旧世界に関しては 残念ながら もはやお前の言う通り 一度は諦めざるを得ぬ… とは言え Bの事じゃ 最悪旧世界が奴らの手に渡ろうとも あちらの世界にて作り上げてきた物を 奴らに触れられぬ様 状態凍結プログラムが組まれて居る筈 従って 一度は手放す事になろうとも かの土地が奴らに完全に支配されよる心配はあらぬのじゃ」
バーネット1世が手を振り払って怒って言う
『なら尚更だぁあ!旧世界が駄目なら てめぇえが行きやがる必要なんざ まったく有りやがらねぇ!』
シリウスAが言う
「バーネット、我は言った筈じゃ 我は旧世界へ向かいBの意識をこの義体へ移さねばならぬのじゃ このままでは 本当にBの命が危ぶまれるのじゃぞ?」
バーネット1世が言う
『…その間に この新世界がぶっ潰されちまうかもしれねぇって 言ってやがるんだろぉがっ 出来損ないの俺らと 新人類のプログラマーごときが 異世界のロストヒューマンを2人も 相手になんざ出来やがらねぇえんだよ!』
シリウスAがプログラムの作成を終え微笑して言う
「では この世界も終わりじゃのぉ?我らが戻るまでに お前たちが守りきれなかった時には 我とBの2人でリジルもリゲルもまとめて成敗し 後に両世界の始末と再生を行うまでじゃ?」
バーネット1世と2世が驚き目を見開く 周囲の者が呆気に取られ顔を見合わせ フォーリエルがテスクローネへ言う
「テス?シリウスA様は 何を言ってるんだ…?」
テスクローネがフォーリエルの問いに一度視線を向けてから困る バーネット1世が言う
『本気で 言ってやがるのか…?』
シリウスAが言う
「バーネット 我はお前たちに この世界を任せると言っておる 今この世界に在る全ての生命を お前たちへ預けるのじゃ お前たちはそれらを 全力を持って守れ 良いな?」
シリウスAが微笑して消える バーネット1世が呆気に取られた後慌てて言う
『なぁあ!?本当に行きやがったっ!』
皆が呆気に取られている バーネット1世がプログラマーたちへ向いて言う
『おいっ!てめぇえら!本気の全力で手伝いやがれよ!?』
バーネット1世のホログラムが消える バーネットとテスクローネの体にプログラムが発生する バーネットが言う
「のわっ!?こ、こいつはっ!」
フォーリエルが慌ててテスクローネへ言う
「テスっ!?」
テスクローネが言う
「これは 移動プログラム…?」
ヴィクトールとフォーリエルが慌てて叫ぶ
「バーネット!」「テス!」
ヴィクトールがバーネットに フォーリエルがテスクローネへ手を伸ばし同時に4人が消える 残されたロキ、ヴェルアロンスライツァー、ベルグルが呆気に取られ顔を見合わせる
ロドウが声を上げ暴れ出す
「戦うっ!戦わなきゃ!僕はっ!僕はぁああーーっ!」
ガイが驚き ロドウの斧を避けロドウへ叫ぶ
「ロドウ副隊長っ!?」
リーザロッテがロドウの様子に気付き カイッズ巨人族へ向いて叫ぶ
「巨人族の皆っ!今でしてよ!今ならきっと 貴方方の力でも!」
デス2ndが顔を上げて言う
「1st!プロテクトが解除された!奴の意識の活性をサポートする!」
デス1stがプログラムを発生させて言う
「彼の人としての意識が 彼自身の力を抑える!今なら リーザロッテ女王の言う通り 巨人族の力であれば取り抑えられるぞ!」
ヘクターが叫ぶ
「おいっ!巨人族のお前らっ!お前らの力を もう一度リーザに見せてやれ!」
カイッズ巨人族たちが顔を見合わせ頷きあって ロドウへ向かう ロドウが斧を落とし頭を抱える カイッズ巨人族たちがロドウを取り押さえる リーザロッテが微笑む ヘクターがリーザロッテの横に来て笑んで言う
「やったな!」
リーザロッテがヘクターへ向いて苦笑して言う
「貴方方のお陰でしてよ」
ヘクターが苦笑して言う
「へっへ…まぁ、少しだけな?」
リーザロッテが一瞬驚いた後笑んで言う
「ええ!もちろん!少しだけでしてよ!」
ヘクターの下へやって来たデス1stとデス2ndがリーザロッテの言葉に顔を見合わせる リーザロッテが手を腰に当てて堂々と言う
「この私の優秀勇敢なる仲間たちと カイッズの皆が居たのですものっ!その私たちが負けるはずなんて 万に一つも無くってよー!オーホッホッホッホッホ!」
デス1stとデス2ndが呆れる ヘクターが笑顔になる リーザロッテが気を取り直して言う
「とは言え、貴方方には助けられたのでしてよ それに、あちらの方にも」
ヴェインがガイを連れて来る デス1stがガイを見て言う
「お前は 以前ガルバディアに現れた 旧世界の… ガイという名の」
ガイがニヤリと笑んで言う
「ああ、ガイ隊長は 俺たち多国籍部隊の隊長 俺たちの英雄だぜ」
皆が疑問する ガイの周囲にプログラムが発生し ガイの姿がフォーリエルになる 皆が驚き デス1stが言う
「お前はっ!夢の世界に現れたっ!?どう言う事だ!?お前の存在は 私と同じ… プログラムのみのものであった筈っ!?」
テスクローネがやって来て言う
「それは シリウスB様が創られた 我々の情報を元に作られたプログラムの事でしょう こちらの世界の状況を確認する為 使ったのだと 仰っていました」
テスクローネがフォーリエルの横に立つ フォーリエルがロドウを見て言う
「ロドウ副隊長は 本当は凄く優しくて良い人なんだ それが何でこんな事になっちまったのかは分からねぇけど… 頼むからっ 酷い仕打ちはしないでくれよ ロドウ副隊長もガイ隊長と同じ 俺たちの世界を救ってくれた 大英雄なんだ!」
リーザロッテが笑んで言う
「御安心なさい!私たちツヴァイザーの者は 理由も分からないままに極刑を架したり等は 致さなくってよ!」
フォーリエルがリーザロッテを見て苦笑して言う
「そっか… なら良かった」
デス1stが少しプログラムを発生させて言う
「…なるほど 先ほどの犯人はお前か」
ヘクターが疑問する テスクローネが一瞬疑問した後 理解して言う
「犯人…?ああ、ロドウ副隊長を庇った バリアプログラムの事ですね?はい、そうです 如何にロドウ副隊長であろうとも あれ程の攻撃を受けてはと思い 咄嗟に行いました」
デス2ndが驚いて言う
「…あの攻撃を無効化するプログラムを 咄嗟に組み上げたと言うのか」
デス1stが微笑して言う
「流石は ベネテクト 最上級プログラマーだ」
デス2ndがデス1stを見た後少し考えて言う
「ベネテクト、最上級… なるほど、テスクローネは ソルベキアの読みか デス・グローテ」
テスクローネが苦笑する デス1stが言う
「その名からも推測は可能だったが 先ほどのプログラムにおいても ガルバディアのシステムを使用する認証コードを転送していた こちらの世界では 数百年前に使用者が居なくなった ベネテクト、グローテクラスの識別コード 旧世界の民をこちらへ転送させてから 幾度か見掛けていたが …お前だったのだな」
テスクローネが苦笑して言う
「貴方からの探査プログラムを撒くのには 何時も苦労させられました」
デス1stが衝撃を受ける デス2ndがデス1stを見て言う
「…負けたな?ガルバディア第二王子ともあろう者が 格下のグローテクラスのプログラマーに」
デス1stが怒りを抑えて言う
「…黙れ 私と同等の力を持つ お前であっても同じだっ」
デス2ndが衝撃を受ける テスクローネが笑顔で居る
【 ベネテクト城 バーネット2世の部屋 】
ベーネットが扉をノックして言う
「父上 よろしいでしょうか?」
部屋の中からバーネットの声が届く
「3世かぁ?ああ 構わねぇ 入りやがれ」
ベーネットが扉を開け 中の様子に衝撃を受け 後頭部に汗をかいて言う
「あの… 一体何がどうなって その様な事になっているのか…?貴方の息子として 是非とも明確な説明を 伺いたいのですが」
ベーネットの視線の先 ヴィクトールが猫耳にメイド服でバーネットの鞭に捕らえられ泣いている バーネットが怒りの視線を向けて言う
「あん?明確には面倒臭ぇ… 簡単に言っちまえば この馬鹿猫野郎の願望と この馬鹿猫野郎の構想を 両方 この馬鹿猫野郎にしてやっただけだぜぇ はっはー!」
ヴィクトールが泣きながら言う
「わーんっ酷いよバーネット 頭の耳は僕で正解だけど この服は バーネットが着なきゃぁ」
ベーネットがヴィクトールを踏み付けて黙らせる ベーネットが呆れて言う
「はぁ… まぁ良いでしょう 父上とヴィクトール13世様のご趣味です 私の胸にのみ秘めて置く事に致します」
バーネットが衝撃を受け 怒って言う
「おいっ 待ちやがれ!こいつぁ俺の趣味なんかじゃねぇ!誤解しやがるんじゃねぇよ!」
ベーネットが言う
「…と、それより父上 ベネテクトの王である私を差し置いて 第二国王であるバーネット2世に会いたいと言いやがる野郎が 先ほどやって来たのですが」
バーネットが言う
「あん?俺に会いてぇだぁ?わざわざ第二国王の俺を指名しやがるたぁ… そいつは なかなかの目利きじゃねぇかぁ?はっはー!」
バーネットがニヤリと笑む ヴィクトールが衝撃を受け怒って言う
「あー!駄目だよバーネット!バーネットをご指名して良いのは 相棒の僕だけだよーっ!他の誰かがご指名なんてしちゃ 駄目なんだからーっ!」
バーネットがさっさと部屋を出ながら言う
「何処のどいつだぁ?第二国王とは名ばかりで 結局何の権限もありやがらねぇ俺へ てめぇを差し置いての ご指名ってぇえんなら 会ってやるぜぇ 玉座の間かぁ?」
ベーネットがバーネットに続きながら言う
「いえ、今は別の場所に居ります」
ヴィクトールが慌てて言う
「あー!駄目だって言ってるのに!酷いよ バーネット!僕が駄目って言うから会うんでしょ!?いつもなら面倒くせぇえ 第一国王のてめぇで何とかしやがれぇ とか言うくせにぃ~!」
バーネットが無視して言う
「別の場所に居やがるだぁあ?何処に居やがる?まぁ、今なら何処までだって 会いに行ってやるけどなぁ?はっはー!」
バーネットが立ち去る ヴィクトールが慌てて追い駆けて言う
「待って!バーネット!待ってったら!僕も行くよぉおっ!置いていかないでーっ!」
ベーネットが振り返って言う
「ヴィクトール様っ 一緒にいらっしゃるのでしたら このベネテクトの第二国王の猫として せめてその服は何とかしやがって下さいっ!」
ベネテクト城 地下牢
ベーネットが通路を行く バーネットが付いて行きながら疑問して言う
「おい、3世!どう言う事だぁ?何処の世界に 客人を地下牢で待たせる 国がありやがるってぇえんだよ?」
ベーネットが言う
「勿論、通常の客人でしたら 私もこの様な場所にぶち込みはしません しかし、身柄を確認しました所 この野郎には この場所が正しいんじゃねぇかと 思いまして」
ベーネットが牢の前で立ち止まり中の人物を示す バーネットが覗き込んで言う
「あぁ…?」
カイザが檻に縋って言う
「ちょっとぉ~!?何でいきなりこんな所に ぶち込まれなきゃいけないの!?俺はベネテクトの領海で 海賊業はしてないのよ~!?」
バーネットがカイザの顔をマジマジと見て言う
「海賊…?てめぇ海賊なのかぁ?…はっはー!なぁ~んだ それじゃ とっ捕まえ次第 縛りっ首じゃねぇかぁ?あーっはっはっはっはー」
バーネットが爆笑する カイザが衝撃を受け叫ぶ
「げーっ!?マジでーっ!?ちょっと待ってよ!旦那ぁ!そんなの無いって!」
バーネットが軽く笑って言う
「ハッ!…でぇ?それはそうと 何処の誰だか知らねぇが その海賊の てめぇが このバーネット2世・ベネテクトを 御指名しやがったってぇえのかぁ?あぁ?何ったって 第一国王のこいつを差し置いて わざわざ俺を呼びやがった?吊るされる前に吐きやがれ」
カイザが表情を困らせて言う
「うぅ… やっぱり駄目だ 夢の中と現実と共通の ベネテクトの慈愛の王様って言っても… 海賊の俺が王様に頼み事なんて間違えだったよなぁ~ 例え夢の中で見たあの顔と同じだとしても その夢の中と違って 会った事もねぇ海賊じゃ この扱いだよなぁ…」
バーネットが考えて言う
「…うん?夢の中だぁ?俺の記憶にはねぇが …確か 11回目と12回目の夢の世界で 俺は海賊に助けられやがった とか言うシナリオだった気が… えっと 名前は何て言いやがったか… おい、てめぇ 名は?」
バーネットがカイザへ問う カイザが一瞬驚いて言う
「え?…あぁ 名前ね?俺は海賊カイザ!世界最速の海賊船 フェリペウス号の船長だぜ!」
カイザが胸を張る 間を置いて 落ち込んで言う
「…て、言っても 今はその出力アップに掛けた ツケから逃げる方法に頭を悩ませて …おまけに また!変な天使様に導かれちまって また!このベネテクトで殺されかけてるしっ!俺って何て不思議な不幸に 何時も悩まされるんでしょぉ~!?」
カイザが落ち込む バーネットが苦笑して言う
「はっはー!そうだったぜぇ カイザか そう言えばそんな名だったなぁ …と、まさかこれまで あのシリウス国王のシナリオじゃねぇよなぁ?」
カイザが疑問して言う
「え?…も、もしかして!俺の事を知ってる!?まさか!旦那まであの夢を?スカルの奴も 俺と同じ夢を見たって言うんだ 信じられねー話だけど!もしかして、あの夢に出て来た旦那も あのっ夢を!?」
ヴィクトールが猫耳の付いた状態で顔を出して言う
「え~?なになに?バーネットをご指名した人は あの夢の世界を経験した メンバーだったの?」
カイザが衝撃を受けヴィクトールを指差して叫ぶ
「出たーっ!あんたはあの夢の中の とんでもない アバロンの王様!」
ヴィクトールが一度カイザを見た後 バーネットへ向いて言う
「バーネット?誰ー この人?僕 全然 知らな~い」
カイザが衝撃を受け怒って叫ぶ
「アンタは覚えてても 絶対!そう言うよなっ!?俺知ってるから!けど、その頭の耳は何ー!?」
ヴィクトールが照れる バーネットがニヤリと笑い ベーネットが呆れる
【 スプローニ城 玉座の間 】
監守が走って来て跪いて言う
「ロキ陛下!申し訳ありません!地下牢へ収監しておりました シュリ殿が脱獄致しました!直ちに警備兵を招集し 捜索に向かいます!」
ロキが言う
「…捜索は不要だ」
監守が向かおうとしていた身を戻し疑問して言う
「し、しかしっ!?」
ロキが言う
「…その代わり」
監守が呆気に取られて言う
「…え?」
【 ツヴァイザー城 地下牢 】
フォーリエルが軽く笑んで言う
「…って訳で、俺やテス、リジューネ陛下とベハイム殿で わざと旧世界のシリウスB様を悪者に仕立ててさ、こっちの新世界の人たちの戦力を強化させようって してたんだぜ?こっちの世界はほんっとに 魔物も機械兵も居ないせいか 皆弱っちぃのなぁ?スプローニに行くまでの間 いくつかの国の兵士と戦ってみたけどさ 全然?この俺にも勝てない様じゃ 話しにもなんねーよ」
ヘクターが笑んで言う
「へぇ?お前、そんなに強いのか?後で俺とも戦ってくれよ!?」
フォーリエルがヘクターへ向いて苦笑して言う
「あんたは別だよ ヘクター国王 なんってったって あんたには ガルバディアのプログラマーが2人も付いてるんだ しかも その2人が揃ってガルバディアの王子様クラスだって言うんじゃ 俺の相棒のテスじゃ 敵わないだろ?」
ヘクターが笑んで言う
「ははっ!俺とお前で試合するんなら 相棒のサポートはお互い無しで良いじゃねーか!?お前も 大剣使いなんだろ?」
ヘクターがフォーリエルの腰に在る大剣を見る フォーリエルがヘクターの様子に気付いて言う
「あ… いや、これは…」
ヘクターが疑問する リーザロッテとレイトがやって来て リーザロッテが言う
「スプローニのロキ国王には 私から貴方方の事をお伝えして 禁固刑を無効にして差し上げたわ これで、貴方の相棒 テスクローネが捜索される心配も無くってよ?」
フォーリエルとヘクターがリーザロッテへ向く フォーリエルが言う
「有難う助かったぜ ツヴァイザーの姫様 俺の姿はシュリの姿で見せていたから良かったけど テスの姿はスプローニの第二国王様や 監守の目に見られちまってたから… これで安心だ」
リーザロッテが微笑する レイトが言う
「禁固刑とは言っても その期間はたったの2週 短期収容であっては テスクローネ殿が貴殿へ面会するのは 難しかったのではないか?」
フォーリエルが軽く笑って言う
「それが、テスの話じゃ 堅物だって噂のスプローニの第二国王様は すげー愛嬌のある 犬みてーな人だったって」
レイトが呆気に取られて言う
「愛嬌のある犬の様な?スプローニの第二国王は ローゼントの王配でもあり、私の父でもある ヴェルアロンスライツァーの筈だが?」
リーザロッテがレイトへ向いて言う
「それが、現在は 代理の第二国王である ベルグル殿になっていらっしゃるそうでしてよ?」
レイトが一瞬驚いて言う
「え?…ああ、そうでしたか なるほど、それなら 愛嬌のある犬で 間違いはありませんね」
レイトが微笑む リーザロッテとヘクターが軽く笑う リーザロッテがあっと思い出して言う
「あ、そうでしてよ 忘れる所だったわ フォーリエル」
リーザロッテがフォーリエルへ向く フォーリエルが疑問し 皆がリーザロッテへ向く リーザロッテが言う
「ロキ陛下から 今回の禁固刑、並びに スプローニ国民への薬物使用を大目に見る代わりに ベルグル代理第二国王が 美味しい団子に釣られて 面会許可書を出して下さった事を 口外なさらない様にと仰っていらしてよ?よろしくって?」
皆が呆気に取られる
【 スプローニ城 地下牢 】
ベルグルが檻の中から柵にしがみ付いて言う
「ごめんなさいッス ロキ隊長ーっ!俺、あのチョー美味い団子を ロキ隊長にもあげようと思ってたのに 気が付いたら部屋で爆睡しちゃっててッスねー?おまけに 起きた時には ロキ隊長に残しておいた団子が どっか行っちゃってたッスよー!これ本当ッス!全部俺が食べちゃった訳じゃ 無いッスよー!ロキ隊長ーっ!」
ロキが怒って言う
「黙れ!馬鹿犬が!俺は俺に団子を残さなかったと怒っているんじゃない!代理とは言え第二国王ともある者が 餌に釣られて面会許可書を発行するとはっ!やはり卿に 第二国王の代理などは務まらないのだっ!おまけに 先住民族の犬の癖に 団子に盛られていた睡眠薬にも気付かなかったとはっ!卿は第二国王としても 犬としても失格だ!」
ベルグルが一瞬呆気に取られた後 驚いて叫ぶ
「えーっ!?あの団子に 睡眠薬が入ってたッスかー!?俺全然分からなかったッスよ!ロキ隊長ー!」
ロキが衝撃を受け怒って言う
「黙れ!馬鹿犬!せめて 少しおかしいと思った位の嘘が言えないのか!?牢屋の監守が眠りこけている事に気付いた 交代の監守から連絡を受け 爆睡中の卿の部屋にあった団子を確認したんだ!どちらも同じ成分が込められた あの面会にやって来たテスクローネが持ち込んだ団子だ!奴が薬を盛った事に間違いはない!…卿が優しそうだと言った あのテスクローネだ 卿は人を見る目すら無いのだ!」
ベルグルが呆気に取られる ロキがハッとして顔を逸らして言う
「…い、今のは 少し言い過ぎた …だが、国王とは 素直な気持ちだけでは出来ないもの 故に 諸卿先住民族には やはり 難しいのだろう そこで少し反省した後は 大人しく俺の飼い犬に戻れ」
ベルグルがロキを見る ロキが顔を逸らし視線を合わせないまま立ち去る ベルグルがロキの去った後を見詰める
【 ツヴァイザー城 地下牢 】
牢の前に立ってプログラムを行っていた デス1st、デス2nd、テスクローネが作業を止め溜息を吐く ヘクターとフォーリエル、リーザロッテ、レイトがやって来てヘクターが言う
「デス どうだ?そいつの体から 魔物の何とか情報ってぇのは 外せたのか?」
デス1stが振り返って言う
「…いや、残念ながら 私とデス2nd デス・グローテの3人掛りでも 彼に入力されている 魔物の遺伝子情報を無効化する事は出来なかった」
デス2ndが顔を向けないまま言う
「シリウスBの完璧なプログラムも然る事ながら 彼自身が それから開放される事を拒んでいる様にも思える…」
テスクローネがデス2ndへ向いて言う
「人の思いと言う力は シリウス様のプログラムととても相性が良いのです それを お二人の強引なプログラムで解除するのは やはり難しいでしょう」
デス1stとデス2ndが衝撃を受け テスクローネへ詰め寄って怒って言う
「誰が強引に解除しようとしていると!?あくまで私は 奴の遺伝子情報の解析から やんわりとっ!」
「攻撃プログラムは使用せず 無効化を行う為のプログラム入力を行う事の 何処が強引だと言うのだ!?」
テスクローネが苦笑して言う
「ですから、それはどちらも解析ではなく… どちらかと言うと ハッキングに近いものかと?もしや、御二方はハッカーなのですか?」
テスクローネが微笑する デス1stが衝撃を受け怒って叫ぶ
「この無礼者がぁああ!グローテごときが!プリンスクラスの我々へ物申すとはっ!しかも ハッカーであるのかだとぉおーっ!?」
デス1stが怒りのプログラムを周囲に発生させる デス2ndが慌てて抑える テスクローネが苦笑する ヘクターが呆気に取られる フォーリエルが慌ててテスクローネの前に入って大剣を抜き デス1stへ構えて言う
「あっ!テスに危害を加えるなよ!俺が相手だ!」
デス1stが怒りの視線をフォーリエルへ向ける デス1stのプログラムがフォーリエルの大剣に当たりショートして激しく光る 皆が驚く 大剣からデス1stへ雷撃が走り デス1stが感電して叫ぶ
「なっ!?あぁああっ!」
デス2ndが呆気に取られる デス1stが倒れる ヘクターが驚いた後 慌てて叫んで駆け寄る
「デス!?」
ヘクターがデス1stを助け起こし 怒りの視線をテスクローネへ向けて言う
「おいっ!何するんだよ!?」
フォーリエルが驚きテスクローネへ向く テスクローネが呆気に取られた後言う
「今のは… 私の行いではありません しかし、不用意に攻撃プログラムを発生させるのは 控えた方が良いですよ?反発するのは この大剣だけでは ないかもしれませんから」
テスクローネが苦笑を見せる デス2ndが驚きフォーリエルの大剣を見て言う
「その大剣が 1stのプログラムに 反発したというのか?」
デス2ndがフォーリエルの大剣に近づき手をかざしてプログラムを発生させる テスクローネが言う
「礼儀正しくこちらから先に 身分情報の提供を行ってからでなければ 何も教えてはくれません」
デス2ndが一度テスクローネを見てから大剣へ視線を戻し 呆気に取られて言う
「この大剣は…」
デス1stとヘクターが近くに来て デス1stが言う
「旧世界の… アバロンの大剣使いが 使用していたものではないのか?随分と古い物の様だが」
ヘクターが大剣を見て言う
「ああ 本当だ この刃はもう駄目じゃねぇか こんなんじゃ 戦いには使えねぇぜ?」
フォーリエルが言う
「この大剣自体は もう駄目なんだ けど、こいつは どんな剣にも変身出来て どんな剣よりも強くなるんだぜ?テスのプログラムでな?」
テスクローネがフォーリエルの横に来て言う
「いや、私は大剣の見た目を変えているだけであって 実際にその剣を守っているのは 600年前に命を落とした 私の父が施したプログラムなんだ」
フォーリエルが驚いて言う
「え…?テスの…?」
テスクローネが微笑して言う
「私の父は 最期の時まで この剣を持ったアバロンの大剣使いと共に戦い 共に命を落とした… もしかしたら 父だけではなく その大剣使いの力も 一緒に 今もこの剣を守っているのかもしれないな?」
テスクローネがそっと大剣に手を添える デス1stが言う
「600年も昔に入力されたプログラムが 今も… そんな事が…」
デス2ndがプログラムを終えて言う
「…ああ、どうやら その通りらしい 時を越えても失われないプログラムを作るとは …とても グローテクラスだとは思えないな」
皆が大剣とテスクローネを見る テスクローネが微笑して大剣から手を離す ヘクターの通信機が着信する 皆が一瞬驚き ヘクターが通信機を取り出して言う
「どうした?こっちは今、ひと段落した所だけど アバロンで何かあったなら そこの兄貴に」
ヘクターの通信モニターに大臣Aが映り その後ろに玉座がありレクターが笑顔で座っている 大臣Aが表情を困らせて言う
『それがっ!ヘクター陛下!陛下の留守をお任せした レクター殿下は!』
通信モニターの中で 大臣Bがレクターの体に何度も手を通す 通信モニターを見ていたデス1stとデス2ndが衝撃を受ける ヘクターが表情を困らせて言う
「あちゃぁ~… 兄貴の奴 また、何処に出張しちまったんだぁ~?」
【 ガルバディア城 城門前 】
レクターが笑顔で言う
「私の精神はたまに ガルバディアへ出張しちまう事があるのだ しかし、今日は少し奮発して 精神だけではなく 本体も出張した だから私は 代わりにアバロンに置いて来た抜け殻がバレねー内に ヘクターの留守を任されたアバロンへ 帰らなければならねー!…そんな気がする」
レクターの通信機が着信する レクターが疑問して通信機を取り出して苦笑して言う
「しかし、残念ながら 私の抜け殻は もうバレちまったらしい」
レクターが通信機を着信させる
【 ツヴァイザー城 通路 】
ヘクターが通路を歩きながら通信機に言う
「兄貴っ アバロンの留守番はどうしちまったんだよ!?今回は精神の方をアバロンに置いて 体だけガルバディアへ行っちまったのか?俺が居ねー時は せめて体の方をアバロンに置いといてくれなきゃ 急に戦いでも起きたらどうするんだよ!?」
通信モニターのレクターが笑顔で困って言う
『すまないヘクター 私も頭では分かっていたと思うのだが 精神が勝手に体を出張させちまったんだ もしかしたら 今回は私も 私の中のアバロンの力が 何となくそうしちまったのかもしれねー …おまけに 何の備えも無く 極寒のガルバディアに飛んで来ちまったせいで 今にも凍え死んじまいそうなんだ』
通信モニターのレクターが苦笑する ヘクターが衝撃を受け慌てて言う
「な!?防寒具もなしに ガルバディアへ行っちまったのか!?兄貴っ!しっかりしてくれよ!?」
デス2ndがヘクターへ向いて言う
「レクターが居ないのでは やはり一度アバロンへ戻るか?」
デス1stがヘクターへ向いて言う
「シュレイザーのヴァッガスに続き ツヴァイザーにロドウが現れた 前回の奇襲を考慮すると その時ガルバディアに現れた ガイの事が気になるが」
ヘクターがデス1stへ向いて言う
「もし、あいつらが前と同じ様に来るとしたら ガルバディアに 今度は本物のガイって奴が来るって事か?だったら…」
ヘクターが通信機へ向いて言う
「兄貴!もしかしたら これからガルバディアに 以前兄貴と戦った ガイって奴がまた来るかもしれねーぜ!?兄貴のアバロンの力は それを感知したのかも知れねー!だから、兄貴はそのままガルバディアに居てくれ 俺がアバロンに戻るからよ!」
デス1stとデス2ndが顔を見合わせて デス2ndが言う
「レクターのアバロンの力が発動する確立は 過去の実績を元に算出すると1.01%… アバロンの民として考えれば はっきり言って絶望的だ」
デス1stが言う
「レクターはガルバディアの理性が強いんだ その中に埋もれた 本能的なアバロンの力を発揮させる事は難しい… それはそうとして、ヘクターの提案は良案だ レクターは前回のガイとの戦いに勝利している その上、レクターは以前より数段戦力を増している これなら ロドウやヴァッガス同様に ガイが前回比24%の戦闘力アップで現れても 対応出来るだろう」
ヘクターがデス1stとデス2ndの会話を聞いてから通信モニターへ向き直って言う
「って事だから 聞こえたか?兄貴?」
通信モニターのレクターが笑顔で言う
『ああ、しっかりと聞こえた 私のアバロンの力が発動する確立は 1.01%と絶望的なのだな!』
ヘクターが衝撃を受け慌てて言う
「いや、そこじゃなくって!」
通信モニターのレクターが照れながら言う
『大丈夫だヘクター 自分で言うのも難だが 実は… 私も自信を持って そんな気がしていた!』
通信モニターのレクターが満足そうに笑顔になる ヘクターが衝撃を受け怒って言う
「そんな所に自信を持たねーでくれよ!」
【 ガルバディア城 城門前 】
レクターが照れて頭を掻きながら言う
「ああ、それから ヘクターがアバロンに戻るから 私はこのまま 来るかどうかも分かんねー ガイを待って このガルバディアの地で凍死しちまうかもしれねー とも言ってたか?」
通信モニターのヘクターが焦って言う
『大体あってっけど!凍死するんじゃねーって!軽装で行っちまったんなら 城の中で待てば良いだろ!?兄貴はガルバディアの民としても認められてるんだったら ガルバディア城の城門だって開けられる筈だ!城門に手を付けるんだぜ!?分かんなかったら シリウス国王に頼めよ!?』
レクターが一瞬呆気に取られた後 困った様子で頭を掻く 通信モニターのヘクターが言う
『こっちは各国に連絡取って これからどーするとか 考えっからな!?デスが!』
通信モニターのデス1stとデス2ndが衝撃を受け声を揃える
『『私がっ!?』』
通信モニターのヘクターが言う
『もし、そっちで何か問題があったら 兄貴からも連絡をくれよ!?それから、ガイって奴が本当に来たら 頑張れよな!』
通信モニターのヘクターが強気に笑んでモニターにガッツサインを見せる レクターが呆気に取られた後 笑顔で同じサインを送り返して言う
「ああ!任せてくれヘクター!間抜け大剣使いの私が 優秀な弟であるヘクターに応援してもらえて 私は今とても嬉しい!」
通信モニターのヘクターが笑んで言う
『おう!それじゃーなっ!』
レクターが笑顔で言う
「ああ!」
通信が切れる レクターが笑顔で間を置いた後 呆気に取られて言う
「うん?…ああ、私はヘクターに応援され 嬉しかった!しかし、それに喜んでいたお陰で…」
猛吹雪の中レクターが苦笑して言う
「ガルバディア城の城門がロックされていて ガルバディアの関係者である私ですら 中に入れない と言う事を伝えるのを忘れた!ついでに、デスや私からの連絡がシリウス国王に繋がらないのは どうやら シリウス国王が 何処かへ出張しちまって居る事が原因らしい!…と言う事をデスたちに伝える事も忘れてしまった!そして、私は このまま外で ガイという奴が来るのを 待つしかねーらしい!」
激しい吹雪が吹き荒む
【 ツヴァイザー城 城門前 】
ヘクターとデス1st、デス2ndが城から出て来て立ち止まる デス2ndがヘクターへ言う
「では、アバロンへの移動プログラムを組む」
デス1stがデス2ndを見た後ヘクターへ向いて言う
「ヘクター?先のシュレイザーでの戦いで重傷を負った ヴィクトール13世の事が気掛かりだと言っていたが 良いのか?ツヴァイザーの援護が終わったら 立ち寄りたいと言っていただろう?」
デス2ndが周囲に現していたプログラムを止めヘクターを見上げる ヘクターが少し表情を渋らせて言う
「あぁ… 気になるっちゃー気になるけど 多分、ヴィクトールはバーネットが居れば大丈夫だろう それに、ヴィクトールが動けねーなら きっとバーネットも動けねーと思うんだ そうなったら 俺は アバロンの王として この世界の為に動かなきゃいけねーだろ?」
デス1stが一瞬驚いてから苦笑して言う
「フッ… 変わったな ヘクター」
ヘクターが疑問して言う
「あ?」
デス1stが微笑して言う
「夢の世界を経験する以前のお前は アバロンの王となっても 自身の思いを先行させる男だった …あの頃の私は お前の相棒ではなかったが そんなお前をずっと見ていたのだ」
ヘクターが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「ああ!知ってたぜ?」
デス1stが驚いて言う
「え?」
ヘクターが微笑して言う
「この前ふと思い出したんだけどよ?俺は昔からずっと誰かに見られてる感じがしてたんだよ …最初は気が散って困るって思ってたんだけど 試合で戦ってる時なんかは そいつが後押ししてくれてる気がしてさ それからは…」
デス1stが微笑する ヘクターが笑顔になって言う
「死んだじーちゃんが 守護霊にでもなって 俺を守護してくれてるんだと思ってよ!良く 悩み相談とかしたよなー!?けど、本当はお前だったんだな!デス!」
デス1stが衝撃を受けて言う
「しゅ…守護霊… それも お前の祖父の…」
デス2ndが密かに笑う デス1stがデス2ndへ怒りの視線を向ける ヘクターがデス1stへ向いて言う
「まぁ、どっちにしても ずっと一緒に居て 戦ったりもしてたんだ!なら、姿は見えなかったけど 昔っから相棒だったって事だろ!?だから… これからもよろしくな!デス1st?」
デス1stが苦笑して言う
「まぁ… お前の祖父ではないが 守護はしていた …ついでに幽霊でもないが 私は今も昔も変わらず お前の相棒だ こちらこそ よろしく頼む ヘクター」
ヘクターが微笑する デス1stが微笑を返す デス2ndがムッとして言う
「では!さっさと アバロンへ帰るぞ!そのプログラムを作ってやるのは 私だ ヘクター!」
ヘクターが一瞬呆気に取られた後 笑顔で言う
「ああ!よろしく頼むぜ!俺のもう1人の相棒!デス2nd!」
デス1stとデス2ndが呆気に取られる ヘクターが微笑する デス2ndが苦笑して言う
「それで良い」
ヘクターとデス1st、デス2ndが飛んで行く
【 ベネテクト国 港 】
バーネットが手で太陽光を遮りながら言う
「でぇえ?そのガルバディアに行きてぇって言ってやがる 天使様は てめぇの船に居やがるのかぁ?何で城まで連れて来やがらなかったぁ?この慈愛の王様バーネット2世様が とっ捕まえて焼き鳥… 焼き天使様にでもしちまうとでも 思いやがったのかぁ?はっはー!」
バーネットが笑う カイザが衝撃を受けて言う
「ちょっとー!?何て罰当たりな事言っちゃうの?!この第二国王様は!?神様の使いである天使様を 焼き鳥にしちまおーとかー!?」
ヴィクトールが首を傾げて言う
「天使様って事は… やっぱり絵に描かれる天使様の様な 背中に白い羽がある人なの?」
バーネットが疑問してカイザへ向く カイザが言う
「ああ、背中に羽があって… けどぉ あの天使様の羽は白くねぇんだ… ついでに 俺たちが想像する天使様と違って 夢でも現実でも 男なんだよなぁ…」
カイザが落ち込む バーネットとヴィクトールが顔を見合わせる
【 フェリペウス号 】
カイザが先行して船内への階段を降り通路を歩きながら言う
「落っこちてきた時の怪我は大した事無かったんだけどよ?喉が渇くって言うから水をやっても 飲めねーみたいなんだわ やっぱり天使様に俺たちが飲む水は飲めねーのかねぇ?んで、医者に見せようと思ったんだけど 本人がガルバディアにガルバディアにって必死に言うんだよ で、そのガルバディアに近いベネテクトまで連れて来たまでは良かったけど …今って冬だろぉ?背負って行くにも きっとガルバディア城の近くは すげー雪なんじゃねーかって思ってさ」
バーネットが言う
「すげぇ雪なんてもんじゃねぇだろうよ きっと今頃は猛吹雪だぜ そこへ歩いて… 増してや人を背負って行くだなんてぇえのは… あぁ 人じゃなくって 天使様だったかぁ?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「でも、お陰で僕らが天使様に会えるだなんて ラッキーだったよね?その天使様のお願いを叶えて ガルバディアへ送ってあげたら 僕らのお願いも 叶えてもらえるのかなぁ?」
ヴィクトールが考える バーネットが表情を渋らせて言う
「例え そうだとしても てめぇ… 間違ってもまた 可笑しな願いを言いやがるんじゃねぇぞぉ?」
ヴィクトールが呆気に取られ不満そうに言う
「えー?可笑しな願いなんて言わないよぉ 心外だなー 僕はただ バーネットがもっと僕の事を 好きになってくれる様にって それに もっと素直で優しくなって もっと僕を大切にしてくれて… 出来れば毎朝 朝の」
ヴィクトールがバーネットの鞭に縛られ踏まれている カイザが傍目に見て言う
「これが夢の中とは言え 2人してアバロン帝国の皇帝様だったなんてなぁ…?やっぱあれ夢だわ」
カイザが部屋の前にやって来て ドアノブへ手を掛けて言う
「とにかく、俺はこの天使様のお願いを叶えるために ベネテクトに来たんであって ベネテクトの町や村に危害を加えるつもりは まったく無いの そんな訳だから これで、俺は無罪放免って事で」
カイザがドアを開ける バーネットとヴィクトールが部屋の中を見る カイザは部屋の中へは顔を向けずに澄ましている ヴィクトールが疑問して首をかしげ バーネットが怒りを忍ばせて言う
「…でぇ?てめぇは てめぇの下らねぇホラ話を信じて のこのこ付いて来やがった ベネテクトの第二国王とその飼い猫をとっ捕まえて ベネテクトの王バーネット3世でも 強請るつもりでいやがったのかぁ?あぁっ!?この海賊野郎がぁあ!」
バーネットがカイザの襟首を掴んで凄む カイザが驚き慌てて指差して言う
「な!?何言ってるのよ!?そこの大柄な天使様が 見えないって言う の… あら…?」
カイザが呆気に取られ自分が指差した先 空になったベッドを見て衝撃を受ける バーネットが鞭を構えて怒りに燃えて言う
「覚悟は出来てやがるんだろうなぁあ…?あぁあ!?世界最速の海賊船 フェリペウス号の船長 カイザさんよぉお!?」
カイザが目を丸くする
船外
青い海にフェリペウス号の船体 カイザの悲鳴と鞭の音が響く
「きゃぁあーーっ!天使様ぁあーーっ!?無垢な俺を残して 何処行っちまったのーっ!?」
【 ガルバディア城 城門前 】
レクターが眠りそうになってハッと目を覚まして苦笑して言う
「はっ!…いけねぇいけねぇ 雪山で気持ちよく寝ちまう所だった… それとも 私はもう寝ちまったのか…?何だか意識が朦朧と… ん?」
レクターが空を見上げて目を細めて言う
「デカイ鳥… こんな吹雪の中に来る鳥だなんて… もしかして 私を迎えに来ちまった天使様か…?へぇ~?近頃の天使様は 随分と黒いんだなぁ?あははははっ は?」
レクターが瞬時に大剣を引き抜き攻撃を受け止め後方へスライドする 攻撃を受け止めた状態で止まる レクターが力を込め瞑っていた目を開き驚いて言う
「お前はっ!」
ガイが荒い息で怒りに満ちた目でレクターを凝視する レクターが周囲にプログラムを発生させて言う
「極度の飢餓状態 脱水症状 意識レベルが低い… それに 魔物化現象の初期症状がっ!」
ガイの攻撃をレクターが弾き 間合いを開くと レクターが顔を上げて言う
「今ならまだ間に合う!強い聖魔力エネルギー… 宝玉があれば!」
ガイが襲い掛かる レクターが攻撃を受け止めて言う
「…くっ!以前より数段力を増して …私も力を付けたが その私でも 押さえ付けてアバロンへ連れて行く事は出来ねーっ 応援を呼ばせてもらえる余裕もねーか」
レクターが周囲にプログラムを発生させる ガイが怒りを高め力を増す レクターが歯を食いしばって言う
「なら仕方ねー 動けなくなる程度に痛め付けて それから…」
ガイが荒い息をする レクターがプログラムを見て気付いて言う
「駄目か これ以上動かして体の水分を奪ったら…っ 剣で斬り付けて血でも流させたら 終わっちまう」
レクターが剣を振り払い ガイが飛ばされる ガイが翼を広げて着地した後 苦しそうに顔を向け身を浮かせる レクターが周囲にプログラムを発生させて言う
「うん?他の奴とは違って 意識レベルの保護は健在なのか… なら身体の枯渇状態さえ落ち着かせれば 人の意識を取り戻せる筈だ!シュレイザーとツヴァイザーに現れた旧世界の戦士たちが その意識を失っちまってる中で こいつは唯一可能性がある おまけに、奴らのリーダーであるガイなら きっと全てを知っている!…そんな気がする!」
レクターがガイへ向く ガイが武器を構える レクターが意を決して大剣を構える ガイが猛スピードで飛び掛る レクターが直前になって大剣を手放しガイを見る ガイが自分に向けられていた武器が消えた事に気付き 剣を捨てレクターの身に掴みかかる レクターが強く目を瞑り痛みに声を上げる
「うっ!」
レクターが雪の上に倒れる ガイが圧し掛かっている レクターが横目にガイを見て言う
「こ…これで… 意識を取り戻したら アバロンに… 行ってくれ… ガルバディアは今 誰も居ねーんだ… シリウス 国王も… だから… アバロンに行って ヘクターに…」
ガイがレクターの首筋に牙を立て血を吸っている レクターが苦笑して言う
「ガイに使われていた 魔物の遺伝子情報が… ヴァンパイアで良かったぜ… 他の魔物だったら… 骨まで食われちまってた か な… はは…」
レクターが空を見上げて言う
「ヘクター… 一度… お前と本気で 戦ってみたかった… 1人の 大剣使いとして… アバロンの 民として…」
レクターの視界が霞んでいく
【 アバロン城 玉座の間 】
大臣Aが言う
「デス第二国王陛下のご指示の通り ヘクター陛下のお名前を使い ローレシアを始めとする各国へ シュレイザーとツヴァイザーの事態を踏まえ 早急に話し合いの場を持ちたいとの連絡を行いました所 ローレシア、ローゼント、カイッズ、ソルベキア、ツヴァイザー、スプローニ、シュレイザー… ガルバディアとベネテクト、デネシアを除きます 各国より アバロンにて行われるのであれば 直ぐにでも向かう とのご返答を頂きました」
ヘクター、デス1st、デス2ndが入室して 玉座へ向かいながらヘクターが疑問して言う
「ガルバディアはともかく ベネテクトはどうしちまったんだ?それに デネシアは?ベネテクトはアバロンからの連絡にはいつも 直ぐに返事をくれるんじゃ無かったか?」
大臣Aが手元の資料をめくりながら言う
「ベネテクトに関しましては 私も二つ返事で良いお返事を頂けるものと思い 他の国々への連絡を優先致しました と言う事もあったのですが 未だにベーネット陛下並びにバーネット陛下からも ご連絡を頂けておりません」
ヘクターが表情を心配そうにする デス1stが言う
「先ほど確認した情報によると ヴィクトール13世の重傷情報はデマであったとの事だ ヘクター、そちらを心配する必要は無い」
ヘクターがデス1stの言葉に言う
「デマ…?そっか、なんだ なら良かったぜ!」
ヘクターが微笑する デス1stが頷く デス2ndが言う
「とは言え その2人が居るベネテクトとの連絡が 途絶えていると言う事は問題だ 私から直接 ベーネット国王かバーネット第二国王へ」
ベーネットの声が響く
『失礼致します ヘクター陛下』
皆が疑問する ヘクターの前にベーネットが礼をした状態でホログラムを現す ヘクターが気付き微笑して言う
「ベーネット!今、丁度 お前たちの事を心配してたんだぜ!」
ベーネットが顔を上げ微笑して言う
『ご心配をお掛け致しまして申し訳ありません 更には、アバロンからの連絡に 返答が遅れてしまい失礼致しました こちらで少々トラブルがありまして 遅くなりましたが 先のご連絡内容へ対する 私並びに我らベネテクトの返答は アバロンの決定を補佐する との返答を示させて頂きます』
デス1stとデス2ndが頷き合う ヘクターが笑んで言う
「おう!ありがとな!」
ベーネットが微笑む ヘクターが言う
「で?そっちであった トラブルってーのは?大丈夫だったのか?」
ベーネットが呆気に取られた後軽く笑って言う
『ええ、大丈夫です トラブルと言いましても ベネテクト程の小さな国での出来事など アバロンには何の危害も無いでしょう』
ベーネットが苦笑する ヘクターが呆気に取られてから微笑して言う
「んな事はねーぜ!?ベネテクトはアバロンの友好国だろ!?ベネテクトになんかありゃー いつだって手を貸すぜ!?それに、お前らだって アバロンを助けてくれるんだろ?」
ベーネットが呆気に取られてから微笑して言う
『はい、もちろんです …しかし、我らベネテクトは こちらの現実世界に置いては ベネテクトと共にガルバディア その両国へ王の猫を提供して下さる デネシアとの手を切る事は 出来ませんが?』
ヘクターが一瞬呆気に取られた後苦笑し気付いて言う
「おうっ そう言えば そのデネシアからの返答はどうしちまったんだろうな?現実世界では アバロンとデネシアは喧嘩してねーよなぁ?」
ヘクターがデス1stとデス2ndを見る ベーネットが同じく顔を向ける デス1stとデス2ndが周囲にプログラムを発生させながら デス1stが言う
「この現実世界に置いても デネシアは何かとアバロンをライバル視している部分はあったが その当時国王であった ルーゼックがローレシアの第二国王となり その後の王位継承を経た今に置いては まったくと言って 互いを敵視する事も 向こうが勝手にこちらをライバル視する事も無くなった」
デス2ndがプログラムを見ながら言う
「しかも、現デネシアの王 ファニア女王はアバロンよりも むしろベネテクトへ友好関係を築こうとしている様だな これはやはり 魔法剣士傭兵部隊の事が大きいか… 自分の父や兄が住む国という事もあるかもしれんが…?」
ベーネットがヘクターへ向いて言う
『私の知る限り ファニア女王は お若くとも、聡明で何事にも迅速に行動して下さるお方です アバロンからの連絡に遅れを出すと言う事は 何かあったのかもしれません もし宜しければ 私がここへ ファニア女王との通信を繋ぎますが』
ヘクターが一瞬呆気に取られた後デス1stとデス2ndを一度見てから微笑して言う
「そっか!悪ぃなベーネット!頼むぜ!」
ベーネットが微笑んで言う
『お安い御用です』
ベーネットが後ろを振り返る ヘクターがふと気付いて言う
「…あ そういやー ガルバディアに行っちまった兄貴の奴 大丈夫だったかなぁ?兄貴はガルバディアの力が使えたり アバロンの力を使えたり… 最近は ローゼックのとっつぁんに あの中途半端な剣を教わったりっで 色々出来る様になったのは良いけど 相っ変わらず間抜けてっからなぁ~」
ヘクターが心配そうに表情を渋らせる ベーネットが苦笑している
【 ガルバディア城 城門前 】
薄暗い空間の中 レクターが薄く目を開いて言う
「うん…?今… 誰かが私の事を… 褒めてくれていた様な… そんな気がする」
レクターが笑顔で照れる レクターが間を置いて気付いて言う
「…と、ここは?確か私は…?」
レクターがガイに吸血されていた時の事を思い出す レクターが苦笑して言う
「…では私は あのままコロっと逝っちまったのだろう ここは天国か?程よく暖かい このままもう一度 二度寝三度寝をしちまいたい気分だ」
レクターが笑顔になる レクターの直ぐ近くに赤い瞳が光り ガイが言う
「レクター殿 気が付かれたか」
レクターが驚きガイへ顔を向ける 上部が少し開き 光りと共に吹雪の音と僅かに吹雪が入り込む レクターが一度目を細めてから ガイへ向き直る ガイが微笑して言う
「この翼は 我が王の力により強化され 吹雪にも強い攻撃にも耐えうるが 貴殿に このまま眠られては 少々困ってしまう」
レクターが呆気に取られた後 微笑んで言う
「ガイ!意識を取り戻したんだな!?けど残念ながら お前も あの吹雪の中でコロっと逝っちまったのか!では 二人で仲良く 天国へ向かえば良い!そんな気がする!」
ガイが衝撃を受けわずかに呆れて言う
「いや、そんな気は されないで頂きたい」
レクターが笑顔になる ガイがレクターを抱え飛んで行く
【 アバロン城 玉座の間 】
ベーネットの振り返った先 ホログラムモニターにファニアが映っていて言う
『…と申します事で ガルバディア城の前で 旧世界の戦士ガイ殿を正気に戻らせたレクター殿下は そちらのガイ殿が持ち合わせていた エリクサーにて奇跡的に命を取り留め 私どものデネシアへと 運ばれました』
皆が呆気に取られてファニアを見ている ファニアが言う
『私どもも、突如上空から現れた ヴァンパイアの姿に最初は驚き 兵を招集致しましたが レクター殿下のお姿を確認し 慌てて保護を致したのです 現在レクター殿下は私どもの城にて 御身の回復をさせて頂いております お命の心配は無いとの事ですので ヘクター国王 どうかご安心下さい』
ヘクターが息を吐き苦笑して言う
「兄貴の奴 無茶しちまって… もし、ガイがエリクサーを持ってなかったら どうするつもりだったんだ?」
デス1stが言う
「エリクサーの有無などより ガイがレクターの命が失われるより前に 意識を取り戻す事が出来た事 それ自体が奇跡的だ」
デス2ndが周囲にプログラムを発生させながら言う
「更に、極度の枯渇状態にあったヴァンパイア… いや、人であろうとも その渇きを癒し通常の精神状態へと意識を落ち着かせて間もなく 自身が持ち合わせているエリクサーの事に気付き 倒れようとしている者を救うなど… それを行える確立は限りなく低い」
デス1stが言う
「エリクサーを与えた後 レクターの体温が上昇するまでの間 己の身を盾にして吹雪の中を耐えた …これらは実に正しい判断だ 回復処理を行い 直後に空を飛んでいたら レクターは間違いなく助からなかっただろう ガイという戦士は 知識共に優秀な戦士の様だな」
ヘクターが表情を渋らせる ベーネットが言う
『レクター殿下のお陰で 旧世界との架け橋となるであろう ガイ殿も命も取り留め そして、人の意識を取り戻す事も出来た レクター殿下の行いは自傷的ではありましたが 我々新世界の民 共に 旧世界を救う為の 最たる結果をもたらしたのでしょう ファニア女王 そのガイ殿は?』
皆の視線がファニアへ向く ベーネットを見詰めていたファニアがハッとして 頬を僅かに染めつつ慌てて言う
『はっ はいっ!…ガ、ガイ殿は 私から アバロンとヘクター国王の説明を聞き 旧世界で起きた事を 直接ヘクター国王へお伝えしたいと 先ほどアバロンへ向かいました デネシアの大臣 ハレルトが同行しておりますので どうかご確認下さいませ』
ヘクターが顔を向けた先 デス1stが周囲にプログラムを発生させ皆に見られる様ホログラムモニターに映す 映像の中でハレルトがアバロンの衛兵と話していて その後ろにローブを纏ったガイが居て ガイが気付き振り返る デス2ndがプログラムを現しつつ言う
「間違いなく 以前ガルバディアに現れた 旧世界の戦士ガイだ」
ヘクターが首を傾げて言う
「ツヴァイザーでフォーリエルが化けた奴とは… ちょっと感じが違うな?」
デス1stがヘクターへ向いて言う
「ああ、見た目は変わらないが 彼の身に入力されている ヴァンパイアの遺伝子情報が 大幅に増加している …お前はそれを見抜いているのだろう」
まもなく 玉座の間の衛兵が言う
「デネシア国大臣 ハレルト殿と 旧世界からの使者 ガイ殿です!」
皆の視線が玉座の間出入り口へ向く ハレルトに続き ガイが現れ ヘクターを見て僅かに怒りを込め目を細める ヘクターがそれに気付き疑問する
ガイがヘクターへ説明をしている
「旧世界ガルバディアの王 シリウスB様は 新世界のシリウス様や 両世界の戦士たちと共に 異世界の王との戦いを開始する事を考えておられました その為にも 新世界のシリウス様と連絡を取りたいと ご自身のご子息であられる ルシフェル様と私を新世界へ向かわせようとしていたのです …しかし」
回想
【 旧世界ガルバディア城 転送室 】
ルシフェルが転送装置に手をかざし終え振り返って言う
「転送先は 新世界の最南端にある ソルベキアだ 転送距離を短くする分 お前の身に影響を及ぼす悪魔力の使用を 最小限に留める事が出来る」
ガイが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「お心遣いを 有難うございます ルシフェル様」
ルシフェルが一瞬驚き顔を背け頬を染めて言う
「べ、別にお前を気遣った訳ではない 私は お前を心配していた父上の為にと…っ」
ガイが微笑する ルシフェルが平静を装って転送装置へ向かいガイが続く 外からラーニャの悲鳴が響く
「きゃぁあーーっ!」
ガイとルシフェルが驚いて振り返る
ルシフェルとガイが通路を走って来る 2人の目の前 玉座の間の入り口で立ち尽くしているメテーリの横に 一足先に来たヴァッガスが目を丸くした後 怒りと共に叫んで駆け込んで行く
「てめぇええーーっ!」
ルシフェルに続きガイがメテーリの横に立ち止まりメテーリへ言う
「メテーリ!何事か!?」
ルシフェルが玉座の間を見て目を丸くしている メテーリがガイへ向いて目を怯えさせて言う
「ガイ…っ わ、私たち… どうなっちゃうの…っ!?」
ガイが驚く ルシフェルが叫ぶ
「父上っ!」
ルシフェルが玉座の間へ駆け込んで行く ガイが視線をルシフェルを追って玉座の間へ移し驚いて言う
「シリウス様っ!」
ガイの視線の先 シリウスBが血の滲んでいる床に倒れ苦しそうな表情で誰かを見上げている ガイがシリウスBの元へ駆け寄り シリウスBの視線の先を見て驚いて言う
「き… 貴殿がっ!?何故っ!?」
ガイの前に ラインツが血の滴る大剣を持ってシリウスBを見下ろしている
回想 終了
ヘクターが驚き呆気に取られて言う
「お… 親父が?俺の親父である ラインツが 旧世界のシリウスBをっ!?」
その場に居る者が驚き顔を見合わせる ガイがヘクターを見て言う
「…貴殿は 貴殿の父が何故 シリウス様の御命を狙ったのか その理由を存じないのか?」
ヘクターが一瞬驚いてから困惑して言う
「そんなの 知る訳もねーっ!それにもし!親父にそんな気があるって分かってたんなら 俺は親父をぶん殴ってでもこっちの世界に留まらせたぜ!…親父は あの旧世界の戦いの後 俺たちと別れて ガルバディアに… 相棒のシリウス国王の所へ戻ったんだとばかり…っ」
デス1stとデス2ndが顔を見合わせ デス2ndが言う
「ラインツ前王が旧世界へ向かったのは シリウス国王の計らいか?」
デス1stが周囲にプログラムを発生させて言う
「いや、あの戦いの後 シリウス国王による転送処理が行われた形跡は無い …とは言え シリウス国王との連絡が取られない今 確かな事だとは言い難いが」
ヘクターが言う
「どんな理由があろうと シリウスBは旧世界を守ってる王なんだろ!?その奴をぶっ殺そうとするだなんて… 本当にそいつは俺の親父ラインツなのか!?」
ガイが言う
「彼の身柄は 以前貴殿らが旧世界に現れた際に取られた 映像や生体情報と共に 貴殿らのお仲間でもある ラーニャ殿も確認を行い ラインツ殿であると 明言したのだ」
ベーネットがガイへ向いて言う
『それで、そのラインツ殿は現在どの様に?そして、シリウスB殿のご容態は?』
皆がガイに注目する ガイがベーネットのホログラムへ向いて言う
「…シリウス様は 現在お体の時を止める事で 辛うじて御命を保たれている しかし、それも こちらの世界のシリウスA様にお力を借りる事が出来ねば 二度とあの機械から出る事も 意識を取り戻される事も無いと言う」
ガイの脳裏に シリウスBが生命維持装置の中で眠り ガイとルシフェルが見つめる姿が思い出される ガイがヘクターへ向いて言う
「そして、シリウス様を傷つけた ラインツ殿は」
回想
ルシフェルがシリウスBへプログラムによる処置を施している その横でヴァッガスがロドウに抑えられている状態で叫ぶ
『離せ ロドウ!離せよっ!』
ロドウが表情を困らせて言う
『ダメだよヴァッガス 僕だって… 気持ちは分かるけど』
ガイがヴァッガスからラインツへ視線を移して言う
『ラインツ殿 お聞かせ願いたい 貴殿は何故 シリウスB様を?この行いは 貴殿の相棒であられる シリウスA殿も同意の事なのか!?』
皆がラインツを見る ラインツが呆気に取られている ヴァッガスが一瞬間を置いてから怒って言う
『答えろよっ!てめぇは知らねぇのか!?てめぇが傷つけたシリウス様はな!この旧世界だけじゃねぇ!てめぇらの新世界まで守ってたんだぞ!?それをっ!』
ラインツが呆気に取られた様子でヴァッガスたちを見た後言う
『…こ ここは?俺は…?』
ラインツが自分の手に握られている大剣を見て言う
『この剣は…?』
大剣から血が滴り ラインツが驚く ガイたちがラインツの様子に驚いた後ヴァッガスが怒って叫ぶ
『てめぇが!てめぇがシリウス様を殺そうとしたんだろ!?とぼけるのもいい加減にしやがれぇええーっ!』
ルシフェルがラインツへ向けていた視線を大剣へ向け気付き悔しそうに言う
『しまったっ その剣か…っ ヴァッガス… そいつの言っている事は事実だ そいつは… 記憶を封じられてしまった その剣に備えられている凍結プログラムの解除は私でも難しい… 父上から力を受け継いだ 私を越えるプログラムを操る者 考えられるのは…』
ヴァッガスが呆気に取られ怒りロドウの制止を振り切り 玉座の間を飛び出して行く ガイが慌てて叫ぶ
『ヴァッガス!?』
回想終了
ガイが言う
「ラインツ殿は 記憶をプログラムによって封じられているとの事だ よって、現在は 旧世界のガルバディアにて 私の部下であるメテーリと 貴殿の仲間であるラーニャ殿が保護をしている」
ヘクターが視線を落として考える デス1stとデス2ndがヘクターを見た後顔を見合わせ ベーネットがデス1stへ向いて言う
『ラインツ殿が何故事に及んだのか それは 記憶を封じられた現状のラインツ殿と共に ヘクター国王にも分からない事なのでしょう しかし、少なくともこれで 旧世界の戦士ヴァッガス殿と 共に恐らくロドウ殿も この世界に来て行おうとしていた事は シリウスB殿の復讐… そうであるのなら 和平を結んだはずの彼らが この世界を襲った理由も納得が行きます』
ガイが言う
「ヴァッガスは シリウス様の御容態を確認する事も無く その怒りのままに 私とルシフェル様が使用する予定であった転送装置を用いて こちらの世界へ向かってしまった あの転送装置を使用する事は 魔物の遺伝子情報を悪化させてしまう… ヴァッガスは我らの中で最も多く悪魔力を受けていた それ故に シリウス様もヴァッガスではなく 私に向かわせようとしていた …しかし、ヴァッガスだけでなく 私が去った後に ロドウまで新世界へ向かってしまったとは」
デス2ndが言う
「他の2人とは違い お前だけは意識の完全回復を行えた お前は彼らとは違う方法で こちらの新世界へやって来たのか?」
ガイが言う
「私は ルシフェル様にお力添えを頂き こちらの世界へ参りました …とは言え 装置はヴァッガスを転送させるのにエネルギーを使用していたため 目的の場所まで飛ぶ事は適わず 更に悪魔力の影響を抑えるプログラムも連続転送により負荷が掛かると… 恐らくそれ故に 私の魔物の遺伝子情報が予定より悪化した様で 不覚にもガルバディアを死守していた レクター殿へ危害を加えてしまいました 彼には後ほど改めて謝罪を行わせて頂きたい」
ガイがハレルトへ向く ハレルトが微笑んで頷く ガイが言う
「…それと、ガルバディアまでの道すがら 私に協力して下された とある船の船長殿へ… 危害を加える事だけは自制する事が出来ましたが 彼に助けられなければ 私は今頃深い海の底に沈んでいたかもしれません 名を尋ねる事さえ叶わなかったが あの特徴的な船ならきっと見付けられる筈 彼にも船を壊してしまった事への謝罪と共に改めて礼を言わねば」
ベーネットが驚いて言う
『船長殿…?もしや…』
【 ベネテクト城 地下牢 】
カイザが鉄格子にしがみ付いて言う
「本当だってーっ!信じて頂戴よー!黒い天使様が 俺にガルバディアへ連れてってくれって 必死に頼んでよぉー そうじゃなかったら 何で借金取りから逃亡中の俺が わざわざ お国の王様へ会いに来るってぇ~の~?」
ヴィクトールが猫耳を付け嬉しそうに微笑んで言う
「さぁ~?僕は猫だから 難しい話は分か~んな~い」
カイザが衝撃を受け怒って言う
「アンタ俺の夢の中では アバロンの王様だったり 皇帝様だったりしたんだぞー!それが現実世界では猫だとか?訳分かんないから マジ止めてくれっ!…ってーか いい歳して その耳は止めろって!」
ヴィクトールが不満そうに言う
「え~?心外だなぁ 外ではダメだけど ベネテクト城の中では良いって バーネットにさっき許可してもらったんだよ?きっとバーネットは口には出さなくても 僕のこの姿を気に入ってくれたんじゃないかな?バーネットはね?あー見えて 意外と可愛い物が好きなんだよ?えへへ」
カイザが衝撃を受けて言う
「え!?あの旦那が?…ま、まじで?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「うん!ほら、僕だってその1人!…あ、1匹だもの!てへっ」
カイザが衝撃を受け呆れる
【 ベネテクト城 バーネットの部屋 】
バーネットが椅子にだらけて腰掛けて居て 片手に首輪を弄びながら言う
「んだよ 親父もシリウス国王とは連絡出来てねぇのかぁ?ならぁついでに、シリウス国王は今 ガルバディアに居やがらねぇんじゃねぇかって 俺の猫が そんな気がするなんて言いやがるんだが そっちも知らねぇか?」
バーネットの前 バーネット1世のホログラムが言う
『ハッ!知らねぇなぁ …大体、俺様はなぁ この新世界を守ってやがった防壁が 急に消えちまいやがったってぇんで その対応に追われてやがるんんだぁ こっちこそ そのシリウス国王殿に しっかり守りやがれってぇ 一言文句でも言ってやりてぇくれぇだぜぇ』
バーネットが衝撃を受けて言う
「なぁ!?防壁が消えやがったって そら、どう言う事だぁ!?それこそ シリウス国王に文句じゃぁなくって 特別回線で緊急連絡しなけりゃ ならねぇえってもんだろぉが!?」
バーネット1世が気付いて言う
『あぁ…?あ そうか?んな回線がありやがったなぁ?何も 代わりに この俺様が必死こいて 消えちまった防壁プログラムの復旧サポートをしてやる必要なんざ ありやがらねぇんじゃねぇか!?んあー畜生っ!気付かなかったぜぇ…』
バーネット1世がバツの悪そうに視線を落とす バーネットが衝撃を受け慌てて言う
「親父っ!てめぇえ 相っ変わらず 変な所で間抜けやがって!」
バーネット1世が衝撃を受け怒って言う
『るせぇえ!俺は昔っから 何でもてめぇえでやらなけりゃならねぇって 思っちまうんだよぉお!畜生ぉおっ!』
バーネットが怒って言う
「だから そこが間抜けてやがるんだろぉお!それから、いい加減 俺や3世の奴に頼るって事を覚えやがれぇええ!」
【 ローレシア城 客室 】
テスクローネが映像を消して振り返る 振り返った先 リジューネが言う
「…なるほど 彼らの奇襲は シリウスB殿の敵討ちであったのか」
フォーリエルが言う
「通りで おかしいと思ったんだ 旧世界に最後まで残るって言い切ったヴァッガス副隊長が シリウス様の居る旧世界から飛び出して来ちまうだなんて」
テスクローネが苦笑して言う
「しかし、ガイ殿のお話からして シリウスB様は 何とかお命を取り留めたそうですね?」
リジューネが言う
「そして今は ガイの言っていた ルシフェルと言う者が シリウスB殿の代わりに 旧世界を守っているのだな」
テスクローネが言う
「シリウスB様のご子息とは言え 彼に旧世界の防衛は難しい筈です 通常時ならともかく 今は 異世界の王たちが 旧世界…いや、こちらの新世界すら 狙っているのですから」
リジューネが悔しそうに言う
「こちらの世界にさえ来れば シリウス様に… シリウスA様にお力添えを頂け 我らの旧世界を救えると思っていたのが 甘かったか… 新世界の戦力を上げさせる事よりも早く ガルバディアへ向かい お話をするべきであったな」
フォーリエルが笑んで言う
「俺は 新世界に到着したら リジューネ陛下は 真っ先にガルバディアへ行くんだと思ってたんだけど 意外だったよなぁ?」
リジューネが衝撃を受け 視線を逸らして言う
「わ、私は 旧ローレシア帝国の王なのだっ まずは… 共に参った旧世界の民たちが 無事こちらの世界に受け入れられた事を確認した上で こちらの世界の状況を確認し 更に それなりの手筈を経てからでなければ シリウス様にお目通りするなど…っ」
テスクローネが苦笑して言う
「しかし、それらの事を差し置いてでも 本当は向かいたかったのですよね?そして、そのお気持ちのままに 行動されていれば 少なくとも ガルバディアを出られる以前のシリウスA様と 一度でも言葉を交わす事が出来たでしょう …現在は 誰もがそのシリウスA様の居場所を探し そして 誰もお会い出来ては いない様です」
リジューネが残念そうな表情をする フォーリエルが苦笑して言う
「俺思うんだけどよ?リジューネ陛下は きっとローレシアの王だとか なんだとかに囚われないで アバロンの民として ありのままに動いた方が 色々上手くいくと思うんだよなぁ?…何となくだけどよ?」
リジューネが驚く テスクローネが一瞬呆気に取られた後 笑顔で言う
「フォーリエル だいぶアバロンの民の真似が 上手くなってきたじゃないか?何となくだなんて アバロンの力まで 真似出来るようになったのか?」
フォーリエルが喜んで言う
「お!テスもそう思うか!?俺も最近 このアバロンの民の真似が 板についてきたかなーなんて 思い始めたんだよなー!」
フォーリエルが照れて頭を掻く リジューネが怒って言う
「貴殿こそ!ありのままに!エド町の民として動くべきではあらぬのか!フォーリエル!」
テスクローネとフォーリエルが笑顔で居る
ローレシア城 玉座の間
スファルツが映像を消して振り返る キルビーグが納得の息を吐き ルーゼックが耳を塞いでいる スファルツが言う
「これで、旧世界の戦士たちによる 今回の襲撃理由 共に 新旧両世界の危機である事が判明致しました」
キルビーグが言う
「ふむ… スファルツ卿の言う通りであったな この世界を守る力が衰えてしまったと… しかし、まさかそれが 旧世界のシリウスBが倒れた事が原因であったとは 更にそのシリウスBを倒したのが…」
キルビーグがルーゼックへ向く ルーゼックが耳を塞いだまま顔を横に振って言う
「私は何も聞こえはせなんだったっ!私に聞こえた言葉は 新世界と旧世界を救う為に 今一度 皆で力を合わせようと!そう言いよったヘクターの言葉だけなんだ!」
キルビーグとスファルツが呆気に取られた後顔を見合わせ苦笑し キルビーグがルーゼックへ言う
「そうか… それは残念だったな ルーゼック?アバロンやベネテクトのベーネット殿 並びに デネシアのファニア女王までもが その皆で力を合わせる方法として やはり、我らローレシアを 帝国としようと 申しておったのだぞ?」
ルーゼックが衝撃を受け怒って言う
「そなんだ事は一言も申しておらんかったわ 馬鹿者っ!皆はラインツ殿の事は広めぬままに 皆で集結するべきであると申してっ!…大体 貴様はこの機に及んで まだローレシア帝国の設立を 目論んでおったのか!?」
キルビーグが苦笑して言う
「なんだ、聞こえてしまっておったのか?折角、程よく お前に我らローレシアの復興へ 意欲を燃やしてもらおうと思ったのだが?」
ルーゼックが衝撃を受け バツの悪そうに顔を背けて言う
「き… 聞きたくは無かったが聞いてしまった… ラインツ殿が… ヘクターの父上 私にとっても まったく関係があらなんだ訳ではない その者が… あろう事か新旧両世界を守っておった シリウスBを斬り付けるとは…」
キルビーグが表情を落として言う
「まだ、そうと決まった訳ではないであろう?もしや、あのフォーリエルの様に ラインツ殿へ化けた他の者であると言う事も」
ルーゼックが言う
「今は 倒れたシリウスBの代わりに そのシリウスBの子息と言う者が 旧世界の防衛を行って居るのだろう?それ程の者であるなら 父であるシリウスBを斬り付けた者が ラインツ殿であるのか 他の化けた者であるのか位は 分かりよる筈 …その者はやはりラインツ殿なんだ」
スファルツが言う
「とは言え、ラインツ元アバロン国王の行いは 不可解です 彼が何故 シリウスBを手に掛け様としたのか 誰に記憶を封じられたのか… そして 彼がどの様に旧世界へ向かったのかさえ 分かってはおりません 更に そのラインツ元国王の相棒であられた シリウス国王とも 現在は連絡の取られない状態 これらの事は すべて一連の事なのでしょうか?」
キルビーグとルーゼックが顔を見合わせてから ルーゼックが言う
「一連ではあらなんだと申すのか?」
キルビーグが考えながら言う
「私にはシリウス国王が旧世界のシリウスBの命を 奪おうなどとは考えられなんだ 何故なら 我らローレシアに残されている古き書物には シリウス国王は旧世界の王を 最も大切なパートナーとして 常に気に掛けていると書き記されておる 先の旧世界との戦いの折にも シリウス国王はシリウスBへ まったく攻撃をせなんでおった」
ルーゼックが考えながら言う
「うむ… あの戦いの一番の目的は 旧世界ローレシアの民を転送させるための時間稼ぎであったが そうであったとしても 攻撃を致さなかった事への理由にはならぬな」
スファルツが言う
「ラインツ元国王の行ないが シリウス国王と無関係であるとしたら ラインツ元国王がどの様にして旧世界へ向かったのかが 何より重要であるかと思われます シリウス国王が力を貸さなければ 今はこのローレシアでさえ 旧世界への転送を行う事は難しいのですから」
皆が考える キルビーグが言う
「ふむ… それにしても 当のシリウス国王は一体何処へ行ってしまったのだろうか?」
ルーゼックが怒って言う
「まったく!この大変な時にっ 何処をほっつき歩いて居るのか!?アバロンへの召集へ向かうより まずはそのシリウス国王をひっ捕らえるのが 先ではあらなんだかっ!?」
ルーゼックが怒っている キルビーグとスファルツが苦笑する
ローレシア国 城下町
シリウスAが街中でダウジングしている ヴィクトール11世が首をかしげて言う
「ねぇ シリウス?僕思うんだけど… それってダウジングだよね?確か ローゼントで温泉発掘に使うって言う~?」
シリウスAが言う
「そうじゃ ダウジングじゃ しかし、これは何も 地下水脈だけを調べる方法ではあらぬのじゃ 例えば地下に埋められておる 不純物… っ!?」
シリウスAが衝撃を受け強く顔を左右に振って否定する ヴィクトール11世が疑問する シリウスAが気を取り直して言う
「う、うんっ …いや、地下に封じられておる物なども 探り出す事が出来よるのじゃ」
ヴィクトール11世が目をぱちくりさせた後言う
「地下にある不純物… もしかして それがシリウスの本体なの?」
シリウスAが衝撃を受け怒って言う
「こりゃ!ヴィクトール!わざわざ言い直してやったのに それを繋げて言うではないっ!わざとじゃな!?」
ヴィクトール11世が照れる シリウスAがムッとして言う
「これにはれっきとした理由があるのじゃ!我の身を封じたローレシアの王ラグハーンは 我の身を封じたのであって 消滅はさせなかったのじゃ つまり 我がこの世界を守る者であると言う事を 知らなかった奴とて 我を消滅させる事は危険であると言う事を 自ずと分かっておったのじゃろう 従って その封印は 我の捜索プログラムでは分からぬ様に封じると共に 他の方法を持って その場所を探し出せる様にと 致した筈なのじゃ」
ヴィクトール11世が考えて言う
「それで、その方法がダウジング?」
シリウスAが言う
「そうじゃ ダウジングは科学的根拠がまったく無いのじゃ にも拘らず ローレシアの友好国ローゼントの民… 古くは旧世界エド国の民は これで地下水脈を探り出すのじゃ プログラムの力を用いる我から見れば とても不可思議な現象じゃが もしかしたら 彼らにはダウジングによって アバロンの民の様な何となくそんな気がする力が 発揮されるのかもしれんのぉ?」
シリウスAが笑う ヴィクトール11世が言う
「ねぇ?シリウス?だとしたら… やっぱりシリウスがダウジングしても 本体は見付からないんじゃないのかな?僕… 何となくそんな気がするよ!」
ヴィクトール11世が笑顔になる シリウスAが一瞬考えた後 衝撃を受け焦って言う
「そ…そうじゃった 我とした事が… 例え方法は正しくとも 我自身はプログラムの塊なのじゃ… おまけに 我はローゼントの民でもエドの者でも…」
遠くからフォーリエルとテスクローネがやって来て テスクローネが気付いて言う
「うん?あそこに居るのは…」
フォーリエルがテスクローネの言動に疑問して 視線の先を同じくしながら言う
「ん?…あ!ありゃぁ!」
フォーリエルが ヴィクトール11世へ目掛け走って来て言う
「おーい!ヴィクトール様ー!」
ヴィクトール11世がフォーリエルへ向いて言う
「うん?あ!君は!」
フォーリエルがヴィクトール11世の前で立ち止まり テスクローネが遅れてやって来る シリウスAが振り向くとヴィクトール11世が笑顔で言う
「旧世界では良く会っていたのに こっちへ戻ってからは久しぶりだね!えっとー… ポーリエル!」
フォーリエルが衝撃を受けて言う
「フォ…フォーリエルっす」
ヴィクトール11世が笑顔になる テスクローネがシリウスAを見て言う
「お初にお目にかかります 貴方様こそ この新世界の神シリウスA様ですね?」
テスクローネの周囲にプログラムが動く フォーリエルが驚いてシリウスAを見る シリウスAがテスクローネへ不満そうな顔を向けて言う
「こりゃ デス・グローテ 不用意に我の名を呼ぶではない この髪色が見えぬのか?」
シリウスAがフードに少し隠れた髪を見せる テスクローネが気付き苦笑して言う
「身分をお隠しになられる際の黒髪… これは失礼致しました 初めてお会いする我が王の姿に 少々気をせかしてしまいました」
シリウスAが微笑して言う
「分かれば良いのじゃ 貴重なベネテクトの生き残り 我はお前に会えて嬉しいぞ お前の父は優秀なグローテであったわ」
テスクローネが一瞬驚いた後嬉しそうに微笑する フォーリエルがテスクローネの様子に微笑んだ後改めて言う
「それで!?この世界の神様 シリウスAガルバディア国王様が ローレシアの町中で 何やってんだ!?」
シリウスAが衝撃を受けて言う
「それを言うなと申しておったのを お前は聞いておらなかったのか!?」
フォーリエルが笑顔で言う
「そんなダウジングみてーな事やっちまってー 今どき旧世界でもそんな根拠のねー事してる奴 居ねーぜ!?」
シリウスAが衝撃を受ける テスクローネが苦笑する ヴィクトール11世が笑って言う
「あっははっ ほら シリウス!ペーリエルも言ってるじゃない?しかも それをシリウスがやっちゃうだなんて!僕 びっくり!」
シリウスAが鋭い視線で怒り 雷鳴の鞭を振り上げて叫ぶ
「ヴィクトール!我はお前をそんな猫に育てた覚えはあらぬ!さっきのわざと言った言葉も 今更ながらに許せぬのじゃ!そんな行儀の悪い猫にはお仕置きじゃ!そこへ直れ!」
ヴィクトール11世が慌てて叫ぶ
「ニャーッ!シ、シリウス ごめんなさいニャ!シリウスが本気で僕にお仕置きするなんて 僕、思わなかったニャー!」
ヴィクトール11世が逃げる シリウスAが衝撃を受け叫ぶ
「あ!?待たぬかっ!ヴィクトール!」
フォーリエルとテスクローネが呆気に取られている シリウスAが振り返りダウジングの道具をフォーリエルへ押し付けて言う
「フォーリエル!お前はエドの民じゃろう!元祖専売特許じゃ!それを使い必ずや 我の身を探し出すのじゃぞ!」
フォーリエルが衝撃を受けて叫ぶ
「え?…えーっ!?俺がーっ!?」
シリウスAが怒りに燃えて言う
「探し出さなかったら ただではおかぬのじゃ!例え古風な方法であろうとも 死ぬ気でやれば お前の中のエドの力が覚醒されるはずじゃ!ついでに 見つけ出せなかった時は~っ!」
シリウスAがテスクローネを指差して言う
「このデス・グローテを お前の相棒の座から 引き離してやるわ!良いな!?」
フォーリエルが呆気に取られる シリウスAがヴィクトール11世へ向き直って叫ぶ
「ヴィクトール!」
少し離れた場所で見ていたヴィクトール11世が衝撃を受け慌てて逃げて行く シリウスAがヴィクトール11世を見た後 一瞬でヴィクトール11世の後方に現れ踏みつける テスクローネが呆気に取られた後苦笑してフォーリエルへ向いて言う
「シリウスA様は プログラムを完全に遮断して ご自身の本体を探されていたのか… ふふっ それに、あの様子では どうやらキルビーグ国王やルーゼック第二国王 そして、ソルベキアのスファルツ殿 彼らが心配していた ラインツ殿との関わりは無さそうだ」
テスクローネが微笑してフォーリエルを見る フォーリエルが表情を困らせて言う
「そーだな!で、それはそうと… これ どーするんだ?」
フォーリエルがダウジングの道具を構えてみる テスクローネが見ると 間を置いて フォーリエルの持つダウジング道具が反応し 2人が驚く
【 ローゼント城 沐浴室 】
アンネローゼが湯船に漬かっていて 心配そうに考えている
回想
アンネローゼが通信モニターへ向いて言う
『では、ヴェルアロンスライツァーは今 スプローニに居りませんのですか!?』
通信モニターのロキが言う
『…奴は先日 スプローニを去った …俺は貴女の元へ戻ったのだとばかり 思っていたのだが?』
アンネローゼが心配そうに言う
『ローゼントには戻っておりません 先日とは 具体的に何日以前のお話でしょう?移動魔法陣を使用せず アバロンを経由する陸路や ベリオルから船で戻るのであれば 少々時間は掛かりますが… それでも』
ロキが言う
『…最も時間の掛かる 陸路を行ったとしても スプローニからローゼントまでは 丸3日もあれば到着する 何より あの男が貴女の元へ戻るのであれば わざわざ時間の掛かる方法を取るとは考えにくい …奴がスプローニを出たのは 恐らく4日前 俺の前から去ったのと同日であると 推測される』
アンネローゼが言う
『4日も以前に…?それなら もうとっくに…』
アンネローゼが視線を落とす ロキが心配して言う
『…俺はただ 奴は貴女の元へ戻る事だけを 考えているのだと思っていたが もしかしたら 奴は奴なりに考え 行動しているのかもしれん』
アンネローゼがロキへ向く ロキが言う
『…だとすれば 俺にも多少の非はある 奴の捜索に手を貸そう 丁度 …奴を探し出すのに 程良い方法がある』
アンネローゼが心配そうに言う
『ヴェルアロンスライツァーを捜索する 良い方法が…?』
ロキが頷いてモニターを消す アンネローゼが心配そうに消えたモニターを見つめる
回想終了
アンネローゼが心配そうに言う
「ヴェルアロンスライツァー… 貴方は今 何処に…?」
アンネローゼが一瞬間を置いた後 湯船から上がる
【 ? 】
ヴェルアロンスライツァーが目を閉じている
回想
ローゼント城 沐浴室 扉前
ヴェルアロンスライツァーが跪いて居る 室内から声が掛かる
『ヴェルアロンスライツァー そこに居りますか?』
ヴェルアロンスライツァーが敬礼して言う
『はっ!アンネローゼ様っ ヴェルアロンスライツァーは ここに』
沐浴室内
アンネローゼが微笑して言う
『でしたら その様な冷える場所に留まらず こちらへ入らして下さい』
室外からヴェルアロンスライツァーの声が聞こえる
『えっ!?』
アンネローゼが苦笑して言う
『ヴェルアロンスライツァー… 貴方はこのローゼントの王配であると共に 私の夫です いつまでも 私に傅く必要は無いのです』
アンネローゼが微笑んで湯をすくい 視線を出入り口へ向ける
沐浴室の外
ヴェルアロンスライツァーが困惑している 室内からアンネローゼの声が届く
『ですから こちらへ入らして下さい 今日はとても良い湯加減ですよ?この様な寒空の夜には 心まで温まる様です さあ…』
室内から湯の音が聞こえる ヴェルアロンスライツァーが赤面している 間を置いて アンネローゼの声が届く
『ヴェルアロンスライツァー?』
ヴェルアロンスライツァーがハッとして慌てて言う
『は、はいっ!その…っ わ、私は今 それほど身を冷やしてはおりませんのでっ で、ですから ローゼントの湯は 今の私には少々熱いのではとっ 思われますっ し、従いましてっ 私はこのままっ こちらで涼んで居りますので ご心配には及びません!どうかっ アンネローゼ様は ごゆるりと湯をご堪能下さいっ!』
アンネローゼの苦笑と声が聞こえる
『そうですか… では またの機会に…』
ヴェルアロンスライツァーがホッとして汗を拭い 間を置いて寒さに震える
沐浴室内
室外からヴェルアロンスライツァーのくしゃみが聞こえる
『はっくしゅんっ!』
アンネローゼが呆気に取られた後苦笑して言う
『もう…』
アンネローゼがくすくすと笑う
回想終了
猛吹雪の雪の中にヴェルアロンスライツァーが倒れていてうわごとの様に言う
「私は… こちらで 涼んで…」
遠くから犬がヴェルアロンスライツァーを見つけ走って来る 犬のベルグルがヴェルアロンスライツァーの顔を見て何度も吠える
「わん!わん!わん!わん…ッ!」 『ヴェルアロンスライツァー副隊長!起きて下さいッス!そこで眠っちゃ駄目ッスよ!』
ベルグルの声にヴェルアロンスライツァーが寝苦しそうに言う
「申し訳…ありませ… アンネローゼ様… やはり 私も湯を頂き たく…」
ベルグルが困った後一度吠える
「わんっ!」 『ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ベルグルがヴェルアロンスライツァーの頬を舐める ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚いて言う
「あっ!?アンネローゼ…様っ!?」
ヴェルアロンスライツァーの幻覚
アンネローゼが微笑んでヴェルアロンスライツァーの頬にすくったお湯を掛ける ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「アンネローゼ様… 分かりました…」
現実
ヴェルアロンスライツァーが微笑して言う
「すぐに そちらへ 参ります…」
ベルグルが衝撃を受け慌てて吠える
「わんわんっ!わぉおおんっ!」 『逝っちゃ駄目ッスよ!ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ベルグルが困り間を置いて…
ヴェルアロンスライツァーの幻覚
アンネローゼがヴェルアロンスライツァーに手を差し伸べ抱きしめる様に首筋へ顔を寄せる ヴェルアロンスライツァーが驚き頬を染めながら アンネローゼにされるがままに待つと…
現実
ヴェルアロンスライツァーが叫ぶ
「ああぁーっ!痛いっ!アンネローゼ様っ!?」
ヴェルアロンスライツァーが目を覚ます ベルグルがヴェルアロンスライツァーの首筋に噛み付いて唸り声を上げている ヴェルアロンスライツァーが慌てて立ち上がり 剣に手を向けて言う
「おのれっ ヴォーガウルフ!…と?違う、貴殿は…?」
ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られながらベルグルを見て言う
「ベルグル?貴殿であるか?」
ベルグルが嬉しそうに尻尾を振ってひと吠えする
「わんっ!」
ヴェルアロンスライツァーが呆気にとられた後一息吐いて言う
「そうか… 夢で あったのか…」
ヴェルアロンスライツァーがベルグルに噛まれた首筋をなでつつ ベルグルの首に付いている小樽に気付いて言う
「うん?それは… ベルグル?貴殿は もしや 私を助けに?」
ベルグルが嬉しそうに吠えて近くに来る ヴェルアロンスライツァーが屈んで小樽を取って言う
「かたじけない ベルグル 貴殿は私の命の恩人… いや、恩犬だな?」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑する ベルグルが尻尾を振って吠える ヴェルアロンスライツァーが小樽の栓を抜き 中身のブランデーをぐいっと飲んで言う
「ぷはーっ!」
ベルグルが衝撃を受け心配そうに鳴く
「わっ… わふっ!?」 『ヴェ、ヴェルアロンスライツァー副隊長!?』
ヴェルアロンスライツァーが顔を上げ赤い顔で言う
「この酒は スプローニのブランデー…っ ロキか…?ロキ… ロキめーっ!うおおおーーっ!」
ヴェルアロンスライツァーが叫ぶ ベルグルが衝撃を受けハッとして思う
『あーっ!まずいッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長は 実は アルコールにすっごく弱いッスー!』
ヴェルアロンスライツァーが酔った勢いのままに気合を入れて言う
「ロキーっ!この私に ガルバディアの力を持って来いだとーっ!このヴェルアロンスライツァーを!王を守る剣である私を!奴は 何と思っているのか!?」
ベルグルが慌てて吠える
「わんっわんっ わんっ!」
ヴェルアロンスライツァーが他方を向く その場所にロキの幻影が見え ヴェルアロンスライツァーをあざけてニヤリと笑む ヴェルアロンスライツァーが怒って叫ぶ
「おのれー!ロキー!貴殿という男はっ!いつもいつも 平静を装いつつ 本当はその様に私をあざけて居ったのかっ!だが!私とて分かっている!貴殿は!私が 尻尾を巻いてローゼントへ逃げ帰ると思って居たのだろう!だが違う!何を隠そう この私は ヴェルアロンスライツァーなのだ!」
ベルグルが慌てて吠える
「わんわんっ!わんわんっ!」 『ヴェルアロンスライツァー副隊長!ヴェルアロンスライツァー副隊長!とりあえず 落ち着いて下さいッス!』
ヴェルアロンスライツァーが嬉しそうにベルグルへ向いて言う
「おおっ!貴殿もそう思うか ベルグル!そうだ!奴は私の!このヴェルアロンスライツァーの力を見縊(みくび)っているのだ!」
ベルグルが衝撃を受け慌てて吠える
「わんっわんっ!わんわんっ!」 『そんな事言ってないッス!それに!そんな事ないッスよ!ヴェルアロンスライツァー副隊長!ロキ隊長はッスね!』
回想
【 スプローニ城 地下牢 】
牢の前にロキがやって来る ベルグルがハッとして格子にしがみついて言う
『ロキ隊長!俺、ちゃんと反省したッス!もう 勝手に面会許可書を出したりしないッス!何をやるにもちゃーんと ロキ隊長の言う通りにするッスよー!』
ロキがベルグルを見て 間を置いて言う
『…そうか ならば 今すぐに犬の姿へ戻れ』
ベルグルが衝撃を受ける ロキが言う
『…どうした?俺の言う通りにするのだろう?』
ベルグルが表情を悲しませて言う
『うー… そ、それはそうッス… け、けどっ 犬の姿じゃ 俺、第二国王様は出来ないッスよ!?』
ロキが言う
『…必要ない 前にも言ったはずだ そこで反省した後は 俺の飼い犬へ戻れと』
ベルグルが衝撃を受け 悲しそうに視線を落とす ロキが言う
『…早くしろ』
ベルグルがロキを見上げて言う
『で、でも… 俺もっとロキ隊長と話がしたいッス 俺、現実世界では 初めて人の姿になったッスよ?だからっ …ロキ隊長にはっ 俺っ 今までのお礼を もっとちゃんと!たくさん言いたいッス!他にもっ 犬の俺に優しくしてくれた スプローニの皆にもッスね!?』
ロキが言う
『…礼は不要だ 卿が先住民族である事は 多くの民に知られた そして、スプローニの民は 礼など言われずとも 犬からの気持ちは分かるものだ …諸卿 犬は特に意思表示が激しいからな』
ベルグルが一瞬呆気に取られた後言う
『う… な、なら ロキ隊長!犬に戻る前に 俺、一つだけお願いッス!ロキ隊長は ヴェルアロンスライツァー副隊長の気持ちも 分かる様に もっと頑張って欲しいッス!俺は人の姿の時も犬の姿の時も いっつも心配なんッスよ!?』
ベルグルがロキを見詰める ロキが無表情に居る ベルグルが表情を落としてから間を置いて仕方なく犬の姿に戻る 犬のベルグルが悲しそうな声を出して落ち込む 牢の鍵が開けられる音がして ベルグルの首に小樽が付けられる ベルグルが驚いて顔を上げる ロキがベルグルの顔を見て言う
『…移動魔法陣の警備兵へ確認を取った 奴は ローゼントではなく ガルバディアへ向かおうとしたらしい』
ベルグルが驚く ロキが言う
『…しかし、現在ガルバディアは 移動魔法陣による移動を受け付けていない それを聞いた奴はベネテクトへと向かった ガルバディアへ向かうにはベネテクトから北上するのが最短ルート だが、ベネテクトの王ベーネット殿へ確認をした所 この季節にベネテクトからガルバディアへ向かう事は 自殺行為だと言う それでも… 俺の知る奴は その道を向かう筈だ』
ベルグルが呆気に取られて口を開けてロキを見ている ロキが立ち上がって言う
『…王である俺の言葉を 奴は真に受け ガルバディアの力を得ようと向かったのだろう そして、奴はヴェルアロンスライツァーだ 一度、王の命令を耳にした以上 戻れと言っても素直に戻っては来ない …だから 人ではなく犬である卿が行き 連れ戻して来い』
ベルグルが呆気に取られていた状態から 気を引き締め了解を示してひと吠えする ロキが頷き立ち去ろうとして 止まり言う
『…それと …俺はこれでも 奴の気持ち… 考えを分かろうと 努力しているつもりだ… 心配するなと言っても無駄だろうが… これ以上 頑張る事は難しい …な?』
ロキがベルグルを見下ろして 軽く苦笑する ベルグルが呆気に取られた後 尻尾を振って喜んで吠える
『わんっ!』
回想終了
ベルグルが吠える
「わんわんっ!わんっ!わんわんっ!」 『だからッスね!ロキ隊長は ヴェルアロンスライツァー副隊長の事を!』
ヴェルアロンスライツァーが残りのブランデーを飲み干して言う
「ぷっはー…」
ベルグルが衝撃を受けて吠える
「…わっ!?わんぅ~?」 『…って聞いてたッスか!?ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ヴェルアロンスライツァーが小樽を投げ捨てて言う
「よーし分かった!良いだろう!そこまで私を馬鹿にするというのであれば!このヴェルアロンスライツァー!見事!ガルバディアの力を持ち帰ってくれようぞ!」
ベルグルが衝撃を受けて思う
『駄目ッス!やっぱ犬の姿じゃ 何を言っても無駄ッス!って言うより チョー正反対に伝わってるッスよーっ!ロキ隊長は何時も分かってくれるのに 何でヴェルアロンスライツァー副隊長には 全然伝わらないッスかっ!?』
ヴェルアロンスライツァーが歩き出す ベルグルが衝撃を受け慌てて近くへ行って何度も吠える
『ヴェルアロンスライツァー副隊長!ガルバディアへ向かっちゃ駄目ッス!スプローニへ帰るッスよ!ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ヴェルアロンスライツァーが歩きながら言う
「うむ!分かった!貴殿も応援してくれるのだなベルグル!では、共に向かい!あのロキのど肝を抜いてくれようぞ!」
ベルグルが衝撃を受け困った様子で何度も鳴く
『違うッス!二人じゃなくって 1人と1匹ッス!…って 違ったッス そうじゃなくってッスね!』
ベルグルがヴェルアロンスライツァーのマントに噛み付き後方へ引いて思う
『行っちゃ駄目ッスってばーッスー!』
ヴェルアロンスライツァーが立ち止まり振り返って言う
「なっ!?何をするベルグル!?…まさか貴殿はっ 私がガルバディアへ向かう事を…!?…そうかっ!この私よりも 飼い主であるロキの味方をすると言うのだなぁあーっ!?ならば構わぬ!私は1人で行くのだ!離せ!離さぬか!ベルグル!」
ベルグルを引きづりながら ヴェルアロンスライツァーが進む ベルグルが困って思う
『うーっ 駄目ッス このままじゃいつまで経っても ヴェルアロンスライツァー副隊長を連れ戻せないッス!こんな時 ロキ隊長ならどうするッスか!?きっと今のヴェルアロンスライツァー副隊長にはッスね!?言葉が通じても きっと駄目ッス!聞いてくれないッスよ!絶対ガルバディアへ行こうとするッス!さっきは 俺が来た事に喜んでくれたのにッスー!』
ベルグルがハッとして マントを離す ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚き転びそうになるのを堪えて言う
「のわっ ととととと…っ!?」
ヴェルアロンスライツァーが転びかけていた上体を正すと 自分の先でベルグルが振り返って嬉しそうに吠える ヴェルアロンスライツァーが呆気に取られ疑問する ベルグルが再び嬉しそうに吠えて先行して走って行く ヴェルアロンスライツァーが微笑んで言う
「…おおっ!ベルグル!貴殿もついに分かってくれたか!?そうだ!それで良い!よーし!では その調子で ガルバディアへの道案内を頼むぞ!」
ヴェルアロンスライツァーがベルグルを追って歩き出す ベルグルが嬉しそうに立ち止まって振り返り思う
『こうやって ガルバディアへの道案内をしてるフリをしながら 少しずつベネテクトへ向かうッスよ!後住民族の人は みーんな方向音痴ッス!感覚だけじゃ どっちが北だか 分らないんッス!だから!ぐるぐる回ってゆっくり南へ向かうっすよ!』
ベルグルの道案内にヴェルアロンスライツァーが続く ベルグルが一度視線を落として思う
『ヴェルアロンスライツァー副隊長… ごめんなさいッス 俺、後でちゃーんと謝るッス!だから、今回だけは許して欲しいッス!』
ベルグルが俯いていた顔を上げ 再び嬉しそうに吠えて先行して行く ヴェルアロンスライツァーが微笑みながら追って言う
「ベルグル 待ってくれ!我ら後住民族の二本足では 貴殿の様に速くは向かえんのだ!」
ベルグルが嬉しそうにぐるぐる駆け回りながら進んで行く ヴェルアロンスライツァーがまっすぐ追って行く
【 ローレシア城 客室 】
キルビーグが言う
「そうでありましたか… シリウス国王はプログラムの類を止め ご自身の御身を探されておられたと」
ヴィクトール11世が電磁鞭に締められ苦笑の表情で高級絨毯の上に倒れており その上にシリウスAがボジョレーの入ったグラスを回しながらのんびり言う
「そうじゃ~ ダウジングに余計な電磁波は邪魔になりよるからのぉ?…とは言え その間に旧世界では その様な事が起き 共に それらを知らせようと 使者まで来て居ったとは …なら もっと早ようから 我の体を捜すのは 元祖専売特許に任せておけば良かったかのぅ?」
キルビーグが苦笑する ルーゼックが呆れて言う
「いや… そうはなされずで結構だった これ以上… ローレシアに 温泉は不要だっ!」
ルーゼックが窓の外を指差す その先で温泉の柱が立ち昇る シリウスAが苦笑して言う
「ふむぅ… またハズレの温泉を探し当ておったか… とは言え これで あのフォーリエルのダウジング的中率は120%じゃぁ?流石、元祖は違いよるのぉ?」
シリウスAが笑顔になる ルーゼックが怒って言う
「であるからにして!温泉を掘り当てるダウジングは止めさせよと申して居るのだ!ローレシアの民は 温泉を好まぬ!何故なら あの硫黄の匂いが臭くて堪らんと 今ローレシアは大騒ぎだ!」
シリウスAが笑顔で言う
「そう言えば ローレシアの土地は温泉が良く出る土地でありながら その民が匂いを嫌って 偶然に見つけおっても すぐに埋めてしまうのじゃったのぉ?折角の自然の恵みであると言うのに もったいない話じゃぁ?」
ルーゼックが怒りを押し堪える キルビーグが苦笑した後言う
「シリウス国王 我らローレシアの王は この数百年 かのローレシア王ラグハーンが封じたと言う シリウス様の御神体を 探しておりました しかし…」
シリウスAが言う
「知っておる 未だ 手がかりさえも 見出せてはおらぬそうじゃな?」
キルビーグが頭を下げて言う
「謝罪の言葉もございません…」
シリウスAが言う
「謝罪は不要じゃ キルビーグ 我はお前たちローレシアの王はもちろん ラグハーンの事でさえ 少しも悪くは思って居らぬのじゃ」
キルビーグとルーゼックが驚いて キルビーグが言う
「なんと…?いや、シリウス国王 お言葉はありがたくは御座いますが ラグハーンはシリウス国王の御信頼を踏みにじった者です その罪は ローレシアの王である我らも 背負うべき事であると」
シリウスAが言う
「罪などはあらぬ 従って お前たちが背負うものもあらぬのじゃ」
キルビーグが呆気に取られてシリウスAを見る シリウスAが窓の外を見て言う
「我はローレシアの王を信じる事にしたのじゃ 現代のお前たちは勿論 それはラグハーンとて同じ 我は 我の民であるお前たちを皆 信じておる 我らは皆… 仲間なのじゃ 疑いの気持ちは 真実さえも捻じ曲げる 我は それを思い出したのじゃ もう二度と忘れぬ」
キルビーグが呆気に取られていた状態からゆっくりと微笑む 窓の外に温泉の柱が上がる ルーゼックが衝撃を受ける シリウスAが笑顔で言う
「おおっ!また 掘り当ておったわ!この調子で いつか我の身も掘り当ててくれよるかのぉ~?」
ルーゼックが怒って叫ぶ
「その前に このローレシアが 温泉だらけになってしまうわ!馬鹿者ーっ!」
【 アバロン城 玉座の間 】
ヘクターが通路から顔を出して言う
「デスー?行くぜー?」
デス2人がヘクターへ向いて言う
「「ヘクター?」何処へ行く気だ?」
2人の問いに 玉座の間を後にしようとしていたヘクターが振り返って言う
「何処って?ローレシアにシリウス国王が居るんだろ?丁度 旧ローレシアのリジューネ女帝も居るんだし あのテスクローネも居るんだ なら 俺はこの際 皆、ローレシアに集まっちまった方が 早えーんじゃねーかと思ってよ?」
ヘクターが笑顔になる 皆が衝撃を受け 家臣たちが慌てて駆け寄って来て 家臣Aが言う
「なっ 何を申されるのです ヘクター陛下!?」
家臣Bが言う
「そうです!折角、他国の皆が 我らアバロンへ集結しようとしております この時に!」
家臣Cが言う
「そのアバロンの王であられる ヘクター陛下がローレシアへ向かおうなどと!」
ヘクターが呆気に取られてから苦笑して言う
「あ?うーん けど…?俺 もう皆に 連絡しちまったぜ?」
家臣たちが悲鳴を上げる
「「「なんですとーっ!?」」」
家臣たちがデス2人を見る 2人が呆気に取られて顔を見合わせ互いに顔を横に振る ヘクターが微笑して言う
「ああ、お前らはプログラムとかなんとかで 忙しそうだったからよ?自分の部屋で兄貴の通信機に連絡したついでに 皆にも連絡したんだ!」
デス2人が衝撃を受けデス2ndが言う
「ヘクターが 通信を行っていたのか!?その様な記録は…!?」
デス2ndが周囲にプログラムを発生させる デス1stが俯いて言う
「王の部屋には ラインツ国王より以前にヴィクトール11世国王が設置した ガルバディア、ベネテクトへの直通の通信機がある… とは言え 直通と言うのは単に記録されているコードが両国の王への直通であると言うだけで 他の用途に使用する事も可能だ それを用いてデネシアに居るレクターの通信機へ連絡を行い その際に… 他の連絡先コードでも聞いたのか?」
ヘクターが笑顔で言う
「いや?俺は通信機の使い方は あんま分かんねーから 兄貴が変なプログラムで 全国の王様直通にしてくれたんだ!すげー便利な通信機になったぜ!?」
デス2人が表情を顰め デス2ndが言う
「あいつめ…っ 余計な事をっ」
デス1stが言う
「これでは 今後もヘクターが 我らへの確認もなしに直感のまま 他国の王とのやり取りを行うと言う可能性が…」
ヘクターが表情を困らせて言う
「けどよー?流石兄貴って言うか… 困るんだよなぁ~?重要な話をしてる途中で 通信が他の誰とも知らねー奴に 切り替わっちまったりするんだよ?まぁ… 少しすれば戻るから 良いんだけどよ?」
デス2人が衝撃を受け怒って言う
「「二度と使うな!」」
ヘクターが疑問して言う
「あ?何で?」
【 雪山 】
ベルグルが嬉しそうに駆け回りながら進み 振り返って吠える ヴェルアロンスライツァーが歩いて来て立ち止まり息を切らして言う
「はぁ…はぁ… なんの… これしき…っ」
ヴェルアロンスライツァーが再び歩き始める ベルグルが首を傾げて不思議そうな声を出して思う
『ベネテクトへ向かってる事を 気付かれたらヤバイッスと思って ちょっと大回りし過ぎたッスかね?ヴェルアロンスライツァー副隊長の体力なら 大丈夫だと思ったんッスけど?』
ヴェルアロンスライツァーがベルグルに近づいて来ているのを確認したベルグルが わざと元気に吠えて進む ヴェルアロンスライツァーが顔を上げ ベルグルを見て苦笑して歩みを続けるが ふと立ち止まる ベルグルが駆け回ってから振り返り目を回して思う
『ととと…ッス?俺もちょっと張り切り過ぎたッスか?なんか急に目が回ったッスよ…?』
ベルグルが顔を左右に振って ヴェルアロンスライツァーを見る ヴェルアロンスライツァーがハッと顔を上げて叫ぶ
「王…?私を呼ぶ王は誰かっ!?」
ベルグルが衝撃を受け 心配そうにヴェルアロンスライツァーを見て思う
『ヴェ、ヴェルアロンスライツァー副隊長!?』
ヴェルアロンスライツァーが振り返って言う
「答えよ!このヴェルアロンスライツァーを呼ぶのは 何処の王であるのかっ!?」
ヴェルアロンスライツァーが歩き出す ベルグルが衝撃を受け慌てて吠える
「わんわんっ!?わんっ!…」 『ヴェルアロンスライツァー副隊長!?何処に行くッスか!?そっちはガルバディアでも ベネテクトでもないッスよ!?ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ヴェルアロンスライツァーがずんずんと歩いて行く ベルグルが急いで追い掛けヴェルアロンスライツァーのマントに噛み付いて引きとめようとするが ヴェルアロンスライツァーの力が勝って引きずられて行く ベルグルが思う
『ヴェルアロンスライツァー副隊長!?まだ酔ってるッスか!?ロキ隊長の声でも聞こえてるッスかー!?』
ヴェルアロンスライツァーが歩きながら言う
「うむ!そこまで言うのであれば!このヴェルアロンスライツァー!何処までも貴殿の声に従おうぞ!」
ベルグルが衝撃を受け慌てて思う
『ま、まさかっ 死神の声でも聞こえちゃってるッスか!?やばいッス!それチョーやばいッスよー!ヴェルアロンスライツァー副隊長!しっかりして下さいッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長!』
ベルグルがヴェルアロンスライツァーの行く先を見て衝撃を受けて思う
『あーっ!やっぱりッス!ストップ!!ストップッス!ヴェルアロンスライツァー副隊長!目の前の岩壁が見えないッスかっ!?』
ヴェルアロンスライツァーが岩壁へ向かい 正面から当たり向かう ベルグルがきつく目を閉じて思う
『激突しちゃうッスーーっ!!』
ベルグルが4足で突っ張るがヴェルアロンスライツァーがそのまま進む 一瞬の後 ベルグルが目を閉じたまま 空間が変わった事に気付き疑問して恐る恐る目を開いて思う
『…あ、あれ?音が…?匂いも?変わった…ッス?』
ベルグルが呆気に取られる ヴェルアロンスライツァーがハッとして周囲を見渡して言う
「ここは…?」
ヴェルアロンスライツァーが後ろに居るベルグルを振り返って見て疑問してから 微笑んで言う
「おおっ ベルグル 私を吹雪から守るため 洞窟へ案内してくれたのか!?うむ、そうだな そう言えばベネテクトを出てから 一度も休息を取っていなかった ここならば 暖を取り休む事も出来よう」
ベルグルが衝撃を受けて思う
『ヴェルアロンスライツァー副隊長…?自分でここへ来た事を 覚えていないッスか…?』
ベルグルが首を傾げる ヴェルアロンスライツァーがベルグルの様子に疑問した後 苦笑して言う
「うん?…ああ、貴殿は大丈夫であるかもしれないが 私はもうへとへとなのだ 良く覚えていないが 貴殿を追い 随分と長く歩いていた様だ」
ベルグルが衝撃を受ける ヴェルアロンスライツァーが微笑んで言う
「アルコールのお陰で記憶は余りはっきりしないが これほど疲労するほどに歩いたと言う事は ガルバディアはもう直ぐであろう?」
ベルグルが表情を引きつらせて思う
『は… はいッス… “ベネテクトは” もう直ぐそこッス…』
ベルグルがすまなそうに顔を下げて鳴く
「クゥ~ン…」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「ならば直ぐに向かうべきであるか?はは…っ まぁ、はやる気持ちは分かるが ガルバディアへ到着後は 休んでも居られまい?何しろあの ガルバディア国王と議論せねばならぬのだ 従って 一度 ここで息を整えておこう」
ヴェルアロンスライツァーが洞窟の奥を見ながら言う
「…と、その前に 何やらあちらが気になる 休むからには 安全の確認が第一ではあるが… 何と言うか…?この私が?どうしても行かねばならぬ様な この感覚は…?」
ヴェルアロンスライツァーが洞窟の奥へ向かう ベルグルが衝撃を受け慌てて追い掛けて思う
『えーっ!?もしかして!まだ酔ってたんッスか!?ヴェルアロンスライツァー副隊長!その招き声には 従っちゃ駄目ッスよー!?』
ベルグルが慌てて追った先 ヴェルアロンスライツァーが立ち止まっていて ベルグルが焦って思う
『おわーっ!』
ベルグルが慌てて止まろうとするが止まりきれず ヴェルアロンスライツァーの横を過ぎて止まるベルグルがホッと息を吐いて思う
『あ… 危なかったッス …って!?』
ベルグルが慌てて顔を上げて思う
『も、もしかして!?ヴェルアロンスライツァー副隊長を追い越して 俺があの世へ行っちゃったッスかっ!?』
ベルグルの目の前に骸骨がある ベルグルが衝撃を受け驚いて鳴き叫ぶ
「わおぉおおおっ!?」 『ぎゃぁあーッスーっ!やっぱりッスー!ここは間違いなく あの世ッスよー!』
ベルグルがおびえている横をヴェルアロンスライツァーがゆっくり歩いて来て 跪いて言う
「私は ヴェルアロンスライツァー ローゼント国の女王アンネローゼ様の剣にして スプローニ国の王ロキとの約束を守る剣 その私へ声を掛けられた貴方様は 一体どちらの王であられるのか?」
ベルグルがハッと気を取り直してヴェルアロンスライツァーを見てから 改めて骸骨を見る 骸骨は王冠を被り立派な甲冑を着た状態で 大剣を握り締めている ベルグルが骸骨の様子に呆気に取られた後 匂いを確認する ヴェルアロンスライツァーが骸骨の手に持たれている紙に気付いて言う
「うん?これは…?」
ベルグルがヴェルアロンスライツァーを見上げる ヴェルアロンスライツァーがそっと紙を取り広げて言う
「手紙…?」
ヴェルアロンスライツァーが手紙を目視で読む ベルグルが首をかしげ疑問の鳴き声を上げる ヴェルアロンスライツァーが気付き苦笑して言う
「ああ、すまん 貴殿にも見せよう ベルグル」
ヴェルアロンスライツァーが地面に手紙を置く ベルグルが喜んで尻尾を振ってから手紙を見る
【 ローレシア城 玉座の間 】
ヘクターが首を傾げて言う
「あ?おっかしーなぁ?確かに ベネテクトのバーネットと ツヴァイザーのレイト スプローニのロキにも 『皆でローレシアに集まろうぜ』 って言ったんだけどなぁ?」
玉座に座るキルビーグとルーゼックを前に ヘクターが続けて言う
「旧世界の王を俺の親父が半殺しにしちまったせいで 旧世界もこの世界もやべーんだって …聞こえなかったのかな?」
ヘクターが首をかしげる ルーゼックが怒って叫ぶ
「であるからにして!ラインツ元国王の件は伏せるようにと話し合って置きながら!何故!貴様はそれを わざわざ他国の王へ申し伝えてしまうのか!?馬鹿者っ!」
ヘクターの近くにいるアンネローゼが驚いて言う
「ラインツ元国王殿下がっ 旧世界の王を!?それは…?確かなお話なのですか?ヘクター国王?」
ヘクターがアンネローゼの言葉に疑問し アンネローゼへ向き直って言う
「確かな話しか?って…?あんたにも話しただろ?あの時の通信で?」
アンネローゼが顔を左右に振って言う
「いいえ、伺っておりません …と申しますより ヘクター国王からの通信は とても状態が悪く 時折途切れては繋がりを繰り返しておりました為、私が確認出来ましたのは こちらのローレシアへ皆で集まろうと言う そちらのお言葉と…」
ヘクターが呆気に取られて言う
「あぁ?」
デス2人が呆れ デス2ndが言う
「そんな様子では ベネテクトやツヴァイザー、スプローニの者たちが ここに来ない理由も分かったな?」
ヘクターが困った様子で頭を掻きながら言う
「けどよー?あんた言ったじゃねーか?俺が親父の件は本当に悪いって言ったら 『今は過ぎた事を悔やむより これからの事を考えるべきだ 力及ばずとて 私にも出来る事を探そう』ってよぉ?俺、あんたは意外と強気で 頼りになる女だったんだなって?見直してたんだぜ?」
皆の視線がアンネローゼへ向く アンネローゼが驚いた様子で言う
「わ…っ 私がその様な事を!?いいえ、申しておりませんっ 私は現在行方不明の我が夫 ヴェルアロンスライツァーをアバロンで見掛けられませんでしたか?とお伺いした所 ヘクター国王が 『おう!俺も探すぜ!』と仰って下さり とても心強く思っておりましたのに…」
ルーゼックとキルビーグが顔を見合わせる デス1stが言う
「なるほど… あのレクターのプログラムのせいで ヘクターの通信が他者へと繋がり その何処の誰とも分からぬ者との会話の後 アンネローゼ女王の通信へ戻ったと…」
デス2ndがデス1stへ向いて言う
「それでは その何処の誰とも分からぬ “強気で頼りになる女” には この世界と旧世界の危機が知られてしまったのだな?」
キルビーグが言う
「それだけではなく もしや ベネテクトやその他の国へ送った通信も 他の者へ漏洩してしまった可能性があると言う事ではなかろうか?とりあえず まずはローレシアからそれらの3国へ向け 改めて通信を送ろう」
デス1stがヘクターへ向いて言う
「ヘクター?因みに その女の声に聞き覚えは?アンネローゼ女王に似ていたのか?」
皆の視線がヘクターへ向く ヘクターが一瞬呆気に取られてから困った様子で言う
「あー… いや?良く考えたら 聞いた事のねー声だったかなぁ?けど、女の声だって事は分かったもんだから… 俺もまさか 通信先が他の奴に変わっちまうだなんて その時は考えもしなかったからよ?」
ヘクターがすまなそうな表情を見せる ルーゼックが言う
「ふむ… 確かに その様なおかしな通信機は 何らかの問題の元にもなりよろう 今後は二度とこの様な事が起こらぬよう その通信機は処分しておくが良い」
ヘクターが言う
「あ?いや 処分じゃなくて 修理すれば良いんだろ?なぁ?デス?」
ヘクターがデス1stへ向く デス1stが表情を顰めて言う
「…いや、あのレクターが 一度手に掛けた物を修理すると言うのは御免だ 正直 完全な通常の通信機の状態へと戻せる自信がない」
ヘクターが言う
「あぁ?何だよデス 最近のお前は随分弱気じゃねーか?」
デス1stが言う
「慎重だと言ってくれ 夢の世界とは違い 現在のこの現実世界には 我らの父であるシリウス国王を初めとする 旧世界からやって来た 初代ベネテクトのデス・グローテ そして、我らの敵 異世界の王たちが あらゆるプログラムを用いている 今回の通信機の件は 確かにレクターの行いが元凶であろうが どんな些細な隙にも 異世界の王たちは入り込んで来る筈だ」
アンネローゼが言う
「異世界の…王?」
ヘクターがアンネローゼへ向いて言う
「ああ、皆がそろってから ちゃんと説明するつもりだったんだけどよ?」
ローレシアの大臣がキルビーグへ連絡を伝える キルビーグが頷いてから皆へ言う
「ヘクター国王 ここに居らぬベネテクトの王とツヴァイザーの女王なのだが 彼らは現在 スプローニへ集合しておるとの事だ」
皆がキルビーグへ向き ルーゼックが言う
「スプローニへ?何故スプローニに…?ベネテクトへ集まるのならまだしも」
ルーゼックがヘクターへ向く ヘクターが一瞬呆気に取られてから言う
「俺はスプローニの国名に関しては 通信では一言も言ってねーぜ?」
キルビーグが苦笑して言う
「更に、いつの間にやら このローレシアの客室に居られたシリウス国王を初め リジューネ女帝 更にはフォーリエルとテスクローネも向かっておったらしい」
ルーゼックが衝撃を受け叫ぶ
「なにぃいーーっ!?」
ヘクターが困った表情で言う
「あちゃぁ~?何だよ?その3人が居るからって ローレシアにしたのに… なぁ?」
キルビーグとルーゼックが衝撃を受ける アンネローゼが苦笑する デス2人が周囲にプログラムを発生させていて衝撃を受け デス1stがあわてて言う
「そっ!?それらの者が スプローニへ向かった理由が分かったっ!彼らは…っ!」
【 スプローニ城 玉座の間 】
ロキが言う
「…俺は確かに卿へ 『この世界で最強の力 ガルバディアの力でも持ち帰って来い』 と …そう言ったが…」
ヴェルアロンスライツァーが満足そうに笑んで言う
「御意!私は スプローニ王との約束を守る剣!ヴェルアロンスライツァースプローニガイントロブロワイヤーでもある!スプローニの第二国王の王位を頂いた際 共に授かったこの名の通り 私は今!スプローニの王との約束を守り これを持ち帰った!見よ!これぞ 紛う事なき 『最強の力!ガルバディアの力』 である!」
ヴェルアロンスライツァーがガルバディアの生態維持装置を示す ロキが焦って叫ぶ
「最強過ぎるだろーーっ!」
シリウスAが笑顔で言う
「まさか ローゼントの王配で ついでにスプローニの第二国王である者が 我の本体を見つけてくれよるとはのぉ?時代は変わったものじゃ~?」
シリウスAが軽く首を傾げて考えながら言う
「これからの時代は ローレシアでもアバロンでもなく… ローゼントかスプローニ辺りかのぉ?」
ロキが衝撃を受けまんざらでもない様子でシリウスAを見る テスクローネが手紙を読んでいて フォーリエルがそれを覗き込んで言う
「『かの者は 私の答えを聞くと その後様々な者へと化けては シリウス様の御神体を差し出させようと図った 私は これ以上ローレシアにシリウス様の御神体を置く事へ危惧を覚え ガルバディアへ シリウス様の元へ御神体をお届けする事にした だが、もはや ローレシアだけではなく 他の誰一人として信用の置ける者は居ない 私は1人 人知れず シリウス様の御神体を隠し持つと共に ガルバディアへの道を デネシアを迂回する形で向かった しかし その道中…』」
シリウスAが表情を落として言う
「ラグハーンはローレシアの王であると共に アバロンの大剣使いだったのじゃ あの平和な世で あやつに敵う者など居らなかった ラグハーンの判断は間違いではあらなかったのじゃ しかし、我の猫が… 我が悪かったのじゃ 我はヴィクトールを守れなかった その上我は取り乱しておったとはいえ ヴィクトールの身に 操りのプログラムを実行されておった事にすら 気付けなかったのじゃな…」
フォーリエルがシリウスAを見る テスクローネが手紙を見たまま言う
「『雪山を進む私の前に現れたヴィクトール様は その青き瞳を 真っ赤に染められ 私へ襲い掛かられた 私は何度も言葉を掛けたが やはり 動物であるヴィクトール様に 人である私の言葉は届かないのか 何故私を襲うのか 私に敵意は無いと伝え続けたが とうとう私は ヴィクトール様を斬り付け シリウス様の大切な猫の その御命を奪ってしまった』」
シリウスAが目を閉じて言う
「じゃが、操りのプログラムは その者の命が途絶えようとも 僅かながら身を操る事が出来よるのじゃ ヴィクトールの死を確認し ガルバディアへ向かおうとしたラグハーンは それに背後から襲われてしもうた… 我はずっと愛嬌を持たせる為に あれを猫と呼んでおったが ヴィクトールはこの世界でも既に絶滅した 大ライオンの生き残り 人の命を奪う事など その片腕だけでも十分なのじゃ」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「それでもかの王は 傷付いた己の身を叱咤し シリウス国王の体が封じられた機械を担ぎ あの洞窟までの道を進んだ後 そこで命を失った… その上 息絶えた後も」
シリウスAが目を閉じ 生態維持装置へ手を置いて言う
「ラグハーンはアバロンの力で 我を守り続けてくれおった… 今日この日の為 誰にも我の本体の在りかが分からぬ様 隠し通してくれよったのじゃ やはり… アバロンの力は… 幻想を現実とする力は凄いのぉ」
シリウスAが笑顔で言う
「やっぱり 我らガルバディアの相棒は アバロンじゃな!」
ロキが衝撃を受け顔をそらす シリウスAが生命維持装置に手を乗せた状態で目を瞑り周囲に軽くプログラムを現してから目を開き微笑して言う
「うむ、状態も良好じゃ これなら直ぐにでも戻れそうじゃ」
バーネットが腕組みをしていて言う
「本体にさえ戻っちまえば 新旧両世界を守る プログラムが出来やがるんだろ?親父が早くしろって伝えやがれってよ 直接言やぁ良いものを わざわざ俺へ通信を送って来やがったぜぇ?」
シリウスAがバーネットへ向いて言う
「わざわざ人伝にしよるなど あやつはプログラマーとしても 人としてもまだまだじゃなぁ?それとも 我へ通信を繋ぐ事がそんなに恐ろしかったのかのぉ?」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「シリウスがいじめるからだよ~ バーネット1世は昔からシリウスに暇つぶしにいじめられてたから その苦い思い出が 300年振りに戻っちゃったんじゃないの?」
ヴィクトールが衝撃を受けバーネットへ向いて慌てて言う
「バーネット!?今のホント!?バーネット1世様は 300年も前から生きてたって事ぉっ!?って事は 今は300歳!?」
バーネットがバツの悪そうに言う
「んあぁ~ 正確に言いやがれば314年前からだぜぇ でもって 中身はまぁそうだが 体はそんな歳じゃねぇよ 何回か入れ替えてやがるって言ってやがったからなぁ?大体見た目だって てめぇの父親より 1、2歳若ぇだろ?」
ヴィクトールが泣きそうな表情で言う
「そ、それじゃ バーネットも何回か入れ替わっちゃってるのぉ?だとしたらっ バーネットは僕以外の猫とだって 遊んじゃってたりしちゃってたって事だよねっ!?酷いよ!バーネット!僕以外の猫と遊んでたなんて!僕はっ!僕は バーネットの何人目… 何匹目の猫なのぉおお~っ!?」
ヴィクトールが大泣きする バーネットが衝撃を受け慌てて言う
「だぁああ!待て!待ちやがれっ!早とちりして泣きやがるんじゃねぇえよっ!ちったぁ考えやがれ!てめぇは 何代目のヴィクトールで居やがるんだ!?」
ヴィクトールが泣き止んで言う
「…え~?何代目…13代目」
バーネットが呆れた様子で言う
「でぇ…?てめぇの先代ヴィクトールは 何処のどいつだぁ?」
ヴィクトールが微笑して言う
「僕の先代はヴィクトール12世!僕の父上だ …ついでに11世の祖父上!」
ヴィクトールがヴィクトール11世を指差す ヴィクトール11世が気付いた後笑顔になる バーネットが溜息を吐いて言う
「はぁ… なら分かりやがるだろぉ?」
ヴィクトールが不思議そうに首を傾げる バーネットが衝撃を受け表情を困らせ説明する
「だぁっ!?…つまり、俺の親父 バーネット1世は314年前に作られやがったが 相棒としてヴィクトール12世を貰いやがったのは53年前だぁ ついでに 親父が俺を作りやがったのは 今から34年前なんだよ てめぇが生まれやがった1年後だ」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「猫って呼ばれるけど 人である僕らの祖先ヴィクトール1世が シリウスに拾われたのが今から500年位前だからね それまでの間シリウスは大ライオンのヴィクトールを失って ついでにローレシアの民から ラグハーンがシリウスを裏切って体を封じちゃったんだって聞いて ショックで引き篭もっちゃってたんだよ」
シリウスAが言う
「あの大ライオンは 新世界の王であったシリウスBから貰ろうた 大切な贈り物だったのじゃ 我はそのヴィクトールを可愛がりながら 良くBと通信をしておった じゃがそのヴィクトールが 新世界の… それも 我が一番に信頼しておったラグハーンの剣に斬られておった事で 我はすっかり取り乱してしもうた… 我も若かったものじゃなぁ」
ヴィクトール11世が笑顔で言う
「若かったって言っても その当時でも シリウスは軽く800歳を越えてたらしいけどね?」
一瞬場が凍る
シリウスAが言う
「さて、これで全ての準備が整ったのじゃ」
皆の視線がシリウスAの足元に向く その場所でヴィクトール11世が苦笑して電磁鞭に縛られ踏まれている バーネットが気を引き締めて言う
「てめぇが本体に戻りやがったら 旧世界と通信を繋ぎやがるのか?それなら 俺やその辺の奴らで 異世界の王やらなんやらからのハッキングを全力で止めてやるぜぇ?」
バーネットがデス2人とテスクローネを示す 示された3人が反応して テスクローネが言う
「ガイ隊長の話では 現在旧世界を守っているのは シリウスB様のご子息 ルシフェル様であると そうだとしたら こちらからの通信を完全に守っても あちらからの発信をフォローする者が居りませんよ?」
シリウスAが言う
「案ずるな 全ては計算付くじゃ 我は 神と呼ばれた者じゃぞ?」
シリウスAが微笑する 皆が呆気に取られる ヴィクトール11世が立ち上がって言う
「シリウス…っ 本当の体に戻るの?シリウスの本当の姿って…」
ヴィクトール11世が身震いする シリウスAが表情を悲しめて言う
「ヴィクトール… お前にまで嫌われてしもうたら 我はやはり悲しいのぉ …しかし もはやこの義体では 手に負えぬのじゃ」
シリウスAが微笑してヴィクトール11世の頭を軽く撫でる ヴィクトール11世が不安そうに言う
「シリウス 僕は…」
シリウスAが生命維持装置へ向き直り目を閉じてプログラムを発生させる 皆が見詰める シリウスAの体に大量のプログラムが纏わり そのプログラムが全て生命維持装置へ流れ込む 皆が呆気に取られ プログラムの入った生命維持装置へ視線を向ける ヴィクトール11世の横でシリウスAが倒れる ヴィクトール11世がハッとして慌てて抱き止めて言う
「シリウス!?」
生命維持装置が起動して音と共に蓋が僅かに開き やがてすべてが開く ヴィクトール11世と共にシリウスAの義体へ視線を向けていた皆が 生命維持装置へ視線を戻す 装置中に立ち込めていた水蒸気が消え 本体のシリウスAが目を開く
大陸を覆うほどの大量のプログラムが解放される
新世界に居る生命を持つ者たちが 一瞬の出来事に疑問して辺りを見渡す
生命維持装置の周囲にいた皆が得体のしれない力を前に 人知れず息が止められている シリウスAの上体が起き上がる ヴィクトール11世がシリウスAの義体を抱き止めた状態で屈んでおり ハッと気付いて立ち上がる シリウスAが僅かに顔を向けヴィクトール11世を見る ヴィクトール11世がシリウスAを見詰め一瞬間を置いてから言う
「シリ ウス…?」
シリウスAが苦笑して言う
「我が恐ろしいか?ヴィクトール」
ヴィクトール11世が呆気に取られた後 笑顔になってシリウスAへ抱き付いて言う
「シリウスーっ」
周囲にいた皆が呼吸を取り戻し シリウスAとヴィクトール11世を見る シリウスAが微笑んでヴィクトール11世の頭を撫でて言う
「我の義体を 守ってくれおったのじゃな?良い子じゃ」
ヴィクトール11世が呆気に取られた後 自分の片手に抱いていたシリウスAの義体を見て シリウスAの顔を見て微笑して言う
「うんっ けど、僕 シリウスは 元々女性っぽい人なのかなー?って思ってた けど 違ったんだね?」
シリウスAが苦笑して言う
「その姿は お前たちが好んだ姿じゃ ヴィクトール 我はお前の先祖が理想としおった人の姿を 我の息子の姿にしたのじゃ お前の血族が我の息子を 未来永劫好んでくれよる様にとのぉ?」
バーネットが衝撃を受ける ヴィクトールが呆気に取られ瞬きした後 笑顔になって言う
「なんだ?そーなんだ!通りで 僕の初恋の人が バーネッ…」
皆の視線の先 ヴィクトールが苦笑の表情で バーネットの鞭に縛られ踏まれている シリウスAが笑顔で言う
「ほれ、性格も お前好みじゃろ?」
皆が呆れる ロキが息を吐いて言う
「…先ほどの威圧は」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「ああ、まるで何処へやらと 行ってしまったようだ」
ベルグルが呆気に取られている フォーリエルが呆気に取られている テスクローネが微笑する
【 ローレシア城 玉座の間 】
キルビーグが驚いて言う
「なんとっ シリウス国王のお体が 発見されたと!?」
皆がキルビーグを見る キルビーグの前に跪き報告していた伝達の兵が言う
「はっ スプローニより先ほど入りました連絡です キルビーグ陛下へ取り急ぎお伝えして欲しいと シリウス国王の御神体は 既にシリウス国王陛下、並びに ベネテクト国第二国王陛下バーネット2世様や その他 関係者が揃い 間違いなく確認を済ませた との事です」
キルビーグが苦笑して一息吐いて言う
「そうか… 無事見つかったのか それは良かった 我らローレシアの者が見つけ出せなんだった事は残念だが これで 僅かながら肩の荷が下りたと言うもの…」
ルーゼックが言う
「では、そのシリウス国王は 己の真の体へと戻ったのだろうか?それにより… 何らかの変化が起こりよるのか?」
キルビーグが言う
「ふむ… 私も詳しい事は分かりかねるが シリウス国王の神の力が より強力になるのではなかろうか?現在でも ガルバディアのプログラムと言う力は 我らにとっては神の力に等しいもの それが強まると言う事は この世界や旧世界を救う力になるだろう」
アンネローゼが言う
「神の力… ガルバディアのあの力が 更に強まり その力を持って世界をお守り頂けるのでしたら この新世界も旧世界も きっと救われるのでしょうね」
ヘクターが笑んで言う
「すげーな!どれほど強ぇのか 俺と決闘してくれねーかな!?」
キルビーグ、ルーゼック、アンネローゼが衝撃を受ける ヘクターが笑顔になる ルーゼックが呆れて言う
「ヘクター 貴様は今までの話を 聞いて居らなかったのか?」
ヘクターが疑問して言う
「あ?聞いてたぜ?シリウス国王がすげー強くなるんだろ?だったら 世界一の大剣使いの俺と世界一のプログラマーのデスたちの俺たちで どっちが強ぇーか 戦ってみてーって 思うだろ!?」
キルビーグとアンネローゼが苦笑する ルーゼックが怒って言う
「思わぬわ 馬鹿者っ!大体 神と呼ばれる者と戦おうなどとっ!考えるまでもなかろう!?」
ヘクターが不思議そうに首を傾げて言う
「そっか…?俺は最初に考えたけどなー?」
ヘクターがデスを見る デス2人がプログラムを行っていて デス2ndが言う
「1st、ではやはり 先ほどの膨大なデータの送信は」
デス1stが言う
「ああ、たった今 使用コードの確認が取られた 今までとは比にならない容量だが シリウス国王の物で間違いない …それにしても、これ程の膨大なデータを あの一瞬で作り上げ実行するとは… それに完成度も100% ミス所か 隙もない… 一体何のデータであったのか その解析を行おうにも 私では進入の糸口さえ見出せない…っ」
デス2ndが気付いて言う
「うん?これは…?1st ガルバディアの生命製造装置が」
デス1stが気付き驚いて言う
「凍結していた 生命製造装置を起動させたのか?…いや、それどころじゃないっ」
【 スプローニ城 玉座の間 】
シリウスAがヴィクトール11世の頭を撫でていて気付いて言う
「うむ、やっと整いおったか 少々時間が掛りおったのぉ やはり 久方振りの本体では 調子がイマイチじゃ この程度の事に232秒も時を掛けよる様では まだまだ 実戦には向かぬわ」
皆が疑問する シリウスAがヴィクトール11世の抱えるシリウスAの義体へ触れて言う
「我はこの義体を持って 一度旧世界へと向かう 後の事は… そこのバーネットへ任せてやるからのぉ?せいぜい励むのじゃ」
バーネットが衝撃を受けあわてて言う
「なぁ!?お、俺にっ!?冗談じゃねぇ!?何言ってやがるんだっ てめぇえはぁあ!?」
シリウスAが微笑して言う
「案ずるな非力な孫よ 義体の我が作った軟弱なお前だけでは この世界のせの字も守れぬわ 我は“そこの”バーネットと言ったのじゃ 何ならついでに そこの下手なハッキングを行っておるハッカー 我が示したバーネットを弾き出して見せよれ?」
シリウスAの視線の先に一瞬火花が散り ホログラムのバーネット1世が弾き出され 慌てて振り返って怒る
『だあっ!?て、てめぇえ!このスットコハッカーがぁあ!折角上手く隠れてやがった俺様を 弾き出しやがるんじゃねぇえ!』
バーネット1世が怒りの視線を向けた先に雷が落ち ホログラムのスファルツが手を押さえた状態で現れ慌てて言う
『い、痛いではありませんかっ!何をなさるのです!?大体、仕方がないではありませんか!ご依頼は貴方のお父様 偉大なるシリウス国王 直々のものなのですよ!?』
バーネット1世がスファルツへ迫って怒って言う
『だからスットコだって言ってやがるんだぁ!シリウス国王がご指名しやがったハッカーは てめぇえじゃねぇえ!』
スファルツが呆気に取られて言う
『は?私では…?では こちらでしたか?』
スファルツが顔を向けた先 火花が散り ホログラムのベハイムが現れて言う
『痛いっ!何をなさるのです!?私は探し人を求め たまたま通り掛っただけの 電波ですのにっ!?』
シリウスAが微笑して言う
「ふむ、全員出揃いおったのぉ?では お前たち全員へ命令じゃ」
スファルツとベハイムが衝撃を受けて言う
『『え!?』』
バーネット1世が溜息を吐いて言う
『ハッ… 分かんねぇのかぁ?相手はこの世界の万物を操るってぇえ 神様クラスのプログラマーだぜぇ?てめぇらの存在と行動なんざ 全てお見通しの計算尽くなんだよ?』
ベハイムが慌てて言う
『お、お待ち下さい シリウスA様 私は本当に ただ、ここを通り掛っただけなのですっ 私は先ほども申しました通り 大切な人探しを…っ』
シリウスAがベハイムへ向いて言う
「生憎 お前の用事などに構っておる時間はあらぬのじゃ 事は一刻を争う 故に程よく集まりおったお前たちプログラムを行う力のある者は我の命に従うのじゃ これより我は旧世界へ向かいシリウスBの意識を この義体へ移さねばならぬのじゃぞ?」
バーネット1世が腕組みをして言う
『さっきは黙ってたが 叩き出されちまったからには これ以上黙ってられねぇ てめぇえが旧世界に行ってやりてぇ事が そのシリウスBの意識を移しやがる作業だってぇんなら そいつは 俺が代わってやってやるぜ』
皆がホログラムのバーネット1世を見る バーネット1世が続ける
『てめぇが この新世界を離れる事は 危険過ぎやがる この話をしてやがる今でさえ 異世界の王どものプログラムが この世界へ入り込んでやがるんだからなぁ?』
シリウスAが言う
「Bの持つ情報量は我と同等じゃ お前の手に負えるものではあらぬ 例え ここに居るお前たち全員を向かわせた所で いつまでに どれほど正確に出来よるかも分からぬ 従って 我自らが向かうのじゃ」
シリウスAが周囲にプログラムを発生させる バーネット1世が焦って言う
『おいっ 待ちやがれ!てめぇは 本気で言ってやがるのかぁ!?この新世界は 異世界の王どもから 総攻撃を受けてやがるんだぜ!?この状態で てめぇがこの世界から離れやがったら!奴らは一気に攻め込んで来やがる筈だ!この際もう 殆ど民の居やがらねぇ 旧世界の事は諦めてでも てめぇはこの新世界に留まらなけりゃ ならねぇ時だろうがぁあっ!?』
シリウスAがバーネット1世を見上げて言う
「旧世界に関しては 残念ながら もはやお前の言う通り 一度は諦めざるを得ぬ… とは言え Bの事じゃ 最悪旧世界が奴らの手に渡ろうとも あちらの世界にて作り上げてきた物を 奴らに触れられぬ様 状態凍結プログラムが組まれて居る筈 従って 一度は手放す事になろうとも かの土地が奴らに完全に支配されよる心配はあらぬのじゃ」
バーネット1世が手を振り払って怒って言う
『なら尚更だぁあ!旧世界が駄目なら てめぇえが行きやがる必要なんざ まったく有りやがらねぇ!』
シリウスAが言う
「バーネット、我は言った筈じゃ 我は旧世界へ向かいBの意識をこの義体へ移さねばならぬのじゃ このままでは 本当にBの命が危ぶまれるのじゃぞ?」
バーネット1世が言う
『…その間に この新世界がぶっ潰されちまうかもしれねぇって 言ってやがるんだろぉがっ 出来損ないの俺らと 新人類のプログラマーごときが 異世界のロストヒューマンを2人も 相手になんざ出来やがらねぇえんだよ!』
シリウスAがプログラムの作成を終え微笑して言う
「では この世界も終わりじゃのぉ?我らが戻るまでに お前たちが守りきれなかった時には 我とBの2人でリジルもリゲルもまとめて成敗し 後に両世界の始末と再生を行うまでじゃ?」
バーネット1世と2世が驚き目を見開く 周囲の者が呆気に取られ顔を見合わせ フォーリエルがテスクローネへ言う
「テス?シリウスA様は 何を言ってるんだ…?」
テスクローネがフォーリエルの問いに一度視線を向けてから困る バーネット1世が言う
『本気で 言ってやがるのか…?』
シリウスAが言う
「バーネット 我はお前たちに この世界を任せると言っておる 今この世界に在る全ての生命を お前たちへ預けるのじゃ お前たちはそれらを 全力を持って守れ 良いな?」
シリウスAが微笑して消える バーネット1世が呆気に取られた後慌てて言う
『なぁあ!?本当に行きやがったっ!』
皆が呆気に取られている バーネット1世がプログラマーたちへ向いて言う
『おいっ!てめぇえら!本気の全力で手伝いやがれよ!?』
バーネット1世のホログラムが消える バーネットとテスクローネの体にプログラムが発生する バーネットが言う
「のわっ!?こ、こいつはっ!」
フォーリエルが慌ててテスクローネへ言う
「テスっ!?」
テスクローネが言う
「これは 移動プログラム…?」
ヴィクトールとフォーリエルが慌てて叫ぶ
「バーネット!」「テス!」
ヴィクトールがバーネットに フォーリエルがテスクローネへ手を伸ばし同時に4人が消える 残されたロキ、ヴェルアロンスライツァー、ベルグルが呆気に取られ顔を見合わせる
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