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1-2 神に愛されし者
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ソニヤが思わず言う
「あれが シリウスBね… でも、何だか全然似て無いけど?」
セーリアが言う
「二卵性の双子なのかしら?」
ラナが言う
「そういう問題じゃないでしょ?あれでも私たちと同じ人なの?」
シリウスBがソニヤたちへ視線を向ける ソニヤたちが焦って息を飲む ラインツが視線を強め大剣の柄を握り締める ヘクターが言う
「仲間の機械兵を俺たちにぶっ倒されておきながら 礼を言ったって誤魔化されねーぜ!?お前が闇の王シリウスBだな!新世界へ機械兵を送り込んだり ソイッド村の連中をさらって行った責任は 償わせてやるぜ!」
ヘクターが剣を振り払って構え直す 他のメンバーも構える シリウスBが皆の様子を見て鼻で笑い シリウスへ視線を向ける シリウスが気付く ヘクターがシリウスBへ向かって駆け出して言う
「何とか言え!ソイッド村の連中を返して 今後は二度と新世界の連中へ危害を加えないと 約束しろ!…じゃなけりゃ!」
ヘクターがシリウスBへ大剣を振るう 皆が息を飲む ヴィクトールが収めていた大剣の柄に手を掛ける
瞬間
ヴィクトールの視界に見えていたヘクターとシリウスBが消える ヴィクトールが驚いて言う
「ッ!?ヘクター!?」
ヴィクトールが驚いていた状態からハッとして辺りを見渡す ヘクターだけでなく 周囲に居た仲間たちや 倒したはずの機械兵の残骸も消えている ヴィクトールが息を飲んで振り返って言う
「バーネット!?」
ヴィクトールの視線の先で バーネットが周囲を見渡して言う
「ど…っ どうなってやがる!?」
ヴィクトールが一度呆気に取られてから肩の力を抜いて バーネットの近くへ向かいながら言う
「皆は…?」
ヴィクトールが気付き足を止めて振り返る ヴィクトールとバーネットへ向けて 獣の牙を持つ者が殺気を向けて現れる ヴィクトールとバーネットが身構える 獣の牙を持つ者が上体を低くして両手に短剣を握り身構える ヴィクトールが大剣を抜いて構える
ルーゼックが驚き呆気に取られた状態で辺りを見渡す 視界に見えていたヘクターや 周囲の機械兵の残骸が消えている ルーゼックが言う
「な… なんだっ!?一体 何が起きおった!?ヘクターや… あの者はっ!?」
ルーゼックの後方で キルビーグが言う
「ふむ これは恐らく…」
デス1stが言う
「位相を変えられた」
デス2ndが振り返って言う
「位相を?」
ヘクターがギリギリで止めていた大剣の 刃の先の空間を見て言う
「…逃げられたって事か?」
ヘクターが振り返り 視界に入った空間を見て呆気に取られる デス1stが自分たち3人しかいない空間の中で ヘクターを見上げて言う
「いや 逃げられたと言うよりも 我々が“飛ばされた” と言った方が近いだろうか?」
ヘクターが2人のデスの下へ向かいながら言う
「なら…?」
ヘクターの問いにデス2ndが言う
「戻るには、変えられた位相を… 戻すプログラムを作り上げるか もしくは」
近くに重い地響きが轟く ルーゼックが視線を向けて言う
「面白い… たった今 己の体より数倍の大きさに鉄と機械の力を有する 機械兵を打ち倒した我らへ?」
ルーゼックが自分の前で 自分たちへ向けて大斧を振り下ろそうと構えている巨人を見上げて言う
「今更 その我らと同じ肉体を持った ただのデカ物を差し向けるとは?…随分と甘く見られたものぞ!」
キルビーグが支援魔法を放つ ルーゼックが巨人が振り下ろした大斧を避ける キルビーグが続けて魔法詠唱を行う ルーゼックが剣を振りかぶって言う
「この者を倒して見せれば 満足だと申す事か!?シリウスBとやら!」
ルーゼックが魔法剣を振るう
【 新世界 ガルバディア城 城門前 】
槍使いの襲撃者が倒れている レクターが顔を上げ 瞳の色が元に戻り一息吐いてから 槍使いの襲撃者の近くへ来て言う
「私はお前を殺しちまいたくはねーんだ “変なプログラムの実験体” にされちまったみてーだけど お前も私も 同じ人だ 住む世界は違っても 私たちは仲間で居られるんだ」
槍使いの襲撃者が息を切らしながらレクターを見上げる レクターが悲しそうに微笑する 槍使いの襲撃者が言う
「…貴殿も… シリウス様と 同じ様に笑う… 分かっているのだろう… この戦いの無意味さを…」
レクターが一瞬驚いてから言う
「シリウス様…? 旧世界の王 闇の王シリウスBの事だな?」
槍使いの襲撃者が苦笑して言う
「闇の王… 我らにとっては シリウス様こそ 旧世界に残された 最後の光り… 私は… ここで死ぬ訳には行かない シリウス様の為にも…」
槍使いの襲撃者が起き上がりレクターを見る レクターが様子を伺う 槍使いの襲撃者が僅かに微笑してレクターを見て言う
「貴殿も “変なプログラムの実験体” …とやらに されたのだろう」
レクターが苦笑して言う
「ああ、そうなんだ お陰で私は世界一の大剣使いには なれなくなっちまった ガルバディアの力は 使わねーようにしようとしても 勝手に目の前に見えちまったり 勝手に力を貸してくれちまったりする けど、それじゃー 本当の大剣使いじゃねーんだ」
槍使いの襲撃者が言う
「それでも 貴殿の力は強い… この世界を守る力だ 世界は貴殿を必要とする」
レクターが疑問する 槍使いの襲撃者が言う
「私はシリウス様の下へ戻る 次に会う時 私は更に強くなっているだろう 貴殿を倒せる程に …忠告する 私を殺すなら 今が最後だ」
槍使いの襲撃者の周囲にプログラムが発生する レクターが呆気に取られた後 笑顔で言う
「お前のお陰で 私も強くなりたいと 久し振りに思った!この気持ちは 私は好きだ だから私は 私にそう思わせてくれた お前の事も好きだ!殺したくはねーけど また戦いてーと思う!」
槍使いの襲撃者が苦笑して言う
「おかしな方だ だが、悪くない その時にこそ 貴殿の本気を見せて貰う」
槍使いの襲撃者がプログラムに消える レクターが呆気に取られた後 照れて言う
「やっぱりあいつはすげー奴だ 私が本気で戦ってねー事がバレちまってた!けど、私は本気で戦ったデータを デス1stには見せてねーんだ だから、今の私にはあの戦いが限界なのだ もしかしたらあいつは そこまで分かっていたのだろうか?…おお!だからあいつは 次回こそ2人で全力で戦おうと言ったのだな?!そんな事にも気付けねー私は やっぱり 誰よりも間抜けているのかもしれねー そんな気がする!」
レクターが笑顔でいる 周囲のガルバディアの騎士たちが呆れている
【 カイッズ国 城下門前 】
リーザロッテが叫ぶ
「さあ!最後の一押しでしてよ!総員 一斉開砲用意!」
リーザロッテが槍を振り示して叫ぶ
「撃てーーっ!」
カイッズ大砲部隊が一挙に砲撃を行う カイッズ城下町へ向かっていた機械兵らが横一列に放たれた砲撃を受け倒れる リーザロッテが高笑いして言う
「オーホッホッホッホ!カイッズ聖戦部隊に 機械兵など足元にも及ばなくってよー!」
カイッズ部隊と巨人族が喜んで喝采を上げる カイッズ部隊長がリーザロッテの元へ走って来て言う
「我らの下っ端聖母様!機械兵の残存を確認して参ります!」
リーザロッテが微笑して言う
「ええ!そうして頂戴!」
カイッズ部隊長と部下が機械兵の残骸へ向かって行く 端で見ていた司祭が悔しがって言う
「くそぉ~っ 我らをお救いして下さる聖母様は 下位の聖母様だと言い広めておいたのが まさかこの様に裏目に出てしまうとはっ!」
リーザロッテが気付いて言う
「あ、そうだわ ツヴァイザーの機械兵は ベネテクトとスプローニの部隊が 自国防衛のおまけに成敗して下さったと言っていたけど その後の連絡は無くってね?こちらもひと段落した事だし レリアンへ連絡を入れて差し上げようかしら」
リーザロッテが通信機を取り出して通信する 通信機のモニターにレリアンが映るとリーザロッテが言う
「レリアン!カイッズ周囲の機械兵は制圧して差し上げてよ!そちらも変わりは無くって?」
通信機のレリアンが微笑して言う
『いいえ、変わりはあったわ しかし、』
【 ツヴァイザー城下町前 】
レリアンが微笑して言う
「ベネテクトとデネシア両国の魔法剣士部隊が ツヴァイザーを助けに来て下さったの そして、ヴィクトール14世の指揮の下 新たに送り込まれた旧世界の機械兵らを制圧して 今はその残骸の確認に ベーネット国王もいらして旧世界の機械兵に関する調査を行っている所よ」
レリアンが振り向くとベーネットが壊れた旧世界の機械兵に手をかざし 目を閉じて周囲にプログラムを現している その横でヴィクトール14世が見守っている
【 カイッズ国 】
リーザロッテが呆気に取られて言う
「え?ベネテクトとデネシアの…?それに ヴィクトール14世陛下とベーネット陛下が…?そう、良かった 流石レリアンね!新たに送り込まれた機械兵へ迅速な処置をして頂けた事へ ツヴァイザーの王女として礼を言いましてよ!」
通信機のレリアンが苦笑して言う
『私はただ、他国へ助けを求めただけ ベネテクトとデネシアから援軍が駆け付けて下さるまでの間は 私たちの優秀勇敢なる仲間たちが 必死に仲間の故郷であるツヴァイザーを守っていたのよ 貴方からのお礼は その彼らに言って上げて頂戴』
通信機にレイト、ヴェイン、ロイ、シャルロッテが映る 4人が気付き苦笑する リーザロッテが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「皆…」
【 ツヴァイザー城下町門前 】
レイトが言う
「いえ!ツヴァイザーは我らの祖国!そして、我らはツヴァイザーの兵です!姫様が戻られるまで この国を死守するは 当然の勤め!」
ヴェインが言う
「まぁ… 他のツヴァイザー兵どもが土壇場で逃げ出してしまった事は… この際隠しておこう」
ロイが顔を背けて言う
「…俺はスプローニの兵として 隣国ツヴァイザーを援護しただけだ」
シャルロッテがモバイルPCで顔を隠し含み笑いをしながら言う
「そう言いながら いつもスプローニ以外の国ばっかり 守っちゃいますね?」
ロイが衝撃を受け 怒りの視線をシャルロッテへ向ける シャルロッテがモバイルPCで笑顔を隠す
【 カイッズ国 】
リーザロッテが微笑む カイッズ部隊長が戻って来て言う
「下っ端聖母様!機械兵の殲滅を確認致しました!」
リーザロッテがカイッズ部隊長へ向いて言う
「そう!分かったわ!それでは 他国にて旧世界からの機械兵の増援があったと言うから 引き続き警戒を続けなさい!」
カイッズ部隊長が敬礼して言う
「はっ!承知致しましたっ!」
カイッズ部隊長が部隊員らの下へ向かいキビキビと指示を出している リーザロッテがその様子に微笑して通信機へ向かって言う
「このカイッズには もう下っ端聖母様は必要ない様でしてよ 私は皆の所へ戻るわ!」
通信機のレリアンが微笑して言う
『ええ!私も相棒の貴方が居てくれないと ただ指示を出すだけで魔法が使えない… やはり私たちは!皆が揃わないと 本領を発揮出来ないのよ!きっと貴方さえ居てくれれば このツヴァイザーもベネテクトやデネシアへ援軍を依頼しなくても済んだのかもしれないわ!』
【 ツヴァイザー城下町門前 】
レイトたち4人が衝撃を受け レリアンへ背を向けヴェインが言う
「いや、俺たちが全員揃っていようが居まいが…」
ロイが言う
「…あの大量の機械兵を殲滅する事など不可能だった」
通信機のリーザロッテが得意げに言う
『オーホッホッホ!当然でしてよ!世界の勇者である私たちが全員そろってさえ居れば機械兵など足元にも及ばなくってよーっ!』
レイトたちが呆れの汗を流す レリアンが言う
「ええ!ですから 貴女もいつまでもそちらの カイッズにいらっしゃるのではなくて 早く私と勇者の仲間たちが居るツヴァイザーへ 戻っていらっしゃい!」
通信機のリーザロッテが言う
『分かったわ!』
通信が切れる レリアンが微笑んで通信機を片付ける レイトたちが呆れている
ベーネットの様子を見守っているヴィクトール14世がふと気付いて 周囲を見渡して言う
「うん?なんだろう…?」
ベーネットが周囲のプログラムを消して目を開く 赤い瞳が数回瞬きをした後青い瞳に戻り それから立ち上がってヴィクトール14世へ振り向いて言う
「どうかしましたか?ヴィクトール?」
ヴィクトール14世が周囲を見ていた視線をベーネットへ向けて言う
「あ、うん… 誰かの視線を感じると思って」
ベーネットが疑問して言う
「視線を…?」
ベーネットがヴィクトール14世を真似て周囲を見た後苦笑して言う
「ここはツヴァイザーであり 私たちは他国の王です ですから 誰しもが我々の行動には目を光らせているのでしょう その目の中には 私たちを嫌悪する者が居る事も十分考えられます ベネテクトもデネシアも どちらも現状は条約等を交わしていない 言わば このツヴァイザーの敵対国なのですから」
ヴィクトール14世が苦笑して言う
「はは… それじゃ この感じは 僕らを嫌っている者の視線だね それが… 殺気を持っている事も まぁ 無くは無いのかな?」
ベーネットが言う
「殺気を?つい先ほど このツヴァイザーを新たに現れた機械兵から守って差し上げたのに 随分と失礼な視線ではありますが… そうですね?無い事は無いかもしれません」
ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「うん、それに 自国の王がスプローニへ逃げ出した今 隣国であるベネテクトの王が来てしまったのでは 民たちも心配なのかもしれない」
ベーネットが疑問して言う
「え?では、その殺気を帯びた視線は 私に向いていると言う事でしょうか?だとしたら…」
ベーネットがヴィクトール14世に背を向け周囲を見渡しながら言う
「無礼にも程がありやがるってぇ事を 一発…」
ヴィクトール14世が疑問して言う
「え?何か言ったかい?ベーネット?」
ベーネットが衝撃を受け振り返り 慌てて誤魔化しながら言う
「あっ!い、いえっ!何でもありませんっ!はっ はは…っ」
ヴィクトール14世が首を傾げる レリアンがやって来て言う
「カイッズの支援に当たっていたリーザロッテが間もなく戻るとの事です 私からこのツヴァイザーが デネシア、ベネテクトの両国の兵と お二方の援護を受けたと言う事を伝えてありますので 今回の防衛に関する謝礼、報酬などについてはご安心下さい… とは言え、貴方方へ支援を申し入れたのは デネシアの元女王の私ですので」
ヴィクトール14世が苦笑して言う
「デネシアは ツヴァイザーの支援と共に たまたまそのツヴァイザーに滞在されていた デネシア国元女王の身柄を保護するために向かった との名目を付けるつもりです ツヴァイザーは元々それほど裕福ではないですし… 残念ながら我らデネシアの敵対国である事は今も変わりません それでも母上の相棒様の国ですから可能な限りの善処が出来るよう デネシアの王である私から言って置きましょう」
ヴィクトール14世が微笑する レリアンが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「うふ…っ ありがとうヴィクトール 貴方も相棒を得た事で考え方にも少し変化があった様ですね?」
ヴィクトール14世が一瞬呆気に取られた後ベーネットへ向き微笑し レリアンへ向き直って言う
「そうですね 一国の王でありながら ならず者ごときに軽く騙され 同じ手で誘拐されてしまった私を 内々密に救出してくれた彼に お礼は軽く済ませるものだと教わりました」
ヴィクトール14世が笑顔になる ベーネットが気付き苦笑する レリアンが呆気に取られて言う
「え?誘拐…?昨日アバロンで顔を会わせてから 今日に至るまでのこの短い間に 貴方は また誘拐され また救出されていたのですか!?」
ヴィクトール14世が言う
「はい、そうなんです… てへっ」
ヴィクトール14世が照れる ベーネットが呆れる レリアンが溜息を吐く ベーネットが気を取り直して言う
「ベネテクトも今回のツヴァイザーへの支援については リーザロッテ王女への以前の借りを返したと言う事で終わらせるつもりです …最も、こちらは 私の父が “夢の世界で作った借り” だそうですが」
ベーネットが苦笑する ヴィクトール14世が呆気に取られ疑問して言う
「え?夢の世界で作った借りを この現実世界で…?」
レリアンが気付き微笑して言う
「ああ、リーザがベネテクトの町を魔物から守ったと言う あの話ね しかし、それは 同夢の世界にてバーネット陛下が直々にツヴァイザーの防衛を行った事で既に返済されていると思うけれど… うふふ、倍返しで相殺とするだなんて ベネテクトの王は随分誇り高いお方ですね?」
ベーネットが微笑して言う
「はい、ベネテクトの王はプライドの塊の様なものです 貸しはいくら作っても その逆や少しでも無様な姿を見せる事は許されません」
レリアンが軽く笑う ベーネットが微笑む ヴィクトール14世が呆気に取られた後 苦笑して言う
「へぇ 凄いね?でも、あのバーネット様方を見ていると 少し分かる気も…」
ヴィクトール14世がバーネット1世とバーネットを想像し身震いする ベーネットがヴィクトール14世へ向いて言う
「ええ、それと共に 少々ずる賢くもあります プライドの高さはアバロンも同じだと思いますが 我々は彼らとは違い 物理的な力は弱いですからね?レイピアに毒が塗られている事なども その力の弱さを補っての処置です」
ベーネットが自分の携えているレッドレイピアの柄に触れる ヴィクトール14世がそれを見た後微笑して言う
「しかし、ベーネット?ベネテクト王家の貴方方は ガルバディアやソルベキアの力を使える数少ない特別なプログラマーだ この世界を救うためにも今は その剣で戦うより我々を補佐する側に回るべきだよ それに、君自身の身は相棒の僕が守るから」
ヴィクトール14世がベーネットへ微笑みを向ける レリアンとベーネットが驚いて呆気に取られる ヴィクトール14世が2人の反応に疑問して言う
「え?あれ?僕は 何かおかしな事を言ったかな?」
ベーネットが僅かに頬を染め 思わず視線をそらしながら言う
「あ… いえ、何と言いますか…」
ベーネットが視線を逸らした先で何かに気付き そちらへ向く ヴィクトール14世とレリアンが疑問してベーネットの視線の先を見る 背丈の大きな人物がローブを纏ってやって来て ベーネットの前で止まり ベーネットを見下ろす ベーネットが疑問して言う
「私に何か?貴方は… ツヴァイザーの方ですか?それとも…?」
レリアンが見上げて言う
「カイッズの巨人族の方かしら?リーザロッテ王女に用があるのなら 代わりに私が伺います 直接、本人とお話したいと言う事でしたら もうしばらく…」
ヴィクトール14世が見つめる 背丈の大きな人物が3人を見た後 ベーネットを見て言う
「お前… 同じ感じがする シリウス様と 同じ…」
ベーネットが一瞬驚いて言う
「シリウス様の名を知っているとは…っ 貴方は一体誰です?」
背丈の大きな人物が言う
「… 俺は… ロドウ この国の 一番の戦力を探している 誰だか分からない けど お前で良い」
ベーネットが疑問して言う
「この国の… ツヴァイザーの一番の戦力ですか?しかし、ロドウ殿 残念ながら私はベネテクトの王です この国の者ではありません ツヴァイザーで一番の者 と言うと…?」
ベーネットがレリアンへ向く レリアンがベーネットの視線に困って言う
「私も生憎そう言った事は…」
ロドウが言う
「お前で良い」
ベーネットとレリアンが見合わせていた顔をロドウへ向けようとする ヴィクトール14世が叫ぶ
「ベーネット!危ないっ!」
ヴィクトール14世が抜刀して ベーネットへ振り下ろされていたロドウの大斧を剣で受け止め その重みに顔を顰めて言う
「ぐ…っ!」
ベーネットが驚いて言う
「ヴィクトール!?」
ヴィクトール14世が堪えながら言う
「君に向けられていた殺気は この者からのだっ!彼は本気で君を!」
ロドウがベーネットを見て言う
「俺は この国で一番の戦力を奪う お前で良い お前の力は シリウス様の邪魔になる お前を… コロス」
ロドウが斧を引き振り払ってヴィクトール14世の剣を払う ヴィクトール14世が力負けして弾き飛ばされる レリアンが慌てて叫ぶ
「ヴィクトールっ!」
レリアンがヴィクトール14世の下へ向かう ベーネットがそれを見た後ロドウへ向く ロドウがベーネットへ向け斧を振り下ろす ベーネットが視線を強め瞳の色を変え後方へ素早く回避し レッドレイピアを抜こうとする 右足に衝撃が走り呻いてうずくまる
「うっ!」
ベーネットが右足を押さえ きつく閉じていた目を開き表情をしかめて言う
「クソッ… もう この足のトランスミッターは使えねぇか」
ベーネットの瞳が青く戻り ロドウを見上げる ロドウが再び斧を振り上げる ヴィクトール14世がベーネットの前に立ち剣を構えて言う
「ベーネット!ここは僕に任せて 君は母上と共に下がるんだ!」
ベーネットがヴィクトール14世を見て気を取り直して言う
「この者は 貴方より強いです!共に戦わねば勝てません!レリアン様どうか御退避を!」
ベーネットが立ち上がりレッドレイピアを抜く レリアンが言う
「私の仲間たちを呼んで参ります!どうかそれまでっ」
レリアンが走り去る ベーネットとヴィクトール14世がロドウへ武器を構える ロドウがヴィクトール14世を見て言う
「お前も 邪魔をするなら コロス」
ヴィクトール14世が微笑して言う
「出来るかな?僕はデネシアの王であっても最強の剣士の国アバロンの大剣使いだ そして、今は相棒も居る 簡単には負けられない!」
ヴィクトール14世が笑む ベーネットが呆気に取られた後微笑して言う
「ええ、アバロンとガルバディアは 世界一の相棒です その我々が揃って 負ける訳には行きません」
ヴィクトール14世とベーネットがロドウへ向かう ロドウが大斧を振り上げる
【 シュレイザー城下町 門前 】
ガルバディアの騎士たちが機械兵らを順調に倒して行っている チッピィが喜んで言う
「やっぱりガルバディアの騎士は凄いね!あの機械兵をばったばった倒してくれてるね!レビ!やっぱり僕たちは 戦いに行かなくっても大丈夫ね!」
レビが間を置いて言う
「…元々俺たちは 奴らが前線で戦うのを補佐するのが役目 ここが安全であるなら 俺は城下の町の警戒へ向かう」
レビが立ち去る チッピィが慌てて追い駆けて言う
「城下の門前が大丈夫なら 町中はもっと大丈夫ね!それなら僕も 安心して付いていけるね!シュレイザーにガルバディアの騎士たちが来てくれて 本当に良かったね!」
レビが歩きながら言う
「…ガルバディアの騎士 俺は好かん 奴らは… ガルバディアで作られた人形だ あいつ等からは …魂を感じられない」
チッピィが疑問して言う
「魂?…えーっと 知能が低いって事?確かにあのガルバディアの騎士たちは 僕より言葉を知らないね!」
レビが歩きながら言う
「…知能が低い?いや それは違う 奴らは一応 戦いにおける効率などを認識する能力はある それに、俺たちより戦力が高いと言うのは 俺たちよりもそれを熟知していると言う事だ が、俺が言いたいのは そう言うことではない …そうだな、例えるなら …自我 の様な物か」
チッピィが首を傾げて言う
「自我…?」
チッピィが困った表情でレビを見上げる レビがチッピィを見て言う
「…チッピィ 卿は 機械兵どもがこのシュレイザーに現れた時 退避したいと言っただろ?」
チッピィが頷いて言う
「うん!言ったね!ううん、違うね!言おうとしたら レビに殴られたね!だから 言えなかったね!」
レビが衝撃を受け 一瞬間を置いてから言う
「…では、言おうとした… いや、その前に考えただろう?」
チッピィが笑顔で言う
「うん!言おうとしたね!それで 言い掛けたね!それに 一番に考えてたし!それから 本当はそれしか考えてなかったね!」
レビが視線を向けずに言う
「…つまり、俺の思う自我とは そう言う事だ」
チッピィが疑問してレビを見て言う
「え?」
レビが言う
「機械兵は強い、だが俺たちが力を合わせれば 奴らガルバディアの騎士までとは言わずとも 何とか一矢を報いる事が出来るだろう しかし、卿はそれを行う事は考えず逃げる事を考え 望んだ… あのガルバディアの騎士は 恐らく卿の様に考える事をしない 奴らは例えまったく歯の立たない敵が相手であっても ガルバディアの民に命じられるままに動く それこそ機械兵… 機械と同等のモノだ」
チッピィが呆気に取られ立ち止まる レビが先行する チッピィが視線を落とし考えてから追い駆けて言う
「でもレビ!あいつらは 機械兵とは違うね!僕は この前 あいつらがご飯食べてるの見たね!それで あいつらに 僕たちの好きなチーズを食べさせてあげたら 美味しいって言って 喜んで食べたね!僕は そんなあいつらが機械兵と同じとは思いたくないね!」
レビが視線を向けないままに言う
「それはただ 奴らの脳内にある快楽中枢でも刺激されたのだろう?奴らは一応は人だ痛みを感じるなら快楽も感じる筈だ だが、それでも奴らは卿に進められたからそれを食べ 快楽を得はしたが自らそれを捜し求め 得る事をしない だから奴らは いつも同じ物を食べている 与えられるものを得るだけで 自ら選択し行動を起こす事は無い …俺は人でも動物でも そう言う奴らは …大嫌いだ」
チッピィが驚き視線を落として言う
「レビ…」
後方で歓声が上がる シュレイザー兵らが喜びガルバディアの騎士たちが顔を見合わせた後武器を掲げる シュレイザーの民たちが喜んでガルバディアの騎士たちの下へ向かって行く チッピィが微笑んでレビを見上げて言う
「レビ!ガルバディアの騎士たちが機械兵を皆倒したね!これでシュレイザーは安心ね!レビ!」
レビが後方へ向けていた視線を戻してから間を置いて言う
「…そうだな シュレイザーはガルバディアの騎士どもに守られた …俺たちスプローニの部隊では出来なかった事だ いくら奴らを否定した所で 俺たちは結局奴らに守られた」
シュレイザーの民たちがレビとチッピィの両脇を過ぎて行く チッピィが苦笑してレビを見上げる レビが間を置いて再び歩みを再開させる レビが向かおうとしていた先で シュレイザーの民が悲鳴を上げる
「きゃぁあーっ!!」
レビとチッピィが驚き一瞬の後 急いで走って向かう
レビとチッピィが辿り着いた先 シュレイザーの民が押し倒され ローブに身を隠した獣の牙を持つ者に噛まれそうになっている レビが即座に銃を抜き撃つ 獣の牙を持つ者が瞬時に気付き身を翻して銃弾を避ける レビが驚いて言う
「なに!?銃弾を回避しただとっ!?ギリギリを狙ったとは言え この距離で間に合う筈が」
シュレイザーの民が逃げ出す 獣の牙を持つ者がレビに狙いを定める チッピィが怯えて言う
「レ、レビ!あいつ 普通の人じゃないね!魔物の… ヴォーガウルフの匂いがするね!そ、それに 僕たちと何かちょっと似てる感じが…っ」
レビがチッピィへ視線を向ける 獣の牙を持つ者がレビに向かって襲い掛かる レビが慌てて回避し銃を撃つ 獣の牙を持つ者が銃弾を回避して再びレビに襲い掛かる チッピィが叫ぶ
「レビッ!逃げてっ!」
チッピィが弓矢を放つ レビへ向かっていた獣の牙を持つ者が気付き身を翻して弓矢を回避し 視線をチッピィへ向ける チッピィが衝撃を受け怯えて叫ぶ
「いやぁーっ!ごめんなさいね!僕っ 君を傷付けるつもりは無かったね!これ本当ね!僕はいつだって誰も傷付けないように狙ってるね!」
レビが怒って叫ぶ
「それじゃダメだろっ!」
獣の牙を持つ者が鼻を動かし チッピィの匂いに気付いた後 再びレビへ向き直る レビが気付き銃を構える チッピィが慌てて言う
「レビ!こいつ強いね!僕たちより強いね!逃げないとっ レビやられちゃうね!」
レビが視線を獣の牙を持つ者へ向けたまま言う
「…俺はこいつを抑える 卿はその間に …ガルバディアの騎士を連れて来い!奴らでなければ こいつは倒せん」
チッピィが驚き困った様子で言う
「で、でもっ!」
獣の牙を持つ者がレビへ向かう レビが叫ぶ
「行けっ!俺たちはシュレイザーを守るんだ!」
チッピィが驚く レビが銃を放つ 獣の牙を持つ者が銃弾を回避しながらレビへ攻撃する
【 ソルベキア城 城門前 】
オライオンが喜んで言う
「さっすがアバロンの大剣使いヴィクトール12世様だぜ!一撃で機械兵どもを一気にぶっ倒してよー!あっという間にソルベキアの機械兵を 殲滅させちまったー!」
傭兵隊員が笑んで言う
「ああ!これなら 残りの旧世界の機械兵だって 余裕だぜ!」
ヴィクトール12世が苦笑して言う
「いや、あれは皆 貴殿ら傭兵隊とガルバディアの騎士らが十分にダメージを与えていた所へ とどめを刺させてもらっただけだ 私1人の力ではない」
傭兵隊員が笑んで言う
「いやいや!ヴィクトール様の攻撃で 俺らが攻撃する前の機械兵の動きも止まっちまったんだぜ!?やっぱりあの力はすげーもんだ!流石!俺たちアバロンの 先代国王陛下だぜー!」
傭兵隊員らが喜んで喝采を上げる ヴィクトール12世が軽く笑う バッツスクロイツが不満そうに言う
「ちょっとちょっとー?俺っちへの賞賛ーはないのかなー?傭兵隊の皆のサポートしてたの 実質俺っちよー?あのバーネっちパパの適当ープログラムを修正するの 超ー大変だったんだしー?皆の剣に雷のサポートプログラム実行したのーは 俺っちなんですけどー?」
皆が一瞬呆気に取られた後 傭兵隊の皆が笑んで言う
「ああ!そういやー あんな切れ味の良いのは初めてだったぜ!」
「まるで雷神様から 雷をもらっちまったみてーだったな!?」
「ああ!あれも すげー力だ!」
バッツスクロイツが期待に表情を輝かせる オライオンが微笑して言う
「ああ、俺もシュライツをアバロンの防衛に使うからって バーネット1世様がアバロンへぶっ飛ばしちまった時には どうなっちまうかと思ってたけど それでも、あいつのサポートを受けてる時と同じみてーに戦えたぜ!?」
バッツスクロイツが微笑して言う
「うんうん!そーだろーね!あのプログラムは元々 そのオライオンっちと相棒っちーのデータを パクってるって感じだったから?」
オライオンが呆気に取られて言う
「へぇ… そんなプログラムなんかが作れっちまうなんて… やっぱ…」
バッツスクロイツが大喜びで言う
「でしょでしょ!?俺っちのお陰」
傭兵隊の皆が笑顔で言う
「やっぱり ヴィクトール12世様の相棒であるバーネット1世様も すげーお方だぜー!」
バッツスクロイツが衝撃を受けて叫ぶ
「そっちー!?」
オライオンが笑顔で言う
「ああ!流石 ベネテクトだったりガルバディアだったりソルベキアだったりしちまうほどの すげー国王様だぜーっ!」
バッツスクロイツがコケてから 体制を立て直して怒って言う
「ちょっとーっ!その3国を股に掛けちゃうほどの バーネっちパパのフォロー&サポートした 俺っちはどうなのー!?ねー!ヴィクトールっちパパも 何か言ってやってよー!」
バッツスクロイツがヴィクトール12世へ向く ヴィクトール12世がバッツスクロイツの言葉に疑問した後 少し考えてから笑顔で言う
「ああ!バーネットは ベネテクトだったりガルバディアだったりソルベキアの王だったりはしたが そのいずれの時も 私の相棒で居てくれている事は変わらないよ 我らは世界一の相棒であるからな!はっはっは」
バッツスクロイツが衝撃を受け叫ぶ
「そっちー!?ってか もう話ズレて!?」
皆が一瞬呆気に取られた後オライオンが喜んで言う
「だよなー!アバロンとガルバディアの世界一の相棒は どこの国へ行ったって やっぱ変わらねーぜー!」
傭兵隊の隊員が言う
「ああ!アバロンとガルバディアは世界一の相棒国だからなー!何がどうなったって その両国の相棒は世界一だぜー!」
バッツスクロイツ以外の者が喜んで笑う バッツスクロイツが衝撃を受け泣きながら怒って叫ぶ
「もーマジ訳分からないんですけどー!アバロンの人って誰も俺っちの話を聞いてくれないんですかー!?」
玉座の間
バーネット1世が真面目に周囲にプログラムを発生させている 通信が入り ホログラムの通信モニターにローゼックが映って言う
『バーネット1世、我らが確認した所 ローレシア、ガルバディア、ソルベキアの3国に 移動魔法陣が隠し作られていた そして、あの作りは… 残念ながらソイッド村の魔術師が作る物と同じ物 ローレシアはこの責任を取り 先ほどイシュラーンが部隊を率いてソイッド村へ赴き 村に居った魔術師を皆拘束した』
バーネット1世が言う
「そいつらが作りやがった移動魔法陣は その3国以外にはありやがらねぇのか?」
ローゼックが言う
『3国の移動魔法陣は先に実物の確認を行った上で問い正したもの そして、現在も情報を聞き出してはおるが 彼らは皆口を揃え 「我らの神シリウス様との約束だ」と言うだけで それ以上を話そうとはしないのだ あのガルバディアの元国王シリウス殿からの指示であるのか?との問いにも答えぬ 現状ではそのシリウス殿とも連絡は取れぬとあっては打つ手があらぬのだが… 何にしろ新たな確認が取れ次第 再び連絡しよう』
バーネット1世が言う
「あのシリウス元国王が わざわざそんな指示をするとは思えねぇが… とりあえず分かった こっちも今 うちの3世から送られて来やがった 機械兵情報を解析してる所だが どうやらその移動魔法陣は ツヴァイザーにも作られやがったらしい」
ローゼックが一瞬驚いて言う
『ツヴァイザーだと?』
バーネット1世が言う
「先の3国にアバロンが含まれてやがらねぇのも気に入らねぇし 何でツヴァイザーごときが含まれてやがるのかも分からねぇが… これで 奴らの感覚は こっちの主観とはちょいとズレちまってるんじゃねぇかってぇ可能性も生まれて来やがった… これじゃ検討の付け様もねぇ… そっちの情報に期待させて貰うぜ」
ローゼックが言う
『分かった、確認を急がせる …それと、貴様へ報告致すべきか分かり兼ねるが ガルバディアの防衛に就いていたらしき アバロンのレクター王兄が 先ほどデネシアへ運ばれよったとの事だ 命に別状はあらぬが 相当のダメージをうけておったと言う 意識が戻り次第 貴様へ連絡を入れるよう ファニア王女へ申し付けておいた』
バーネット1世が一瞬驚いてから言う
「あのレクターが…?そうか… こっちはこれから 最後の締めとして残りの機械兵どもをぶっ潰す …だが、レクターがそれだけやられっちまうって事なら 油断は出来ねぇな もしかしたら 特別な機械兵でも紛れていやがるのかもしれねぇ」
ローゼックが言う
『ローレシアへ現れたものの内には その様な機械兵は確認されなかったが… 精々気を付けよ こちらは既にローレシア内全ての機械兵を殲滅致し 確認し得る範囲に機械兵はおらぬとの事 移動魔法陣も破壊した以上 恐らく今後の心配もあらぬだろう …そちらに何か問題があれば まぁ どうせよこさぬであろうが 早々に支援要請を送って参るが良い』
バーネット1世が苦笑して言う
「ハッ!要らねぇっつってんだろぉ?」
ローゼックが軽く笑って言う
『ふん…っ 頑固者が』
ローゼックの通信が切れる バーネット1世が微笑して言う
「はっは… 随分と世話焼きな野郎だぜ… さて、そんな野郎の世話にもならねぇ様に その特別な機械兵でも居やがらねぇか 先に確認しておくか …とは言え ツヴァイザーの機械兵にも そんなモンは確認されてねぇし… レクターの意識が戻るのを待ってやるしか… うん?」
再び通信が入る バーネット1世が疑問して繋いで言う
「またローレシアか… ローゼックの野郎か?…何だぁ?もう新しい情報でも取れ」
通信モニターにスファルツが映って言う
『バーネット1世殿!ツヴァイザーの機械兵には お気付きですか!?』
バーネット1世が疑問して言う
「あぁ?ツヴァイザーの機械兵なら とっくに殲滅したぜぇ?その機械兵の残骸から得た 旧世界の情報を解析中だぁ」
スファルツが困った表情で言う
『貴方が現在解析中の OGMS型式6628番の機械兵のお話ではありません!』
バーネット1世が衝撃を受け怒って叫ぶ
「なぁあ!?て、てめぇええ!どさくさに紛れて 俺様のデータをハックしてやがってるんじゃねぇええ!」
スファルツが怒って言う
『元を正せば その貴方がソルベキアのセンコンを 乗っ取られたのでしょうっ!?お陰で私は未だにローレシアのオンボロ、ローモデルシステムで 世界一のハッカーの力を抑えられておりますっ!出番もガタ落ちですよ!?どう責任を取って下さるのですっ!?』
バーネット1世が衝撃を受け怒って言う
「るせぇええ!ガルバディア出身の俺様が ソルベキアの民である てめぇえの事なんざ 気遣ってやるかぁあ!でもって 忙しいんだから簡潔に用件を言いやがれぇええ!」
【 ツヴァイザー城下門前 】
ベーネットが表情をしかめて言う
「クソが…っ どうなってやがる?何でベネテクト王家の毒が効きやがらねぇ…?」
ベーネットが地に片膝を着き レッドレイピアを握り締め顔を上げる 視線の先 ヴィクトール14世がロドウと戦っている ヴィクトール14世が声を上げて大剣を振り下ろす
「だぁああーっ!」
ロドウが見切り素早く身を翻し間合いを狭め ヴィクトール14世の剣を斧で弾き飛ばし 無防備になったヴィクトール14世へ視線を向ける ヴィクトール14世が驚いて言う
「なっ!?」
ベーネットが叫ぶ
「ヴィクトール!避けろっ!」
ロドウがヴィクトール14世を殴り飛ばす ヴィクトール14世が悲鳴を上げる
「がはぁっ!」
ヴィクトール14世が地に倒れる ベーネットが焦って叫ぶ
「ヴィクトールっ!!」
ベーネットがヴィクトール14世の下へ向かおうとする ロドウが立ちはだかりベーネットへ斧を振り上げる ベーネットが怒って言う
「ちくしょうっ!もっと早く あいつと接触出来ていりゃぁ てめぇなんぞにっ!」
ベーネットが怒りの視線をロドウへ向ける ベーネットの後方から ロイの声が掛かる
「…フリーズ ベーネット陛下」
ベーネットがハッとして身動きを止める ベーネットの顔をかすめ銃弾が連射され 続いてヴェインが叫びながら現る
「うりゃああーっ!」
ヴェインが銃弾を押し込むようにロドウへ槍を突き刺す ロドウの身に槍が刺さりロドウが悲鳴を上げる
「う…っ!?あぁああーーっ!」
ベーネットの横にヴェインが槍を構え顔を向けないままに言う
「ここは俺たちに任せ ベーネット陛下は どうか今一度 機械兵の殲滅を!」
ベーネットが驚いて言う
「な!?機械兵だぁっ!?」
レイトがベーネットを挟みヴェインの逆側に立ち シャルロッテが遅れて来て言う
「せ、せせせ世界中の の、残りの機械兵がっ こここ、このツヴァイザーに向かっているとっ お父様から連絡が入ったんですぅ!」
ベーネットが驚いて言う
「な…っ なんだと!?」
レイトが言う
「バーネット1世様からの連絡で 可能な限り各国の力を使い 機械兵を追って殲滅するとの事です 共に デネシア、ベネテクトに滞在の両国魔法剣士部隊のサポートは バーネット1世様が代行するとの事ですので どうか ベーネット陛下は このツヴァイザーを機械兵どもからお守り下さい!」
ヴェイン、ロイ、レイト、シャルロッテがロドウへ向かう ベーネットが表情を顰めて言う
「何てこった… 今ツヴァイザーに居る魔法剣士部隊は連戦の疲れが出ちまってる これ以上の戦闘は訓練期間の短いあいつらには無理だ 現状でもあいつらの身に掛かっちまった負担は目に見えてありやがるってぇのに どうしたら…!?」
ベーネットが顔を上げヴィクトール14世を見る ヴィクトール14世がレリアンに身を起こされ話を聞いていた状態から頷いて ベーネットへ叫ぶ
「ベーネット!行こう!」
ベーネットが表情を困らせて言う
「しかし ヴィクトール ツヴァイザーに残っている 彼ら魔法剣士部隊はもう…っ」
ヴィクトール14世がベーネットの前に来て言う
「分かってる、彼らはもう戦えない だから 僕ら2人が戦うんだよ!」
ベーネットが少し驚いて言う
「私たちが… ですか?」
ヴィクトール14世が頷いて言う
「ベーネット、君は夢の世界を度々見ていたと言っていたよね?僕も 父上から夢の世界の話を聞いていたんだ 相棒のバーネット2世様から雷の力を受け取り戦ったと その力は たった一人でも ソルベキアの一個部隊を楽に倒せて 尚且つ機械兵にも有効だったってっ …それなら各国に倒された残存の機械兵位なら 何とか倒せるんじゃないかな?」
ベーネットが驚いて言う
「そ、それは 確かに計算上は可能ですが ヴィクトール13世様は事前に雷撃を受ける訓練を十分に行っておられました あの戦法は元々かなりのリスクを負っているのです 事前に行う訓練でさえ下手をすれば命の危険すらあるのですよ!?」
ヴィクトール14世が一瞬呆気に取られた後 考えながら言う
「…命がけの戦法か」
ベーネットが言う
「そうです、ですから ここは何とか他国からの応援を得るしか」
ヴィクトール14世が振り返って遠くを見る 遠くから機械兵の集団が近付いている ヴィクトール14世がベーネットへ向いて言う
「その時間は無い …でも、僕らが何とかやっている間に その援軍を呼ぶ事も出来るかもね?」
ヴィクトール14世が笑顔になる ベーネットが衝撃を受け怒って叫ぶ
「その間に!貴方が命を落としてしまったらどうするのですっ!?やっと相棒になれたのに!たった2日で終わりですかっ!?私は11年間も苦労して 2度も貴方を助け出したと言うのにっ!」
ヴィクトール14世が疑問して言う
「え?11年間?2度も僕を助け出した?」
ベーネットが衝撃を受け 焦って言う
「ぬあっ!?あ!いや!違っ!」
ヴィクトール14世が疑問した後微笑して言う
「えへ、大丈夫 僕は命を落としたりしないよ そんな気がするんだ アバロン式の感覚でね?」
ベーネットが一瞬間を置いた後困った様子で言う
「私にはそのアバロン式の感覚は分かりませんが… 雷を受け取るのには貴方の身にある僅かな魔力を引き出さなければならない しかし、それを今 万が一ここで貴方が行う事が出来たとしても 私は貴方のデータを多く得られてはいないのです 今からデータ取りを行うにしても 貴方は雷撃に対する防衛をマスターしていない状態で 最低でも3回は雷撃を受ける事になってしまう そんな無茶をした上で奴らと戦うなんて不可能です!」
ヴィクトール14世が少し驚いてベーネットを見る ベーネットが真剣な表情でヴィクトール14世を見つめる ヴィクトール14世が苦笑して言う
「…うん でも、やらないと… ベーネット?僕らは父上たちと同じ位… いや?父上たちを越える程の相棒になるんだ 今ここで負ける訳には行かない 君と共に 僕は奴らに勝つ …勝てるよ!絶対!僕には分かる!」
ベーネットが驚く ヴィクトール14世が笑んだ後 機械兵へ視線を向ける ベーネットが呆気に取られたまま言う
「これがアバロンの民が持つ …ガルバディアの幻想をも現実にする力 か」
ベーネットが一度目を閉じ意を決して言う
「分かりました ヴィクトール 私は 貴方を信じます!」
ヴィクトール14世がベーネットへ向き微笑んで頷いて言う
「うん!僕も 君を信じているよ!ベーネット!」
【 旧世界 ガルバディア城 門前 】
雷が落ちる ヴィクトールが大剣を掲げて受け取る 獣の牙を持つ者が襲い掛かって来る ヴィクトールが大剣を振るう 大剣に纏っていた雷撃が獣の牙を持つ者へ向かうが 獣の牙を持つ者のスピードが上回り 雷撃を回避してヴィクトールへ襲い掛かる バーネットがハッとして言う
「ヴィクトール!」
ヴィクトールが瞬時に獣の牙を持つ者の攻撃を大剣で防ぐ ヴィクトールが短剣の剣圧にわずかに表情をしかめる 獣の牙を持つ者が両手に持つ短剣を次々にヴィクトールへ振るう ヴィクトールが大剣で防ぎ続ける バーネットがヴィクトールの後方でレイピアを構えたまま視線を強めて思う
『…クソッ!手出しが出来ねぇっ』
バーネットの意識の中に数字の羅列が駆け巡り 導き出される情報にバーネットが思う
『遺伝子情報から読み取られる構造的な差異 明らかに人間の能力を超える力と瞬発力』
バーネットが獣の牙を持つ者の攻撃を見て思う
『扱う武器が短剣であるから ヴィクトールの力と大剣で抑える事が出来ている 雷を避けた程の瞬発力で繰り出され続ける 両手の短剣からの攻撃を今抑えて居られるのは ヴィクトールにあるアバロンの民特有の直感と経験によってもたらされている奇跡だ 俺が入り込める隙は一切ねぇ…っ どうする!?』
【 新世界 シュレイザー国 城下町 】
レビが回避するが獣の牙を持つ者の牙がレビの左腕をえぐる レビが悲鳴を上げる
「ぐぁああっ!!」
チッピィが焦って叫ぶ
「レビッ!!」
レビが左腕を押さえて膝を着き苦しそうに痛みに耐える 左腕から血が滴る チッピィが驚き目を見開く 獣の牙を持つ者が再びレビへ襲い掛かる レビが顔を上げるが諦め覚悟を決めた瞬間 獣の牙を持つ者が悲鳴を上げる
「ギャンッ!」
レビが目を開く 獣の牙を持つ者の身に弓矢が刺さっている レビが驚く チッピィがレビの前に立ち 再び弓矢を構えて言う
「お、お前…っ 悪い奴!僕の大切な仲間をっ!レビを傷付けた!これ以上やるなら ぼ、僕がっ お、お前を…っ!」
レビの目の前でチッピィの足がガタガタ震えている レビが顔を上げ叫ぶ
「卿では無理だっ!早く逃げろ!」
獣の牙を持つ者が怒り唸り声を上げる チッピィが怯える レビが叫ぶ
「逃げろっ!チッピィ!」
チッピィがきつく目を瞑る 獣の牙を持つ者がチッピィへ襲い掛かる チッピィが引いた弓矢の手を離す レビが銃を放つ 獣の牙を持つ者が悲鳴を上げる
「キャンキャンッ!!」
チッピィが驚き目を開く チッピィの前で2本目の弓矢と銃弾を受けた獣の牙を持つ者が苦しそうに地に伏している チッピィが驚く チッピィの後ろでレビが倒れる音がして チッピィが慌てて振り返って叫ぶ
「レビッ!」
チッピィが弓矢を手放し レビの身に触れて必死に呼ぶ
「レビッ!レビッ!すぐ治療するね!もう少しだけ 我慢するね!」
獣の牙を持つ者が怒り起き上がる チッピィが気付き振り返って驚く 獣の牙を持つ者がレビ目掛けて襲い掛かる チッピィが怯え身動きが止まる レビがチッピィを庇って銃を向ける レビと獣の牙を持つ者の間に武器が刺さり 獣の牙を持つ者が身を翻す チッピィがハッとして振り返って言う
「ガルバディアの…っ!」
ガルバディアの騎士たちが次々にやって来て武器を構える チッピィの近くに一匹のねずみがやって来て 嬉しそうにチュウチュウ鳴く チッピィがそれを見て微笑して言う
「うん 君が無事でいてくれて良かったね!それに ガルバディアの騎士たちを連れて来てくれたね!ありがとうね!」
獣の牙を持つ者がガルバディアの騎士たちを見て唸りながら後退る 獣の牙を持つ者の後方にプログラムが発生し 槍使いの襲撃者が現れて言う
「ヴァッガス 貴殿の負けだ 共に戻れ シリウス様の為 我らは死んではならない」
ヴァッガスが僅かに槍使いの襲撃者へ視線を向けた後 槍使いの襲撃者の下へ向かい 槍使いの襲撃者が移動機械を使用して 2人の身がプログラムに包まれ消える チッピィがホッとしてレビへ振り返る レビがうつろな目でガッガスの去った先を見つめる ガルバディアの騎士がレビへ手を差し出す レビが気付き その手を伝ってガルバディアの騎士の顔へ視線を向ける ガルバディアの騎士が微笑して言う
「お前 強い 私 見つけた 強い心 持つ者」
レビが言う
「強い… 心…?」
レビが意識を失い倒れる チッピィが叫ぶ
「レビッ!」
【 旧世界 ガルバディア城 門前 】
鋭い音を立て 獣の牙を持つ者へ鞭が振るわれる 獣の牙を持つ者が身を引いて一瞬の内に鞭の広い攻撃の範囲から退く ヴィクトールが大剣を構えなおしてから 口を開いて荒い呼吸を整える バーネットがヴィクトールの横で言う
「生憎 面倒な説明はしてる余裕も時間もねぇ 結論だけ言う ヴィクトール 遠慮はいらねぇ 一撃で叩き斬れ!」
ヴィクトールが返事の代わりに身構える バーネットが鞭を手に言う
「行くぜ!」
バーネットが牙を持つ者へ向かい鞭を振るう 牙を持つ者が自分へ振るわれた鞭の先を見定めて それを躱してバーネットへ向かう ヴィクトールが獣の牙を持つ者へ顔を向け踏み出した瞬間 ヴィクトールの瞬発力が 獣の牙を持つ者の速度を超えて 獣の牙を持つ者がバーネットへ向かうより速くたどり着く 獣の牙を持つ者がヴィクトールへ顔を向けるより速く ヴィクトールの大剣が相手の身を斬り裂く
ヴェルアロンスライツァーが差し向けた長剣の先に 黒い翼を持つ人物が倒れている ヴェルアロンスライツァーが言う
「翼を撃ち抜かれ その身に1刺し受けているとはいえ 急所は外した 動けぬ事もあるまい?我々を元の場所へ戻すか その方法を伝えてくれるのであれば?」
ヴェルアロンスライツァーが長剣の剣先を相手の首元へ向けたまま様子を伺う 黒い翼を持つ人物は沈黙している ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「…うん?」
銃声がヴェルアロンスライツァーの目前を抜ける ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚くが 考えるより先に 銃弾の抜けた方向へ向けて取った防御態勢のまま 体が弾き飛ばされる ヴェルアロンスライツァーが盾を抑えて屈めていた体の後ろにロキが立って言う
「…どうやら 1体を倒して見せただけでは 俺たちを開放するつもりは無いらしい」
ヴェルアロンスライツァーが立ち上がって言う
「では 今度の相手は?」
ヴェルアロンスライツァーの前に 獣の牙を持つ者が両手に短剣を構え殺気を向けている
ヴィクトールが呆気に取られて言う
「…っ 消えた…?」
ヴィクトールが屈んで見つめている先で 獣の牙を持つ者の姿が光の粒子になって流れ去る バーネットがヴィクトールの後ろで舌打ちをする
「チッ…」
2人の前に重い地響きが轟く バーネットが顔を上げて言う
「そぉ言う事かよ?」
ヴィクトールとバーネットの前で巨人が大斧を振り上げていて ヴィクトールへ目掛けて振り下ろされる ヴィクトールが難なく飛び退き バーネットの前で大剣を構える バーネットが笑んで言う
「この後何人控えてやがるのかは知れねぇが さっきの野郎をけし掛けておいて 次に持って来るのがコイツだぁ?…ハッ!相手は どんな計算してんだかなぁ?」
ヴィクトールが言う
「確かに僕は 新世界の巨人族と戦った事は無いけれど 見た目の大きさや動き 今の一振りも含めて 戦力はあの機械兵と変わらない 戦い方は同じと言う事で良いのだよね?バーネット?」
バーネットが言う
「ああ むしろ 俺らより図体はでけぇとは言え 生物としての構造は同じなんだ 機械で出来てる機械兵どもよか 力も丈夫さも劣るのが当然ってモンだ」
バーネットのプログラムで雷が落ちる ヴィクトールが大剣を掲げて受け取る バーネットが言う
「ゆっくりやって休ませてもらうか さっさと終わらせてやるか…?そいつさえも計算しろってぇ 遊びじゃねぇ事だけを 俺は考えさせてもらうぜ?」
ヴィクトールが構えて言う
「残念ながら バーネットのその答えが出る前に …終わってしまうかもねっ?」
巨人が再び大斧を振り上げる ヴィクトールが雷を纏って向かう
【 新世界 ツヴァイザー城下町 門前 】
ヴィクトール14世が閉じていた目を開いて言う
「…これが ガルバディアの力 いや… 僕らの力だ …ベーネット!」
ベーネットが叫ぶ
「ヴィクトール!機械兵など 我らの敵ではありません!」
ヴィクトール14世が剣を掲げる 雷が落ち剣に纏わる ヴィクトール14世が剣を構え 目前に現れた機械兵の一個部隊へ振りかざす 雷が横一線に放たれ 機械兵らが感電する ヴィクトール14世が再び剣を掲げると 雷が落ち ヴィクトール14世の全身を覆い ヴィクトール14世が機械兵へ向かって 声を上げ機械兵を攻撃する
「やぁあーーっ!」
機械兵らが次々と倒されて行く 機械兵らが受けていた雷撃が静まり 再び機械兵らが動き出す ヴィクトール14世が気付き 表情を苦しめつつ 剣を掲げる 雷が剣に落ちる ヴィクトール14世が剣を構える 身に受けた雷撃が全身に纏う ヴィクトール14世が疑問する ヴィクトール14世の隣に雷が落ち 雷を纏った鞭が振りかざされ 機械兵らが感電して身動きを止める ヴィクトール14世が驚いて隣を見て言う
「ベーネット!?」
ベーネットが雷を纏って居て 赤い瞳をヴィクトール14世へ向け言う
「私も共に戦います 貴方の身に与えられる雷撃は 半減しますが その分は 私が共に戦う事で 補いましょう」
ヴィクトール14世がベーネットの目を見て 忘れていた記憶を思い出す
ならず者たちが周囲を埋めつく中 幼いベーネットが返り血を浴び 赤い瞳で微笑し手を差し出して言う
『よう!助けに来たぜぇ?ヴィクトール14世!俺はてめぇの相棒 バーネット3世だ!』
ヴィクトール14世が呆気に取られた後微笑して言う
「うん!今度こそ 一緒に戦おう!バーネット3世!」
ベーネットが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「おうっ!もう失神しやがるんじゃねぇぞ?」
ヴィクトール14世が一度苦笑し 次に笑顔を見せて言う
「大丈夫さ!僕は君の相棒 ヴィクトール14世だよ!?」
ベーネットが呆気に取られた後苦笑して言う
「ああ!違ぇねぇ!」
2人が笑みを合わせた後 機械兵へ向かう
ツヴァイザー国 城下町門前
ヴェインとレイトが息を切らし槍を構える 2人の後ろでロイが銃の弾倉を変える シャルロッテがモバイルPCを操作しながら言う
「戦力はギリギリ同等です しかし 体力が…っ」
レリアンがシャルロッテの言葉を聞き 前方に居る3人へ顔を向け表情を険しくして言う
「…リーザ 急いでっ」
ツヴァイザー国 上空
ドラゴンに乗ったリーザロッテが気付いて言う
「あれはっ!?皆は 一体何者と戦っていらっしゃるのでして!?」
ドラゴンがひと鳴きする リーザロッテが理解し視線を変えて言う
「あちらは機械兵!?戦っていらっしゃるのは… ヴィクトール14世陛下とベーネット陛下ね!」
ドラゴンがひと鳴きする リーザロッテが表情を強めて言う
「ええ!もちろんでしてよ!急いで頂戴っ!」
ドラゴンが急降下する
ツヴァイザー国 城下町門前
ヴェインが言う
「俺たちがここを抑えなければ 奴はベーネット陛下のもとへ向かってしまう」
ロイが言う
「…ベーネット陛下が奴にやられれば ツヴァイザーは勿論 この新世界の戦力も落ちるのだろう」
レイトが一歩踏み出し叫ぶ
「例え 世界がどうなろうとも!このツヴァイザーを守る事は 姫様とのお約束!私は命に代えてもそちらのお約束を守ってみせる!ヴェイン!ロイ!お前たちは下がっていろ!」
レイトが槍を振るって言う
「ここは私が!」
ヴェインとロイが衝撃を受け ヴェインが慌てて言う
「ま、まずいっ!レイトがあーなった時は!」
ロイが視線を逸らして言う
「…作戦が 失敗に終わる事が 多々ある…」
レイトがシャルロッテへ向いて叫ぶ
「シャル!可能な限りの力を私に送ってくれ!一気にけりを付ける!」
シャルロッテが衝撃を受け慌てて言う
「レ、レレレレイトさんっ!落ち着いて下さいっ!」
レイトがロドウへ向いて叫ぶ
「構わぬ!このレイト!どれほど強力な力でも受け止め 必ずやあの者を討ち取ってっ!」
レイトに雷の魔法が落ちる レイトが感電して叫ぶ
「のわぁあああーっ!?」
皆が驚き雷の元へ視線を向ける レリアンの隣に立っている リーザロッテが槍の柄で床を突き高笑いして言う
「オーホッホッホッホ!その息でしてよレイト!私たち世界の勇者と仲間たちは どれほど強力な力をも受け止め この世界を救って差し上げましてよーっ!」
レイトが喜んで叫ぶ
「姫様っ!」
ヴェイン、ロイ、シャルロッテが呆れ ヴェインが言う
「いや、受け止められて ない… だろう」
ロイが視線を逸らして言う
「…いや、本人たちは受け止めたつもりなのだ 言わないでおいてやれ あんなでも 一応 …俺たちの仲間だ」
シャルロッテがモバイルPCで顔を隠しつつ含み笑いをした後 微笑して言う
「でも、不思議ですね なんだか」
ヴェインとロイが顔を見合わせた後苦笑し ヴェインが言う
「ああ、勝てそうな気がして来た」
ロイが言う
「…だな」
ヴェイン、ロイ、シャルロッテが構え直す その前にレイトが力強く構える リーザロッテが槍を向けて叫ぶ
「さあ!優秀勇敢なる勇者の仲間たち!どなただか存じ上げないけれど この世界に危害を与えんとする そちらの方を ぶっ飛ばして差し上げなさい!」
レイトが返事をする
「はっ!リーザ様!」
レイトたちが攻撃を再開する レリアンが魔法詠唱を終え言う
「リーザ!」
リーザロッテが槍を構えて言う
「ええ!勇者の私たちが 仲間から遅れは取れなくってよ!」
ヴィクトール14世とベーネットが背中を合わせ地に座り込んだ後 ヴィクトール14世が一息吐いて軽く後ろを向き 微笑して言う
「お疲れ、バーネット」
ベーネットが苦笑し俯いて言う
「ああ、疲れたぜぇ 流石に てめぇも戦いながら 気ぃの使うプログラムまで やるってぇのはよ…」
ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「ふふ…っ うん、でも 僕たちは やっぱり勝利したよ?バーネット?」
ベーネットが苦笑し軽く顔を向け言う
「ハッ… だなぁ、全く てめぇは大した奴だぜ まぁ、それでこそ 苦労して相棒にした甲斐が ありやがったってもんだぜぇ」
ヴィクトール14世が軽く笑い満足そうに正面へ顔を戻す 周囲に機械兵の残骸がある
リーザロッテが槍を向け 雷を放つ ロドウが雷を受け動きを止める ヴェインとレイトが槍を振り上げ叫ぶ
「「これで トドメだーっ!」」
ロドウの身の回りにプログラムが発生し ヴェインとレイトの槍が空を切る 2人が驚き呆気に取られた次の瞬間 2人の頭が激突し 2人が頭を抑え地に悶える ロイとシャルロッテが呆気に取られ顔を見合す リーザロッテが疑問し首を傾げた後 気付いて叫ぶ
「敵は逃げ帰ったわ!私たちの圧勝でしてよーっ!オーホッホッホッホ!」
レリアンが笑顔で居る レイトとヴェインが倒れている ロイがレイトたちを見た後リーザロッテを見て言う
「…俺たちの勝利らしい」
シャルロッテが苦笑して言う
「は…はははいぃ そ、それでは… お父様にも 連絡をっ しておきますぅ」
シャルロッテがモバイルPCを操作する
【 旧世界 ガルバディア城 門前】
ルーゼックが息を切らしている前で 巨人の身体が地に倒れていた状態から光の粒子になって消えて行く ルーゼックが呆気に取られる キルビーグが言う
「ふむ…?魔力が一切通じぬ相手と言うだけでも 恐ろしい者であったが 肉体が光へ変わりよるとは?この光は一体…?」
キルビーグが巨人であった光の粒子の近くへ向かう ルーゼックが言う
「これも あのシリウスBとやらの術か?…全くっ ガルバディアの力を用いる者どもの術は 奇怪なモノばかりよっ」
キルビーグが苦笑して言う
「とは申せど ガルバディアの力は 我らローレシアの者へ魔法と言う力をお与え下された 我ら新人類の “神のお力” であるがな?」
ルーゼックが衝撃を受けて言う
「し…っ 知らぬわっ!」
キルビーグが身を屈めて 僅かに残った消えゆく光の粒子に触れる ルーゼックが不満気に言う
「そもそも、その我ら新人類の神である シリウス元国王は何を致しておるのだっ?この邪魔者を始末致せば 我々を元の場所へ戻す事も可能であろうかと…」
キルビーグが言う
「うむ、私もその様に」
キルビーグがルーゼックへ振り返る
瞬間
金属のぶつかり合う甲高い音が響く キルビーグが驚いて顔を上げる ルーゼックがキルビーグの間近で剣を振るって顔を上げる キルビーグが立ち上がりルーゼックの視線の先を見上げる ルーゼックが言う
「始末致すべきは 1体のみではあらぬと申す事か?」
ルーゼックが上空の相手へ剣を向ける キルビーグが呪文を詠唱して放つ キルビーグの魔法が上空の黒い翼を持つ人物へ向かう 黒い翼を持つ人物が回避する ルーゼックが表情をしかめて言う
「クッ…!人の身でありながら 宙を飛び回るとは…っ!」
キルビーグがルーゼックを手で制して言う
「ルーゼック あの者は私が相手を致そう お前は下がって居ってくれ」
ルーゼックが驚いて言う
「なっ!?何を申すか 馬鹿者っ キルビーグ!敵を前に剣士へ下がれとはっ!?」
キルビーグが言う
「先ほどの私の魔法を避けたと申す事は つまりは魔法の攻撃が通ずる相手と申す事 ならば 私であっても戦える… お前は先ほどの戦いで 直接の魔法攻撃が通じぬ者を相手に 多くの支援魔法を受けて戦った それ以前の機械兵との闘いから連戦で 身の負担は多いだろう 従って…」
ルーゼックが言う
「そうと申すなら 貴様とて同じ事!支援魔法は通常の魔法より 仲間へ与える気遣いから精神をすり減らす!ここで貴様に倒れられては…っ!」
黒い翼を持つ人物が滑空して 槍を手に猛スピードで向かって来る ルーゼックが瞬時に剣を構えて攻撃を弾く 攻撃を弾かれた黒い翼を持つ人物が過ぎ去った先から再び向かって来る ルーゼックが言う
「申しておるそばから 間に合っておらぬではあらぬか!?馬鹿者っ!キルビーグ!!」
キルビーグが苦笑して言う
「いや… 魔法には詠唱と申すものがあってだな?」
獣の牙を持つ者が 瞬きをする間もない速さで襲い来て 両手に持つ短剣を振りかぶる ロキが微動だにしないまま両手に持つ銃を向けている 獣の牙を持つ者が短剣をロキへ振るう ロキが銃を放つ 2丁の銃から放たれた2つの弾丸が同じ個所へ命中して 浅く抑えられた1発目の銃撃が押し込まれる 獣の牙を持つ者の短剣が ヴェルアロンスライツァーの持つ盾に弾かれる ヴェルアロンスライツァーのもう片方の手に持たれた長剣が ロキの与えた銃撃を目掛けて刺し向けられる 離れた場所でロスラグがその光景を見て居て言う
「や、やっぱり…っ ロキ隊長とヴェルアロンスライツァー副隊長は… 凄いッス!!」
獣の牙を持つ者が自身の身に刺されているヴェルアロンスライツァーの長剣へ手を掛け顔を上げる その目に ロキの両手に持つ銃が見える ロスラグがハッとして強く目をつぶる
銃声
ロスラグが怯えながら ゆっくりと閉じていた目を開く ヴェルアロンスライツァーの持つ盾の前で地に崩れた獣の牙を持つ者が光の粒子になって消えて行く ロスラグが泣きそうな表情で見つめてから 2人の近くへ向かおうとする ロキの声が響く
「来るなっ!」
ロスラグがビクッと身を震わせて立ち止まる ヴェルアロンスライツァーがロキへ向いて言う
「ロキ?」
ロキが言う
「…俺には分からない だが卿になら 分かるのだろう?…これで終わりか?ベル?」
ヴェルアロンスライツァーが反応して言う
「と言う事は?」
ロキが言う
「…先の戦いの後 奇襲に気付けたのは」
ロスラグがハッとして気を取り直して 周囲の空間の匂いを嗅ぐ ロキが言う
「…あの馬鹿犬が “匂う”と言ったからだ」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「なるほど そうであったのか… では 後ほど改めて礼を言おう あの1撃をまともに受けて居たら 今頃 私は無事では居られなかった」
ロキが苦笑して言う
「…どうやら 夢の世界に居た頃よりも 大分衰えているようだな?王を守る剣 ヴェルアロンスライツァー?」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「それは貴殿も同じであろう?ロキ?夢の世界の貴殿であったのなら 戦いの後の奇襲には隊員Aの協力を得なくとも気付いていた」
2人が視線を合わせ苦笑する その2人の近くで重い地響きが轟く ロスラグが2人へ向かって叫ぶ
「気を付けて下さいッス!ロキ隊長!ヴェルアロンスライツァー副隊長!まだ “何か” の匂いがするッスよ!」
ロキとヴェルアロンスライツァーが言う
「…いや」 「何かではなく」
ロキとヴェルアロンスライツァーが自身たちの前で大斧を振り上げる巨人を見上げて言う
「…既に 目の前に見えて居る」 「今度は巨人族… であろうか?」
巨人が大斧を振り下ろす ロキとヴェルアロンスライツァーが飛び退いて回避する 振り下ろされた大斧が叩き付けた地面を割る その後ろの地へ着地したロキとヴェルアロンスライツァーがそれぞれの武器を巨人へ向けて構える ロスラグが衝撃を受けて慌てる
ヘクターが振り下ろした大剣を担ぎ上げ 軽く肩へ置いて一息吐いて言う
「ふぅ… 流石に」
ヘクターの前の地に巨人が倒れていて光の粒子になって消えて行く ヘクターがそれを見ていた状態から周囲を見渡して言う
「最後に 3体いっぺんに出て来るとは 驚いたぜ?」
ヘクターの視線の先々で 獣の牙を持つ者と黒い翼を持つ者が光の粒子になって消えて行く デス1stが言う
「属性変化を無力化するプログラムが実行されていた ギガンヒュルムの遺伝子情報が組み込まれていた あの巨人に驚かされはしたが」
デス2ndが言う
「そもそも我々のプログラムサポートは ヘクター自身の能力を拡張する事が主たるもの それこそヘクター自身の 物理的な能力を強化するだけで圧勝とは… やはり」
デス2人が笑んで言う
「「世界一のプログラマーである 我々と」」
デス1stが言う
「世界一の大剣使いヘクター」
デス2ndが言う
「世界一の相棒である我々に」
デス2人が言う
「「敵わぬものなど この世に居ないと言う事だ」」
デス1stがニヒルにデス2ndが満足げに笑む ヘクターが2人の様子に苦笑して言う
「はは… お前らなぁ…?確かに 世界一の俺たちに 敵わねー奴は居ねーけど 俺はどちらかというと 速く動く事は苦手なんだ あの羽のある奴や狼みてーな奴との連戦はキツかったぜ?」
デス1stが採取データを見て言う
「ふむ… 確かに 我々の力でヘクターの俊敏性を上げるプログラムを作り ヘクター自身もそれを当然のように使いこなしてはいるが ヘクターの意識の上に その速度を“速い”と感じているデータが存在する」
デス2ndが首をかしげて言う
「では?ヘクターの その意識を… 無効化するプログラムを作り上げればいいのだろうか?」
ヘクターが衝撃を受けて言う
「あ!?」
デス1stが呆れの息を吐いて言う
「やれやれ… やはりまだヒヨッコだな デス2nd?お前は夢の世界で何を学んで来たのだ?我々はヘクターの相棒であって 支配者ではない ヘクターはもちろん 他者の意識を操作するなど そのような愚行を行う事など 許されるものではないのだ」
デス2ndが衝撃を受け デス1stを指差して言う
「それこそ夢の世界を作り上げて 我々全員の意識を操作していた 偽ガルバディア国王がよくも言ってくれる!?」
デス1stが衝撃を受けて言う
「黙れっ 出来損ないのデス2nd!その私のおかげで もう1人のヘクターの相棒として生まれたお前が 生みの親である私へ歯向かうつもりか!?」
デス2人がいがみ合う ヘクターが息を吐いて言う
「だから 喧嘩すんなって?…そんな事よか こいつら倒したんなら そろそろ 戻れねぇのか?それとも まだ何かブッ倒せって事なのか?」
ヘクターが辺りを見渡す デス2人が衝撃を受け仕方なく喧嘩を停戦して周囲の情報探索を開始する
ザッツロードが剣を構え仲間たちが背を向けあって周囲をうかがっている ソニヤが言う
「ね、ねぇ?アタシたちや皆が壊した 機械兵たちが居なくなってさ?今回はその… 皆まで居なくなっちゃった訳だけど… これって… やっぱ同じよね?」
ザッツロードが言う
「うん、僕たちが初めてシリウスBに会おうと このガルバディアに来た時と 同じだと思う」
ソニヤが言う
「って事はさ?この後は やっぱり あの… “ヴァッガス副隊長の偽物”が 襲い掛かって来る… のよね?」
ザッツロードが言う
「うん、そう… だと思ったんだけど…?」
ラナが言う
「そう… 思って身構えてから もうどれ位 経ったかしら?」
セーリアが苦笑して言う
「多分… 5分位は経っているのじゃないかしら?」
ラナが言う
「15分は経ってると思うわ」
ザッツロードが苦笑して言う
「う、うん… そ、そう…だね…?はは…」
ソニヤが言う
「そ、それってさ?つまり… ひょっとして…?」
ザッツロードが言う
「えーっと… 僕らは その時戦ったから… ひょっとしたら 今回は… ないのかな…?」
ザッツロードと仲間たちがため息交じりに息を吐いて肩の力を落とす ソニヤが不満気に言う
「もぉ~ 何よぉ~!15分も緊張して待たして置きながら 何もないって事~!?」
ラナが言う
「なら 貴女は もう一度 そのヴァッガス副隊長の偽物と 戦いたかったの?」
ソニヤが衝撃を受けて言う
「えっ!?いや… そういう訳じゃ~…」
ザッツロードが困り苦笑で言う
「でも… 前回は不意打ちのごとく 一瞬で終わってしまったから 今回は その… もう少しは戦えた… んじゃないかな?」
ラナが言う
「戦えた所で ザッツはその ヴァッガス副隊長の偽物に 勝てると思ってるの?それがどのくらい本物に近いのかは知らないけど 本物は機械兵の生産場所である あの大型機械兵ファクトリーを3か所も壊して来た 多国籍部隊の副隊長よ?」
ザッツロードが言う
「あ、うん… そ、そうだね… ヴァッガス副隊長が1人で行った訳ではないけれど あの機械兵が蔓延る大型機械兵ファクトリーへ入り込むと言う事だけでも 僕たちでは出来ない事だしね…?」
ラナが言う
「ともすれば その偉業を成し遂げた4人… ヴァッガス副隊長の偽物だけではなくて ロドウ副隊長や ガイ隊長の偽物まで襲って来るかもしれない」
ソニヤが言う
「あ~でも… その3人じゃなくてさ?メテーリ副隊長なら?アタシたちでも… 勝てる… かも?」
ラナが言う
「わざわざ回復役のメテーリ副隊長の偽物なんて 用意してくれる訳がないじゃない?そもそもこの空間は」
ザッツロードが言う
「うん…」
不鮮明な姿のザッツロードが言葉を続ける
『シリウスBが… 僕らの力を確認していた』
シリウスBが言う
「600年… 新大陸へ向かったお前たちを信じ 待ち続けていたローレシア帝国の彼らは 己の命を顧みず お前たちの助けが来る事へ望みを託し ローレシア帝国を守る結界に必要とされる聖魔力を得るため 機械兵ファクトリーの破壊へと向かった …私はその彼らへ力を与えた」
周囲には不鮮明に姿の見えるザッツロードやその他 位相のズレた位置に居る 新世界からの戦士たちの姿が見えている シリウスがシリウスBへ顔を向ける シリウスBが言う
「お前の用意した奴らへ向かわせたモノは その彼らの80%の能力を模した疑似プログラムだが… その撃破達成率は」
不鮮明な姿のソニヤが言う
『で、でもさ!?今回は ひょっとしたら!?もうちょっとくらい…っ!?』
不鮮明な姿のラナが言う
『もうちょっとくらい?何が襲って来たのか 分からないうちに意識を失った 私には そのヴァッガス副隊長の偽物と言うのが どんな姿であったのかすら知らないけれど…』
不鮮明な姿のザッツロードが困り苦笑で言う
『う、うん… 僕も… セーリアのソードバリアのおかげで ヴァッガス副隊長と同じ顔をした人だった… って事くらいしか…』
他方では不鮮明な姿のロキとヴェルアロンスライツァーが 巨人の形をした数字の羅列と戦っている 他方では不鮮明な姿のヴィクトールとバーネットが顔を上げ 上空に居る翼のある人の形をした数字の羅列を見上げている シリウスBが視線を自分の隣へ向ける 不鮮明な姿のヘクターが辺りを見渡して言う
『ならよ?このまま先に行ったら…?どうなんだ?』
不鮮明な姿のデス1stが言う
『恐らく何も変わらない 誰もいない本来の建物の構造が続いている筈だ』
不鮮明なヘクターが表情を困らせて言う
『そっか… それじゃ 何も意味ねぇよな?俺らは… シリウスBをぶっ飛ばしに来たのによ?』
不鮮明なヘクターがシリウスBへ向く シリウスBが鼻で笑う
「フ…ッ」
不鮮明なヘクターがシリウスBの横顔を見てから 再び周囲を見渡して 後方に居るデス2人の下へ向かう 不鮮明なヘクターが一度デス2人の近くで立ち止まってから 辺りを見渡し 鮮明な姿のラインツの前に来る ラインツが不鮮明な姿のヘクターを見てから隣に居るシリウスへ向く シリウスが周囲にプログラムを現していて言う
「80%の割合を考慮に入れずとも 結論は お前の作った兵士の方が戦力は上じゃ しかし… その代償は大き過ぎる 彼ら新人類は 我らの遊び道具ではあらぬのじゃ 生体の変化は種の存続を脅かす あの状態が80%と申すのなら 現実のその者たちには既に その影響は表れてしまっている筈じゃ」
シリウスBが言う
「言ったはずだ シリウス 彼らは 新大陸へ向かったお前たちを信じ 己の命と引き換えに ローレシア帝国の民を守る時間を稼いだのだと …だと言うのに そのお前が作り上げた答えが コレとは?そうとあれば もはや 種の存続などと 悠長なことは言っていられない この第2プラントの粛清の時は近い こちらの大陸が終われば 次は新大陸… 例え今 終わり行くこの旧大陸から逃げおおせようとも」
シリウスが言う
「B、我は新たな方法を編み出した 彼ら新人類を意識のみの世界に置いて強化してやる事じゃ 一度は無理と思うて諦めた方法であったが 彼ら新人類が それを用いた新たな方法を編み出した お前も見ておったじゃろう?今回は その お前の介入が邪魔をしてしもうたが 彼ら新人類の短き命の時を 何倍にも出来よる これなら 彼らの時間の制限も無いも同じじゃ」
シリウスBが言う
「下らん 幻の中で力を得させ様など… それこそ幻想だ シリウス お前こそ目を覚ますべきだ 新人類の遺伝子情報を改良し 我らの力とすれば良い お前の力ならば 現状の新人類の能力をさらに強化する事も出来るだろう?私はその奴らの身を強化してくれる 機械にも勝る治癒力と身体能力を持つ 強い容れ物を」
シリウスが言う
「それこそ お前が嫌う 機械と同じよのぉ?B?」
シリウスBが言う
「黙れ シリウスっ!機械は物理的な自己修復能力は持たない!いくらAIを強化しようとも 新たな知識を生み出す事も出来ない!増して 己が愛する者の為に己の命を賭して戦う事を選んだ 彼らの心を真似する事など 到底出来まい!?」
シリウスが言う
「その彼らが守ろうとした人々の未来を守るために 限られたその者らの未来を途絶えさせても良いと言うのか?お前が求めるのは その程度であるのかB?我らが共に力を合わせるとあれば …その彼らとて 救う事が出来ると言うものを!」
シリウスBが一瞬言葉を止めてから言う
「…っ …もはや そのような猶予などっ」
シリウスが言う
「時間はある 創り出せばいいのじゃ 足りぬと言うのであれば… この我が稼いでくれる」
シリウスBが言う
「稼ぐだと?そのような事… …っ!?まさか アウグスタに!?」
周囲の情報にジャミングが走り 異なる位相に居た 全てのモノが元の空間へ戻る それぞれが状況の変化に驚き ザッツロードが呆気に取られて言う
「…あ?あれ?風景が元に?…ぐえっ!?」
ソニヤが悲鳴を上げて言う
「きゃあ!?ザッツ!?だいじょう…!?」
ヴィクトールが呆気に取られて言う
「あれ?ごめん ザッツロード?けど いつの間に僕の下に?」
ザッツロードがヴィクトールの下敷きになって居て 苦笑しつつ言う
「う…っ 僕も… 分かりませんが… とりあえず 降りて頂けると…」
ラナが呆れて言う
「…ぶ そうね?」
バーネットが周囲を見渡し 雷の纏う鞭を手にしていて言う
「チ…ッ あと一発で 野郎を叩き落してやれたって所で…」
ルーゼックが顔を下げて息を吐く キルビーグが困り苦笑で近くへ行って回復魔法を行う ロキが両手に持つ銃を下げ ヴェルアロンスライツァーが自身の持つ長剣の刃を見てから周囲を見る ヘクターがハッとしてシリウスBへ向き大剣を構えて言う
「見付けた!シリウスBだっ!…って!?」
ヘクターが周囲を見渡して慌てて言う
「皆も居るじゃねーか!?なんだっ!?元に戻ったのか!?どうする デス!?何か殴るか??」
デス1stが言う
「落ち着け ヘクター」
シリウスBが言う
「いくら時間を稼ぎ 幻を重ねた所で お前のやり方では間に合わない」
皆がシリウスBへ向く シリウスが言う
「我に出来る事は全て行った 後はお前の力を借りるだけじゃ お前が致すことに 我の力が必要だと言うのであれば 我は 我の持つ全ての情報を お前へ譲っても良いと思って居る …いや?譲るべきじゃろう?敵わぬ相手の元へと向かうのじゃ こちらの情報は無いに越した事はあらぬ」
シリウスBが言う
「相手は我々の遥か上を行く存在 お前の謀など隠しおおせる筈が無い」
シリウスが笑んで言う
「いっそ 廃人にでもなって向かうかのぉ?相手が欲して居るものは それこそお前の言う 容れ物だけじゃ」
シリウスBが言う
「…ふんっ 出来るものなら やってみろっ …出来よう筈がない シリウスA!」
シリウスが言う
「確かに時間は掛け過ぎた 方法を見つけるのに手間取った事は認める しかし 可能性は得られた その為の準備も万全じゃ 後は… 我が向かい B?お前が彼らと共に…」
シリウスBが言う
「時間稼ぎの夢物語は十分だ ローレシア帝国の者どもの転送も 済んだだろう?乗り損じたこの者らも 連れて行け」
シリウスBが身を翻しガルバディア城内へ立ち去って行く ヘクターが呆気に取られて言う
「あ?…ああ?い、良いのか?追うのか?おい?デス!?」
ヘクターが慌てて周囲の皆を見てからデス2人へ向く デス1stが言う
「我々の本来の目的は時間稼ぎだ …その役目は果たされている」
ザッツロードがデス1stを見る ヘクターが呆気に取られて言う
「なら… 良いのか?…殴らなくて?」
デス2人が衝撃を受け デス2ndが言う
「いや?その目的は元々含まれてはいなかったのだが… ヘクター?」
ラインツが大剣を持つ手を握りしめて叫ぶ
「待てっ!シリウスB!!」
皆が驚いてラインツへ向く ラインツが大剣を手にシリウスBへ駆け向かう シリウスが言う
「ラインツ!」
ラインツの前にプログラムが発生してそこから 男女2人の人物が投げ出されて来る 2人が悲鳴を上げる
「きゃあ!?」 「ニャギャ!?」
ラインツが驚き 目の前の空間から現れた2人を咄嗟に抱き止める 女が言う
「あ、ありがとう…?」
男が言う
「えーっと…?」
ラインツがハッとして顔を向ける 視線の先で城門が音を立てて閉まる ラインツが一瞬呆気に取られるが気を取り直して城門へ向かおうとする シリウスが言う
「無駄じゃ ラインツ」
ラインツが足を止める 男が言う
「ラインツ?…って ひょっとして?」
ラインツが男へ振り向いて その顔を見て呆気に取られる 男がローブのフードの中で表情を明るめて言う
「やっぱり!?アバロンの王 ラインツだよね!?わあ 久しぶり!?覚えてる?僕だよ?」
シリウスが驚き目を見開く 男が続ける
「シリウスの猫!ヴィクトール11世!」
ヴィクトールが呆気に取られて言う
「え…?」
バーネットが疑問して言う
「あぁ?」
ヘクターが言う
「ヴィクトール11世って… まだ生きてたのか?ヴィクトール?」
ヘクターがヴィクトールへ向く ヴィクトールが言う
「いや…?そんな筈は…?」
男が衝撃を受けて言う
「勝手に殺さないでっ!?」
女が言う
「ヘクター!?ヴィクトール様も!?ロキもヴェルも!?」
皆が女を見て驚き ヘクターが言う
「ラーニャ!?お前!?何でこんな所に!?」
ラーニャが言う
「それは…っ ザッツが…」
ヘクターが言う
「ザッツが?」
シリウスが言う
「詳しい話は後じゃ 城門が閉められたとあっては この場所の悪魔力の濃度も増えよる ローンルーズへ向かい 我らも新世界へ戻るのじゃ」
ヴィクトール11世がシリウスの前に来て言う
「シリウス…」
シリウスがヴィクトール11世を一度見てからプログラムを実行する ラーニャが意を決してプログラムの範囲から脱する ヘクターが驚いて言う
「ラーニャ!?」
ラーニャを残して 皆が消える
「あれが シリウスBね… でも、何だか全然似て無いけど?」
セーリアが言う
「二卵性の双子なのかしら?」
ラナが言う
「そういう問題じゃないでしょ?あれでも私たちと同じ人なの?」
シリウスBがソニヤたちへ視線を向ける ソニヤたちが焦って息を飲む ラインツが視線を強め大剣の柄を握り締める ヘクターが言う
「仲間の機械兵を俺たちにぶっ倒されておきながら 礼を言ったって誤魔化されねーぜ!?お前が闇の王シリウスBだな!新世界へ機械兵を送り込んだり ソイッド村の連中をさらって行った責任は 償わせてやるぜ!」
ヘクターが剣を振り払って構え直す 他のメンバーも構える シリウスBが皆の様子を見て鼻で笑い シリウスへ視線を向ける シリウスが気付く ヘクターがシリウスBへ向かって駆け出して言う
「何とか言え!ソイッド村の連中を返して 今後は二度と新世界の連中へ危害を加えないと 約束しろ!…じゃなけりゃ!」
ヘクターがシリウスBへ大剣を振るう 皆が息を飲む ヴィクトールが収めていた大剣の柄に手を掛ける
瞬間
ヴィクトールの視界に見えていたヘクターとシリウスBが消える ヴィクトールが驚いて言う
「ッ!?ヘクター!?」
ヴィクトールが驚いていた状態からハッとして辺りを見渡す ヘクターだけでなく 周囲に居た仲間たちや 倒したはずの機械兵の残骸も消えている ヴィクトールが息を飲んで振り返って言う
「バーネット!?」
ヴィクトールの視線の先で バーネットが周囲を見渡して言う
「ど…っ どうなってやがる!?」
ヴィクトールが一度呆気に取られてから肩の力を抜いて バーネットの近くへ向かいながら言う
「皆は…?」
ヴィクトールが気付き足を止めて振り返る ヴィクトールとバーネットへ向けて 獣の牙を持つ者が殺気を向けて現れる ヴィクトールとバーネットが身構える 獣の牙を持つ者が上体を低くして両手に短剣を握り身構える ヴィクトールが大剣を抜いて構える
ルーゼックが驚き呆気に取られた状態で辺りを見渡す 視界に見えていたヘクターや 周囲の機械兵の残骸が消えている ルーゼックが言う
「な… なんだっ!?一体 何が起きおった!?ヘクターや… あの者はっ!?」
ルーゼックの後方で キルビーグが言う
「ふむ これは恐らく…」
デス1stが言う
「位相を変えられた」
デス2ndが振り返って言う
「位相を?」
ヘクターがギリギリで止めていた大剣の 刃の先の空間を見て言う
「…逃げられたって事か?」
ヘクターが振り返り 視界に入った空間を見て呆気に取られる デス1stが自分たち3人しかいない空間の中で ヘクターを見上げて言う
「いや 逃げられたと言うよりも 我々が“飛ばされた” と言った方が近いだろうか?」
ヘクターが2人のデスの下へ向かいながら言う
「なら…?」
ヘクターの問いにデス2ndが言う
「戻るには、変えられた位相を… 戻すプログラムを作り上げるか もしくは」
近くに重い地響きが轟く ルーゼックが視線を向けて言う
「面白い… たった今 己の体より数倍の大きさに鉄と機械の力を有する 機械兵を打ち倒した我らへ?」
ルーゼックが自分の前で 自分たちへ向けて大斧を振り下ろそうと構えている巨人を見上げて言う
「今更 その我らと同じ肉体を持った ただのデカ物を差し向けるとは?…随分と甘く見られたものぞ!」
キルビーグが支援魔法を放つ ルーゼックが巨人が振り下ろした大斧を避ける キルビーグが続けて魔法詠唱を行う ルーゼックが剣を振りかぶって言う
「この者を倒して見せれば 満足だと申す事か!?シリウスBとやら!」
ルーゼックが魔法剣を振るう
【 新世界 ガルバディア城 城門前 】
槍使いの襲撃者が倒れている レクターが顔を上げ 瞳の色が元に戻り一息吐いてから 槍使いの襲撃者の近くへ来て言う
「私はお前を殺しちまいたくはねーんだ “変なプログラムの実験体” にされちまったみてーだけど お前も私も 同じ人だ 住む世界は違っても 私たちは仲間で居られるんだ」
槍使いの襲撃者が息を切らしながらレクターを見上げる レクターが悲しそうに微笑する 槍使いの襲撃者が言う
「…貴殿も… シリウス様と 同じ様に笑う… 分かっているのだろう… この戦いの無意味さを…」
レクターが一瞬驚いてから言う
「シリウス様…? 旧世界の王 闇の王シリウスBの事だな?」
槍使いの襲撃者が苦笑して言う
「闇の王… 我らにとっては シリウス様こそ 旧世界に残された 最後の光り… 私は… ここで死ぬ訳には行かない シリウス様の為にも…」
槍使いの襲撃者が起き上がりレクターを見る レクターが様子を伺う 槍使いの襲撃者が僅かに微笑してレクターを見て言う
「貴殿も “変なプログラムの実験体” …とやらに されたのだろう」
レクターが苦笑して言う
「ああ、そうなんだ お陰で私は世界一の大剣使いには なれなくなっちまった ガルバディアの力は 使わねーようにしようとしても 勝手に目の前に見えちまったり 勝手に力を貸してくれちまったりする けど、それじゃー 本当の大剣使いじゃねーんだ」
槍使いの襲撃者が言う
「それでも 貴殿の力は強い… この世界を守る力だ 世界は貴殿を必要とする」
レクターが疑問する 槍使いの襲撃者が言う
「私はシリウス様の下へ戻る 次に会う時 私は更に強くなっているだろう 貴殿を倒せる程に …忠告する 私を殺すなら 今が最後だ」
槍使いの襲撃者の周囲にプログラムが発生する レクターが呆気に取られた後 笑顔で言う
「お前のお陰で 私も強くなりたいと 久し振りに思った!この気持ちは 私は好きだ だから私は 私にそう思わせてくれた お前の事も好きだ!殺したくはねーけど また戦いてーと思う!」
槍使いの襲撃者が苦笑して言う
「おかしな方だ だが、悪くない その時にこそ 貴殿の本気を見せて貰う」
槍使いの襲撃者がプログラムに消える レクターが呆気に取られた後 照れて言う
「やっぱりあいつはすげー奴だ 私が本気で戦ってねー事がバレちまってた!けど、私は本気で戦ったデータを デス1stには見せてねーんだ だから、今の私にはあの戦いが限界なのだ もしかしたらあいつは そこまで分かっていたのだろうか?…おお!だからあいつは 次回こそ2人で全力で戦おうと言ったのだな?!そんな事にも気付けねー私は やっぱり 誰よりも間抜けているのかもしれねー そんな気がする!」
レクターが笑顔でいる 周囲のガルバディアの騎士たちが呆れている
【 カイッズ国 城下門前 】
リーザロッテが叫ぶ
「さあ!最後の一押しでしてよ!総員 一斉開砲用意!」
リーザロッテが槍を振り示して叫ぶ
「撃てーーっ!」
カイッズ大砲部隊が一挙に砲撃を行う カイッズ城下町へ向かっていた機械兵らが横一列に放たれた砲撃を受け倒れる リーザロッテが高笑いして言う
「オーホッホッホッホ!カイッズ聖戦部隊に 機械兵など足元にも及ばなくってよー!」
カイッズ部隊と巨人族が喜んで喝采を上げる カイッズ部隊長がリーザロッテの元へ走って来て言う
「我らの下っ端聖母様!機械兵の残存を確認して参ります!」
リーザロッテが微笑して言う
「ええ!そうして頂戴!」
カイッズ部隊長と部下が機械兵の残骸へ向かって行く 端で見ていた司祭が悔しがって言う
「くそぉ~っ 我らをお救いして下さる聖母様は 下位の聖母様だと言い広めておいたのが まさかこの様に裏目に出てしまうとはっ!」
リーザロッテが気付いて言う
「あ、そうだわ ツヴァイザーの機械兵は ベネテクトとスプローニの部隊が 自国防衛のおまけに成敗して下さったと言っていたけど その後の連絡は無くってね?こちらもひと段落した事だし レリアンへ連絡を入れて差し上げようかしら」
リーザロッテが通信機を取り出して通信する 通信機のモニターにレリアンが映るとリーザロッテが言う
「レリアン!カイッズ周囲の機械兵は制圧して差し上げてよ!そちらも変わりは無くって?」
通信機のレリアンが微笑して言う
『いいえ、変わりはあったわ しかし、』
【 ツヴァイザー城下町前 】
レリアンが微笑して言う
「ベネテクトとデネシア両国の魔法剣士部隊が ツヴァイザーを助けに来て下さったの そして、ヴィクトール14世の指揮の下 新たに送り込まれた旧世界の機械兵らを制圧して 今はその残骸の確認に ベーネット国王もいらして旧世界の機械兵に関する調査を行っている所よ」
レリアンが振り向くとベーネットが壊れた旧世界の機械兵に手をかざし 目を閉じて周囲にプログラムを現している その横でヴィクトール14世が見守っている
【 カイッズ国 】
リーザロッテが呆気に取られて言う
「え?ベネテクトとデネシアの…?それに ヴィクトール14世陛下とベーネット陛下が…?そう、良かった 流石レリアンね!新たに送り込まれた機械兵へ迅速な処置をして頂けた事へ ツヴァイザーの王女として礼を言いましてよ!」
通信機のレリアンが苦笑して言う
『私はただ、他国へ助けを求めただけ ベネテクトとデネシアから援軍が駆け付けて下さるまでの間は 私たちの優秀勇敢なる仲間たちが 必死に仲間の故郷であるツヴァイザーを守っていたのよ 貴方からのお礼は その彼らに言って上げて頂戴』
通信機にレイト、ヴェイン、ロイ、シャルロッテが映る 4人が気付き苦笑する リーザロッテが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「皆…」
【 ツヴァイザー城下町門前 】
レイトが言う
「いえ!ツヴァイザーは我らの祖国!そして、我らはツヴァイザーの兵です!姫様が戻られるまで この国を死守するは 当然の勤め!」
ヴェインが言う
「まぁ… 他のツヴァイザー兵どもが土壇場で逃げ出してしまった事は… この際隠しておこう」
ロイが顔を背けて言う
「…俺はスプローニの兵として 隣国ツヴァイザーを援護しただけだ」
シャルロッテがモバイルPCで顔を隠し含み笑いをしながら言う
「そう言いながら いつもスプローニ以外の国ばっかり 守っちゃいますね?」
ロイが衝撃を受け 怒りの視線をシャルロッテへ向ける シャルロッテがモバイルPCで笑顔を隠す
【 カイッズ国 】
リーザロッテが微笑む カイッズ部隊長が戻って来て言う
「下っ端聖母様!機械兵の殲滅を確認致しました!」
リーザロッテがカイッズ部隊長へ向いて言う
「そう!分かったわ!それでは 他国にて旧世界からの機械兵の増援があったと言うから 引き続き警戒を続けなさい!」
カイッズ部隊長が敬礼して言う
「はっ!承知致しましたっ!」
カイッズ部隊長が部隊員らの下へ向かいキビキビと指示を出している リーザロッテがその様子に微笑して通信機へ向かって言う
「このカイッズには もう下っ端聖母様は必要ない様でしてよ 私は皆の所へ戻るわ!」
通信機のレリアンが微笑して言う
『ええ!私も相棒の貴方が居てくれないと ただ指示を出すだけで魔法が使えない… やはり私たちは!皆が揃わないと 本領を発揮出来ないのよ!きっと貴方さえ居てくれれば このツヴァイザーもベネテクトやデネシアへ援軍を依頼しなくても済んだのかもしれないわ!』
【 ツヴァイザー城下町門前 】
レイトたち4人が衝撃を受け レリアンへ背を向けヴェインが言う
「いや、俺たちが全員揃っていようが居まいが…」
ロイが言う
「…あの大量の機械兵を殲滅する事など不可能だった」
通信機のリーザロッテが得意げに言う
『オーホッホッホ!当然でしてよ!世界の勇者である私たちが全員そろってさえ居れば機械兵など足元にも及ばなくってよーっ!』
レイトたちが呆れの汗を流す レリアンが言う
「ええ!ですから 貴女もいつまでもそちらの カイッズにいらっしゃるのではなくて 早く私と勇者の仲間たちが居るツヴァイザーへ 戻っていらっしゃい!」
通信機のリーザロッテが言う
『分かったわ!』
通信が切れる レリアンが微笑んで通信機を片付ける レイトたちが呆れている
ベーネットの様子を見守っているヴィクトール14世がふと気付いて 周囲を見渡して言う
「うん?なんだろう…?」
ベーネットが周囲のプログラムを消して目を開く 赤い瞳が数回瞬きをした後青い瞳に戻り それから立ち上がってヴィクトール14世へ振り向いて言う
「どうかしましたか?ヴィクトール?」
ヴィクトール14世が周囲を見ていた視線をベーネットへ向けて言う
「あ、うん… 誰かの視線を感じると思って」
ベーネットが疑問して言う
「視線を…?」
ベーネットがヴィクトール14世を真似て周囲を見た後苦笑して言う
「ここはツヴァイザーであり 私たちは他国の王です ですから 誰しもが我々の行動には目を光らせているのでしょう その目の中には 私たちを嫌悪する者が居る事も十分考えられます ベネテクトもデネシアも どちらも現状は条約等を交わしていない 言わば このツヴァイザーの敵対国なのですから」
ヴィクトール14世が苦笑して言う
「はは… それじゃ この感じは 僕らを嫌っている者の視線だね それが… 殺気を持っている事も まぁ 無くは無いのかな?」
ベーネットが言う
「殺気を?つい先ほど このツヴァイザーを新たに現れた機械兵から守って差し上げたのに 随分と失礼な視線ではありますが… そうですね?無い事は無いかもしれません」
ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「うん、それに 自国の王がスプローニへ逃げ出した今 隣国であるベネテクトの王が来てしまったのでは 民たちも心配なのかもしれない」
ベーネットが疑問して言う
「え?では、その殺気を帯びた視線は 私に向いていると言う事でしょうか?だとしたら…」
ベーネットがヴィクトール14世に背を向け周囲を見渡しながら言う
「無礼にも程がありやがるってぇ事を 一発…」
ヴィクトール14世が疑問して言う
「え?何か言ったかい?ベーネット?」
ベーネットが衝撃を受け振り返り 慌てて誤魔化しながら言う
「あっ!い、いえっ!何でもありませんっ!はっ はは…っ」
ヴィクトール14世が首を傾げる レリアンがやって来て言う
「カイッズの支援に当たっていたリーザロッテが間もなく戻るとの事です 私からこのツヴァイザーが デネシア、ベネテクトの両国の兵と お二方の援護を受けたと言う事を伝えてありますので 今回の防衛に関する謝礼、報酬などについてはご安心下さい… とは言え、貴方方へ支援を申し入れたのは デネシアの元女王の私ですので」
ヴィクトール14世が苦笑して言う
「デネシアは ツヴァイザーの支援と共に たまたまそのツヴァイザーに滞在されていた デネシア国元女王の身柄を保護するために向かった との名目を付けるつもりです ツヴァイザーは元々それほど裕福ではないですし… 残念ながら我らデネシアの敵対国である事は今も変わりません それでも母上の相棒様の国ですから可能な限りの善処が出来るよう デネシアの王である私から言って置きましょう」
ヴィクトール14世が微笑する レリアンが一瞬呆気に取られた後微笑して言う
「うふ…っ ありがとうヴィクトール 貴方も相棒を得た事で考え方にも少し変化があった様ですね?」
ヴィクトール14世が一瞬呆気に取られた後ベーネットへ向き微笑し レリアンへ向き直って言う
「そうですね 一国の王でありながら ならず者ごときに軽く騙され 同じ手で誘拐されてしまった私を 内々密に救出してくれた彼に お礼は軽く済ませるものだと教わりました」
ヴィクトール14世が笑顔になる ベーネットが気付き苦笑する レリアンが呆気に取られて言う
「え?誘拐…?昨日アバロンで顔を会わせてから 今日に至るまでのこの短い間に 貴方は また誘拐され また救出されていたのですか!?」
ヴィクトール14世が言う
「はい、そうなんです… てへっ」
ヴィクトール14世が照れる ベーネットが呆れる レリアンが溜息を吐く ベーネットが気を取り直して言う
「ベネテクトも今回のツヴァイザーへの支援については リーザロッテ王女への以前の借りを返したと言う事で終わらせるつもりです …最も、こちらは 私の父が “夢の世界で作った借り” だそうですが」
ベーネットが苦笑する ヴィクトール14世が呆気に取られ疑問して言う
「え?夢の世界で作った借りを この現実世界で…?」
レリアンが気付き微笑して言う
「ああ、リーザがベネテクトの町を魔物から守ったと言う あの話ね しかし、それは 同夢の世界にてバーネット陛下が直々にツヴァイザーの防衛を行った事で既に返済されていると思うけれど… うふふ、倍返しで相殺とするだなんて ベネテクトの王は随分誇り高いお方ですね?」
ベーネットが微笑して言う
「はい、ベネテクトの王はプライドの塊の様なものです 貸しはいくら作っても その逆や少しでも無様な姿を見せる事は許されません」
レリアンが軽く笑う ベーネットが微笑む ヴィクトール14世が呆気に取られた後 苦笑して言う
「へぇ 凄いね?でも、あのバーネット様方を見ていると 少し分かる気も…」
ヴィクトール14世がバーネット1世とバーネットを想像し身震いする ベーネットがヴィクトール14世へ向いて言う
「ええ、それと共に 少々ずる賢くもあります プライドの高さはアバロンも同じだと思いますが 我々は彼らとは違い 物理的な力は弱いですからね?レイピアに毒が塗られている事なども その力の弱さを補っての処置です」
ベーネットが自分の携えているレッドレイピアの柄に触れる ヴィクトール14世がそれを見た後微笑して言う
「しかし、ベーネット?ベネテクト王家の貴方方は ガルバディアやソルベキアの力を使える数少ない特別なプログラマーだ この世界を救うためにも今は その剣で戦うより我々を補佐する側に回るべきだよ それに、君自身の身は相棒の僕が守るから」
ヴィクトール14世がベーネットへ微笑みを向ける レリアンとベーネットが驚いて呆気に取られる ヴィクトール14世が2人の反応に疑問して言う
「え?あれ?僕は 何かおかしな事を言ったかな?」
ベーネットが僅かに頬を染め 思わず視線をそらしながら言う
「あ… いえ、何と言いますか…」
ベーネットが視線を逸らした先で何かに気付き そちらへ向く ヴィクトール14世とレリアンが疑問してベーネットの視線の先を見る 背丈の大きな人物がローブを纏ってやって来て ベーネットの前で止まり ベーネットを見下ろす ベーネットが疑問して言う
「私に何か?貴方は… ツヴァイザーの方ですか?それとも…?」
レリアンが見上げて言う
「カイッズの巨人族の方かしら?リーザロッテ王女に用があるのなら 代わりに私が伺います 直接、本人とお話したいと言う事でしたら もうしばらく…」
ヴィクトール14世が見つめる 背丈の大きな人物が3人を見た後 ベーネットを見て言う
「お前… 同じ感じがする シリウス様と 同じ…」
ベーネットが一瞬驚いて言う
「シリウス様の名を知っているとは…っ 貴方は一体誰です?」
背丈の大きな人物が言う
「… 俺は… ロドウ この国の 一番の戦力を探している 誰だか分からない けど お前で良い」
ベーネットが疑問して言う
「この国の… ツヴァイザーの一番の戦力ですか?しかし、ロドウ殿 残念ながら私はベネテクトの王です この国の者ではありません ツヴァイザーで一番の者 と言うと…?」
ベーネットがレリアンへ向く レリアンがベーネットの視線に困って言う
「私も生憎そう言った事は…」
ロドウが言う
「お前で良い」
ベーネットとレリアンが見合わせていた顔をロドウへ向けようとする ヴィクトール14世が叫ぶ
「ベーネット!危ないっ!」
ヴィクトール14世が抜刀して ベーネットへ振り下ろされていたロドウの大斧を剣で受け止め その重みに顔を顰めて言う
「ぐ…っ!」
ベーネットが驚いて言う
「ヴィクトール!?」
ヴィクトール14世が堪えながら言う
「君に向けられていた殺気は この者からのだっ!彼は本気で君を!」
ロドウがベーネットを見て言う
「俺は この国で一番の戦力を奪う お前で良い お前の力は シリウス様の邪魔になる お前を… コロス」
ロドウが斧を引き振り払ってヴィクトール14世の剣を払う ヴィクトール14世が力負けして弾き飛ばされる レリアンが慌てて叫ぶ
「ヴィクトールっ!」
レリアンがヴィクトール14世の下へ向かう ベーネットがそれを見た後ロドウへ向く ロドウがベーネットへ向け斧を振り下ろす ベーネットが視線を強め瞳の色を変え後方へ素早く回避し レッドレイピアを抜こうとする 右足に衝撃が走り呻いてうずくまる
「うっ!」
ベーネットが右足を押さえ きつく閉じていた目を開き表情をしかめて言う
「クソッ… もう この足のトランスミッターは使えねぇか」
ベーネットの瞳が青く戻り ロドウを見上げる ロドウが再び斧を振り上げる ヴィクトール14世がベーネットの前に立ち剣を構えて言う
「ベーネット!ここは僕に任せて 君は母上と共に下がるんだ!」
ベーネットがヴィクトール14世を見て気を取り直して言う
「この者は 貴方より強いです!共に戦わねば勝てません!レリアン様どうか御退避を!」
ベーネットが立ち上がりレッドレイピアを抜く レリアンが言う
「私の仲間たちを呼んで参ります!どうかそれまでっ」
レリアンが走り去る ベーネットとヴィクトール14世がロドウへ武器を構える ロドウがヴィクトール14世を見て言う
「お前も 邪魔をするなら コロス」
ヴィクトール14世が微笑して言う
「出来るかな?僕はデネシアの王であっても最強の剣士の国アバロンの大剣使いだ そして、今は相棒も居る 簡単には負けられない!」
ヴィクトール14世が笑む ベーネットが呆気に取られた後微笑して言う
「ええ、アバロンとガルバディアは 世界一の相棒です その我々が揃って 負ける訳には行きません」
ヴィクトール14世とベーネットがロドウへ向かう ロドウが大斧を振り上げる
【 シュレイザー城下町 門前 】
ガルバディアの騎士たちが機械兵らを順調に倒して行っている チッピィが喜んで言う
「やっぱりガルバディアの騎士は凄いね!あの機械兵をばったばった倒してくれてるね!レビ!やっぱり僕たちは 戦いに行かなくっても大丈夫ね!」
レビが間を置いて言う
「…元々俺たちは 奴らが前線で戦うのを補佐するのが役目 ここが安全であるなら 俺は城下の町の警戒へ向かう」
レビが立ち去る チッピィが慌てて追い駆けて言う
「城下の門前が大丈夫なら 町中はもっと大丈夫ね!それなら僕も 安心して付いていけるね!シュレイザーにガルバディアの騎士たちが来てくれて 本当に良かったね!」
レビが歩きながら言う
「…ガルバディアの騎士 俺は好かん 奴らは… ガルバディアで作られた人形だ あいつ等からは …魂を感じられない」
チッピィが疑問して言う
「魂?…えーっと 知能が低いって事?確かにあのガルバディアの騎士たちは 僕より言葉を知らないね!」
レビが歩きながら言う
「…知能が低い?いや それは違う 奴らは一応 戦いにおける効率などを認識する能力はある それに、俺たちより戦力が高いと言うのは 俺たちよりもそれを熟知していると言う事だ が、俺が言いたいのは そう言うことではない …そうだな、例えるなら …自我 の様な物か」
チッピィが首を傾げて言う
「自我…?」
チッピィが困った表情でレビを見上げる レビがチッピィを見て言う
「…チッピィ 卿は 機械兵どもがこのシュレイザーに現れた時 退避したいと言っただろ?」
チッピィが頷いて言う
「うん!言ったね!ううん、違うね!言おうとしたら レビに殴られたね!だから 言えなかったね!」
レビが衝撃を受け 一瞬間を置いてから言う
「…では、言おうとした… いや、その前に考えただろう?」
チッピィが笑顔で言う
「うん!言おうとしたね!それで 言い掛けたね!それに 一番に考えてたし!それから 本当はそれしか考えてなかったね!」
レビが視線を向けずに言う
「…つまり、俺の思う自我とは そう言う事だ」
チッピィが疑問してレビを見て言う
「え?」
レビが言う
「機械兵は強い、だが俺たちが力を合わせれば 奴らガルバディアの騎士までとは言わずとも 何とか一矢を報いる事が出来るだろう しかし、卿はそれを行う事は考えず逃げる事を考え 望んだ… あのガルバディアの騎士は 恐らく卿の様に考える事をしない 奴らは例えまったく歯の立たない敵が相手であっても ガルバディアの民に命じられるままに動く それこそ機械兵… 機械と同等のモノだ」
チッピィが呆気に取られ立ち止まる レビが先行する チッピィが視線を落とし考えてから追い駆けて言う
「でもレビ!あいつらは 機械兵とは違うね!僕は この前 あいつらがご飯食べてるの見たね!それで あいつらに 僕たちの好きなチーズを食べさせてあげたら 美味しいって言って 喜んで食べたね!僕は そんなあいつらが機械兵と同じとは思いたくないね!」
レビが視線を向けないままに言う
「それはただ 奴らの脳内にある快楽中枢でも刺激されたのだろう?奴らは一応は人だ痛みを感じるなら快楽も感じる筈だ だが、それでも奴らは卿に進められたからそれを食べ 快楽を得はしたが自らそれを捜し求め 得る事をしない だから奴らは いつも同じ物を食べている 与えられるものを得るだけで 自ら選択し行動を起こす事は無い …俺は人でも動物でも そう言う奴らは …大嫌いだ」
チッピィが驚き視線を落として言う
「レビ…」
後方で歓声が上がる シュレイザー兵らが喜びガルバディアの騎士たちが顔を見合わせた後武器を掲げる シュレイザーの民たちが喜んでガルバディアの騎士たちの下へ向かって行く チッピィが微笑んでレビを見上げて言う
「レビ!ガルバディアの騎士たちが機械兵を皆倒したね!これでシュレイザーは安心ね!レビ!」
レビが後方へ向けていた視線を戻してから間を置いて言う
「…そうだな シュレイザーはガルバディアの騎士どもに守られた …俺たちスプローニの部隊では出来なかった事だ いくら奴らを否定した所で 俺たちは結局奴らに守られた」
シュレイザーの民たちがレビとチッピィの両脇を過ぎて行く チッピィが苦笑してレビを見上げる レビが間を置いて再び歩みを再開させる レビが向かおうとしていた先で シュレイザーの民が悲鳴を上げる
「きゃぁあーっ!!」
レビとチッピィが驚き一瞬の後 急いで走って向かう
レビとチッピィが辿り着いた先 シュレイザーの民が押し倒され ローブに身を隠した獣の牙を持つ者に噛まれそうになっている レビが即座に銃を抜き撃つ 獣の牙を持つ者が瞬時に気付き身を翻して銃弾を避ける レビが驚いて言う
「なに!?銃弾を回避しただとっ!?ギリギリを狙ったとは言え この距離で間に合う筈が」
シュレイザーの民が逃げ出す 獣の牙を持つ者がレビに狙いを定める チッピィが怯えて言う
「レ、レビ!あいつ 普通の人じゃないね!魔物の… ヴォーガウルフの匂いがするね!そ、それに 僕たちと何かちょっと似てる感じが…っ」
レビがチッピィへ視線を向ける 獣の牙を持つ者がレビに向かって襲い掛かる レビが慌てて回避し銃を撃つ 獣の牙を持つ者が銃弾を回避して再びレビに襲い掛かる チッピィが叫ぶ
「レビッ!逃げてっ!」
チッピィが弓矢を放つ レビへ向かっていた獣の牙を持つ者が気付き身を翻して弓矢を回避し 視線をチッピィへ向ける チッピィが衝撃を受け怯えて叫ぶ
「いやぁーっ!ごめんなさいね!僕っ 君を傷付けるつもりは無かったね!これ本当ね!僕はいつだって誰も傷付けないように狙ってるね!」
レビが怒って叫ぶ
「それじゃダメだろっ!」
獣の牙を持つ者が鼻を動かし チッピィの匂いに気付いた後 再びレビへ向き直る レビが気付き銃を構える チッピィが慌てて言う
「レビ!こいつ強いね!僕たちより強いね!逃げないとっ レビやられちゃうね!」
レビが視線を獣の牙を持つ者へ向けたまま言う
「…俺はこいつを抑える 卿はその間に …ガルバディアの騎士を連れて来い!奴らでなければ こいつは倒せん」
チッピィが驚き困った様子で言う
「で、でもっ!」
獣の牙を持つ者がレビへ向かう レビが叫ぶ
「行けっ!俺たちはシュレイザーを守るんだ!」
チッピィが驚く レビが銃を放つ 獣の牙を持つ者が銃弾を回避しながらレビへ攻撃する
【 ソルベキア城 城門前 】
オライオンが喜んで言う
「さっすがアバロンの大剣使いヴィクトール12世様だぜ!一撃で機械兵どもを一気にぶっ倒してよー!あっという間にソルベキアの機械兵を 殲滅させちまったー!」
傭兵隊員が笑んで言う
「ああ!これなら 残りの旧世界の機械兵だって 余裕だぜ!」
ヴィクトール12世が苦笑して言う
「いや、あれは皆 貴殿ら傭兵隊とガルバディアの騎士らが十分にダメージを与えていた所へ とどめを刺させてもらっただけだ 私1人の力ではない」
傭兵隊員が笑んで言う
「いやいや!ヴィクトール様の攻撃で 俺らが攻撃する前の機械兵の動きも止まっちまったんだぜ!?やっぱりあの力はすげーもんだ!流石!俺たちアバロンの 先代国王陛下だぜー!」
傭兵隊員らが喜んで喝采を上げる ヴィクトール12世が軽く笑う バッツスクロイツが不満そうに言う
「ちょっとちょっとー?俺っちへの賞賛ーはないのかなー?傭兵隊の皆のサポートしてたの 実質俺っちよー?あのバーネっちパパの適当ープログラムを修正するの 超ー大変だったんだしー?皆の剣に雷のサポートプログラム実行したのーは 俺っちなんですけどー?」
皆が一瞬呆気に取られた後 傭兵隊の皆が笑んで言う
「ああ!そういやー あんな切れ味の良いのは初めてだったぜ!」
「まるで雷神様から 雷をもらっちまったみてーだったな!?」
「ああ!あれも すげー力だ!」
バッツスクロイツが期待に表情を輝かせる オライオンが微笑して言う
「ああ、俺もシュライツをアバロンの防衛に使うからって バーネット1世様がアバロンへぶっ飛ばしちまった時には どうなっちまうかと思ってたけど それでも、あいつのサポートを受けてる時と同じみてーに戦えたぜ!?」
バッツスクロイツが微笑して言う
「うんうん!そーだろーね!あのプログラムは元々 そのオライオンっちと相棒っちーのデータを パクってるって感じだったから?」
オライオンが呆気に取られて言う
「へぇ… そんなプログラムなんかが作れっちまうなんて… やっぱ…」
バッツスクロイツが大喜びで言う
「でしょでしょ!?俺っちのお陰」
傭兵隊の皆が笑顔で言う
「やっぱり ヴィクトール12世様の相棒であるバーネット1世様も すげーお方だぜー!」
バッツスクロイツが衝撃を受けて叫ぶ
「そっちー!?」
オライオンが笑顔で言う
「ああ!流石 ベネテクトだったりガルバディアだったりソルベキアだったりしちまうほどの すげー国王様だぜーっ!」
バッツスクロイツがコケてから 体制を立て直して怒って言う
「ちょっとーっ!その3国を股に掛けちゃうほどの バーネっちパパのフォロー&サポートした 俺っちはどうなのー!?ねー!ヴィクトールっちパパも 何か言ってやってよー!」
バッツスクロイツがヴィクトール12世へ向く ヴィクトール12世がバッツスクロイツの言葉に疑問した後 少し考えてから笑顔で言う
「ああ!バーネットは ベネテクトだったりガルバディアだったりソルベキアの王だったりはしたが そのいずれの時も 私の相棒で居てくれている事は変わらないよ 我らは世界一の相棒であるからな!はっはっは」
バッツスクロイツが衝撃を受け叫ぶ
「そっちー!?ってか もう話ズレて!?」
皆が一瞬呆気に取られた後オライオンが喜んで言う
「だよなー!アバロンとガルバディアの世界一の相棒は どこの国へ行ったって やっぱ変わらねーぜー!」
傭兵隊の隊員が言う
「ああ!アバロンとガルバディアは世界一の相棒国だからなー!何がどうなったって その両国の相棒は世界一だぜー!」
バッツスクロイツ以外の者が喜んで笑う バッツスクロイツが衝撃を受け泣きながら怒って叫ぶ
「もーマジ訳分からないんですけどー!アバロンの人って誰も俺っちの話を聞いてくれないんですかー!?」
玉座の間
バーネット1世が真面目に周囲にプログラムを発生させている 通信が入り ホログラムの通信モニターにローゼックが映って言う
『バーネット1世、我らが確認した所 ローレシア、ガルバディア、ソルベキアの3国に 移動魔法陣が隠し作られていた そして、あの作りは… 残念ながらソイッド村の魔術師が作る物と同じ物 ローレシアはこの責任を取り 先ほどイシュラーンが部隊を率いてソイッド村へ赴き 村に居った魔術師を皆拘束した』
バーネット1世が言う
「そいつらが作りやがった移動魔法陣は その3国以外にはありやがらねぇのか?」
ローゼックが言う
『3国の移動魔法陣は先に実物の確認を行った上で問い正したもの そして、現在も情報を聞き出してはおるが 彼らは皆口を揃え 「我らの神シリウス様との約束だ」と言うだけで それ以上を話そうとはしないのだ あのガルバディアの元国王シリウス殿からの指示であるのか?との問いにも答えぬ 現状ではそのシリウス殿とも連絡は取れぬとあっては打つ手があらぬのだが… 何にしろ新たな確認が取れ次第 再び連絡しよう』
バーネット1世が言う
「あのシリウス元国王が わざわざそんな指示をするとは思えねぇが… とりあえず分かった こっちも今 うちの3世から送られて来やがった 機械兵情報を解析してる所だが どうやらその移動魔法陣は ツヴァイザーにも作られやがったらしい」
ローゼックが一瞬驚いて言う
『ツヴァイザーだと?』
バーネット1世が言う
「先の3国にアバロンが含まれてやがらねぇのも気に入らねぇし 何でツヴァイザーごときが含まれてやがるのかも分からねぇが… これで 奴らの感覚は こっちの主観とはちょいとズレちまってるんじゃねぇかってぇ可能性も生まれて来やがった… これじゃ検討の付け様もねぇ… そっちの情報に期待させて貰うぜ」
ローゼックが言う
『分かった、確認を急がせる …それと、貴様へ報告致すべきか分かり兼ねるが ガルバディアの防衛に就いていたらしき アバロンのレクター王兄が 先ほどデネシアへ運ばれよったとの事だ 命に別状はあらぬが 相当のダメージをうけておったと言う 意識が戻り次第 貴様へ連絡を入れるよう ファニア王女へ申し付けておいた』
バーネット1世が一瞬驚いてから言う
「あのレクターが…?そうか… こっちはこれから 最後の締めとして残りの機械兵どもをぶっ潰す …だが、レクターがそれだけやられっちまうって事なら 油断は出来ねぇな もしかしたら 特別な機械兵でも紛れていやがるのかもしれねぇ」
ローゼックが言う
『ローレシアへ現れたものの内には その様な機械兵は確認されなかったが… 精々気を付けよ こちらは既にローレシア内全ての機械兵を殲滅致し 確認し得る範囲に機械兵はおらぬとの事 移動魔法陣も破壊した以上 恐らく今後の心配もあらぬだろう …そちらに何か問題があれば まぁ どうせよこさぬであろうが 早々に支援要請を送って参るが良い』
バーネット1世が苦笑して言う
「ハッ!要らねぇっつってんだろぉ?」
ローゼックが軽く笑って言う
『ふん…っ 頑固者が』
ローゼックの通信が切れる バーネット1世が微笑して言う
「はっは… 随分と世話焼きな野郎だぜ… さて、そんな野郎の世話にもならねぇ様に その特別な機械兵でも居やがらねぇか 先に確認しておくか …とは言え ツヴァイザーの機械兵にも そんなモンは確認されてねぇし… レクターの意識が戻るのを待ってやるしか… うん?」
再び通信が入る バーネット1世が疑問して繋いで言う
「またローレシアか… ローゼックの野郎か?…何だぁ?もう新しい情報でも取れ」
通信モニターにスファルツが映って言う
『バーネット1世殿!ツヴァイザーの機械兵には お気付きですか!?』
バーネット1世が疑問して言う
「あぁ?ツヴァイザーの機械兵なら とっくに殲滅したぜぇ?その機械兵の残骸から得た 旧世界の情報を解析中だぁ」
スファルツが困った表情で言う
『貴方が現在解析中の OGMS型式6628番の機械兵のお話ではありません!』
バーネット1世が衝撃を受け怒って叫ぶ
「なぁあ!?て、てめぇええ!どさくさに紛れて 俺様のデータをハックしてやがってるんじゃねぇええ!」
スファルツが怒って言う
『元を正せば その貴方がソルベキアのセンコンを 乗っ取られたのでしょうっ!?お陰で私は未だにローレシアのオンボロ、ローモデルシステムで 世界一のハッカーの力を抑えられておりますっ!出番もガタ落ちですよ!?どう責任を取って下さるのですっ!?』
バーネット1世が衝撃を受け怒って言う
「るせぇええ!ガルバディア出身の俺様が ソルベキアの民である てめぇえの事なんざ 気遣ってやるかぁあ!でもって 忙しいんだから簡潔に用件を言いやがれぇええ!」
【 ツヴァイザー城下門前 】
ベーネットが表情をしかめて言う
「クソが…っ どうなってやがる?何でベネテクト王家の毒が効きやがらねぇ…?」
ベーネットが地に片膝を着き レッドレイピアを握り締め顔を上げる 視線の先 ヴィクトール14世がロドウと戦っている ヴィクトール14世が声を上げて大剣を振り下ろす
「だぁああーっ!」
ロドウが見切り素早く身を翻し間合いを狭め ヴィクトール14世の剣を斧で弾き飛ばし 無防備になったヴィクトール14世へ視線を向ける ヴィクトール14世が驚いて言う
「なっ!?」
ベーネットが叫ぶ
「ヴィクトール!避けろっ!」
ロドウがヴィクトール14世を殴り飛ばす ヴィクトール14世が悲鳴を上げる
「がはぁっ!」
ヴィクトール14世が地に倒れる ベーネットが焦って叫ぶ
「ヴィクトールっ!!」
ベーネットがヴィクトール14世の下へ向かおうとする ロドウが立ちはだかりベーネットへ斧を振り上げる ベーネットが怒って言う
「ちくしょうっ!もっと早く あいつと接触出来ていりゃぁ てめぇなんぞにっ!」
ベーネットが怒りの視線をロドウへ向ける ベーネットの後方から ロイの声が掛かる
「…フリーズ ベーネット陛下」
ベーネットがハッとして身動きを止める ベーネットの顔をかすめ銃弾が連射され 続いてヴェインが叫びながら現る
「うりゃああーっ!」
ヴェインが銃弾を押し込むようにロドウへ槍を突き刺す ロドウの身に槍が刺さりロドウが悲鳴を上げる
「う…っ!?あぁああーーっ!」
ベーネットの横にヴェインが槍を構え顔を向けないままに言う
「ここは俺たちに任せ ベーネット陛下は どうか今一度 機械兵の殲滅を!」
ベーネットが驚いて言う
「な!?機械兵だぁっ!?」
レイトがベーネットを挟みヴェインの逆側に立ち シャルロッテが遅れて来て言う
「せ、せせせ世界中の の、残りの機械兵がっ こここ、このツヴァイザーに向かっているとっ お父様から連絡が入ったんですぅ!」
ベーネットが驚いて言う
「な…っ なんだと!?」
レイトが言う
「バーネット1世様からの連絡で 可能な限り各国の力を使い 機械兵を追って殲滅するとの事です 共に デネシア、ベネテクトに滞在の両国魔法剣士部隊のサポートは バーネット1世様が代行するとの事ですので どうか ベーネット陛下は このツヴァイザーを機械兵どもからお守り下さい!」
ヴェイン、ロイ、レイト、シャルロッテがロドウへ向かう ベーネットが表情を顰めて言う
「何てこった… 今ツヴァイザーに居る魔法剣士部隊は連戦の疲れが出ちまってる これ以上の戦闘は訓練期間の短いあいつらには無理だ 現状でもあいつらの身に掛かっちまった負担は目に見えてありやがるってぇのに どうしたら…!?」
ベーネットが顔を上げヴィクトール14世を見る ヴィクトール14世がレリアンに身を起こされ話を聞いていた状態から頷いて ベーネットへ叫ぶ
「ベーネット!行こう!」
ベーネットが表情を困らせて言う
「しかし ヴィクトール ツヴァイザーに残っている 彼ら魔法剣士部隊はもう…っ」
ヴィクトール14世がベーネットの前に来て言う
「分かってる、彼らはもう戦えない だから 僕ら2人が戦うんだよ!」
ベーネットが少し驚いて言う
「私たちが… ですか?」
ヴィクトール14世が頷いて言う
「ベーネット、君は夢の世界を度々見ていたと言っていたよね?僕も 父上から夢の世界の話を聞いていたんだ 相棒のバーネット2世様から雷の力を受け取り戦ったと その力は たった一人でも ソルベキアの一個部隊を楽に倒せて 尚且つ機械兵にも有効だったってっ …それなら各国に倒された残存の機械兵位なら 何とか倒せるんじゃないかな?」
ベーネットが驚いて言う
「そ、それは 確かに計算上は可能ですが ヴィクトール13世様は事前に雷撃を受ける訓練を十分に行っておられました あの戦法は元々かなりのリスクを負っているのです 事前に行う訓練でさえ下手をすれば命の危険すらあるのですよ!?」
ヴィクトール14世が一瞬呆気に取られた後 考えながら言う
「…命がけの戦法か」
ベーネットが言う
「そうです、ですから ここは何とか他国からの応援を得るしか」
ヴィクトール14世が振り返って遠くを見る 遠くから機械兵の集団が近付いている ヴィクトール14世がベーネットへ向いて言う
「その時間は無い …でも、僕らが何とかやっている間に その援軍を呼ぶ事も出来るかもね?」
ヴィクトール14世が笑顔になる ベーネットが衝撃を受け怒って叫ぶ
「その間に!貴方が命を落としてしまったらどうするのですっ!?やっと相棒になれたのに!たった2日で終わりですかっ!?私は11年間も苦労して 2度も貴方を助け出したと言うのにっ!」
ヴィクトール14世が疑問して言う
「え?11年間?2度も僕を助け出した?」
ベーネットが衝撃を受け 焦って言う
「ぬあっ!?あ!いや!違っ!」
ヴィクトール14世が疑問した後微笑して言う
「えへ、大丈夫 僕は命を落としたりしないよ そんな気がするんだ アバロン式の感覚でね?」
ベーネットが一瞬間を置いた後困った様子で言う
「私にはそのアバロン式の感覚は分かりませんが… 雷を受け取るのには貴方の身にある僅かな魔力を引き出さなければならない しかし、それを今 万が一ここで貴方が行う事が出来たとしても 私は貴方のデータを多く得られてはいないのです 今からデータ取りを行うにしても 貴方は雷撃に対する防衛をマスターしていない状態で 最低でも3回は雷撃を受ける事になってしまう そんな無茶をした上で奴らと戦うなんて不可能です!」
ヴィクトール14世が少し驚いてベーネットを見る ベーネットが真剣な表情でヴィクトール14世を見つめる ヴィクトール14世が苦笑して言う
「…うん でも、やらないと… ベーネット?僕らは父上たちと同じ位… いや?父上たちを越える程の相棒になるんだ 今ここで負ける訳には行かない 君と共に 僕は奴らに勝つ …勝てるよ!絶対!僕には分かる!」
ベーネットが驚く ヴィクトール14世が笑んだ後 機械兵へ視線を向ける ベーネットが呆気に取られたまま言う
「これがアバロンの民が持つ …ガルバディアの幻想をも現実にする力 か」
ベーネットが一度目を閉じ意を決して言う
「分かりました ヴィクトール 私は 貴方を信じます!」
ヴィクトール14世がベーネットへ向き微笑んで頷いて言う
「うん!僕も 君を信じているよ!ベーネット!」
【 旧世界 ガルバディア城 門前 】
雷が落ちる ヴィクトールが大剣を掲げて受け取る 獣の牙を持つ者が襲い掛かって来る ヴィクトールが大剣を振るう 大剣に纏っていた雷撃が獣の牙を持つ者へ向かうが 獣の牙を持つ者のスピードが上回り 雷撃を回避してヴィクトールへ襲い掛かる バーネットがハッとして言う
「ヴィクトール!」
ヴィクトールが瞬時に獣の牙を持つ者の攻撃を大剣で防ぐ ヴィクトールが短剣の剣圧にわずかに表情をしかめる 獣の牙を持つ者が両手に持つ短剣を次々にヴィクトールへ振るう ヴィクトールが大剣で防ぎ続ける バーネットがヴィクトールの後方でレイピアを構えたまま視線を強めて思う
『…クソッ!手出しが出来ねぇっ』
バーネットの意識の中に数字の羅列が駆け巡り 導き出される情報にバーネットが思う
『遺伝子情報から読み取られる構造的な差異 明らかに人間の能力を超える力と瞬発力』
バーネットが獣の牙を持つ者の攻撃を見て思う
『扱う武器が短剣であるから ヴィクトールの力と大剣で抑える事が出来ている 雷を避けた程の瞬発力で繰り出され続ける 両手の短剣からの攻撃を今抑えて居られるのは ヴィクトールにあるアバロンの民特有の直感と経験によってもたらされている奇跡だ 俺が入り込める隙は一切ねぇ…っ どうする!?』
【 新世界 シュレイザー国 城下町 】
レビが回避するが獣の牙を持つ者の牙がレビの左腕をえぐる レビが悲鳴を上げる
「ぐぁああっ!!」
チッピィが焦って叫ぶ
「レビッ!!」
レビが左腕を押さえて膝を着き苦しそうに痛みに耐える 左腕から血が滴る チッピィが驚き目を見開く 獣の牙を持つ者が再びレビへ襲い掛かる レビが顔を上げるが諦め覚悟を決めた瞬間 獣の牙を持つ者が悲鳴を上げる
「ギャンッ!」
レビが目を開く 獣の牙を持つ者の身に弓矢が刺さっている レビが驚く チッピィがレビの前に立ち 再び弓矢を構えて言う
「お、お前…っ 悪い奴!僕の大切な仲間をっ!レビを傷付けた!これ以上やるなら ぼ、僕がっ お、お前を…っ!」
レビの目の前でチッピィの足がガタガタ震えている レビが顔を上げ叫ぶ
「卿では無理だっ!早く逃げろ!」
獣の牙を持つ者が怒り唸り声を上げる チッピィが怯える レビが叫ぶ
「逃げろっ!チッピィ!」
チッピィがきつく目を瞑る 獣の牙を持つ者がチッピィへ襲い掛かる チッピィが引いた弓矢の手を離す レビが銃を放つ 獣の牙を持つ者が悲鳴を上げる
「キャンキャンッ!!」
チッピィが驚き目を開く チッピィの前で2本目の弓矢と銃弾を受けた獣の牙を持つ者が苦しそうに地に伏している チッピィが驚く チッピィの後ろでレビが倒れる音がして チッピィが慌てて振り返って叫ぶ
「レビッ!」
チッピィが弓矢を手放し レビの身に触れて必死に呼ぶ
「レビッ!レビッ!すぐ治療するね!もう少しだけ 我慢するね!」
獣の牙を持つ者が怒り起き上がる チッピィが気付き振り返って驚く 獣の牙を持つ者がレビ目掛けて襲い掛かる チッピィが怯え身動きが止まる レビがチッピィを庇って銃を向ける レビと獣の牙を持つ者の間に武器が刺さり 獣の牙を持つ者が身を翻す チッピィがハッとして振り返って言う
「ガルバディアの…っ!」
ガルバディアの騎士たちが次々にやって来て武器を構える チッピィの近くに一匹のねずみがやって来て 嬉しそうにチュウチュウ鳴く チッピィがそれを見て微笑して言う
「うん 君が無事でいてくれて良かったね!それに ガルバディアの騎士たちを連れて来てくれたね!ありがとうね!」
獣の牙を持つ者がガルバディアの騎士たちを見て唸りながら後退る 獣の牙を持つ者の後方にプログラムが発生し 槍使いの襲撃者が現れて言う
「ヴァッガス 貴殿の負けだ 共に戻れ シリウス様の為 我らは死んではならない」
ヴァッガスが僅かに槍使いの襲撃者へ視線を向けた後 槍使いの襲撃者の下へ向かい 槍使いの襲撃者が移動機械を使用して 2人の身がプログラムに包まれ消える チッピィがホッとしてレビへ振り返る レビがうつろな目でガッガスの去った先を見つめる ガルバディアの騎士がレビへ手を差し出す レビが気付き その手を伝ってガルバディアの騎士の顔へ視線を向ける ガルバディアの騎士が微笑して言う
「お前 強い 私 見つけた 強い心 持つ者」
レビが言う
「強い… 心…?」
レビが意識を失い倒れる チッピィが叫ぶ
「レビッ!」
【 旧世界 ガルバディア城 門前 】
鋭い音を立て 獣の牙を持つ者へ鞭が振るわれる 獣の牙を持つ者が身を引いて一瞬の内に鞭の広い攻撃の範囲から退く ヴィクトールが大剣を構えなおしてから 口を開いて荒い呼吸を整える バーネットがヴィクトールの横で言う
「生憎 面倒な説明はしてる余裕も時間もねぇ 結論だけ言う ヴィクトール 遠慮はいらねぇ 一撃で叩き斬れ!」
ヴィクトールが返事の代わりに身構える バーネットが鞭を手に言う
「行くぜ!」
バーネットが牙を持つ者へ向かい鞭を振るう 牙を持つ者が自分へ振るわれた鞭の先を見定めて それを躱してバーネットへ向かう ヴィクトールが獣の牙を持つ者へ顔を向け踏み出した瞬間 ヴィクトールの瞬発力が 獣の牙を持つ者の速度を超えて 獣の牙を持つ者がバーネットへ向かうより速くたどり着く 獣の牙を持つ者がヴィクトールへ顔を向けるより速く ヴィクトールの大剣が相手の身を斬り裂く
ヴェルアロンスライツァーが差し向けた長剣の先に 黒い翼を持つ人物が倒れている ヴェルアロンスライツァーが言う
「翼を撃ち抜かれ その身に1刺し受けているとはいえ 急所は外した 動けぬ事もあるまい?我々を元の場所へ戻すか その方法を伝えてくれるのであれば?」
ヴェルアロンスライツァーが長剣の剣先を相手の首元へ向けたまま様子を伺う 黒い翼を持つ人物は沈黙している ヴェルアロンスライツァーが疑問して言う
「…うん?」
銃声がヴェルアロンスライツァーの目前を抜ける ヴェルアロンスライツァーが一瞬驚くが 考えるより先に 銃弾の抜けた方向へ向けて取った防御態勢のまま 体が弾き飛ばされる ヴェルアロンスライツァーが盾を抑えて屈めていた体の後ろにロキが立って言う
「…どうやら 1体を倒して見せただけでは 俺たちを開放するつもりは無いらしい」
ヴェルアロンスライツァーが立ち上がって言う
「では 今度の相手は?」
ヴェルアロンスライツァーの前に 獣の牙を持つ者が両手に短剣を構え殺気を向けている
ヴィクトールが呆気に取られて言う
「…っ 消えた…?」
ヴィクトールが屈んで見つめている先で 獣の牙を持つ者の姿が光の粒子になって流れ去る バーネットがヴィクトールの後ろで舌打ちをする
「チッ…」
2人の前に重い地響きが轟く バーネットが顔を上げて言う
「そぉ言う事かよ?」
ヴィクトールとバーネットの前で巨人が大斧を振り上げていて ヴィクトールへ目掛けて振り下ろされる ヴィクトールが難なく飛び退き バーネットの前で大剣を構える バーネットが笑んで言う
「この後何人控えてやがるのかは知れねぇが さっきの野郎をけし掛けておいて 次に持って来るのがコイツだぁ?…ハッ!相手は どんな計算してんだかなぁ?」
ヴィクトールが言う
「確かに僕は 新世界の巨人族と戦った事は無いけれど 見た目の大きさや動き 今の一振りも含めて 戦力はあの機械兵と変わらない 戦い方は同じと言う事で良いのだよね?バーネット?」
バーネットが言う
「ああ むしろ 俺らより図体はでけぇとは言え 生物としての構造は同じなんだ 機械で出来てる機械兵どもよか 力も丈夫さも劣るのが当然ってモンだ」
バーネットのプログラムで雷が落ちる ヴィクトールが大剣を掲げて受け取る バーネットが言う
「ゆっくりやって休ませてもらうか さっさと終わらせてやるか…?そいつさえも計算しろってぇ 遊びじゃねぇ事だけを 俺は考えさせてもらうぜ?」
ヴィクトールが構えて言う
「残念ながら バーネットのその答えが出る前に …終わってしまうかもねっ?」
巨人が再び大斧を振り上げる ヴィクトールが雷を纏って向かう
【 新世界 ツヴァイザー城下町 門前 】
ヴィクトール14世が閉じていた目を開いて言う
「…これが ガルバディアの力 いや… 僕らの力だ …ベーネット!」
ベーネットが叫ぶ
「ヴィクトール!機械兵など 我らの敵ではありません!」
ヴィクトール14世が剣を掲げる 雷が落ち剣に纏わる ヴィクトール14世が剣を構え 目前に現れた機械兵の一個部隊へ振りかざす 雷が横一線に放たれ 機械兵らが感電する ヴィクトール14世が再び剣を掲げると 雷が落ち ヴィクトール14世の全身を覆い ヴィクトール14世が機械兵へ向かって 声を上げ機械兵を攻撃する
「やぁあーーっ!」
機械兵らが次々と倒されて行く 機械兵らが受けていた雷撃が静まり 再び機械兵らが動き出す ヴィクトール14世が気付き 表情を苦しめつつ 剣を掲げる 雷が剣に落ちる ヴィクトール14世が剣を構える 身に受けた雷撃が全身に纏う ヴィクトール14世が疑問する ヴィクトール14世の隣に雷が落ち 雷を纏った鞭が振りかざされ 機械兵らが感電して身動きを止める ヴィクトール14世が驚いて隣を見て言う
「ベーネット!?」
ベーネットが雷を纏って居て 赤い瞳をヴィクトール14世へ向け言う
「私も共に戦います 貴方の身に与えられる雷撃は 半減しますが その分は 私が共に戦う事で 補いましょう」
ヴィクトール14世がベーネットの目を見て 忘れていた記憶を思い出す
ならず者たちが周囲を埋めつく中 幼いベーネットが返り血を浴び 赤い瞳で微笑し手を差し出して言う
『よう!助けに来たぜぇ?ヴィクトール14世!俺はてめぇの相棒 バーネット3世だ!』
ヴィクトール14世が呆気に取られた後微笑して言う
「うん!今度こそ 一緒に戦おう!バーネット3世!」
ベーネットが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「おうっ!もう失神しやがるんじゃねぇぞ?」
ヴィクトール14世が一度苦笑し 次に笑顔を見せて言う
「大丈夫さ!僕は君の相棒 ヴィクトール14世だよ!?」
ベーネットが呆気に取られた後苦笑して言う
「ああ!違ぇねぇ!」
2人が笑みを合わせた後 機械兵へ向かう
ツヴァイザー国 城下町門前
ヴェインとレイトが息を切らし槍を構える 2人の後ろでロイが銃の弾倉を変える シャルロッテがモバイルPCを操作しながら言う
「戦力はギリギリ同等です しかし 体力が…っ」
レリアンがシャルロッテの言葉を聞き 前方に居る3人へ顔を向け表情を険しくして言う
「…リーザ 急いでっ」
ツヴァイザー国 上空
ドラゴンに乗ったリーザロッテが気付いて言う
「あれはっ!?皆は 一体何者と戦っていらっしゃるのでして!?」
ドラゴンがひと鳴きする リーザロッテが理解し視線を変えて言う
「あちらは機械兵!?戦っていらっしゃるのは… ヴィクトール14世陛下とベーネット陛下ね!」
ドラゴンがひと鳴きする リーザロッテが表情を強めて言う
「ええ!もちろんでしてよ!急いで頂戴っ!」
ドラゴンが急降下する
ツヴァイザー国 城下町門前
ヴェインが言う
「俺たちがここを抑えなければ 奴はベーネット陛下のもとへ向かってしまう」
ロイが言う
「…ベーネット陛下が奴にやられれば ツヴァイザーは勿論 この新世界の戦力も落ちるのだろう」
レイトが一歩踏み出し叫ぶ
「例え 世界がどうなろうとも!このツヴァイザーを守る事は 姫様とのお約束!私は命に代えてもそちらのお約束を守ってみせる!ヴェイン!ロイ!お前たちは下がっていろ!」
レイトが槍を振るって言う
「ここは私が!」
ヴェインとロイが衝撃を受け ヴェインが慌てて言う
「ま、まずいっ!レイトがあーなった時は!」
ロイが視線を逸らして言う
「…作戦が 失敗に終わる事が 多々ある…」
レイトがシャルロッテへ向いて叫ぶ
「シャル!可能な限りの力を私に送ってくれ!一気にけりを付ける!」
シャルロッテが衝撃を受け慌てて言う
「レ、レレレレイトさんっ!落ち着いて下さいっ!」
レイトがロドウへ向いて叫ぶ
「構わぬ!このレイト!どれほど強力な力でも受け止め 必ずやあの者を討ち取ってっ!」
レイトに雷の魔法が落ちる レイトが感電して叫ぶ
「のわぁあああーっ!?」
皆が驚き雷の元へ視線を向ける レリアンの隣に立っている リーザロッテが槍の柄で床を突き高笑いして言う
「オーホッホッホッホ!その息でしてよレイト!私たち世界の勇者と仲間たちは どれほど強力な力をも受け止め この世界を救って差し上げましてよーっ!」
レイトが喜んで叫ぶ
「姫様っ!」
ヴェイン、ロイ、シャルロッテが呆れ ヴェインが言う
「いや、受け止められて ない… だろう」
ロイが視線を逸らして言う
「…いや、本人たちは受け止めたつもりなのだ 言わないでおいてやれ あんなでも 一応 …俺たちの仲間だ」
シャルロッテがモバイルPCで顔を隠しつつ含み笑いをした後 微笑して言う
「でも、不思議ですね なんだか」
ヴェインとロイが顔を見合わせた後苦笑し ヴェインが言う
「ああ、勝てそうな気がして来た」
ロイが言う
「…だな」
ヴェイン、ロイ、シャルロッテが構え直す その前にレイトが力強く構える リーザロッテが槍を向けて叫ぶ
「さあ!優秀勇敢なる勇者の仲間たち!どなただか存じ上げないけれど この世界に危害を与えんとする そちらの方を ぶっ飛ばして差し上げなさい!」
レイトが返事をする
「はっ!リーザ様!」
レイトたちが攻撃を再開する レリアンが魔法詠唱を終え言う
「リーザ!」
リーザロッテが槍を構えて言う
「ええ!勇者の私たちが 仲間から遅れは取れなくってよ!」
ヴィクトール14世とベーネットが背中を合わせ地に座り込んだ後 ヴィクトール14世が一息吐いて軽く後ろを向き 微笑して言う
「お疲れ、バーネット」
ベーネットが苦笑し俯いて言う
「ああ、疲れたぜぇ 流石に てめぇも戦いながら 気ぃの使うプログラムまで やるってぇのはよ…」
ヴィクトール14世が軽く笑って言う
「ふふ…っ うん、でも 僕たちは やっぱり勝利したよ?バーネット?」
ベーネットが苦笑し軽く顔を向け言う
「ハッ… だなぁ、全く てめぇは大した奴だぜ まぁ、それでこそ 苦労して相棒にした甲斐が ありやがったってもんだぜぇ」
ヴィクトール14世が軽く笑い満足そうに正面へ顔を戻す 周囲に機械兵の残骸がある
リーザロッテが槍を向け 雷を放つ ロドウが雷を受け動きを止める ヴェインとレイトが槍を振り上げ叫ぶ
「「これで トドメだーっ!」」
ロドウの身の回りにプログラムが発生し ヴェインとレイトの槍が空を切る 2人が驚き呆気に取られた次の瞬間 2人の頭が激突し 2人が頭を抑え地に悶える ロイとシャルロッテが呆気に取られ顔を見合す リーザロッテが疑問し首を傾げた後 気付いて叫ぶ
「敵は逃げ帰ったわ!私たちの圧勝でしてよーっ!オーホッホッホッホ!」
レリアンが笑顔で居る レイトとヴェインが倒れている ロイがレイトたちを見た後リーザロッテを見て言う
「…俺たちの勝利らしい」
シャルロッテが苦笑して言う
「は…はははいぃ そ、それでは… お父様にも 連絡をっ しておきますぅ」
シャルロッテがモバイルPCを操作する
【 旧世界 ガルバディア城 門前】
ルーゼックが息を切らしている前で 巨人の身体が地に倒れていた状態から光の粒子になって消えて行く ルーゼックが呆気に取られる キルビーグが言う
「ふむ…?魔力が一切通じぬ相手と言うだけでも 恐ろしい者であったが 肉体が光へ変わりよるとは?この光は一体…?」
キルビーグが巨人であった光の粒子の近くへ向かう ルーゼックが言う
「これも あのシリウスBとやらの術か?…全くっ ガルバディアの力を用いる者どもの術は 奇怪なモノばかりよっ」
キルビーグが苦笑して言う
「とは申せど ガルバディアの力は 我らローレシアの者へ魔法と言う力をお与え下された 我ら新人類の “神のお力” であるがな?」
ルーゼックが衝撃を受けて言う
「し…っ 知らぬわっ!」
キルビーグが身を屈めて 僅かに残った消えゆく光の粒子に触れる ルーゼックが不満気に言う
「そもそも、その我ら新人類の神である シリウス元国王は何を致しておるのだっ?この邪魔者を始末致せば 我々を元の場所へ戻す事も可能であろうかと…」
キルビーグが言う
「うむ、私もその様に」
キルビーグがルーゼックへ振り返る
瞬間
金属のぶつかり合う甲高い音が響く キルビーグが驚いて顔を上げる ルーゼックがキルビーグの間近で剣を振るって顔を上げる キルビーグが立ち上がりルーゼックの視線の先を見上げる ルーゼックが言う
「始末致すべきは 1体のみではあらぬと申す事か?」
ルーゼックが上空の相手へ剣を向ける キルビーグが呪文を詠唱して放つ キルビーグの魔法が上空の黒い翼を持つ人物へ向かう 黒い翼を持つ人物が回避する ルーゼックが表情をしかめて言う
「クッ…!人の身でありながら 宙を飛び回るとは…っ!」
キルビーグがルーゼックを手で制して言う
「ルーゼック あの者は私が相手を致そう お前は下がって居ってくれ」
ルーゼックが驚いて言う
「なっ!?何を申すか 馬鹿者っ キルビーグ!敵を前に剣士へ下がれとはっ!?」
キルビーグが言う
「先ほどの私の魔法を避けたと申す事は つまりは魔法の攻撃が通ずる相手と申す事 ならば 私であっても戦える… お前は先ほどの戦いで 直接の魔法攻撃が通じぬ者を相手に 多くの支援魔法を受けて戦った それ以前の機械兵との闘いから連戦で 身の負担は多いだろう 従って…」
ルーゼックが言う
「そうと申すなら 貴様とて同じ事!支援魔法は通常の魔法より 仲間へ与える気遣いから精神をすり減らす!ここで貴様に倒れられては…っ!」
黒い翼を持つ人物が滑空して 槍を手に猛スピードで向かって来る ルーゼックが瞬時に剣を構えて攻撃を弾く 攻撃を弾かれた黒い翼を持つ人物が過ぎ去った先から再び向かって来る ルーゼックが言う
「申しておるそばから 間に合っておらぬではあらぬか!?馬鹿者っ!キルビーグ!!」
キルビーグが苦笑して言う
「いや… 魔法には詠唱と申すものがあってだな?」
獣の牙を持つ者が 瞬きをする間もない速さで襲い来て 両手に持つ短剣を振りかぶる ロキが微動だにしないまま両手に持つ銃を向けている 獣の牙を持つ者が短剣をロキへ振るう ロキが銃を放つ 2丁の銃から放たれた2つの弾丸が同じ個所へ命中して 浅く抑えられた1発目の銃撃が押し込まれる 獣の牙を持つ者の短剣が ヴェルアロンスライツァーの持つ盾に弾かれる ヴェルアロンスライツァーのもう片方の手に持たれた長剣が ロキの与えた銃撃を目掛けて刺し向けられる 離れた場所でロスラグがその光景を見て居て言う
「や、やっぱり…っ ロキ隊長とヴェルアロンスライツァー副隊長は… 凄いッス!!」
獣の牙を持つ者が自身の身に刺されているヴェルアロンスライツァーの長剣へ手を掛け顔を上げる その目に ロキの両手に持つ銃が見える ロスラグがハッとして強く目をつぶる
銃声
ロスラグが怯えながら ゆっくりと閉じていた目を開く ヴェルアロンスライツァーの持つ盾の前で地に崩れた獣の牙を持つ者が光の粒子になって消えて行く ロスラグが泣きそうな表情で見つめてから 2人の近くへ向かおうとする ロキの声が響く
「来るなっ!」
ロスラグがビクッと身を震わせて立ち止まる ヴェルアロンスライツァーがロキへ向いて言う
「ロキ?」
ロキが言う
「…俺には分からない だが卿になら 分かるのだろう?…これで終わりか?ベル?」
ヴェルアロンスライツァーが反応して言う
「と言う事は?」
ロキが言う
「…先の戦いの後 奇襲に気付けたのは」
ロスラグがハッとして気を取り直して 周囲の空間の匂いを嗅ぐ ロキが言う
「…あの馬鹿犬が “匂う”と言ったからだ」
ヴェルアロンスライツァーが言う
「なるほど そうであったのか… では 後ほど改めて礼を言おう あの1撃をまともに受けて居たら 今頃 私は無事では居られなかった」
ロキが苦笑して言う
「…どうやら 夢の世界に居た頃よりも 大分衰えているようだな?王を守る剣 ヴェルアロンスライツァー?」
ヴェルアロンスライツァーが苦笑して言う
「それは貴殿も同じであろう?ロキ?夢の世界の貴殿であったのなら 戦いの後の奇襲には隊員Aの協力を得なくとも気付いていた」
2人が視線を合わせ苦笑する その2人の近くで重い地響きが轟く ロスラグが2人へ向かって叫ぶ
「気を付けて下さいッス!ロキ隊長!ヴェルアロンスライツァー副隊長!まだ “何か” の匂いがするッスよ!」
ロキとヴェルアロンスライツァーが言う
「…いや」 「何かではなく」
ロキとヴェルアロンスライツァーが自身たちの前で大斧を振り上げる巨人を見上げて言う
「…既に 目の前に見えて居る」 「今度は巨人族… であろうか?」
巨人が大斧を振り下ろす ロキとヴェルアロンスライツァーが飛び退いて回避する 振り下ろされた大斧が叩き付けた地面を割る その後ろの地へ着地したロキとヴェルアロンスライツァーがそれぞれの武器を巨人へ向けて構える ロスラグが衝撃を受けて慌てる
ヘクターが振り下ろした大剣を担ぎ上げ 軽く肩へ置いて一息吐いて言う
「ふぅ… 流石に」
ヘクターの前の地に巨人が倒れていて光の粒子になって消えて行く ヘクターがそれを見ていた状態から周囲を見渡して言う
「最後に 3体いっぺんに出て来るとは 驚いたぜ?」
ヘクターの視線の先々で 獣の牙を持つ者と黒い翼を持つ者が光の粒子になって消えて行く デス1stが言う
「属性変化を無力化するプログラムが実行されていた ギガンヒュルムの遺伝子情報が組み込まれていた あの巨人に驚かされはしたが」
デス2ndが言う
「そもそも我々のプログラムサポートは ヘクター自身の能力を拡張する事が主たるもの それこそヘクター自身の 物理的な能力を強化するだけで圧勝とは… やはり」
デス2人が笑んで言う
「「世界一のプログラマーである 我々と」」
デス1stが言う
「世界一の大剣使いヘクター」
デス2ndが言う
「世界一の相棒である我々に」
デス2人が言う
「「敵わぬものなど この世に居ないと言う事だ」」
デス1stがニヒルにデス2ndが満足げに笑む ヘクターが2人の様子に苦笑して言う
「はは… お前らなぁ…?確かに 世界一の俺たちに 敵わねー奴は居ねーけど 俺はどちらかというと 速く動く事は苦手なんだ あの羽のある奴や狼みてーな奴との連戦はキツかったぜ?」
デス1stが採取データを見て言う
「ふむ… 確かに 我々の力でヘクターの俊敏性を上げるプログラムを作り ヘクター自身もそれを当然のように使いこなしてはいるが ヘクターの意識の上に その速度を“速い”と感じているデータが存在する」
デス2ndが首をかしげて言う
「では?ヘクターの その意識を… 無効化するプログラムを作り上げればいいのだろうか?」
ヘクターが衝撃を受けて言う
「あ!?」
デス1stが呆れの息を吐いて言う
「やれやれ… やはりまだヒヨッコだな デス2nd?お前は夢の世界で何を学んで来たのだ?我々はヘクターの相棒であって 支配者ではない ヘクターはもちろん 他者の意識を操作するなど そのような愚行を行う事など 許されるものではないのだ」
デス2ndが衝撃を受け デス1stを指差して言う
「それこそ夢の世界を作り上げて 我々全員の意識を操作していた 偽ガルバディア国王がよくも言ってくれる!?」
デス1stが衝撃を受けて言う
「黙れっ 出来損ないのデス2nd!その私のおかげで もう1人のヘクターの相棒として生まれたお前が 生みの親である私へ歯向かうつもりか!?」
デス2人がいがみ合う ヘクターが息を吐いて言う
「だから 喧嘩すんなって?…そんな事よか こいつら倒したんなら そろそろ 戻れねぇのか?それとも まだ何かブッ倒せって事なのか?」
ヘクターが辺りを見渡す デス2人が衝撃を受け仕方なく喧嘩を停戦して周囲の情報探索を開始する
ザッツロードが剣を構え仲間たちが背を向けあって周囲をうかがっている ソニヤが言う
「ね、ねぇ?アタシたちや皆が壊した 機械兵たちが居なくなってさ?今回はその… 皆まで居なくなっちゃった訳だけど… これって… やっぱ同じよね?」
ザッツロードが言う
「うん、僕たちが初めてシリウスBに会おうと このガルバディアに来た時と 同じだと思う」
ソニヤが言う
「って事はさ?この後は やっぱり あの… “ヴァッガス副隊長の偽物”が 襲い掛かって来る… のよね?」
ザッツロードが言う
「うん、そう… だと思ったんだけど…?」
ラナが言う
「そう… 思って身構えてから もうどれ位 経ったかしら?」
セーリアが苦笑して言う
「多分… 5分位は経っているのじゃないかしら?」
ラナが言う
「15分は経ってると思うわ」
ザッツロードが苦笑して言う
「う、うん… そ、そう…だね…?はは…」
ソニヤが言う
「そ、それってさ?つまり… ひょっとして…?」
ザッツロードが言う
「えーっと… 僕らは その時戦ったから… ひょっとしたら 今回は… ないのかな…?」
ザッツロードと仲間たちがため息交じりに息を吐いて肩の力を落とす ソニヤが不満気に言う
「もぉ~ 何よぉ~!15分も緊張して待たして置きながら 何もないって事~!?」
ラナが言う
「なら 貴女は もう一度 そのヴァッガス副隊長の偽物と 戦いたかったの?」
ソニヤが衝撃を受けて言う
「えっ!?いや… そういう訳じゃ~…」
ザッツロードが困り苦笑で言う
「でも… 前回は不意打ちのごとく 一瞬で終わってしまったから 今回は その… もう少しは戦えた… んじゃないかな?」
ラナが言う
「戦えた所で ザッツはその ヴァッガス副隊長の偽物に 勝てると思ってるの?それがどのくらい本物に近いのかは知らないけど 本物は機械兵の生産場所である あの大型機械兵ファクトリーを3か所も壊して来た 多国籍部隊の副隊長よ?」
ザッツロードが言う
「あ、うん… そ、そうだね… ヴァッガス副隊長が1人で行った訳ではないけれど あの機械兵が蔓延る大型機械兵ファクトリーへ入り込むと言う事だけでも 僕たちでは出来ない事だしね…?」
ラナが言う
「ともすれば その偉業を成し遂げた4人… ヴァッガス副隊長の偽物だけではなくて ロドウ副隊長や ガイ隊長の偽物まで襲って来るかもしれない」
ソニヤが言う
「あ~でも… その3人じゃなくてさ?メテーリ副隊長なら?アタシたちでも… 勝てる… かも?」
ラナが言う
「わざわざ回復役のメテーリ副隊長の偽物なんて 用意してくれる訳がないじゃない?そもそもこの空間は」
ザッツロードが言う
「うん…」
不鮮明な姿のザッツロードが言葉を続ける
『シリウスBが… 僕らの力を確認していた』
シリウスBが言う
「600年… 新大陸へ向かったお前たちを信じ 待ち続けていたローレシア帝国の彼らは 己の命を顧みず お前たちの助けが来る事へ望みを託し ローレシア帝国を守る結界に必要とされる聖魔力を得るため 機械兵ファクトリーの破壊へと向かった …私はその彼らへ力を与えた」
周囲には不鮮明に姿の見えるザッツロードやその他 位相のズレた位置に居る 新世界からの戦士たちの姿が見えている シリウスがシリウスBへ顔を向ける シリウスBが言う
「お前の用意した奴らへ向かわせたモノは その彼らの80%の能力を模した疑似プログラムだが… その撃破達成率は」
不鮮明な姿のソニヤが言う
『で、でもさ!?今回は ひょっとしたら!?もうちょっとくらい…っ!?』
不鮮明な姿のラナが言う
『もうちょっとくらい?何が襲って来たのか 分からないうちに意識を失った 私には そのヴァッガス副隊長の偽物と言うのが どんな姿であったのかすら知らないけれど…』
不鮮明な姿のザッツロードが困り苦笑で言う
『う、うん… 僕も… セーリアのソードバリアのおかげで ヴァッガス副隊長と同じ顔をした人だった… って事くらいしか…』
他方では不鮮明な姿のロキとヴェルアロンスライツァーが 巨人の形をした数字の羅列と戦っている 他方では不鮮明な姿のヴィクトールとバーネットが顔を上げ 上空に居る翼のある人の形をした数字の羅列を見上げている シリウスBが視線を自分の隣へ向ける 不鮮明な姿のヘクターが辺りを見渡して言う
『ならよ?このまま先に行ったら…?どうなんだ?』
不鮮明な姿のデス1stが言う
『恐らく何も変わらない 誰もいない本来の建物の構造が続いている筈だ』
不鮮明なヘクターが表情を困らせて言う
『そっか… それじゃ 何も意味ねぇよな?俺らは… シリウスBをぶっ飛ばしに来たのによ?』
不鮮明なヘクターがシリウスBへ向く シリウスBが鼻で笑う
「フ…ッ」
不鮮明なヘクターがシリウスBの横顔を見てから 再び周囲を見渡して 後方に居るデス2人の下へ向かう 不鮮明なヘクターが一度デス2人の近くで立ち止まってから 辺りを見渡し 鮮明な姿のラインツの前に来る ラインツが不鮮明な姿のヘクターを見てから隣に居るシリウスへ向く シリウスが周囲にプログラムを現していて言う
「80%の割合を考慮に入れずとも 結論は お前の作った兵士の方が戦力は上じゃ しかし… その代償は大き過ぎる 彼ら新人類は 我らの遊び道具ではあらぬのじゃ 生体の変化は種の存続を脅かす あの状態が80%と申すのなら 現実のその者たちには既に その影響は表れてしまっている筈じゃ」
シリウスBが言う
「言ったはずだ シリウス 彼らは 新大陸へ向かったお前たちを信じ 己の命と引き換えに ローレシア帝国の民を守る時間を稼いだのだと …だと言うのに そのお前が作り上げた答えが コレとは?そうとあれば もはや 種の存続などと 悠長なことは言っていられない この第2プラントの粛清の時は近い こちらの大陸が終われば 次は新大陸… 例え今 終わり行くこの旧大陸から逃げおおせようとも」
シリウスが言う
「B、我は新たな方法を編み出した 彼ら新人類を意識のみの世界に置いて強化してやる事じゃ 一度は無理と思うて諦めた方法であったが 彼ら新人類が それを用いた新たな方法を編み出した お前も見ておったじゃろう?今回は その お前の介入が邪魔をしてしもうたが 彼ら新人類の短き命の時を 何倍にも出来よる これなら 彼らの時間の制限も無いも同じじゃ」
シリウスBが言う
「下らん 幻の中で力を得させ様など… それこそ幻想だ シリウス お前こそ目を覚ますべきだ 新人類の遺伝子情報を改良し 我らの力とすれば良い お前の力ならば 現状の新人類の能力をさらに強化する事も出来るだろう?私はその奴らの身を強化してくれる 機械にも勝る治癒力と身体能力を持つ 強い容れ物を」
シリウスが言う
「それこそ お前が嫌う 機械と同じよのぉ?B?」
シリウスBが言う
「黙れ シリウスっ!機械は物理的な自己修復能力は持たない!いくらAIを強化しようとも 新たな知識を生み出す事も出来ない!増して 己が愛する者の為に己の命を賭して戦う事を選んだ 彼らの心を真似する事など 到底出来まい!?」
シリウスが言う
「その彼らが守ろうとした人々の未来を守るために 限られたその者らの未来を途絶えさせても良いと言うのか?お前が求めるのは その程度であるのかB?我らが共に力を合わせるとあれば …その彼らとて 救う事が出来ると言うものを!」
シリウスBが一瞬言葉を止めてから言う
「…っ …もはや そのような猶予などっ」
シリウスが言う
「時間はある 創り出せばいいのじゃ 足りぬと言うのであれば… この我が稼いでくれる」
シリウスBが言う
「稼ぐだと?そのような事… …っ!?まさか アウグスタに!?」
周囲の情報にジャミングが走り 異なる位相に居た 全てのモノが元の空間へ戻る それぞれが状況の変化に驚き ザッツロードが呆気に取られて言う
「…あ?あれ?風景が元に?…ぐえっ!?」
ソニヤが悲鳴を上げて言う
「きゃあ!?ザッツ!?だいじょう…!?」
ヴィクトールが呆気に取られて言う
「あれ?ごめん ザッツロード?けど いつの間に僕の下に?」
ザッツロードがヴィクトールの下敷きになって居て 苦笑しつつ言う
「う…っ 僕も… 分かりませんが… とりあえず 降りて頂けると…」
ラナが呆れて言う
「…ぶ そうね?」
バーネットが周囲を見渡し 雷の纏う鞭を手にしていて言う
「チ…ッ あと一発で 野郎を叩き落してやれたって所で…」
ルーゼックが顔を下げて息を吐く キルビーグが困り苦笑で近くへ行って回復魔法を行う ロキが両手に持つ銃を下げ ヴェルアロンスライツァーが自身の持つ長剣の刃を見てから周囲を見る ヘクターがハッとしてシリウスBへ向き大剣を構えて言う
「見付けた!シリウスBだっ!…って!?」
ヘクターが周囲を見渡して慌てて言う
「皆も居るじゃねーか!?なんだっ!?元に戻ったのか!?どうする デス!?何か殴るか??」
デス1stが言う
「落ち着け ヘクター」
シリウスBが言う
「いくら時間を稼ぎ 幻を重ねた所で お前のやり方では間に合わない」
皆がシリウスBへ向く シリウスが言う
「我に出来る事は全て行った 後はお前の力を借りるだけじゃ お前が致すことに 我の力が必要だと言うのであれば 我は 我の持つ全ての情報を お前へ譲っても良いと思って居る …いや?譲るべきじゃろう?敵わぬ相手の元へと向かうのじゃ こちらの情報は無いに越した事はあらぬ」
シリウスBが言う
「相手は我々の遥か上を行く存在 お前の謀など隠しおおせる筈が無い」
シリウスが笑んで言う
「いっそ 廃人にでもなって向かうかのぉ?相手が欲して居るものは それこそお前の言う 容れ物だけじゃ」
シリウスBが言う
「…ふんっ 出来るものなら やってみろっ …出来よう筈がない シリウスA!」
シリウスが言う
「確かに時間は掛け過ぎた 方法を見つけるのに手間取った事は認める しかし 可能性は得られた その為の準備も万全じゃ 後は… 我が向かい B?お前が彼らと共に…」
シリウスBが言う
「時間稼ぎの夢物語は十分だ ローレシア帝国の者どもの転送も 済んだだろう?乗り損じたこの者らも 連れて行け」
シリウスBが身を翻しガルバディア城内へ立ち去って行く ヘクターが呆気に取られて言う
「あ?…ああ?い、良いのか?追うのか?おい?デス!?」
ヘクターが慌てて周囲の皆を見てからデス2人へ向く デス1stが言う
「我々の本来の目的は時間稼ぎだ …その役目は果たされている」
ザッツロードがデス1stを見る ヘクターが呆気に取られて言う
「なら… 良いのか?…殴らなくて?」
デス2人が衝撃を受け デス2ndが言う
「いや?その目的は元々含まれてはいなかったのだが… ヘクター?」
ラインツが大剣を持つ手を握りしめて叫ぶ
「待てっ!シリウスB!!」
皆が驚いてラインツへ向く ラインツが大剣を手にシリウスBへ駆け向かう シリウスが言う
「ラインツ!」
ラインツの前にプログラムが発生してそこから 男女2人の人物が投げ出されて来る 2人が悲鳴を上げる
「きゃあ!?」 「ニャギャ!?」
ラインツが驚き 目の前の空間から現れた2人を咄嗟に抱き止める 女が言う
「あ、ありがとう…?」
男が言う
「えーっと…?」
ラインツがハッとして顔を向ける 視線の先で城門が音を立てて閉まる ラインツが一瞬呆気に取られるが気を取り直して城門へ向かおうとする シリウスが言う
「無駄じゃ ラインツ」
ラインツが足を止める 男が言う
「ラインツ?…って ひょっとして?」
ラインツが男へ振り向いて その顔を見て呆気に取られる 男がローブのフードの中で表情を明るめて言う
「やっぱり!?アバロンの王 ラインツだよね!?わあ 久しぶり!?覚えてる?僕だよ?」
シリウスが驚き目を見開く 男が続ける
「シリウスの猫!ヴィクトール11世!」
ヴィクトールが呆気に取られて言う
「え…?」
バーネットが疑問して言う
「あぁ?」
ヘクターが言う
「ヴィクトール11世って… まだ生きてたのか?ヴィクトール?」
ヘクターがヴィクトールへ向く ヴィクトールが言う
「いや…?そんな筈は…?」
男が衝撃を受けて言う
「勝手に殺さないでっ!?」
女が言う
「ヘクター!?ヴィクトール様も!?ロキもヴェルも!?」
皆が女を見て驚き ヘクターが言う
「ラーニャ!?お前!?何でこんな所に!?」
ラーニャが言う
「それは…っ ザッツが…」
ヘクターが言う
「ザッツが?」
シリウスが言う
「詳しい話は後じゃ 城門が閉められたとあっては この場所の悪魔力の濃度も増えよる ローンルーズへ向かい 我らも新世界へ戻るのじゃ」
ヴィクトール11世がシリウスの前に来て言う
「シリウス…」
シリウスがヴィクトール11世を一度見てからプログラムを実行する ラーニャが意を決してプログラムの範囲から脱する ヘクターが驚いて言う
「ラーニャ!?」
ラーニャを残して 皆が消える
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