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12-9 続く世界へ

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【 ガルバディア城 玉座の間 】

ヴィクトールを先頭に玉座の下へやって来る 玉座の前にガルバディア国王がホログラムを現して プログラマーへ向いて言う
『280年前の歴史へ掛けたプロテクトを解除した様だな …まぁ プログラマーと名乗るからには あの程度の防壁は』
プログラマーが衝撃を受けて叫ぶ
『何処まで僻む気だ!僻み国王!むしろ あの程度の防壁しか作れ無い様なら 今すぐ負けを認めろ!』
ガルバディア国王が怒って言う
『お前のプログラマーとしての力を 確認してやっていただけだ!300年以上生きている私に勝てるとでも思ったか!?』
プログラマーが怒って言う
『長く生きれば良いと言うものでは無い!こちらは短期間でも それを上回る力を身に付けたのだ!』
ガルバディア国王が怒って言う
『たかが2、30年生きた程度のヒヨッコが!生意気を言うんじゃ無い!貴様の能力など まだまだ私の足元にも及ばん!』
ガルバディア国王とプログラマーのホログラムがいがみ合って映像がブレる ヴィクトールが苦笑して言う
「まぁまぁ、親子喧嘩は 後程にして貰えると嬉しいのだが?」
バーネットが言う
「ガルバディア国王、てめぇは端っから 旧世界で戦うための力は その280年前とやらに使っていた物になるってぇ事が分かって あの時とんずらしやがったんだな?」
ガルバディア国王がバーネットへ向いて言う
『それ以外の方法があるのなら それに越した事は無い だが、お前がベネテクトへ向かい あの本を手にした時点で 結論は成されていた』
バーネットが言う
「なら話は早ぇ この調査記録にあった『機械の身体に人間の頭を取り付けた』数百のアンドロイド… こいつらはその後どうなったんだ?アバロンの連中の予測通り復讐に使われたのか?」
ガルバディア国王が言う
『そうだ 彼らが向かったのは 我らガルバディアが悪魔力の脅威に晒された原因とも言える この世界からの最初の逃避国』
バッツスクロイツが驚いて言う
「ガルバディアのアンドロイドがローンルーズへ!?」
ガルバディア国王が苦笑して言う
『いや 向かっていた …と言うのが正しい 私は彼らを止めるべく 彼らのマイクロトランスミッターの機能を停止させ 彼らの復讐を阻止した』
ヴィクトールたちが肩の力を抜いて顔を見合わせる ガルバディア国王が続ける
『だが、統一の思考を持って居るはずの 彼らの中においても例外が居た 彼らの内の その1人が私の目を逃れ ローンルーズへ向かってしまったのだ』
皆が驚く バッツスクロイツが問う
「ならっ!?その1人は!?ローンルーズへ行って 復讐をしたって事!?」
ガルバディア国王が微笑して言う
『その1人は ローンルーズの民たちが 己らのみが生き延びてしまった事を悔い それを罪と認めていると言う事を知り 復讐を留めたそうだ その代わり、私と同じく長い時を見つめ続ける事を選んだ』
ヴィクトールが問う
「では、その1人は 今もローンルーズに居ると言う事なのか?」
ガルバディア国王が軽く笑って言う
『もしそうであるのなら、私が その事実を知っているのはおかしい こちらの世界とローンルーズは 我らガルバディアの力を持ってしても伺い知る事は出来ない』
バッツスクロイツが言う
「それじゃー…?今は帰って来てて このガルバディア城に居るって事?」
ガルバディア国王が頷いて言う
『そうだな 今は丁度 その様になっている もっとも私が話を聞いたのは アバロン城での再会の時であったが』
ヴィクトールとバッツスクロイツが呆気に取られる バーネットが苦笑して言う
「だろうなぁ?このバッツスクロイツの相棒であるアンドロイドのデスは あのアバロンの調査書に書かれていた ガルバディアのアンドロイドの機械の体と まったく同じだ」
ヴィクトールとバッツスクロイツが驚き アンドロイドのデスを見る バッツスクロイツが言う
「え…っ?嘘?それじゃ…」
ガルバディア国王が軽く笑って言う
『嘘では無い 信じられないと言うのであれば ガルバディア城の設備を使い お前自身の手で確認をしてみるが良い 昔はローンルーズの民へ我々の設備を使わせる事など考えもしなかったが 現代のローンルーズの民である お前の能力は このガルバディアの技術に… 多少匹敵すると そのデスが言っていた』
プログラマーが衝撃を受け怒って言う
『そんな所でまで 僻むな!』
ヴィクトールとバーネットが呆れる バッツスクロイツがアンドロイドのデスを見上げる

通路

ガルバディア国王の先導に続きヴィクトール、バーネット、プログラマーが通路を進む ガルバディア国王が言う
『旧世界へ向かわせるガルバディアの騎士の必要数は ローレシアからの資料を元に算出すると およそ400~500 お前たちが来る事を見越し 私が用意した彼らの数は 現在その最低数にすら満たない 100程度だ』
ヴィクトールが問う
「では 必要最低数の400を満たすには どの程度の年月が必要になるのだろうか?」
ガルバディア国王が言う
『彼らの成長を早める事は それほど難しい事では無い 急ぐとなれば年も月も必要ない ローレシアから旧世界へ一度に送り込める最上数は100程度 次の転送に必要な聖魔力を補うのに2週間 その頃には再び転送の最上数を用意出来る』
バーネットが言う
「なら、次の転送に今用意している分を送り込み そこから数えて6週間後には準備が整うって事か」
ガルバディア国王が言う
『理論的にはそう言う事になる だが、それだけの数となると 国を閉ざして来た我が国では その資材を揃える事が難しい』
ヴィクトールが言う
「それについては 我々が何とかしよう」
ガルバディア国王が進行を止めて言う
『それと共に お前たちが行わなければ ならない事がある』
ヴィクトールとバーネットがガルバディア国王へ向く ガルバディア国王が言う
『彼ら未熟なガルバディアの騎士たちは 急激に成長を促進させている為 自ら考え行動や判断を行う事は出来ない 彼らだけを機械兵どものファクトリーへ向かわせようとも 自分たちを攻撃して来る機械兵から 己や仲間を守る事は出来ても その施設を守るのか または破壊するべきなのか その判断すら出来ないのだ 従って、彼らと共に向かい 彼らの指揮を執る人物が必要となる』
ヴィクトールが言う
「では、その役目は 私が請け負う」
バーネットが驚いて言う
「な!?何言ってやがる!?アバロン帝国の皇帝である てめぇえが!旧世界でくたばったら どうするつもりだ!?」
ヴィクトールが言う
「彼らを旧世界へ送る事を決定したのは私だ ならば、その彼らと共に旧世界へ向かい 作戦を決行するのは私の役目になる」
バーネットが言葉に詰まる ガルバディア国王が微笑して言う
『お前がそう言わなければ 私はすぐにでも彼らの製作を取り止めるつもりでいた』
ガルバディア国王がプログラムを解除し周囲の壁を消す 現れた空間では大量の人の身体と機械の鎧が造られている ヴィクトールとバーネットがその光景に驚き辺りを見渡す

玉座の間

ヴィクトールとバーネット、プログラマーが玉座の間に戻る バッツスクロイツが笑顔で言う
「おっ帰りー!みんなー!」
ヴィクトールとバーネットが呆気に取られてから ヴィクトールが言う
「バッツスクロイツ?ガルバディア城の設備を借りて そのアンドロイドのデスを調べるのではなかったのかい?」
バッツスクロイツが苦笑して言う
「うーん、まぁ?何ってー言うかー?やっぱりー… こいつは そのー 俺の大切なー 家族?みたいーな もんだから?例え何であっても 今更ー?まーいっかー みたいな?」
バッツスクロイツが空笑いする ヴィクトールが苦笑して言う
「うん、大切な人の身体を調べるだなんて 信頼さえ出来ていれば必要のない事だ きっと彼も君の選択を喜んでいると思うよ」
ヴィクトールが笑顔を見せる バッツスクロイツが呆気にとられた後苦笑して言う
「うん!俺もー そんな感じするー かな!」
ヴィクトールとバッツスクロイツが笑い合う バーネットが苦笑して言う
「まったく、どいつもこいつも そんな感じだの何だのって いっつも根拠のねぇ事で納得しやがって… そんな所が アバロンの民なんだよなぁ?」
バッツスクロイツが微笑して言う
「俺はー ローンルーズの民だけどー?アバロン式って言うのは 結構ー良いかなー?なーんてねー?」
ヴィクトールがバーネットへ向いて言う
「バーネットもアバロン帝国の第二皇帝なのだから 少しはアバロン式を取り入れないと!」
バーネットが衝撃を受けて言う
「うるせぇえ!俺はベネテクトの民なんだよ!出張中のアバロンのアバロン式なんざに 汚染されて堪るか!」
ヴィクトールが衝撃を受け怒って言う
「あー!酷いよバーネット!アバロンの由緒正しき アバロン式を 汚染呼ばわりするなんて!」
バーネットが怒って言う
「うるせぇえ!第二皇帝の俺まで そんな適当式になっちまったら アバロン帝国が傾くだろぉおがぁあ!」
ヴィクトールが怒って言う
「酷いよバーネット!適当式じゃなくて アバロン式だよ!」
バーネットが怒って言う
「うるせぇえ!何式だろうが どっちでも…!」
ヴィクトールの通信機が着信する 2人が衝撃を受け 真剣な表情になってヴィクトールが通信機を取り出し通信を開始する ヴィクトール14世がモニターに映って言う
『父上!ソルベキアからロボット兵部隊が出動しました!現在デネシア領土を北上中 ガルバディアへ向かっていると思われます!』
ヴィクトール、バーネット、バッツスクロイツが驚く バーネットが言う
「どう言う事だ!?何でソルベキアが ガルバディアに来やがる!?」
プログラマーが顔を向ける その場所にガルバディア国王がホログラムを表して言う
『ソルベキアには 常に我が国の動向を偵察しようとする者が居た こちらも対策を行ってはいたが その防御プログラムを潜り抜け 我らの兵力製作行動を見破ったのだろう』
プログラマーが視線を強めて言う
『ガルバディアの防御プログラムを潜り抜けるとは その偵察を試みていたソルベキアの者というのは やはり」
ガルバディア国王が頷いて言う
『スファルツ・レイロルト・クラウザー 我らガルバディアのプログラマーと敵対する ソルベキア最高位のハッカーだ』
プログラマーが言う
『奴の力を侮ったのか!?奴のハッキングに耐え得るプログラム防壁を組めるものなど 私か貴方位だ!何故他者へ譲った!?』
ヴィクトールが言う
「彼らガルバディアの騎士たちを作る為に譲ったのでは無いのか?ガルバディア国王は 彼らへ専念する為に」
プログラマーがヴィクトールを見た後 ガルバディア国王へ詰め寄って言う
『もし、そうならば 私に譲れば良かったのだ 奴とは何度もこの私が!』
ガルバディア国王が微笑して言う
『スファルツの力は分かっている 奴は過去 この私の作り上げた防壁を潜り抜け ウィザードの研究結果を盗み出した それ以降 奴の事は常に気に掛けていたのだ そして、今回は わざと奴へ隙を見せてやった まぁ… 思っていたよりは なかなか早く崩された訳だが…』
プログラマーが衝撃を受けて怒って言う
『それを侮っていると言うのだ!』
バーネットが言う
「んな事より!この重要な時に何で隙なんざ見せやがった!?それこそ今作り上げているアイツらや あの設備自体をロボット兵でぶっ壊されたりしたら 全て台無しじゃねぇか!?」
皆がガルバディア国王へ向く ガルバディア国王が微笑して言う
『確かに、思っていたよりは早かったが それでも私の計算に狂いは無い アバロンの王、ヴィクトール13世 これで お前の力を試させて貰う』
皆が驚く バーネットが言う
「どう言う意味だ!今からアバロンの部隊を連れて来ようったって 間に合わねぇんだぞ!?」
ガルバディア国王がバーネットへ向いて言う
『ヴィクトール13世のアバロン部隊の指揮能力については 以前のガルバディア防衛戦にて確認させて貰った 従って 今回は彼らを使った指揮能力を試す』
ヴィクトールがハッとして言う
「彼ら…?では ガルバディアの騎士たちの指揮を執れと!?」
プログラマーが言う
『現在デネシア領域を北上中のソルベキアのロボット部隊の数は300 しかし、ガルバディアで製造が終了している ガルバディアの騎士の数は』
ガルバディア国王が言う
『現在製造が終了している数は 34体 しかし、そのうち4体は未だ戦闘プログラムを熟知して居ない為 今回の使用は不可能だ よって お前に与えられる騎士の数は30』
バーネットが怒って言う
「おいっ!ふざけんじゃねぇえ!たった一割の兵で300のロボット兵をぶっ倒すなんて 出来る訳がねぇえだろ!?」
プログラマーが言う
『しかし、彼らの戦闘能力を比べれば 数値上は可能だ ガルバディアの騎士1人の能力は ソルベキアのロボット兵の8.65を超える』
バーネットが言う
「なら計算上は259.5の力になりやがるってぇのか!?それでも実際に戦うとなれば そこに不可抗力がいくらだって掛かるんだ!300対30の個体数の差は 数値以上のものになりやがる!」
ガルバディア国王が言う
『お前が指揮を放棄すると言うのであればそれで構わない 後は我々のプログラムで…』
ヴィクトールがガルバディア国王へ向いて言う
「もちろん、やらせて貰う 私は 彼らを信じる!」
バーネットが驚く ガルバディア国王が微笑して言う
『では預けてやろう 我らガルバディアの最高傑作 現代のガルバディアの騎士たちを』
ガルバディアの騎士30体が現れる バーネットが驚く バッツスクロイツがガルバディアの騎士の姿を見て困惑し アンドロイドのデスを見上げ苦笑する

ガルバディア城 城門前にヴィクトールとガルバディアの騎士たちが集う

ガルバディア城内にて バーネット、バッツスクロイツ、アンドロイドのデス、プログラマー、ガルバディア国王がモニターでその様子を見ている バッツスクロイツが言う
「ねぇ、バーネっち?やっぱ 俺のデスとか バーネっちとか プログラマーのデスっちも 手伝った方が…」
バーネットが言う
「あいつが自分らだけで やらせてくれってぇんだから しょうがねぇじゃねぇか?それに、万が一の時には 第二防衛部隊の俺らが この城を守んなきゃならねぇ」
バッツスクロイツが衝撃を受けて言う
「えー!?お、俺らがってー!?いつの間に 俺っちたち 第二防衛部隊ーに なってたんですかーっ!?」
プログラマーが言う
『数値上は可能な防衛戦ではあるが、初めて戦闘を行うガルバディアの騎士たちを 彼らと初めて会ったばかりのヴィクトール13世が指揮を執って行うというのは』
ガルバディア国王が苦笑して言う
『あのアバロンの民ヘクターと共に過ごしていたお前が 同じアバロンの民である ヴィクトール13世を信じられないのか?』
皆がガルバディア国王へ向く ガルバディア国王が微笑して言う
『その程度の信頼では アバロンの相棒には なれんのだぞ?』

ガルバディア城 城門前 

ヴィクトールがガルバディアの騎士たちへ向いて言う
「間もなくソルベキアのロボット兵部隊が このガルバディア城へ攻め入らんと 攻撃を仕掛けて来る 我らガルバディア騎士団は ソルベキアのロボット兵部隊を撃破し このガルバディア城を守り通す!勇敢なるガルバディアの騎士たちよ!私と共に戦ってくれ!」
ヴィクトールが剣を抜きソルベキアのロボット兵へ向ける ガルバディアの騎士たちが両刃剣を手にして ヴィクトールをまねて ソルベキアのロボット兵へ向ける ソルベキアのロボット部隊が ヴィクトール率いるガルバディア騎士団を敵とみなして一斉に武器を構える ヴィクトールが宝玉を握り大剣に聖魔力を灯す ガルバディアの騎士たちが両刃剣を構え その刀身に聖魔力が灯る 双方の沈黙の後 ソルベキアのロボット兵部隊が攻撃を開始する ヴィクトールが大剣を向けて叫ぶ
「攻撃ーっ!」
ヴィクトールがロボット兵へ向かい走り出す ガルバディアの騎士たちがヴィクトールと共に駆け出し 機械鎧の機能を始動させ 人体の何倍もの速度と力でソルベキアのロボット兵部隊を撃破して行く

ガルバディア城内 

バーネットがモニターを見ながら呆気に取られる ガルバディア国王が微笑して言う
『どうだ?我がガルバディアの騎士たちの力は?ソルベキアのロボット兵など 足元にも及ばん』
バッツスクロイツが目を瞬かせて言う
「す… すっげー… 俺のデスより能力値は 余裕で170%上昇ーって 感じ…?」
ガルバディア国王が苦笑して言う
『お前の相棒となった そのガルバディアの騎士は 280年以上昔の者だ その後 多少の改良を行いはした様だが 現在の我らガルバディアの技術を持って作られた 最新の騎士たちとは 比べ物にならん』
バーネットが気を取り直して言う
「それはそうと、あのガルバディアの騎士どもが持ってる武器は何だ?ヴィクトールの聖魔力を宿してる大剣と同じ様に ロボット兵の装甲を余裕で ぶった斬ってるじゃねぇか!?」
ガルバディア国王が得意げに言う
『あの両刀剣には 周囲の悪魔力を変換した 聖魔力を灯させている』
皆が驚く プログラマーが言う
『その機能はっ 2代目勇者の仲間たちが持って来た 旧世界の宝玉と同じ…っ?』
ガルバディア国王が得意げに言う
『旧世界がどの程度の科学力を有しているかは知らんが 世界一の科学者である この私が 奴らの作り出せる機能を利用する事など 造作も無い』
皆が呆気に取られた後 プログラマーが言う
『なるほど… パクりが得意なのか』
ガルバディア国王が衝撃を受け 怒って怒鳴る
『誰がパクったと言うのだっ!!』

ガルバディア城城門前

ソルベキアのロボット兵の最後の一体が倒れる ガルバディアの騎士が上体を起こし ヴィクトールへ向く ヴィクトールが呆気に取られながら周囲を見渡した後 ガルバディアの騎士たちを見渡し 軽く微笑んで言う
「我ら ガルバディア騎士団の 完全勝利だ!」
ヴィクトールが大剣を上空に掲げる ガルバディアの騎士たちがそれに倣う

ガルバディア城 玉座の間

バーネットと皆の下へ ヴィクトールがガルバディアの騎士たちを連れて現れる ヴィクトールがバーネットとバッツスクロイツへ微笑を向ける バーネットが苦笑しバッツスクロイツが笑顔を向ける ヴィクトールがガルバディア国王の前に立って言う
「ガルバディア国王!貴方の騎士たちは素晴らしい!彼らの力があれば 旧世界を我ら人の手に取り戻す事が出来る!」
ガルバディア国王が微笑して言う
『彼らの仕上がりと共に お前の指揮能力も確認させて貰った ヴィクトール13世 私はお前になら 彼らガルバディアの騎士たちを任せられると判断した』
ヴィクトールが一瞬驚いた後 微笑して言う
「私は必ず貴方の期待に報いる事を約束する!」
ガルバディア国王が頷く バーネットとバッツスクロイツが顔を見合わせ微笑する

【 アバロン城 書物庫 】

ヴィクトールが本棚を眺めて言う
「あれ?バーネット… まだ ここの本、返してくれて無いのかな?」
ヴィクトールが本棚の一部を眺めながら言う
「この棚の本は 僕が読まなければいけない 必要最低限の本の一部なのだけど… 25年前に貸し出しちゃったっきり バーネットとバーネット1世様が デネシアに捕まって そのまま戻って来なくなっちゃったんだよね 珍しく 僕も興味のある本だったから 返して貰えるのを ちょっとだけ 楽しみにしてたんだけどなぁ…?」
ヴィクトールが首を傾げる

【 ガルバディア城 城門前 】

バーネットが城門を見上げて言う
「確かヴィクトールの奴は アバロンの王なら、いつでも開く様に出来ているとかって言ってやがったよなぁ?そりゃぁ… 第二国王の俺であっても同じってぇ事なのかぁ?」
バーネットが首を傾げる 束の間の後 門に手を付いて言う
「この門もきっと あいつらお得意のプログラムってぇ奴で…」
門に数字の羅列が浮かび門が消える バーネットが呆気に取られた後 苦笑して入城する

玉座の間

バーネットがやって来て立ち止まり周囲を見渡してから玉座へ顔を向ける 束の間の後 ガルバディア国王がホログラムを現す 2人が顔を見合わせ ガルバディア国王が口角を上げて言う
『今日は、どちらのお前で来たのだ?アバロン帝国の第二皇帝として 我がガルバディア国へ参ったのか それとも…?』
バーネットが苦笑して言う
「やっぱりそうなのか?」
ガルバディア国王が軽く笑って言う
『お前なら分かるであろう?この城の城門ですら お前を受け入れた』
バーネットが苦笑して言う
「アバロンの第二の王として受け入れて貰えたってぇ事にしてぇんだが?」
ガルバディア国王が苦笑して言う
『ならば好きにするが良い その代わり 例え我らガルバディアの相棒国であっても その国の第二国王の問いになど 私は答える気は無いぞ?』
バーネットが友好国調査書の本を片手に言う
「この本を一冊丸々暗記する事なんざ簡単だった だが、俺はこの本に書かれている たった1行の文章が気に入らなくって アバロンから持ち出したんだ だが、持ち出したっきり安心して すっかり忘れて あのバッツスクロイツの連れていたデスにも 気付けねぇ程だった訳だが …それでも この1文を忘れた事は無かったぜ」
バーネットがガルバディア国王へ向く ガルバディア国王が微笑する バーネットが苦笑して言う
「初めてアバロンの第二国王になったソイツは アバロンの第一国王の相棒だった その相棒ってぇのは… ガルバディアの第二王子だ」
ガルバディア国王が軽く笑って言う
『そう言う事だ お前は我らと同じ ガルバディアの民であり このガルバディア国の私に次ぐ王位継承者となる』
バーネットが溜め息を付いて言う
「認めたかぁ無かったが てめぇがアバロンの第二国王の問いに答えねぇってぇんじゃ しょうがねぇ 頭に来るが認めてやる その代わり2つ答えろ」
ガルバディア国王が微笑する バーネットが向き直って言う
「1つはてめぇと俺との違いだ てめぇは黒い髪に赤い瞳 対する俺は金色の髪に青い瞳だ まったく正反対の姿の王位継承者同士なんて考えられねぇ」
ガルバディア国王が軽く笑って言う
『たった2つしか許しを請わなかった問いの1つが そんな事で良いのか?』
バーネットが怒って言う
「うるせぇえ!こっちは死活問題なんだよぉお!この金髪に三つ編みの髪には ベネテクトの民と兵と国を思う ベネテクト王の愛の証があるんだ!邪魔だって めんどくさくったって 切れねぇええんだよぉお!!」
ガルバディア国王が微笑して言う
『ならば、心配は不要だ その願いは我らガルバディアの民への物と同じ むしろ 我らの願いの方が先に存在していた 我らガルバディアの民は 北方に住む民族だ 他国に比べ 気候にも食料にも悩まされる そのガルバディアの民への想いが 王族の髪型に現されたものだ』
バーネットが腕を組んで言う
「なら その髪の色の違いは何だ?そもそも北方に住むてめぇらが 黒髪ってぇのは 自然の理に反してるだろぉ?」
ガルバディア国王が言う
『それは あの悪魔力の脅威から逃れたお前と 逃れられずに魔物化した民を見た私との違いだ 悪魔力による魔物化現象に陥ったガルバディアの民たちは 自分たちの天敵であったソルベキアの民の容姿へと変わった 更に このガルバディアの土地を染めた 赤い血の色を恐れ その瞳の色が赤く染まった 私自身は魔物化現象を逃れたが 後に彼らと同じ姿の体を作り その体へと移り続けた』
バーネットが微笑して言う
「なら、今のてめぇの本体の姿は そのホログラムと同じってぇ事か?」
ガルバディア国王が言う
『そう言う事だ』
バーネットが軽く笑って言う
「魔物化して殺されて行った民たちと 同じ姿になろうなんざ… 初めててめぇの事を 国王として認めてやる気になったぜぇ?」
ガルバディア国王が苦笑して言う
『私の民への愛は お前になど負けては居ない だが 今回のお前たちからの依頼を受託した事については 私は民を愛するガルバディアの王として 相応しく無い行動であると分かっている』
バーネットが苦笑して言う
「それは俺だって同じだ 例え、ベネテクトでもアバロンでもねぇ国の民であってもな?無理やり成長を促進させたあいつらの命は ただでさえ短いてめぇの複製どもの命を更に短くする おまけに生まれて間もねぇってぇのに あいつらが行く先は 旧世界の地獄だ 何にも理解出来ねぇままに戦わされて 下手すりゃその短けぇ命すら落とすかも知れねぇ」
ガルバディア国王が目を閉じて言う
『その責任は 私の命をもってしても 償えるものでは無い ただ彼らの唯一の救いは その何も分からない自分たちを導くのが あのアバロンの王であると言う事』
バーネットが苦笑して言う
「それさえも てめぇの勝手だろぉが?」
ガルバディア国王が苦笑して言う
『そうだな…』
バーネットが言う
「だから その責任を この俺も受け負ってやる てめぇの命に俺のを足した所で 奴らへの償いには どの道足りねぇってぇ事は分かってるが このまま見過ごす事は出来ねぇ」
ガルバディア国王がバーネットを見つめる バーネットが言う
「2つ目の質問だ 単刀直入に言う 俺にあの機械鎧を着る事は出来ねぇのか?」
ガルバディア国王が微笑して言う
『出来ると言ったら どうする?』
バーネットが答える
「聞くまでもねぇだろ、俺もガルバディアの騎士として 民と共に旧世界へ行く」
ガルバディア国王が言う
『お前の一族は 常に我が国で新たな命を誕生させていた 全神経に点在するマイクロトランスミッターは ガルバディアの民の証 お前が通常の人より 素早く文字を読み解く能力があるのも その恩恵だ』
バーネットが言う
「なら、答えは分かった 俺からの依頼も分かったよな?」
ガルバディア国王が苦笑して言う
『依頼を受けろとは 最初の言葉には含まれていなかった だが我らガルバディアの王位継承権二位の者からの依頼ともなれば 仕方もあるまい』
バーネットが苦笑する ガルバディア国王が言う
『お前がそれを望む事を あのアバロンの王は知っているのか?』
バーネットが言う
「伝えちゃいねぇ… だが、どうせバレるだろう あいつらお得意の 『何となくそんな気がする』ってぇ奴でよ?」
ガルバディア国王が微笑して言う
『だろうな』

【 アバロン城 玉座の間 】

ヴィクトールがヴィクトール14世へ戴冠を行う ヴィクトールが言う
「ヴィクトール14世 お前にアバロン帝国 皇帝の帝位を譲る」
ヴィクトール14世が答える
「はい、このヴィクトール14世 アバロン帝国皇帝の任 我が命をもって遂行致します」
大臣たちが息を飲み顔を見合わせて微笑する レリアンがヴィクトール14世へ微笑みを向けてからヴィクトールへ向く ヴィクトールがアバロン王の大剣をヴィクトール14世へ継承する ヴィクトール14世が受け取りその重責と共に握りしめヴィクトールへ向く ヴィクトールが頷く

城門前

ヴィクトールがアバロン城を出て来る ヘクターとウィザードが待ち構えていて ヘクターが言う
「旧世界での任務が終ったら また戻って来れるんだろ?」
ヴィクトールが微笑して言う
「簡単に終るような任務では無いけれどね?最初の作戦が終れば 少しは余裕が出来ると思う ひと段落したら短期間でも 一度戻るつもりだ」
ヘクターが微笑して言う
「おう!アバロンは ヴィクトール14世と俺たちで ばっちり守っといてやるから 安心して行って来いよな!」
ヴィクトールが頷いて言う
「うん、このアバロンには アバロン最強部隊である3番隊の元隊長ヘクターと アバロンのウィザードであるデスと 相棒国ガルバディアの世界一のプログラマーであるデスが居るんだ 僕は何の心配も無く 旧世界へ向かえるよ」
ヘクターが軽く笑って言う
「ああ!ついでに 現3番隊隊長オライオンと 同じく副隊長のシュライツ でもって、アバロン情報部隊バッツスクロイツに その部下であるニーナとミーナも居るんだからな!」
ヴィクトールが苦笑して言う
「第一皇帝の僕が帝位を譲ってしまったから 第二皇帝のバーネットも、その帝位を失ってはしまったけど ベネテクトに戻っても きっと、今までと同様に アバロンに手を貸してくれると思うんだ 友情と慈愛の2人の王は再び2つに分かれてしまうけれど もう喧嘩は絶対しないし 我らのアバロンは安泰だね?」
ウィザードが周囲を見渡してから言う
「それで?折角のお前の旅立ちに あの元アバロン帝国の第二皇帝は 見送りに来ないのか?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「バーネットは僕が帝位をヴィクトール14世に譲ると伝えた日に、それを聞き入れてベネテクトへ戻ってしまったんだ もしかしたら今頃ベネテクトで第二国王の王位でも作っているのかもしれない」
ヘクターが軽く笑って言う
「まぁ、ベネテクトだったら アバロンよりガルバディアに近いから もしかしたら ガルバディア城の方で見送るつもりなんじゃねーか?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「うーん、他国で見送りって言うのは 余り無いものだけど もしかしたら、そうかもしれないね?それに、任務が終ったら戻るんだから その時にまた会えば良いって事かもしれない …もし、君たちがベネテクトに行く事があったり 彼がアバロンに来た時には よろしく伝えて置いてくれ」
ヘクターが微笑して言う
「ああ、伝えとく じゃ、頑張って来いよな!アバロンの勇者様よ!」
ヴィクトールが軽く笑って言う
「うん、アバロンの名が入るその称号に 恥じない働きをして来るよ」
ウィザードが魔力を集中し、ヴィクトールへ放つ ヴィクトールがガルバディアへ飛んで行く ヘクターが見送って言う
「旧世界か… けど、やっぱ俺は行けねーや?俺の相棒はこっちの世界でしか俺と戦えねーって言うし ヴィクトールが行っちまうんだから俺がアバロンを守らなきゃな!」
ウィザードが言う
「しかし、元アバロン帝国の第二皇帝に続き元アバロン帝国の皇帝も居なくなってしまった アバロンは少し詰まらなくなった 私は やはり少し嫌いだ」
ヘクターが軽く笑って言う
「そーだな、ちょっと寂しくなっちまったよな?けど、あいつらもまたアバロンに帰ってくるんだからよ?俺たちが守っておかねーと!だろ?」
ウィザードが言う
「うん… そうかもしれない」
ヘクターが微笑する

【 ガルバディア城 玉座の間 】

ガルバディア国王が 玉座の前にホログラムを現し立っている ヴィクトールがその正面に立ち ヴィクトールの後ろにガルバディアの騎士99人が整列している ガルバディア国王が言う
『ローレシア城より転送の準備は整っているとの連絡が入っている 今回お前と共に向かうガルバディアの騎士は99体 お前を含め転送可能人数である100となる 今後はヘクターの相棒であるガルバディアの民が お前の代わりに 騎士たちをローレシアの転送の場へ送る お前たちの後に旧世界へ送られる数は予定通り100体が3度となるだろう』
ヴィクトールが微笑して言う
「分かった、作戦に必要な人数が揃い次第 我々は旧世界を取り戻すべく戦いを開始させる ガルバディア国王、最初の作戦が終了した後も 彼らガルバディアの騎士たちは私と共に 旧世界に現存している機械兵を始末する任務へ当たる為 彼らがこのガルバディアに戻るのは 数年後から数十年後になると思われる それまでの間は 貴方に代わり私が彼らの父として 務められるよう励ませてもらう どうか、それまでの間は」
ガルバディア国王が微笑して言う
『彼らの幼い頭脳には 戦いのプログラムと自分たちの仲間、そして、主となる者の姿が妬き付けられている 主の姿は3人 その内1人はお前だ 彼らはお前と共に戦う事を望み 共に勝利を喜ぶだろう』
ヴィクトールが微笑した後 一瞬考えてから言う
「主は3人?貴方と私と…?」
ガルバディア国王が軽く笑って言う
『いずれ分かる』
ヴィクトールが呆気にとられた後 首を傾げ小声で言う
「今後彼らをローレシアへ送り届ける ヘクターの相棒のデスだろうか?それとも先に旧世界に向かっている 2代目3代目勇者… では2人になってしまうし… 所で、ガルバディア国王?」
ガルバディア国王が答える
『何だ?』
ヴィクトールが自分の隣後ろに居る 1体だけ色形が若干異なる異色のガルバディアの騎士を見てから言う
「このガルバディアの騎士1体だけ やたらと愛着がある様なのだが?」
ガルバディア国王が衝撃を受け 慌てて言う
『あーっ、いやっ その…っ!?け、決して 愛着などがある訳では無いっ!まさか…?思わず気合を入れて 超ハンドメイドで作ってしまったとか…っ そう言う事では きっと一切無い筈だっ!?』
ヴィクトールが疑問する 異色のガルバディアの騎士に焦りの汗が流れる ヴィクトールが振り返り異色のガルバディアの騎士を見る 異色のガルバディアの騎士が衝撃を受け顔をそらす

城門外

ガルバディア城を出たヴィクトールとガルバディアの騎士たち 特別な移動魔法陣のもとへ向かう ヴィクトールの近くに プログラマーがホログラムを現して言う
『バッツスクロイツの設計したワープロードを使い お前たちをローレシアの移動魔法陣へ送り届ける 今後予定されているガルバディアの騎士たちの転送が全て終了次第 このワープロードは僻み国王の命により解体される』
ヴィクトールが軽く笑って言う
「でも、きっとその後は もっと良い転送装置が作られるのではないだろうか?君たちの王は世界一の科学者なのだから」
プログラマーが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
『その世界一の科学者より お前に餞別だそうだ』
ヴィクトールが疑問する 異色のガルバディアの騎士がヴィクトールへ一刀の大剣を渡す ヴィクトールが受け取り鞘から引抜きつつ言う
「これは…?大剣?この溝にあるのは…?」
ヴィクトールがプログラマーへ向く プログラマーが微笑して言う
『機械兵と戦うのに 宝玉を持たない お前の通常の剣では太刀打ちが出来ない そんなお前の為に特別に作られた大剣だ ガルバディアの騎士たちが持つ両刀剣に備えられているものと同じ どのような魔力でも聖魔力へ変換し その剣に纏わせる機能が付いている』
ヴィクトールが驚き呆気にとられた後 微笑んで言う
「どのような魔力でも聖魔力へ変換する …だなんて 流石、世界一の科学者殿は 次から次へと新たな力を生み出して行く 天才的な人なのだね?」
プログラマーが苦笑して言う
『300年も生きていれば それくらいの事は出来る様になるのではないか?ちなみにそのプログラムの入力は 私が行ったんだ 決してあいつ1人の力では…』
ヴィクトールが呆気に取られた後に笑う プログラマーが疑問し首を傾げる ヴィクトールが言う
「デス?君もお父上に似て 余り人を僻んだりはしてしまわない様に もっと素直に他者の力を認めるべきだよ?」
プログラマーが衝撃を受け怒って言う
『私を あの僻み国王と似ているなどと言うなっ 素直に負けを認めて諦めるようでは 新たな物もプログラムも作り出せないのだ!』
ヴィクトールが呆気にとられ微笑する

【 ローレシア城 城門前 】

移動魔法陣から城門前へ ヴィクトールとガルバディアの騎士たちが歩いて来る 門兵たちが怯える ヴィクトールが門兵に問う
「アバロンの大剣使いヴィクトール13世と ガルバディアの勇敢なる騎士たちだが キルビーグ1世殿はどちらにおられるだろうか?」
門兵がハッとして慌てて敬礼して言う
「は、はっ!キルビーグ1世様は 地下機械室にて ヴィクトール13世殿とガルバディアの騎士殿方を お待ちしているとの事です!」
ヴィクトールが微笑して言う
「分かった、ありがとう」
ヴィクトールとガルバディアの騎士たちが入場して行く 門兵たちが怯えながら見送る

地下機械室

キルビーグが振り返って言う
「ヴィクトール殿!おお…っ そちらがガルバディアの騎士たちか お待ちしていた」
キルビーグが席を立ち ヴィクトールの下へ向かう ヴィクトールが微笑して言う
「すまない、一通りの事を済ませていた為 少し遅くなってしまった 時間の方は大丈夫だろうか?」
キルビーグが微笑して言う
「もちろん、心配は無い …とは言え もうすぐその転送の時間だ 詳しい話は旧世界にて 今日送り込まれる新世界からの勇士たちを 心待ちにしているザッツロードと仲間たちから聞いてくれ」
キルビーグが機械制御に戻り制御盤を操作する ヴィクトールが問う
「その旧世界に居るザッツロードらには 今日送り込まれるのが 私と彼らだと言う事は伝えられているのだろうか?」
キルビーグが微笑して言う
「今後の転送に備え 出来るだけ聖魔力での通信は控えている事もあり 今日送られるのが旧世界の機械兵を打ち倒す 100名の勇士であると言う事以外は 伝えられて居ない」
ヴィクトールが軽く笑って言う
「それでは 私の姿を見た途端 驚かれるかもしれない 彼らはいつも ちょっとした事で大げさに驚く 反応の面白い者たちであったから」
ヴィクトールが笑顔になる キルビーグが軽く笑って言う
「はっはっは そうかもしれんな?最も あのアバロン帝国の元皇帝であった者が 旧世界のローレシア帝国を救いに行くのであっては 彼らも驚くのは無理も無い」
ヴィクトールが微笑して言う
「私はアバロンの勇者として 旧世界を人の手に取り戻すため 相棒のガルバディアの騎士たちと共に向かうのだ アバロンの元皇帝としてでは無いのかもしれない」
キルビーグが微笑して言う
「本当の勇者は 貴殿であったのかも知れんな?ヴィクトール13世殿」
ヴィクトールが苦笑する キルビーグが振り返って言う
「だが、その貴殿の相棒であるのが ガルバディアの騎士たちだと言うのは 私は納得が行かない 貴殿の相棒は アバロン第二の王 慈愛の王である バーネット2世殿であると 私は思っていたのだが?」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後、苦笑して言う
「残念ながら彼とは 彼がベネテクトへ戻った 3日ほど前から顔を合わせて居ないんだ 今日の見送りに位 ベネテクトから飛んで来てくれると思ったのだが …しかし」
キルビーグが表情を悲しませる ヴィクトールが表情を和らげて言う
「今は何だか とっても近くに 彼を感じるんだ!不思議な感覚だね!」
ヴィクトールが笑顔になる 異色のガルバディアの騎士が衝撃を受ける キルビーグが呆気にとられた後 微笑して言う
「きっと 例え離れた場所に居ても 互いを思う気持ちがあると言う事だろう 過去アバロンとベネテクトに分かれて居た時の様に」
ヴィクトールが苦笑して言う
「そうかもしれない… しかし、そばに居て一緒に戦っていた時の方が 私は強く居られたと思うし 何よりとても楽しかった… やはり彼は 私と共に戦ってくれる 私の世界一の相棒だったんだ」
キルビーグが微笑して言う
「ではやはり、アバロンを落とすには アバロンの王の相棒であるベネテクトの王を捕らえるのが 好ましい戦法の様だな?」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 苦笑して言う
「それはそうかもしれないが 今後は2度とアバロンとその王の相棒に手を出す事は 私が許さない」
ヴィクトールが大剣を引抜きキルビーグへ向ける 異色のガルバディアの騎士がほぼ同時に両刃剣を向ける キルビーグとヴィクトールが疑問して 異色のガルバディアの騎士へ顔を向ける 異色のガルバディアの騎士がハッとして剣を引く

周囲の機械が唸り ヴィクトールとガルバディアの騎士たちの足元にある 移動魔法陣が光りを発する キルビーグが機械操作を終え 立ち上がり振り返って言う
「ヴィクトール殿!旧世界と民たちを 頼む!」
ヴィクトールが頷く 転送が起き ヴィクトールとガルバディアの騎士たちが消える キルビーグが振り返りモニターを見て言う
「よし、無事旧世界へ送り届けられた 2度も失敗をしてしまっては きっとバーネット殿も 今度はローレシアの王を許してはくれ無いだろうからな?」
キルビーグが軽く笑う

【 旧世界 ローレシア帝国 】

モニターを見上げていた ザッツロードが言う
「新世界からの転送だ!彼らが来る!」
ザッツロードが振り返り 後方の転送装置へ視線を向ける ソニヤ、ラナ、セーリアが同様に振り返り 転送装置へ注目する 転送装置が光り 新世界からの転送者たちが姿を現す ザッツロードと仲間たちが目を丸くし ソニヤが言う
「ま、まさか…っ」
ヴィクトールが周囲を見渡した後 ザッツロードたちへ顔を向け微笑んで言う
「久し振りだな ローレシアの3代目勇者と仲間たち 新世界からの使者 アバロン帝国の大剣使いヴィクトール13世と 勇敢なるガルバディアの騎士たちだ!旧世界ローレシア帝国への支援に参ったぞ!」
ザッツロードとソニヤ、ラナが声を合わせて叫ぶ
「「「えぇええっ!?」」」
ザッツロードとソニヤ、ラナが驚きのまま固まる セーリアが驚きに言葉を失っている ヴィクトールが笑う

テーブルの上に地図や機械兵の構造図が広げられている ザッツロードが言う
「現在この旧世界に存在する 悪魔力の吹き出る箇所は この地図に記されて居る所です 悪魔力中和装置を起動させてから 既に10日が経過しているので この印の近く以外では 魔物化現象は収まっています」
ヴィクトールが言う
「悪魔力の吹き出る箇所と言う事は こちらの世界にも新世界で言う所の 魔力穴のような物が存在するのだろうか?」
セーリアが言う
「詳しい調査は出来て居ないのですが 恐らくそれに相当する物があるのではないかと予測されています」
ラナが言う
「調査をしようにも このローレシア帝国の結界の外へ出たら いつ機械兵に襲われるか分からないから」
ヴィクトールが言う
「そうか… では 調査を行うためにも やはり 機械兵の殲滅が最優先と言う事になる 機械兵の殲滅には先ず その生産場所であるファクトリーを撃破しなければならない その際には 悪魔力の吹き出る箇所に近い場所にも行く必要がある そうとなれば… 悪魔力中和装置に使用した旧世界の宝玉は 今はどの様になっているのだろうか?」
ソニヤが言う
「あの宝玉は一度全ての魔力を使ってしまったけれど 悪魔力を常に吸収してるから 戦ってる間の その周囲に結界を張る事ぐらいは 出来るんじゃ無いかな?」
ラナが言う
「中和装置で増幅させたとは言え たった10個の宝玉で世界中の悪魔力に 相応するだけの聖魔力を作り出したのよ?それが一個もあれば戦っている間の周囲どころか お城を含めた城下町までだって結界を張れるわよ」
ザッツロードが言う
「宝玉は全て無傷で保管してあります 必要とあれば いつでも言い付けて欲しいとの事です」
ヴィクトールが言う
「分かった 宝玉の確保がなされているのであれば 現在予定されている機械兵殲滅における策にも問題はない それと共に 悪魔力の吹き出ている箇所の詳しい調査は やはり可能な限り急いで行った方が良い 我々が機械兵の殲滅を行っている その間に、調査に必要な機材を揃えておくと良いだろう あの中和装置を作り上げた技術者らを集めて彼らに…」
ヴィクトールが言い掛けてハッとして言う
「ああ、すまない 私はもうそれらの事を指揮する立場では無いのだった こちらへ転送されるその日まで 新世界の皇帝をやっていたものだから」
ザッツロードたちが呆気にとられた後 笑い出す ヴィクトールが苦笑する ソニヤが言う
「でも、何だか こっちの方が 自然な感じー」
ラナが苦笑して言う
「そうね、こちらの皇帝陛下は ちょっと頼りない感じだから」
セーリアが苦笑して言う
「ラナ、そんな事言ったら ザッツロード6世皇帝陛下に失礼に当たるわ」
ザッツロードが苦笑する ヴィクトールが呆気にとられた後、微笑して言う
「そうか、ローレシアの2代目勇者殿が 現在の旧世界ローレシア帝国の皇帝と言う事なのか」
ソニヤが微笑して言う
「仲間の魔力使いたちに しょっちゅう怒られちゃってるけど 一応、そう言う事なのよねー?」
ザッツロードが苦笑して言う
「あぁ あれは… しょうが無いと思うよ?ほら、皇帝妃殿下もその仲間の1人なのだし」
ザッツロードたちが笑い合う ヴィクトールが微笑して言う
「なるほど?彼らのその後は 私が想像していた程 悪くは無かったらしい その様子なら 彼らの事をずっと心配していたヘクターの方が 心苦しかったのかもしれない」
ソニヤとラナとセーリアが顔を見合わせ微笑した後 セーリアが言う
「旧世界の宝玉の起動へ向かった ザッツロード6世陛下のお仲間の魔力者である彼女たちから 新世界の皆さんの様子は伝えられました 陛下も自分たちを心配していてくれた ヘクターやロキ、ヴェルアロンスライツァーたちの話を聞いて とても懐かしく思っていたみたいです」
ヴィクトールが微笑して言う
「うん、次は話だけでは無く 彼らの再会も叶う様 今度は我らが 旧世界の悪魔力と戦う事となる」
ザッツロードたちが頷く ヴィクトールが言う
「では その前に 少しこちらの世界の事を 教えて貰えるだろうか?この世界には ローレシア帝国の他に 国や人の住む場所は 存在し無いのか?」

ローレシア城の高台

ガルバディアの騎士たちの先頭で 異色のガルバディアの騎士が頭部装甲を収納し 遠くを見つめて言う
「これが俺ら 後住民族の 旧世界かよ…」
ローレシア帝国の周囲に結界が張られており その先は荒野と廃墟が続いている

玉座の間

ヴィクトールが玉座の間へ向かう 玉座の間にはザッツロード6世と仲間たちが居る ヴィクトールの到来に気付いたザッツロード6世がハッとして立ち上がって言う
「ヴィクトール陛下!」
ヴィクトールが玉座の間の中央付近で立ち止り 軽く笑って言う
「私はもうアバロンの王でも皇帝でも無いのだが… 久し振りだな?ザッツロード6世殿!」
ザッツロード6世がヴィクトールの前へ駆け寄って来て立ち止る ヴィクトールが一瞬、間を置いた後 苦笑して言う
「おっと失礼?そちらは ザッツロード6世皇帝陛下 なのだったね?」
ザッツロード6世が苦笑して言う
「私の場合は 新世界のローレシアの王子でも 旧世界のローレシアの皇帝でも 正直、称号だけの様に感じます それに引き換え ヴィクトール陛下は アバロンの国王陛下の時も 皇帝の帝位を譲られた今であっても やはり変わらず 私からは とても卓越された方の様に感じます」
ヴィクトールが笑顔で言う
「うん!そうだね!僕は 君が討伐しようとして 失敗した挙句に 捕まってしまった あの新世界の魔王を倒した アバロンの勇者でもあるしね?」
ザッツロード6世が衝撃を受け 落ち込んで言う
「あ、あの…  ヴィクトール陛下が あの魔王を討伐した事は 新世界から戻った仲間たちに聞きました… えっと… その… その節は新世界にて 多々の御迷惑をお掛けしまして…」
ヴィクトールが笑顔で答える
「うん!君たちがあの島の結界を破壊してくれたお陰で 我らアバロンの大剣使いヘクターの相棒である 世界一のプログラマーのデスが とっても苦労してね?アバロンも多額の資金を投じて その修復を手伝っていたんだよ?」
ザッツロード6世が衝撃を受け落ち込んで言う
「あぁ… あの、その件に付きましても その… 本当にすみませんでした…」
ヴィクトールが笑顔で言う
「うん、でもまぁ、その件については 現アバロンのウィザードを貸し与えてしまった僕にも ちょっとだけ責任があったりするんだけど あの時は丁度、バーネットとの喧嘩が最高潮の時だったものだから?僕としては、悪魔力とか魔王とか 若干どうでも良くなっちゃってて!あははっ!」
ザッツロード6世が衝撃を受けて落ち込む

玉座の間にガルバディアの騎士たちがやって来て ヴィクトールの後ろに整列する ヴィクトールが彼らを一度見てから ザッツロード6世へ向いて言う
「彼らが私と共に この旧世界を救いに来た ガルバディアの騎士たちだ 彼らの戦闘能力は 新世界にて脅威とされていた ソルベキアのロボット兵を遥かに凌ぐ 事前にこちらの世界から送られていた 機械兵の情報から算出しても その能力は十分であると確認されている そして、後に送られてくる騎士たちと合わせ 必要人数が揃い次第 私は彼らと共に この世界を救うべく 機械兵の生産場所を破壊する作戦を実行に移そうと思って …いたのだが」
ザッツロード6世が疑問して ガルバディアの騎士へ向けていた視線をヴィクトールへ戻す 皆も同様にヴィクトールへ視線を向ける ヴィクトールが言う
「こちらの世界の現状を ザッツロード7世殿と仲間たちから聞かせて貰った よって私は、後に送られてくる彼らを待つ間に 旧世界における 我らの祖国を取り戻す!」
皆が驚く 異色のガルバディアの騎士が驚きヴィクトールへ向く ヴィクトールが言う
「旧世界にも 新世界の過去に同じく ベネテクト、ソルベキアの2国を除く その他全ての国が存在していたとの事 そして、旧世界を覆った悪魔力の脅威により このローレシア帝国を除く全ての国が滅亡した しかし、国は滅ぼうとも そこに住んでいた民の一部は生き残り 彼らの末裔がこのローレシア帝国にて今も尚留まっている 私はその彼らの為にも 先ずは私の故郷と同じ名の 旧世界のアバロンから開始し、その他全ての国々を 機械兵と魔物から取り戻す!」
ザッツロード6世と仲間たちが驚く中 ヴィクトールが微笑して言う
「ザッツロード6世皇帝陛下 どうか、我らを信じ このローレシア帝国に保管されている 旧世界の宝玉を私にお預け願いたい」
ラーニャと仲間たちがザッツロード6世へ向く ヴィクトールが軽く笑みを見せて立ち去る

研究室

ヴィクトールが宝玉を受け取る 研究者がもう一つの宝玉を渡して言う
「それと… これはお前たちが旧世界の宝玉と呼んでいる宝玉の最新の物 初めてこれを作るのに有した期間は 数百年に及んだが 一度作り上げてしまえば 再現する事など造作も無い 何故なら 私はこの旧世界における 最も優れた科学者なのだからな」
研究者が自慢げに微笑する ヴィクトールが呆気にとられた後 微笑して言う
「私は 貴方に良く似た物言いをする 世界一の科学者を知っている」
研究者が呆気にとられた後 ムッとして言う
「その者が世界一であり 私より優れていると言うのなら… その宝玉は返してもらおうかっ!?」
研究者が宝玉を取り戻そうとする ヴィクトールが衝撃を受け慌てて言う
「あぁっいや、分かった!貴方こそ世界一の科学者だ!」
研究者が乱れた服装を正して言う 
「分かれば良い」
ヴィクトールがホッとする 研究者が振り返って言う
「…それと、言って置くが 材料が無いから 1つしか 再現出来なかったのであって 決して 放置されていた失敗作を 改善した訳では きっと一切無い筈だ!」
ヴィクトールが呆気にとられた後苦笑する

【 新世界 ガルバディア城 】

ガルバディアの騎士を生産している場所にて ガルバディア国王がハッと気付く プログラマーが振り返って言う
『どうかしたのか?僻み国王?』
ガルバディア国王が衝撃を受け 怒って叫ぶ
『その呼び方は止めろっ 民ナンバー34597号!』
プログラマーが衝撃を受けて言う
『わ、私は34597番目の民だったのか!?…そ、それはそうと 我らの父、民ナンバー1号は どうかしたのか?』
ガルバディア国王が鼻を擦りながら言う
『いや、ホログラムに 何故だか くしゃみのプログラムを 追加しなければ ならない様な気がした』
プログラマーが疑問する

【 旧世界 ローレシア帝国 屋外 】

ローレシア帝国の結界の境に ヴィクトールとガルバディアの騎士たちが居る ザッツロードと仲間たちが心配そうな表情で ザッツロードが言う
「この結界を抜け 新世界同様に北のデネシア方面へ向かい そこから東の関所跡を抜ければ アバロンの城が見えて来るそうです …しかし、それは今から400年近く昔の話で 今でもその様な状態であるのかは」
ヴィクトールが微笑して言う
「大丈夫だ、きっと無事に辿り着き この宝玉で結界を張ると共に 既にその中へ入り込んでいる魔物や機械兵らを殲滅させ アバロンを我らの手に取り戻し 必ず このローレシアへ戻って来る」
ソニヤが言う
「ねぇ、やっぱり私たちも行った方が…?聖魔力の結界の中でなら 機械兵は無理でも 魔物を倒せる位の魔法が使えるし」
セーリアが心配して言う
「私が居れば ヴィクトール様へ支援魔法を行えます それに、万が一お怪我をされた際にも 回復魔法を使える者が居た方が…?」
ヴィクトールが微笑して言う
「心配無い、一応回復薬は持っているし 何より私には 彼らガルバディアの騎士たちが付いている 魔物との戦いは何とでもなるし 機械兵との戦いの際には 私は 君たちを守ってあげられる程の余裕など まったく無いのだ 私自身 彼らの足手まといにならない様 戦い続けるのが精一杯でね?」
ソニヤとラナが呆気に取られる セーリアが苦笑して言う
「アバロンの勇者様のお供は 私たちには勤まりそうに無いわね?」
ザッツロードが苦笑して言う
「それに 君たちが行ってしまったら ローレシア帝国を守る 僕の仲間が居なくなってしまうよ」
ソニヤとラナが驚いてザッツロードへ向く ヴィクトールが軽く笑って言う
「うん、我々が戻るまで 今まで通り 君たちで このローレシア帝国を守って居てくれ」
ザッツロードの仲間たちが苦笑して頷く ヴィクトールが頷き 背を向け結界から出て行く ガルバディアの騎士たちがそれに続く ザッツロードと仲間たちが彼らの後ろ姿を見送る

道中

ヴィクトールが地図とコンパスを眺めながら言う
「うん、どうやら この旧世界のコンパスは 魔力や電磁波などの影響をまったく受けてはいないらしい やっぱりあの科学者殿が作った物なのだろうか?あの科学者殿と ガルバディア国王とだったら どちらが世界一なのだろう?」
ヴィクトールがガルバディアの騎士たちを見渡す ガルバディアの騎士たちは無反応に歩いている ヴィクトールが正面へ向き直って言う
「うーん… 戦力としては十分だけれど 先ずは彼らに言葉を話す事を教えないと…?バーネットも居ないし 静か過ぎて 泣きたくなってしまいそうだ…」

【 旧世界 アバロン城下町 】

ヴィクトールがアバロン城を見上げて言う
「概観は新世界とほぼ同じ そうとなれば やはり、新世界のアバロンの民は 旧世界でもアバロンの民だったのかもしれない …だとすれば 僕が救うのは当然だ!」
ヴィクトールが旧世界の宝玉を握り締めて強く願う 宝玉が光り結界が張られる ヴィクトールが周囲を見渡す 機械兵たちが現れる ヴィクトールが宝玉をしまい大剣を引抜く ガルバディアの騎士たちが両刃剣を構える ヴィクトールが大剣を握り締めて意識を集中させると 刀身に聖魔力の光りが纏う 同時にガルバディアの騎士たちが両刃剣への聖魔力を起動させる 機械兵たちが襲いかかってくる ヴィクトールが剣を向けて叫ぶ
「攻撃ーっ!」
ヴィクトールが機械兵へ向け駆け出す ガルバディアの騎士たちがそれに続いて 機械兵へ攻撃を開始する ヴィクトールが機械兵へ攻撃をするが 機械兵はヴィクトールの攻撃を回避して ヴィクトールへ武器を振るう ヴィクトールが慌ててそれを剣で受け止めるが 機械兵の力に押されてヴィクトールの剣が払われる ヴィクトールがハッとして言う
「しまった!」
機械兵がヴィクトールへ武器を振るう ヴィクトールが回避をするが 機械兵の速度が上回りヴィクトールへ向かう ヴィクトールが目を見開くと同時に 声が聞こえる
「ヴィクトールっ!!」
ヴィクトールがハッと息を飲む ヴィクトールの横に異色のガルバディアの騎士が瞬時に現れ ヴィクトールへ振るわれていた機械兵の武器を弾き飛ばし 空かさず攻撃を繰り出して機械兵を撃破する ヴィクトールが呆気に取られながら 異色のガルバディアの騎士へ向く 異色のガルバディアの騎士がヴィクトールへ向いて言う
「てめぇの力じゃ あいつ等の武器を受け止める事なんざ出来ねぇ!攻撃は払うか避けるかして てめぇは 大剣じゃなくレイピアでも持って戦っていると 思いやがれ!」
ヴィクトールが呆気に取られながら言う
「バーネット…っ!?」
異色のガルバディアの騎士が苦笑して言う
「再会の挨拶は後だ 今はお互い んな余裕はねぇぞ?」
ヴィクトールが表情を綻ばせ頷いて言う
「うん!そうだね!一気にカタを付けよう!」
ヴィクトールが弾かれた大剣を取りに向かい 再び刀身へ聖魔力を纏わせ 戦いを再開させる

最後の一体が倒される ヴィクトールが周囲を確認し 軽く息を吐いて言う
「よし、戦闘モードを警戒体勢へ戻せ」
ガルバディアの騎士たちが武器の構えを解除する ヴィクトールが大剣を鞘へ収め 周囲を確認して 異色のガルバディアの騎士の下へ駆け寄って言う
「バーネット!」
異色のガルバディアの騎士が軽く息を吐き 頭部の装甲を収納すると 髪を切ったバーネットの顔が露になる ヴィクトールが一瞬驚く バーネットが苦笑して言う
「よぉ?ずっと一緒に居たんだが こうして顔合わせるのは 久し振りだなぁ?」
ヴィクトールが泣きそうな顔で叫ぶ
「酷いよバーネット!ずっと一緒に居たんだったら!何でもっと早く教えてくれなかったのー!?僕が1人寂しく頑張ってるのを!隠れて覗いて 楽しんでたって言うのーっ!?」
ヴィクトールが涙目の膨れっ面でうったえる バーネットが苦笑して言う
「はっはー そう、怒るなって?別に隠れて楽しんでた訳じゃねぇよ?俺だって何度か言い出そうと思ったんだが… 妙にタイミングが掴めなくってよぉ?それに、流石に3日だけだと こいつらより この機械鎧に慣れてねぇもんだから ちょいと苦戦してたんだ… 生身のお前と違って 俺は、俺の大切な民たちを守れなかったら 言い訳が出来ねぇからな?」
ヴィクトールが呆気に取られた後 微笑して言う
「それじゃ、君に貸し出していた あの調査記録にあった ガルバディアの第二王子と言うのは やはり?」
バーネットが苦笑して言う
「ああ、俺の先祖ってぇ事だ ベネテクト国を作って ガルバディアの近くに移り住んだ アバロンの第二国王でもあったな」
ヴィクトールが苦笑して言う
「君がアバロンから出て行った日に 僕は書物庫に行ったんだ そうしたら 調査記録が棚に戻されていた… あれを読んでいなかったら 今、君を見ても ガルバディア国王が僕の為に作ってくれた 君のアンドロイドだと思ったかもしれない」
バーネットが軽く笑って言う
「ガルバディアは 機械の民なんて作らねぇよ?旧世界の二の舞になんか したかねぇからな?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「そうだね?旧世界の話を聞いた上で そんな危険な事はしないよね?」
バーネットが疑問して軽く笑って言う
「うん?なんだよ?それじゃぁ やっぱり俺を アンドロイドだと疑ってやがったのかぁ?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「だって、ベネテクトの民を愛する君が その民への愛を現す 髪を切ってしまっていては 少しは疑いたくもなるだろ?」
バーネットが軽く笑って言う
「まぁ、こっちの世界で 民と兵と国への裕福を願うより 先ずはその民と兵と共に暮らせる 国や世界を取り返してやらなけりゃならねぇからな?願い事はその後だ …と 言いてぇ所だが 実際の所は この鎧を動かすマイクロトランスミッターとの接触部分で 邪魔になっちまうんだよ」
ヴィクトールが軽く微笑んで言う
「それじゃ、早く その全てを取り戻して また願い事の出来る世界にしないといけないね!」
バーネットが笑んで言う
「はっはー そうだなぁ?それじゃ早速 この旧世界のアバロンを取り戻すぜ!」
ヴィクトールが頷いて言う
「うん、まずは城下の町を取り戻し そして、アバロン城を取り戻す!」
ヴィクトールとバーネットがアバロン城を見上げる

【 ローレシア城 】

ソニヤが地図に印を付け 笑顔で言う
「すっごーい!たった6週間の間に アバロン、ガルバディア、カイッズ、ローゼント、ツヴァイザー、スプローニ、シュレイザー、デネシア 8カ国の城下町とお城を ぜーんぶ取り戻しちゃったー!」
セーリアが微笑して言う
「廃墟になっている分 周囲の機械兵たちの種類が古かったり 数も少なかったと言う事もあるけれど このローレシア帝国に避難していた 各国の民たちの祖国を 全て奪還してあげるだなんて やっぱりアバロンの王様は 友情と慈愛の王様なのね」
ラナが苦笑して言う
「だけど、いくら何でも このローレシアから一番遠い シュレイザーまで取り返しに行くだなんて ちょっと自信過剰なんじゃない?」
ザッツロードが苦笑して言う
「だけど、実際にやり遂げて 無事に帰還したんだ 彼らなら 本当に機械兵たちの住処である 機械兵のファクトリーへ乗り込み 施設を破壊した上で 帰還する事も可能なのかもしれない」
ソニヤが苦笑して言う
「確かに、ここまで来ると やってのけちゃいそうな気もするけど~ そのガルバディアの騎士様たちの食欲のせいで 旧世界が救われた時には このローレシアの食料が尽きちゃいそうよ?」
ザッツロードが苦笑して言う
「う、うん… それは確かに」
セーリアが苦笑して言う
「でも、そうならない為に 取り戻した各国の城下町には たくさんの食物の種を蒔いておいてくれているから 旧世界が救われて ローレシアの食料が尽きてしまった時には その各国から 食糧支援をしてもらったら良いんじゃないかしら?」
ラナが呆れて言う
「旧世界を救ったローレシア帝国が 各国から食料支援を してもらうだなんて…」
ザッツロードが苦笑して言う
「でも、このままでは 本当にそうなってしまいそうだから 各国の民には今の内に 僕からお願いをして置いた方が良いの…かな?」
ソニヤが呆れて言う
「ローレシアの3代目勇者と仲間たちなのに~」
ザッツロードとセーリアが苦笑する ソニヤとラナが溜め息を付く

食堂

ガルバディアの騎士たちが食料を手掴みでガッついている 中には食器を食べようとする者も居る ヴィクトールが苦笑してそれを眺めてから 自分の前の席で彼らとは違い普通にナイフとフォークを使い食事をとっているバーネットへ言う
「彼らには言葉を話す事を教えないといけないけど ナイフとフォークの使い方も教えなければ いけないみたいだね?」
バーネットが食事の合間に言う
「今は戦いの事だけで一杯一杯なんだ 教えるんなら必要最低限の言葉と 食える物なのか食え無い物なのかを 覚えさせるくれぇにしとかねぇと 一度に大人数のガキを躾けるなんて難しいぜ?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「それもそうかもしれないが… そう言えば 彼らには名前も付けてあげないと可愛そうだ 僕は彼らの父親代わりでもある訳だし… ああ、でも?君のガルバディアの民でもあるんだよね?えっとぉ…?」
ヴィクトールが悩む バーネットが食事の合間に言う
「総勢398人に 1人1人名前を考える気かぁてめぇは?ガルバディアの民なんだから この際デス1世から398世にでもしたらどうだ?それか、てめぇが親なら ヴィクトール15世から412世ってぇ事になるなぁ?」
ヴィクトールが衝撃を受けてから苦笑して言う
「ヴィクトール412世は凄いな… でも、ヴィクトールは新世界のアバロンの王の名前だから きっと新世界に残してきたヴィクトール14世が後の世に引き継いで行くよ」
バーネットが食事の合間に言う
「なら無難にデス1世から398世だ けどてめぇ あいつらのどいつが1世でどいつが150世なのか 見分けが付くのかよ?」
ヴィクトールが軽く衝撃を受け 困って言う
「それは… そうだね、それじゃ この際みんな見分けが付く様に 何か印を付けるとか?」
バーネットが言う
「何にしても、先ずは 次の転送で送られてくる奴らと一緒に 機械兵のファクトリーをぶっ壊しに行くのが先だぜ 今までの町や城を取り返す事とは違って ファクトリーの周囲には 最新の機械兵たちが ごっそり居やがるんだ 今までみてぇに無傷で帰って来るのは きっと難しくなる」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 視線を落としてから ガルバディアの騎士たちを見る ヴィクトールがバーネットへ視線を戻して言う
「彼らの中には 言葉を話す事も出来ない内に その命を失ってしまう者も 居るかもしれないのか…」
バーネットが言う
「それでもあいつらは 自分らの主であるてめぇを守ろうとする だから、てめぇも あいつらの足を引っ張らねぇ様に精々気を付けろよ? …まぁ、てめぇを守ってやるのは俺の仕事でもあるんだ 俺も精々気を付けなけりゃ いけねぇけどな?」
バーネットが苦笑する ヴィクトールが軽く苦笑してから言う
「うん、気を付けるよ 僕は 彼らと一緒に再び新世界へ戻って… 今度は彼らに アバロンの美味しい料理を たくさん食べさせてあげないと!」
バーネットが苦笑して言う
「旧世界もアバロンが帝国だったらなぁ?もっとマシな料理にあり付けたのによぉ?」
ヴィクトールが苦笑する

ローレシア城内 通路

ヴィクトールがバルコニーへ出る バルコニーの手すりに手を置き 城下町の様子を眺める ヴィクトールの足元に猫が通る ヴィクトールが一瞬驚き猫を見て微笑して猫の行く先を見守る ヴィクトールの見ている猫が ガルバディアの騎士の前を行く ヴィクトールがガルバディアの騎士の存在に一瞬驚いた後 ガルバディアの騎士が猫を見ている事に微笑み眺める ガルバディアの騎士が無表情に猫を見つめ 猫を抱き上げる ヴィクトールが微笑んで眺めていると ガルバディアの騎士が猫を食べようとする ヴィクトールが衝撃を受け 慌てて駆け向かって叫ぶ
「ダメーっ!!」
ガルバディアの騎士が驚いて目を丸くする 猫が慌てて逃げ出す ヴィクトールが猫の無事にホッと息を吐く ガルバディアの騎士が呆気に取られたままヴィクトールの顔を見つめる ヴィクトールが苦笑して言う
「あの猫は食べちゃダメだ 分かったかい?」
ガルバディアの騎士がヴィクトールを見つめたまま頷く ヴィクトールが軽く笑い頭を撫でて言う
「よし、良い子だ」
ガルバディアの騎士が不思議そうな表情でヴィクトールを見つめる

ローレシア城内 客室

バーネットが地図を見て言う
「こっちの旧世界の移動魔法を制御している場所は2箇所 片方はこのローレシア帝国から北東の ガルバディアより北にある この位置だ」
バーネットがガルバディア国の上部の位置に印を付ける バーネットが言う
「もう1箇所が 新世界で言う所の ソイッド村付近 …ここだ」
バーネットがソイッド村の位置に印を付ける ヴィクトールが頷いて言う
「では最初に ソイッド村付近の施設へ向かおう 悪魔力の噴出場所からギリギリの範囲になるが 逆に言えば 今の内で無ければ 後々手出しが出来ないほどに 悪魔力の濃度が上がってしまう事も考えられる」
バーネットが頷いて言う
「だなぁ よし、もうすぐ 最後の騎士たちが送られて来る そいつらを含めて 早速作戦開始と行くぜ!」
ヴィクトールが頷く

【 旧世界 ソイッド村 】

ヴィクトールとガルバディア騎士団が身を潜め視線を向けている先に 移動魔法の制御施設がある バーネットがヴィクトールの横へ来て言う
「ここからじゃぁ施設が見えるってぇだけで その中や周囲の様子は分からねぇ… どれだけの数の魔物や機械兵が潜んでやがるかもな… どうする?」
ヴィクトールが微笑して言う
「もちろん、アバロン式で!」
バーネットが苦笑して言う
「だろうなぁ?…たく、正々堂々と正面から行くなんざ まったく作戦も何もあったもんじゃねぇと思っていたが 敵の数も内部構造も 何にも分からねぇ時には 一番の安全策か」
ヴィクトールが頷いてから言う
「うん それに、例え何か策があったとしても 細かい作戦を理解出来るほど 彼らは成長してはいないんだ」
ヴィクトールが苦笑する バーネットが一瞬呆気に取られた後 軽く息を吐いて言う
「…だなぁ?」

ヴィクトールが旧世界の宝玉に意識を集中させ ソイッド村周囲に結界を張る

施設内外に居る機械兵が異変に気付き 周囲を伺う ヴィクトールが大剣を引抜き構える ガルバディアの騎士たちがそれに倣い ヴィクトールが刀身に聖魔力を灯すと ガルバディアの騎士たちが同様にする ヴィクトールが気を引き締め 剣先を向けて叫ぶ
「我らの敵を討ち!この施設を守れ!攻撃ーっ!」
ヴィクトールが駆け出す ガルバディアの騎士たちが戦闘を開始する

施設内

ヴィクトールが周囲を確認して言う
「よし!戦闘モードを警戒態勢へ」
ガルバディアの騎士たちが構えを解いて周囲を警戒する ヴィクトールがその様子に微笑した後 振り返って 機械を操作しているバーネットへ問う
「バーネット、どう?使えそうなのかい?」
バーネットが操作をしながら言う
「ああ、多少の違いはあるが 新世界の設備とほとんど同じだ …少し古いけどな」
ヴィクトールが微笑して言う
「良かった、移動魔法が使え無いとなると 今後の作戦に支障をきたす所だったからね?」
バーネットが操作をしながら言う
「だなぁ、最悪 機械兵のファクトリーにまで 正面から突っ込んで更に引き返さなけりゃならねぇ所だった いくら各国の奪還作戦で あいつ等の戦力が上がったと言った所で 機械兵が次々沸いて来るファクトリーでその作戦じゃぁ 正直 新世界のガルバディアへ 騎士の追加依頼をしなきゃぁならねぇ所だった」
ヴィクトールが表情を悲しませて言う
「うん… 最悪その可能性は 今後も否定は出来無いけれど 出来る限り今の騎士たちだけで 終わらせたい」
バーネットが操作を終えて言う
「よし、これで移動魔法の制御設備 ソイッド村のモンは完了だ まさか本当にソイッド村のど真ん中にありやがるとは 来て見てびっくりだった訳だが ローレシア帝国に住む ソイッド村の末裔どもには 良い土産話になったな?」
バーネットがヴィクトールへ向く ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 微笑んで言う
「うん!城下町ではないながらも この村はこれで宝玉に守られる ローレシアへ戻って 彼らに伝えてあげよう!きっと喜ぶ筈だ!」

【 ローレシア城 食堂 】

ガルバディアの騎士たちが食料を手掴みでガッついている 中には食器を食べようとする者も居る ヴィクトールが呆気に取られ苦笑して 顔を向けないままに 自分の前の席で食事をとっているであろうバーネットへ言う
「いつも思うのだけど 彼らの食欲には驚かされるよ アバロンの民も他国の者と比較すると 大食いの早食いだと思うのだけど 彼らの場合は そんなアバロンの民も顔負けだ バーネットもそう思うだろ?…て あれ?」
ヴィクトールが視線をバーネットへ向けて呆気に取られる バーネットが通常よりがつがつ食事を食べている ヴィクトールが疑問して言う
「バーネット… 君はどちらかと言うと 余り食べない人だと思っていたのだけど…?もしかして?…ローレシアの料理が そんなに気に入ったのかい?」
バーネットが食事の合間に答える
「誰がローレシアの味のねぇ料理なんざ気に入るかってぇんだ こちとら 美食の国アバロンの友好国だったり相棒国だったり第二皇帝だった奴だぞ?」
ヴィクトールが衝撃を受け 苦笑して言う
「う、うん、そうだよね?それで… それら3つの称号を持つ君が どうしてそんなに?ベネテクトの料理も アバロンに近い物が多いし 提供して貰っておいて言うのは失礼だけど このローレシアの料理は それほどたくさん食べたいと 思えるものでは…」
ヴィクトールが首を傾げる バーネットがひと段落させて言う
「あの機械鎧を使って戦う時には 通常の状態より何倍もの速さで動く事になるんだぜ?それだけ動けば 着ている奴の体力も消費されるってもんだ」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「なるほど、それじゃ 一戦終えた後には お腹も空く訳だね?」
ヴィクトールが笑顔でガルバディアの騎士たちへ視線を向ける ガルバディアの騎士の2人が同時に同じパンを手に取る 2人が衝撃を受け顔を見合わせる ヴィクトールが一瞬驚いた後見守る ガルバディアの騎士2人がしばらく考えた後 2人とも同時に手を離し 間を置いて再び同時に手に取る  2人が衝撃を受け困る ヴィクトールが呆気にとられた後軽く笑い 席を立って2人のもとへ行く 2人がヴィクトールの到来にハッとして  2人とも同時に手を離し パンがテーブルへ落ちる ヴィクトールが微笑して言う
「こう言う時は こうしたら良いんだ」
ヴィクトールがパンを2つに割って2人に与える2人が呆気にとられた後 顔を見合わせ笑顔で食べ始める ヴィクトールがその様子に微笑む

別室

ソニヤがソファに座りリラックスして地図を見ながら言う
「次にヴィクトール様たちが行くのって ガルバディアよりも北にある 移動魔法の施設よね?」
ソニヤから遠い位置に居るラナが答える
「そうでしょうね?2箇所の内の片方が終ったのだから 次はもう片方の その場所に行くに決まっているじゃない」
ソニヤが自身の前のテーブルに置いてある山積みのクッキーから一枚取り 口に運びながら言う
「この場所って私たちの住んでいた新世界では ガルバディアの北にあった高山のせいで行けなかった辺りになるって思わない?」
ラナが言う
「だから何だって言うのよ」
ソニヤが手に持っていたクッキーを食べ終えて言う
「こっちの世界から新世界へ向かった私たちのご先祖様が、新世界の同じ場所に自分たちの祖国と同じ国を作ったんだったら このガルバディアの北にある国って…」
ソニヤが地図を見ながら言いつつテーブルへ手を伸ばし クッキーを探すが その手が何度も空を摘まむ ソニヤが疑問して 地図から目を離してテーブルへ向け 空っぽのクッキーの皿を見て目を丸くする そのまま視線を上げると ガルバディアの騎士がクッキーを食べ終えソニヤの視線に顔を上げる ソニヤが呆気に取られつつその視野を広げると 何人ものガルバディアの騎士がクッキーを食べ終えた様子で眺めている ソニヤが彼らに自分のクッキーを全て食べられた事を悟り 一瞬間を置いた後 叫ぶ
「こぉおらぁああーーッ!!」
ガルバディアの騎士たちが顔だけで驚く ガルバディアの騎士の2人が空っぽのクッキーの皿に残っていたクッキーのかけらを見つけ 2人で同時に手に取り衝撃を受けた後 間を置いて2つに分けて食べる

寝室

ガルバディアの騎士たちが眠っている ヴィクトールがそれを眺め微笑した後 振り返ってバーネットへ言う
「いっぱい動いた分 いっぱい食べて いっぱい寝る… なんだかちょっと可愛いね?」
バーネットが地図を見ながら言う
「あんな馬鹿強ぇえ戦闘力を持ってたって あいつらは ついこの前生まれたばかりのガキなんだ そら可愛くも見えるだろうよ?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「ガルバディアの科学力で体は大人と同じ大きさと体力に成長させられているけど 心はそのままなのかもしれない そんな彼らを戦わせるなんて 僕の選択はやはり間違っていたのだろうか…?」
バーネットが視線を向けないままに言う
「確かに人道的には反しちゃいるが それでもあいつらは この作戦が無ければ 生まれて来なかった命だ だが、俺は そのあいつらを ただ戦わせて死なせるなんて事はしたくねぇ 俺はあいつらと共に戦って生き残る それだけだ」
ヴィクトールが呆気にとられた後 微笑して言う
「そうだね、生き残れば良いんだ… 今は戦わなければいけない時だけど この戦いが終わって 旧世界を人の手に取り戻す事が出来れば その後は彼らと共に 平和な世界で生きていける… 彼ら1人1人に名前を付けたり 言葉の話し方を教えたり フォークとナイフの使い方も教えられる」
バーネットが見ていた地図をテーブルに投げてから言う
「…それと、あいつらはてめぇと共に戦える事を 喜びだと感じる様 頭に叩き込まれてるんだ だったら今、てめぇのやるべき事だって分かるだろ?」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 真剣な表情で言う
「うん、分かっている だから僕は 自分が足手纏いなのだと分かっていても 彼らと共に行き 戦わなければならないんだ」
ヴィクトールがガルバディアの騎士たちを見る 見える範囲の1人1人を見つめてから 言いながらバーネットへ向く
「それで、明日向かう 移動魔法の制御施設での作戦なのだけど 近くに機械兵のファクトリーがあるから 今回は…」
ヴィクトールが言葉を止め バーネットを確認する バーネットは寝息を立てている ヴィクトールがその様子に苦笑して言う
「民と共に戦い 民と共に喜ぶ… ベネテクトの王は 民と共にお休み中なんだね?」

【 旧世界 ローンルーズ 】

ヴィクトールが周囲を確認してから安全圏まで戻って来て ガルバディアの騎士たちへ言う
「あの移動魔法の制御施設には 近くにある機械兵のファクトリーから 新型の機械兵が来ている筈だ 今までに戦った事の無い 強い機械兵が居る可能性がある 皆、十分に気を付けて!」
ガルバディアの騎士たちがヴィクトールを見つめていた状態から 周囲の仲間と顔を見合わせ首を傾げる ヴィクトールが衝撃を受けて言う
「え!?あ… えっと…?僕は 何か難しい事を言ったかな?」
ヴィクトールがバーネットへ向く バーネットが苦笑して言う
「あいつらは ただ、お前と一緒に戦って勝つって事しか分からねぇんだよ でもって、『強いも弱い』も『気を付けろ』も何も無く 常に全力で戦ってんだ」
ヴィクトールが軽く笑って言う
「そうか 分かった… それじゃ 皆!いつも通りっ 全力で戦う様に!」
ガルバディアの騎士たちが武器を掲げる

ヴィクトールが宝玉に意識を集中し 周囲に結界を張る

設備の内外に居た機械兵が異常に気付き 周囲を確認する ヴィクトールが大剣を引抜き聖魔力を纏わせて叫ぶ
「我らの敵を討ち!施設を守れ!攻撃ーっ!」
ヴィクトールが駆け出すと同時に ガルバディアの騎士たちが戦闘を開始する

施設前

周囲の機械兵が次々にガルバディアの騎士たちに倒されて行く ヴィクトールが機械兵の攻撃を一度払い斬り付けた所へ 後方から現れたガルバディアの騎士がとどめを刺す ヴィクトールが軽く笑み言う
「良いぞ!その調子だ!」
ガルバディアの騎士が一度ヴィクトールへ向いて頷き 次の目標へ向かって行く ヴィクトールが施設外部の敵の殲滅を確認して言う
「次は施設内の敵を討て!」
ヴィクトールが施設の入り口へ向かう ガルバディアの騎士たちが向かい 先頭に立った騎士が施設の入り口を破壊する 施設内から機械兵が現れ攻撃する ガルバディアの騎士たちがそれを回避してから 攻撃に移る ヴィクトールが入り口に辿り着くと 既に進入経路が確保されている ヴィクトールが周囲を確認しつつ施設内へ駆け込む

施設内

ヴィクトールが各通路の制圧を1つずつ確認しながら最深部へ向かう 最深部では今も機械兵とガルバディアの騎士たちとの戦いが行われている ヴィクトールがそれを見て気を引き締めて言う
「よし!」
ヴィクトールが剣を握り直して皆の下へ向かおうとするが 通路の中で動く物の気配を感じ 足を止めて振り向く 倒された機械兵の下から魔物が現れヴィクトールへ襲いかかる ヴィクトールがハッとして魔物の攻撃を払い除け 返す刃で魔物を倒す ヴィクトールが微笑して言う
「機械兵には敵わないけど 魔物に負けるつもりは無い 僕は最強の剣士の国 アバロンの大剣使いなんだ」 
ヴィクトールが最深部へ向き直り駆け向かう

施設最奥

ヴィクトールが到着して見渡す ガルバディアの騎士たちが最後の機械兵を倒し終えている バーネットが施設の機械の確認を開始する ヴィクトールが辺りを見渡しながら近付きバーネットへ問う
「バーネット、どう?装置の方は問題ないかい?」
バーネットが表情を渋らせて言う
「いや、問題ありって奴だ 何箇所か破損している箇所がありやがる こいつぁローレシアに居る技術者でも連れて来て 直させねぇと使えそうにねぇな?」
バーネットが溜め息と共に作業を止め ヴィクトールへ振り向いてから疑問して言う
「うん?どうした?何で騎士たちの構えを解除させねぇ?もうとっくに制圧してんだろ?」
ヴィクトールが周囲を見渡しながら言う
「うん… 何と言うか さっき奇襲を掛けられたせいなのかもしれないけど… 何か 安定しない感じが…?」
バーネットが呆気に取られ疑問して言う
「安定しねぇ感じ?…あぁ、そらきっと この施設の設備に不具合が あるからなんじゃねぇのか?機械の不具合が感覚で分かるたぁ 相変わらずアバロンの民の『何となくそんな気がする』ってぇ 感覚には驚かされるぜぇ」
バーネットが苦笑して歩き出して言う
「それじゃ、早速ローレシアへ戻って 技術者を連れて来て直させりゃ良い もしかしたら その修理の完成度まで てめぇの感覚で分かったりしてな?」
バーネットが軽く笑ってヴィクトールの横を過ぎた瞬間 倒れていた機械兵が再起動してヴィクトールへ武器を振り下ろす ガルバディアの騎士たちが瞬時に駆け出し機械兵へ攻撃を行うが ヴィクトールの前へ向かったガルバディアの騎士が 機械兵の攻撃を受け床へ叩き付けられる ヴィクトールが息を飲み慌てて駆け付けて言う
「…っ!大丈夫かっ!?落ち着いて…っ!鎧を外せ!」
ガルバディアの騎士から機械鎧が外れる ガルバディアの騎士が自分の身に起きた事態を理解出来ず怯えた表情でヴィクトールへ向く ヴィクトールが回復薬を取り出し飲ませながら言う
「大丈夫だからっ さぁ、ゆっくり…っ これを飲むんだ!」
ガルバディアの騎士がヴィクトールの指示に従う ヴィクトールが微笑を見せて言う
「怖かっただろう?でも、これでもう命の心配は無いから 安心して 怪我の治療はローレシアで魔力使いの者にしてもらう それまでは 痛いだろうけど我慢してくれ」
ガルバディアの騎士が呆気に取られた後 ヴィクトールの表情を見て落ち着く バーネットが安堵の息を吐いた後 ガルバディアの騎士たちへ言う
「動ける奴らは もう一度周囲を確認して来やがれ」
ガルバディアの騎士たちが頷き確認へ向かう ヴィクトールが怪我をしたガルバディアの騎士の傷口を布で縛る バーネットがやって来て言う
「怪我の治療は あの魔力使いどもに任せりゃ良いが その機械鎧の修理には ちょいと時間が掛かっちまうかも しれねぇなぁ」
バーネットが怪我をしたガルバディアの騎士へ一度微笑を向けた後 彼の機械鎧の様子を確認する ヴィクトールが気を取り戻し 苦笑して言う
「うん、しかし どの道この施設の修理を終えるまでは 機械兵のファクトリーを破壊する作戦は決行出来ないんだ その間に機械鎧の修理をしてもらえば丁度良いんじゃないかな?」
バーネットが頷いて言う
「ああ、そうだな 戦力は1人だって多いに越した事はねぇ そいつの鎧の修理が設備の修理より遅れる様だったら 多少待つぐれぇで行くか?」
ヴィクトールが微笑して言う
「うん、それに 彼にも少し 時間を与えた方が良い筈だ」
ヴィクトールが怪我をしたガルバディアの騎士へ向き微笑して彼の頭を撫でる ガルバディアの騎士が呆気に取られている ヴィクトールが苦笑する

【 ローレシア城 治療室 】

怪我をしたガルバディアの騎士へソニヤとセーリアが回復魔法を施している ガルバディアの騎士が痛そうな表情で耐える 治療が終ると不思議そうな表情で首を傾げる ソニヤとセーリアが顔を見合わせ軽く笑ってから ソニヤが言う
「ほら?これで痛く無くなったでしょ?」
ガルバディアの騎士がソニヤへ向いて不思議そうに眺める セーリアが微笑んで言う
「もう怪我は治ったから 大丈夫よ?」
ガルバディアの騎士がセーリアへ向いた後 理解した様子で寝台から降りる ソニヤとセーリアが顔を見合わせ軽く笑った後 ソニヤがハッと思い出して言う
「あ!それから!今後2度と 私のクッキーは食べない事!」
ガルバディアの騎士とセーリアが呆気に取られる ガルバディアの騎士が間を置いた後首を傾げる ソニヤが衝撃を受け怒って言う
「私には!あんたがあの時 私のクッキーを食べてたメンバーの1人だって 分かってるんだからね!いい!?今後は ぜーったい!私のクッキーは食べちゃダメなのよ!?」
ガルバディアの騎士が首を傾げる ソニヤが怒って言う
「もぉお~!」
セーリアが苦笑して言う
「まぁまぁ?ソニヤ、バーネット様が言ってたじゃない?彼らはヴィクトール様かバーネット様の言う事しか 聞かない様に教えられているんだって?」
ソニヤが怒って言う
「もぉ!それじゃ!その2人のどっちかに言ってくる!あのクッキーはキャリトールの町の魔力混入特製クッキーなのよ!?いっぱい食べれば 魔力の無い人だって魔法が使えちゃう可能性もあるって言う程の!」
セーリアが苦笑して言う
「でも、実際は防腐用の魔力が掛けられているだけで あのクッキーを食べてもその人の魔力は上がらないって話を聞いたけれど?」
ソニヤが衝撃を受けて言う
「え!?そ、そうだったの…?」
セーリアが苦笑して言う
「それでもソニヤはあんなに美味しく無いクッキーを食べられるのだから 言わないで居た方が良かったかしら?」
ソニヤが慌てて言う
「そ、それはきっと 何かの間違えよ!あればキャリトールの特製品なのよ!?現に、このガルバディアの騎士の体には あのクッキーの魔力が残ってたじゃない!?」
セーリアが苦笑して言う
「防腐用魔力は あまり体に取り入れない方が良いから やっぱりソニヤも食べるのを止めた方が 良いかもしれないわね?」
ソニヤが衝撃を受け怒って言う
「もぉお~~!!」
ガルバディアの騎士が疑問する セーリアが微笑んで言う
「さぁ、ヴィクトール様がとっても心配していらしたから 元気になった姿を見せに行くと良いわ?」
ガルバディアの騎士がセーリアへ向いて頷き 走って出て行く ソニヤとセーリアがその様子に微笑んだ後 ソニヤが衝撃を受け怒って叫ぶ 
「ちょっと!?なんで あいつ セーリアの言う事に従うのよっ!?」
セーリアが呆気にとられた後 微笑して言う
「私の言う事に従ったのでは無くて きっと彼を心配してくれているヴィクトール様に 早く会いたかったのでしょ?」

城内 通路

ガルバディアの騎士が走って来る ヴィクトールが足音に気付いて振り返った前に ガルバディアの騎士が立つ ヴィクトールが騎士の腕に 布が縛り付けられている事に気付き微笑んで言う
「ああ、怪我の治療が終ったんだね?元気になって良かった」
ガルバディアの騎士が一瞬、間を置いた後 微笑む ヴィクトールが軽く笑顔を見せて言う
「僕に知らせに来てくれたのかい?ありがとう、良い子だ」
ヴィクトールがガルバディアの騎士の頭を撫でる ガルバディアの騎士が一瞬驚いた後、笑顔を見せる ヴィクトールが軽く笑うと 次の瞬間 ハッと気付いて顔を上げる 視線の先に沢山のガルバディアの騎士が 羨ましそうに眺めている ヴィクトールが驚いて言う
「えぇえっ!?」

城内 寝室

バーネットが軽く笑って言う
「はっはー 通りで食堂に来ねぇと思ったら それで てめぇは398人分の頭を撫でてやがったってぇ事か?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「彼らは皆 兄弟みたいなものだろ?だから、1人だけの頭を撫でては 良く無いと思って?」
バーネットが苦笑して言う
「だからってなぁ?あいつらの見分けなんか付かねぇんだから いつの間にか一度撫でた奴まで もう一度撫でちまって いつまでたっても終らねぇなんて事にも なりかねねぇなぁ?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「実は、その事に気付いた時には 既にそうなってしまっていて 慌てて1人2回までにする様にって指示を出したんだ」
バーネットが呆気にとられた後、爆笑する ヴィクトールが表情を困らせて言う
「笑わないでくれよ… それに、彼らには実際 頭を撫でるくらいじゃ足りないくらいの恩があるのだし あんなに嬉しそうにしてくれるなら これからは一戦終えた後の 御褒美にしようかと 考えていた所なんだよ?」
ヴィクトールが微笑する バーネットが苦笑して言う
「まぁ、それならそうで良いんじゃねぇか?あいつらだって 何もねぇよりは褒美でもあった方が 気分が良いかもしれねぇ …もっとも、てめぇと勝利を上げる事が 一番の喜びだって 教えられてるんだろうけどな?」
ヴィクトールが苦笑した後 気を取り直して言う
「それで、彼の破損した機械鎧の修理の方はどうだったの?」
バーネットが微笑して言う
「ああ、装甲部分が壊れただけで 問題ねぇってよ?2、3日で直るって話だ」
ヴィクトールが微笑して言う
「それは良かった では、明日 移動魔法の制御施設へ 技術者を連れて向かう間 彼は1人で このローレシア城に お留守番だね?」
バーネットが苦笑して言う
「ちゃんと留守番してろって言っとかねぇと 混乱しちまうかもしれねぇからな?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「その前に 留守番って事の意味が 分かってくれると良いのだけど?」

翌日

機械鎧を身に付けていない1人のガルバディアの騎士へ ヴィクトールが言う
「良いかい?君の鎧は今、修理中なんだ 修理が終るまでは 君は戦えない だから、その間は このローレシア帝国の結界の中から 出てはいけないんだ 分かったかい?」
ガルバディアの騎士が不思議そうにヴィクトールを眺めた後頷く ヴィクトールが微笑して言う
「よし、良い子だ」
ヴィクトールがガルバディアの騎士の頭を撫でる ガルバディアの騎士が驚く ヴィクトールの後方に居る 機械鎧を装着したガルバディアの騎士たちが羨ましがる ヴィクトールがハッとする バーネットが苦笑する

【 旧世界 ローンルーズ 施設内 】

技術者達が移動魔法の制御施設を修理している ヴィクトールが周囲を確認してから施設の外へ出る

施設外

ヴィクトールが遠くに見える機械兵ファクトリーを見ながら バーネットの近くへ行って言う
「移動魔法が使える様になったら 最初の目標は あのファクトリーにした方が良いかもしれない」
バーネットが言う
「ああ、あのファクトリーは この施設に近けぇからな?宝玉の力で結界を張ってはいるが 大量の機械兵が押し寄せたりしたら その結界も壊されっちまう可能性がある」
ヴィクトールが頷いて言う
「うん それと、昨日この周囲の機械兵や魔物を一掃したのに 今日も思っていたより多くの機械兵や魔物が周辺に居た ソイッド村の施設と共に 移動魔法の施設は定期的に 周囲のそれらを処理した方が良いみたいだ」
バーネットが頷いて言う
「だなぁ?いざ ぶっ壊したファクトリーから逃げ出そうってぇ時に 移動魔法が使えなかったりしたら 最悪全滅って事もあり得るからな」
ヴィクトールとバーネットが 遠くの機械兵ファクトリーを見つめる

【 ローレシア城 城門前 】

ヴィクトールがガルバディアの騎士たちへ向かって言う
「今日の任務は終了だ 明日からはファクトリーへの攻撃を開始する事になる 明日からも今までと同じ様に 全力で戦う様に!」
ガルバディアの騎士たちが武器を掲げる ヴィクトールが微笑する

城内 食堂

ガルバディアの騎士たちが手掴みで食事をする 食器を食べる事はしなくなっている ヴィクトールがその様子を見て言う
「彼らもどうやら 食べられる物とそうでは無い物の違いが 分かる様になったみたいだ 正直その違いを教える方法は どうしたら良いものかと思っていたのだけど 必要は無かったみたいだね?」
バーネットが食事の合間に言う
「その代わり このローレシア城の備品のほとんどに あいつらの歯型が付いちまったけどなぁ?」
ヴィクトールが衝撃を受け 苦笑して言う
「う、うん… まぁこの際だから ザッツロード皇帝陛下には 大目に見て頂くという事で」
バーネットが軽く笑って言う
「どちらかといえば そのザッツロード皇帝陛下殿よりも ラーニャ皇帝妃殿下殿の方が お怒りの様だぜぇ?お気に入りの絵画が食われちまったってよぉ?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「あ、ああ… あの絵は実に美味しそうな果実の絵だったからね?何でもキャリトールの町にしか自生して居ない 植物の果実なのだとか?」
ヴィクトールが気を取り直して言う
「所で、あの破損した機械鎧が たったの1日で修理が完了したと言うのには驚いたよ 確か2、3日掛かるって言ってたよね?」
バーネットが軽く笑って言う
「ああ、なんでも 俺たちが居ねぇ間 あの留守番だったガルバディアの騎士が それこそじーっと鎧の修理を見つめて居たんだってよ?お陰で修理を担当していた あの科学者も 休憩も何も無く 作業に没頭するしかなかったとかで 気付いた時には丸々1日間 作業に勤しんじまっていたらしい」
ヴィクトールが呆気にとられた後 軽く笑って言う
「それは… 科学者殿には申し訳無い事をしてしまったね?けど、あの騎士は 怪我を負った事に対して とても怯えていたから 僕は彼が鎧の修理が終わる事を望まないのかと思ったのだけど… そんな僕とは違って彼はとても強い心の持ち主みたいだ」
バーネットが少し考えて言う
「そう言う考え方も あるかもしれねぇが 俺としちゃぁ あいつはこの城に1人残されちまう事の方が 嫌だったんじゃねぇかと思ったぜ?」
ヴィクトールが一瞬驚いた後 苦笑して言う
「なるほど、そうかもしれない… 彼らは皆 常に一緒に居るし 1人だけ置き去りにされてしまうのは 寂しかったのかもしれないね?」
ヴィクトールが騎士たちを見る 騎士たちの内の2人が同時に同じパンを手に取る 2人が驚き顔を見合わせ 同時に手を離し 再び同時に手に取って困る 隣に居た騎士が2人の様子を見る 2人の騎士が同時に手を離しパンが落ちると 見ていた騎士が手に取り 2つに割って2人に渡す 2人が衝撃を受けた後 それを受け取り笑顔で食べる ヴィクトールがその様子に呆気にとられた後 微笑む

城内 通路

ヴィクトールが通路を歩いていて 過ぎ様に窓の外のバルコニーへ視線を向ける バルコニーにガルバディアの騎士と猫が居る ヴィクトールがハッとして足を止める ガルバディアの騎士が猫を抱き上げる ヴィクトールが衝撃を受け表情を困らせて言う
「あっ!えっと… ど、どうしよう?この前の子だろうか…っ?」 
ヴィクトールが周囲を確認する 同じ顔のガルバディアの騎士たちが数人通り過ぎる ヴィクトールがどうしようかと右往左往している間に 猫を抱き上げているガルバディアの騎士が間を置いて猫を食べようとする ヴィクトールが慌てて叫び掛ける
「あぁああーーっ!」
ヴィクトールが向かおうとした時 ガルバディアの騎士の1人が少し声を荒げて言う
「ダメーっ」
ヴィクトールが驚き足を止め声の方へ向く 1人のガルバディアの騎士が 猫を持つ騎士のもとへ駆け向かって言う
「ダ… メ… ダメ… ダーメー」
猫を持ったガルバディアの騎士が疑問し首を傾げる ヴィクトールが呆気に取られた状態から笑顔になり 2人の下へ向かう 2人の騎士がヴィクトールへ向く ヴィクトールが微笑んで言う
「うん、そうだよ その猫は食べちゃダメなんだ」
ヴィクトールがダメと言った騎士の頭を撫でる 猫を持った騎士が驚き 猫へ視線を向ける 猫が逃れようと暴れ出す ヴィクトールが声を掛けようとした瞬間 猫を持つ騎士の頬に暴れる猫の爪が掠り 騎士が痛みに驚いて手を離す 猫が逃げて行く ヴィクトールが呆気にとられた後 気を取り直して言う
「あ、大丈夫かい?ちょっと痛かっ…」
ヴィクトールが言いながら傷ついた騎士に近づくと 呆気に取られていた騎士がぼろぼろ涙を流し出す ヴィクトールが衝撃を受け思わず叫んで言う
「えぇええっ!?あ!?えっと!?い、痛かったね?けど そのっ だ、大丈夫だよ?ほんのかすり傷だからね?ほ、ほらっ?これでも張っておいたらっ」
騎士が黙って泣き続ける ヴィクトールが言いながら 騎士の頬の怪我にテープを張り 誤魔化す様に微笑して騎士の頭を撫でながら言う
「ほら?これで もう 大丈夫だからね?泣かない 泣かない」
騎士が呆気にとられた後 ヴィクトールへ向き微笑する ヴィクトールが苦笑する 後にハッと気付いて横を向くと 大勢のガルバディア騎士たちが 羨ましそうに眺めている ヴィクトールが衝撃を受ける

城内 寝室

ヴィクトールが就寝中のガルバディアの騎士たちを眺めてから 振り返ってバーネットへ言う
「彼らの声を聞いたのも 初めてで驚いたけど 僕が教えた事を ちゃんと仲間にも教えようとしてくれる… 普通の事かも知れ無いけど 今日はそれらの事に とても驚いたし 凄く嬉しかったんだ」
バーネットが地図から顔を上げて言う
「俺としちゃ あのガルバディアの騎士の中に 泣き虫ヴィクトールと同等の泣き虫が居やがたってぇ事に 驚いたけどなぁ?」
ヴィクトールが衝撃を受ける バーネットがニヤリ笑む ヴィクトールが怒って言う
「それはっ 僕も驚いたけどっ!僕は とりあえず 猫に引っ掻かれた位じゃ 泣かないもん!」
ヴィクトールが泣きながらうったえる バーネットが呆れて言う
「どぉだかなぁ…?」
バーネットが気を取り直して言う
「それはそうと てめぇ、明日のファクトリーの襲撃作戦で 万が一の事があったって あいつらの前で泣くんじゃねぇぞ?」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 表情を落として言う
「それは… 無理だと思うよ」
ヴィクトールが心苦しそうな表情で必死に言う
「でも、だからこそ!精一杯戦わないといけないっ それに、もし難しいと判断された時には 例え途中でも 一度引き返して改めて 別の策を考えようと思う 一度でもあの中へ入って 様子が分かれば また新しい策を考える事も出来るだろう?」
バーネットが間を置いて言う
「新しい策を考えられるかもしれねぇが 細かい作戦を理解出来るあいつらじゃねぇって 言ったのもてめぇだったと思ったけどなぁ?」
ヴィクトールが一瞬呆気に取られた後 表情を落とす バーネットが苦笑して言う
「精一杯戦って 勝てば良いんだろ?出来るだけ被害が少ねぇ様に 全力でよ?」
ヴィクトールが悲しい表情のまま 間を置いて言う
「うん… そうだね」

【 機械兵ファクトリー 近郊 】

ヴィクトールとバーネットがファクトリーを眺めてから 安全圏へ引き返し ヴィクトールが考える様子で言う
「あのファクトリーの正面の入り口は ここから真っ直ぐ行った先だ 周囲の様子からして 他の出入り口もあると思われるけど どこも新型の機械兵で埋め尽くされている… これはもう正面突破以外に 作戦を立てる事すら難しい ファクトリーの内部見取り図も無い事だし 最深部まで間違い無く辿り着けると思われるのは やはり正面だけだ」
バーネットがダイナマイトを確認しながら言う
「あの機械兵どもに 爆薬ってぇもんの危険性がプログラムされているんだか知らねぇが 上品に仕込んでる暇はねぇ 片っ端からぶっ壊すぜ てめぇらはとにかく前進しやがれよ?戻ったりしたら こいつにぶっ飛ばされて 終っちまうからなぁ?」
バーネットが顔を上げガルバディアの騎士たちへ視線を向ける 騎士たちが頷く ヴィクトールがガルバディアの騎士たちを見て言う
「あの施設にある 機械兵の製造装置を破壊する事 それが今回の任務だ 我らの邪魔になる者のみの排除を行い 最深部へ向かう 単独での行動は禁止だ 常に皆、一緒に行動する様に 良いね!?」
ガルバディアの騎士たちが頷く

ヴィクトールが聖魔力の灯った大剣を向けて叫ぶ
「突入ーっ!」
ヴィクトールと共にガルバディアの騎士たちが突入して行く ファクトリーの周囲に居た機械兵たちが顔を上げた時には 既にヴィクトール率いるガルバディア騎士団が ファクトリー正面から突入を開始している 機械兵たちが戦闘行為を開始する ガルバディアの騎士たちが自分たちに襲い掛かって来る機械兵を打ち倒す 騎士団の中央部に居るバーネットが 騎士団の最後尾部隊の施設内への侵入を確認して 施設の入り口へ向けてダイナマイトを放り投げる ダイナマイトが爆発して入り口を破壊する ファクトリー外部の機械兵らが進入できずに停止する バーネットが悪戯っぽく笑みを見せ施設奥へ向かう

ガルバディア騎士団の先行部隊の前に複数の機械兵が現れる ヴィクトールが剣先を向けて叫ぶ
「奴らを打ち倒せ!」
ガルバディアの騎士たちが勢い良く機械兵らへ飛び掛かる

バーネットが騎士団の後方で 騎士たちが去った後の通路へダイナマイトを投げながら追いかける バーネットの後方で次々にダイナマイトが爆発して通路を破壊する バーネットが前方に視線を向けると ガルバディアの騎士たちが横の通路から現れた機械兵を倒して正面の通路へ向かって行く  バーネットがその場所へ辿り着く前に 倒したと思われていた機械兵が起き上がる バーネットが一度舌打ちをして武器を構える

ヴィクトールと騎士たちが機械兵の製造装置を破壊している 周囲には騎士たちに倒された機械兵の残骸が多く散乱しているが 周囲からは新たな機械兵が次々に製造されてやって来る ヴィクトールが騎士たちへ破壊する装置を知らせるように装置へ攻撃を繰り出す 騎士たちがヴィクトールをまねて装置を破壊する やがてヴィクトールが機械兵の最終組み立て装置へたどり着く ヴィクトールが気付いて言う
「ここを壊せば!」
ヴィクトールが装置を大剣で破壊する 動いていた全ての装置が停止する ヴィクトールがそれを確認して別へ向かおうとした所へ 最後の完成品である機械兵が起動する ヴィクトールがハッと振り返る 機械兵が攻撃を仕掛けて来る ヴィクトールが慌てて攻撃を払い 大剣を構え直して攻撃する 機械兵がヴィクトールの攻撃を回避し その先でヴィクトールへ武器を振り下ろす ヴィクトールが回避する 機械兵がヴィクトールの動きを追うが その機械兵の側面からガルバディアの騎士が攻撃する 機械兵が不意を突かれ横転する ヴィクトールが大剣を振り下ろし機械兵の首を落として言う
「よし、これならもう動く事は無いはずだ」
ヴィクトールが安堵して他へ視線を向ける 機械兵が再度起動する ヴィクトールが驚いて言う
「そんな!?何故!?」
ガルバディアの騎士が攻撃する 機械兵が体勢を崩す ヴィクトールが大剣を構え直して機械兵のボディを切り裂く ヴィクトールが顔を上げる 機械兵の腕が動き ヴィクトールの頭を鷲掴みにして握り潰そうとする ヴィクトールが悲鳴を上げる
「うあぁああっ!!」
ガルバディアの騎士がヴィクトールを掴んでいる機械兵の腕を切り落とす 機械兵が倒れる 倒れた機械兵へガルバディアの騎士たちがとどめを刺す ヴィクトールが後方に倒れ自分の頭を掴んでいる機械兵の手を開かせようともがくがヴィクトールの力では外せない ガルバディアの騎士が武器を捨て 両手でそれを手伝いヴィクトールを救助する ヴィクトールが苦しさから解放され 心配げに自分を見下ろしているガルバディアの騎士へ視線を向け微笑して言う
「助かったよ ありが…」
瞬間 機械兵のもう片方の腕が ガルバディアの騎士の背中から腹を貫く ヴィクトールが目を見開く

バーネットが走りながら振り返って言う
「てめぇのせいで 遅れを取っちまったじゃねぇか!こいつは礼だ てめぇにもくれてやるぜ!」
バーネットが左右の通路にダイナマイトを投げ込んで 続いて後方に倒されている機械兵へもダイナマイトを投げ付ける バーネットが走り去った後方で3箇所の爆発が起きる

ヴィクトールが顔を上げ施設上部を確認して言う
「あの場所を破壊すれば 移動魔法で逃げ出せる!」
ヴィクトールが宝玉を取り出し 意識を集中させ大剣に魔力を纏わせて 施設上部に向かって剣を振るう 天井が魔力により増幅された剣の衝撃波で破壊される ヴィクトールが脱出路を目視してから振り返り 騎士たちを確認する 騎士団は変わらず外部から入り込んで来る機械兵と応戦している やがて爆音と共にバーネットが現れる ヴィクトールが気付き振り向いて言う
「バーネット!脱出路は確保した!撤退しよう!」
バーネットが周囲を確認してから ヴィクトールへ向いて言う
「おう!上等だ!」
ヴィクトールが騎士団へ向いて叫ぶ
「全員 撤退だ!私の下へ集まれ!」
ガルバディアの騎士たちがヴィクトールのもとへ駆け付ける ヴィクトールが一度目を閉じ宝玉に意識を集中させる 機械兵らが追い駆けて来る ヴィクトールが宝玉を持っていない腕に 負傷したガルバディアの騎士を抱えている ヴィクトールが目を開くと共に叫ぶ
「我らをローレシアへ!」
ヴィクトールと騎士団を宝玉の聖魔力が覆う 機械兵らが怯む バーネットが微笑し所持しているダイナマイトを全て周囲へ投げ付ける ヴィクトールたちがローレシアへ向け飛び立つと 間を置いてダイナマイトが大爆発し ファクトリーが燃え上がる

【 ローレシア城 城門前 】

ガルバディアの騎士たちに囲われる中 ヴィクトールがぼろぼろ泣いて騎士の手を握り締めている バーネットが表情を悲しませ見守る 負傷した騎士が頭部の機械鎧を収納した状態で 荒い呼吸をしながらヴィクトールを見上げている その頬にテープが張られている ヴィクトールが声を絞り出して言う
「ごめんっ ごめんね…っ 僕が…っ 僕の せいで…っ!」
ヴィクトールが泣き声を必死に押さえ ぼろぼろ涙を流す 騎士がヴィクトールを見つめながら数回瞬きをした後 自由な方の手をゆっくり上げながら言う
「か…ない 泣 かない…」
ヴィクトールが驚き目を見開く 騎士が微笑し ヴィクトールの頭を撫でる ヴィクトールが苦しそうに涙を抑え 微笑を作り騎士の頭を撫でる 騎士が微笑したままゆっくり目を閉じる ヴィクトールが歯を食いしばり騎士の身を抱き締めた後 泣きながら叫ぶ
「あぁああーーっ!」
バーネットが目を閉じ背を向ける 周囲のガルバディアの騎士たちが不思議そうに眺める

――5年後

ザッツロードが魔力穴の上に宝玉を乗せて言う
「よし、これで全国の魔力穴への封印は完了だ」
ザッツロードが振り返り 祠から出て行く ザッツロードが祠から出ると ソニヤが通信機での通信を終えザッツロードへ向いて言う
「ザッツ、ヴィクトール様たちは 一度こっちのアバロンに寄ってから 新世界のアバロンへ帰るんだって」
ラナが微笑して言う
「それにしても、本当に この旧世界の機械兵を 一体残らず始末してしまうだなんて 私たちローレシアの勇者は完敗よね」
セーリアが苦笑して言う
「当初の予定では機械兵のファクトリーを全て破壊した後 ヴィクトール様やバーネット様だけは 一度、新世界へ戻るつもりだったらしいのだけど その作戦の合間に犠牲になった ガルバディアの騎士たちの仇を討つまでは帰らないって 決めたんですって」
ザッツロードが苦笑して言う
「それでも、あの新型機械兵が押し寄せるファクトリーを撃破する1年の間に 戦いで犠牲になった騎士の数は たったの5人だ 少なければ良いと言う事では無いと分かってはいるけれど それでもやっぱり全世界に300箇所も存在した 機械兵に関わるファクトリーを撃破し終えての その犠牲者の数は 少なかったと言って良いと思う」
セーリアが微笑して言う
「ええ、新世界だけでなく この旧世界までを救った アバロン帝国の勇者様は 本当にすごいわね」
ソニヤが苦笑して言う
「でもさ?私たちの勇者ザッツロード6世皇帝陛下と仲間たちだって いくら機械兵の居場所の分かるシステムが作られて それを元に危険地帯を回避したと言っても 機械兵が殲滅される前の状態で旅をして 悪魔力の噴出場所が 旧世界でもこの魔力穴だったって事を 調べ上げたのよ?それが分からなかったら こうやって今 各国の魔力穴を封印する方法だって 編み出されなかったんだから」
ラナが呆れながら言う
「その魔力穴の情報と封印の方法を提供したのは バーネット様だし ヴィクトール様の提案で 最初の内に宝玉の結界を張って 機械兵や魔物から 各国を取り戻していたからこそ そこにあった魔力穴の調査も出来たのよ?」
ソニヤが膨れっ面で言う
「もぉお~!ラナはどっちの味方なのよぉ!?」
ザッツロードとセーリアが微笑し ザッツロードが言う
「この旧世界を救うために 皆一緒に戦ったんだ 僕らもヴィクトール様たちも 同じ仲間なんじゃないのかな?」
セーリアが苦笑して言う
「ええ、そうだと思うわ 確かに、ファクトリーの撃破や機械兵との戦いをして下さったのはアバロンの勇者様率いるガルバディア騎士団ではあったけれど その彼らの戻るローレシア帝国を守って 彼らにたくさんのご飯を用意していたのは 私たち ローレシアの2代目3代目勇者と仲間たちだったのだから」
ソニヤが怒って言う
「そのたくさんのご飯を必死に用意してたのによ!?言葉を話せる様になったガルバディアの騎士たちってば2言目には『アバロンの美味しい料理を早く食べたい』だったじゃない!?もう信じられない!こっちは その誰かさんたちのせいで せっかく平和になった この世界で最初にやる仕事が 各国への食糧支援要求なのよ!?」
ラナが呆れて言う
「心配無いわよ 私たちはローレシアの勇者ザッツロードと仲間たちなのよ?各国だって ローレシア帝国への恩を返すためにも 私たちの食料支援要請は 当然受け入れて下さるわ」
ソニヤが衝撃を受けて叫ぶ
「それなら もう勇者様じゃなくっても ローレシア帝国の民なら 誰でも良いじゃない!?」
ザッツロードが苦笑して言う
「そのローレシア帝国も 他国の民たちが 自分たちの祖国に戻ってから すっかり民が減ってしまって このままでは 他国の復興が終った頃には ローレシアは帝国では居られ無くなってしまうかもしれない …やっぱり今の内に 食糧支援要請を受託して貰っておく必要があると思うんだ」
ザッツロードがまじめな表情で仲間たちへ向く 仲間たちが衝撃を受け 苦笑して ラナが言う
「ザッツが言うと 本当にそうなってしまいそうだから 止めて貰いたいんだけど?」
セーリアが苦笑して言う
「でも、良く考えたら ザッツロード6世皇帝陛下の甥である ザッツロード7世が直々に各国へ向かう位では無いと 復興作業を開始したばかりの各国が自分たちも苦しい中 食糧支援を了承して下さる事は難しいのかもしれ無いわね?」
ソニヤが怒って言う
「もぉ~!ローレシアの3代目勇者ザッツロードと仲間たちなのにーっ!」
皆が笑う

【 旧世界 アバロン 】

ヴィクトールが悲しそうな表情で微笑して言う
「ありがとう… 君たちの事は 絶対に忘れない」
ガルバディアの騎士が微笑して言う
「我らの父ヴィクトール13世 我らの王バーネット2世 私は、貴方たちと一緒に戦えて とっても嬉しかった… 有難う… …少し 休みます…」
ガルバディアの騎士が微笑したままゆっくり目を閉じる ヴィクトールが強く目を閉じ ガルバディアの騎士を抱き締めて泣く バーネットが悲しそうに苦笑して言う
「ハ…ッ 自分の墓を掘ってから 死にやがるなんて 何処まで律儀な騎士様なんだよっ」
ヴィクトールが顔を上げ 微笑して言う
「兄弟たちと一緒に眠りたいって… 我らの父ヴィクトール13世の祖国でって… 僕は… 彼らの足手まといにしかならない存在だったのに…」
バーネットが苦笑して言う
「確かに、戦いの中に置いては そうだったかもしれねぇが あいつらにとっては てめぇに褒められたり喜ばれたりする事が 自分らにとっての何よりの喜びだったんだ あいつらが言う通り、てめぇは 奴らの父親的存在だったんだろうよ」
ヴィクトールが悲しそうに言う
「でも、僕は… 結局いつも話して聞かせていた アバロンの美味しい料理だって 彼らに食べさせてあげる事は出来なかった… せめてこの旧世界の帝国が アバロンであったなら 僕を励ましてくれた 一言しか言葉を話せなかった あの最初の犠牲となった騎士にさえ いくらでも食べさせてあげられたのに」
バーネットが苦笑して言う
「だなぁ… ったくよ それだけは俺も思うぜ この世界でもアバロンが帝国だったなら あいつらの日々の喜びが もう1つ増えやがったってぇのになぁ?」
ヴィクトールが苦笑し涙を拭う バーネットが苦笑し 気を取り直して言う
「さぁ、そいつを 御希望通り 奴らの父ヴィクトール13世の故郷と同じ名の 旧世界のアバロンの地に埋めてやろうじゃねぇか?穴はもう掘ってあるんだ すぐに兄弟の所へも行けるだろうぜ?」
ヴィクトールが悲しそうに微笑んで頷く

ヴィクトールとバーネットが騎士の墓に祈りを捧げた後 ヴィクトールが周囲を見渡して言う
「本当に… 皆… 死んでしまうだなんて…」
ヴィクトールの前に398人の騎士の墓が並ぶ バーネットが悲しそうに微笑して言う
「元々新世界に居た あのヘクターの相棒のガルバディアの民でさえ 元の寿命は20年程度だったんだ 無理に成長を促進させた挙句に 全身の神経を酷使して戦い続けた あいつらの寿命が その半分ぐれぇにまで減っちまったって おかしくねぇ …だが まさかその半分にすら届かなかったなんてな …この2ヶ月の間に あいつらがこっちの世界に来た6週に分けて 見事に約100人の騎士たちが その週の内に次々死んじまいやがった 最後のあいつは もしかしたら もう一日ぐれぇ 生きられたのかもしれなかったが」
ヴィクトールが顔を横に振って言う
「無理に新世界への転送に耐えさせるより 兄弟たちと一緒に 自分たちが救った世界に 寝かせてあげて良かったのだと思うよ」
バーネットが苦笑して言う
「だなぁ…」
ヴィクトールが振り返り バーネットへ言う
「行こう、バーネット 僕らの本当の故郷 新世界のアバロン帝国へ」
バーネットが微笑して言う
「その前に、やらなきゃならねぇ事があんだろ?」
ヴィクトールが疑問して言う
「え?」

【 宝の島 】

ヴィクトールが洞窟の奥に宝玉を置いて言う
「うん、ここなら安心だ」
ヴィクトールが洞窟から出ると ドラゴンが顔を向けて言う
「この島なら しばらくは どこの国の奴らにも 気付かれる事はねぇだろうぜ?」
ヴィクトールが微笑して言う
「うん、各国には1つずつ宝玉が渡されているのだから 最後まで移動魔法に使っていた あの宝玉は隠しておくのが一番だね」
ドラゴンの姿のバーネットが軽く笑って言う
「おう、どっかの国が 2つも持ってったら不公平だもんな?2つもデケェ力がありやがったりしたら 実力が無くったって帝国になっちまう」
ヴィクトールが軽く笑ってから ドラゴンの背に乗って言う
「でも まさか旧世界で 君のドラゴンの姿を見られるとは 思ってもみなかったよ?」
ドラゴンが振り返り言う
「はっはー 新世界に帰ったら もう宝玉を持って暴れ回る事なんざ しねぇんだからな?見納めだぜぇ?」
ヴィクトールが笑ってから言う
「それを言ったら 君のガルバディアの騎士姿も見納めだったね?これからはもうマイクロトランスミッターの使用は禁止だよ?君の寿命まで縮めてしまっては大変だ」
ドラゴンの姿のバーネットが軽く笑って言う
「平和な世界にガルバディアの騎士は必要ねぇだろ?賞金稼ぎなら元の姿で十分だからなぁ?」
ヴィクトールが呆気に取られた後 軽く笑って言う
「そうだね!平和な世界に機械の鎧は要らない… それに僕は 君の元の姿が 一番好きだから!」
ヴィクトールが笑顔を向ける ドラゴンが衝撃を受け ヴィクトールへ向けていた顔を正面へ逸らして 頬を染めて言う
「ば…っ てめぇはっ!?そう言う言葉をハッキリ 言いやがるんじゃねぇ!」
ヴィクトールが呆気に取られた後 笑って言う
「えぇ?良いじゃない?だって君は 僕の初恋の人だったんだよ?バーネット?知ってる?」
ヴィクトールが笑顔になる ドラゴンが衝撃を受けた後 怒って振り返り炎を吐き出す ヴィクトールが笑顔でその炎を剣で斬って避ける ヴィクトールが苦笑して言う
「怒らないでくれよ バーネット、僕だってまさか あの時見掛けた可愛いあの子が こんなに口の悪い男の子だとは 知らなかった頃の話だよ?三つ編み髪の男の子が居るだなんて 普通思わないだろ?」
ドラゴンの姿のバーネットが怒って叫ぶ
「うるせぇえ!ガルバディアの王 兼 ベネテクト王の 民を思う愛の証を 侮辱するんじゃねぇ!」
ヴィクトールが表情を渋めて言う
「あー!酷いよバーネット!僕は侮辱なんてして無いし!僕だって 君が男の子だって知った日は 一晩中 初恋の玉砕に 泣き腫らして居たんだよ!?」
ドラゴンの姿のバーネットが怒って叫ぶ
「知るかぁああ!泣き虫ヴィクトールの初恋の相手だなんて言われて こっちの方が一晩でも二晩でも 泣きてぇえ気分だぁああ!!」
ドラゴンが勢い良く飛び上がり 猛スピードで乱暴に飛ぶ ヴィクトールが慌てながら言う
「わわわっ!バーネット!そんな乱暴に飛ばないで!僕を守ってくれるんじゃなかったの!?」
ドラゴンの姿のバーネットが怒って叫ぶ
「るせぇえ!知るかぁあ!もう俺は ベネテクトの王でも アバロンの第二皇帝でも ガルバディアの騎士でもねぇ!てめぇえが落ちたって 拾ってやらねぇえからなぁ!」
ヴィクトールが言う
「えー!酷いよバーネット!」
バーネットが叫ぶ
「うるせぇえ!」

【 ローレシア城 門前 】

門兵が見上げる先から 城門前へドラゴンが舞い降りて来て ヴィクトールが飛び降りると ドラゴンがバーネットの姿へ戻る ヴィクトールがホッと息を吐いて言う
「もう… バーネットってば?久し振りにドラゴンになったからって 張り切りすぎだよ?もう少しで本当に 僕が落っこちる所だったじゃない!?」
バーネットが笑んで言う
「はっはー 一度くらい落ちてくれた方が 面白かったんだけどなぁ?」
ヴィクトールが衝撃を受け 怒って言う
「あー!酷いよバーネット!」
バーネットが笑いながら ローレシア城へ入って行く

地下機械室

ザッツロードと仲間たちが顔を上げる ヴィクトールとバーネットが室内に入って来る ザッツロードが微笑して言う
「お帰りなさい、随分遅かったですね?僕らより先に戻られているかと思っていました」
ヴィクトールが微笑して言う
「ああ、すまない 少し用があってね」
バーネットが周囲を見渡して言う
「新世界との連絡が ローレシアじゃぁ無く アバロンから来やがったって?何たってアバロンからなんだぁ?大体こっちっから転送されるのは やっぱり新世界のローレシアになるんだろ?」
ザッツロードが微笑して言う
「はい、転送先に変更はありません それと 連絡が送られた場所はアバロンでしたが その連絡をくれたのは ガルバディアのプログラマーだと」
ヴィクトールが呆気に取られてから微笑して言う
「ああ、彼はいつも 彼の世界一の相棒であるヘクターと行動を共にして居るから 連絡の発信元がアバロンからと言うのも あり得る話だ」
バーネットが苦笑して言う
「ガルバディアには国王を含め4人のプログラマーが居るんだぜぇ?連絡をよこしたガルバディアのプログラマーが ヘクターの相棒のあいつだって 何で特定出来るよ?」
ヴィクトールが微笑して言う
「ああ、それはもちろん?『何となくそんな気がする』からだよ?」
ヴィクトールが笑顔になる バーネットが呆れる

ヴィクトールとバーネットが転送装置に立つ ザッツロードが装置を操作する 周囲の機械が動き 転送の機械が白い光りに包まれる ザッツロードが装置の状態に一度頷いた後 ヴィクトールとバーネットへ向いて言う
「ヴィクトール様!バーネット様!旧世界を救って頂き 有難うございました!」
ソニヤが笑顔で言う
「私たちも ひと段落したら また新世界に戻るかも知れないから!」
ラナが微笑して言う
「その時は アバロンへ 挨拶に行かせてもらうわ!」
セーリアが微笑んで言う
「お2人も たまには旧世界へいらして下さい」
ヴィクトールとバーネットが軽く笑い頷く 転送装置が発動し2人の姿が消える ザッツロードが機械のモニターを確認して頷いて言う
「よし、成功だ 2人は間違い無く 新世界のローレシアへ転送された」
ソニヤが苦笑して言う
「でも、新世界のローレシアとは もうずっと前から連絡が途絶えてしまっていたのでしょ?そんな状態で本当に大丈夫なの?」
ラナが首を傾げて言う
「アバロンから連絡があったのだから とりあえず新世界とは連絡は繋がったんだって事になるじゃない?」
セーリアが心配そうに言う
「私たちの故郷 新世界のローレシアは… どうなっているのかしら?」
ザッツロードと仲間たちが顔を見合わせた後 モニターへ視線を向ける

【 新世界 ローレシア城 地下機械室 】

転送装置に聖魔力の光りが立ち込め破裂する ヴィクトールとバーネットが現れる 二人が上体を折り曲げ 息を切らして ヴィクトールが言う
「はぁ…はぁ… なんだろう?前に転送を行った時には こんなに負担は無かったはずなのに」
バーネットが言う
「ああ、こりゃ… あの騎士を連れて来なくって 大正解だったぜ 最期にこんな苦しい目に 会わせるなんて事は したくねぇからな?」
2人が息を整え ヴィクトールが言う
「うん そうだね …って あれ?何かあったのだろうか?こちらでも操作が必要なはずだから 誰か居てくれても おかしく無いのだけど?」
ヴィクトールが周囲を見渡す 部屋の中央で台座に置かれた宝玉が淡く光っている バーネットが言う
「だなぁ?せっかく旧世界を救った 勇者様方のお帰りだってぇのに あのキルビーグの奴ぁ 出向えサボって何処行きやがった?」
ヴィクトールが微笑して言う
「もしかしたら何か急用でもあったのかもしれない とりあえず、玉座へ向かい キルビーグ殿ではなくても旧世界のローレシア帝国の事を 伝えて置かないと」
バーネットが意地悪く笑んで言う
「はっはー ローレシアはもうすぐ旧世界でも帝国じゃぁ なくなっちまうかもしれねぇってか?折角 旧世界が救われても ローレシアの王にとっては 素直に喜べねぇな?」
ヴィクトールが苦笑して言う
「そこはご了承して頂かないと?」

城内 通路

ヴィクトールとバーネットが階段を上がり 地上階へ到達する ヴィクトールが周囲の様子に驚きの声を上げる
「これはっ!?一体…っ!?」
ヴィクトールの視界に大破したローレシア城の城内が映る バーネットが同じく驚きの表情で周囲を見ながら言う
「一体… 何がありやがった!?ローレシアが どっかから襲撃でもされたってぇのか!?」
ヴィクトールが城の壊れた天上から見える空の様子を見て言う
「バーネット!違うよ!ほら あの霧が!」
バーネットがヴィクトールの指差す上空を見上げて言う
「あれは!悪魔力の霧じゃねぇえか!?しかも あの濃度は ただ事じゃねぇ!」
ヴィクトールがバーネットへ向き 表情を険しくして言う
「バーネット!急いでアバロンへ」
バーネットが焦る気持ちを押さえて言う
「ああ だが…っ もし あの霧が…」
ヴィクトールが焦って言う
「そんなの分からないよ!でも 何があっても行かなければ!ヘクターたちが アバロンを守ってくれている!早く彼らに会わないと!」
ヴィクトールが走り出そうとする バーネットが慌ててヴィクトールの腕を掴み言う
「おいっ!待てっ!落ち着きやがれ 旧世界には ガルバディアのプログラマーから連絡が入ったって言ってただろ!?だったら きっと あいつらは無事なんだっ 少なくともガルバディアのプログラマーが動けるってぇ事は ガルバディアの民もアバロンの民も無事な筈だ!」
ヴィクトールが泣きそうな表情で言う
「だけど!早く会って確認しないと!」
声が聞こえる
「元アバロン帝国の第二皇帝の言う通りだ 何も分からないまま この結界から飛び出し アバロンへ向かおうとする元アバロン帝国の皇帝は 私は嫌いだ」
ヴィクトールとバーネットが驚き 声の方へ顔を向ける 視線の先で 結界を抜けウィザードが2人の前に降り立つ ヴィクトールが慌てて言う
「デス!良かった 君は無事だったんだね!?」
ウィザードが首を傾げて言う
「お前はさっき『ヘクターたちが アバロンを守っていてくれている』と言った ならば当然 アバロンのウィザードである私も無事に決まっている 仲間を信じない元アバロン帝国の元皇帝は 私は嫌いだ」
バーネットが怒って言う
「能書きは良い!おい!間抜けウィザード!俺らが居ねぇえ間に この新世界に 何がありやがった!?」
ウィザードが少し考えてから言う
「…うん、お前の言う『この新世界』と言う言葉が 私には分からない お前たちはずっと 同じ世界に居た お前たちはこの世界の『過去の世界』から戻って来たのだ」
ヴィクトールとバーネットが呆気に取られる バーネットが少し考えて言う
「てぇ事は 俺らがさっきまで居た世界が 今のこの世界の過去の姿…?俺らは この世界の 過去を 救って来たってぇえのか!?」
ヴィクトールが驚きウィザードへ向く ウィザードが少し考えて言う
「…うん、確か その様に ガルバディアの民ナンバー何番かの号が言っていた それで私は 今のこの世界を救う作戦を決行するために 早くお前たちをアバロンへ連れて帰らなければ… いけなかった気がする?」
ウィザードが首を傾げる ヴィクトールとバーネットが一瞬呆気に取られた後 バーネットが怒って叫ぶ
「こぉおんの 間抜けウィザードがぁああ!!そぉおお言う事は 先に言いやがれぇええ!!」
ヴィクトールとバーネットが駆け出す ウィザードが振り返り 2人の前に魔法を放ち 2人の進行を止めて言う
「だが、その前に この結界外の濃度の高い悪魔力から身を守る このローブをお前たちに渡すようにと 言われていた気もする」
ウィザードがローブを持って首を傾げる ヴィクトールが呆気に取られたまま瞬きをする バーネットが怒りを押し殺す

【 アバロン帝国 】

ヴィクトールとバーネットがアバロンの城下町を走って来る ヘクターが気付いて叫ぶ
「ヴィクトール!バーネット!」
2人が結界を過ぎ ヘクターの前に来て ヴィクトールが言う
「ヘクター!良かった、君も…!」
ヴィクトールとバーネットが上がる息を整える ウィザードがヴィクトールの横に浮いて言う
「私はヘクターも無事であると言った 私の言葉を疑うお前は 私は嫌いだ」
ヘクターが軽く笑って言う
「実際に会って安心したってだけだぜ?別にヴィクトールは お前の言葉を疑ったんじゃねーよ」
ウィザードが首を傾げる バーネットが言う
「んな事より ヘクター!一体何がどうなりやがった!?間抜けウィザードじゃ 話してても全部『そんな気がする』で終っちまう まともな説明を聞かせやがれ!」
ウィザードが首を傾げる ヘクターが苦笑して言う
「ああ、悪ぃ 俺もソルベキアの連中が 世界の連中を騙して アバロンを襲わせようとした って事ぐれーしか分かんねーんだ」
ヴィクトールとバーネットが驚く ヘクターが微笑して言う
「けど、安心しろよ!各国には俺たちの仲間が居たんだ そいつらが皆 俺らとアバロンを信じてくれた!だから ソルベキアの連中の思惑通りには ならなかったんだぜ!」
プログラマーがホログラムを表して言う
『アバロンは襲撃されずに済んだ だが、ソルベキアは最後の悪あがきに この世界へ悪魔力を溢れさせた』
ヴィクトールが驚いて言う
「悪魔力を!?何故止められなかったんだ!?ソルベキアの動向には 細心の注意を払えと言っておいたのに!?」
ヘクターが言う
「アバロンはでかい力を持ち過ぎていたんだ だから、皆 俺たちを信じてはくれたけど 万が一アバロンが裏切った時には 自分らはひとたまりもねーって心配になっちまった 各国のそれを落ち着かせるためにも アバロンは一時行動を自粛してたんだけどよー その間にソルベキアが降参したと思ったら 自分らへの被害も省みず悪魔力を溢れさせたんだ まさかソルベキアがそこまでするとは 誰も想像すらしなくてよ」
ガルバディア国王がホログラムを表して言う
『各国がソルベキアに騙され 作り上げてしまった機械兵のファクトリーの数は300 そして 生み出された過去の遺産である機械兵は ソルベキアの溢れさせた悪魔力に制御を奪われ人を襲うようになった …ソルベキアの民は 一度はお前たちによって救われた この世界を… 新たなる世界にしようと誓ったはずの この新世界まで 旧世界の二の舞にしてしまったのだ』
ヴィクトールとバーネットが呆気に取られ バーネットが視線を落として言う
「何てこった…っ 折角あいつらが命を掛けて 救ってやった世界だってぇえのにっ!」
ヴィクトールが視線を落とした後 気を取り直して言う
「彼らの命を無駄には出来ない!ウィザードは我々を迎えに来た際『今のこの世界を救う作戦を決行する』と言っていた その作戦とは!?」
バッツスクロイツが現れて言う
「はいはーい!その作戦ーには 俺の故郷ローンルーズの 超ーイカした ワープロードが 大ー活躍しちゃいまーす!ちなみにーその改良ーには この王様デスっちが 超ー頑張っちゃいましたー!」
プログラマーが微笑して言う
『パクリ改良なら 我が王に任せると良い』
ガルバディア国王が怒って言う
『誰がパクリ改良などをしたと言うのだ!?貴様はいい加減 私を敬う気が あるのか無いのかハッキリしろ!民ナンバー6482号!』
プログラマーが衝撃を受け 怒って言う
『ちょっと待て!号数所か桁すら 変わっているではないかっ!?』

【 アバロン城 地下機械室 】

ヴィクトールとバーネットが周囲を見渡して ヴィクトールが言う
「これは…」
バーネットが言う
「あのローレシアにあった 転送装置そのものじゃねぇか!?」
バッツスクロイツが機械を操作しながら言う
「あー、そーかもー?しーれーない?だって、王様デスっちはー この世界の過去の世界ーで?ヴィクトールっちとバーネっちに 会ってるんだよー?」
ヴィクトールとバーネットが衝撃を受け 2人が慌ててガルバディア国王へ向き ヴィクトールが言う
「で、ではっ!?まさか あの時の!?」
ガルバディア国王が そっぽを向いて言う
『今の世界にも 宝玉の材料となるものが無いだけであって 私が1から宝玉を作れない訳では 決して一切無い筈だ!』
バーネットが呆れて言う
「この転送装置も あの過去の世界のをパクリやがったてぇ訳か?」
ガルバディア国王が衝撃を受け怒って言う
『確かに!この転送装置に関しては 過去のパクリではあるが!私は世界一の科学者だぞ!?パクリ程度の物を 人へ見せ付けて堪るか!』
バーネットが疑問して言う
「じゃぁ何処が違うってぇんだ?何処も彼処も ちっとも変わりねぇじゃねぇか?」
バッツスクロイツが機械操作をしながら言う
「あー、それはー ここからーじゃ 見ーえーなーいーからねー?」
ヴィクトールとバーネットが呆気に取られて疑問する ガルバディア国王が微笑して言う
『ふん、この転送技術を真似出来るものは 新、旧世界を合わせても 私しか居るまい?』
ヴィクトールとバーネットが疑問する中 バッツスクロイツがモニターにガルバディア城を映す ヴィクトールとバーネットがそれに気付き モニターを見てヴィクトールが言う
「これは、ガルバディア城… あの場所で何かをするのか?」
バッツスクロイツが機械操作をしながら言う
「今、ガルバディア城の中には 各国からアバロン帝国に避難していた人たちが居るんだ」
モニターにガルバディア城内の様子が映る 大勢の人々が城内の至る所に居る ヘクターや仲間たちも居る バーネットが言う
「ヘクターや あいつらまで…?一体何をやろうってぇんだ?」
ヴィクトールとバーネットが バッツスクロイツへ視線を向ける バッツスクロイツが微笑して言う
「はーい それではー?今からー あのガルバディア城にー居る人をー ぜーん い ん 過去の世界へ転送ーしちゃいまーす!」
ヴィクトールとバーネットが驚いて ヴィクトールが言う
「ぜ、全員って… あ、あの大人数を全員!?」
バーネットが焦って言う
「おいっ そんな事本当に出来るのか!?どう見ても1万人は居るじゃねぇか!?あんな大人数を一度に転送しちまうなんて!」
ガルバディア国王が言う
『更に、この映像には映って居ない 私やガルバディアの民も共に行く そして、転送に必要な聖魔力は この世界に残されていた宝玉の内、アバロンへの結界を張っている物を除き 全てを用いて取り行う 残念ながら それらの宝玉は破壊されるだろう しかし、それで あの場所に居る人々が助かるのであれば その代償は無きに等しい』
バーネットが冷静に改めて問う
「おい、あんな戦えもしねぇ民を 転送するってぇのは…」
バッツスクロイツが真剣な表情で言う
「もうこの世界は それだけヤバイ事になってる 宝玉の結界を張って人の生きる場所を確保出来るのはアバロンだけだし このアバロン帝国内で生産できる食料にも限界があるから 各国からアバロン帝国へ避難していた人には それこそ 過去の世界まで避難して貰うって事になったんだ」
ヴィクトールとバーネットが驚く プログラマーがホログラムを表して言う
『こちらの準備は整った いつでも問題ない』
バッツスクロイツが頷いて言う
「うん、それじゃ 皆によろしく!」
プログラマーが頷きホログラムを消す ガルバディア国王がヴィクトールとバーネットへ向き言う
『私は300年以上の時を生きている お前たちの事も知っていた あのガルバディアの騎士たちの事も』
ヴィクトールとバーネットがガルバディア国王を見つめる ガルバディア国王が2人へ向いて言う
『当時から科学者であった私は あのガルバディアの騎士たちを生み出した科学の力に見入られ お前たちには無断で 初めて損傷した あのガルバディアの騎士の機械鎧を修理した際に解析を行った その時に 私は彼らの機械鎧に戦いの機能の他に 備えられている ある細工に気付いた』
ヴィクトールが問う
「ある細工?それは… あの世界から未来に当たる この世界で 彼らを生み出した貴方自身が施したものと言う事では?」
ガルバディア国王が微笑して言う
『そうだ  しかし旧世界の私には もちろんその細工を施したのが未来の自分である等と言う事は知る由も無かったが 私が初めてガルバディアの民を作り出した際 同時に理解し驚いたものだ 機械鎧に備わっていた機能は 彼らの生命維持機能の停止と共に 彼らの脳核へ永久氷結を施すものであった そして、私は 300年の時を経て 彼らへ正当な命の時を与える事を成し得た』
ヴィクトールとバーネットが驚き バーネットが言う
「…ってぇ 事は…っ」
ガルバディア国王が微笑して言う
『彼らは無事目覚めた  そして 再びガルバディアの騎士として お前たちと共に戦える事を喜び お前たちの帰還を待っていた 彼らの父ヴィクトール13世、彼らの王バーネット2世 後は お前たちへ任せる』
ガルバディア国王のホログラムが消える ヴィクトールとバーネットが呆気に取られ顔を見合す バッツスクロイツが言う
「ガルバディア城に居た人たちの転送を無事確認!彼らはー この世界の196年前へ 飛んで行きましたーっ」
ヴィクトールが問う
「196年前と言うのは その時代に何かあるのか?」
バッツスクロイツが振り返って言う
「いーや?出来ればーもーっと前が良かったんだけど、あの大人数の転送が可能なのは この位が限界なんだ」
バーネットが言う
「それで、あいつ等の作戦ってぇのは?具体的に何なんだ?ヘクターや各国の戦士たちも居たって事ぁ ソルベキアをぶっ潰しにでも行ったのか?」
バッツスクロイツが言う
「それはー、今後の連絡ーで向こうから伝えて来る こっちはこっちでーやらなきゃいけないー事がたーくさんあって 向こうの作戦までーは?考えてあーげーらーれない!」
ヴィクトールが問う
「こちらでやる事と 言うのは… バッツスクロイツ、君はガルバディア国王が言っていた ガルバディアの騎士たちの事を 何か知って居るだろうか?」
バッツスクロイツが微笑して言う
「もっちろーん?王様デスっちもー言ってたーだろ?2人の仲間ーである あのガルバディアの騎士たちが 目を覚ましたーって ほらほらー?さっそく 待ちきれー無くって 2人に会ーいに 来ちゃってるー!」
バッツスクロイツが2人の後方を指差す ヴィクトールとバーネットが疑問して振り返る 大量のガルバディアの騎士たちが不思議そうに眺めている ヴィクトールとバーネットが一瞬驚いた後 ヴィクトールが表情を綻ばせて言う
「みんな…っ!?それじゃ 皆 本当に!?ただ 休んでいただけだったのかい!?」
ヴィクトールがガルバディアの騎士たちの下へ行き 皆を見て嬉しさに涙を流す ガルバディアの騎士たちが呆気に取られた後 その中の1人がヴィクトールの頭を撫でながらゆっくりと言う
「泣かない、泣かない」
ヴィクトールが呆気にとられた後 笑顔を見せる バーネットがその様子を眺め微笑する

城内 バルコニー

ヴィクトールとバーネットが世界を眺め ヴィクトールが言う
「新世界と旧世界を救ったと思ったら 今度は未来まで守る事になってしまったね?バーネット?」
バーネットが軽く笑って言う
「はっはー まさか2回も世界を救った挙句に 今度は この世界を救う勇者様が来るまで 世界を守って待ってやがれとは… まったく、いつになったら世界は平和になりやがるんだ?」
ヴィクトールが軽く笑って言う
「確かに、一向に 僕らの悪魔力との戦いは 終わらないね?バーネット?」
ヴィクトールがバーネットへ笑顔を向ける バーネットが呆気にとられた後 苦笑して言う
「ハ…ッ その割に?なんたって てめぇは そんなに 楽しそうなんだよ?」
ヴィクトールが呆気に取られてから首を傾げて考えて言う
「うーん… それは きっと…」
バーネットが疑問して ヴィクトールを見る ヴィクトールが笑顔で言う
「このアバロンも ガルバディアの騎士たちも 君も!過去の世界に行った仲間たちも 僕の大切なものが みんな無事だったから!かな?」
バーネットが呆気に取られた後、苦笑して言う
「それじゃぁ このアバロンに残った民たちと ガルバディアの騎士たちと 再びアバロンの第一皇帝になりやがった てめぇも 全部また俺が 守ってやらなけりゃならねぇのか?」
ヴィクトールが笑顔で言う
「もちろんだよ バーネット だって君は やっぱり アバロンの第二皇帝なんだからね!」
バーネットが苦笑し 城下町を見下ろして言う
「ガルバディアの騎士どもに アバロンの美味い料理を食わせてやれたのは良かったが あのガルバディア国王の奴が あいつ等の為に保管していた ガルバディアの民の体に入れられたって この先奴らが 生きていられるのは 精々30年程度だろ …俺やてめぇと同じ位かもな?」
ヴィクトールが考えながら言う
「30年か… その間に 何処かの時代から この世界を救う勇者様が来てくれるのだろうか?」
バーネットが軽く笑って言う
「さぁな?俺らは今 一番先の世界に居るんだろう?だったら 何処を調べたって その先の未来なんざ分かる訳がねぇ」
ヴィクトールが微笑して言う
「うん、そうだね?この先がどうなるのかなんて まだ来ない世界の事は分からない… でも、もしかしたら この世界も どこかの世界の過去だったりして?」
バーネットが呆気に取られた後 苦笑して言う
「過去でも未来でも良いが 誰かに操作でもされてなけりゃ 俺はかまわねぇな?」
ヴィクトールが呆気に取られた後 微笑して言う
「過去でも未来でも、誰かに操作されていても 僕は今のこの世界は 悪く無いと思うけど?…あ、でも もし本当に操作が出来るのなら 僕はもう バーネットとの喧嘩はしたくないよ?」
バーネットが呆気に取られた後 軽く笑って言う
「ハッ!世界が操作出来るんだったら もっとマシな事を願いやがれ」
ヴィクトールが言う
「あー!?酷いよバーネット!?僕があの頃 どれだけ寂しかったのか 知らないのかい!?」
バーネットが苦笑して言う
「結果的に収まったんだから 良いじゃねぇか?」
ヴィクトールが少し怒ってから 微笑して言う
「それはそーだけど …うん、それじゃ僕の願いは…  やっぱりこれかも君とずっと一緒に 悪魔力と戦って行ける様に!かな?」
バーネットが呆気に取られた後 苦笑して言う
「おいおい、それじゃぁ いつまで経っても 平和な世界が来ねぇじゃねぇかよ?」
ヴィクトールが薄っすら笑って言う
「平和な世界か… もしかしたら それは あんまり面白く無い のかもしれないね?」
バーネットが驚く ヴィクトールが笑う
「あっははははは!」

ヴィクトールとバーネットが城内へ向かう ヴィクトールが言う
「残りの騎士たちを迎えに行って来るよ それに機械兵との戦いは 僕らにとっては ついさっきまでの事だけど 彼らは2百何十年ぶりだからね 心構えを確認させて置かないと?」
バーネットが言う
「ああ、なら俺は 俺らが旧世界へ向かった後の こっちの世界での出来事を確認して置くぜ」
ヴィクトールが頷き立ち去って行く バーネットがアバロン城の自室へ向かう

バーネットの部屋

バーネットが机へ向かう 机の上に紙資料が山積みになっている バーネットが資料を手に取り呆れて言う
「あのバッツスクロイツの野郎… これのどこが世界情勢記録なんだぁ?もうちっと まともな書き方が出来ねぇのかよ?おまけに 紙切れにばっか書きやがって あいつは一冊の本に書き記すってぇ事を 知らねぇえのか?」
バーネットがため息と共に椅子に座り 引き出しを開けて書き写すための本を探す その手がローゼント国で受け取った本に当たり 取り出して言う
「お?…ああ、そう言えば この本… この世界の過去の世界に行ったってぇ俺らですら この内容に関する事には会わなかった… 結局 ローゼント国のおとぎ話だったってぇ事かぁ?」
バーネットが首をかしげた後 本を置いて別の本を探す 紙資料が崩れてバーネットに圧し掛かる バーネットが驚き 慌てて紙資料を抑える 本が床に落ちてページが開かれる



北の地に
2人の王が留まる時

世界は

聖なる世界へ
導かれる

南の果てに
2人の王が留まる時 

世界は

闇の世界へ
導かれる







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