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8章
アールスローン戦記 1つの物語の終わりと 始まる複数の物語
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【 国防軍マルック駐屯地 】
ハイケルが言う
「マイク少佐 爆破地点に到着した ロックを」
イヤホンにマイクの無線が入る
『了解っ!ロックを解除します どうか お気を付けてっ!』
ハイケルが言う
「了解」
ハイケルの視線の先 ロックシグナルが赤から緑に変わる 重い扉が開かれる 隊員たちが武器を構える 開かれたドアの先 防御壁に身を隠していた第1第2部隊員たちが言う
「レギストがっ!?」
扉が開き切り 広い場所に4機のマシーナリー2が点在している ハイケルが言う
「国防軍レギスト機動部隊 作戦を開始する」
隊員たちが言う
「了解っ!少佐ぁー!」
隊員たちが銃撃を行い マシーナリー2の気を引く マシーナリー2が隊員たちへ銃撃を行おうとすると 隊員たちが回避する 回避した先 他のマシーナリー2が 隊員Aへ銃口を向ける 隊員Aが焦って言う
「やっべっ!」
固定マシンガンの援護射撃で マシーナリー2の動作が一瞬止まる 隊員Aが回避し 回避した先でM82を放つ マシーナリー2が隊員Aへ向こうとすると 隊員Cが対側で銃撃を行い マシーナリー2の気を引く 隊員Aが顔を向けて言う
「助かった!」
第1部隊員が笑んで言う
「なんのっ!」
隊員Cが逃げながら言う
「おいーっ アラン隊員ーっ!」
隊員Aが少し慌てて言う
「おっとっ!」
隊員AがM82を放ち マシーナリー2の気を引いて言う
「少佐の手が空くまで 何とか奴を引き付けるぞ!サキ!」
隊員Cが銃を放って
「お前が気を抜いたんだろっ!?」
隊員Aが笑んで言う
「悪~りぃ!にひひっ」
隊員Cが表情を顰めて言う
「まったく… バイスン隊員と離しても これかよ …とととっ!」
隊員Cが慌てて回避する 隊員AがM82を放つ 別所で手榴弾が大量に爆発する 隊員Aが顔を向ける
隊員Bが言う
「あーっ!もうっ!折角の手榴弾が勿体無いーっ!皆ちゃんと ビフォアーバーストショットにしてくれなきゃ マシーナリー直撃にならないよー!」
隊員Hが焦って言う
「出来るかっ!」
隊員FがM90を持って言う
「M90でも 最低5発は当てないと 貫通しないだなんて… これじゃ少佐以外 倒せる奴は居ないぞ」
隊員Bが手榴弾を持って笑んで言う
「”お前たちは 私の手が空くまで 時間を稼げれば それで良いんだ” だよー!マシーナリーって鈍間だし 動きが同じだから 慣れちゃえば 時間稼ぎくらい いくらでも出来るからねー!」
隊員Bが手榴弾を投げる 隊員Fが構えて言う
「それなら 練習がてら…っ」
隊員Fの一発の銃弾が手榴弾に当たる マシーナリー2が間近で爆撃を受け仰け反る 隊員Fが呆気に取られる 隊員Bが喜んで言う
「フッちゃん やるーっ!」
隊員MNがM90を隊員VがM80を放っている マシーナリー2がそちらへ向き銃口を向ける 隊員Mが焦って言う
「か、回避っ!」
隊員MVが慌てて左右に回避する マシーナリー2の銃撃が隊員Nへ向かう 隊員Nが焦って言う
「うわぁあっ!」
隊員Nが強く目を閉じる 銃撃が盾に防がれる 隊員Nがハッとして顔を向ける 隊員Xが盾を押さえる 隊員Nが言う
「ゼクス隊員っ!?」
隊員MとVが対側でマシーナリー2へ銃撃を行いながら言う
「ほらっこっちだ!」
マシーナリー2が隊員MとVへ向く 隊員Xが肩で息をする 隊員Nが言う
「助かったぜ!ゼクス隊員!…って!?大丈夫かっ!?」
隊員Xが苦笑して言う
「ああ、何とか… けど かなりキツイ 今までの対人マシーナリーより 威力が強くて… それに 盾その物が 持ちそうに無い」
隊員Nが盾を見て驚く 隊員MとVが焦って言う
「わぁああ 来た来たーっ!」
「回避回避ーっ!」
隊員MとVが左右に逃げる マシーナリー2が左右を見ると その胸にM90が3連射される マシーナリー2が仰け反り正面を見る ハイケルがM90を構えてる マシーナリー2が銃口を向けようとすると ハイケルが更に2発放つ マシーナリー2が動きを止め脱力する 隊員MとVが言う
「やったぁ!」
「助かったぁ~…」
軍曹がハイケルの前に盾を構えていて 立ち上がって言う
「少佐っ 後り2体でありますっ!」
ハイケルが言う
「了解」
ハイケルがM90を装填する 軍曹が盾を持ち上げる 隊員Nが軍曹を見てから言う
「それじゃっ 少佐の援護をしてる 軍曹の盾もっ!?」
隊員Xが苦笑して言う
「軍曹の方は特注で 俺の使ってる奴よりかなり丈夫だから 後2体なら耐えられると思う」
隊員Nが苦笑して言う
「そうなのか… 良かった ゼクス隊員も 軍曹と同じ盾には してもらえないのか?」
隊員Xが苦笑して言う
「丈夫は丈夫なんだけど あっちは 凄く重いんだよ」
ハイケルがM82を持って言う
「まずは奴の気を引く 君は待機していろ」
軍曹が言う
「了解っ」
軍曹が盾を床に着く 重い音が響く 隊員Nが表情を歪める 隊員Xが苦笑して言う
「90キロはあるぜ あれ」
隊員Nが驚いて言う
「90キロぉ!?それを軽々と …流石 軍曹」
隊員Nが軍曹を見る
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
スピーカーからハケイルの声が届く
『国防軍レギスト機動部隊 国防軍マルック駐屯地内に潜入した マシーナリー全5体を破壊した これより帰還する』
情報部員たちが表情を明るめる マイクが言う
「了解っ!お疲れ様でしたっ!」
マイクがバックスとアルバートを見る 2人が顔を見合わせ苦笑して肩の力を抜く バックスが気を取り直して言う
「おっと 戦いはまだ終わっていない マイク少佐 19部隊の状況を確認だ」
マイクが慌てて言う
「あっ!はいっ!そうでしたっ!国防軍リング駐屯地情報部 応答を こちら 国防軍レギスト駐屯地情報部 19部隊の現状を教えて下さい」
スピーカーから リング駐屯地情報部主任の声が届く
『こちら国防軍リング駐屯地情報部 19部隊の任務は完了 押し寄せていたマシーナリーは全て破壊した!現在は再来に備え警戒中』
マイクが表情を明るめて言う
「国防軍リング駐屯地情報部 了解です 引き続き 宜しくお願いします!」
スピーカーから リング駐屯地情報部主任の声が届く
『国防軍レギスト駐屯地情報部 了解だ 任せてくれ!』
マイクがバックスを振り返る アルバートが微笑して言う
「今度こそ 一安心かな?」
バックスが言う
「そうだな… ハイケル少佐への 窓ガラス修理代 請求書でも書いておくか」
アルバートが笑って言う
「酷い上官だ」
バックスが言う
「甘やかして 過去のエルム少佐の様に なられては困るからな?」
2人が笑う
【 国防軍マルック駐屯地 】
ハイケルがイヤホン無線に表情を顰める 隊員Bが言う
「少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「奴ら… 無線マイクがオンになっている事を 知っていて話している」
隊員Bが言う
「えー?って事は 俺の少佐直伝 密かにマイクスイッチオンは 元々はバックス中佐の技でありますかー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「誰の技であったのかは 不明だが… 聞いた話では 国防軍レギスト駐屯地情報部 主任だった者が 全く言う事の聞かない 元レギスト機動部隊隊長への 嫌がらせとして 考案したものであったと 聞いた事がある」
隊員Bが言う
「元レギスト機動部隊隊長ってー…」
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
ラミリツが言う
「あのさ?それって もしかしてだけど…?」
ラミリツがエルムを見る エルムが言う
「何だ?」
ロンドスが笑って言う
「フォッフォッフォ… いや、お懐かしいですな?少佐?」
ラミリツが言う
「やーっぱ?」
ザキルが言う
「俺、ホント ハイケル少佐の世代で良かった~」
エルムが言う
「何の話だ?」
ラミリツとザキルが息を吐く ロンドスが笑う
【 国防軍マルック駐屯地 】
第1第2部隊員が来て言う
「我々は 国防本部へ向かい 総司令官へ報告を致します」
ハイケルが言う
「了解 ご苦労だった」
第1第2部隊員が敬礼する 軍曹が来て言う
「少佐 我々も 国防軍レギスト駐屯地へ 帰還しましょう 後衛部隊は既に 生存者の確認を終えたとの事でしたので 移動トラックに待機させてあります」
ハイケルが言う
「了解 国防軍レギスト機動部隊 総員 …帰還せよ」
ハイケルのイヤホンに隊員たちの声が聞える
『了解!』
軍曹が向かおうとする ハイケルが立ち止まる 軍曹が振り返って言う
「少佐?如何なさいましたか?先ほども なにやら いつもと違って…?」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ 少佐は帰還したら 国防軍レギスト駐屯地の 窓ガラス修理代請求書が 待ってるのでありますー!」
軍曹が衝撃受けて言う
「なぁあっ!?しょ、少佐っ!?それは一体…?」
ハイケルが言う
「任務から 帰還したくないと思ったのは 初めてだ」
隊員Cが言う
「俺が兄貴に聞いた話では 国防軍レギスト駐屯地は 特注で作られた駐屯地だから 備品とかかなり高いらしいです 銃の誤発とか気を付けろって いつも言われてるんで」
ハイケルが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「わー さっすが サッちゃんのお兄さん!元国防軍レギスト駐屯地情報部員だっただけあって 色々詳しいねー!」
ハイケルが言う
「国防軍レギスト駐屯地情報部の者は レギスト機動部隊隊長には 多大なる恨みがあるのだと言う事は 良く分かった… やはり ヴォール・ラゼル・ハブロス邸 襲撃作戦は決行するべきだ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「しょ、少佐ぁーっ!?」
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
エルムが言う
「ロンドス 発注を頼みたい」
ラミリツとザキルが衝撃を受ける ロンドスが苦笑して言う
「少佐 申し訳ありませんが 私は このMT77をもって 引退すると」
エルムが言う
「M90の弾薬を 1ダース有れば良い」
ラミリツが溜息を吐いて言う
「あのさぁ エルム… 少しは大人になろうよ?」
ザキルが呆れて言う
「エルム少佐は 見た目はともかくとして とっくに大人を越えてるんですけどね」
ロンドスが笑う エルムが沈黙する
【 国防軍マルック駐屯地 屋外 】
19部隊の戦車が横一列に並んでいる 隊員1が双眼鏡で周囲を見渡して言う
「うん 異常なし!」
隊員2が振り返って言う
「もう 来ないかもな?」
隊員1が言う
「そうは言っても これから24時間は待機だぜ?」
隊員2が苦笑して言う
「だな?」
2人が笑う 戦車の操縦士が顔を上げて言う
「おーい 情報部から状況確認だ 周囲の状況は?」
隊員2が周囲を見て言う
「見渡す限り マシーナリーの残骸のみ 異常なしであります!どうぞー?」
隊員1が苦笑して双眼鏡を覗いて言う
「遠距離 1000メートル先にも 異常は… うん?」
【 国防軍マルック駐屯地 館内 】
突然轟音が響き隊員たちが驚く ハイケルが言う
「マイク少佐っ!?」
イヤホンにマイクの声が届く
『国防軍リング駐屯地 情報部より入電!先程の物とは異なる 新たなマシーナリーが接近!移動速度が速くて 戦車部隊ではっ』
再び館内に轟音が轟く 隊員やハイケルが振動に体勢を崩す
【 国防軍マルック駐屯地 屋外 】
戦車部隊が砲撃をする 隊長が言う
「砲撃止めー!駐屯地へは当てるな!」
隊員が言う
「隊長!我々戦車部隊の砲撃では とても間に合いません!」
隊長が言う
「情報部っ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが言う
「国防軍リング駐屯地情報部 及び19部隊より 国防軍レギスト駐屯地情報部 及び レギスト機動部隊へ 応援要請!国防軍マルック駐屯地 に現れた 新型マシーナリーの撃破を!」
バックスが通信マイクへ向かって言う
「ハイケル少佐!聞えたか!?」
【 国防軍マルック駐屯地 館内 】
ハイケルが言う
「…帰還しておくべきだった」
軍曹がイヤホンを押さえて言う
「レギスト機動部隊っ!直ちに 少佐の下へ集合せよーっ!」
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
ラミリツが驚いて言う
「また新しいマシーナリーが!?」
ラミリツがエルムを見る ロンドスが言う
「少佐 RTD330マシーナリーではない 更に新しいタイプとなりましては」
エルムが言う
「恐らく RTD420マシーナリーだ M90と奴1人では 勝利出来ない」
ロンドスが表情を険しくする ラミリツとザキルが顔を見合わせ ザキルが言う
「爺ちゃんっ 今のどう言う事っ!?型式を知ってるって事は 過去の戦いでも使われたマシーナリーでしょっ!?それなのに ハイケル少佐とM90で勝てないって!?」
ラミリツが言う
「別の武器が必要なら!届けないとアイツら やられちゃうよっ!?」
ロンドスがエルムを見て言う
「少佐…」
ラミリツとザキルがエルムを見る エルムが言う
「奴は悪魔の兵士だ それを知る機会としては 丁度良い相手だと言える」
ラミリツが言う
「エルムっ それってどう言う意味っ!?アイツを見殺しにしろって事!?」
ロンドスが言う
「少佐 M90は 私が 少佐の為に作った銃です 少佐とは戦い方の異なる ハイケル少佐には合いません」
エルムが言う
「私のレギストが 初めてマシーナリーと対峙した時には 国防軍の標準装備にて 隊員たちの命を懸けて戦った 現状M90と言う銃があること自体 奴は十分恵まれている この状態で対処出来ない様では 後の戦いには 勝利出来ない」
ラミリツとザキルが顔を見合わせる ロンドスが視線を落とす
【 国防軍マルック駐屯地 館内 】
無線イヤホンにマイクの声が届く
『新型マシーナリー接近中!到着まで5秒前!4・3・』
ハイケルと隊員たちが出入り口へ向け銃を構える ハイケルが言う
「放てっ!」
隊員たちが一斉に射撃する 出入り口から新型マシーナリー(以降マシーナリー3)が突入してくる ハイケルが驚いて言う
「回避っ!」
ハイケルと隊員たちが左右に回避する 隊員Aが言う
「速いっ!」
マシーナリー3がハイケルたちが回避した真ん中を突っ切ると 突っ切った先で向き直り 周囲を確認する ハイケルがM90を構える マシーナリー3がハイケルをロックオンし 銃撃を行いながら向かって来る 軍曹がハイケルの前に盾を構える ハイケルがM90を放つ マシーナリー3のボディに銃弾が弾かれる ハイケルが驚いて言う
「M90が効かないのかっ!?」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「回避っ!」
軍曹とハイケルが左右に回避する マシーナリー3が過ぎ去った位置で止まり 向き直ってハイケルを探しロックオンする 軍曹が言う
「少佐ぁーっ!」
ハイケルがM90を構えて3連射する 銃弾がマシーナリー3のボディに弾かれる ハイケルが視線を細めて言う
「ジャストショットでも 傷1つ付かないとはっ!?」
隊員たちが驚く 軍曹が言う
「少佐っ!?それでは どうしたらっ!?」
ハイケルが言う
「距離を縮め 射撃の威力を高めるしかないっ 軍曹 抑えられるか!?」
軍曹が言う
「了解っ!」
軍曹が盾を構える マシーナリー3が銃撃を行いながらハイケルへ向かって来る ハイケルが回避しながらマシーナリー3を引き付けた後 ギリギリで軍曹の後ろへ回避する マシーナリー3が軍曹の前で銃撃を行う 軍曹が盾を押え堪える ハイケルがM90をマシーナリー3の間近で連射する 重い銃声が何度も鳴り響く 隊員たちが見つめる M90の弾丸がマシーナリー3の装甲を傷付け始める ハイケルがM90を撃ち尽くすとマシーナリー3が脱力する ハイケルが息を吐き言う
「無事か?軍曹」
軍曹が目を開きハイケルを見上げ苦笑して言う
「はっ …何とかっ」
隊員たちがホッと胸を撫で下ろす ハイケルが軍曹の盾を見て言う
「厚さ30ミリの鉄の壁でギリギリか」
軍曹が立ち上がって言う
「この盾では持ちません もう一体でも来る前に 退避しましょう 少佐」
ハイケルが言う
「…そうだな」
隊員たちが顔を見合わせ頷き合う ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「任務完了 レギスト機動部隊 帰還する」
無線イヤホンにマイクの焦った声が届く
『ハイケル少佐っ!急いで下さいっ!』
ハイケルが驚いて言う
「どうしたっ?」
突然轟音が響き隊員たちが驚く 隊員Bが怯えて言う
「まさか またっ!?」
イヤホンにマイクの声が届く
『先ほどのマシーナリーが複数接近っ!総司令官より 国防軍マルック駐屯地爆破許可を得ています!レギスト機動部隊は 南方の脱出路より 直ちに退避して下さいっ!退避確認と共に こちらで駐屯地の自爆処理を行います!』
再び館内に轟音が轟く ハイケルが言う
「了解!総員っ!退避だっ!」
隊員たちが言う
「了解っ!」
隊員たちが出入り口へ向かう 軍曹とハイケルが向かおうとする マシーナリー3が再起動し向き直って ハイケルをロックオンする ハイケルがハッとして顔を向ける マシーナリー3がハイケルへ向かって来る ハイケルが驚く 軍曹が叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
軍曹がハイケルを突き飛ばす マシーナリー3がハイケルの居た場所に居た軍曹を弾き飛ばす 軍曹が通路へ突き飛ばされ床に倒れる 隊員たちが驚き立ち止まって言う
「軍曹っ!」
軍曹が振り返って言う
「少佐ぁーっ!」
マシーナリー3が片腕でハイケルを壁に押さえ付けている ハイケルが痛みに表情を顰めつつ M82を取り出し マシーナリー3へ連射する 重い銃声が鳴り響く 隊員たちが走り戻って来る ハイケルが気付き叫ぶ
「総員 退避だっ!」
隊員Aが言う
「しかしっ!」
マシーナリー3が隊員Aへ片腕を向けマシンガンを放つ 隊員Bが驚いて言う
「アッちゃんっ!」
隊員Xが盾を構える 隊員BがM80を放つ マシーナリー3が隊員Bへマシンガンを向ける 軍曹が隊員Bを突き飛ばす 隊員たちが銃を放つ マシーナリー3が標的を検索する 隊員Aが気付き 隊員Fへ言う
「フレッド隊員っ!少佐がさっき攻撃した所をっ!」
隊員Fがハッとして言う
「そうか!了解っ!」
隊員FがM80を構え狙って撃つ 隊員AがM82を放ちながらマシーナリー3の注意を引き付ける マシーナリーが隊員Aへロックオンしマシンガンを構える 軍曹がマシーナリー3の腕へ体当たりする マシーナリー3のマシンガンが狙いをそれる マシーナリー3が自分の腕を押さえる軍曹を見て 腕を壁へ叩きつける 軍曹が腕と壁に挟まれ悲鳴を上げる
「ぐうっ!」
軍曹がマシーナリー3の腕を外そうとするがびくともしない 隊員Aが叫ぶ
「フレッド隊員っ!」
隊員Bが言う
「フッちゃん!早くっ!」
隊員FがM80を連射しながら言う
「もう 少しだっ!…このっ …食らえっ!」
隊員Fが最後の一撃を放つ 銃弾がマシーナリー3の胸を突き抜ける マシーナリー3が脱力し倒れる ハイケルと軍曹が解放される 隊員たちが言う
「やったぁっ!」 「今度こそっ!」
ハイケルが叫ぶ
「退避っ!」
ハイケルが出入り口へ顔を向け驚く 隊員たちが驚き顔を見合わせると 出入り口からマシーナリー3が次々と入って来る 隊員たちが後ず去って言う
「…そんなっ」
ハイケルが呆気に取られる 軍曹が表情を強張らせハイケルを見る ハイケルが意を決して言う
「…あのマシーナリーは ターゲットを固定し それを追う習性がある 恐らく 最初に攻撃を行った者が その対象とされる」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルがM90の弾倉を変えて言う
「私が攻撃を行い 奴らの注意を引き付ける お前たちはその間に退避しろ …マイク少佐 聞えているな?隊員たちが防御扉を抜けたら 扉をロックしろ」
隊員Bが言う
「それなら!俺も残ります!少佐ぁ!」
隊員Aが言う
「俺も残りますっ!」
ハイケルが言う
「私の任務は お前たちを全員 国防軍レギスト駐屯地へ 生きて帰らせる事だっ …バイスン隊員 アラン隊員 私の任務を邪魔するな」
隊員Aが呆気に取られる 隊員Bが言う
「俺は 邪魔だって言われても 残ります!」
ハイケルが隊員Bを見て言う
「お前は レギストの主戦力だ ここで死なせる訳には行かない」
隊員Bが言う
「俺の少佐は 少佐しか居ませんっ 少佐の居ないレギストじゃ 俺怖くて戦えないし…」
隊員BがM80を用意する 隊員Aが言う
「俺もやっぱり 少佐やバイちゃんの居ないレギストじゃ 戦えない …サキじゃ話してても詰まんないからな?」
隊員AがM82に充填する 隊員Cが言う
「言ったなぁ?少佐の率いるレギストは お前らお笑いコンビだけに 任せては置けないんだよ」
隊員CがM80に充填する 隊員Dが苦笑して言う
「あんま目立たないけど 俺だって少佐の率いるレギストには 命懸けてるんだ お前らに負けたくないね」
隊員DがM80の弾倉を変える 隊員Eが言う
「おいおい 今生の別れじゃないんだから いつもみたいに 楽しく行こうぜ?」
隊員EがM80を持つ 隊員Fが言う
「俺は これから少佐に 特別訓練を与えてもらうんだ ここで逃げ出す訳には行かない」
隊員FがM90を持つ 隊員NMVが顔を見合わせ苦笑して言う
「俺ら少佐に注意してもらわないと また階段で 足滑らせるからなぁ?」
隊員NMVが笑って武器を持つ ハイケルが呆気に取られた状態から視線を落として言う
「お前たち…っ」
軍曹がハイケルへ向いて言う
「少佐… …実はっ!」
ハイケルが言う
「軍曹 君は退避しろ」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「その盾では もう防ぐ事は出来ない」
軍曹が言う
「しかしっ!」
ハイケルが有志隊員へ言う
「お前たちの意志は理解した まずはその我々が注意を引き付け 他の隊員を退避させる そして 我々は …その後だ」
有志隊員たちが言う
「「はっ!了解!」」
マシーナリー3が横一線に並びハイケルたちへ銃口を向ける ハイケルがM80を構えて言う
「国防軍レギスト機動部隊 作戦開始っ!」
有志隊員が言う
「「了解っ!少佐ぁー!」」
ハイケルと有志隊員たちが銃を放ちながら飛び出す マシーナリー3たちがそれぞれをロックオンして銃撃しながら向かって行く 有志隊員以外の隊員たちが悔しがりつつも逃げ出す 軍曹が悔やむ ハイケルが言う
「退避しろ!軍曹っ!」
ハイケルがマシーナリー3の攻撃を回避する 退避隊員たちが出入り口を抜け 振り返って叫ぶ
「軍曹!」 「軍曹ーっ!」
有志隊員たちが次々に追い詰められる マシーナリー3が隊員Nへ間近で銃口を向ける 隊員Nが苦笑して言う
「っはは… これで… 終わり…か?」
軍曹が叫ぶ
「ぬおぉおーっ!」
軍曹がマシーナリー3の片腕を払い飛ばし 隊員Nの間に入って盾を構える マシーナリー3が銃口を向け直し射撃する 盾が破損し 弾丸が軍曹の腕に当たる 軍曹が悲鳴を上げる
「ぐあっ」
隊員Nが焦って言う
「軍曹っ!?」
隊員NがM80を放ちながら叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが軍曹に攻撃を行っているマシーナリー3へM80を放つ 銃弾がマシーナリー3の装甲に弾かれる ハイケルが周囲を見渡す 隊員たちがマシーナリー3の銃口間近で武器を構えている ハイケルが表情を顰めて言う
「っ!…マイク少佐 扉をロックしろ!」
マシーナリー3がハイケルへ銃口を向ける ハイケルが視線を細めて言う
「任務 失敗 か…」
ハイケルのイヤホンにエルムの声が届く
『レギストの隊長に 任務の失敗は許されない』
ハイケルが呆気に取られて言う
「…エルム少佐?」
ハイケルがふと気付き上を見上げる 施設の上部にある窓ガラスが大破する 隊員たちが見上げると驚き エルムとエルムβが上空から現れ着地すると同時に エルムβたちが一斉にMT77を構える エルムが視線を強めるとエルムβたちがMT77を放つ 激しい銃声が3発放たれる 隊員たちへ銃を構えていたマシーナリー3が脱力して倒れる 共にエルムβたちが傾きMT77を落とす ハイケルが言う
「エルム少佐っ!?何故 お前がっ!?」
エルムβたちが再び動き出しMT77を逆手に構え直し 残りのマシーナリー3を撃破する ハイケルへ向いていたマシーナリー3が向き直る エルムがMT77を片腕で構え3発撃つ マシーナリー3が脱力して倒れる エルムが僅かに表情を顰め 射撃を行った左腕を下げて言う
「現レギストの隊長が不甲斐ない為 とっくに引退した私が 召集された」
ハイケルが言う
「…礼を言う」
エルムが言う
「当然だ」
エルムが周囲を見渡す エルムβたちが力尽き 白い体液を流して破損している ハイケルが視線を強めて言う
「MT90を改良した銃か… それでも」
エルムが言う
「MT77だ 威力は落ちたが 3発をジャストショットさせれば RTD420マシーナリーの強化装甲を貫ける」
隊員たちが呆気に取られて見ている エルムが言う
「お前たちは退避しろ 任務は私が引き継ぐ」
皆がエルムを見る エルムがMT77をM90へ切り替え マシーナリー3へ撃って言う
「行け」
マシーナリー3がエルムをロックオンし エルムへ向かう 隊員Bが言う
「少佐ぁーっ!?」
ハイケルが言う
「退避だっ!」
隊員たちが視線を合わせ頷き合う 隊員たちが出入り口へ向かう エルムが回避しつつM90を撃ち注意を引き付けつつ ハイケルを見て言う
「何をしている 貴様も行け」
ハイケルがエルムβたちを一瞥してから エルムへ向いて言う
「お前はどうするつもりだっ?MT77は1人で2体を倒すのが限界 お前が倒せるのは 後一体だろうっ!?」
エルムが回避し防御壁の後ろへ回り込んでM90を放ち言う
「この駐屯地を爆破させる 数は問題ない」
隊員Bと隊員Aが出入り口の外で叫ぶ
「少佐ぁーっ!」 「少佐もっ 早くっ!」
ハイケルが言う
「…悪魔の兵士である お前なら それほどの爆破にも 耐えられると言うのか!?」
エルムが言う
「悪魔の兵士であろうと 肉体の耐久力は常人と大差ない 耐えられる訳が無い」
エルムが回避する ハイケルが言う
「では お前は死ぬ気なのか?…そして 再び蘇ると?」
エルムがM90を放ちつつ言う
「生憎の老体だ ここで死ねば もう蘇る事は無い」
エルムが華麗に回避する ハイケルが表情を顰めて言う
「言動を合わせてくれ…」
エルムが言う
「だが、私は この任務の他にも 既に任務を受け持っている ここで私が死ねば そちらの任務が果たせなくなる …その任務を お前が引き継げ」
ハイケルがエルムを見る エルムがイヤホンのスイッチを止めて言う
「ヴォール・ラゼル・ハブロスは間もなく寿命を迎える お前はその後 奴の持つアールスローン戦記の原本を アース・メイヴン・ハブロス総司令官へ届けろ 以上だ」
ハイケルが驚く エルムがM90を放ち回避し 回避した先でM90を構える エルムが言う
「報酬は無い 私が奴から 頼まれただけの任務だ」
エルムがM90を放ち回避する ハイケルが言う
「…報酬は すでに受けている だが、その任務は 引き受けられない」
エルムがハイケルを見て言う
「理解不能だ 単純明確に言え」
ハイケルがMT77を見て言う
「敵は後2体 俺とお前で その銃を使えば足りる 先の任務は お前が行うべきだ」
エルムが言う
「後1体を破壊するだけ撃てば 私の身は持たない」
ハイケルが言う
「MT77だけに依存しなければ良い お前は2発までを その2発がマシーナリーの強化装甲を破壊さえすれば 後はこれでも」
ハイケルがM90を持つ エルムが言う
「3発目にM90を代用するつもりか しかし、その作戦は確実に成功するとは言えない 貴様がMT77を使いこなせる保障も無い …任務は 確実に遂行しなければならない」
ハイケルが言う
「ならば 失敗時へ向けての備え行え良いんだ マイク少佐っ!」
エルムがハイケルを見てから回避する イヤホンにマイクの声が届く
『は、はいっ!ハイケル少佐っ!?』
ハイケルが言う
「今すぐ 防御扉をロックしろ!」
隊員Aと隊員Bが驚いて言う
「「少佐ぁっ!?」」
イヤホンにマイクの声が届く
『了解っ …成功を祈ります!』
防御扉のランプが赤になり扉が閉まり始める ハイケルがエルムへ向いて言う
「国防軍レギスト機動部隊 作戦を開始する」
エルムがイヤホンのスイッチを入れて言う
「了解」
扉が閉まる音がする エルムがMT77を用意して言う
「奴らの標的は 最終襲撃者となる お前が1体目のトドメとしてM90を放てば 残りの一体はお前をターゲットする」
ハイケルが言う
「了解 1体目を仕留めたら すぐにMT77を使用する」
エルムが言う
「無駄撃ちはするな 残りの銃弾は6発だ」
エルムが銃弾を詰める ハイケルが視線を強めて言う
「了解」
ハイケルがM90を構える エルムがハイケルの位置を確認 マシーナリー3を誘導し ハイケルの真横でMT77を構えると 引き金を引く MT77が激しい銃声を鳴らす ハイケルがM90で狙いを付け 2発目の銃声を確認すると共にM90を連射する マシーナリー3のボディを銃弾が貫通し マシーナリー3が動きを止め脱力する エルムが言う
「第一作戦クリア 第二作戦へ移行する …来るぞ」
ハイケルがエルムからMT77を奪い構える マシーナリー3が倒れると その後方から最後のマシーナリー3がハイケルをロックオンする エルムが言う
「1打目 放て」
ハイケルがMT77の引き金を引く 激しい反動にハイケルが背にしていた防御壁に背を打ち付けハイケルが悲鳴を上げる
「ぐあっ!?」
エルムが言う
「2打目 放て」
ハイケルがエルムの声に顔を上げ言う
「ぐぅ…っ!」
ハイケルが MT77を構える エルムが言う
「急げっ」
ハイケルが必死に照準を合わせ 歯を食いしばって引き金を引き言う
「クッ…!」
MT77が放たれ マシーナリー3に当たる ハイケルが表情を顰め吐血する エルムがハイケルを見て言う
「3打目は 持たないか」
ハイケルがMT77を構えて言う
「任務は… …確実に遂行させるっ」
エルムが言う
「当然だ」
エルムが隣でMT77を支える ハイケルがエルムを見る エルムが言う
「狙え」
ハイケルが照準を合わせる マシーナリー3がハイケルへ銃口を向け射撃する 同時に ハイケルが引き金を引く MT77が放たれる エルムとハイケルが表情を顰めて言う
「「ぐっ!」」
ハイケルが苦しそうに目を開いて言う
「やったか…?」
エルムが言う
「外した」
ハイケルが驚き顔を上げる マシーナリー3のマシンガンが破損している マシーナリー3がマシンガンを放とうとして 故障を感知し マシンガンを排除する ハイケルが驚いてからエルムへ向いて言う
「もう一度っ」
マシーナリー3がハイケルをロックオンし マシンガンを失った手をハイケルへ向ける エルムがハイケルへ向いて言う
「回避!」
ハイケルがハッとして立ち上がろうとするが 体に激痛が走り顔を顰める エルムが気付くと立ち上がり言う
「私が押さえる 貴様はその場にて構えろ」
ハイケルが呆気に取られて言う
「押さえるだと?盾も無いのに どうやってっ!?」
マシーナリー3が突進して来る ハイケルがハッとしてマシーナリー3を見る その前で エルムが向かって来たマシーナリー3を掴み押さえる ハイケルが驚いて言う
「素手で押さえられるのかっ!?」
エルムが言う
「長くは持たない」
ハイケルが慌ててMT77を構える 照準を合わせようとするが 体が支えきれず照準がブレる ハイケルが視線を強めて言う
「く…っ 力が…っ!」
マシーナリー3が力を増す エルムが表情を顰めて言う
「急げっ」
マシーナリー3が顔をエルムへ向る エルムがマシーナリー3へ視線を向ける マシーナリー3がエルムをターゲットに切り替え ハイケルへ向かおうとするのを止め エルムから逃れようともがいた後 顔がマシンガンに変わり エルムの右肩へ銃撃を行う エルムが悲鳴を上げる
「ぐぅっ!」
ハイケルが驚いて言う
「エルム少佐っ!」
マシーナリー3の顔が戻りエルムの右腕を引く エルムの傷口が裂け エルムが激痛に表情を顰める マシーナリー3がエルムの右腕を掴んだまま一回転させる エルムが目を見開き叫ぶ
「あぁああーっ!」
ハイケルの前の床に血が滴り落ちる ハイケルが驚き急いでMT77をマシーナリー3へ向ける エルムが言う
「狙えっ!」
ハイケルがハッとする エルムが言う
「後一発だ 確実に…っ!」
エルムが表情を強め マシーナリー3を片手で押さえ付ける マシーナリー3がエルムを見てもがく ハイケルがMT77のブレ続ける標準を合わせようと苦戦していると急に MT77のブレが止まる ハイケルが驚くと 隊員Aと隊員BがMT77を支えている ハイケルが驚いて言う
「アラン隊員っ!?バイスン隊員っ!?」
隊員Aが言う
「俺たちが支えます!」
隊員Bが言う
「早く撃ってっ!少佐ぁー!」
ハイケルが意を決して言う
「了解っ!」
ハイケルが照準を合わせ 視線を強めて引き金を引く MT77が放たれる 隊員Aと隊員Bが顔を顰めて言う
「「うわぁあっ!」」
ハイケルが顔を上げる ハイケルの視線の先マシーナリー3が動きを止め 脱力し倒れる 隊員Aと隊員Bが顔を見合わせ言う
「「やったぁーっ!」」
エルムが右肩を掴み倒れる 隊員Aと隊員Bが衝撃を受ける ハイケルが歯を食いしばって立ち上がり エルムの横へ行く 隊員Aと隊員Bが顔を見合わせてから ハイケルの後ろへ行く エルムの傷口から血が溢れ 床に血溜りが出来る 隊員Aが表情を顰めて言う
「ひ、酷い怪我だ…っ」
隊員Bがハイケルを見る ハイケルが拘束布をエルムの傷口の手前へ回し言う
「止血する 堪えろ」
ハイケルが拘束布を縛り上げる エルムが痛みに顔を顰める ハイケルが手を離し イヤホンを押さえて言う
「マイク少佐 任務完了だ すぐに救護班を呼んでくれ」
イヤホンにマイクの声が届く
『了解っ …ですが、少々お待ちを!ロックの解除に そちらの駐屯地の電源が足りないので 今 電源車を向かわせています!』
ハイケルが表情を落として言う
「…了解 急がせろ」
ハイケルがエルムを見る 隊員Bがエルムの傷口を見て表情を顰めて言う
「すげー… 痛そう…」
エルムは強く目を閉じ痛みに耐えている 隊員Aが表情を哀れませて言う
「マシンガンで銃撃された上 傷口を引き裂かれて曲げられているんだ 痛いなんてモンじゃ…」
隊員Bが青ざめて言う
「うえぇ~っ 聞いてるだけで 俺 気絶しそう…っ」
ハイケルが言う
「通常であるなら 攻撃を受けた時点で 精神防衛本能から とっくに意識を喪失している …だが そうはならなかった お陰で マシーナリーを倒す事が出来た」
隊員Aが言う
「…けど 今は 救護班が来るまで このまま 痛みに耐え続けなきゃならないなんて…」
隊員Bが言う
「せめて 痛みだけでも和らげてあげられたら良いのに…」
ハイケルがハッとする 隊員AとBが同時に気付いて言う
「そうかっ!」 「モルヒネだっ!」
ハイケルが隊員AとBを見る 隊員Bがモルヒネ携帯キットを取り出し開けると 表情を困らせて言う
「け、けど 俺 使った事無いよっ!?これ どうしたら良いのっ!?」
ハイケルが隊員Bから携帯キットを奪って言う
「貸せっ」
ハイケルがモルヒネを注射器にセットしエルムを見る 隊員Aと隊員Bが見ている ハイケルがエルムの怪我の近くにモルヒネを打つ作業を繰り返し 3本を打ち終えて言う
「これで良い筈だ」
隊員AとBがハイケルを見てからエルムを見る エルムが徐々に苦しみから解放され目を開く 隊員Aと隊員Bがホッとして顔を見合わせ苦笑する ハイケルが言う
「マシーナリーを素手で押さえるとは… 流石は悪魔の兵士だな… だが、助かった 礼を言う …隊員たちが残っていたとは 知らなかった」
隊員AとBがハイケルを見る エルムが言う
「礼ならば その2人へ言え お前だけでは 照準が定まらなかった 第二作戦は失敗に終わっていただろう」
隊員AとBが驚き顔を見合わせる ハイケルが言う
「…そうだな」
エルムが言う
「ザキルへ依頼し 対策を強化させろ 現状のままでは お前は3打目を撃てない」
ハイケルが言う
「ザキルはまだ ロンドスの助手だ 依頼をするなら…」
エルムが言う
「問題ない MT77は そのザキルが製作した銃だ ロンドスは承認をしただけだ」
ハイケルが言う
「…そうなのか?」
エルムが言う
「確認は取っていない だが分かる ロンドスが作ったにしては 詰めが甘い …だが、お前には… それで良い…」
ハイケルが言う
「それは?」
ハイケルのイヤホンにマイクの無線が入る
『ハイケル少佐!お待たせしましたっ!電源車が到着!ロックの解除を行います!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「マイク少佐 了解だ」
防御扉のランプが緑に変わると扉が開き 隊員たちが言う
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが隊員たちを見て言う
「負傷者の救護を急げ」
救護班が言う
「了解っ!」
救護班が駆け付ける ハイケルがエルムへ向いて言う
「先ほどのは どう言う… っ!」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Bが衝撃を受けて言う
「あーっ!エルム少佐がーっ!」
隊員Aが苦笑して言う
「違うよ バイちゃん 眠ってるだけだ」
隊員Bが呆気に取られて言う
「え?…あ、何だー びっくりしたー」
ハイケルが言う
「…モルヒネの麻酔効果だろう 脳に近い位置だ 規定量では 少し多かったか」
救護班がハイケルへ向いて言う
「出血が酷い為 輸血と増血剤の投与を行ってから 運びます」
ハイケルが頷く 隊員Aが苦笑して言う
「悪魔の兵士か… ははっ 確かに 普段は少佐よりクールで それこそ 戦うロボットみたいだったけど やっぱり 人だったんだな?」
隊員Bが苦笑して言う
「とーぜんっ 戦うロボットであるマシーナリーは 痛みなんて感じないし!眠る事も無いんでしょー?」
隊員Aが言う
「そうだな?それに… 眠ってる時は 意外と優しそうな顔してるし?」
隊員Bが笑んで言う
「えー?俺思うけど エルム少佐は 起きてる時だって 優しいよー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「え!?」
ハイケルが隊員Bを見る 隊員Bが隊員Aへ向いて言う
「だって?いっつも少佐や俺たちの事 助けてくれるじゃん!流石 元国防軍レギスト機動部隊 隊長ー!」
ハイケルが呆気に取られた後苦笑する 隊員Aが苦笑して言う
「そうだな!何しろ レギストの隊長は元も現も 勘違いされるほど 言動が堅いからなぁ 素直じゃ無いって言うか 可愛くないって言うか」
ハイケルが衝撃を受ける 隊員Bが笑って言う
「あっははっ!アッちゃん チョー面白れー!その現隊長である 少佐の目の前でそんな事言ったら 減給決定なのにー!」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「げぇえ!し、しまった…」
隊員Aがぎこちなくハイケルへ振り返る ハイケルが言う
「アラン隊員の意志は理解した よって 本人の希望通り」
隊員Aが慌てて言う
「いやぁあっ!しょ、少佐ぁー!今のはっ 何かの間違えで!…あ!そうだっ!ほらっ!モルヒネの幻覚作用とかっ!?」
ハイケルが言う
「私は 自分に投与した覚えは無い」
隊員Aが言う
「いやぁあっ!きっとっ モルヒネは 投与した本人にも 作用が生じるとかって言いますし!?」
ハイケルが呆気に取られて言う
「…そうなのか?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「え!?信じた!?あ、はいっ!そうそう!そう言いますから 使用には厳重な注意を!」
隊員Bが言う
「あー!アッちゃん 少佐に嘘教えてるー!」
ハイケルが表情を顰めて言う
「嘘なのか?」
隊員Aが慌てて言う
「え!?いやっ!?それはその…っ 嘘も方便って言いますし!」
ハイケルが不満そうに言う
「嘘は嫌いだ よって アラン隊員を 国防軍への虚偽抵触の罪で 3ヶ月間3割の減給と 駐屯地周回1000週の罰を与える」
隊員Aが呆気に取られて言う
「そ、そんなぁ~…」
ハイケルが間を置いて微笑して言う
「…冗談だ」
隊員Aが衝撃を受ける ハイケルが言う
「私は それほど単純な嘘を信じるほど 可愛くは無いんだ」
隊員Bが笑う
「さっすが 少佐ぁー!チョー面白れー!あっはははっ!」
隊員Aが脱力して言う
「少佐ぁ~… こんな時にまで 勘弁して下さいよぉ~…」
隊員Aがガクッとうな垂れる ハイケルが微笑する 隊員Bが笑う
「にひひっ」
救護班が担架に乗せたエルムを運んで行く ハイケルが視線で追った後言う
「国防軍レギスト機動部隊 作戦を終了する 総員 国防軍レギスト駐屯地へ 帰還せよ」
隊員たちが笑み敬礼して言う
「了解っ!少佐ぁっ!」
ハイケルが微笑する
【 国防軍レギスト駐屯地 医療室 】
医者が言う
「打撲と左のあばら骨にヒビが入っていますが 入院やこれと言った治療はしなくても良いでしょう ただし… くれぐれもっ!1週間の任務は勿論 訓練も禁止です!」
ハイケルが表情を顰めて言う
「1週間もっ!?」
医者がカルテを書きながら言う
「体を壊したいのなら 止めはしませんよ?」
ハイケルが視線をそらして言う
「…了解」
医者が苦笑して言う
「とりあえず3日後に一度来て下さい 様子を確認して 期間を縮められそうなら お伝えをしますから」
ハイケルが立ち上がって言う
「感謝する」
医者が微笑して言う
「くれぐれも お大事に」
ハイケルが立ち去る
ハイケルが医療室を出て通路を歩くと前方の病室の扉が開きエルムが出てくる ハイケルが衝撃を受ける エルムがハイケルに気付き顔を向ける ハイケルが言う
「エルム少佐 何処へ行く気だ?」
ハイケルがエルムの下へ行く エルムが言う
「帰還する」
エルムが歩き出す ハイケルが言う
「待て」
エルムが立ち止まり僅かに視線を向ける ハイケルが言う
「お前は1週間の任務及び訓練の禁止所ではない 1週間以上の入院治療が必要だ」
エルムが言う
「この腕は再生不可能だ 治療の必要は無い」
ハイケルが言う
「切断をするにしても 最低1週間の入院と5日の静養が必要だ それに 輸血や増血剤の投与した位では」
エルムが言う
「確かに 血は足りていない だが 必要も無い」
ハイケルが言う
「どう言う意味だ?」
エルムが歩き出す ハイケルが追って言う
「待てっ その状態で 何処へ行くのかと訊いている ヴォール・ラゼル・ハブロスの屋敷へ戻っても 警備などは」
エルムが言う
「無理だな」
ハイケルが言う
「ならば 治療を受け 警備に立てる状態まで 回復させてから戻るべきだ」
エルムが言う
「そうだな それは正しい だが、私には任務がある」
ハイケルが驚いて言う
「…まさか」
ハイケルが立ち止まる エルムが立ち止まって言う
「ハイケル少佐 礼を言う」
ハイケルが驚く エルムが言う
「私がお前であったなら 迷いなく退避していた だが、お前は お前の隊員たちと共に残り戦った …お陰で 私が この任務を遂行出来る」
ハイケルが微笑して言う
「”当然だ”」
エルムが言う
「そうか やはり お前は甘い」
ハイケルが衝撃を受ける エルムが立ち去る ハイケルが表情を顰め間を居て言う
「可愛く無い奴だ」
ハイケルが苦笑し立ち去る
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
エルムが部屋へ入って来て 暗い部屋の中を進む エルムβが椅子に座りベッドを見ている エルムが横に立ち言う
「帰還した」
ベッドの上でラゼルがゆっくり目を開き微笑して言う
「お疲れ様でありました 少佐… お怪我を?」
エルムが言う
「右腕を負傷した 再生不可能だ」
ラゼルが苦笑して言う
「申し訳ありません 少佐 自分は もう…」
エルムが言う
「問題ない デコイも全て失った 片腕であっても 機動力は こいつよりはマシだ」
椅子に座ったエルムβは意識なく視線を落として居る ラゼルが微笑して言う
「そうですか それでしたら… …少佐」
エルムが言う
「何だ 軍曹」
ラゼルが言う
「どうやら お別れの様であります…」
エルムが言う
「了解」
ラゼルが微笑して言う
「そう言って下さる少佐に 看取って頂けるのでしたら… 自分は 安心であります…」
エルムが言う
「そうか なら良いんだ」
ラゼルが言う
「少佐… どうか… 少佐は…」
ラゼルが目を閉じる エルムが視線を下げ 自分の左手を見る ラゼルがエルムの左手を握っている エルムがそれを確認してから 自分の手をラゼルの手から抜き そのままラゼルの手首に触れて言う
「20時19分 ヴォール・ラゼル・ハブロスの死亡を確認」
エルムがその手をラゼルの顔近くへ持って行き 一瞬止めてから ラゼルの側頭部へ触れ視線をサイドテーブルへ向ける サイドテーブルに小さな道具が置かれている エルムが目を細めて言う
「任務を開始する」
エルムが小さな道具を手に取り 先ほどまで手を当てていたラゼルの側頭部へ道具を当てる エルムが目を細めると 小さな火薬の音がする 椅子に座っているエルムβが顔を上げ 立ち上がる
【 ハブロス家 アースの部屋 】
アースがノートPCを操作して息を吐いて言う
「犠牲は少なくなかったが マルック駐屯地が残ってくれた事は不幸中の幸いだった… …また帝国は マシーナリーを送ってくるのだろうか?政府は人を送ったと言っていたが やはり明日早くにもミックワイヤー長官へ確認を…」
アースがコーヒーを取ろうと手を伸ばし ふと気付いて顔を向けると エルムβが立っている アースが驚いて言う
「エ、エルム少佐っ!?…いや デコイの方か」
アースが一度息を吐いてから 気を取り直して言う
「とは言え エルム少佐?例え意識の無い人形であろうと その人形を通し 貴方本体の意識とは 繋がっているのだろう?そして ここは私個人の部屋 いくら祖父上の遣いだとしても ノック位はしてもらいたい」
エルムβが言う
「『悪かったな』」
アースが表情を顰め溜息を吐く エルムβが不器用に片腕を差し出し 握られていた手を開く アースが疑問しエルムβの手に乗せられている物を見て言う
「これは?これを私へ届ける様にと?」
アースが手を向けると エルムβが手の平を逆さまにして アースの手にマイクロチップの入った透明なケースを落とす アースがそれを見て疑問する エルムβが言う
「『アース・メイヴン・ハブロス お前に アールスローン戦記の原本を託そう』」
アースが驚き エルムβへ言う
「これがっ アールスローン戦記の原本っ!?」
エルムβが一歩下がって言う
「『20時19分 ヴォール・ラゼル・ハブロスの死亡を確認』」
アースが驚き思わず席を立って言う
「祖父上が!?」
エルムが言う
「『任務完了』」
アースが言う
「待てっ エルム少佐っ!」
エルムβが青い炎を纏い一瞬にして白い灰になる アースが呆気に取られてから 慌てて部屋を出て行く
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
エルムが言う
「任務完了だ 軍曹」
エルムが間を置いて視線を向ける ベッドの上にラゼルが目を閉じている エルムが僅かに目を細めてから言う
「…国防軍レギスト機動部隊 作戦を開始する」
エルムが銃を抜き 国防軍のその銃を見てから振り返る 周囲にエルムの隊員たちの幻覚が見える
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 玄関前 】
アースが走って来て 周囲を見ながら言う
「この時間に 警備を行うエルム少佐が 居ないとはっ!?」
アースが玄関のノブに手を掛けると 室内から銃声が1発響く アースが驚き慌ててドアを開け 通路を走り ラゼルの部屋の扉を開け言う
「エルム少佐っ!?…っ!」
アースが驚き息を飲む アースの前方 エルムが銃を持った手を下ろすと 人形の様に倒れる アースが呆気に取られる
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルが言う
「君の怪我は 大した事は なかったのか?」
軍曹が言う
「はっ!盾を貫いて自分の腕まで到達したとは言え 弾丸そのものの威力は 盾に当たった時点で 抑えられていた様でして!腕の表面に浅い怪我を負った程度なので 2日ほど様子を見れば 訓練を行っても良いとの事でありますっ!」
ハイケルが言う
「そうか …羨ましい限りだ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はっ!?」
ハイケルが顔を背けて言う
「エルム少佐だ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はぇっ!?エ、エルム少佐が う、羨ましいとは…?」
ハイケルが言う
「医務室を出てすぐに エルム少佐と遭遇した …こちらが 1週間の任務及び訓練の禁止を受けているにも拘らず 奴は片腕を再生不可能な状態にしていながらも 半日と置かずに出て行った… ふんっ …悪魔の兵士であるなら 怪我の治療さえ不要なのだろう」
軍曹が困って言う
「あ、あの…っ」
ハイケルが言う
「当然だな?何度でも蘇るほど丈夫な体なんだ おまけに あのマシーナリーを素手で押さえ 苦痛による意識の喪失も無い… そして、あれほど強力な銃を 合計で6発も撃ち 持ち堪えた… 機動隊員として 完璧だ …私も悪魔の兵士であったなら…」
軍曹がハッとして言う
「その事でありますがっ!少佐っ!」
ハイケルが言う
「どうした?軍曹?」
軍曹が表情を困らせつつ言う
「その…っ 自分は…っ 出来ればっ お伝えをしたくなかったのでありますがっ …やはりっ お伝えをしない訳には 行かなくなって来たかと…っ」
ハイケルが言う
「何だ?」
軍曹が言う
「少佐っ!実はっ!少佐は…っ!」
軍曹の携帯が鳴る 軍曹が呆気に取られる ハイケルが一瞬疑問した後言う
「防長閣下の任務かもしれないだろう?出たまえ」
軍曹が表情を困らせて言う
「は、はぁ… では 失礼を致します…」
ハイケルがノートPCへ視線を向ける 軍曹が少し下がりながら携帯を取り出し ディスプレイを見て軽く驚いて言う
「うん?兄貴から…?」
ハイケルが反応して視線を向ける 軍曹が携帯を着信させ耳に当て 間を置いて驚いて言う
「…え?祖父上がっ!?」
ハイケルが気付き視線をそらす 軍曹が言う
「…そうか では 最期はエルム少佐だけが看取り… …え? …それはどう言う意味なのだ?エルム少佐は 悪魔の兵士である そのエルム少佐が し、…死ぬなんて事はっ!?」
ハイケルが驚き軍曹を見る
【 マスターの店 】
TVでニュースがやっている キャスターが言う
『本日最初のニュースです 昨夜20時19分 元国防軍総司令官でありました ヴォール・ラゼル・ハブロス様が 老衰の為 お亡くなりになりました ヴォール・ラゼル・ハブロス様は 女帝陛下の親兵である 陛下の盾 国家家臣防長の任命を頂いていた事もあり 葬儀には…』
老紳士が静かに言う
「ハブロス総司令官が お亡くなりになったか…」
老紳士が視線を落とす マスターが気付いて言う
「現総司令官も ハブロス総司令官ですが ヴォール・ラゼル・ハブロス様を そうお呼びになるとは …やはり?」
老紳士が気付き苦笑して言う
「…フォッフォッフォ 気付かれておられましたか マスター …流石ですね?」
マスターが微笑して言う
「やはり 国防軍に関わる お方でしたか」
老紳士が微笑しコーヒーを持って言う
「もうずっと昔の事です それこそ ヴォール・ラゼル・ハブロス様が 総司令官で居られた頃の…」
老紳士がコーヒーを飲む マスターが微笑する 老紳士がコーヒーを離し一息吐く TVからキャスターが言う
『共に 同日 昨夜20時25分頃 元国防軍17部隊隊長 エルム・ヴォール・ラゼル少佐が お亡くなりになりました』
マスターが驚きTVへ振り返り 数歩TVへ近付く TVからキャスターが言う
『死因は 頭部損傷 拳銃による自殺であったと断定 ヴォール・ラゼル・ハブロス様の訃報を聞き駆け付けた ヴォール・ラゼル・ハブロス様の孫である アース・メイヴン・ハブロス現国防軍総司令官が 1発の銃声を確認 直後を目撃されたと言う事で…』
マスターが呆気に取られる 老紳士が苦笑し目を閉じて言う
「やはり… エルム少佐は 追ってしまわれたか… お寂しかったのでしょうな?」
マスターが驚き老紳士を見る
【 墓地 】
ハイケルがハブロス家の豪華な墓標を見て 一箇所で視線を止め目を細める 軍曹が言う
「エルム少佐は 祖父上と養子縁組をしておりましたので お名前の記載場所は下げられますが 結果として同じ墓標の下に 眠る事になられます」
ハイケルが言う
「姓を持たない3構想の名だ 親とされる者が亡くなり 12時間を経過した後では 養子の縁は抹消される… その前に手を打ち ハブロス家の豪華な墓に入ろうとは 下賎な奴だ …さぞかし 寝心地が良いだろう」
軍曹が苦笑して言う
「祖父上は エルム少佐の身元引き受けの欄に ご署名もされておりましたので 例え 12時間を経過し エルム少佐のお名前が1構想へ戻られていたとしても 同じ結果になられたかと」
ハイケルが言う
「だが、そうとなれば ここに記される名は 変えられていた …3構想の名に拘る辺りが 世代の違いか」
軍曹が苦笑して言う
「少佐 流石にそれは… そもそも エルム少佐を養子にしたのは 祖父上のご希望であったと言う話ですので エルム少佐ご自身は 拘っては居られなかったかと」
ハイケルが言う
「そうなのか …では 何故自殺をした?それらの他に 奴が自ら命を絶つ理由など…」
軍曹が困って言う
「は… はぁ… それは 確かに…」
ハイケルが言う
「それとも ヴォール・ラゼル・ハブロスは 自身が死んだ後 12時間以内に 自分の後を追う様にと 命令していたのか?」
軍曹が慌てて言う
「それはありませんかとっ!」
ハイケルが言う
「だろうな」
軍曹が表情を落とす ハイケルが墓標を見て言う
「何度でも蘇る 悪魔の兵士だろう?さっさと蘇って見せろ」
ハイケルが一輪の花を投げる 沢山の花が置かれている墓標の中 エルムの名の近くに花が落ちる 軍曹がハイケルの投げた花を見る ハイケルが言う
「ふん…っ だが、不死身の兵士とはいえ 歳を取ると 蘇れなくなるそうだな 70歳で引退か」
軍曹が言う
「あ… それは…」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う
「エルム少佐の… 悪魔の兵士の年齢ではなく 祖父上のご年齢の事で」
ハイケルが言う
「そうなのか?」
軍曹が視線を落として言う
「はい… 悪魔の兵士は 元は アールスローン戦記の原本を 身に持つ者を守る事が 使命でありまして… その原本を所持する者が 歳を取って寿命を迎えるのであれば 悪魔の兵士は その役目を終える訳でありますので」
ハイケルが言う
「なるほど それで蘇らなくなるのか …ふっ 面白い話だ」
軍曹が呆気に取られる ハイケルが背を向けて歩き出して言う
「それがアールスローン戦記の原本の物語か」
軍曹が苦笑し言う
「はっ そうであります!」
軍曹がハイケルに続く
【 警察留置所 】
メルフェスが視線を落とし独房の中に居る 警官1がやって来て言う
「カルメス囚人 出ろ」
メルフェスが視線を向ける 警官1が牢の鍵を開けて言う
「ミックワイヤー長官が お前をお呼びだ」
メルフェスが視線を強める
ミックワイヤーが椅子に座っている メルフェスが警官1に連れられやって来る ミックワイヤーが視線を向ける メルフェスが正面の椅子に座る ミックワイヤーが言う
「カルメス元長官 …いえ、元外交長 帝国の事を 教えて頂けませんか?」
メルフェスがミックワイヤーを一瞥してから視線をそらす ミックワイヤーが言う
「先日 国防軍マルック駐屯地に マシーナリーの大群が押し入りました それを受け 我々アールスローン政府は 帝国へ人を送りましたが それっきり 連絡が付かなくなりました」
メルフェスが言う
「むやみに人など送っては 帝国のご機嫌を損ねるだけですよ」
ミックワイヤーが言う
「ではどうしろと?」
メルフェスが言う
「手土産でも用意しては如何です?」
ミックワイヤーが言う
「生憎 帝国が どの様なものを好まれるのか 私には分かりかねます それに 危害を加えて来たのはあちらです 我々政府はその抗議として 人を送りました」
メルフェスが言う
「では 痛み分けですね アールスローンが帝国からの使者を破壊したのなら 帝国も こちらからの使者を破壊されるでしょう」
ミックワイヤーが驚いた後 表情を顰めて言う
「こちらは平和的解決を求めていますっ その我々へ 帝国は 殺人機械を送り込んで来たのですよ!?」
メルフェスが言う
「殺人機械とは 失敬ですね… マシーナリーとて指令を受けていない状態であれば… こちらが敵意を示さない限り 攻撃などはしませんよ 国防軍マルック駐屯地へ押し寄せたマシーナリーも ただ、アールスローンの地を 探索にやって来ただけなのでは?」
ミックワイヤーが言う
「馬鹿なっ 国防軍マルック駐屯地では 多くの兵士が死傷しましたっ その彼らが 無駄死にだったとでも仰るのかっ!?」
メルフェスが言う
「帝国は 戦っているのですよ… 今も尚 アールスローンの 為に…」
ミックワイヤーが呆気に取られる メルフェスが言う
「だから彼らは 力を欲し 力を探す… アールスローンの力は 何処に眠らされているのか… ペジテの姫が得た力は 今は何所で眠っているのか…?…それを手土産にすれば 帝国は 喜んで和平を結んでくれるでしょう」
ミックワイヤーが視線を強めて言う
「とても信じられん…」
メルフェスが力なく笑う
「ックックック…」
ミックワイヤーが表情を困らせる 警官1が言う
「ミックワイヤー長官 カルメス囚人は 精神疾患を抱えていますので」
ミックワイヤーが警官1を見て言う
「そうか… 分かった もう良い」
警官1が言う
「はっ」
警官1がメルフェスを連れて言う
「よし、カルメス囚人 部屋へ戻れ」
メルフェスが微笑して言う
「お前たちは あの攻長に騙されているのだ… 奴は攻撃の兵士ではない… 奴は… アールスローン戦記の悪魔の兵士は レギストにっ!」
警官1が相手にしないで言う
「分かった分かった カルメス囚人 部屋へ戻って アールスローン戦記でも 読んでいなさい」
メルフェスが部屋を出て行く ミックワイヤーが見送った後席を立つ
【 国防軍総司令部 総司令官室 】
アースが言う
「そうですか カルメス元長官も…」
ミックワイヤーが疑問して言う
「カルメス元長官 ”も” とは?」
アースが言う
「カルメス元長官より以前… まだ私の父が 国防軍総司令官であった頃の 対する政府の長官 アミレス長官が」
ミックワイヤーが言う
「あぁ… そうでしたね アミレス長官も 精神疾患が原因で 長官の任を抹消されましたね」
アースが言う
「実は ミックワイヤー長官」
ミックワイヤーが顔を上げて言う
「はい?」
アースが言う
「公式にはしていませんが 私の父である ヴォール・アーケスト・ハブロスが 国防軍総司令官の任を抹消されたのも 同じ事が原因なのです」
ミックワイヤーが驚いて言う
「同じ事…!?そう だったのですか…?」
アースが言う
「そして、ずっと気になっていた事なのですが …それら 精神疾患を伴い 任を抹消された3名は皆 一度帝国へ向かい 戻ってから 何らかの事件を起こした者たちなのです」
ミックワイヤーが呆気に取られて言う
「それはっ 本当ですかっ!?」
アースが言う
「ただの偶然であると 言ってしまえば それまでの話ですが その彼らの起こした事件が 皆 アールスローン戦記の原本に関わる事で」
ミックワイヤーが言う
「…では カルメス元長官が言っていた様に 帝国は アールスローン戦記に記された 攻撃の兵士と守りの兵士を アールスローンの力として 求めていると?」
アースが言う
「断言は出来かねますが… それから こちらは憶測ですが ラミリツ・エーメレス・攻長閣下の… 彼の兄である メイリス元長官もカルメス元長官と共に 以前の内から 帝国と関わりがあったのでは無いかとも?」
ミックワイヤーが言う
「政府の外交は 帝国の相手が主なものと言って 過言ではありません そして、帝国には 我々アールスローン政府が そうしなければならないだけの力がある その帝国を相手にしてきた彼らが 皆…」
アースが言う
「メイリス元長官から 直接 話を聞けたら良いのですが」
ミックワイヤーが言う
「メイリス元長官は 今も ハブロス総司令官のお屋敷に?暴行を受けた後遺症で 意識が戻られないと伺っていますが」
アースが言う
「彼は 一足先に メイリス家の屋敷へ移され 今も治療を続けているそうです …そして、先日まで居られました 攻長閣下も 私どもの祖父の葬儀の後 メイリス家の屋敷へと戻られました」
ミックワイヤーが言う
「そうですか…」
【 メイリス家 シェイムの部屋 】
ベッドの上にシェイムが眠っている 点滴や医療機材が周囲に置かれている ラミリツが遠くからそれを見て 表情を落として言う
「ただいま戻りました 兄上…」
ラミリツがゆっくりシェイムの横まで来て シェイムの顔を見てから視線をそらして言う
「なんだ… 僕も同じ事やってるや?…エルムの事 笑えなかったね?」
ラミリツが苦笑しM82を取り出し両手で持って見ながら言う
「てっきり これからは 拳銃の訓練でもやるんだと思ってた… なのに」
M82に涙が落ちる ラミリツがM82を握り締めて言う
「なんで… なんで死んじゃうんだよ…っ アイツら助けて 無事に戻ったって聞いたから 安心してたのに…っ ラゼル様が これからも ずっと僕を守る様にって 命令してたのに… なんで… 一番重要な命令 無視するなよっ」
ラミリツが泣いた後 涙を拭い気を落ち着かせてから シェイムを見て息を吐く
【 マスターの店 】
店の来客鈴が鳴る マスターが顔を向けて言う
「いらっしゃいま… よう、ハイケル」
ハイケルが言う
「…ああ」
マスターがコーヒーを淹れながら言う
「なんだか色々あったが とりあえず 無事に戻ったか」
ハイケルがカウンター席に座って言う
「そうだな」
マスターが苦笑しコーヒーを出す マスターが言う
「それで?」
ハイケルがコーヒーを持って言う
「1週間の任務及び訓練の禁止だ」
マスターが軽く笑って言う
「最初に言う事がそれかよ?」
ハイケルがコーヒーを飲んで言う
「悪かったな」
マスターが自分の分のコーヒーを淹れながら言う
「相変わらず レーベット大佐の真似か?」
ハイケルが言う
「レーベット大佐の真似ではなかった」
マスターがコーヒーを飲もうとして疑問してハイケルを見る ハイケルが言う
「そのレーベット大佐は エルム少佐の真似をしていたんだ」
マスターが呆気に取られる ハイケルが言う
「だからずっと違和感があった 大佐のお言葉にしては 品が無過ぎる …以上だ」
ハイケルがコーヒーを飲む マスターが苦笑して言う
「なるほどな?元を聞いたから 分かったって事か」
マスターがコーヒーを飲む ハイケルが言う
「…で、ここへ来たのは」
マスターが苦笑して言う
「ああ、用意しておいたぜ」
マスターが言って棚の奥からディスクを取り出して言う
「俺が苦労に苦労を重ねて作り上げた お前の マスタートップシークレット~!」
ハイケルが言う
「個人能力データと言え」
マスターが苦笑して言う
「コイツを元に 今度はお前専用の銃を作るのか 凄いよなぁ フルオーダーメイドって奴だ」
ハイケルが言う
「そうではあるが 俺にはエルム少佐のような 超人的な筋力がある訳ではない 俺のデータを元に作りはするが 誰もが使いこなせる銃になるだろう」
マスターが気付いて言う
「ん?うん… そうなんだよなぁ?」
マスターが考える ハイケルが言う
「どうした?」
マスターが言う
「あ… いや、別に」
ハイケルが疑問する マスターがディスクをハイケルへ渡す ハイケルが受け取って言う
「礼を言う」
マスターが微笑して言う
「いやぁ とっくに国防軍レギスト駐屯地情報部を引退した俺が アールスローンを守るレギスト様のお役に立てるとは 光栄だね!」
ハイケルが言う
「情報部に戻ってくれば もっと役に立つんだ」
マスターが苦笑して言う
「っはは 相変わらず 嬉しいね?…考えて置くよ」
ハイケルがマスターを見る マスターが言う
「で?そいつを ロンドス殿の孫 お前専属の銃技師である ザキル殿の所へ 届けなきゃならないんだろ?」
ハイケルが言う
「あ、ああ… …そうだな」
ハイケルが立ち上がる マスターが微笑して言う
「1週間も禁止を食らったんなら また今度は ゆっくりしに来いよな?」
ハイケルが出入り口へ向かっていた足を止めて言う
「対帝国への作戦を考慮する為に 寄らせてもらう」
マスターが言う
「ああ …情報を集めて置く」
ハイケルが横目にマスターを見てから微笑し 店を出て行く
【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】
軍曹が言う
「よぉおーしっ!では総員!次は 各自のメインアーム訓練所にて 能力の向上に励むのだっ!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解っ!」
隊員たちが各々走って向かう 軍曹が隊員Xへ向いて言う
「では 自分らも 早速っ」
隊員Xが笑んで言う
「はっ!90キロの重石を背負って 駐屯地周回を開始するでありますっ!」
隊員Xが90キロの重石を背負う 軍曹が言う
「おおっ!遂に90キロへ到達したかっ!心強いぞ ゼクス隊員っ!」
隊員Xが言う
「はっ!自分も軍曹と同じ盾を持てるよう 全力で励むでありますっ!」
軍曹が喜んで言う
「よぉおしっ!では 自分も 負けては居られないのであるっ!」
軍曹が100キロの重石を背負う 隊員Xが衝撃を受けて言う
「おおっ!?流石軍曹っ!遂に100キロへ到達をっ!」
軍曹が言う
「うむ!では 参るぞっ!ゼクス隊員!自分に続けーっ!」
隊員Xが言う
「はっ!軍曹に続きますっ!」
軍曹が走り出そうとした瞬間 軍曹の携帯が鳴る 軍曹が衝撃を受け携帯を取り出しながら言う
「むっ!?折角 気合を入れたと言う所に…」
軍曹がディスプレイを見て呆気に取られる
【 国防軍レギスト駐屯地 応接室 】
窓の外で隊員Xが1人で走っている 軍曹がそれを見てから振り返って言う
「突然 国防軍レギスト駐屯地へやって来るとは 一体何用であるのか?兄貴」
アースがソファに座っていて アールスローン戦記の原本 マイクロチップの入ったケースを テーブルに置いて言う
「ここへ来たのは こちらを調べる為だった… 訳だが」
軍曹が疑問し アースの向かいの席に座って言う
「これは… 一体何であるか?」
軍曹がマイクロチップを見て頭を捻っている アースが言う
「知らないのか?」
軍曹がアースを見て言う
「当然なのだ 俺は 機械工学やその辺りの事は さっぱりなのだ」
アースが自身の頭を軽く示して言う
「お前の頭の中に入っている物だぞ」
軍曹が疑問して言う
「はぇ?」
アースが言う
「これが アールスローン戦記の原本だ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「こ、これがっ!?」
アースが言う
「これを脳核の一部へ入れる事により その者は このマイクロチップに記録されているデータを 読み取る事が可能となるだそうだ」
軍曹が呆気に取られる アースが言う
「ただ、その読み取り方は 組み込まれた者によって それぞれ異なるらしい ある者は目を閉じるだけでその内容を読み取る事が出来 また、ある者は歌を歌おうとすると おのずとその内容を 歌い上げる事もあったとか」
軍曹が呆気に取られる アースが言う
「お前は単純だから アールスローン戦記の原”本”と聞き 素直に白い本へ 映し出す方法となったのか?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「な!?何故その事を 兄貴が…っ!?」
アースが苦笑して言う
「広い屋敷とは言え 毎夜呻きながら同じ事をやっていれば 私の目にも入る」
軍曹が苦笑し頭を掻いて言う
「う… うむ… いつもイヤホンを付けている為 兄貴に見られていたとは 気付かなかったのだ…」
アースが苦笑して言う
「そうだろうな 私がすぐ後ろに居ても 気付かないのだからな?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「す、すぐ後ろまでっ!?…で、では 兄貴も一緒に 原本を読んでいたのであるか?」
アースが言う
「…いや、残念ながら 私の目には ただの白い本に 白いページにしか見えない 原本を読み取っているのは お前だけなのだろう」
軍曹が呆気に取られる アースが言う
「そこで私も 祖父上から頂いた この原本を私自身に… と、考えたのだが 残念ながら これを埋め込む事が出来るのは 人体の脳の形成がなされる以前 つまり 産まれる前でなければ不可能との事だった …それで分かった この原本を”与えられる”のでは無く”託される”者が ハブロス家の当主になると言う それがどう言う意味なのかを な…?」
軍曹が悩んで言う
「う…うむ…?」
アースが言う
「とは言え 帝国との戦いはもう始まっている そうとなれば 今、このアールスローン戦記の原本に眠る アールスローンの力の在り処を 読み解く事が出来るのは アーヴィン… お前しか居ないんだ」
軍曹がアースを見る アースが言う
「アーヴィン!どうか私に教えてくれ アールスローンの力 悪魔の兵士が眠る その場所をっ!」
軍曹が衝撃を受けてから 困って視線を逸らして言う
「え!?あ、いや その… そちらの… 悪魔の 兵士は…」
アースが言う
「国防軍レギスト機動部隊は …いや、この国防軍レギスト駐屯地は その悪魔の兵士と共に戦う為に 存在していると言っても過言では無いっ お前も知っているだろう?あのエルム少佐だ 彼は 我々の先代における悪魔の兵士であり レギスト機動部隊隊長にして この国防軍レギスト駐屯地の全ての力を使い 帝国と戦い アールスローンを守った!」
軍曹が俯いて言う
「…そうなのだ だから 兄貴っ!やはり レギスト機動部隊の隊長はっ」
アースが言う
「レギスト機動部隊の隊長はっ 悪魔の兵士にしか賄えないっ!そうとなればっ」
軍曹が目を瞑り悔やみながら言う
「そうなのだっ!だから やはりっ!」
アースが気合を入れて言う
「今こそっ!お前の持つ アールスローン戦記の原本からっ 現代の悪魔の兵士が眠る その場所を読み解くのだっ!アーヴィンっ!」
軍曹が思わず言い掛けてから 衝撃を受けて言う
「はっ!了解…っ!…って?はえ!?」
軍曹が音楽イヤホンを付け 白い本をテーブルに置く アースが言う
「私が祖父上から伺った話では 自身が調べたいと想う項目を 強く意識に留め 原本を読もうとすれば 読まれるのだとか?」
軍曹が表情を困らせて言う
「う… うむ…」
アースが身を静めて言う
「分かったら教えてくれ お前がその場所を見付け出すまで 私はここに居る」
軍曹がアースを見て言う
「で、では …兄貴も一緒に読んではくれぬか?」
アースが疑問する 軍曹が表情を困らせて言う
「俺は元々 文章を読み解くのは 得意ではないのだ… おまけに 原本の言葉は 何とも堅いものが多く…」
アースが表情を落として言う
「そうだな… 私も原本の内容を目にする事が 出来るのであれば… それこそ 昔の様に お前へ読んで聞かせてやる事も出来るのだがな?」
軍曹が苦笑した後言う
「そう言えば 昔は良く兄貴に …うん?いや?しかし?マスターや少佐は 自分と一緒に?…あっ もしやっ!」
軍曹が音楽イヤホンを外して言う
「兄貴も自分と一緒に!音楽を聞いていれば 見えるのやもしれん!以前 ラミリツ攻長を助けに向かった時も この様にして 誘拐犯の者へ音を聞かせたのだ」
アースが呆気に取られる 軍曹が音楽プレイヤーと音楽イヤホンをテーブルへ置き 再生を押す デスメタルミュージックが音漏れして聞える アースが衝撃を受け表情を顰めて言う
「アーヴィン… ハブロス家の者として そう言う音楽は聴かない様にと…」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「い、今はっ その事に対しては 目を瞑って欲しいのであるっ …と言う事でっ!」
軍曹が急いで白い本を手に取りページを開いて意識を集中させる 白いページに文字が浮かび上がってくる アースが驚いて言う
「み、見えるっ 私の目にもっ!?」
軍曹が微笑して顔を上げると アースの姿が無くなっている 軍曹が呆気に取られ疑問すると アースが軍曹の隣に座り本を覗き込んで言う
「これが ハブロス家の家宝っ アールスローン戦記の原本か 素晴らしい!」
アースが嬉しそうに原本のページをめくる 軍曹が微笑する
【 ロンドスの工房 】
PCモニターにデータが表示されている ザキルが考えながら言う
「う~ん…」
ハイケルがザキルを見てから他方を見る ハイケルの視線の先 ロンドスがMT77を分解している ハイケルが言う
「その銃は 貴方が作った物ではなかったそうだな?」
ロンドスが笑って言う
「フォッフォッフォ… 流石は少佐です すぐに気付かれてしまいました」
ハイケルが言う
「奴は貴方が作った銃を使い 長年戦ってきたのだろう そうとなれば 同じ者に作られる銃の持つ癖には すぐに気付く」
ロンドスが微笑して言う
「いえ 少佐はこの銃を撃つ以前に 気付かれていたのです」
ハイケルが疑問して言う
「どう言う意味だ?」
ロンドスが作業を続けながら言う
「恐らく 少佐はこの銃を手に取った時点で気付き それで私に訊いたのです 銃の出来を… 普段の少佐でしたら 私へその様な質問はなさいません 少佐は銃の出来ではなく ザキルがハイケル少佐の銃技師として どうかと言う事を 私に訊いていたのです」
ハイケルが言う
「…それで 貴方は何と答えたんだ?」
ロンドスが苦笑して言う
「しっかりとデータを取り それなりの破壊力を持つ銃を作られると 私が自信を持って ハイケル少佐へ紹介出来ると お答えしました その最終確認として ザキルの作ったMT77を 少佐ご本人が試して下さいました …その 少佐からのお答えは」
ハイケルが言う
「”詰めが甘い” と」
ロンドスが笑って言う
「フォッフォッフォ …流石は少佐です はっきりと仰って下さいました」
ハイケルが視線を逸らして言う
「だが、それで良いと …私には合う とは どう言う意味だ?」
ロンドスが言う
「少佐はデコイを使い 銃を撃つ事が出来ました しかし、ハイケル少佐には それは出来ません」
ハイケルが言う
「だから 身を壊す程の銃を作らない その甘さが良いと言う事か?」
ロンドスがMT77の解体を終えて言う
「そうかもしれません 少佐ご本人では無い私には 真意は分かりかねますが…」
ハイケルが不満そうに言う
「何故 そう言う重要な所を いつも中途半端に言うんだっ 奴は!?…余計な事はハッキリと言っておきながら」
ロンドスが苦笑して言う
「少佐は感情を制限されているせいで 伝えたくとも伝えられない 事があるのですよ」
ハイケルが言う
「感情を制限?」
ロンドスがMT77を箱へ入れながら言う
「戦いを行う兵士として 情は戦力の喪失を招きます 怒りも悲しみも憎しみも然り 冷静な判断力を失うそれらの情は 強くならない事が好ましい …という考えの下 作られたのがエルム少佐の個体だそうです 戦いの兵士としては相応しいですが 人としては 寂しいものです」
ハイケルが呆気に取られて言う
「作られた…?」
ザキルが頭を抱えて言う
「う~っ 爺ちゃんっ やっぱ このデータじゃ どれも無理だよ!エルム少佐のデータとは 何もかも違っててー!」
ロンドスが微笑して言う
「フォッフォッフォ そうじゃ ハイケル少佐は感情も力も通常の人と何も変わらん エルム少佐とは違うのじゃ」
ハイケルが表情を顰めて言う
「当然だ そもそも 私は悪魔の兵士ではなく 通常の兵士だ 奴と同じに考える事自体 間違っていると気付け」
【 国防軍レギスト駐屯地 応接室 】
軍曹が睡魔に襲われ眠りそうになる 軍曹の頬がつねられ 軍曹が痛がって目を覚まして言う
「いだだだだっ!い、痛いのだっ 兄貴」
軍曹が隣のアースを見る アースが白い本を見ながら言う
「寝るんじゃないっ これで何度目だと…」
軍曹が表情を困らせて言う
「うぅ~… そうは言っても 俺はどうしても… そもそも 悪魔の兵士は 少佐で 眠ってなど…」
アースがハッとして言う
「あったぞっ!アーヴィンっ!」
軍曹が驚いて言う
「えぇえっ!?」
アースが言う
「そうか、国防軍の駐屯地は そう言う事で 妙な偏りが…」
軍曹が慌てて言う
「あ、あったとはっ!?一体 何があったと言うのだっ!?兄貴っ!?」
アースが言う
「寝ぼけているのか アーヴィンっ!?今 我々が探しているのは 我々の世代が必要とする 悪魔の兵士が眠る その場所だっ」
軍曹が驚いて言う
「そ、それが… あったと…?」
アースが言う
「個人的にはもっと読んでいたい所だが 今は急がねばならない アーヴィン レギストを動かすぞ!」
軍曹が言う
「ま、待ってくれ 兄貴 今のレギスト機動部隊は先日の戦いのせいで」
アースが言う
「分かっている 隊長のハイケル少佐を始め 副長であるお前も負傷している だが今回は 戦いをメインとする作戦ではない 我々の仲間 レギストの真の隊長となる 悪魔の兵士を!…お前を守る 攻撃の兵士を迎えに行く作戦だ 後のレギストの隊長となるからには 現レギストのお前たちが迎えに行くのが 筋というものだろう?」
軍曹が視線を落として言う
「レギストの 真の隊長…」
アースが苦笑して言う
「何も ハイケル少佐を除名すると言っている訳ではない 必要とあれば 一時的に隊長の座を 悪魔の兵士へ預け 副長となるか 隊員となるか レギストが帝国との戦いを行う以上 お前もそろそろ 機動部隊を離れる事も考えるべきだろう?」
軍曹が慌てて言う
「自分はっ 皆と共に戦うのだっ!重要な戦いであるのなら 尚更なのだっ」
アースが苦笑して言う
「そうか… とは言え 今は悪魔の兵士を目覚めさせる時だ アーヴィン 国防軍レギスト機動部隊 出動だ!」
軍曹が言う
「りょ… 了解…」
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツがタオルを首に掛けシャワーを浴びた様子で来て言う
「やっぱ 走るのだけは苦手だなぁ エルムが居た時は 無理やり走らされて 何とかなってたけど 1人だと無理みたい」
ラミリツが気付き視線を向け苦笑して向かいながら言う
「エルムが悪いんだからね?僕を置いて ラゼル様の所へ行っちゃうんだもん 愛用の銃だけ渡して 自分の身は自分で守れ とか言うつもりだったんでしょ?ふふ…っ」
ラミリツがM82に触れ表情を悲しませ 首にかけていたタオルで溢れる前の涙をふき取って言う
「あぁ… もう泣かないって決めたんだ 僕は政府の剣 攻長だもんね 政府の代表として… 国防軍と共同する為 レギストと一緒に戦わなきゃいけない だけど… 今のままじゃ カッコ悪くてあいつ等の所へなんて行けないし …でもさ?あいつには沢山仲間が居るのに こっちは1人だなんて不公平だよ …ねぇ エルム やっぱ蘇って来て 僕と一緒に戦ってよ?…ねぇ?良いでしょ?」
ラミリツが苦笑してM82を弄ぶ 受信機が起動して アナウンスが聞える
『緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ 繰り返す 緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』
ラミリツが反応して受信機を見て言う
「17部隊… レギストの召集だっ まさか またマシーナリーの襲撃っ!?」
ラミリツが携帯を操作して着信を確認して言う
「ミックワイヤー長官っ!また 何処かに 帝国からの襲撃がっ!?」
携帯からミックワイヤーの声が聞える
『え?…いえっ こちらでは 確認されていません!』
ラミリツが呆気に取られて言う
「…え?それじゃ 別の事件って事…?」
ラミリツが間を置いてから苦笑して言う
「し、失礼… どうやら 別の事件だったみたい 帝国が関係しないのなら 立ち入らない事にしているから」
ラミリツが携帯を切ろうとする ミックワイヤーが慌てて言う
『あ、しかし 攻長閣下っ』
ラミリツが疑問し 携帯を耳に当て直して言う
「ん?何?」
ミックワイヤーが言う
『帝国に関係する事として 一つお伺いしたい事がありまして… 今 こちらのお電話をお借りしても 宜しいでしょうか?』
ラミリツが言う
「うん、良いけど?」
【 レギスト車内 】
隊員Bが言う
「えー?それじゃ 何で武装招集なのでありますかー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「一応の備えだ ともすれば 悪魔の兵士は あのエルム少佐の様な奴である事も 予想される」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが言う
「そうとなれば 目覚めと同時に 大量のデコイを引き連れ MT90でも放つ… かも しれないだろう?」
軍曹が苦笑して言う
「しょ、少佐 流石にそれは有りませんかと… それに、先ほど兄貴が読み解いた所によりますと 悪魔の兵士は2世代居て 両者の性格は異なると 書かれていたそうであります」
ハイケルが言う
「そうなのか?」
隊員Bが隊員Aへ向いて言う
「アッちゃん アッちゃん それじゃ 俺たちの世代の悪魔の兵士って どんな奴かな?」
隊員Aが笑んで言う
「そうだなぁ どんな奴でも良いけど エルム少佐より人らしい奴だと良いなって 俺は思うよ」
隊員Bが言う
「人らしい奴ってー?」
ハイケルが隊員Aを見る 隊員Aが隊員Bへ向いて言う
「だってさ、あのMT77だって 俺とバイちゃんと少佐の3人で やっとだっただろ?あんな凄い銃を1人で撃てちゃうエルム少佐は… 確かに心強くはあったけど 同じ部隊の仲間としては ちょっと遠い存在で 正直 一緒には戦えないなって 俺は感じたんだ」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Bが言う
「そう言えばそうだねー エルム少佐が隊長だったら 俺も一緒に戦ってるって感じはしないと思うー ずっと前の 俺たちと少佐の関係みたいでー?そうそう!ホント遠過ぎるって感じだよねー」
隊員Aが言う
「だろ?だから俺は 一緒に戦うんだったら やっぱりこの前みたいに 力を合わせて戦える隊長の方が 俺は好きだよ」
隊員Bが呆気に取られて言う
「アッちゃん それって…」
隊員Aが疑問して言う
「ん?」
隊員Bが笑んで言う
「少佐へのプロポーズーッ!?」
隊員たちが噴き出す 軍曹が慌てて言う
「バ、バイスン隊員っ!」
隊員Aが赤くなって慌てて言う
「なっ 何言ってるんだよっ!?バイちゃんっ!」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ」
ハイケルが言う
「軍曹」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「は、はっ!少佐ぁっ!」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「プロポーズとは 何だ?」
全員が衝撃を受けて言う
「「「えっ!?」」」
【 メイリス家 通路 】
ラミリツが通路を歩きながら携帯に言う
「兄は帝国へは行って無いんだ でも、終戦当時なら 外交を取り仕切っていた カルメス殿と一緒に 父が行ったよ」
携帯からミックワイヤーの声が聞える
『攻長閣下のお父様が?』
ラミリツが言う
「うん… それで… 結果として そのお陰で 次の長官に兄が 攻長に僕が就任する事になった けど…」
ラミリツが部屋の前に辿り着き ドアを見て溜息を付いて言う
「今思えば 全部そのせいだよね…」
携帯からミックワイヤーの声が聞える
『は?…それは』
ラミリツが気を切り替えて言う
「いや、何でも無い とにかく 兄は行ってないから もし話が聞けたとしても 帝国の情報は…」
ラミリツがドアを開き 驚いて呆気に取られる 携帯からミックワイヤーの声がする
『そうですか… では帝国の情報は』
ラミリツが叫ぶ
「兄上っ!?」
ラミリツが携帯を落とし走って行く 携帯からミックワイヤーの声がする
『ん?どうしました?攻長閣下?…攻長閣下!?メイリス元長官が どうかなされたのですか!?』
【 政府警察本部 】
ミックワイヤーが携帯に必死に呼びかける
「攻長閣下っ!?攻長閣下っ!」
警官1が言う
「長官?」
ミックワイヤーが警官1へ向いて言う
「何かあったらしい… メイリス邸の警備は今 何処の警備部隊が行っている?」
警官1が言う
「メイリス邸の警備は ラファム地区の警備小隊が受け持っている筈です すぐに連絡を取ります!」
ミックワイヤーが頷いて言う
「うむ、頼む …大事で なければ良いのだが」
警官1が無線機に呼びかける
「ラファム地区 警備小隊 応答を こちら 政府警察本部」
無線機から声が聞える
『こちら ラファム地区警備小隊』
警官1が無線機に言う
「そちらで警備を行っている メイリス邸に 何か異常は無いか?」
無線機から声が聞える
『こちらで警備を行っている メイリス邸外部に 異常はありません!』
警官1がミックワイヤーへ向いて言う
「長官 メイリス邸外部に 異常は無い との事ですが」
ミックワイヤーが言う
「では 直ちに屋敷内へ声を掛け 攻長閣下の様子を伺えと 伝えてくれ 失礼かもしれないが 何かがあった事は 間違いない」
警官1が頷いて言う
「分かりました」
警官1が無線機へ伝えている ミックワイヤーが携帯を見る 警官2が顔を出して言う
「ミックワイヤー長官 宜しいでしょうか?」
ミックワイヤーが振り向いて言う
「うん?…ああ、どうした?」
ミックワイヤーが警官2の下へ行く 警官2がPCモニターを示して言う
「3時間前に 政府警察本部のデータへ アクセスされた記録なのですが」
ミックワイヤーが言う
「多いな… 3時間前と言うと 丁度データ処理の担当が変わる時間か アクセスログが多くなるのは致し方ない」
警官2が言う
「はい ただ、それにしては ログのダブリが多いので 気になって確認をしたのですが その中に」
ミックワイヤーが言う
「うん?」
警官1が言う
「長官!メイリス邸で 事件発生です!」
ミックワイヤーが驚いて言う
「何っ!?どうした!?攻長閣下はご無事かっ!?」
警官1が言う
「攻長閣下はご無事です!しかし メイリス邸で御静養されていた メイリス元長官がっ!」
ミックワイヤーが言う
「メイリス元長官がどうしたっ!?」
警官1が言う
「行方不明になられましたっ!」
ミックワイヤーが驚いて言う
「何だとっ!?」
警官2が言う
「長官っ!先ほどのアクセスログの中に そのメイリス元長官の IDがあったのです!」
ミックワイヤーが驚いて警官2を見る 警官2が言う
「もしやっ メイリス元長官の失踪に 何か関係がっ!?」
ミックワイヤーが携帯を操作して言う
「攻長閣下へ お知らせするっ」
ミックワイヤーが携帯の呼び出しを聞きながら言う
「どうか出て下さいっ 攻長閣下…っ!」
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツが机を叩いて言う
「何でっ!?まさか またっ!?今度は誰が兄上を…っ!?」
ラミリツが俯き 表情を悲しませている 携帯が鳴る ラミリツが顔を上げ携帯を見てから落ち込んで言う
「何をしても… 結局 なんにもならないじゃないか…っ 祖父上も父上も兄上も… 皆 僕を置いて…っ」
ラミリツが携帯から視線をそらすと 視線の先にM82が見え 不貞腐れて言う
「エルムだってっ 僕を置いて!」
ラミリツがM82を掴んで 床へ叩き付けようとすると ラミリツが思い出す
【 回想 】
ラミリツが落ち込んで言う
『…でも不思議なんだ 優しかった 祖父上が亡くなった時は凄く悲しくて それは当たり前だったけど …怖かった父上が亡くなった時も 僕はやっぱり 悲しかった… だから 不思議だと思うんだ ずっと怖くて 嫌いだって思ってたのに…』
エルムが言う
『私には 祖父や父と言う者は無いが 私は 自分の部隊の隊員も 別の部隊の隊員も 同様に守った』
ラミリツが疑問して言う
『別の部隊の隊員まで 自分の部隊の隊員と 同様に?…何で?自分の部隊の隊員の方が 大切でしょ?普通』
エルムが言う
『私にとっては どちらも同じだ 私は 仲間を守る為に 戦っていた』
ラミリツが言う
『仲間を… …じゃぁ 僕が同じ様に悲しかったのは 結局どっちも 僕の家族だったから… かな…?』
エルムが言う
『だから お前も 戦う事を選んだ』
ラミリツが言う
『え?』
エルムが言う
『お前に残された家族を シェイム・トルゥース・メイリスを守れるのは お前だけだ』
ラミリツが呆気に取られて言う
『僕が… 兄上を?はは…っ 何だか 想像付かないよ 僕が兄上を守るだなんて』
ラミリツが苦笑する エルムが言う
『お前ならば 可能だ』
ラミリツが驚く
【 回想終了 】
ラミリツが視線を強め M82を握り締めると 携帯を着信させて言う
「ミックワイヤー長官 悪いけど 力を貸して欲しい」
【 政府警察本部 】
ミックワイヤーが言う
「こちらこそ申し訳ありませんっ!今、警備小隊の者に確認を取らせています メイリス邸への不審者の侵入や その他 全ての出入りを確認させ メイリス元長官の行方を…っ」
警官1が振り返って言う
「長官っ!確認が取られました!」
ミックワイヤーが携帯に言う
「今、確認が取られました 少々お待ち下さい」
ミックワイヤーが警官1へ向く 警官1がミックワイヤーへ伝える ミックワイヤーが驚く
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツが服を着替えている 置かれている携帯からミックワイヤーの声が聞える
『お、お待たせ致しましたっ 攻長閣下っ』
ラミリツが顔を向け 携帯を取って耳に当てる 携帯からミックワイヤーの声が聞える
『申し訳ありません… とても 申し上げ難いのですが…』
ラミリツが言う
「どうかしたの?」
ラミリツが攻長の剣を手に取る ラミリツが通話内容に呆気に取られて言う
「そんなっ!?…そんなの有り得ないよっ!?兄はずっと寝たきりだったんだ それなのにっ!?いきなり自分の足で歩くなんて事 出来る筈が無いっ」
携帯からミックワイヤーの声がする
『私もその様に思うのですが 警備の者は 間違いなく その様にと… 故に 驚きはしたものの お声を掛ける事は出来なかったと』
ラミリツが視線をそらして言う
「それじゃ…?…っ …まさかっ!?」
ラミリツが視線を泳がせる 携帯からミックワイヤーの声が聞える
『更に 申し上げ辛いのですが 先ほど 政府警察本部のデータアクセスログを確認した所 …メイリス元長官の IDが使われた形跡が見付かり そのIDがアクセスしたデータと言うのが…』
ラミリツが驚いた後 怒りを忍ばせて言う
「分かった… 彼なら やりかねない事だよ」
携帯からミックワイヤーの声が聞える
『攻長閣下…っ』
ラミリツが掴んでいた攻長の剣を手放し 視線を変え その先におかれていた物を手に取り服へしまい M82を銃フォルダーに入れ 気を引き締めて言う
「僕が行く ミックワイヤー長官 手遅れにならない為にも 急ぎの車を貸してもらいたい」
携帯からミックワイヤーの声がする
『警備小隊の緊急車両を出します!攻長閣下 どうか… 宜しくお願い致しますっ!』
ラミリツが言う
「了解 …任せてくれっ」
ラミリツが通話を切り 部屋を出て走って行く
【 政府警察本部 】
ミックワイヤーが携帯を見つめる 警官1が言う
「長官っ 警機を招集しますかっ!?」
警官1と警官2がミックワイヤーを見つめる ミックワイヤーが顔を上げて言う
「いや ここは… 攻長閣下へお任せしよう」
警官1が慌てて言う
「しかしっ!もしもの事があれば 折角築かれた 我々政府と国防軍の協力体制に 取り返しの付かない亀裂がっ」
警官2が言う
「それだけではありません!もしもの事が起きれば 政府は アールスローンを帝国へ売り渡したと言われても 間違いではないでしょう!警機を向かわせておけば 最悪 我々も手を打ったと言えます」
ミックワイヤーが言う
「我々が行うべき事は 国防軍と協力し 信頼を持って 共に戦う事だ …そして、攻長閣下であるならば きっと それをやり遂げて下さるだろう この一件は 我々政府の代表である 攻長閣下へ お任せをする!」
警官1と2が顔を見合わせてから心配げに頷く
【 国防軍レファム駐屯地 】
レギスト隊員たちがハイケルを先頭に歩いている 隊員Bが言う
「アッちゃん アッちゃん?緊急指令で出動したのに 移動に40分以上掛かるとかってー?スゲー緊張感無くなった感じしないー?」
隊員Aが苦笑して言う
「今回は緊急指令とは言え 事件や何かじゃないから サイレンを鳴らさないで 2つ分の駐屯地を移動したんだ 40分で着いたのだって早い位だろ?」
隊員Cが言う
「国防軍の駐屯地は 何処も隣り合う駐屯地までの移動時間を 通常30分で行ける様になってるんだ それを考えたら2つ分で40分は十分早いな」
隊員Aが言う
「それもやっぱり サキの兄さんからの情報か?」
隊員Cが言う
「いや、これは 国防軍入隊試験の時に」
隊員Aが思い出して言う
「ああ…っ そう言えば そんなのがあったな …え?あれ30分だったのか!?俺 間違えたし…」
隊員Aが苦笑する 隊員Cが笑う 隊員Bが考えて言う
「あれー?でも確か 俺が前に少佐から聞いた話では 通常移動時間では20分 緊急時は10分だって… ですよねー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「それは国防軍の駐屯地同士では無く 国防軍レギスト駐屯地からの話だ」
隊員Aと隊員Cが呆気に取られて言う
「「え…?」」
隊員Bが笑って言う
「あー そうでしたー!にひひっ」
隊員Aが隊員Cへ言う
「国防軍の駐屯地同士より 国防軍レギスト駐屯地からの時間の方が早いって どう言う事だ?」
隊員Cが考える ハイケルが言う
「私も聞いた話だ 実際に自分で調べた訳ではないが そうとあっても地図上で見る限りでは 頷ける話だ」
隊員Cが気付いて言う
「言われてみればば 国防軍の駐屯地って 妙にいびつだなって思ってたんだが そう言う理由なら 分かる気がする 国防軍レギスト駐屯地から 1つ分を20分で換算すれば…」
隊員Aが考える 隊員Bが疑問してから微笑して言う
「別に良いじゃん?そんなに一杯考えなくってもー 俺たちの国防軍レギスト駐屯地からは 20分が正解ーって事!」
隊員Cが苦笑して言う
「ま、そうだな?俺たちの駐屯地からなら1区間20分だ」
隊員Aが言う
「あ、それじゃ 俺正解だったかも?」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「げっ!じゃ、俺間違えた?」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
ハイケルが言う
「機動部隊の入隊筆記試験での点数は 気にする必要は無い あれはただ やっているだけだ」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが言う
「重要なのは 身体能力試験の結果と共に 情報伝達能力試験の結果 後は 面接だ 従って 機動部隊の試験から 筆記試験を外すべきだと長年言っているが 未だに受け入れられない」
軍曹が苦笑して言う
「少佐 それは… 国防軍のダブルトップシークレットの情報でありますので…」
隊員Bが言う
「あー!そう言えば 俺 入隊試験の時 寝坊して筆記試験 受けそびれたでありますー 少佐ぁー!忘れてたー」
隊員たちが驚き 隊員Cが言う
「まじでっ!?」
ハイケルが言う
「そうだったのか… 私は バイスン隊員は 筆記試験を受けず 実技のみで入隊試験に臨んだものだと思い その頃から 期待していた」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?入隊前から!?」
隊員Bが喜んで言う
「さっすが 少佐ぁー!やっぱ チョー面白れー!」
隊員Aが呆れて言う
「流石少佐… なんて無茶苦茶な…」
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 】
ハイケルを先頭に レギスト隊員がマスタートップシークレット入り口前へやって来ると 衛兵がハイケルを見て一度微笑してから 気を切り替え 敬礼して言う
「お帰りなさいませっ!ハイケル少佐っ」
ハイケルが疑問する 隊員たちが顔を見合わせる ハイケルが間を置いて言う
「…総司令官より 特別任務を受けた 国防軍レギスト機動部隊 隊長ハイケル少佐と 同じく隊員59名は 国防軍レファム駐屯地 マスタートップ シークレットへ向かう 認証を」
ハイケルがIDカードを出すと衛兵が言う
「認証は不要です ハイケル少佐」
ハイケルが疑問して言う
「何故だ?マスタートップシークレットへの接触には 例え総司令官であっても 認証が必要だ」
衛兵が言う
「国防軍のマスタートップシークレットではありましても 例えば 家主が家へ戻るのに 認証などは必要ないでしょう?」
ハイケルが言う
「どう言う意味だ?」
衛兵が軍曹を見る 軍曹が視線をそらす ハイケルが軍曹を見てから間を置いて言う
「…では 通してくれ」
衛兵が敬礼して言う
「はっ 了解!」
衛兵が道を譲る ハイケルが衛兵を横目に見てから先へ向かう 隊員たちが顔を見合わせてからハイケルに続く 衛兵が隊員たちを見送り微笑して警備に戻る
ハイケルと隊員たちが長く緩い下り坂を歩く 隊員たちが周囲を見渡し 隊員Bが言う
「この道何処まで続いてるんだろー?」
隊員Cが言う
「ずっと下り坂でかなり来たから そろそろなんじゃないか?」
隊員Fが言う
「斜角から換算して 今は大体地上から地下8メートルは行ってるから 階数で言えば 地下3階から4階へって所だな」
隊員Bが言う
「わー フッちゃん 凄いー そんな計算出来るんだぁ?」
隊員Fが言う
「ああ… 実は 俺は元々警空に入るつもりで勉強しててさ?距離とか角度とかって そう言う計算ごとは得意なんだ」
隊員Aが驚いて言う
「え!?警空にっ!?」
隊員Bが言う
「えー?なんでなんでー?」
隊員Fが苦笑して言う
「戦闘機が好きだったんだ そいつを使いこなして アールスローンを守りたいって… けど、アールスローンを守る為に戦うとなると それは 政府警察じゃなくて 国防軍だろ?でも国防軍には 空を管轄する部隊が無いもんだから… で、流れ流れて レギストに …でも、今は良かったと思ってるよ」
隊員Cが言う
「何でだよ?まだ、19部隊とかなら分からなくも無いが レギスト機動部隊じゃ 戦闘機とは無縁じゃないか?」
隊員Fが苦笑して言う
「ああ、そう言った 戦闘機とは無縁だけど この最新の銃に触れられるだろ?それも ただ最新って訳じゃない 選ばれた …俺らレギストだけが手にする事の出来る 特別な武器だっ」
隊員FがM90に触れる 隊員Aが笑んで言う
「はっはーん な~るほど~?フレッド隊員の趣味が分かって来たぞー?」
隊員Fが笑う
「あっははっ それは言うなって?」
隊員たちが笑う ハイケルが横目に見聞きしていて微笑する 軍曹がハイケルを見ていて微笑する 前方に扉が見えて来る ハイケルが視線を向ける 隊員たちが気付いて 隊員Aが言う
「お?ついに到着か?」
隊員Bが喜んで言う
「俺らの世代の 悪魔の兵士に ご対ー面ー!」
ハイケルが扉の装置を見て言う
「生態識別セキュリティだ 手の平の静脈を検出するタイプだろう 軍曹 悪魔の兵士を従える 守りの兵士の出番だ」
軍曹が苦笑しながら言う
「は… はぁ…」
軍曹がおもむろに装置の前に立ち 認証パネルに手の平を押し付ける 装置が起動しモニターに 名前が表示され 扉が開く 隊員たちが期待して扉の先を見る 軍曹が扉を押さえると ハイケルが向かい 隊員たちが続いて扉を抜けると 隊員Bが言う
「えー!?」
隊員Cが表情をゆがめて言う
「まだ… 続くのか…」
隊員たちの視線の先 同じ下り坂が続いている ハイケルが言う
「行くぞ」
ハイケルが先行する 隊員たちが言う
「了解っ!」 「少佐に続けー!」
隊員たちが笑う ハイケルと隊員たちが歩く
後方の隊員たちが歩きながら言う
「何だか同じ道を歩き続けるのって ダルイよな?」
「これなら まだ、駐屯地周回60周の方が良いぜ」
「この際 皆で訓練がてら 走っちまうってのは どうなんだろ?」
「先に何があるか分からない時は むやみやたらに突っ込まないのが原則なんだよ」
「後は あれだろ?」
「ああ…」
「あれって?」
隊員が小声で言う
「少佐は先日の任務の時 怪我してるんだ 任務も訓練も ホントは禁止なんだぜ?」
隊員が言う
「え?じゃぁ…」
隊員たちが前方のハイケルの様子を伺う ハイケルが黙って歩いている 軍曹が心配して言う
「少佐 お体は 大丈夫でありますか?」
ハイケルが言う
「問題ない」
軍曹が一度視線を落としてから言う
「少し休まれては?」
ハイケルが言う
「歩いているだけだ 休む必要は無い」
軍曹が表情を困らせて言う
「しかし… 自分も経験がありますが あばらにヒビが入った状態では 3日経っても歩く事さえ苦しい事で …それに、ここは 緩やかとは言え 下り坂でありますし」
ハイケルが言う
「…そうだな」
軍曹が言う
「では」
ハイケルが言う
「だが 気になるんだ」
軍曹が疑問して言う
「は?気になる… とは?」
ハイケルが言う
「あの衛兵の言葉だ」
軍曹が言う
「衛兵の…?」
ハイケルが言う
「私は この場所は勿論 国防軍レファム駐屯地自体 来たのは初めてだ …だと言うのに」
隊員Bが言う
「あれー?そうなのでありますがー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「ああ」
隊員Aが言う
「けど、あの衛兵 間違いなく 少佐に」
隊員Cが言う
「ああ、俺も気になってた 例え しょっちゅう来てる場合でも 別の駐屯地に所属する …それも 部隊長に対しての挨拶なら どう考えても お疲れ様 だよな?普通」
ハイケルが言う
「この場所が マスタートップシークレットである以上 その警備に就く者が 間違えであの様な事を言う筈も無い …そして、この道 私は …知っているような気がする」
隊員たちが疑問し顔を見合わせてから 隊員Aが苦笑して言う
「それじゃ やっぱり?」
ハイケルが言う
「私の記憶は 一度見たものを 忘れる事は決して無い だが、その時点での 私の意識があったかどうかの問題は あるが…」
隊員たちが呆気に取られて顔を見合す 隊員Fが言う
「それじゃ 知っている様な気がするだけの デジャヴュとか…?」
隊員Bが言う
「デジャヴュって?」
隊員Aが言う
「一度も経験した事が無いのに いつかどこかで経験した事があるような そんな感じがする事だよ」
隊員Cが言う
「既視感とも言うな 何だか見た事があるって感じだ」
隊員Bが言う
「へぇ~皆良く知ってるねー で、そんな感じー でありますかー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「デジャヴュは記憶能力の一時的なバグだ 様々な見解があるが 私は記憶に残っている物事の 前後を間違える事も無い だが この道を通った その前後の記憶が 思い出せない」
隊員Bが言う
「”この道を通った その前後の”?」
隊員Aが言う
「それじゃ やっぱり以前に この道を通ったんじゃ」
ハイケルが気付いて言う
「そう…だな…?そうだ 通った事がある なのに何故 こんなに記憶が曖昧なんだ…?私が国防軍に入隊してからの事で 曖昧な記憶などは 1つも無いのだが」
軍曹がハイケルの話を聞いていて心苦しい表情を見せる 隊員Fが言う
「あ、でも ここを抜ければ ハッキリするかもしれませんよ?少佐?」
ハイケルが顔を上げる 隊員たちの前に扉がある 隊員Aが言う
「今度こそ!」
隊員Bが言う
「ご対ー面ー!」
ハイケルが言う
「軍曹」
軍曹が言う
「りょ、了解…」
軍曹がセキュリティ処理をする 隊員Aと隊員Bが表情を明るめる 軍曹が意を決しドアを開ける ハイケルが踏み込むと 隊員Aと隊員Bが飛び込んで 隊員Aが言う
「よーし!っとー…」
隊員Bが言う
「えー…」
隊員Cと隊員Fが続き 隊員Cが言う
「ま、まじか…」
隊員たちの前に広い円形の場所がある 隊員Aが表情を落とす 隊員Bが首を傾げる 隊員Fが気付いて言う
「あ、でもほら次の扉は すぐそこだぜ?」
隊員A、B,Cが気付き喜んで駆け寄り言う
「次こそっ!」
「ご対ー面ーっ!」
「どんな奴でも!来いっ!」
ハイケルが扉へ向かい視線を強めてから 軍曹へ振り返る 軍曹がハイケルの視線に顔を向けた後 セキュリティ端末の下へ向かう 隊員Aが隊員Cへ笑んで言う
「んな事言って エルム少佐並みの 悪魔の兵士が現れたら どうするんだよ?サキ?」
隊員Cが衝撃を受ける 隊員Bが笑んで言う
「にひひっ まずは サッちゃんで 新しい銃の試し撃ちをどうぞー」
隊員Cが怒って言う
「それは どう言う意味だよっ!?バイスン隊員っ 後、好い加減 サッちゃんやめろってのっ!」
隊員Bが言う
「だって 悪魔の兵士だよー?こんな所に閉じ込められてたら ストレス一杯だろうから せめて持参したM90でも どっかーん!て撃って すっきりさせてあげないとー」
隊員Cが怒って言う
「その標的に 俺かよっ!?」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
隊員Aが笑う 軍曹がセンサーの前で立ち止まっている ハイケルが隊員たちを見ていた状態から軍曹へ向き直って言う
「どうした 軍曹」
軍曹が反応し慌てて言う
「あっ いえっ その…っ」
ハイケルが言う
「隊員たちも楽しみにしている この先に 悪魔の兵士が居るというのなら 私も気になる 早く開けてくれ」
軍曹が意を決してから言う
「はっ!自分は…っ!…少佐がそうと仰るのでしたら ここを開けますっ …しかし、どうか その前に1つ 伺わせて下さい 少佐っ」
ハイケルが言う
「何だ 軍曹」
隊員たちが軍曹を見る 軍曹が言う
「少佐は… 以前 エルム少佐の事が 羨ましいと仰いましたが… そのお気持ちは 今もお変わりは無いので ありましょうかっ?」
隊員たちが驚き顔を見合わせる ハイケルが言う
「そうだな 変わりは無い 当然だろう?エルム少佐の強さは ここに居る多くのレギスト隊員たちも目にしている」
隊員Aが隊員Bへ言う
「エルム少佐は 確かに凄いけど… まさか 少佐が羨ましいと思ってただなんて 意外だったな?」
隊員Bが言う
「だよねー!少佐は今でも十分強いのに!」
ハイケルが隊員Bへ向いて言う
「私の力は 常人並みだ 悪魔の兵士であった エルム少佐とは まったく異なる」
隊員Bが呆気に取られる 隊員Aが苦笑して言う
「少佐が常人だったら 俺らどうなるんだ?」
ハイケルが言う
「技術が足りていないだけだ 知識の追加と 訓練によって いくらでも追い付くだろう」
隊員Bが喜んで言う
「はーっ!少佐ぁー!俺は少佐を目指して 頑張るでありますーっ!」
隊員Aが苦笑して言う
「俺も頑張るけど 少佐に追い付くのは 厳しいって バイちゃん」
隊員Bが言う
「えー?」
ハイケルが微笑してから軍曹へ向いて言う
「これで良いか?軍曹」
軍曹が正面を向き直って言う
「はっ!有難う御座います 少佐っ!自分は… やはり 何処までも 少佐に付いて行く所存でありますっ!」
軍曹が識別パネルに手の平を突き付ける 扉のロックが解除される ハイケルが扉を見る 軍曹が向かい扉を開ける ハイケルが向かう 隊員A、B、Cに続きFが駆け込み 隊員Bが言う
「今度こそ ご対ー面ー ん?あれー?少佐ぁ?」
隊員Bが正面奥に居るハイケルβに疑問し その横を見て驚き その逆を見て更に驚いて言う
「え?え…?えぇえーっ!?しょ、少佐が いっぱいっ!?」
隊員Bが真横を見ると 隊員Aが呆気に取られている 隊員Cが言う
「な、なぁ…?これって まさか…?」
隊員Fが言う
「エルム少佐の… デコイと同じ?」
隊員Bが疑問してから言う
「えー?それじゃ 少佐ぁー?」
隊員Bの視線の先 ハイケルが正面を見据えて言う
「…そう言う事か 軍曹 君が何を躊躇していたのか 理解した」
隊員Bが言う
「少佐ぁー?それじゃ 少佐が 俺たちの世代の 悪魔の兵士でありますかー?少佐ぁー?」
隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「どうなんだ 守りの兵士殿?バイスン隊員の質問は 私の質問でもある 共に レギスト機動部隊… いや、国防軍の多くの者たちの質問でもある 答えろ」
軍曹が言う
「は… はっ!少佐こそ 自分たちの世代の …悪魔の兵士であるとっ 自分は そう思います!」
ハイケルが言う
「思うとは?これを見ての感想か?」
軍曹が言う
「いえ、それも ありますがっ …少佐には 悪魔の兵士を示す 神の刻印が左胸に…っ」
隊員AとBが気付き 隊員Bが言う
「えー?でも 少佐のタトゥーは アールスローンの国印じゃないけどー?」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う
「複製のアールスローン戦記に描かれている あの刻印は アールスローン国へ身を捧げるという 政府の攻長の証であり 悪魔の兵士の刻印は 今は無きペジテ国の国印 なのであります…」
ハイケルが言う
「なるほど 理由とされるモノが2つも揃うのであれば 可能性としては…」
軍曹が表情を困らせて言う
「しょ、少佐っ どうかっ その…っ」
ハイケルが言う
「だが、解せない部分は多い」
軍曹が言う
「は… はぇ?」
ハイケルが言う
「私が悪魔の兵士であるのなら 同じく悪魔の兵士であった あのエルム少佐との差は何だ?」
軍曹が表情を困らせて言う
「そ、それは…っ」
ハイケルが言う
「今更言うまでも無いが 私と奴との能力の差は歴然だ データ上に置いても その差は 新たな銃火器を作り上げる 妨げとなっている」
軍曹が言う
「それは その…」
ハイケルが気付いて言う
「うん?そう言えば 今回の任務は 悪魔の兵士を眠りから覚ます事が 目的だったな?それは言い換えれば 私の眠らされている能力を 覚ますと言う事か?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「いえっ それは…っ 真に言い辛いのでありますがっ 少佐の能力は 眠っては居られないかと… むしろ!しっかりと 目覚めておられるかと!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「むっ!?…そうか 残念だ …では 話を戻すが 私とエルム少佐 その2人の悪魔の兵士の 差は何だ?」
軍曹が言う
「その… 悪魔の兵士は 2世代居られ 少佐はその 初世代であり あのエルム少佐が 2世代目でありまして…」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ… そうか… たった1つの世代の差が 随分と大きかったようだな …だが、それなら何故 私の前のエルム少佐が 2世代目なんだ?奴が2世なら 私は…」
軍曹が言う
「それはっ …悪魔の兵士は 初世代目と2世代目が 交互に使われている との事でありまして…っ」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ぐっ…!…なるほど 2世代目までしか居ない者を 交互に使うとなれば… 時代により世代が逆になる事は否めない…」
ハイケルが顔をそらす 隊員Bが気付いて言う
「あー!だから 2世代目のエルム少佐の方が 1世代目の少佐より 強かったのでありますね!身長も高かったし!」
ハイケルが衝撃を受ける 隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
隊員Bが疑問して言う
「えー?でも それって普通だし?子供の方が 親より身長 高くなったりするでしょー?」
隊員Aが慌てて言う
「そ、それはそうだけど…っ!」
隊員Bが言う
「だから 気にする事無いでありますー!少佐ぁー!少佐は小さいけど チョー足速いし!」
隊員Aが慌てている ハイケルが言う
「身長を含む肉体的な差は 知識と訓練では補い切れない部分だ …だったら 尚更 何故 初世代の悪魔の兵士を 改良しない?」
軍曹が困って言う
「うー… それがぁ~ 悪魔の兵士は元々 遥か昔の ロストテクノロジーとか言われる物なので 現代の技術では 全く持って 手に負えないそうで…」
ハイケルが言う
「改良は したくとも出来ないと言う事か…」
軍曹が落ち込んで言う
「は… 残念ながら その様でして…」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ… そうだな ”残念ながら” 残念だ…」
軍曹が言う
「真に 不甲斐なく 申し訳ありません 少佐…」
軍曹が頭を下げる ハイケルが衝撃を受け言う
「ぐっ… いや、こちらこそ 悪かったな ”不甲斐なく” て…」
隊員たちが顔を見合わせて言う
「な、なぁ?俺ら… どう反応したら良いんだっ?」
「すげー 難しい 所だ」
ハイケルがサブマシンガンを用意する 軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁあーっ!?少佐ぁーっ!?」
ハイケルがサブマシンガンを放つ 隊員たちが驚く 軍曹が慌てて言う
「しょ、少佐ぁーっ!どうか お止め下さいっ!いくらご自身の出生に ショックを受けようともっ!ここに居る少佐のデコイたちは 大切なーっ!」
サブマシンガンの攻撃で装置が壊れ 10体のハイケルβたちが床に倒れる ハイケルがサブマシンガンを止めて言う
「何を慌てている 軍曹」
軍曹が衝撃を受けて言う
「は、はぇ!?少佐?じ、自分は 少佐が ご自分のご出生を知り ご乱心なされたのかと…」
ハイケルが言う
「何故 私が 乱心する必要がある?」
軍曹が言う
「はえ!?」
ハイケルが言う
「確かに ”残念ながら” 初世代の私が お前たちの世代の 悪魔の兵士であった事は ”真に 不甲斐なく 申し訳ありません” と思ってはいるが」
軍曹が汗を掻く 隊員Nが言う
「なぁ…?少佐は 軍曹に言われた事 凄く怒ってるんじゃないか?」
隊員Eが言う
「あ、ああ… 何か 俺も 少佐が何だったって話より 今は軍曹の身の危険を感じる…」
隊員たちが軍曹を見る 軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?じ、自分はっ 決して エルム少佐より 劣る 少佐を悪く言うつもりは!?」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが瞬時に怒り 軍曹にM82を突き付けて言う
「軍曹 私は 乱心したようだ 許せ」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「なぁあーっ!?しょ、少佐ぁーっ!どうか お気を確かにっ!」
隊員たちが慌ててハイケルを取り押さえる 軍曹が困る ハイケルが言う
「はーなーせーっ!」
隊員たちが押さえ付けながら言う
「しょ、少佐ーっ!どうか 堪えて下さいーっ」
「軍曹は 決して悪気が有って 言った訳では!」
隊員Xが言う
「そうでありますっ!軍曹はただ!素直に本当の事を言ってしまう だけなのでありますっ!」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが隊員Xの頭にM82を押し付けて言う
「ゼクス隊員 お前から逝くか?」
隊員たちが慌ててハイケルを押さえ付ける 隊員Xが軍曹の前で泣きながら言う
「軍曹ーっ!自分はっ 自分はっ!」
軍曹が泣きながら言う
「おおーっ!ゼクス隊員!気持ちはよく分かるのだっ!自分も 何も間違った事は言っていないのに 何故か 守られるはずの少佐に 命を狙われたのであるっ!」
隊員ABCFが呆れている ハイケルが気を取り直して言う
「…では 目的のものは 覚醒させた これくらい居れば 総司令官も任務の達成と認識するだろう」
軍曹が衝撃を受けて言う
「は、はぇ?目的のもの?覚醒?総司令官が?」
ハイケルが振り返って言う
「総司令官からの指令は 悪魔の兵士を眠りから目覚めさせる事だ 奴らは 眠っていただろう?あれを起して 連れ帰る事が任務で正しいのではないか?」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが不満そうに言う
「私のデコイを使い 総司令官が何をするつもりなのかは 想像も付かないが… あのエルム少佐の時と同様であれば このデコイたちは私と同等の戦力を持っている …そうとなれば 例え 不甲斐なくとも 用途はいくらかあるだろう」
ハイケルが視線をそらして言う
「出来れば 私自身の目に付かない場所で 使用してもらいたいものだ」
軍曹が言う
「あ、あの… 少佐 真に申し上げ辛いのでありますが…」
ハイケルが言う
「気にするな 軍曹 もはや 何を言われても 私が正気で乱心する事は無い」
隊員Aが言う
「やっぱり正気だったんだ…」
隊員Cが言う
「少佐の冗談が 半端なく上達してるんじゃねーか?」
隊員Bが笑んで言う
「さっすが 少佐ぁー!」
軍曹が言う
「ではお伝え致しますが …ご自身のデコイを遠隔操作出来るのは 優秀なエルム少佐の世代 2世代目の悪魔の兵士だけであります」
ハイケルが銃撃されたかの様に衝撃を受ける 隊員たちが呆気に取られる ハイケルがM82を自分の頭に突きつけて言う
「死んで詫びる」
軍曹が慌ててハイケルを取り押さえて言う
「しょ、少佐ぁーっ!どうか お気を確かにっ!」
ハイケルが言う
「そいつらの分だけ 蘇れば良いんだ!」
軍曹が慌てて言う
「少佐ぁー!そちらの方法も自分は分かりませんですし!少佐もご存知ではあられないかとっ!?」
ハイケルが軍曹を横目に見て言う
「当然だ!だが 心配するな 軍曹!あの世で ”優秀なエルム少佐の世代 2世代目の悪魔の兵士” に聞いて来る!」
隊員たちが呆気に取られ顔を見合わせる 隊員Bが噴き出して笑って言う
「ぷーっ!あっはははっ!やっぱ 少佐 チョー面白れー!」
隊員Aが苦笑して言う
「ああ… なんか ここに来た瞬間は スゲー遠い人に感じちまったけど 一瞬で元に戻った気分だ」
隊員Cが苦笑して言う
「って言うか 本当に少佐が あのエルム少佐と同じ 悪魔の兵士なのか?」
隊員Fが小声で言う
「同じじゃ無くて ちょっと 劣るんだろ?」
ハイケルが言う
「聞えているぞ フレッド隊員」
隊員Fが衝撃を受ける 隊員Xが言う
「ちょっと じゃなくて 自分は かなり だと思うであります!」
ハイケルがM82を隊員Xへ放つ 隊員Xが慌てて盾を構える 盾に銃弾が防がれる 隊員Xが軍曹に泣きながら言う
「軍曹ーっ!?」
軍曹が驚き慌てる 隊員たちが笑う ハイケルが言う
「国防軍レギスト機動部隊!任務終了!帰還するっ!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!」 「了解っ 少佐ぁー!」
隊員Bが言う
「それで、少佐ぁー?この哀れな 少佐のデコイたちは どうするのでありますかー?」
ハイケルが言う
「放っておけ その内 燃えて灰になるのだろう?」
軍曹が言う
「それが 真に…」
ハイケルが気付いて言う
「もう良いっ 人並みに腐ってミイラにでもなってくれれば 一個体としては 奴より上だ!」
隊員AとCが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「少佐のデコイミイラが10体…」
隊員Aが苦笑して言う
「せめて連れ帰って 土に埋めてやりましょうよ?少佐…」
ハイケルが言う
「今は生きているかもしれないだろう?」
隊員Aが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「あー そうだったー」
隊員Cが言う
「生き埋めにする訳にもいかねーし…」
ハイケルが言う
「だが、動きもしない …ならば せめて楽にしてやるか」
ハイケルがサブマシンガンを持つ 隊員たちが衝撃を受けて言う
「えぇえーっ!?」
「しょ、少佐ぁー!?」
途端 館内にサイレンが鳴り響く 隊員たちが驚き顔を見合わせてから携帯を取り出そうとする ハイケルが周囲を見渡し向かう 隊員Aが言う
「あっ 駄目だ ここは圏外だ」
隊員Cが言う
「国防軍の駐屯地内なのに 圏外だなんて…?」
ハイケルが固定電話を使っている 軍曹が言う
「その為に 固定式の通信電話が…?」
隊員Bが言う
「さっすが少佐ぁー!ご自宅の事は 良くご存知でー!」
隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
ハイケルが言う
「国防軍のトリプルトップシークレット以上の施設では 情報漏えい防止の観点から 意図的に外部からの通信類の電波は遮断されている …国防軍の筆記試験では お前たち2人共 そろって不正解だったな」
隊員ACが衝撃を受け 隊員Bが笑って言う
「にっひひ アッちゃんも サッちゃんも 駄目だなぁー?」
隊員ACが怒って言う
「「お前が言うなっ!」」
ハイケルが電話に言う
「こちらは国防軍レギスト機動部隊隊長 ハイケル少佐だ 現在 国防軍レファム駐屯地マスタートップシークレットに接触中 この警報は何だ?」
【 国防軍レファム駐屯地 正門前 】
辺りにサイレンが鳴り響いている 正門前に国防軍の隊員2人が倒れている レファム駐屯地の隊員たちが攻撃を行っている 正門が壊されていて マシーナリー2が周囲を射撃する マシーナリー3が周囲を確認する マシーナリー2が後ろを振り返る マシーナリー2とマシーナリー3が複数進入して行く
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 入り口 】
衛兵たちが対マシーナリー固定式マシンガンを放っている 衛兵が携帯で言う
「こちら 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト入り口 レファム駐屯地の部隊防御を破り マシーナリーがやって来たっ!これより自爆装置を使用し マスタートップシークレトの入り口を閉鎖する!」
携帯からハイケルの声がする
『待てっ!内部には まだ レギストの隊員たちが居るんだっ!マスタートップシークレットの自爆装置を使用しては 全員生き埋めになるっ!』
衛兵が言う
「例え隊員たちが生き埋めになろうと ハイケル少佐!あなたを蘇らせる事は出来ますっ!どうかしばらく 隊員たちと共に眠っていて下さい!」
携帯からハイケルの声がする
『私の事など どうでも良い!隊員たちを巻き込む事は出来ないっ!我々には マシーナリーを破壊する力がある!レギストを信じ 入り口を明け渡せ!』
衛兵が言う
「それは出来ませんっ!悪魔の兵士は アールスローンの最後の希望!我々は 何があろうと!…申し訳ありません お許しを!ハイケル少佐!」
携帯からハイケルの声がする
『止めろぉおっ!』
衛兵が強く目を閉じ 装置のスイッチを押そうとする 一瞬の後 衛兵が疑問して目を見開く 衛兵の手からスイッチが無くなっている 衛兵が驚くと同時に倒れる シェイムが携帯を拾い上げて言う
「ハイケル少佐 以前の借りは お返ししました… フッ… 最も 私にとっても 好都合でしたが」
携帯からハイケルの声がする
『…その声はっ お前はっ!』
シェイムが携帯を切り 衛兵の横へ置くと 視線を向ける マシーナリーたちが マスタートップシークレトの入り口をミサイルで破壊する
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 内部 】
レギスト隊員たちが 通路を走っている ハイケルと隊員A隊員FがMT77をセットしている ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「お前たちは マシーナリーの種類と数を確認次第 すぐに戻れ」
イヤホンに隊員たちの声が聞える
『了解っ!』
隊員Aが言う
「少佐っ もし、あの3番目のマシーナリーが来たら…っ」
ハイケルが言う
「MT77は 常人では2発が限界だ 3発目をM90で代用するにしても どちらも全てジャストショットでなければ 意味を成さない」
隊員Fが表情を困らせて言う
「俺らじゃ 撃てたとしても ジャストショットなんて 出来る訳が無い やっぱり 少佐じゃないと…」
隊員Xが言う
「それなら 自分たちで 武器を押さえ 少佐が照準を合わせて撃てば良いって 事では?」
隊員Bが呆気に取られてから喜んで言う
「さっすが ゼクちゃん!」
隊員Aが言う
「そうか!この前もそうやって!」
ハイケルが言う
「だが MT77の反動は決して軽いものではない 3発を放てば 例え 複数人で支えていようとも お前たちまで… …私があのデコイを使えて居れば…」
ハイケルが後方に見える扉を見る 隊員Fが笑んで言う
「この期に及んでは そんな事 言ってられないですよ!少佐!」
隊員Cが言う
「それに 少佐は怪我を負った身で 作戦をやらなきゃいけないんだし 俺らで出来る事は 何でもやらないとな?」
隊員たちが顔を見合わせ微笑してハイケルへ向く 隊員たちが言う
「そうですよ!少佐!」 「今度は俺たちだって 一緒に戦います!」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Dが言う
「それに このMT77って 複数人で支えるのに 丁度良い形してるし」
ハイケルが気付く 隊員Aが言う
「ああ、そうなんだよ お陰でこの前も 思ってたより しっかりと支えられてさ?」
ハイケルが言う
「お陰で 私は大した衝撃も受けず 3打目を撃つ事が出来た… …そうだな この様な細工を施す位なら スライド機能を施し装填をフルオートにした方が よっぽどジャストショットには 向いている …最初から 私のための銃だったのか」
無線イヤホンに隊員たちの声が聞える
『少佐っ!マシーナリーを確認しました!』
『種類は 2番目と3番目の奴です!特に2番目のマシーナリーが 大量にっ!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「了解 すぐに戻って来い」
無線から隊員の声がする
『了解っ!』
ハイケルが出入り口を見る 隊員たちがMT77を持って立ち上がる
【 国防軍レファム駐屯地 正門前 】
白バイがサイレンを鳴らしながら到着する ラミリツが飛び降りて言う
「ありがと 助かったよ 君は公務に戻ってくれ」
白バイ隊員が言う
「し、しかしっ 攻長閣下っ!?この駐屯地の様子は!?ただ事では…っ!?」
ラミリツが周囲を見渡してから言う
「あ~ これは… そう!レギストの特別訓練だから 気にしないで?」
白バイ隊員が驚いて言う
「えっ!?」
ラミリツが言う
「嘘だと思うなら ミックワイヤー長官に聞いてごらんよ?じゃぁね!…言っとくけど 変に騒いだら 君 恥かくよ?」
ラミリツが走り去る 白バイ隊員が呆気に取られてから言う
「訓練… か… やっぱり レギストは凄いんだなぁ… …さて、公務に戻らないと」
白バイ隊員が去る
ラミリツが駐屯地内を走りながら言う
「えっと こういう時は 複数のマシーナリーの跡を追えば… だったよね?」
ラミリツが銃ホルダーに触れる ラミリツが分かれ道を 路面の様子を見て判断して向かう
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 入り口 】
ラミリツが息を切らせつつ到着し周囲の様子に驚き表情を落として言う
「これ皆… 兄上のせいで…?」
ラミリツが地面に倒れている隊員たちの間を過ぎ 出入り口を覗く ラミリツが周囲を伺いつつ一歩中へ入り 壁面を見て言う
「えっと… 地上1.5メートル …この辺 かな?」
ラミリツが言いながら壁に耳を当てる ラミリツが耳を澄ますと 銃声が聞える ラミリツがハッとして言う
「M90の銃声… 間違いない この先にレギストが…っ アイツらが居る!そこに… きっと 兄上も…っ!?」
ラミリツが視線を強め 走り始めようとして 立ち止まって言う
「…そう言えば ファームまでは 入り口から5キロあるんだっけ?5キロか… 全力で走らないと 間に合わない かな…?」
ラミリツが表情を顰めて斜面を見てから 閃いて言う
「…うん?そうだっ!」
ラミリツが一度出入り口の外へ出てから戻って来て言う
「どうせ 半分以上先まで 到達されちゃってるだろうし… これ位なら 丁度良い傾斜だよっ きっと!」
ラミリツがマシーナリーの車輪が着いた板を地面へ落とす
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 内部 】
ハイケルが言う
「第3マシーナリーだっ!A班を除く 総員 退避っ!」
隊員たちが 退避する ハイケルが言う
「A班っ!」
隊員Aと隊員BがMT77を構えて 隊員Bが言う
「準備完了でありますっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルがA班の場所を確認してから M90を放つ マシーナリー3がM90の弾丸を弾いてから ハイケルをロックオンする ハイケルがA班の下へ向かう マシーナリー3がハイケルを追って マシンガンを放つ ハイケルがA班の構えるMT77の下へ行き着き MT77の照準を合わせる マシーナリー3がハイケルへマシンガンを放つ 隊員Xがハイケルたちの前で盾を構え表情を顰めて堪える ハイケルが視線を強め言う
「行くぞっ1打目!」
隊員ABが支えに力を加える ハイケルが引き金を引く MT77が放たれる ハイケルが装填を行い言う
「2打目っ!」
隊員ABが支えに力を加える ハイケルが引き金を引く MT77が放たれる ハイケルが装填を行い言う
「3打目っ!」
隊員ABが支えに力を加える ハイケルが引き金を引く MT77が放たれる マシーナリー3が動きを止め脱力して倒れる ハイケルが言う
「無事かっ?」
隊員ABが苦笑し 隊員Bが言う
「体中ビリビリしてるけど 無事であります~ 少佐ぁ~」
隊員Aが言う
「途中で軍曹が支えてくれなかったら ビリビリ所じゃなかったな?」
ハイケルが驚き視線を向けると 軍曹が苦笑して言う
「も、申し訳ありません 少佐… しかし、やはり自分には 隊員たちを置いて 後方で待機するというのは…っ」
ハイケルがマシーナリーの音に気付いて言う
「分かった …総員 後室へ退避だっ」
隊員たちが言う
「了解っ!」
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 上階 】
ラミリツが簡易スケードボードを巧みに操り斜面を滑降して来る ラミリツが気付いて言う
「うん?あれは RTD330マシーナリーの残骸…」
ラミリツが簡易スケードボードを巧みに操り 残骸を回避して振り返りつつ言う
「そろそろかな…?エルムと違って アイツらじゃ 330でも手こずりそうだし…」
ラミリツが前方を見ると 扉が壊されている ラミリツがそれをも越え 滑降を続けながら言う
「でも良いや?せっかく 良い感じに勢いが付いて来たから このまま行っちゃお!…もし見られたら エルムや兄上にも 怒られそうだけど?…ふふっ」
ラミリツが滑降して行く
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 内部 】
ハイケルが照準を合わせ言う
「3打目っ!」
隊員NMVが歯を食いしばってMT77を支える ハイケルが視線を強め引き金を引く MT77が放たれる 隊員MNVが言う
「「「ぬぅうっ!」」」
ハイケルが言う
「無事かっ?」
隊員MNVが苦笑して言う
「は… ははっ な、何のこれし き~…」
「痺れたぁ~」
「あばばばば…っ」
隊員MNVが倒れる ハイケルが言う
「そのまま 寝ていろ」
軍曹が立ち上がって振り返る ハイケルが視線をマシーナリーへ向けて言う
「後3体…」
ハイケルが歩こうとして倒れそうになる ハイケルが驚くと 軍曹が押さえて言う
「少佐っ!」
ハイケルが苦痛に表情を顰めてから言う
「すまん 問題ない」
軍曹が心配しつつも黙る ラミリツの声がする
「何処が 問題ないって 状態なんだろうね?」
ハイケルが驚き 軍曹が振り返って言う
「その声はっ まさかっ!?」
ラミリツがマシーナリー3の後方に飛び上がり プラズマセイバーを振りかざして叫ぶ
「やぁあーっ!」
プラズマセイバーがマシーナリー3の頭部を切り落とす ハイケルと軍曹が驚く ラミリツが着地すると 空かさず振り返って言う
「420は右っ!」
ラミリツがプラズマセイバーをマシーナリー3のボディ右に突き刺す マシーナリー3が動きを止め間を置いて脱力し倒れる ラミリツが気軽に言う
「後2体なら 何とか出来る?それとも そっちも手伝ってあげた方が良いのかな?」
ハイケルと軍曹が呆気に取られる ラミリツが疑問すると マシーナリー3がラミリツをロックオンする ラミリツが気付いて言う
「あ、ずるいの?戦意を見せないで 僕にロックオンさせる作戦?…ホントそう言う ズル賢い所って 悪魔の兵士らしいよね?エルムもアンタもさ?」
ハイケルが衝撃を受け言う
「…奴と 一緒にするなっ」
ハイケルがM90をマシーナリー3へ放つ 軍曹が衝撃を受けて言う
「しょ、少佐ぁーっ!?」
マシーナリー3がラミリツへのロックオンをハイケルへ移行する ラミリツが言う
「ふふっ 作戦通り!…ホント単純だよね?悪魔の兵士って?」
ハイケルと軍曹が衝撃を受ける ラミリツが言う
「でも助かったー フルチャージじゃないプラズマセイバーだと 420の相手は1体が限界なんだ?だから 残りの2体は そっちで やって置いてよね?それじゃ!」
ラミリツが去る 軍曹が衝撃を受け言う
「は、はぇっ!?ラ、ラミリツ攻長!?」
隊員AがBCと共にMT77を構えて言う
「少佐っ!A班+隊員C 準備出来ましたっ!」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「隊員Cって誰だよっ!?俺かあっ!?」
ハイケルが怒りを押し殺して言う
「軍曹っ 動ける隊員をたたき起こして 意地でも もう1体分のMT77を用意しておけっ」
軍曹が衝撃を受け言う
「りょ、了解でありますっ 少佐…」
ハイケルがA班と隊員Cの用意したMT77を連射している 軍曹が呆れの汗を掻きつつ慌ててMT77を持って走る
ラミリツがセキュリティロックを見て視線を強める 顔の横に銃弾が掠める ラミリツが視線を向け振り返る ラミリツの振り返った先 ハイケルが消炎の上がる銃を向けていて言う
「それ以上先へは 行かせられない」
ハイケルの後方で 隊員Xと軍曹が痺れて居て 隊員Xが言う
「軍曹…っ やはり 自分と軍曹の2人だけで 3連射を押さえるのは 流石に 痺れるであります~っ」
軍曹が言う
「ぬぅう~ 確かに あばらの2、3本逝ったやもしれんが 何のこれしきぃ~っ」
ラミリツがハイケルへ言う
「あのさ?そう言う事は こうなる前に言いなよ?」
ラミリツが言って 扉を押すと セキュリティロックの破損した扉が開く ハイケルが驚く ラミリツが言う
「初世代のアンタの方が デコイの数は少ないんだよ?エルムでさえ ギリギリだったのに 大丈夫なの?」
ハイケルが呆気に取られる 軍曹が表情を険しくして部屋へ駆け込む ハイケルが言う
「軍曹」
隊員たちが顔を見合わせ 部屋へ駆け込む ラミリツがハイケルを見ると ハイケルがラミリツを睨んでから部屋へ入る
ハイケルが入ると 軍曹が叫ぶ
「少佐のデコイに何をしたのだっ!?」
ハイケルが顔を向け驚く ハイケルβたちが銃を持ち軍曹へ向けている ハイケルが軍曹を見る 軍曹が上階を見上げて叫ぶ
「答えよっ!メイリス元長官っ!」
ハイケルが驚き軍曹の視線の先を見る 上階にシェイムが居て微笑して言う
「何をした とは 酷い言い様ですね?私は… 捨て置かれた彼らに 命を与えてあげたのですよ?」
軍曹が言う
「命をっ!?」
隊員Bが言う
「えーっ さっきまで 何言っても反応しない 少佐のデコイミイラになる予定だった 少佐のデコイたちがーっ!?」
ハイケルβたちが隊員Bへ銃口を向ける 隊員Bが衝撃を受けて言う
「あーっ!ごめんなさいでありますっ 少佐ぁー!俺はただ 冗談でっ!」
銃声が1発鳴る 皆が驚く ハイケルβの1体が倒れる 拳銃を撃った姿のハイケルが言う
「やはり介錯しておくべきだった 敵の手に落ち 私の隊員へ武器を向けるなど …同じ姿をしているのでは 尚更 気分も悪い」
ハイケルが次々銃を放つ ハイケルβたちがハイケルを標的にして戦いを開始する ハイケルが回避する 軍曹が隊員たちへ言う
「少佐を援護せよっ!」
隊員Xが言う
「了解っ 軍曹っ!」
他の隊員たちが困って言う
「えぇえっ!?そう言われてもっ!」
「ど、どれが 本物の少佐だかっ!?」
ハイケルが攻撃し ハイケルβが被弾して倒れる 白い液が流れる 隊員Bが言う
「あー!分かった!血の色が白い奴が 偽物の少佐だよー!」
隊員Aが慌てて言う
「そんなの 撃って見ないと 分からないじゃないかっ!?バイちゃんっ!」
隊員Bが言う
「えー?それじゃー… 少佐ぁーっ!?」
ハイケルが隊員Bの声に振り向く 隊員Bが言う
「チャーンス!」
隊員Bがサブマシンガンを放つ ハイケルが慌てて回避する ハイケルの頬に弾丸がかすり 赤い血が伝う 隊員Bが言う
「ねー?これなら 分かるでしょー?にひひっ!」
隊員Aが慌てて言う
「そ、それは そうだけどっ!」
ハイケルが言う
「バイスン隊員 感謝する」
隊員Bが言う
「はーっ!少佐ぁー!これぞ 肉を切らせて骨を絶つーでありますー!少佐ぁー!」
隊員Fがライフルを構えて言う
「ちょっと 違うけど ナイスアシスト!バイスン隊員っ!」
隊員Fがライフルの照準を合わせて言う
「すみませんっ 少佐っ!」
隊員Fが引き金を引く 銃声が鳴り ハイケルβが倒れる
シェイムの目下 ハイケルβたちが次々と倒されて行く シェイムが表情を顰めて言う
「これが… アールスローンの力だと言うのか?悪魔の兵士は 通常の人を 超える存在ではなかったのか?」
ハイケルβが全て倒される ハイケルがシェイムを見上げる シェイムが言う
「ならば…」
シェイムが装置のレバーに手を掛ける 軍曹が疑問して言う
「メイリス元長官 何をするつもりだ!?」
シェイムが微笑して言う
「見たら分かるでしょう?装置全体と繋がる このレバー …ご丁寧に 記載されてますよ?"リセット"とね?」
ハイケルが僅かに驚く 軍曹が慌てて言う
「何故 そのような事をしようとするのかっ!?メイリス元長官っ 貴方は 一体何が望みなのだっ!?」
シェイムが言う
「私の望み?そうですね 少し前の私であったなら アールスローン戦記の原本 とでも 言っていたでしょう …しかし これが 国防軍のマスタートップシークレットであったと言うのでは もう 必要も無いのかもしれませんが」
シェイムがレバーへ視線を向ける 軍曹が慌てて言う
「だだだっ だったらっ!そのレバーから 手を離して欲しいのであるっ!」
シェイムが言う
「それは出来ませんね?」
皆が驚く シェイムが微笑して言う
「我々の使命は アールスローンの力 悪魔の兵士を 全て消し去る事ですから」
軍曹が焦って言う
「なぁあっ!?そのような事をしてはっ!アールスローンを守る 悪魔の兵士が 居なくなってしまうではないかっ!」
シェイムが言う
「大いに結構 これで 我ら帝国の …勝利だ」
シェイムがレバーの安全バーを握る ラミリツが言う
「動くなっ!」
皆が声の方へ顔を向ける ラミリツがM82を構えていて言う
「それ以上 少しでも動かせば お前を射殺する」
軍曹が驚いて言う
「ラミリツ攻長っ!?」
シェイムが苦笑して言う
「エーメレス 誰に銃を向けている?お前に私が撃てるのか?」
ラミリツが言う
「試してみたいのなら とめないけど?」
シェイムが笑って言う
「ッフフフ 面白い ハブロス家で 悪魔の兵士 エルム少佐に可愛がられ 国防軍へと寝返ったか?」
ラミリツが言う
「何とでも言いなよ 僕はもう… 決めたんだ」
ラミリツが狙いを定める シェイムが視線を強めて言う
「…そうだ 悪魔の兵士は2人居る こちらの悪魔の兵士の他にも もう1人の悪魔の兵士が …強い力を持つ そちらこそっ」
ハイケルが視線を強める ラミリツが言う
「もう1人の方まで狙うって言うのなら 尚更 例え兄弟でも容赦はしない」
シェイムが微笑して言う
「撃てる筈がない お前の負けだ エーメレス」
ラミリツが狙いを定めている 隊員たちが見つめている 軍曹が表情を困らせている ハイケルがラミリツへ向き視線を強める 一瞬の沈黙 シェイムがレバーを下ろそうとする ラミリツが視線を強め引き金を引く 重い銃声 シェイムが悲鳴を上げる
「ぐあぁっ!」
ラミリツが驚いて言う
「な…っ なんでっ!?」
ラミリツの銃を ハイケルが掴み上げている シェイムがレバーを押さえていた腕に負った傷を押さえつつ 再びレバーへ手を伸ばそうとする 隊員Bがサブマシンガンを放ちながら言う
「このぉーっ!」
隊員Bのサブマシンガン弾丸が シェイムとレバーの間の壁に当たり続ける ハイケルが隊員たちへ叫ぶ
「捕らえろっ!」
隊員たちがシェイムの居る場所へ向かう道を探し走り始める シェイムが表情を顰め逃げ出す ラミリツが呆気に取られる ハイケルがラミリツの持つ銃を見て気付いてから 苦笑して言う
「”上出来だ”」
ラミリツがハイケルの手を払って言う
「この銃に触るなよっ それに 全然 上出来じゃないっ!外したんだ!アンタのせいでっ!」
ハイケルが言う
「私が邪魔をしなければ お前は確実に メイリス元長官を射殺していた …M82で この距離での命中 流石は エルム少佐の教えか」
ラミリツが言う
「銃は教わってない …一言だけ」
ハイケルが驚いて言う
「一言…?」
外でMT77の銃声が聞える ハイケルが驚いて顔を向ける 隊員たちが部屋へ戻って来て言う
「少佐ー すみませんっ 逃げられましたー!」
ハイケルが言う
「MT77の銃声がしたが?」
隊員Aが苦笑して言う
「2番目のマシーナリーと3番目のマシーナリーが来て 撃ってみたら 2番目の奴は1撃で倒せました!」
隊員Fが言う
「MT77の1撃は M90のジャストショット5発と同等の威力の様であります!少佐!」
ハイケルが言う
「そうか…」
ラミリツが言う
「どうするんだよっ!アンタが邪魔したせいで 逃げられたじゃないかっ!?」
ハイケルが言う
「そうだな だが 良いんだ」
ラミリツが怒って言う
「良い訳ないだろうっ!?アンタのデコイだけじゃないっ これから作られる エルムの方にまで被害が出たら どうするんだよっ!?ホント 甘いよっ!アンタの方は!」
ハイケルが言う
「ここに居たのが 私ではなく エルム少佐であっても 同じ様にしていただろう」
ラミリツが言う
「エルムはアンタとは違う!」
ハイケルが言う
「確かに 奴と私では 能力やその他の違いは大きい だが、同じ事がある …だから 分かる」
ラミリツが言う
「アンタにエルムの 何が分かるって言うんだよ?アンタなんかより 僕の方がよっぽどっ!」
ハイケルが言う
「シェイム・トルゥース・メイリスは お前の家族だ お前が守るべき存在の筈だ」
ラミリツが驚く ハイケルが言う
「だが、お前があの様にしてくれなければ 私のデコイは全てリセットされていたのだろう ラミリツ・エーメレス・攻長閣下 …礼を言う」
ラミリツが間を置いて視線を逸らして言う
「…”当然だ”」
ハイケルが反応して苦笑する 隊員Aと隊員Bが苦笑する ラミリツがぷいっとそっぽを向く ハイケルが隊員たちへ向き直って言う
「任務完了 国防軍レギスト機動部隊 国防軍レギスト駐屯地へ 帰還する」
隊員たちが言う
「了解!少佐ぁーっ!」
【 国防軍総司令本部 総司令官室 】
アースが言う
「国防軍のマスタートップシークレットは 総司令官であっても 平時は閲覧を許されない機密事項 そこへ ハイケル少佐が 直接マスタートップシークレットへ接触した事により 封は解かれ ようやく 閲覧が可能となった」
軍曹が言う
「では その様な場所に どうして?」
ラミリツが言う
「僕はミックワイヤー長官に聞いたんだ メイリス元長官のIDで 政府警察のデータベースにアクセスした跡があって そのデータに レギストや悪魔の兵士の事 それに、初代の方の悪魔の兵士が 国防軍レファム駐屯地の地下で作られてるって事が 記載されてたんだって」
軍曹がアースを見る アースが考えて言う
「帝国との戦いは 表沙汰にはされていなくとも 遥か昔から行われている事だ 従って レギストやそれらの情報が 以前の内に 政府へ知られていたという可能性は 十分に有り得る」
軍曹が言う
「国防軍のデータベースからは消されてしまうのに 政府の方に残っているのでは 危険なのであるっ 何故 悪魔の兵士の情報を 国防軍から消してしまうのか!?」
アースが言う
「それは 悪魔の兵士そのモノが 存在を許されない者であるから だろう」
軍曹が呆気に取られて言う
「は…?」
ラミリツが言う
「そんなの 当たり前 これが帝国との戦いがない それこそ平時って状態なら ハブロス総司令官は 国防軍のトップとして 責任を取らされて逮捕される所だよ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はっ はぇっ!?」
ラミリツが苦笑して言う
「ま、ラゼル様みたいな 責任の取り方もあるんだろうけどね?」
軍曹が疑問して言う
「ラ、ラミリツ攻長!?それは一体どう言う!?」
アースが言う
「その攻長閣下は 一体何を何処まで ご存知なのだろうか?エルム少佐や 我々の祖父から 随分と伝え聞いているようだが?」
軍曹がラミリツを見る ラミリツが言う
「僕が聞いたのは 2世代目の悪魔の兵士の話しだけだよ 初世代の方は少しだけ エルムより どれだけ劣ってるかって感じ」
軍曹が衝撃を受ける アースが言う
「そうは言われようとも どちらの悪魔の兵士も 基本とされる事は同じ 人工的に作り出した 兵器… 戦いの為の道具なのだからな」
軍曹が驚いてアースを見る アースが言う
「その生産場所である 国防軍レファム駐屯地のマスタートップシークレットには 初世代の… ハイケル少佐の方のデコイしかなかった もしや 攻長閣下は もう片方の生産場所についても ご存知なのでは?」
軍曹が困惑しつつ視線を落とす ラミリツが視線を強めて言う
「知ってたら なに?」
アースが微笑して言う
「もちろん その場所を教えて頂きたい」
軍曹が驚いてアースを見る アースが言う
「初世代のハイケル少佐では エルム少佐のようにデコイを使いこなす事は出来ない そして 悪魔の兵士 本人たちの身体能力の差も大きなものだ 従って レギストの隊長には 今回も エルム少佐と同じ 2世代目の悪魔の兵士を使用し そのレギストを持って帝国と戦うのが…」
軍曹が叫ぶ
「その様な言い方はっ やめて欲しいのだっ!」
アースが軍曹を見る 軍曹がアースを見て怒って言う
「少佐もっ!エルム少佐もっ!2人とも 悪魔の兵士であろうと 自分たちと同じ人なのだっ!戦いの道具などでは 決してないのであるっ!そして!自分たちの世代の レギストの隊長は やはり 少佐なのだっ!自分たちは これからも 少佐と共に戦うのであるっ!」
軍曹が怒りのままに部屋を出て行く
【 国防軍レギスト駐屯地 医務室 】
ハイケルが衝撃を受けて言う
「3日間っ!?」
ベリハースが言う
「ええ、とりあえず 3日間の入院です」
ハイケルが不満そうに言う
「たかが打撲と あばらにヒビが入った位で 入院とはどう言う事だ!?この前は 1週間のっ」
ベリハースが言う
「1週間の任務及び訓練の禁止 と 申しましたのに 3日後の検査で悪化させてきて 何を言っているんですか?ハイケル少佐っ」
ハイケルが言う
「そ… それは 急な任務が…っ」
ベリハースが言う
「任務は禁止とっ」
ハイケルが言う
「任務とは言え 戦闘行為はない 予定だったんだ」
ベリハースが言う
「予定は予定ですからね 武装をして行く時点で 予定は変更となる可能性もある訳ですよ ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「それはそうだが… 戦わなければ 私が全員殺される所だったんだ」
ベリハースが言う
「全員助ける事も大切ですが 元となる1人が死んでしまっては 意味が無いでしょう?」
ハイケルが言う
「問題ない 何度でも蘇る …予定だ」
ベリハースが言う
「予定は予定ですから まずは 一人一人を 大切に生きましょうかね?ハイケル少佐」
ベリハースがカルテを書く ハイケルが間を置いて言う
「…知っていたのか?」
ベリハースが言う
「何のお話でしょうか?悪魔の兵士さん?」
ハイケルが言う
「何故知っていた?」
ベリハースが言う
「それは 私が この国防軍レギスト駐屯地の 軍医だからです」
ハイケルが言う
「何故黙っていた?」
ベリハースが言う
「教えると 一人一人を大切にしませんからね …エルム少佐の様に」
ハイケルが視線をそらして言う
「また、奴のせいか」
ベリハースが苦笑して言う
「とは言いましても 私も そのエルム少佐が何度でも蘇った などという話は 先日ご本人を目にするまで 信じる事は出来ませんでしたよ 私は医者ですから 死んだ人間が蘇るだなんて話を信じていては やっていけません」
ハイケルが言う
「奴を見て 何が分かったんだ?」
ベリハースが言う
「正直驚きました まず、どう見てもあの体は 70代の肉体ではありません 細胞組織の様子からしても 30代と言えるものでした ただ… その体に流れる血液の方は 紛れも無く70代のもの」
ハイケルが呆気に取られ言う
「悪魔の兵士が蘇るには 以前の体に流れていた血液を 新たな体に入れると言う事なのか?」
ベリハースが言う
「残念ながら、私は蘇る方法というものは知りません 私が聞いたのは エルム少佐が この国防軍レギスト駐屯地に居た頃に 同じくこの駐屯地で軍医をしていた 私の父から 様々な重度の怪我を負われたエルム少佐を治療した その治療法でしたから 医者として それだけの怪我を負えば どの様な後遺症が残るかを知った上で 先日の あのエルム少佐を見て 驚いた訳です」
ハイケルが言う
「奴には それらによる後遺症は無かったと」
ベリハースが言う
「ええ 後遺症所か それらの傷跡さえありませんでした」
ハイケルが言う
「奴は私よりも 格段に優秀な悪魔の兵士なんだ それこそ 怪我の跡さえ完治させてしまうのかもしれないぞ?」
ベリハースが軽く笑って言う
「っはは… 擁護する訳ではありませんが エルム少佐が それ程 ハイケル少佐より優れている と言う事は無いと思いますよ 細胞の様子を見る限り 少佐が今仰ったような 驚異的な回復力などはありませんでした そもそも それほど強力な回復力があっては それは がん細胞になりえます」
ハイケルが軽く驚く ベリハースが言う
「ただ、筋肉細胞の量は 常人の3倍近くありました 怪力の持ち主でしょう?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「それだっ!それが何よりもっ!」
ベリハースが苦笑して言う
「しかし、筋力の差など それこそ 隊員たちで力を合わせれば いくらでも補える事でしょう?ハイケル少佐」
ハイケルが呆気に取られる ベリハースが微笑して言う
「貴方は1人で戦うわけではないのですから 貴方1人の力などより もっと 大切な事があるはずです」
ハイケルが呆気に取られて言う
「もっと大切な?…それは?」
ベリハースが言う
「今度こそ しっかり入院をして 怪我を完治 させる事です!」
ハイケルが衝撃を受ける ベリハースが怒って言う
「隊長の貴方が いつまでも怪我人では 隊員たちも安心して戦えないでしょう!?体ばかりではなく 少しは頭も お使い下さいっ!」
ハイケルが衝撃を受け言う
「わ… 悪かったな…」
【 国防軍レギスト駐屯地 射撃場 】
隊員たちが集まっていて言う
「あー それからやっぱ!グリップは縦方向の方が!」
「言えてる言えてる!それから 出来れば…」
軍曹が入って来て言う
「む?メインアームの異なる者まで 第1射撃場に集まるとは?一体何をやって居るのだ?」
隊員Xが振り向いて言う
「あ!軍曹!」
隊員たちが振り向く 軍曹が隊員Xの下へ来て言う
「ゼクス隊員 今日は自分と共に 走り込みを行うと」
隊員Xが言う
「はっ!そちらは こちらが終了してから 就業時間を押してでも 行いますので!」
軍曹が隊員たちの中心を覗き込んで言う
「ゼクス隊員が 走りこみを中断してまで 優先するとは?皆も一体… む?」
ザキルがノートPCから顔を上げ 軍曹を見ると慌てて立ち上がって言おうとする
「あ!初めまして!このた… びがっ!?」
ザキルが軍曹の額に頭をぶつけ痛がって言う
「いってぇ~っ!」
軍曹が驚いて言う
「のぉお!?だ、大丈夫であるか!?少年っ!?」
ザキルが涙目で言う
「すっげ~ 石頭…っ」
隊員Aが言う
「軍曹 この少年が あのMT77を作った 銃職人のザキル殿であります」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なんとっ!あの強力な銃を作ったのが この年端も行かぬ少年であったとはっ!」
ザキルが苦笑しながら言う
「この度は 帝国との戦いに専属銃技師として おー… おえつらいいー頂きまして?あれ?えっと… おー お誂え頂きまして?」
軍曹が呆気に取られてから気を取り直して言う
「お?おお!そうであるのかっ!流石は 帝国との戦いを主にする 国防軍レギスト駐屯地なのだっ!いつの間にやら その様な者まで 誂えていたとはっ!自分はまったく持って 知らなかったのである!」
ザキルが言う
「あ、はいっ!それは 我々との契約は 国防軍とは異なり えっと…」
ザキルがメモを取り出して言う
「あぁ そうそう… ハイケル・ヴォール・アーヴァイン様との 個人契約と言う事で」
沈黙が流れる ザキルが疑問して言う
「ん?あれ?間違えたかな?えっと… うん、ハイケル・ヴォール・アーヴァイン様との 個人契約 でありますので!」
隊員たちが呆気に取られている 隊員Cが隊員Aへ向いて言う
「ハイケル… ヴォール・アーヴァイン様って…?」
隊員Aが言う
「ま、まさか…?」
隊員Bが喜んで言う
「おおー!軍曹ぉー!いつの間に 少佐を 軍曹のお子さんに されていたのでありますかー!?軍曹ぉー!?」
隊員たちが叫ぶ
「「「なぁあーーっ!?」」」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 外 】
軍曹が走って来て慌てて扉をノックして言う
「少佐ぁあー!アーヴァイン軍曹でありますーっ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 内側 】
ハイケルがカルテを片手に呆気に取られている 軍曹が慌てて扉を開けて言う
「少佐ぁーっ!緊急事態のため!お返事を待たずして 失礼致しますっ!少佐ぁあーっ!」
軍曹がハイケルの横に来ると ハイケルがぎこちなく軍曹へ向いて言う
「ぐ… 軍曹…?これは 一体どう言う…?」
【 マスターの店 】
マスターが爆笑して言う
「ぶはーっはははははっ!あーははっ あーはははははっ」
軍曹が困って言う
「あ、あのー… マスター…」
ハイケルが言う
「死にたい」
軍曹が衝撃を受けてハイケルを見る ハイケルがコーヒーを飲む マスターが必死に笑いを抑えている 軍曹が困りマスターとハイケルを交互に見る ハイケルが銃を取り出して言う
「ちょっと蘇って来る」
軍曹が衝撃を受けて言う
「しょ、少佐ぁーっ!?」
軍曹が慌ててハイケルの銃を持つ手を押さえて言う
「そのような事で 蘇っておられては デコイがいくつあってもーっ!」
マスターが息を切らせつつ言う
「はぁー はぁー… そうだぞー?ハイケル そんな事で死んでたんじゃ 泣き虫なお父様が 泣いちゃうだろー?…プクッククククク…」
マスターが腹を抱えて笑う ハイケルが言う
「ここで蘇れば 今日から3日間の入院も なくなるんだ」
軍曹が慌てている マスターが笑いを落ち着かせて言う
「それじゃ その蘇る方法って奴も 分かったのか?」
軍曹が言う
「い、いえ…」
ハイケルが言う
「それ らしき方法なら 入手した」
マスターが表情を困らせて言う
「”らしき” じゃなぁ?それこそ あのエルム少佐の様に 本当に死んじまったら 困るだろう?」
ハイケルが言う
「そのエルム少佐は 肉体の年齢と血液の年齢が異なっていたらしい …と言う事は」
マスターが苦笑して言う
「デコイの方に 元の血液を入れれば良いって事か?そんな簡単な事で 人が蘇ったりするのかねぇ?」
ハイケルが言う
「だから ”らしき方法” だと言っているだろう」
マスターがコーヒーを入れながら言う
「大体 悪魔の兵士が 蘇るって事は 元の奴と同じ能力になるんだろ?それは つまり 見た目だけじゃなくて 知識も付随していなければ意味が無い訳だし そうとなったら 必要なのは血液より むしろ脳みそだと俺は思うね?」
ハイケルが言う
「なるほど… だからエルム少佐は 頭を打ち抜いて死んだのか」
マスターが言う
「とは言ってもな?脳みその移植なんて 聞いた事も無いぜ?それに 多分今の医療技術では無理だろう」
ハイケルが言う
「それを行う事が 出来るのではないのか?悪魔の兵士なら」
マスターが言う
「例え 悪魔の兵士が それに耐えうるとしても その作業をやるのは 現代の医師だろ?そうとなれば やっぱり必要なのは 医療技術って事になる」
ハイケルが考える 軍曹が視線を泳がせて困る マスターが軍曹を見て言う
「それはそうと… とんでもない息子を 持たされる事になったなぁ?アーヴィン君」
ハイケルが飲みかけていたコーヒーを噴き出しそうになる 軍曹が衝撃を受けマスターを見る マスターが笑って言う
「それこそ まだ結婚もしてないのに たった3歳違いの息子を持たされるだなんて おまけに その子は 悪魔の兵士で…?プククッ」
ハイケルが怒ってコーヒーカップを叩き置く 軍曹が困って言う
「は、はぁ… 自分も その… 今日の先程まで そのような事になっている などと言う事は 全く知らなかった訳で…」
ハイケルが軍曹へ視線を向けて言う
「では 親とされる君の同意無しに行われた 勝手な手続きと言う事になるのだろう そのような物ならば 君が無効届けを一枚書けば済む話だ」
軍曹が視線を落として言う
「は… はぁ それは そうなのでありますが…」
ハイケルがコーヒーを飲む マスターが苦笑して言う
「けどなぁ… 今ここで アーヴィン君がハイケルを自分の籍から除外したとしたら それこそ 最下層の階級すら持てない 悪魔の兵士はどうなるのか…」
軍曹が慌てて言う
「マ、マスターっ!」
ハイケルが言う
「…なるほど そう言う事か」
軍曹が言う
「しょ、少佐っ!?」
ハイケルが言う
「そうだな 少なくとも帝国との戦いが終わるまでは 今のまま 養子としてでも 人権を有していた方が良さそうだ」
軍曹が驚き 視線を落とす マスターが言う
「そう言う事 …それに、その帝国と戦う銃火器の製造買取は ハイケル・ヴォール・アーヴァイン殿の名で契約されているんだろ?って事は その支払いは 当然 お父様の?」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが微笑して言う
「そうか… 同じく最下層の階級にして 悪魔の兵士であった あのエルム少佐が 手に入る銃火器を 全て取り揃える事が出来たというのも こう言う事だったのか」
軍曹が困惑してハイケルを見る マスターが笑んで言う
「良かったなー?ハイケル 良いお父様に 引き取って頂いてー」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが言う
「ああ これで帝国との戦いに専念出来る 何しろ マシーナリーより恐ろしい 金と言う敵に怯える必要は無くなったのだからな そちらは宜しく頼んだぞ お父様?」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が困惑して言う
「はぇ!?えっ えっとぉ… その… 銃火器の支払いなどの事は どうでも良いのでありますが 自分はっ その…っ」
ハイケルがそっぽを向いて言う
「”銃火器の支払い など の事は どうでも良い”か… 流石はハブロス家のお父様だ 特注の銃も 悪魔の兵士も いくらでも買えるのだな?」
マスターが言う
「こーら?ハイケルー?そんな可愛くない事言ってると 返品されちまうぞ?」
ハイケルが言う
「ふんっ どうせ買うなら 2世代目の悪魔の兵士を買えば良いんだ その方が これから作る特注の銃にも レギストの隊員たちにも よっぽど持て囃されるだろう」
軍曹が言う
「そんな事は 無いのでありますっ!」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う
「その特注の銃を作るザキル殿も その銃を使い 少佐と共に戦おうと言うレギストの隊員たちもっ 皆!少佐の事を自分たちの隊長として認め 慕っているのでありますっ!その中の誰一人としてっ 自分たちと共に戦うのが 2世代目の悪魔の兵士の方が 良かった等と言う者は居りませんっ 勿論 自分もその1人でありますっ!ですからっ!」
ハイケルが呆気に取られ言う
「軍曹…」
軍曹がハイケルへ向いて言う
「ですからっ どうか!」
マスターが呆気に取られた状態から微笑する 軍曹が言う
「どうかっ さっさと病室に戻りっ!治療に励んで頂きたいとっ!」
ハイケルが衝撃を受ける マスターが苦笑する 軍曹が表情を悲しめて言う
「それからっ もう二度とっ ご冗談でも ご自分の命を無駄にしようなどとは 言って頂きたく無いのでありますっ!例え何度でも蘇られるとしてもっ それは…っ もしかしたら それは少佐ではない少佐なのかも しれないのでありますっ エルム少佐のお話では 死んだ者と蘇る者は 物理的には別の者であると 仰っておられましたっ もし そうなのだとしたら 自分は…っ」
軍曹が視線を落とす ハイケルが考える マスターが言う
「物理的には別の者… かぁ… それじゃ やっぱり 血液だけ入れた 別のお前… お前のデコイの1体が 今のお前の様に動けるようになるって事なのか…?」
ハイケルがマスターを見る マスターがハイケルを見て苦笑して言う
「もし 本当に そんなんだとしたら 俺もやっぱり 嫌だな?」
ハイケルが疑問する マスターが微笑して言う
「俺の知ってるハイケルは 今のお前だし 逆に お前が知ってる俺も 今のお前が今まで見てきてくれた俺だろ?それが 別のハイケルになっちまうんじゃ 詰まらなくなっちまうじゃないか?」
ハイケルが呆気に取られる マスターが言う
「だから アーヴィン君の言う通り 今のお前を 大切にしてくれよな?お前は ただの 戦いの道具なんかじゃないんだ」
軍曹が微笑しハイケルを見る ハイケルが呆気に取られた状態から 苦笑して言う
「そうだな… 今の俺には お前と言う友人も居る それに たった3歳違いの お父様まで出来た所だ」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが言う
「あぁ そちらは 蘇っても変わらないか …とにかく 例え人権のない 作られた物であったとしても 人として生きてきた間に得たものはある それらの為にも 無駄に死ぬ事は 止める事にする」
マスターと軍曹が微笑する ハイケルが言う
「…それに よく考えてみれば これから蘇る奴らが 今の俺よりも勝っているとは 思えないからな?」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが言う
「当然だろう?あんな所でただ寝ている奴らになど 負けてたまるか」
マスターが苦笑して言う
「おいおい 自分と張り合ってどうするんだ… お?」
ハイケルが立ち上がって言う
「では 早速 入院して来る そろそろあのベリハース院長にも 本気でキレられそうな所だ さっさと蘇ってしまおうと 考えていたのだが 作戦を変更する」
ハイケルが出口へ向かう マスターが呆れて言う
「本気だったのか… ああ、それじゃ」
ハイケルが出口の前で立ち止まって振り返る マスターが微笑して言う
「たった3日じゃ 見舞いにも行けそうにないが お大事にな?」
ハイケルが言う
「ああ、可能な限り 大事にしてみるつもりだ」
ハイケルが扉を開け出て行く マスターが苦笑して言う
「可能な限り ねぇ… 本当に分かってるんだか」
軍曹が微笑し立ち上がって言う
「では、マスター!自分は 精一杯 少佐をお守り致しますのでっ!どうか ご安心をっ!」
マスターが苦笑して言う
「ああ、これからも引き続き アーヴィン君の息子さんを よろしくな?」
軍曹が衝撃を受ける マスターが笑う 軍曹が困って言う
「マ、マスターっ!?」
マスターが笑っている 軍曹が困っている
【 ハブロス家 アースの部屋 】
軍曹が驚いて言う
「はぇっ!?では 少佐を自分の養子にしたのは…」
アースが言う
「ああ、元々は 帝国との戦いに利用する その銃の資金元になる事が理由だった …とは言え 私もその理由を祖父上から伺った時には 可笑しいと思いはしたのだが それでも 祖父上からの御命令であった為 仕方なく書類を揃え行ったんだ」
軍曹が視線を落として言う
「そ、そうであったのか… 自分はてっきり その… 人権のない少佐を そのままにして置いては…」
アースが言う
「それこそ 最下層の者であっても 人である以上は人権を有している それは このアールスローン国外の者であっても例外ではない しかし、悪魔の兵士が 人の手により作られた 物 であっては 当然そこに人権などは存在せず 更には これが平時であったなら その存在さえ許されない者 従って その様な彼らを守るには 相応の力を持った 所有者が必要だ」
軍曹が視線を強める アースが苦笑して言う
「…と、この様な話を お前に聞かせれば 当然怒って部屋を出て行くだろうと思い あの場では わざとその様に言って お前を部屋から 追い出したのだが」
軍曹が呆気に取られアースを見る アースが苦笑してタバコに火をつけて言う
「フー… まさか 政府の攻長閣下まで それを理由に ご退室されてしまうとは 私の計算ミスだったな」
軍曹が驚いて言う
「ラミリツ攻長が?」
アースが言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は お前と同様に人の良い祖父上の下へ入り込み 悪魔の兵士に関する情報を聞き出した …従って 今度は それを 私が聞き出してやろうと思っていたのだが」
軍曹が怒って言う
「兄貴っ!ラミリツ攻長は その様な卑怯な者ではないのだっ!ラミリツ攻長は 政府の剣としてっ 自分たちと共にっ!」
アースが言う
「その攻長閣下は 国防軍総司令官である この私に 2世代目の悪魔の兵士が眠る その場所を教えては下さらなかった」
軍曹が疑問する アースが言う
「昼間も言ったが 国防軍のマスタートップシークレットは 総司令官であっても 封が解かれるその時まで 全ての情報が伏せられてる マスタートップシークレットが何処にあるのかさえ 調べる事は出来ないんだ」
軍曹が言う
「う… うむ…」
アースが言う
「しかし、国防軍がその様な状態であるにも拘らず 政府の方は逆だ 政府の攻長 ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は 我々がやっと知りえた 1世代目だけに留まらず 2世代目の悪魔の兵士が眠る その場所までをも知っている …これがどれ程危険な事か お前にも分かるだろう?」
軍曹が言う
「う… うむ…?」
アースが言う
「では 分かったな?アーヴィン?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はあっ!?」
アースが呆気に取られて言う
「わ… 分からなかったか…」
アースが頭を押さえる 軍曹が慌てて言う
「あ、いや、その…っ すまんっ 兄貴… も、もう少し 簡単に…っ?」
アースがテーブルを叩き立ち上がって言う
「アーヴィン!直ちに 攻長閣下より 2世代目の悪魔の兵士が眠る その場所を 聞き出して来いっ!命令だっ!」
軍曹が思わず敬礼して言う
「はっ!了解… い?」
軍曹が呆気にとられて叫ぶ
「えぇええーっ!?」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】
ハイケルがベッドに寝ていて言う
「…暇だ」
ハイケルが体勢を変えて言う
「思い起こせば 入院などをしたのは初めてだ しかもこんな軽症で… これなら1週間の任務及び訓練の禁止を受けていた方が よっぽど… いや、しかし あの任務に行かなかったら 色々と…」
ドアがノックされ ハイケルが疑問する ドアの外から隊員Bの声が聞える
「少佐ぁー!バイスン隊員とその他 レギスト隊員 代表8名でありまーす!」
ハイケルが呆気に取られる ドアの外から隊員Aの声が聞える
「けど、そう言うと バイちゃんは レギスト隊員の代表に 入らないって事にならないか?」
ドアの外から隊員Bの驚いた声が聞える
「えー?それじゃー もう1回ー 少佐ぁー!レギスト隊員代表 バイスン隊員と その他も レギスト隊員代表の… でも、こうすると なんか 面倒だしー?」
ドアの外から隊員Cの声が聞える
「そんなのどうでも良いだろ!?だったら最初からっ!」
ハイケルが苦笑して上体を起こして 言う
「レギスト隊員代表 バイスン隊員と 同じく8名であるなら 入れ」
ドアの外で隊員たちが衝撃を受け 隊員Bがドアを開けながら言う
「そうそう!これが正解ー!って事で 少佐ぁー!失礼しますでありまーす!」
隊員Aが苦笑して言う
「まったく 調子良いんだから バイちゃんは」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
隊員たちが病室に入り敬礼する ハイケルが言う
「ついでに 医療施設内では 基本敬礼は不要とされている」
隊員たちが衝撃を受けて 敬礼を解除する ハイケルが言う
「それで 私に何か用か?」
隊員Aが隊員たちへ視線をむけつつ言う
「あー… えっと その…っ」
隊員Bが笑み ハイケルの横へ来て言う
「はーっ!それは もっちろーん!俺たちは 少佐のお見舞いに参りましたー!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「見舞い?…駐屯地内の医療施設への入院に 見舞いは不要だぞ」
隊員Bが笑顔で言う
「はーっ!そう言う事なので!お見舞いの品とかは 無いのでありまーす!少佐ぁー!」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが苦笑して言う
「そちらは調べたのだな?」
隊員Bが言う
「はーっ!さっき ベリハース院長にお伺いしましたー!ついでに 少佐は本当は入院なんてしなくても良いだけど そうでもしないと言う事を聞かない 困った悪魔の兵士なので 無理やり入院させる事にしたー って情報も聞いてきましたー!少佐ぁー?」
隊員たちが衝撃を受け隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
ハイケルが言う
「それは私の方でも 予測していた事だ 気にするな」
隊員Bが言う
「はーっ!って 事で 俺たちは そんな少佐へ 今日の報告でありまーす!」
ハイケルが言う
「報告?」
隊員Aが言う
「はい、今日あの… MT77を製作した 銃職人のザキル殿が MT77の改良型を作るので その基本とするデータを取りたいと この駐屯地へお越しになったんです」
ハイケルが言う
「ああ… そう言えばそうだったな …の割には 私の下へは顔を出さなかったが」
隊員Cが言う
「少佐のデータの方は既に入手しているので 今度は その少佐と共に戦う隊員である 俺たちのデータを欲しいって」
ハイケルが疑問して言う
「お前たちの?」
隊員Fが言う
「それで 少佐も軍曹も居らっしゃらなかったので バックス中佐へお伺いした所 対帝国との戦いに使用する銃に必要なら 俺たちのデータを保存してる 情報部のデータを そのまま渡してしまって良いと言われたので マイク少佐にお願いして 以前取った俺たちの能力データを 渡して頂きました」
ハイケルが言う
「そうか… お前たちの個人データとなれば 私の一存だけではなしえなかった事だ 偶然ではあったが バックス中佐へ尋ねてくれた事は 結果として良かった」
隊員Bが言う
「それで それで!少佐ぁー!」
隊員Aが苦笑して言う
「バイちゃん 少佐は入院治療中なんだから 報告事項は短くするようにって 院長から言われただろ?」
隊員Cが言う
「ザキル殿へ 俺たちのデータを渡したって言う 重要事項はお伝えしたから もう退散だな?」
隊員Bが不満そうに言う
「えー」
隊員Aが苦笑して言う
「シャワールームで話せない分 今、話したいのは分かるけど」
隊員Bが表情を落として言う
「うんー…」
ハイケルが言う
「問題ない ベリハース院長からの ”少佐は本当は入院なんてしなくても良いだけど そうでもしないと言う事を聞かない 困った悪魔の兵士なので 無理やり入院させる事にした” との機密情報を入手した ついでに その様な状態で入院などさせられているせいで 暇を持て余していた所だ」
隊員たちが焦りの汗を掻く ハイケルが言う
「…いや、それこそ バイスン隊員の その話の続きは シャワールームで聞いても良いかもな」
隊員Bが喜んで言う
「じゃ そうしましょうかー!少佐ぁー!」
隊員Aが慌てて言う
「駄目だろっ!?」
ハイケルが隊員Aを見る 隊員Aが衝撃を受けて慌てて言う
「あっ!いやっ!そのっ!俺はっ バイちゃんに言ったのでありましてっ 決して少佐へ言った訳ではっ!」
隊員Fが苦笑して言う
「まぁ シャワーくらい浴びに行っても 良いかもしれませんが なるべく安静にして 早く部隊へ戻ってきて下さい 少佐」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Nが苦笑して言う
「そう言う事ですよ 少佐」
隊員Aが言う
「いくら悪魔の兵士でも 耐久力は普通だって エルム少佐も言ってましたし」
隊員Bが言う
「えー?そうなのー?」
隊員Aが慌てて言う
「言ってたじゃんっ!バイちゃんっ!?」
隊員Bが苦笑して言う
「ひににっ」
ハイケルが言う
「そうだな …そのエルム少佐とは違い お前たちには苦労を掛けるが」
隊員Bが言う
「全ー然 苦労なんて 何にも無いでありますー!少佐ぁー!」
ハイケルが呆気に取られて隊員Bを見る 隊員Bが笑んで言う
「だって 皆 今日は そのお陰で チョー楽しかったしー!俺はそっちの方を ご報告したくって お見舞いに来たのでありますー!少佐ぁー!」
ハイケルが疑問し言う
「どう言う意味だ?」
隊員Aが苦笑して言う
「もー しょうがないな バイちゃんは そこまで言っちゃったんじゃ 全部報告せずには帰れないじゃないか」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ だってー 俺1人だと報告 難しいんだもんー」
隊員たちが顔を見合わせて苦笑する
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツがデスクの椅子に座っていて言う
「はっきり言って 幻滅!あれが ホントに元国防軍総司令官であった ラゼル様の孫である 現国防軍総司令官の言う事?」
軍曹がデスクの前に立っていて 表情を困らせて言う
「は… はぁ… その…」
メイドがやって来て言う
「失礼致します」
メイドが紅茶を1つ応接テーブルへ置いて言う
「どうぞ」
軍曹が振り返って言う
「う… うむ…」
メイドがラミリツのデスクへ紅茶を置く ラミリツが不満そうに紅茶を一口飲む メイドがドアの前で礼をして立ち去る 軍曹がそれを見送った後ラミリツを見る ラミリツが言う
「飲めば?ラゼル様が ご愛飲されてた紅茶だよ?」
軍曹が呆気にとられて言う
「あ… ああ そう言えば… 道理で懐かしい香りが…?」
軍曹が応接テーブルに置かれた紅茶を見てから ラミリツを見る ラミリツが言う
「別に 好きじゃないんだったら良いけど …そう言えばアンタ いつも食後の飲み物は コーヒーにしてるもんね?…見た目は似てても 好みは違うんだ?」
ラミリツが紅茶に角砂糖をひとつ入れる 軍曹が呆気にとられてから言う
「あ… いや~?以前は良く紅茶の方を 飲用していたのだが 最近は マスターの店で コーヒーを飲んでいるせいか…」
ラミリツが言う
「ふーん?僕は逆 ラゼル様やエルムと一緒に 紅茶ばっか飲んでたから なんか 癖になっちゃって」
ラミリツがスプーンで紅茶を軽くかき混ぜる 軍曹が言う
「おおっ では 逆ではあるが 自分も マスターや少佐と コーヒーばかりを飲んでいた為 癖になってしまったらしいのだ ラミリツ攻長とは逆でも同じなのだ!」
ラミリツが言う
「けど、言っとくけど エルムの方の …2世代目の悪魔の兵士が眠る場所は 教えないから」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
ラミリツが紅茶のカップを置いて言う
「どうせアンタの兄上 ハブロス総司令官から その場所を聞き出して来いって 言われて来たんだろ?」
軍曹が慌てて言う
「な、何故それをっ!?」
ラミリツが言う
「アンタと違って 馬鹿じゃないから 分かるんだよ 普通」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが言う
「だから 屋敷に入れはしたけど それ飲んだら 帰ってよね?」
軍曹が困って言う
「あ… いや… その…っ」
ラミリツが紅茶を一口飲んでから言う
「ああ… コーヒーの方が良いって言うなら 替えさせるし」
軍曹が困って言う
「いや、そうではなくて…っ ラミリツ攻長」
ラミリツが言う
「そう言えば 忘れてた アンタに頼みがあったんだ」
軍曹が反応して言う
「む?自分に頼みとは 何だろうか?」
ラミリツが言う
「国防軍総司令本部へ行ったのも 本当は それ伝えるつもりだったのに アンタの兄上があんな事言うもんだから すっかり忘れちゃって帰って来ちゃったんだよ だから アンタが伝えといて 頼みって言うか これ 命令だから?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「め、命令… 自分は 兄貴にも ラミリツ攻長にも 命令をされているが …自分は確か 防長閣下であった様な…?」
軍曹が首を傾げる ラミリツが言う
「何か言った?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「い、いやっ!何もっ!」
ラミリツが言う
「じゃぁ ちゃんと聞いて 理解してから帰るんだよ?良い?」
軍曹が言う
「う、うむ… そんなに難しい事なのであろうか…?難なら メモを取って…」
ラミリツが言う
「メモは駄目 そもそも そう言うものを消してきたって 報告なのに また 情報を残したら 意味がないだろ?」
軍曹が疑問して言う
「む?そ、そうなのか…?ではっ しっかと聞いて 理解してから 帰るのだっ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】
隊員Bが言う
「それから!それから!えーっと なんだっけ?あの 支える所のー」
隊員Nが言う
「グリップだよ グリップ!」
隊員Bが言う
「ああ そう!それそれ!それは 縦方向にした方が良いとかってー それナッちゃんが言ったら ザキル君チョー良い情報だって!それにしたら 押さえに回る隊員の数を増やせるから もっと反動を抑えることが出来るって 張り切ってましたー!」
ハイケルが言う
「そうか… では ベリハース院長が言っていた通り これでエルム少佐との筋力の差は 解消されるのかもしれない」
隊員Nが言う
「それから フッちゃん隊員のデータが凄いってな?」
隊員Bが言う
「あー!そうそうー!」
ハイケルが疑問して言う
「フレッド隊員のデータが どうかしたのか?」
ハイケルが隊員Fを見る 隊員Fが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「フッちゃんは 元々 警空のパイロット目指していたから えーと… なんだっけ?何か 色々チョー凄くってー!」
隊員Nが言う
「そうそう!」
ハイケルが疑問して言う
「色々とは?」
ハイケルが隊員Fを見る 隊員Fが衝撃を受け慌てて言う
「あっ いやっ そんな 色々なんて言う程のものではなくっ」
隊員Aが苦笑して言う
「フレッド隊員の 数値計算能力なら 戦闘機の目標拘束システムを使って 機動部隊の銃であっても 少佐のジャストショットと同じ事が 出来るかもしれないらしいんです」
ハイケルが呆気に取られて言う
「そうなのか?」
隊員Fが慌てて言う
「あっ い、いやっ でもっ そのっ!ザキル殿もっ まだ 作ってみないと 分からないと…っ それに 今までにない事なので 実用にこぎつけるまでは かなり時間が掛かるとも 言ってましたんで…っ」
隊員Aが言う
「けど それで本当に 少佐と同じ様に ジャストショットが出来る様になったら 凄いよなー 小銃メインアームチームのヒーローだよ フレッド隊員は」
隊員Fが慌てて言う
「いやっ だから まだ…っ その銃が出来るとも 決まってない訳だから そんなに 期待させないでくれよ アラン隊員?」
隊員Cが苦笑して言う
「なーにも 謙遜する事ないだろ?今後 レギストで少佐の期待を貰えるのは フレッド隊員で決まりだな?」
隊員Fが言う
「だからっ そんなプレッシャー掛けるのは やめてくれって サッちゃんっ」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「サッちゃん 言うなっ!」
隊員たちが笑う ハイケルが隊員たちを見て微笑する ドアがノックされ ベリハースが入って来て言う
「こらこら 君たち?面会時間はとっくに過ぎているだろう?それに ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐は」
ハイケルが衝撃を受け羞恥心を堪える 隊員たちが笑いを堪える ベリハースが続けて言う
「軽症とは言え 入院患者なんだから 面会は短時間に終わらせる様にと 言った筈だね?」
隊員たちが軽く頭を下げつつ言う
「は… はい…」 「すみません…」
ハイケルが言う
「私が暇潰しの為に 話でもしていろと命じただけだ 彼らに責任はない」
隊員たちがハイケルを見る ベリハースが苦笑して言う
「でしたら その彼らへ そろそろ退室するようにと 命じて下さいね?少佐?」
ハイケルが言う
「了解」
ベリハースが部屋を出て行く 隊員たちが顔を見合わせる
【 ハブロス家 アースの部屋 】
軍曹が言う
「…と言う事で!政府のデータベースや その他 政府の関連する施設のデータベースからは 初世代の悪の兵士に関する情報 及び レギストの情報は 全て消去させたと言う事なのだ!更には それらのデータが再び入力される事の無いように 常に監視を行わせると!しかし、既にその情報を知ってしまった者たちの 頭の中や 個人の記憶装置などに関しては どうしても処理が行き届かないので 今後も相応の対策を 取って欲しい!…との事である!兄貴っ!」
アースが言う
「よしっ 簡単とは言え 長い言葉を良く覚えて来たな アーヴィン?」
軍曹が衝撃を受けてから言う
「う、うむ…」
アースが言う
「で?お前にとってはキャパオーバーな それらの情報を入力された事により お前は私からの 大元の命令を忘れて 帰って来てしまった訳か…」
軍曹が衝撃を受ける アースが溜息を付いて言う
「流石はメイリス家の… いや、アーヴィンと長くを共にしてきた攻長だ たった半年とは言え アーヴィンを使いこなす術を 得られてしまったらしい」
軍曹が表情を困らせて言う
「あ… いや、兄貴?その… いくら俺でも そこまで馬鹿ではないのだが…?」
アースが言う
「そうだったのか?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「うぐっ!じ、自分は 確か 防長閣下で… それなりに…」
アースが言う
「冗談だ アーヴィン」
軍曹がアースを見て言う
「は?はぁ…?」
アースが苦笑して言う
「ただ、攻長閣下からのご命令は しっかりとこなしてくれた様だが お前の兄であり 国防軍総司令官でもある 私からの命令は 無視なのか?」
軍曹が言う
「あ、いや それは勿論 訊いてはみたのだが… いや、訊く前から 断られてしまったのだ」
アースが言う
「ならば せめて その理由位は 訊いて来て欲しかったのだが …お前の事だ あの攻長閣下に 嫌だ と一言言われれば 追求は出来なかったのだろう?」
軍曹が表情を困らせて言う
「う… うむー…」
アースが溜息を吐いて言う
「まったく… 何処までも優し過ぎるというのは やはり 困ったものだ …祖父上も同じだったが」
アースがタバコに火を付けようとする 軍曹がふと思い出して言う
「しかし、その…」
アースが軍曹を見て言う
「うん?」
軍曹が言う
「そんなに心配などしなくとも!ラミリツ攻長は 自分たちの… 国防軍の敵には ならないのである!」
アースが表情を顰めて言う
「…何故 そうと言い切れる?」
軍曹が言う
「それは なんと言うか…」
軍曹の脳裏に記憶が蘇る (ラミリツが紅茶を飲んでいる様子 その奥のデスクの端に エルムのM82が大切に置かれている) 軍曹が視線を泳がせてから言う
「ラミリツ攻長は… 祖父上やエルム少佐の事を 本当に!…まるでご自分の家族の様に!大切に思って下されているのだ!そのラミリツ攻長が 自分たちを裏切るような事は!」
アースが怒ってデスクを叩く 軍曹が驚いてアースを見る アースが言う
「アーヴィンっ!お前は忘れたのかっ?彼の兄である メイリス元長官が 何をしたのかをっ!」
軍曹が言う
「そ、それは 分かっているが…」
アースが言う
「過去の事だけではない!今回とて 奴のせいで どれ程の人命が失われた事かっ!」
軍曹が言う
「そ、それは もちろん 分かっているっ!しかし ラミリツ攻長は!そのメイリス元長官をっ …ご自分の兄君へ銃を向けてまで 少佐のデコイを守ってくれたのであるっ!」
アースが悪笑んで言う
「フッ… 詭弁だな?」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?」
アースが言う
「それが 奴らメイリス家の作戦だと 何故気付かないんだ アーヴィン」
軍曹が驚いて言う
「はあっ?…さ、作戦?」
アースが言う
「メイリス家の連中なら 親兄弟に銃を向ける事など 大した事ではないのだろう」
軍曹が呆気に取られて言う
「そんなっ!兄貴っ!?」
アースが言う
「奴らはそう言う人間なんだっ …まだ 物である 悪魔の兵士の方がマシだ 彼らは決して裏切らず 命がけで主を守ってくれるからな?」
軍曹が怒って言う
「兄貴っ!いくら兄貴でも その様な言い方はっ ラミリツ攻長にも 少佐たちにも 失礼なのだっ!」
アースが怒って言う
「我々の父上はっ!あのメイリス家のっ!…奴らの父親に 裏切られ 心を壊されたのだぞっ!?」
軍曹が呆気に取られて言う
「ち… 父上の事に メイリス家が関わったと?」
アースが言う
「父上は国防軍の代表として 帝国との和平を取り持つ為に 帝国へ向かい… 戻ってからは別人の様に変わってしまった …それらは全て 父上の唯一無二の親友だと思われていた メイリス家の彼らの父 ソロン・フレイス・メイリスによる 画策のせいだっ!」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?か、画策…?父上がラミリツ攻長の父上様に 何かされたと言うのか?父上が帝国から戻ってから お変わりになってしまった事は もちろん自分も知っているっ し、しかし それに?」
アースが言う
「ならば 教えてやろう アーヴィン」
軍曹がアースを見る アースが言う
「当時 国防軍総司令官であった父上と共に 帝国へ向かったのは 政府の長官であったアミレス長官 そして 外交を取り仕切っていたカルメス外交長と 後1人 それが 政府警察のメイリス警察長だった」
軍曹が驚いて言う
「メイリス… 警察長っ!?」
アースが言う
「ハブロス家は 祖父上の代に エルム少佐とレギスト そして 警機を率いるメイリス隊長と力を合わせ 帝国との戦いに勝利していた …従って その次世代であった 父上と政府警察の メイリス警察長は 良き友人でもあったんだ だから父上は 帝国へ向かうに当たっての 政府側のその顔ぶれに 不満は無かった …政府の者であろうとも メイリス警察長を信じていたんだっ」
軍曹が言う
「そのメイリス警察長に 父上が 裏切られたと言うのか?」
アースが言う
「そうだっ!そもそも父上は 国防軍からの護衛を付けられない状態で 帝国へなど行く予定ではなかったっ それなのに メイリス警察長が この同行を拒めば 国防軍の主権を奪われると脅迫し …結果としてっ」
軍曹が表情を困らせて言う
「し、しかし… 確か父上は 帝国へは連れて行かれない 国防軍の隊員の代わりとして 既に国防軍を脱退していたエルム少佐の小隊を 祖父上から借り受け 連れて行った筈であるっ お陰で 父上は逃げ戻る事が出来たとっ」
アースが言う
「そうだな 最初からエルム少佐とその小隊… デコイたちを連れて行っていれば 父上はご無事であっただろう …だが 祖父上はそうはさせて下さらなかった そのせいで帝国から救出された父上は すでに 精神崩壊状態だったんだ」
軍曹が表情を落として言う
「う…うむ…」
アースが言う
「お前も覚えているだろう?帝国から戻った父上は ともすれば お前の持つアールスローン戦記の原本を渡せと叫び散らしたり 国防軍のデータを漁り散らしたり… とても 総司令官の任務を行えるような状態ではなかった 当然 国防軍の長である 総司令官の位を剥奪され 果てには 自室のベッドに縛り付けられ…」
軍曹が視線を落として言う
「だが それは全て帝国へ行った事が原因なのだ アミレス長官も 帝国から戻って… そちらは詳しくは知らんが 政府の長官としての行動が取られないようになったと …しかし 例え メイリス警察長が 父上を帝国へ誘ったとあったとしても それは…」
アースが言う
「帝国から戻ったアミレス長官も アールスローン戦記の原本を求め 国防軍のデータベースへ不正アクセスを行ったりしていた このハブロス家へ入り込もうとして衛兵に捕まった事もあった そして、あのカルメス元長官まで 結果として同じ… 帝国へ行った者は皆 精神に異常をきたし アールスローン戦記の原本を得ようと 行動を起こす …だが メイリス警察長だけは違っていた」
軍曹が驚いてアースを見る アースが言う
「帝国へ行ったにも拘らず 彼だけは アールスローン戦記の原本を求める行動は起さなかった …おかしいと思わないか?アーヴィン?」
軍曹が言う
「う、うむ それは… 確かに?」
アースが言う
「これは推測だが メイリス警察長が無事であった理由 それは …自分ではなく 代わりに シェイム・トルゥース・メイリスを 向かわせていたのではないだろうか?」
軍曹が驚いて言う
「な、なんとっ」
アースが言う
「父親であった ソロン・フレイス・メイリス警察長が 次の政府長官を見据え 息子のシェイム・トルゥース・メイリスを自分の代わりに 帝国へ向かわせていた… だから 結果として帝国へ行かなかった父親は無事で 帝国へ向かった息子は 後の現代で あのような事件を起こした」
軍曹が納得して言う
「なるほど…」
アースが言う
「そして、恐らく 無事であった父親は 帝国で何が起きたのかを餌に 外交を取り仕切っていた当時のカルメス外交長を揺すり 彼らと共に 帝国へ向かった事も理由にこじ付け 階級の下るメイリス家でありながらも 政府の長の座を得る事となった」
軍曹が呆気に取られる アースが言う
「それを裏付けるものとして カルメス家は 事あるごとに メイリス家と手を組み 様々な事業を行っている …高位富裕層のカルメス家が 上位富裕層のメイリス家へ多くの貸しを作る形でばかりだ」
軍曹が気付いて言う
「うむ… うん?そう言えば 帝国で起きた事というのは 一体何であったのだろうか?メイリス元長官がカルメス元長官を揺すっていたとしたら それは 誰かに知られてはマズイ情報と言う事であろうか…?今回の情報を消したのと同じ様に…?」
アースが言う
「そうだな 国防軍としても ハイケル少佐のマスタートップシークレットに関わる情報が 手玉に取られる様な事があれば その何者かに揺すられる可能性はある」
軍曹が言う
「おお!では、ラミリツ攻長は やはり我々の味方と言う事で!」
アースが言う
「しかし、今回の場合なら 難しくはあるが マスタートップシークレットの場所を 移動させる事が可能だ」
軍曹が驚いて言う
「なんとっ!?あの地下の施設を であるか!?」
アースが言う
「他にも 簡単なものであるなら 警備を強化するなどの処置や 偽の情報を作り 翻弄すると言う手段を取る事も出来る 攻長閣下がお前へ伝えた 今後も相応の対策を 取って欲しい と言うのは そう言った事を示している」
軍曹が衝撃を受けて言う
「のぉあっ!す…凄いのだ 自分にはまったく… さっぱり…」
アースが言う
「で、分かったか?アーヴィン?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はぇ!?」
アースが軍曹を強く見て言う
「メイリス家は 元々 そう言った薄汚い連中なんだ ラミリツ攻長も 何時お前を裏切り ともすれば アールスローン戦記の原本を奪おうと 2世代目の悪魔の兵士が眠る マスタートップシークレットを餌に 我々を揺すって来るとも分からない」
軍曹が表情を落として言う
「じ… 自分は そんな事は…」
アースが言う
「良く考えるんだ アーヴィン お前にとって 誰が味方なのか 敵なのかを」
軍曹が表情を困らせて言う
「う… うむ…」
アースが言う
「下がって良い」
軍曹がアースを見てから 部屋を出て行く
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】
ハイケルがベッドに寝ていて目を開き 天井を見る ハイケルが間を置いて言う
「…暇だ」
ハイケルが溜息を吐く
【 マスターの店 】
軍曹がコーヒーを前に考え込んでいる マスターが遠目に見てから苦笑して言う
「一部隊の軍曹ならともかく 高位富裕層のお方や 果ては 防長閣下ともなると 色々と悩みも多いんだろうな?」
軍曹が衝撃を受け 表情を困らせて言う
「あ…っ いえ… その…」
マスターが軍曹のコーヒーを下げ 代わりに紅茶を置く 軍曹が疑問する マスターが微笑して言う
「喫茶店は何も コーヒーだけ置いてる訳じゃないんだぜ?気分を癒したり 落ち着かせたり… そう言った効果は 紅茶の方が高いと言われてるんだ」
軍曹が感心して言う
「ほぉー そうなのでありますか …だから 祖父上は紅茶ばかりを 飲用されていたのだろうか?」
軍曹が紅茶の香りに気付いて言う
「ん?あ、これは 祖父上が昔好まれていた…」
軍曹が角砂糖を取ろう伸ばした手を止め 横の氷砂糖を1スプーン入れ かき混ぜてから一口飲む マスターが微笑して言う
「ほぉー 流石 通だねー?当然の様に 氷砂糖をチョイスされるとは」
軍曹が気付き照れ隠しに苦笑して言う
「あ、いやっ これはーっ 祖父上がいつもその様に していらしたのを 見ていたものでありまして…!その…っ 自分の知識と言う訳では…」
マスターが言う
「いや、そういうものなんだろう?自分が生まれ育った環境で 自然と身につく知識や教養… その違いって奴が その人の元の品格 果ては 人格にも影響を及ぼす だから やっぱり 階級ってものが 消えないんだろうなぁ…?」
軍曹が視線を落として言う
「は… はぁ…」
マスターが気付き苦笑して言う
「けど別に それが全て 悪いってもんでもないだろ?」
軍曹がマスターを見る マスターが言う
「品格や人格はもちろん大切だが 結局 その自分が 何をやるかって言うのは 自由なんだし… 昔は考えられなかったかもしれないが 今じゃ階級が下であっても 上の方々のそれらを真似して 目指して頑張ってみたりする者もいる その逆も… あったりするのか?はははっ」
マスターが皿を拭く 軍曹が考えてから言う
「その… マスター?」
マスターが疑問して言う
「ん?」
軍曹が言う
「例えばその… 下とは言わずとも 一番上から1つ下辺りの者が 一番上を目指すとしたら… その… たった その程度の事の為に 自分の家族や兄弟を… 親友を 利用したりするような事は… あるのでありましょうか…?」
軍曹が視線を落とす マスターが気付き 皿を置いて言う
「うん …それは あるだろうね」
軍曹が驚いてマスターを見る マスターが言う
「むしろ そう言う 一番上に近い人ほど 最後まで悪あがきをしたりするよ …どうあっても 一番を取りたい …ってね?」
軍曹が表情を落として言う
「…そうで ありますか… では…」
マスターが言う
「だからこそ 富裕層の方は 常に気を張って その地位を守り 奪われないように 傷付けられないようにって 他に目を光らせている …どれ程信頼する者であっても 最後の最後まで気は抜かない …そんなんだから ご自分の精神を病まれてしまう事も 多いんだろうな…?」
軍曹がマスターを見る マスターが苦笑して言う
「それから、それを回避する為に 階級にわざと差を持たせて 友人を作るって言うのも聞く話だ …君と初めて会った時に まず俺が考えたのはそれだった」
軍曹が慌てて言う
「そんなっ!自分は…っ!」
マスターが苦笑して言う
「ああ、俺の思い過ごしだったって事は 話をしてたら すぐに分かったよ」
軍曹が苦笑する マスターが言う
「その代わり 次はすげー 心配になったなぁ?」
軍曹が疑問して言う
「へ?心配?」
マスターが言う
「こんな馬鹿なお方が あのハブロス家の?おまけに 防長閣下で…?」
軍曹が衝撃を受け落ち込んで言う
「うっ!そ、それは… 真に 申し訳なく…」
マスターが笑って言う
「っははははっ 冗談 冗談 ごめん、悪かった 今のは 俺の失言だ 大変失礼を …防長閣下?」
マスターが頭を下げる 軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「のあっ!?い、いえっ!自分が馬鹿で 困り者である事はっ 間違いないのでありますのでっ どうかっ!」
マスターが軍曹の様子を伺い見て 苦笑して言う
「おいおい ここまで言われても 怒らないのか?ホント筋金入りに優しいんだなぁ アーヴィン君は?」
軍曹が言う
「は… はぁ?自分はそのー… 自分が優しいのかどうかは 良く分からないのでありますが …兄や 富裕層の方々に関しましては… 正直 恐ろしいと感じる事があります」
マスターが軍曹を見る 軍曹が視線を落として言う
「特に兄は… 兄弟であり 仲良く話す時もありますから そう言った時は 例え何かを注意されたとしても 恐ろしいと感じる事はないのでありますが… 家の事や 国防軍の事を話す時の兄は… なんと言うか とても人として 冷たい印象が強く… …しかしっ」
軍曹がマスターを見て言う
「兄がハブロス家や国防軍を守る為にっ そう言った世界にて戦っていると言うのであれば!自分はもちろんっ 協力したいと思っているのであります!…しかし その 相手が…」
マスターが言う
「うん… そうか… なら、アーヴィン君が協力するのに 何も お兄様と同じ手法を取る必要は無いんだ」
軍曹が軽く驚いて言う
「はぇ…?」
マスターが言う
「アーヴィン君のお兄様が… ハブロス総司令官が 冷たく… 冷徹に立ち向かう方であるのなら 尚更 弟のアーヴィン君は逆に 今のまま 何の画策も無く向かって行くって言うのも 良いんじゃないかな?それこそ 何も疑わず 相手を信じて」
軍曹が驚き慌てて言う
「なぁあっ!?い、いやっ マスターっ?それではっ!…いくら自分でも その様な事をしては 相手の思うがままに されてしまうと言う事が 分かるのでありましてっ!」
マスターが苦笑して言う
「それじゃ それこそ?アーヴィン君が 全力で頭を使って 相手に惑わされないように!…ってしたら それは 叶うのかい?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「いえっ!無理でありますっ」
マスターが言う
「だろぉ?」
マスターが自分用のコーヒーを淹れながら言う
「そもそも 富裕層方の そう言った騙し騙されの世界ってのは複雑で ちょっとやそっとじゃ手に負えるものじゃない 彼らは元々そう言う世界に生まれ 生きているんだ… そこへ新たに参戦しようと 今度は 全てを信じきれる 君のような者が来る …って言うのは 向こうにとっても 逆に扱いが難しい …冷静沈着な ハブロス総司令官と 真逆の アーヴィン防長閣下 …これは ひょっとして 最強のコンビなんじゃないか?」
軍曹が不思議そうに言う
「は、はぁ…?本当に それで上手く行くのでありましょうか?自分がコロッと騙され 兄の足を引っ張ってしまうのでは?」
マスターが言う
「ま、普通ならそうかも知れないが 君には 高位富裕層ハブロス家の力だけじゃない 国防軍の力もあり 更には あの!」
軍曹が言う
「あ、”あの”?」
マスターが言う
「レギストの仲間たちを率いる 現在 入院中の 悪魔の兵士 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐が居るんだ!君に恐れるものは 何も無ーいっ!…と?プッ…ククク」
マスターが笑う 軍曹が衝撃を受けて言う
「うっ!…マ、マスター?なんと言いましょうか?自分は 今 とてもっ 心強いような!…そうでないような?ふ、複雑な心境であります!」
マスターが笑って言う
「あっはははっ やっぱ カッコ付かないよなぁ?まずは あいつが早く退院してくれないとな?」
軍曹が苦笑して言う
「あは… は はい!…あ、それと マスター!」
軍曹が立ち上がる マスターが疑問して言う
「うん?」
軍曹が笑んで言う
「自分には 少佐やレギストの仲間たちと共に マスターも居られます!本日もお陰さまで!自分は とても安心出来ましたっ!真に 有難う御座います!」
マスターが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「ああ!いつでも 来てくれたまえ!何しろ 喫茶店は憩いの場だからな?」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!有難う御座います!マスター!では 本日はこれにて 自分は 失礼致します!」
軍曹が立ち去って行く マスターが苦笑して言う
「憩いの場に敬礼とは… 流石は 元国防軍レギスト駐屯地情報部 兼 喫茶店マリーシア だな?…さて」
マスターが店のドアに準備中の札を掛け PCへ向かいながら言う
「ここからは 憩いの場から一転 帝国様の情報を 伺ってみますかねぇ?」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】
隊員Bがドアをノックして 開けながら言う
「少佐ぁー!休暇出隊のバイスン隊員と 同じく…!あれー?」
隊員Bがキョロキョロする 隊員Aが後ろから入って来て言う
「こら バイちゃんっ いくら休暇出隊でも ノックの後の返事を待つのは 礼儀で… うん?」
隊員Nが言う
「どうしたー?流石のバイちゃん隊員も 少佐に怒られ… ん?」
隊員Fが心配げに言う
「お、おい?どうした?何で皆 そんなにっ!?」
皆が部屋へ入り 呆気に取られる 隊員Bが言う
「少佐ぁー?居ないでありますかー?少佐ぁー?」
隊員たちが周囲を見渡した後 顔を見合わせ疑問する
【 マスターの店 】
店の来客鈴が鳴る マスターが反応し振り返りながら言う
「あ、申し訳ない 今日はもう …て うん?ハイケル?」
ハイケルが店のドアを押さえていて言う
「1つ どうしても 教えて欲しい事がある」
マスターが気を取り直して言う
「どうしたっ?」
ハイケルが言う
「人は…」
マスターが神妙になる ハイケルが言う
「暇過ぎて 死んでしまうと言う事も あるのだろうか?」
マスターが転ぶ ハイケルが真剣に言う
「明日になったら そのせいで 俺が死んでいるのではないかとっ …心配になって眠れなくなった」
ハイケルがカウンター席に座っている マスターが飲み物を用意しながら言う
「まったく 高位富裕層の防長閣下が 高貴なお悩みに苦しんでいる時に それに仕える筈の 悪魔の兵士は 入院してるだの 暇が理由で命の心配をしてるだの…」
ハイケルがムッとして言う
「悪かったな 大体 お前も 俺を大切にしろと 言っていただろう?あれは嘘だったのか?」
マスターが苦笑して言う
「嘘なんかじゃないが… ま、お前にとっては 切実な悩みだったのか?」
ハイケルが言う
「当然だ 戦いの中で死ぬのならまだしも 入院中のベッドの上で 暇が理由で死んだなどとなったら 死んでも死に切れないだろう?」
マスターが軽く笑って言う
「なら 死にきらずに引き返して 今のお前のままで 蘇って来なさい ハイケル君」
マスターがハーブティーを出す ハイケルがマスターを見たまま言う
「可能であるのなら 切実にそうしたいものだ… …うん?」
ハイケルが自分に出されたものに疑問する マスターが苦笑して言う
「まぁ そっちのお悩みの答えは 残念ながら調べてやれないが… とりあえず 暇が理由で …痴呆になったってならまだしも 死んでしまった って言うのは聞いた事が無いから 安心して これでも飲んで 病室へ帰りたまえ」
ハイケルが疑問して言う
「紅茶か?」
マスターが微笑して言う
「ハーブティーだ これはその中の カモミールティー 鎮静作用や不眠改善作用があるって言うから 今のお前に丁度良いだろ?」
ハイケルが言う
「ほぅ?」
ハイケルがティーカップを一度持ってから間を置いて いくつかある砂糖の種類に視線を向ける ハイケルがカップを置き 粉砂糖の入ったビンを豪快にカップへ流し込む マスターが衝撃を受けて言う
「なあっ!?」
ハイケルがスプーンでかき混ぜた後 ハーブティーを一口飲み 衝撃を受けて言う
「甘いっ」
マスターが呆れて言う
「あのなぁ… ただのハーブティーに そんなに砂糖を入れたら 当たり前だろっ?」
ハイケルが不満そうに言う
「お前の事だ また 俺に苦いものを飲ませようとしているのかと思ったんだ…」
ハイケルが不満そうにハーブティーを口へ進める マスターが呆気に取られた後笑って言う
「あっはははっ そう言えば昔 珍しく風邪を引いたお前に 風邪の特効薬だって言う 漢方薬をコーヒーに混ぜて飲ませたっけなぁ?今考えると あれ 大間違えだったわぁ?」
ハイケルがハーブティーを噴き出す マスターが笑う
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
軍曹が表情を困らせて言う
「あ… あのー… ラミリツ攻長?」
ラミリツが紅茶のカップに角砂糖を縦に5個積み 6個目を積もうとすると 下位の角砂糖が溶け出し傾いて崩れる ラミリツが言う
「あぁっ …もうっ 声掛けるなって 言っただろっ!?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「うっ!うむ… それは すまん… しかし 自分は そのー…」
ラミリツが不満げに 紅茶をスプーンでかき混ぜる 軍曹が表情を顰めて言う
「コーヒーならまだしも… 流石に 紅茶へ角砂糖6個は 少々多いのでは なかろうかと… そのー 折角の 高級紅茶メッシタールティーの 繊細な味も 分からなくなってしまうのだ」
ラミリツが言う
「メッシタールじゃなくて メッスシタール …高級とか 高位のって意味を表す スを抜いたら 折角の名前と味が 馬鹿みたいじゃないか?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「うっ うむ… それは すまん… しかし、ラミリツ攻長 流石にその紅茶に 砂糖6個は…」
ラミリツが紅茶を一口飲んで衝撃を受けて言う
「甘ぁあっ!」
軍曹が苦笑して言う
「それはそうなのだ… そもそも メッシタール… あ、メッスシタールティーには 最初から 角砂糖1つ分の砂糖が 入れられて出されるものなのだ」
ラミリツが言う
「へぇー?良く知ってるじゃん?他の事は全然知らないのに?」
軍曹が苦笑して言う
「う、うむ… それは 昔 その話を聞いた時 自分は その… 最初の砂糖を入れるのは 誰なのであろうか?と考えたものであるから たまたま 覚えていたのだ」
ラミリツが言う
「そんなの 紅茶を入れた メイドか執事に決まってるだろ?分かれよ?普通」
軍曹が不思議そうに言う
「ふむ… やはりそうであるのか… では 初めてそのメッシタールティーを作ったのは やはり メイドか執事であったのだろうか?その様な作法のある紅茶は 他にはないのである」
ラミリツが言う
「メッスシタールっ」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが言う
「まぁ… そう言えば 誰なんだろうね?考えた事無かったや…」
軍曹が言う
「ふむ…」
ラミリツが紅茶を一口飲み 衝撃を受けて言う
「甘ぁあっ」
軍曹が衝撃を受けた後 軽く笑って言う
「その様な悪戯をするからである 祖父上が言っていたのだ 例え 富裕層であろうが無かろうが 食べ物や飲み物は 粗末にしてはいけないのである …それから 食事やお茶は 楽しく取るようにと!しかし 楽しくと言っても 悪戯で楽しむのは 間違えなのだ」
ラミリツが軍曹を見た後 視線を逸らして言う
「アンタが居たから 何となく 思い出してやっちゃったんだよ… …だから これはアンタのせい だから これはアンタが飲んで!命令!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はぇっ!?」
ラミリツがカップを軍曹へ向ける 軍曹が受け取り紅茶をじっくり見て 表情を顰めて言う
「さ、砂糖6個… いや、その実は7個が入った… どう見ても甘そうな… しかも カップの底には 今だ溶けてもおらない砂糖まで 見えているのだが… 最近無糖コーヒーに 慣れてしまった自分に これを? …のわーっ!?」
ラミリツがスプーンで紅茶をかき混ぜて言う
「それじゃ これは ちょっとだけ 僕も責任取って サービス …言っとくけど エルムは 砂糖が溶け残ってても そのまま飲んでたんだからね?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?こ、これを あのエルム少佐がっ!?」
ラミリツがエルムの真似をして言う
「”問題ない”」
軍曹が衝撃を受けた後 苦笑して言う
「…あまり似ていないのだ」
ラミリツが衝撃を受け そっぽを向いて言う
「ふんっ」
軍曹が微笑した後 頭をひねって考えて言う
「それにしても あのエルム少佐が… 実は これほどの甘党であったとは…」
ラミリツが軍曹の分の紅茶を取って言う
「エルムは 味覚が無いんだって」
軍曹が驚いてラミリツを見る ラミリツが紅茶を一口飲んで言う
「だから ラゼル様とのお茶の時間を無駄にしない為に 砂糖でエネルギー補給するんだって …ホント そう言う考え方 エルムらしいよね?」
軍曹が呆気に取られた後 苦笑から笑顔になって言う
「うむっ!やはり ラミリツ攻長は 祖父上やエルム少佐の事が 大好きなのである!自分は嬉しいのである!」
ラミリツが呆気に取られる 軍曹が紅茶を一気飲みする 軍曹が衝撃を受け叫ぶ
「甘ぁああーっ!」
軍曹が強烈な甘さに表情を顰めている ラミリツが呆気に取られた状態から笑い出す 軍曹がラミリツの笑顔に呆気に取られる ラミリツが笑ったまま言う
「何それ?そんなの 今更 当たり前だろ?」
軍曹が驚く ラミリツが笑って言う
「砂糖7個分だよ?甘いに 決まってるじゃない?やっぱ アンタ 馬鹿だよ?っははははっ!」
ラミリツが笑っている 軍曹が呆気に取られた後笑って言う
「そ、それは勿論 自分も 分かっていたのだが っははははっ…」
軍曹がラミリツに取られた紅茶を奪い返して一気飲みする ラミリツが衝撃を受けて叫ぶ
「あー!それ僕のっ!」
軍曹が満足そうに言う
「では やはり飲み物で悪戯をしては いけないのである!」
ラミリツが怒って言う
「もー!絶対 仕返ししてやるんだからね?」
軍曹が衝撃を受け慌てる
「はぇっ!?し、仕返し!?そ、それは 困るのだ… あ!それに 祖父上が 食べ物や飲み物ではと!」
ラミリツが言う
「それじゃ 食べ物や飲み物以外で!…うーん 何が良いかなぁ…?ねぇ?痛いのと熱いの どっちが良い?選ばせてあげる!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えっ!?そ、それは どちらも 嫌なのだが… と、言うか」
ラミリツが言う
「どっちかっ!」
軍曹が困って言う
「えっ!?う うーん…」
ラミリツがじっと見ている 軍曹が焦りの汗を掻き観念して言う
「で、ではっ!百歩譲って!熱い方で!」
ラミリツが言う
「じゃ、痛い方ね?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なんとーっ!?」
【 国防軍レギスト駐屯地 通路~病室 】
ハイケルが通路を歩きながら言う
「砂糖を入れすぎたせいで カモミールティーとやらの味は確認出来なかったが 鎮静作用とやらのせいか 少し眠くなって来た …このまま残りの入院日数も 眠り続けてしまえば良いんだ」
ハイケルがドアノブを掴んで言う
「流石に 30時間以上の睡眠持続は無理か…」
ハイケルが溜息を吐きつつドアを開けると 隊員Bの声が聞こえ出す
「じゃー!そこからは 少佐にお願いして どっかーん!って!…ん?」
ハイケルが病室の中を見て呆気に取られて言う
「…なっ?」
ハイケルの視線の先 隊員ABFNが すっかり和んでいる 隊員AとFが衝撃を受け 慌てて立ち上がって敬礼して言う
「あっ!しょ、少佐っ」 「す、すみませんっ!少佐っ!自分は止めたのですがっ!」
隊員Bが笑顔で言う
「おっかえりなさーい!少佐ぁー!」
隊員Nが笑って言う
「少佐 遅いから 折角持ってきた お見舞いの饅頭 全部食っちゃいましたよー?」
隊員BがNへ言う
「ナッちゃん!あの饅頭って奴 チョー旨かったよー!あれ何処で売ってるのー?」
隊員Nが言う
「旨いだろー?うちの爺ちゃん家 大和菓子屋やってんだよ」
隊員Bが衝撃を受け驚いて言う
「えー!スゲー!大和菓子って チョー高級なお菓子だよね!?アールスローンじゃ 富裕層の中でも 上の方の人じゃないとー?」
ハイケルが言う
「…今日は 休暇である為 報告事項は無いと思ったのだが?」
隊員Bが言う
「はー!少佐ぁー!報告事項は なーんにも無いでありまーす!少佐ぁー」
隊員Nが言う
「そうでありまーす!」
隊員BとNがスナック菓子を食べる 隊員AとFが衝撃を受け 隊員Fが言う
「す、すげぇ… バイスン隊員だけなら 兎も角 ナクス隊員まで まるで友人の家みたいに 堂々と…」
隊員Aが苦笑して言う
「場所も場所だけど なにしろ 少佐の前でってのが 凄いよな…?」
隊員Fと隊員Aがハイケルを見る ハイケルが呆気に取られた後 隊員Aと隊員Fを見て言う
「それで?」
隊員Aと隊員Fが衝撃を受ける ハイケルが隊員BとNを見て言う
「報告事項は無いのに 何故ここへ?」
隊員Bがスナック菓子を食べながら言う
「それはとーぜーん?少佐のお見舞いでありまーす!」
隊員Nが飲み物を飲みながら言う
「って言うか トレーニングの後に 皆でどっか集まろうって話になったのが 先じゃなかったっけ?」
隊員Bが気付いて言う
「あー そうだったかもー?」
隊員Aが言う
「そうしたら バイちゃんが その前に皆で少佐の お見舞い2日目に行こうって」
隊員Fが言う
「そうしたら 更に ナクス隊員が それじゃぁ きっと昨日と同じ位 遅くまで話に明け暮れてしまうんじゃって 話になり…」
隊員Bが言う
「だったら 少佐と一緒に 集まりしちゃおうよー!って事で 色々買って来たんでありまーす!少佐ぁー!」
隊員Nが苦笑して言う
「流石に病室じゃ アルコール禁止って事で 先日20を迎えたアッちゃん隊員と 年長フッちゃん隊員は 嫌がってましたけどねー?ケケケッ」
隊員Aと隊員Fが衝撃を受けて言う
「「なぁあっ!そ、それはっ!」」
隊員Bが笑う
「にひひっ ナッちゃん ナイスー!」
隊員Bと隊員Nが片手でハイタッチをする 隊員Aと隊員Fが衝撃を受けて言う
「「ナクス隊員っ!」」
ハイケルが隊員Aと隊員Fへ向いて言う
「それは悪かったな」
隊員Aと隊員Fが衝撃を受け 慌てて言う
「い、いえっ!」 「そ、そもそも 病室で集まりしちゃおうって言うのが 間違ってますから…」
ハイケルが室内に進み入り制服を掛けベッドへ腰掛ける 隊員Bが言う
「えー?何で何でー?入院して 病室に1人で居ても 詰まんないじゃーん?…ですよねー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「そうだな」
隊員Fが苦笑して言う
「いや… そもそも 安静にするって言うのは ある意味 そう言う事でもあったり…」
隊員Nが言う
「けど、暇すぎるって言うのも 辛くないですかー?少佐?」
ハイケルが言う
「その通りだな」
隊員Aが苦笑して言う
「だからって 当然 暇すぎても 人間死にはしないけど」
ハイケルが衝撃を受け視線を逸らす 隊員Fが言う
「うるさ過ぎて 憤死するって事は あるかもしれないしな?」
ハイケルが隊員Fを横目に見て言う
「そうなのか?」
隊員Fが表情を困らせて言う
「えっ!?いやぁ… 実際に うるさい事に腹を立てて 死んだってのは 聞いたこと無いですけど…」
隊員Aが苦笑して言う
「まぁ 憤死って言葉があるくらいだから 無い事は無いんじゃないか?」
隊員Fが言う
「うん… まぁ そうだろうなぁ?」
ハイケルが考える 隊員Bが言う
「あー それじゃぁさー?やっぱり 逆の 寂しくて死んじゃうって事も あるんじゃない?ほら たまに聞くじゃん?えっとぉー?」
隊員Nが言う
「あ、もしかして バイちゃん隊員 孤独死の事 言おうとしてる?」
隊員Bが閃いて言う
「あー!そうそうー!それそれー!さっすが ナッちゃんー!」
隊員Nが笑う 隊員Aと隊員Fが苦笑し 隊員Aが言う
「バイちゃん それは 寂しくって死んじゃうんじゃ無くて」
隊員Fが苦笑して言う
「その人が死んだ時に 周りに人が居なくて 発見が遅れたりするって事だよ」
隊員Bが言う
「えー?なんだー そうなのー?」
隊員Nが言う
「あー それじゃぁさ?さっき 話してた この病室が防音設計になってる ってのは 最初の方の憤死防止の為かな?」
ハイケルが反応して言う
「防音設計なのか?」
隊員Fが言う
「そうらしいです ベリハース院長が 昨日面会時間が過ぎてるのに 俺らがいる事に気付かなかったって言うのも どうやら そのせいだったらしくて」
ハイケルが思い出して言う
「そう言えば 私がここへ戻った時も 外部からお前たちの声は聞こえなかったな」
隊員Bが楽しそうに言う
「だから 思いっきり喋れて 集まりにも丁度良いのでありまーす!少佐ぁー!」
隊員Bがスナック菓子を食べる 隊員Nが笑って言う
「ホントだよな 昨日なんて あの後寄った店で バイちゃん隊員の声が うるさ過ぎるからって 追い出し食らったもんな?」
隊員Bが衝撃を受けて言う
「えー?あれ俺の声じゃなくて ナッちゃんの声のせいだよー」
隊員Nが言う
「いやっ 絶対 バイちゃん隊員のせいだね」
隊員Bが言う
「ナッちゃんだってー!」
隊員Nが言う
「バイちゃん隊員だって!」
隊員Bが言う
「ナッちゃんだよー!」
隊員Nが言う
「バイちゃん隊員だ!」
隊員Aが苦笑して言う
「2人の声だったんだと思うけどなぁ?」
隊員Fが言う
「俺もそう思う」
隊員Bが怒って言う
「あー!アッちゃん 酷いー ビフォアーバーストショットの相方である 俺の味方してくんないのー?」
隊員Aが苦笑して言う
「え?う うーん…」
隊員Nが言う
「フッちゃん隊員は 当ー然 俺の味方だよな?」
隊員Fが衝撃を受けて言う
「え?いつの間にっ?」
ハイケルが言う
「ならば問題ない この病室の事は知らなかったが 私の執務室の方も 防音設計になっている 騒ぎたいのなら 好きに使え」
隊員たちが反応し 隊員Bが喜んで言う
「さっすが 少佐ぁー!」
隊員Nが言う
「それなら これからは店から追い出される心配も なくなるな?」
隊員Bが言う
「これで 安心ー!」
隊員Nが笑んで言う
「うんうん!」
隊員Bが言う
「じゃー 明日の集まりはここでー」
隊員Nが言う
「明後日からは 少佐の執務室でー」
隊員BとNがハイタッチをして言う
「「いっえーい!」」
隊員BとNが笑う 隊員Aと隊員Fが顔を見合わせて言う
「あー…?」 「えっと…?」
ハイケルが言う
「無理に来てくれなくても良いのだが?」
隊員Aと隊員Fが衝撃を受け 慌てて言う
「ぬあっ!いやっ!」
「決して そう言う訳ではっ!」
ハイケルが苦笑して言う
「冗談だ」
隊員AとFが衝撃を受ける 隊員BとNが言う
「さっすが 少佐ぁー!」 「ナイスショーット!」
隊員BとNが笑う 隊員AとFが顔を見合わせ苦笑する ハイケルが隊員たちを見て微笑する
【 メイリス家 トレーニングルーム 】
軍曹が悲鳴を上げる
「イタタタタタタァッ!痛いのであるっ ラミリツ攻長ーっ!」
ラミリツが不満げに言う
「はぁ?この位で?…もっとさぁ?こー…」
軍曹が悲鳴を上げる
「ぎゃぁあーっ!」
ラミリツが押し込む 軍曹が両足を器具に固定された状態で 前屈した背を押し下げられている 軍曹が顔を左右に振って言う
「ギブッギブッ!ラミリツ攻長っ!自分は体が硬いのであるっ!そんなに押されては!あ、足がぁーっ!」
ラミリツが気付いて言う
「あぁ そっか 前屈って慣れるまでは 足の方の筋肉が引っ張られて痛いんだったけ?忘れた それじゃー」
ラミリツが器具の開脚レバーを回す 軍曹が衝撃を受け悲鳴を上げて言う
「ぎゃぁあーっ ラミリツ攻長っ!自分は 体が硬いとーっ!いだだだだだだーっ!」
ラミリツが呆気に取られて言う
「あれ?もう回らないや… アンタホントに体硬いんだね?言っとくけど…」
ラミリツが軍曹を見る軍曹が表情を顰め痛がって言う
「柔軟が体に良いとは 分かっていてもっ 痛いものは 痛いのであるーっ」
ラミリツが一瞬表情を困らせ視線を逸らして言う
「そー …じゃぁ もう 良いや 許してあげる」
ラミリツが器具のボタンを押す 軍曹の足を固定している器具が解除され軍曹がバランスを崩して転ぶ ラミリツが言う
「体が硬いとさ?怪我とかもしやすいんだよ?それから 怪我の度合いも 柔らかい方が軽症で済んだりするんだ」
軍曹が足を擦りながら言う
「う… うむー… それは 聞いた事が有るには有るのだが 腕立てや腹筋などと違って 柔軟やストレッチというものは …なんと言うか 気合が入らなぬ為 やろうと思っても なかなか 続かないのである…」
ラミリツが言う
「レギスト機動部隊の訓練で いつも 柔軟とかストレッチとか やらないの?」
軍曹が気付いて言う
「うん?うむー… そう言えば やらないのである そう言った事は 各個人で行ってから集合するのだ」
ラミリツが言う
「へー それじゃ 続かないかもね 警機の訓練じゃ どっちも集合してからやるもんだから」
軍曹が反応して言う
「言われてみれば 確かに…」
ラミリツが言う
「ま、良いや 紅茶の仕返しは 気が済んだし …好い加減 諦めて帰れば?」
軍曹が周囲を見渡していた状態から反応して言う
「はぇ?諦めて …とは?」
ラミリツが柔軟の途中で顔を上げて言う
「はぁ?アンタまた 自分が何しにここに来たか 忘れたの?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「あっ いやっ 自分は別に 今日も昨日も ラミリツ攻長を尋ねたその理由を 忘れた訳ではないのだが」
ラミリツが疑問して言う
「へー?そうだったんだ?」
軍曹が笑んで言う
「もちろんである 自分は馬鹿であるが まだ若いのであるっ 祖父上の様に物忘れがひどくなったりは していないのである!」
ラミリツが軽く笑って言う
「ラゼル様は全然 良い方だよ 僕の祖父上なんて すっごくひどくて 最後の方の頃なんて 僕以外の孫の名前 忘れちゃってたりしてたもん」
軍曹が言う
「では ラミリツ攻長のお名前だけは お忘れには ならなかったと言う事であるか?」
ラミリツが言う
「だって 僕のミドルネームは 祖父上の娘であった 母上と同じだもの 忘れないでしょ?」
軍曹が言う
「なんと!そうであられたのか」
ラミリツが言う
「アンタも ファーストネームは ラゼル様と同じだろ?…でもさ 不思議だよね?」
軍曹が言う
「む?何が不思議であるのか?」
ラミリツが柔軟を続けながら言う
「父親側の名を継ぐならファーストネームで 母親側の名を継ぐならミドルネームで って仕組みの方は 知られてるけどさ?何でそれが 次男なんだろうね?」
軍曹が反応し考える ラミリツが言う
「名前を継がせるんなら 当然 当主と同じで 長男にするべきだと思わない?」
軍曹が言う
「その理由は 自分は知っているのだ」
ラミリツが衝撃を受け 驚いて言う
「えぇえっ!?嘘ぉっ!?」
軍曹が微笑して言う
「嘘ではないのだ!自分もラミリツ攻長と同じく 不思議に思い ずっと以前に 父上に伺ったのだ そうした所… あまり良い話ではあらぬのだが 富裕層の長男は 昔から 家同士の争いで命を奪われる事が多く 最終的に生き残る可能性が高いのが 2番目以降の子供だった事が由来し 現代でも 習慣だけが残ってしまっているそうである」
ラミリツが言う
「ふーん そうだったんだ …あのさ?」
軍曹が疑問する ラミリツが言う
「アンタたちの父上様 ヴォール・アーケスト・ハブロス様って」
軍曹がハッとする ラミリツが言う
「うちの父上と ずっと昔 親友だったの 知ってる?」
軍曹が真剣に言う
「う、うむ… 実は先日 兄貴に伺ったのだ」
ラミリツが言う
「そぅ …それで 今も 本当に 生きてんの?」
軍曹が驚いてから言う
「う、うむ…」
ラミリツが視線を逸らして言う
「ふーん そうだったんだ …なんか流石に聞けなくてさ ラゼル様には …後 エルムにも」
軍曹が言う
「あ… しかし、その… ラミリツ攻長…?」
ラミリツが言う
「知ってるよ ご病気なんでしょ?」
軍曹が視線を落として言う
「う、うむ…」
ラミリツが言う
「うちの父上がさ 死ぬ直前に言ってたんだよね 最後にもう一度だけ会って もう一度 本人から 理由を聞きたかったって…」
軍曹が驚いてラミリツを見る ラミリツが軍曹を見て言う
「アンタは自分の父上と 普通に話せた?うちの父上は 凄く怖くて …ハッキリ言って 戦闘記録レコーダーの声とか聞くと それが父上だって思えない位 性格違うんだよ …まぁ 兄上はそーいう所 ちょっと似てるけど」
軍曹が驚いて言う
「戦闘記録レコーダーっ!?」
ラミリツが軍曹を見て言う
「何驚いてるの?当然だろ?アンタたち国防軍だって 任務の時の無線通信は 全部録音してるだろ?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「全部っ!?」
ラミリツが言う
「あ、そうそう でも 警機の方でも 国防軍と合同任務に当たった時の 一部の記録に関しては 一定期間の保存の後 廃棄する事になってるよ 悪魔の兵士に関する奴ね」
軍曹が驚く ラミリツが言う
「だから 凄く残念だけど レギストだった頃のエルムと 警機隊長だった うちの祖父上が一緒に任務をした 帝国との戦いの記録は 消されちゃってるんだ」
軍曹が言う
「そ、そうであったのか…」
ラミリツが言う
「でもさ 警機の戦闘記録レコーダーの監視セキュリティは 厳重で安心なんだけど その時の任務で無線を聞いていた 各個人の記憶の方は消せないからね そう言う所で どうしても 情報は残されてしまう事があるんだよ」
軍曹が言う
「う… うむ…」
ラミリツが言う
「だから、政府の方は出来るだけの事はするから そっちはそっちで ちゃんとやってよね?アンタの悪魔の兵士である 初世代目のアイツの方がどうなったって 僕はどうでも良いけどさ?」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが続けて言う
「エルムの方の 2世代目の悪魔の兵士の方は ちゃんと 守って欲しいから」
軍曹が苦笑して言う
「で…では… やはりその場所を 教えて頂けなければ?」
ラミリツがエルムを真似して言う
「”問題ない 総司令官が マスタートップシークレットに対する命令として指示を出せば 担当の者は 自ずと任務を遂行する”」
軍曹が衝撃を受けた後苦笑する ラミリツが首を傾げて言う
「うーん… やっぱ ちょっと違うなぁ エルムが言うと もっと…?」
軍曹が微笑して言う
「ラミリツ攻長は ラミリツ攻長なのだ エルム少佐を 真似する必要は無いのである!」
ラミリツが言う
「僕が僕の好きな人の真似をしたって 僕の勝手だろ?」
軍曹が言う
「それはそうであるが… ラミリツ攻長は エルム少佐と違って 折角 言葉に抑揚を与える事が出来るのであるからにして 何も エルム少佐の様に冷徹に話さなくとも」
ラミリツが言う
「それこそ逆 僕は冷徹さが足りないんだって 昔良く父上に怒られた …どんな時でも 冷徹にあれって」
軍曹が言う
「う、うむ… それはー 中々難しい事である 折角人として 感情があるのに 冷たくあれとは それこそ冷たいのである… そして 冷徹と言えば やはり自分の印象は…」
軍曹がエルムを連想する ラミリツが言う
「僕が思う冷徹は やっぱ 父上や兄上かな」
軍曹が苦笑して言う
「確かに 自分も 自分の兄が冷徹である時を 連想出来はするが… その兄とて 優しい時もあるのだ!よって やはり 冷徹とはー!」
ラミリツが言う
「あのさー 何度も言おうとしないで欲しいんだけど エルムは冷徹なんかじゃないんだ ただ 感情が制限されてるだけだもん 本当は凄く優しいんだから」
軍曹が呆気に取られる ラミリツが言う
「そう言えば 父上も アンタの父上様と話している時は 優しかったよ やっぱ 親友だったからなんだろうね?」
軍曹が驚いた後間を置いて言う
「む?…あの ラミリツ攻長?」
ラミリツが柔軟を終えて言う
「なに?」
軍曹が言う
「話を聞いていると まるで ラミリツ攻長は ラミリツ攻長の父上様と 自分らの父が会話をしていた それを聞いた事がある様に聞こえるのだが?」
ラミリツが言う
「そうだけど?」
軍曹が考えて言う
「いや、そんな筈は無いのだ 自分らの父が帝国へ行ったのは 自分がまだ 子供の頃で 正直 帝国と言う物が何であるのかさえ 理解が出来ない程 幼い頃だったのだ 従って その自分より年下であるラミリツ攻長は 帝国へ向かう前の ラミリツ攻長の父上様と 自分らの父が会話をしていた それを聞いたとしても…」
ラミリツが言う
「だから さっきも言っただろ?僕が聞いたのは 全部 レコーダー記録の方だよ」
軍曹が疑問して言う
「む?で、では… 警機の戦闘記録レコーダーに 非戦闘員であった 自分らの父の声が?」
ラミリツが気付いて言う
「あぁ そっか ゴメン それは違うや」
軍曹が驚いて言う
「うむ?」
ラミリツが言う
「警機のじゃなくて 僕の父上が 個人的に記録してた方 そっちに 帝国へ行った時のと その前後を含む記録が 残されてるんだ」
軍曹が驚いて言う
「なぁあっ!?帝国へ行った時の記録がっ!?」
ラミリツが言う
「そ、だから そこに一緒に記録されてるんだよ 2人の会話もね?」
軍曹が衝撃を受け驚いて言う
「なんとーっ!?」
ラミリツが微笑して言う
「ふふっ 驚いたでしょ?」
軍曹が言う
「お、驚いたなんてものでは…っ」
軍曹が思い出して言う
「…はっ で、では ラミリツ攻長っ!お願いなのだっ!その記録を 自分の兄へも聞かせて欲しいのであるっ!帝国の情報は 国防軍にとっても必要でっ!もしかしたら 父上のご病気を治すのにもっ!」
軍曹がラミリツを見つめる ラミリツが言う
「うーん… そうだね 良いよ?」
軍曹が喜んで言う
「おお!流石 ラミリツ攻長なのだっ!やはり ラミリツ攻長は 自分たちの味方でっ!」
ラミリツが言う
「じゃぁさ?取引」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?」
ラミリツが言う
「前にラゼル様に聞いた事があるんだ アンタの父上様ヴォール・アーケスト・ハブロス様が ご病気になられる以前 帝国へ行く直前に ラゼル様とお話した時の記録を アンタの兄上 アース・メイヴン・ハブロス総司令官が 今も持ってるんだって」
軍曹が驚いて言う
「なっ なんとっ!?じ、自分はそんな事は知らなかったのであるっ 自分も… ご病気になられる以前の父上のお声は 是非とも聞きたかったのだが… 何故兄貴は 自分へ教えてはくれなかったのだろうか…?」
ラミリツが言う
「それは勿論 聞かれたらマズイ事があるんだろ?普通」
軍曹が言う
「う、うむ…」
ラミリツが言う
「でも、僕は聞きたい」
軍曹が驚いて言う
「え?」
ラミリツが言う
「もしかしたら それで アンタたちの父上様が 僕らの父上を裏切った 本当の理由が 分かるかもしれないからっ」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?じ、自分らの父が ラミリツ攻長たちの父上様を 裏切ったっ!?…あ、兄貴と言っている事が 逆なのだ…」
ラミリツが不満そうに言う
「はぁ?それ… どう言う事だよっ!」
ラミリツが軍曹に怒りの視線を向ける 軍曹が慌てる
【 ハブロス家 アースの部屋 】
ラミリツが立っていて言う
「先に言っとくけど 渡すのはコピーだから」
アースがデスクの椅子に座っていて 苦笑して言う
「そちらは当然でしょう?…その様にして カルメス元外交長を?」
ラミリツが言う
「そうだよ」
アースが苦笑する
「フフフ… 随分と素直ですね?メイリス家ご出身の 攻長閣下」
軍曹が衝撃を受け困って言う
「あ、あのっ 兄貴?ラミリツ攻長は 折角 帝国の情報を提供してくれるのであるからにして… そ、その様な敵対的な言葉は やめて欲しいのだが…」
アースが言う
「まさか 帝国へ行った際の記録が残されていたとは… それは現在帝国と戦う国防軍は勿論 政府警察にとっても 大きなヒントとなるもの …何故 今までお隠しを?やはり?」
軍曹が困る ラミリツが言う
「これがあったお陰で メイリス家が政府の長になれたからね?」
軍曹が衝撃を受ける アースが苦笑して言う
「あっはははっ 攻長閣下の剣がこれほど鋭いとは 間違ってご自分の身を傷付けられない様 ご注意をされた方が宜しいのでは?富裕層の戦いでは うっかり真実を述べた者が負けとなる」
軍曹がアースを見る ラミリツが言う
「今は帝国との戦いの時だ そんな下らない事は どうでも良いんだよ」
軍曹が驚いてラミリツを見る アースが僅かに驚いた後 苦笑して言う
「…メイリス家がどうなっても良いと?攻長とは言え 任を解かれれば 元の家に戻るしかない そのメイリス家を大切になさった方が宜しいのでは?」
ラミリツが言う
「そっちは兄がやるべき事だったけど もう無理だからね 今更僕が継げるものでもないし それに」
ラミリツがメモリースティックを3つデスクへ放って言う
「これ聞いたら 余計 …ラゼル様の言う通り 階級なんて 無くなっちゃえば良いと思うよ」
アースが疑問して言う
「3つ?…私の知る限り アールスローンからの使者であった 我々の父や 政府のアミレス長官 その他2名が 帝国へ入国して 逃げ戻ったまでの間は 束の間であったと その短い時間の記録が これ程に?」
ラミリツが言う
「帝国の記録があるのは その真ん中の奴 後の2つは 帝国へ行く前と後の記録だよ アンタがアンタの弟に 僕らの父が 裏切り者だとか言ってるって聞いたから その2人の…」
アースが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「攻長閣下?私は 国防軍総司令官として 今後の帝国との戦いの為の その資料としての物の提供を お願いしただけだが?」
ラミリツが言う
「あっそ… なら良い こっちの2つは コイツに聞かせるから」
ラミリツが言って2つのメモリースティックを回収する アースが一瞬呆気に取られ 視線を逸らしてから 思い出して言う
「ああ… それでは こちらも 取引の物を」
アースが言って デスクからメモリースティックを取り出して言う
「こちらは コピーではなく オリジナルですが もはや不要ですので 返却の必要もありません」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?あ、兄貴!?それには ご病気になられる以前の 父上のお声が残されているとっ!」
アースが言う
「しかし、攻長閣下 この記録に残されているものは その程度のものです 我々の父と祖父が 自分たち家族の語らいをした… 本当に この程度のもので 取引は成立されるのですか?」
ラミリツが言う
「物の価値なんて 人それぞれでしょ?僕がそれを アンタがこれを 聞きたいんだから それで成立だよ」
アースが言う
「分かりました …では そちらを聞いた後の抗議には 一切耳を貸しませんが 宜しいですね?」
ラミリツがアースのメモリースティックを取って言う
「”問題ない”」
ラミリツが背を向け退室する アースが鼻で笑った後メモリースティックをPCへセットする 軍曹が困ってラミリツとアースを交互に見た後 ラミリツを追って言う
「ラ、ラミリツ攻長 お送りするのだ!待ってくれーっ」
軍曹が部屋を出て行く アースがそれを見送ってから視線をPCへ向ける
【 国防軍レギスト駐屯地 通路~病室 】
ベリハースが歩いてきて気付いて言う
「うん?病室から明かりが…」
ベリハースがノックをしてからドアを開けて言う
「ハイケル少佐 消灯時間はとっくに過ぎており… なっ!?」
ベリハースの視線の先 隊員たちが床で雑魚寝していて ハイケルがベッドに寝ている ベリハースが呆気に取られた後 苦笑して言う
「やれやれ… レギストの隊長は 隊員に好かれると聞いていたが …こう言う事ですか?…父上?」
ベリハースが微笑し 首にかけている聴診器に触れてから 病室の電気を消しドアを閉める
【 ラミリツ家 玄関前 】
玄関前に ハブロス家の高級車が止まる ドアが開けられるとラミリツが降りる 軍曹が車内から言う
「では!ラミリツ攻長 お疲れであったのだ!またー…」
ラミリツが言う
「待って」
軍曹が疑問する ラミリツが振り返って言う
「これ 聞かなくて良いの?アンタの兄上が オリジナルだって言ってたよ?ここで聞かないと アンタ一生聞けないだろ?」
ラミリツがメモリースティックを見せる 軍曹が言う
「あ… う、うむ それは確かに…?」
ラミリツが言う
「それに ハブロス総司令官が 要らないって言った方にだって アンタらの父上様の声 入ってるんだ …だから 持って行ってあげたのに アンタの兄上 ホント冷徹だね?」
軍曹が呆気に取られた後 苦笑して言う
「兄貴も本当は聞きたかったのである!しかし、国防軍総司令官として 冷徹を装っていただけなのだ!それから、ラミリツ攻長の エルム少佐の真似も さっきはとても似ていたのである ラミリツ攻長もやはり 冷徹を装っていたのである!」
ラミリツが気付いて言う
「あ… そっか?ふーん…?もしかしたら エルムもそうだったのかな…?」
ラミリツが気を取り直して言う
「ま、良いや とにかく 早く来なよね?…別に?聞きたくないなら良いけどさ?」
ラミリツが屋敷へ向かって行く 軍曹が衝撃を受け 慌てて追いかけて言う
「じ、自分は 誰が何と言おうと 聞きたいのだっ!冷徹を装うのは 無理なのであるっ!」
ラミリツが密かに微笑する
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツがノートPCに メモリースティックをセットして 操作しながら言う
「あ、やっぱ ぴったりだ これならきっと」
軍曹が疑問する ラミリツが操作しながら言う
「日時が丁度だから アンタの兄上から貰った あれのおかげで 僕の持ってたメモリースティックを補えそう これならきっと 話が繋がる筈だよ」
軍曹が呆気に取られたまま言う
「ほお…?」
ラミリツがノートPCを操作した後 メモリースティックを抜いて 軍曹へ向ける 軍曹が疑問して受け取る ラミリツが言う
「はい アンタにあげるよ それ」
軍曹が驚いて言う
「なんとっ!?」
ラミリツが言う
「これで完了 全部聞くと 結構長いから 座れば?」
軍曹が気付きソファを見て言う
「う、うむ… では失礼するのである」
軍曹がソファに座ると ラミリツがノートPCを見て エンターを押す スピーカーからフレイスの声がする
『今回の帝国行きだが 悪いが私は 政府の代表である あの2人を守らねばならない… 従って アーク 君の事は守ってやれないんだが…』
ラミリツが言う
「この声が うちの父上の声」
軍曹が言う
「ほお?なるほど 確かに… どちらかと言うと ラミリツ攻長の 兄上殿のお声に近い感じがするのだ」
ラミリツが一瞬視線を逸らしてから言う
「え?…そんな筈は」
軍曹が疑問して言う
「うむ?何か…?」
スーカーからアーケストの声がする
『何を言う フレイス?私は国防軍の総司令官 そして 父は陛下の盾 守りの兵士でもある その私に 警機上がりのお前の守りなど必要ないな?』
ラミリツが気を取り直して言う
「いや、別に?で、こっちが」
軍曹が気付いて言う
「うむっ!何やら 自分の兄の声に 良く似ているのだ!」
ラミリツが苦笑して言う
「そぉかなぁ?喋り方はそうかもしれないけど 声の方は 僕には アンタの方が似てる って思うけど?」
軍曹が言う
「と言う事は…」
スピーカーからアーケストの声がする
『…なんなら そちらの政府の2人さえ 守ってやろうか?』
ラミリツが言う
「そ、これが アンタたちの父上様の声だよ」
軍曹が反応し視線をラミリツからスピーカへ向け 微笑して言う
「おお…っ これが 父上のお声であるのか!なんとっ ご病気になられる以前は これほどにハツラツと!」
ラミリツが微笑した後 スピーカーへ向く
【 過去 】
≪ 通路の中 ≫
フレイスが表情を顰めて言う
「例え あのレギストを従える国防軍の総司令官であろうとも ヴォール・ラゼル・防長閣下の子息であろうとも 君自身は 何の訓練も受けていない ただの御曹司だろう?」
アーケストが苦笑して言う
「言ってくれるな フレイス?しかし その通りだ 従って 何も私が守ってやろと言う訳ではない 私やその他を守ってくれるのは 後ろの兵士だ」
アーケストの一歩後ろに エルムβが歩いている フレイスが表情を顰めて言う
「うん 君の専属護衛として 新たに従えた兵士だったか?君へ宛がわれたと言うからには それなりの者だとは思うが しかし 本当に彼が1人だけで 大丈夫なのか?それに アーク 帝国への和平条約に 国防軍の隊員は連れて行かれない だから 私が警機の隊員を君の警護へ回せる様 何とか出来ないものかと考えているのだが」
アーケストが笑って言う
「必要ない この者さえ居ればな?どうしても実力が気になると言うのなら 一度手合わせでもしてみれば良い 言っておくが この者の強さは 尋常では無いぞ?何しろ彼は… 悪魔の兵士 そのものなのだからな?」
フレイスが不満げに言う
「悪魔の兵士?アールスローン戦記か… しかし 例え ペジテの姫が悪魔から貰った兵士 …攻撃の兵士であろうとも 帝国の王子が持つ 攻撃の兵士には 敵わないのだろう?その帝国へ行くというのに 君の護衛がその様な者では心配だ …アーク やはり 私が警機の隊員を」
アーケストが言う
「何を言う フレイス?少なくとも このアールスローン国内で この者を越える兵士など存在しない そして 何より 護衛に必要とされる忠誠心は それこそお前が目指していた ペジテ王の両碗の騎士 その者と言った所だ」
フレイスが反応して言う
「ペジテ王の両碗の騎士…っ」
アーケストが言う
「それに比べ 警機の隊員など… 私はそちらの方が心配だとも?」
フレイスが怒って言う
「アーク 君がそこまで言うのならっ!その騎士と一度手合わせをしてみせようっ!さあ!そちらの兵士!剣を抜けっ!」
フレイスが剣に手を掛ける アーケストが言う
「とは言え 生憎 剣は持たせていないがな?」
フレイスが衝撃を受けて言う
「…うっ!?」
アーケストが笑って言う
「はははっ 相変わらずだな?フレイス?」
フレイスが言う
「か、からかったのか!?私は君が両碗の騎士と言ったから!?…あっ それも まさか 最初から!?私は 本気で君を心配しているというのにっ!アーク!?」
アーケストが笑って歩く フレイスが追い駆けて行く エルムβがアーケストとフレイスを見る
≪ ハブロス家 ラゼルの屋敷 ≫
アーケストが言う
「父上 ご無沙汰を致しております」
ラゼルが微笑して言う
「うむ やはり同じ敷地内であっても 別の屋敷に居るのでは 会う機会も減ってしまうな?」
アーケストが言う
「国防軍総司令官の任と共に ハブロス家の全権をお預け頂けた事 光栄に思っております 今後はどうか その私が ハブロス家の良き当主となる事を ご期待下さい ヴォール・アーケスト・ハブロス 誠心誠意 邁進いたします事を誓います」
ラゼルが笑って言う
「ほっほっほ お前に喜んでもらえたなら 私も嬉しいが あまり力み過ぎる事も無い様にな?私に出来る事が有ったら いつでも声を掛けなさい」
アーケストが微笑して言う
「では、早速なのですが 父上」
ラゼルが言う
「うむ 何かな?アーク?」
アーケストが言う
「アールスローンと帝国との終戦から20年 間もなく終戦当時に交わされた 両国の和平条約の期限が近づいているとの事 その和平条約の継続の為にも 政府の長がこの度 帝国へ赴くとの事でございます」
ラゼルが反応して言う
「うん?帝国との和平条約に長官が…?いや、それらの話し合いは カルメス外交長が執り行っていた筈である それに 政府の長官が同行すると?」
アーケストが言う
「はい、そちらのカルメス外交長が 帝国から一度 その様な機会を得たいと 前々から言われていたのだとか」
ラゼルが考えながら言う
「ふむ…」
ラゼルの前に紅茶が出される ラゼルが目を閉じ考えてから紅茶に角砂糖を1つ入れてかき混ぜる アーケストが言う
「しかし、そのカルメス外交長の話によりますと 帝国が対話を求めているのは アールスローンの女帝に次ぐ有力者との事 そこへ 政府の長官だけを連れて行くというのは 如何なものであるかと 政府の重役会議にて話題に上がったのだとか そして 私に話が…」
ラゼルが紅茶からスプーンを上げ軽くカップへ当ててから言う
「少佐」
アーケストが視線を向ける 視線の先エルムが扉の近くに居て言う
「怪しいな」
ラゼルがスプーンをコースターへ置いて言う
「やはりそう思われますか」
アーケストが視線を強めて言う
「何が怪しいと?」
エルムが言う
「国防軍の新たな総司令官となった お前が狙われていると言う事だ」
アーケストが言う
「それは今に始まった事ではない だからお前を 私の護衛に付けているのだろうっ」
エルムが言う
「そうだな」
アーケストが息を吐いて言う
「出来る事なら 私からの言う事を何一つ聞かない 主に仕えると言う事が まったく分かっていない お前などの… まして操り人形などを 私の護衛に付けたくは無いんだ それでも 他の者より力があるから 仕方なく従えてやっているのだぞっ」
エルムが言う
「悪かったな」
アーケストが表情を怒らせる ラゼルが言う
「申し訳ありません 少佐」
エルムが言う
「問題ない」
アーケストが言う
「父上っ この人形に 私の言う事を聞くようにと命じて下さいっ」
ラゼルが表情を困らせて笑う
「ほっほっほ」
アーケストが言う
「父上っ!そうして頂けなければっ 帝国内にて 何らかの問題が発生した際は如何するのですっ!?今のまま この人形が 私の命令を聞かない様ではっ!」
ラゼルが言う
「少佐の隊員を 帝国へ連れて行く事は 出来ないのだよ アーク」
アーケストが驚いて言う
「そちらは?一体何故ですっ?この人形たちは あの帝国のマシーナリーさえ 倒すことが出来るのでしょう?それが一緒であると思い 私は安心して…っ」
ラゼルが言う
「アーク、残念だが少佐の小隊隊員を動かせるのは こちらのアールスローンの国内だけなのだ それに 万が一どうしても必要とあって 帝国内で動かそうと思うのなら 少佐ご本人が一緒に向かわねば不可能なのだ」
アーケストが言う
「でしたらっ!どうか この度の帝国訪問の間だけ エルム少佐を 私の護衛にお貸し下さいっ!」
ラゼルが苦笑して言う
「うむ… 私としては 大切な息子の身の上だ 少佐にお頼みしたい気持ちは山々なのだが 以前の戦いで 帝国は少佐の情報を多く手に入れてしまっている この状態で 少佐を帝国へ向かわせる事は とても危険な事なのである」
アーケストが不満そうに言う
「その危険な場所へ 私はこれから向かうのですっ 父上っ!父上は エルム少佐と私の どちらがっ!?」
エルムが顔を向けて言う
「軍曹 私は 君が命令するのであれば ヴォール・アーケスト・ハブロス総司令官を 帝国の者より死守する事が可能だ」
ラゼルが苦笑して言う
「では そのアークの死守と共に 少佐ご自身も 最悪 蘇る事が可能な状態にて お戻り頂くと言うのは?」
エルムが言う
「無理だな」
アーケストが驚く ラゼルが苦笑して言う
「そう言う事だ アーク …今回の 帝国行きは 断りなさい」
アーケストが驚いて言う
「なっ!?しかしっ これを断れば 国防軍がっ!」
ラゼルが言う
「国防軍が 政府の下であろうとも その様な事は どうでも良いではないか?」
アーケストが驚く ラゼルが微笑して言う
「これからの帝国との事は 全て 次なる政府の剣へと お任せしなさい」
アーケストが言う
「次なる 政府の剣… 父上は 前々から 次の政府の長は メイリス家の者 と!?」
ラゼルが軽く笑って言う
「っほっほっほ そう きっとそうなるだろう… 次の攻長には 遂に メイリス家の 彼らが成し得るのだろう」
エルムが言う
「当然だ」
ラゼルが微笑んで紅茶を飲む アーケストが不満そうに言う
「帝国の事を政府へ任せ 次の政府の長となる メイリス家へ… アイツが 国防軍より力を持った 政府の長官にっ!?」
ラゼルが紅茶に角砂糖を1つ入れ かき混ぜながら言う
「これで長く続いた 高位富裕層だけの国家家臣も終わる 私は昔から 階級だの何だのというもので 人を格付けするものが大嫌いだった メイリス家が政府の剣となり 長官となるのであれば アールスローン国の在り方も変わって行くだろう… きっと より良い国へとなって行く 少佐とレギストの皆が 守って下された国であります」
エルムが言う
「君が守った国だ」
ラゼルが笑って言う
「これからは皆で守り 作って行く国であります」
エルムが言う
「そうだな」
アーケストが沈黙する ラゼルが微笑して言う
「ほっほっほ… 少佐 少佐もどうか 紅茶をお飲み下さい 今日はとても美味しく入っております」
エルムが言う
「私に味覚は無い 味が良いのなら 尚更 君が飲むべきだ」
ラゼルが紅茶をカップへ注ぎながら言う
「紅茶の味は 味覚だけではなく 嗅覚と… 何しろ気分の良さで 美味しく変わるそうであります それは 食事も同じだとか …ですから どうか 少佐も ご一緒に」
エルムが言う
「…了解」
エルムが席に座る ラゼルが微笑む アーケストが視線をそらす
≪ 警察本部 警察長室 ≫
フレイスが驚いて言う
「え!?メイリス家が 次期 政府の攻長にして長官!?あっははははっ!アーク 相変わらず ハブロス家は 言う事が極端で面白いな」
フレイスが笑う アーケストが呆気に取られてから不満げに言う
「面白いだと?では お前は本気で考えていないのか?お前が政府の長となれば それは 我々ハブロス家と同等か もしくは…っ」
フレイスが苦笑して言う
「考える筈も無い 防長閣下から その様に仰って頂けた事は光栄だが メイリス家が 攻長や長官の座に付くなんて事は 在り得ない話だ」
アーケストが言う
「では お前は 例え その様な機会を得ようとも それを望まないと言うのか?」
フレイスが言う
「望むも何も 考えた事もない そもそも警察長であるメイリス家の私が 今回警護する 政府の要人は誰だと思っているんだ?あの2人の家が在る限り メイリス家にそのような事が起きる事はないだろう?彼らはメイリス家より遥かに…」
アーケストが言う
「そうとは言い切られない アミレス家に関しては 今回の帝国への和平条約が 万が一失敗にでも終わるような事があれば 失脚すると言う事は十分ありえる そして もう1人 帝国との外交を取り仕切る 歴代の外交長といわれるカルメス家は 外交長であるからこそ 政府に存在する事を許されている そうとなれば 今回の結果次第では その2者が除かれる事となり… それこそ次は 帝国との戦いに 政府として最大限に力を発揮した メイリス家へ と…」
フレイスが言う
「例え その2つの家がそうとなろうとも 国防軍の君だって 知っている筈だ 我々政府の内で カルメス家から我らメイリス家までの間には 高位富裕層の方はもちろん メイリス家より上位の政府重役たちが複数居られる」
アーケストが言う
「それは そうだが…」
フレイスが苦笑して言う
「君の父上様である あのヴォール・ラゼル・防長閣下が 階級を嫌う方だという事は知ってるよ だから その話は きっと 防長閣下が そうであれば良いと 思われた アールスローン国の 在るべき姿なんだろう?」
アーケストが言う
「ふむ… 当人であるお前が そうと言うのであれば… …そうだな 父上らしいか」
フレイスが言う
「そんな事より アーク 君は 本当に良いのか?」
アーケストが言う
「私が とは?」
フレイスが言う
「今度の帝国行きさ 国防軍総司令官である 君が来ないとなれば 国防軍は これからは 政府の下になってしまう …本当に 君はそれで良いのか?政府に身を置く 私が言ってしまうのも難だが アールスローンを帝国から守ったのは 間違いなく 国防軍だろう?それなのに…」
アーケストが視線を落として言う
「その事か… あぁ そうだな 生憎 そのお前が以前に言った通り 行き先が帝国である以上 国防軍は その帝国と戦った国防軍の隊員たちを 連れてはいかれない そうとなれば…」
フレイスが苦笑して言う
「だから 君の護衛を連れて行くのだったろう?そうそう、その護衛の兵士だが 聞いたぞっ アーク!何で隠していたんだ?」
アーケストが疑問してフレイスを見る フレイスが笑んで言う
「あの方が アールスローンを帝国から救った 元国防軍レギスト機動部隊隊長 エルム少佐なんだってっ!?」
アーケストが表情を落としたまま言う
「あ… ああ…」
フレイスが軽く笑って言う
「何で教えてくれなかったんだっ?もちろん それは 公には出来ない事だろうが …親友の私に位 教えてくれても良かっただろうっ!?」
アーケストが表情を困らせ言う
「だが お前にとっての エルム少佐は 父上様の仇だろ?」
フレイスが呆気に取られてから 苦笑して言う
「何言ってるんだ 仇なんかじゃない 戦友だ!父上は エルム少佐の率いるレギスト共に 警機を率いて戦ったんだ」
アーケストが言う
「しかし エルム少佐は 戦地で君の父上様を助けなかったそうではないか?そのせいで君の父上様は 戦死されてしまった …あのエルム少佐の事だ 任務遂行の為なら どんな非情な事でも 平気で行う」
フレイスが言う
「きっと そうせざる何か理由があったんだ そうでなければ 父上の率いていた警機の隊員たちが レギストを許す筈がない」
アーケストが言って視線をそらす
「どうだかな…」
フレイスが苦笑して言う
「それから… いくらなんでも そんな言い方はないだろ?アーク エルム少佐は 養子縁組とは言え 君の家族じゃないか?」
アーケストが怒って言う
「何を 馬鹿なっ!」
フレイスが驚く アーケストが嫌悪感を示して言う
「あれは!物だ!戦いを行う人形なんだっ 父上は それの所有者であるだけだっ」
フレイスが呆気に取られて言う
「な…っ …何を言っているんだ?エルム少佐が 人形だなんて …いや、確かに 人形の様に 感情の見えない方ではあるが」
アーケストが言う
「お前は何も知らないんだっ!エルム少佐はっ!…悪魔の兵士は アールスローン戦記の原本を 所有する者を守るための道具だっ!父上がいる限り 何度死んでも蘇り その 父上の命令ならば どの様な事も行うっ!君の父上様は そんな物を人と信じたせいで 殺されたのだろうっ!」
アーケストが立ち去る フレイスが呆気に取られて言う
「悪魔の兵士が… エルム少佐が 物…?」
フレイスが アーケストの出て行ったドアを見る
≪ 帝国 入り口前 ≫
フレイスがメルフェスとアミレスへ敬礼する アミレスがフレイスを見て言う
「警機の隊員を 連れて来なかったのかっ!?」
フレイスが言う
「はっ!カルメス外交長より 昨夜 その様に ご連絡を頂きました!」
アミレスがメルフェスを見る メルフェスが苦笑して言う
「何も恐れる事はありません 長官 私はそれこそ 戦争の最中であっても 帝国へは和平交渉のため何度も1人で訪れました 帝国はその私を いつも丁重にもてなして下されていたのです そこへ 例え国防軍の者ではなくとも 戦争の最中 帝国の者へ武器を向けた 警機の部隊を連れて入る等と言うのは その頃の私への恩を仇で返すと言うものです …それに」
メルフェスがフレイスを見てから言う
「武勇に高名な メイリス警察長が御同行されるのです もし、万が一の事でもあろう時には メイリス警察長が 我々をお守り下されるでしょう」
フレイスが苦笑して言う
「いや… 戦地で戦った父ならまだしも 私は帝国のマシーナリーとは 対面した事もありません 従って もし、本当に その様な場面に出くわしてしまった際には 私は出来うる限りの時間稼ぎを致しますので その間に お二人には ご自分の足でここまで逃げ戻って頂く事しか」
アミレスが表情を顰める メルフェスが笑って言う
「っはははは… いや、失礼 時間稼ぎですか… それこそ 1分でも稼がれれば大したものでしょう」
フレイスが苦笑して言う
「そうですね…」
アミレスが視線を落とす フレイスが言う
「ですので アミレス長官っ どうか 帝国との和平を!」
アミレスが慌てて言う
「あ、ああ!もちろんっ 締結させて…」
メルフェスが微笑して言う
「お任せ下さい」
アミレスが呆気に取られた後微笑して言う
「お、お任せします カルメス外交長」
3人が笑う そこへ高級車がやって来て止まる フレイスに続き2人が振り向く フレイスがハッとして言う
「まさかっ」
車のドアが開かれ アーケストが降り立つ フレイスが言う
「アークっ 何故っ!?」
アーケストがフレイスを横目に見てから メルフェスへ言う
「カルメス外交長 ご連絡を 有難う御座いました」
フレイスが呆気に取られてから メルフェスを見る メルフェスが微笑して言う
「飛んでもない これから帝国とアールスローンは和平を結ぶと言うのに 以前に拳を交えた 国防軍の総司令官が 今も帝国を敵視していただなんて 私も驚きました」
フレイスがアーケストを見る アーケストが微笑して言う
「カルメス外交長は 帝国がアールスローンをどの様に思い 見ているのかと言う事を 私へ教えて下されたのです お陰で どうやら私は 国防軍の者として 帝国を誤解していたのだと言う事に 気付かされた訳です」
メルフェスが軽く笑って言う
「っははっ それこそ ハブロス総司令官の思っておられたような帝国であったなら その帝国へ何度も足を運んでいた私は とっくに皆さんの前から 姿を消してしまっていたでしょう」
アーケストが言う
「私の中にあった帝国は 常にアールスローンの敵国であり 話も出来ない野蛮な国であると その様に思い込んでいたのです アールスローンの防衛を司る者として お恥ずかしい限りで」
メルフェスにつられ アミレスが笑う フレイスが言う
「いや… 国の防衛を司る 国防軍であるなら それくらいの気構えであっても良いと 私は思いますが」
アミレスが言う
「おやおや 今度は 政府警察の警察長へ ご説明をして頂かねば ならないかな?カルメス外交長?」
メルフェスが笑って言う
「それはまた… そんな事を 今ここでしていては 時間に遅れてしまいます 遅刻は厳禁 これは アールスローンも帝国も同じです」
アミレスが言う
「では メイリス警察長へのお話は 和平条約が結ばれた後にでも ゆっくりと」
フレイス以外の者が笑い メルフェスが道を示して言う
「はい それでは 早速 参りましょう」
アミレスとアーケストが頷き メルフェスを先頭に入って行く フレイスが一度視線を落とし イヤホンの調子を確認してから追う
続く
ハイケルが言う
「マイク少佐 爆破地点に到着した ロックを」
イヤホンにマイクの無線が入る
『了解っ!ロックを解除します どうか お気を付けてっ!』
ハイケルが言う
「了解」
ハイケルの視線の先 ロックシグナルが赤から緑に変わる 重い扉が開かれる 隊員たちが武器を構える 開かれたドアの先 防御壁に身を隠していた第1第2部隊員たちが言う
「レギストがっ!?」
扉が開き切り 広い場所に4機のマシーナリー2が点在している ハイケルが言う
「国防軍レギスト機動部隊 作戦を開始する」
隊員たちが言う
「了解っ!少佐ぁー!」
隊員たちが銃撃を行い マシーナリー2の気を引く マシーナリー2が隊員たちへ銃撃を行おうとすると 隊員たちが回避する 回避した先 他のマシーナリー2が 隊員Aへ銃口を向ける 隊員Aが焦って言う
「やっべっ!」
固定マシンガンの援護射撃で マシーナリー2の動作が一瞬止まる 隊員Aが回避し 回避した先でM82を放つ マシーナリー2が隊員Aへ向こうとすると 隊員Cが対側で銃撃を行い マシーナリー2の気を引く 隊員Aが顔を向けて言う
「助かった!」
第1部隊員が笑んで言う
「なんのっ!」
隊員Cが逃げながら言う
「おいーっ アラン隊員ーっ!」
隊員Aが少し慌てて言う
「おっとっ!」
隊員AがM82を放ち マシーナリー2の気を引いて言う
「少佐の手が空くまで 何とか奴を引き付けるぞ!サキ!」
隊員Cが銃を放って
「お前が気を抜いたんだろっ!?」
隊員Aが笑んで言う
「悪~りぃ!にひひっ」
隊員Cが表情を顰めて言う
「まったく… バイスン隊員と離しても これかよ …とととっ!」
隊員Cが慌てて回避する 隊員AがM82を放つ 別所で手榴弾が大量に爆発する 隊員Aが顔を向ける
隊員Bが言う
「あーっ!もうっ!折角の手榴弾が勿体無いーっ!皆ちゃんと ビフォアーバーストショットにしてくれなきゃ マシーナリー直撃にならないよー!」
隊員Hが焦って言う
「出来るかっ!」
隊員FがM90を持って言う
「M90でも 最低5発は当てないと 貫通しないだなんて… これじゃ少佐以外 倒せる奴は居ないぞ」
隊員Bが手榴弾を持って笑んで言う
「”お前たちは 私の手が空くまで 時間を稼げれば それで良いんだ” だよー!マシーナリーって鈍間だし 動きが同じだから 慣れちゃえば 時間稼ぎくらい いくらでも出来るからねー!」
隊員Bが手榴弾を投げる 隊員Fが構えて言う
「それなら 練習がてら…っ」
隊員Fの一発の銃弾が手榴弾に当たる マシーナリー2が間近で爆撃を受け仰け反る 隊員Fが呆気に取られる 隊員Bが喜んで言う
「フッちゃん やるーっ!」
隊員MNがM90を隊員VがM80を放っている マシーナリー2がそちらへ向き銃口を向ける 隊員Mが焦って言う
「か、回避っ!」
隊員MVが慌てて左右に回避する マシーナリー2の銃撃が隊員Nへ向かう 隊員Nが焦って言う
「うわぁあっ!」
隊員Nが強く目を閉じる 銃撃が盾に防がれる 隊員Nがハッとして顔を向ける 隊員Xが盾を押さえる 隊員Nが言う
「ゼクス隊員っ!?」
隊員MとVが対側でマシーナリー2へ銃撃を行いながら言う
「ほらっこっちだ!」
マシーナリー2が隊員MとVへ向く 隊員Xが肩で息をする 隊員Nが言う
「助かったぜ!ゼクス隊員!…って!?大丈夫かっ!?」
隊員Xが苦笑して言う
「ああ、何とか… けど かなりキツイ 今までの対人マシーナリーより 威力が強くて… それに 盾その物が 持ちそうに無い」
隊員Nが盾を見て驚く 隊員MとVが焦って言う
「わぁああ 来た来たーっ!」
「回避回避ーっ!」
隊員MとVが左右に逃げる マシーナリー2が左右を見ると その胸にM90が3連射される マシーナリー2が仰け反り正面を見る ハイケルがM90を構えてる マシーナリー2が銃口を向けようとすると ハイケルが更に2発放つ マシーナリー2が動きを止め脱力する 隊員MとVが言う
「やったぁ!」
「助かったぁ~…」
軍曹がハイケルの前に盾を構えていて 立ち上がって言う
「少佐っ 後り2体でありますっ!」
ハイケルが言う
「了解」
ハイケルがM90を装填する 軍曹が盾を持ち上げる 隊員Nが軍曹を見てから言う
「それじゃっ 少佐の援護をしてる 軍曹の盾もっ!?」
隊員Xが苦笑して言う
「軍曹の方は特注で 俺の使ってる奴よりかなり丈夫だから 後2体なら耐えられると思う」
隊員Nが苦笑して言う
「そうなのか… 良かった ゼクス隊員も 軍曹と同じ盾には してもらえないのか?」
隊員Xが苦笑して言う
「丈夫は丈夫なんだけど あっちは 凄く重いんだよ」
ハイケルがM82を持って言う
「まずは奴の気を引く 君は待機していろ」
軍曹が言う
「了解っ」
軍曹が盾を床に着く 重い音が響く 隊員Nが表情を歪める 隊員Xが苦笑して言う
「90キロはあるぜ あれ」
隊員Nが驚いて言う
「90キロぉ!?それを軽々と …流石 軍曹」
隊員Nが軍曹を見る
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
スピーカーからハケイルの声が届く
『国防軍レギスト機動部隊 国防軍マルック駐屯地内に潜入した マシーナリー全5体を破壊した これより帰還する』
情報部員たちが表情を明るめる マイクが言う
「了解っ!お疲れ様でしたっ!」
マイクがバックスとアルバートを見る 2人が顔を見合わせ苦笑して肩の力を抜く バックスが気を取り直して言う
「おっと 戦いはまだ終わっていない マイク少佐 19部隊の状況を確認だ」
マイクが慌てて言う
「あっ!はいっ!そうでしたっ!国防軍リング駐屯地情報部 応答を こちら 国防軍レギスト駐屯地情報部 19部隊の現状を教えて下さい」
スピーカーから リング駐屯地情報部主任の声が届く
『こちら国防軍リング駐屯地情報部 19部隊の任務は完了 押し寄せていたマシーナリーは全て破壊した!現在は再来に備え警戒中』
マイクが表情を明るめて言う
「国防軍リング駐屯地情報部 了解です 引き続き 宜しくお願いします!」
スピーカーから リング駐屯地情報部主任の声が届く
『国防軍レギスト駐屯地情報部 了解だ 任せてくれ!』
マイクがバックスを振り返る アルバートが微笑して言う
「今度こそ 一安心かな?」
バックスが言う
「そうだな… ハイケル少佐への 窓ガラス修理代 請求書でも書いておくか」
アルバートが笑って言う
「酷い上官だ」
バックスが言う
「甘やかして 過去のエルム少佐の様に なられては困るからな?」
2人が笑う
【 国防軍マルック駐屯地 】
ハイケルがイヤホン無線に表情を顰める 隊員Bが言う
「少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「奴ら… 無線マイクがオンになっている事を 知っていて話している」
隊員Bが言う
「えー?って事は 俺の少佐直伝 密かにマイクスイッチオンは 元々はバックス中佐の技でありますかー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「誰の技であったのかは 不明だが… 聞いた話では 国防軍レギスト駐屯地情報部 主任だった者が 全く言う事の聞かない 元レギスト機動部隊隊長への 嫌がらせとして 考案したものであったと 聞いた事がある」
隊員Bが言う
「元レギスト機動部隊隊長ってー…」
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
ラミリツが言う
「あのさ?それって もしかしてだけど…?」
ラミリツがエルムを見る エルムが言う
「何だ?」
ロンドスが笑って言う
「フォッフォッフォ… いや、お懐かしいですな?少佐?」
ラミリツが言う
「やーっぱ?」
ザキルが言う
「俺、ホント ハイケル少佐の世代で良かった~」
エルムが言う
「何の話だ?」
ラミリツとザキルが息を吐く ロンドスが笑う
【 国防軍マルック駐屯地 】
第1第2部隊員が来て言う
「我々は 国防本部へ向かい 総司令官へ報告を致します」
ハイケルが言う
「了解 ご苦労だった」
第1第2部隊員が敬礼する 軍曹が来て言う
「少佐 我々も 国防軍レギスト駐屯地へ 帰還しましょう 後衛部隊は既に 生存者の確認を終えたとの事でしたので 移動トラックに待機させてあります」
ハイケルが言う
「了解 国防軍レギスト機動部隊 総員 …帰還せよ」
ハイケルのイヤホンに隊員たちの声が聞える
『了解!』
軍曹が向かおうとする ハイケルが立ち止まる 軍曹が振り返って言う
「少佐?如何なさいましたか?先ほども なにやら いつもと違って…?」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ 少佐は帰還したら 国防軍レギスト駐屯地の 窓ガラス修理代請求書が 待ってるのでありますー!」
軍曹が衝撃受けて言う
「なぁあっ!?しょ、少佐っ!?それは一体…?」
ハイケルが言う
「任務から 帰還したくないと思ったのは 初めてだ」
隊員Cが言う
「俺が兄貴に聞いた話では 国防軍レギスト駐屯地は 特注で作られた駐屯地だから 備品とかかなり高いらしいです 銃の誤発とか気を付けろって いつも言われてるんで」
ハイケルが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「わー さっすが サッちゃんのお兄さん!元国防軍レギスト駐屯地情報部員だっただけあって 色々詳しいねー!」
ハイケルが言う
「国防軍レギスト駐屯地情報部の者は レギスト機動部隊隊長には 多大なる恨みがあるのだと言う事は 良く分かった… やはり ヴォール・ラゼル・ハブロス邸 襲撃作戦は決行するべきだ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「しょ、少佐ぁーっ!?」
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
エルムが言う
「ロンドス 発注を頼みたい」
ラミリツとザキルが衝撃を受ける ロンドスが苦笑して言う
「少佐 申し訳ありませんが 私は このMT77をもって 引退すると」
エルムが言う
「M90の弾薬を 1ダース有れば良い」
ラミリツが溜息を吐いて言う
「あのさぁ エルム… 少しは大人になろうよ?」
ザキルが呆れて言う
「エルム少佐は 見た目はともかくとして とっくに大人を越えてるんですけどね」
ロンドスが笑う エルムが沈黙する
【 国防軍マルック駐屯地 屋外 】
19部隊の戦車が横一列に並んでいる 隊員1が双眼鏡で周囲を見渡して言う
「うん 異常なし!」
隊員2が振り返って言う
「もう 来ないかもな?」
隊員1が言う
「そうは言っても これから24時間は待機だぜ?」
隊員2が苦笑して言う
「だな?」
2人が笑う 戦車の操縦士が顔を上げて言う
「おーい 情報部から状況確認だ 周囲の状況は?」
隊員2が周囲を見て言う
「見渡す限り マシーナリーの残骸のみ 異常なしであります!どうぞー?」
隊員1が苦笑して双眼鏡を覗いて言う
「遠距離 1000メートル先にも 異常は… うん?」
【 国防軍マルック駐屯地 館内 】
突然轟音が響き隊員たちが驚く ハイケルが言う
「マイク少佐っ!?」
イヤホンにマイクの声が届く
『国防軍リング駐屯地 情報部より入電!先程の物とは異なる 新たなマシーナリーが接近!移動速度が速くて 戦車部隊ではっ』
再び館内に轟音が轟く 隊員やハイケルが振動に体勢を崩す
【 国防軍マルック駐屯地 屋外 】
戦車部隊が砲撃をする 隊長が言う
「砲撃止めー!駐屯地へは当てるな!」
隊員が言う
「隊長!我々戦車部隊の砲撃では とても間に合いません!」
隊長が言う
「情報部っ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 情報部 】
マイクが言う
「国防軍リング駐屯地情報部 及び19部隊より 国防軍レギスト駐屯地情報部 及び レギスト機動部隊へ 応援要請!国防軍マルック駐屯地 に現れた 新型マシーナリーの撃破を!」
バックスが通信マイクへ向かって言う
「ハイケル少佐!聞えたか!?」
【 国防軍マルック駐屯地 館内 】
ハイケルが言う
「…帰還しておくべきだった」
軍曹がイヤホンを押さえて言う
「レギスト機動部隊っ!直ちに 少佐の下へ集合せよーっ!」
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
ラミリツが驚いて言う
「また新しいマシーナリーが!?」
ラミリツがエルムを見る ロンドスが言う
「少佐 RTD330マシーナリーではない 更に新しいタイプとなりましては」
エルムが言う
「恐らく RTD420マシーナリーだ M90と奴1人では 勝利出来ない」
ロンドスが表情を険しくする ラミリツとザキルが顔を見合わせ ザキルが言う
「爺ちゃんっ 今のどう言う事っ!?型式を知ってるって事は 過去の戦いでも使われたマシーナリーでしょっ!?それなのに ハイケル少佐とM90で勝てないって!?」
ラミリツが言う
「別の武器が必要なら!届けないとアイツら やられちゃうよっ!?」
ロンドスがエルムを見て言う
「少佐…」
ラミリツとザキルがエルムを見る エルムが言う
「奴は悪魔の兵士だ それを知る機会としては 丁度良い相手だと言える」
ラミリツが言う
「エルムっ それってどう言う意味っ!?アイツを見殺しにしろって事!?」
ロンドスが言う
「少佐 M90は 私が 少佐の為に作った銃です 少佐とは戦い方の異なる ハイケル少佐には合いません」
エルムが言う
「私のレギストが 初めてマシーナリーと対峙した時には 国防軍の標準装備にて 隊員たちの命を懸けて戦った 現状M90と言う銃があること自体 奴は十分恵まれている この状態で対処出来ない様では 後の戦いには 勝利出来ない」
ラミリツとザキルが顔を見合わせる ロンドスが視線を落とす
【 国防軍マルック駐屯地 館内 】
無線イヤホンにマイクの声が届く
『新型マシーナリー接近中!到着まで5秒前!4・3・』
ハイケルと隊員たちが出入り口へ向け銃を構える ハイケルが言う
「放てっ!」
隊員たちが一斉に射撃する 出入り口から新型マシーナリー(以降マシーナリー3)が突入してくる ハイケルが驚いて言う
「回避っ!」
ハイケルと隊員たちが左右に回避する 隊員Aが言う
「速いっ!」
マシーナリー3がハイケルたちが回避した真ん中を突っ切ると 突っ切った先で向き直り 周囲を確認する ハイケルがM90を構える マシーナリー3がハイケルをロックオンし 銃撃を行いながら向かって来る 軍曹がハイケルの前に盾を構える ハイケルがM90を放つ マシーナリー3のボディに銃弾が弾かれる ハイケルが驚いて言う
「M90が効かないのかっ!?」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「回避っ!」
軍曹とハイケルが左右に回避する マシーナリー3が過ぎ去った位置で止まり 向き直ってハイケルを探しロックオンする 軍曹が言う
「少佐ぁーっ!」
ハイケルがM90を構えて3連射する 銃弾がマシーナリー3のボディに弾かれる ハイケルが視線を細めて言う
「ジャストショットでも 傷1つ付かないとはっ!?」
隊員たちが驚く 軍曹が言う
「少佐っ!?それでは どうしたらっ!?」
ハイケルが言う
「距離を縮め 射撃の威力を高めるしかないっ 軍曹 抑えられるか!?」
軍曹が言う
「了解っ!」
軍曹が盾を構える マシーナリー3が銃撃を行いながらハイケルへ向かって来る ハイケルが回避しながらマシーナリー3を引き付けた後 ギリギリで軍曹の後ろへ回避する マシーナリー3が軍曹の前で銃撃を行う 軍曹が盾を押え堪える ハイケルがM90をマシーナリー3の間近で連射する 重い銃声が何度も鳴り響く 隊員たちが見つめる M90の弾丸がマシーナリー3の装甲を傷付け始める ハイケルがM90を撃ち尽くすとマシーナリー3が脱力する ハイケルが息を吐き言う
「無事か?軍曹」
軍曹が目を開きハイケルを見上げ苦笑して言う
「はっ …何とかっ」
隊員たちがホッと胸を撫で下ろす ハイケルが軍曹の盾を見て言う
「厚さ30ミリの鉄の壁でギリギリか」
軍曹が立ち上がって言う
「この盾では持ちません もう一体でも来る前に 退避しましょう 少佐」
ハイケルが言う
「…そうだな」
隊員たちが顔を見合わせ頷き合う ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「任務完了 レギスト機動部隊 帰還する」
無線イヤホンにマイクの焦った声が届く
『ハイケル少佐っ!急いで下さいっ!』
ハイケルが驚いて言う
「どうしたっ?」
突然轟音が響き隊員たちが驚く 隊員Bが怯えて言う
「まさか またっ!?」
イヤホンにマイクの声が届く
『先ほどのマシーナリーが複数接近っ!総司令官より 国防軍マルック駐屯地爆破許可を得ています!レギスト機動部隊は 南方の脱出路より 直ちに退避して下さいっ!退避確認と共に こちらで駐屯地の自爆処理を行います!』
再び館内に轟音が轟く ハイケルが言う
「了解!総員っ!退避だっ!」
隊員たちが言う
「了解っ!」
隊員たちが出入り口へ向かう 軍曹とハイケルが向かおうとする マシーナリー3が再起動し向き直って ハイケルをロックオンする ハイケルがハッとして顔を向ける マシーナリー3がハイケルへ向かって来る ハイケルが驚く 軍曹が叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
軍曹がハイケルを突き飛ばす マシーナリー3がハイケルの居た場所に居た軍曹を弾き飛ばす 軍曹が通路へ突き飛ばされ床に倒れる 隊員たちが驚き立ち止まって言う
「軍曹っ!」
軍曹が振り返って言う
「少佐ぁーっ!」
マシーナリー3が片腕でハイケルを壁に押さえ付けている ハイケルが痛みに表情を顰めつつ M82を取り出し マシーナリー3へ連射する 重い銃声が鳴り響く 隊員たちが走り戻って来る ハイケルが気付き叫ぶ
「総員 退避だっ!」
隊員Aが言う
「しかしっ!」
マシーナリー3が隊員Aへ片腕を向けマシンガンを放つ 隊員Bが驚いて言う
「アッちゃんっ!」
隊員Xが盾を構える 隊員BがM80を放つ マシーナリー3が隊員Bへマシンガンを向ける 軍曹が隊員Bを突き飛ばす 隊員たちが銃を放つ マシーナリー3が標的を検索する 隊員Aが気付き 隊員Fへ言う
「フレッド隊員っ!少佐がさっき攻撃した所をっ!」
隊員Fがハッとして言う
「そうか!了解っ!」
隊員FがM80を構え狙って撃つ 隊員AがM82を放ちながらマシーナリー3の注意を引き付ける マシーナリーが隊員Aへロックオンしマシンガンを構える 軍曹がマシーナリー3の腕へ体当たりする マシーナリー3のマシンガンが狙いをそれる マシーナリー3が自分の腕を押さえる軍曹を見て 腕を壁へ叩きつける 軍曹が腕と壁に挟まれ悲鳴を上げる
「ぐうっ!」
軍曹がマシーナリー3の腕を外そうとするがびくともしない 隊員Aが叫ぶ
「フレッド隊員っ!」
隊員Bが言う
「フッちゃん!早くっ!」
隊員FがM80を連射しながら言う
「もう 少しだっ!…このっ …食らえっ!」
隊員Fが最後の一撃を放つ 銃弾がマシーナリー3の胸を突き抜ける マシーナリー3が脱力し倒れる ハイケルと軍曹が解放される 隊員たちが言う
「やったぁっ!」 「今度こそっ!」
ハイケルが叫ぶ
「退避っ!」
ハイケルが出入り口へ顔を向け驚く 隊員たちが驚き顔を見合わせると 出入り口からマシーナリー3が次々と入って来る 隊員たちが後ず去って言う
「…そんなっ」
ハイケルが呆気に取られる 軍曹が表情を強張らせハイケルを見る ハイケルが意を決して言う
「…あのマシーナリーは ターゲットを固定し それを追う習性がある 恐らく 最初に攻撃を行った者が その対象とされる」
隊員たちがハイケルを見る ハイケルがM90の弾倉を変えて言う
「私が攻撃を行い 奴らの注意を引き付ける お前たちはその間に退避しろ …マイク少佐 聞えているな?隊員たちが防御扉を抜けたら 扉をロックしろ」
隊員Bが言う
「それなら!俺も残ります!少佐ぁ!」
隊員Aが言う
「俺も残りますっ!」
ハイケルが言う
「私の任務は お前たちを全員 国防軍レギスト駐屯地へ 生きて帰らせる事だっ …バイスン隊員 アラン隊員 私の任務を邪魔するな」
隊員Aが呆気に取られる 隊員Bが言う
「俺は 邪魔だって言われても 残ります!」
ハイケルが隊員Bを見て言う
「お前は レギストの主戦力だ ここで死なせる訳には行かない」
隊員Bが言う
「俺の少佐は 少佐しか居ませんっ 少佐の居ないレギストじゃ 俺怖くて戦えないし…」
隊員BがM80を用意する 隊員Aが言う
「俺もやっぱり 少佐やバイちゃんの居ないレギストじゃ 戦えない …サキじゃ話してても詰まんないからな?」
隊員AがM82に充填する 隊員Cが言う
「言ったなぁ?少佐の率いるレギストは お前らお笑いコンビだけに 任せては置けないんだよ」
隊員CがM80に充填する 隊員Dが苦笑して言う
「あんま目立たないけど 俺だって少佐の率いるレギストには 命懸けてるんだ お前らに負けたくないね」
隊員DがM80の弾倉を変える 隊員Eが言う
「おいおい 今生の別れじゃないんだから いつもみたいに 楽しく行こうぜ?」
隊員EがM80を持つ 隊員Fが言う
「俺は これから少佐に 特別訓練を与えてもらうんだ ここで逃げ出す訳には行かない」
隊員FがM90を持つ 隊員NMVが顔を見合わせ苦笑して言う
「俺ら少佐に注意してもらわないと また階段で 足滑らせるからなぁ?」
隊員NMVが笑って武器を持つ ハイケルが呆気に取られた状態から視線を落として言う
「お前たち…っ」
軍曹がハイケルへ向いて言う
「少佐… …実はっ!」
ハイケルが言う
「軍曹 君は退避しろ」
軍曹が驚く ハイケルが言う
「その盾では もう防ぐ事は出来ない」
軍曹が言う
「しかしっ!」
ハイケルが有志隊員へ言う
「お前たちの意志は理解した まずはその我々が注意を引き付け 他の隊員を退避させる そして 我々は …その後だ」
有志隊員たちが言う
「「はっ!了解!」」
マシーナリー3が横一線に並びハイケルたちへ銃口を向ける ハイケルがM80を構えて言う
「国防軍レギスト機動部隊 作戦開始っ!」
有志隊員が言う
「「了解っ!少佐ぁー!」」
ハイケルと有志隊員たちが銃を放ちながら飛び出す マシーナリー3たちがそれぞれをロックオンして銃撃しながら向かって行く 有志隊員以外の隊員たちが悔しがりつつも逃げ出す 軍曹が悔やむ ハイケルが言う
「退避しろ!軍曹っ!」
ハイケルがマシーナリー3の攻撃を回避する 退避隊員たちが出入り口を抜け 振り返って叫ぶ
「軍曹!」 「軍曹ーっ!」
有志隊員たちが次々に追い詰められる マシーナリー3が隊員Nへ間近で銃口を向ける 隊員Nが苦笑して言う
「っはは… これで… 終わり…か?」
軍曹が叫ぶ
「ぬおぉおーっ!」
軍曹がマシーナリー3の片腕を払い飛ばし 隊員Nの間に入って盾を構える マシーナリー3が銃口を向け直し射撃する 盾が破損し 弾丸が軍曹の腕に当たる 軍曹が悲鳴を上げる
「ぐあっ」
隊員Nが焦って言う
「軍曹っ!?」
隊員NがM80を放ちながら叫ぶ
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが軍曹に攻撃を行っているマシーナリー3へM80を放つ 銃弾がマシーナリー3の装甲に弾かれる ハイケルが周囲を見渡す 隊員たちがマシーナリー3の銃口間近で武器を構えている ハイケルが表情を顰めて言う
「っ!…マイク少佐 扉をロックしろ!」
マシーナリー3がハイケルへ銃口を向ける ハイケルが視線を細めて言う
「任務 失敗 か…」
ハイケルのイヤホンにエルムの声が届く
『レギストの隊長に 任務の失敗は許されない』
ハイケルが呆気に取られて言う
「…エルム少佐?」
ハイケルがふと気付き上を見上げる 施設の上部にある窓ガラスが大破する 隊員たちが見上げると驚き エルムとエルムβが上空から現れ着地すると同時に エルムβたちが一斉にMT77を構える エルムが視線を強めるとエルムβたちがMT77を放つ 激しい銃声が3発放たれる 隊員たちへ銃を構えていたマシーナリー3が脱力して倒れる 共にエルムβたちが傾きMT77を落とす ハイケルが言う
「エルム少佐っ!?何故 お前がっ!?」
エルムβたちが再び動き出しMT77を逆手に構え直し 残りのマシーナリー3を撃破する ハイケルへ向いていたマシーナリー3が向き直る エルムがMT77を片腕で構え3発撃つ マシーナリー3が脱力して倒れる エルムが僅かに表情を顰め 射撃を行った左腕を下げて言う
「現レギストの隊長が不甲斐ない為 とっくに引退した私が 召集された」
ハイケルが言う
「…礼を言う」
エルムが言う
「当然だ」
エルムが周囲を見渡す エルムβたちが力尽き 白い体液を流して破損している ハイケルが視線を強めて言う
「MT90を改良した銃か… それでも」
エルムが言う
「MT77だ 威力は落ちたが 3発をジャストショットさせれば RTD420マシーナリーの強化装甲を貫ける」
隊員たちが呆気に取られて見ている エルムが言う
「お前たちは退避しろ 任務は私が引き継ぐ」
皆がエルムを見る エルムがMT77をM90へ切り替え マシーナリー3へ撃って言う
「行け」
マシーナリー3がエルムをロックオンし エルムへ向かう 隊員Bが言う
「少佐ぁーっ!?」
ハイケルが言う
「退避だっ!」
隊員たちが視線を合わせ頷き合う 隊員たちが出入り口へ向かう エルムが回避しつつM90を撃ち注意を引き付けつつ ハイケルを見て言う
「何をしている 貴様も行け」
ハイケルがエルムβたちを一瞥してから エルムへ向いて言う
「お前はどうするつもりだっ?MT77は1人で2体を倒すのが限界 お前が倒せるのは 後一体だろうっ!?」
エルムが回避し防御壁の後ろへ回り込んでM90を放ち言う
「この駐屯地を爆破させる 数は問題ない」
隊員Bと隊員Aが出入り口の外で叫ぶ
「少佐ぁーっ!」 「少佐もっ 早くっ!」
ハイケルが言う
「…悪魔の兵士である お前なら それほどの爆破にも 耐えられると言うのか!?」
エルムが言う
「悪魔の兵士であろうと 肉体の耐久力は常人と大差ない 耐えられる訳が無い」
エルムが回避する ハイケルが言う
「では お前は死ぬ気なのか?…そして 再び蘇ると?」
エルムがM90を放ちつつ言う
「生憎の老体だ ここで死ねば もう蘇る事は無い」
エルムが華麗に回避する ハイケルが表情を顰めて言う
「言動を合わせてくれ…」
エルムが言う
「だが、私は この任務の他にも 既に任務を受け持っている ここで私が死ねば そちらの任務が果たせなくなる …その任務を お前が引き継げ」
ハイケルがエルムを見る エルムがイヤホンのスイッチを止めて言う
「ヴォール・ラゼル・ハブロスは間もなく寿命を迎える お前はその後 奴の持つアールスローン戦記の原本を アース・メイヴン・ハブロス総司令官へ届けろ 以上だ」
ハイケルが驚く エルムがM90を放ち回避し 回避した先でM90を構える エルムが言う
「報酬は無い 私が奴から 頼まれただけの任務だ」
エルムがM90を放ち回避する ハイケルが言う
「…報酬は すでに受けている だが、その任務は 引き受けられない」
エルムがハイケルを見て言う
「理解不能だ 単純明確に言え」
ハイケルがMT77を見て言う
「敵は後2体 俺とお前で その銃を使えば足りる 先の任務は お前が行うべきだ」
エルムが言う
「後1体を破壊するだけ撃てば 私の身は持たない」
ハイケルが言う
「MT77だけに依存しなければ良い お前は2発までを その2発がマシーナリーの強化装甲を破壊さえすれば 後はこれでも」
ハイケルがM90を持つ エルムが言う
「3発目にM90を代用するつもりか しかし、その作戦は確実に成功するとは言えない 貴様がMT77を使いこなせる保障も無い …任務は 確実に遂行しなければならない」
ハイケルが言う
「ならば 失敗時へ向けての備え行え良いんだ マイク少佐っ!」
エルムがハイケルを見てから回避する イヤホンにマイクの声が届く
『は、はいっ!ハイケル少佐っ!?』
ハイケルが言う
「今すぐ 防御扉をロックしろ!」
隊員Aと隊員Bが驚いて言う
「「少佐ぁっ!?」」
イヤホンにマイクの声が届く
『了解っ …成功を祈ります!』
防御扉のランプが赤になり扉が閉まり始める ハイケルがエルムへ向いて言う
「国防軍レギスト機動部隊 作戦を開始する」
エルムがイヤホンのスイッチを入れて言う
「了解」
扉が閉まる音がする エルムがMT77を用意して言う
「奴らの標的は 最終襲撃者となる お前が1体目のトドメとしてM90を放てば 残りの一体はお前をターゲットする」
ハイケルが言う
「了解 1体目を仕留めたら すぐにMT77を使用する」
エルムが言う
「無駄撃ちはするな 残りの銃弾は6発だ」
エルムが銃弾を詰める ハイケルが視線を強めて言う
「了解」
ハイケルがM90を構える エルムがハイケルの位置を確認 マシーナリー3を誘導し ハイケルの真横でMT77を構えると 引き金を引く MT77が激しい銃声を鳴らす ハイケルがM90で狙いを付け 2発目の銃声を確認すると共にM90を連射する マシーナリー3のボディを銃弾が貫通し マシーナリー3が動きを止め脱力する エルムが言う
「第一作戦クリア 第二作戦へ移行する …来るぞ」
ハイケルがエルムからMT77を奪い構える マシーナリー3が倒れると その後方から最後のマシーナリー3がハイケルをロックオンする エルムが言う
「1打目 放て」
ハイケルがMT77の引き金を引く 激しい反動にハイケルが背にしていた防御壁に背を打ち付けハイケルが悲鳴を上げる
「ぐあっ!?」
エルムが言う
「2打目 放て」
ハイケルがエルムの声に顔を上げ言う
「ぐぅ…っ!」
ハイケルが MT77を構える エルムが言う
「急げっ」
ハイケルが必死に照準を合わせ 歯を食いしばって引き金を引き言う
「クッ…!」
MT77が放たれ マシーナリー3に当たる ハイケルが表情を顰め吐血する エルムがハイケルを見て言う
「3打目は 持たないか」
ハイケルがMT77を構えて言う
「任務は… …確実に遂行させるっ」
エルムが言う
「当然だ」
エルムが隣でMT77を支える ハイケルがエルムを見る エルムが言う
「狙え」
ハイケルが照準を合わせる マシーナリー3がハイケルへ銃口を向け射撃する 同時に ハイケルが引き金を引く MT77が放たれる エルムとハイケルが表情を顰めて言う
「「ぐっ!」」
ハイケルが苦しそうに目を開いて言う
「やったか…?」
エルムが言う
「外した」
ハイケルが驚き顔を上げる マシーナリー3のマシンガンが破損している マシーナリー3がマシンガンを放とうとして 故障を感知し マシンガンを排除する ハイケルが驚いてからエルムへ向いて言う
「もう一度っ」
マシーナリー3がハイケルをロックオンし マシンガンを失った手をハイケルへ向ける エルムがハイケルへ向いて言う
「回避!」
ハイケルがハッとして立ち上がろうとするが 体に激痛が走り顔を顰める エルムが気付くと立ち上がり言う
「私が押さえる 貴様はその場にて構えろ」
ハイケルが呆気に取られて言う
「押さえるだと?盾も無いのに どうやってっ!?」
マシーナリー3が突進して来る ハイケルがハッとしてマシーナリー3を見る その前で エルムが向かって来たマシーナリー3を掴み押さえる ハイケルが驚いて言う
「素手で押さえられるのかっ!?」
エルムが言う
「長くは持たない」
ハイケルが慌ててMT77を構える 照準を合わせようとするが 体が支えきれず照準がブレる ハイケルが視線を強めて言う
「く…っ 力が…っ!」
マシーナリー3が力を増す エルムが表情を顰めて言う
「急げっ」
マシーナリー3が顔をエルムへ向る エルムがマシーナリー3へ視線を向ける マシーナリー3がエルムをターゲットに切り替え ハイケルへ向かおうとするのを止め エルムから逃れようともがいた後 顔がマシンガンに変わり エルムの右肩へ銃撃を行う エルムが悲鳴を上げる
「ぐぅっ!」
ハイケルが驚いて言う
「エルム少佐っ!」
マシーナリー3の顔が戻りエルムの右腕を引く エルムの傷口が裂け エルムが激痛に表情を顰める マシーナリー3がエルムの右腕を掴んだまま一回転させる エルムが目を見開き叫ぶ
「あぁああーっ!」
ハイケルの前の床に血が滴り落ちる ハイケルが驚き急いでMT77をマシーナリー3へ向ける エルムが言う
「狙えっ!」
ハイケルがハッとする エルムが言う
「後一発だ 確実に…っ!」
エルムが表情を強め マシーナリー3を片手で押さえ付ける マシーナリー3がエルムを見てもがく ハイケルがMT77のブレ続ける標準を合わせようと苦戦していると急に MT77のブレが止まる ハイケルが驚くと 隊員Aと隊員BがMT77を支えている ハイケルが驚いて言う
「アラン隊員っ!?バイスン隊員っ!?」
隊員Aが言う
「俺たちが支えます!」
隊員Bが言う
「早く撃ってっ!少佐ぁー!」
ハイケルが意を決して言う
「了解っ!」
ハイケルが照準を合わせ 視線を強めて引き金を引く MT77が放たれる 隊員Aと隊員Bが顔を顰めて言う
「「うわぁあっ!」」
ハイケルが顔を上げる ハイケルの視線の先マシーナリー3が動きを止め 脱力し倒れる 隊員Aと隊員Bが顔を見合わせ言う
「「やったぁーっ!」」
エルムが右肩を掴み倒れる 隊員Aと隊員Bが衝撃を受ける ハイケルが歯を食いしばって立ち上がり エルムの横へ行く 隊員Aと隊員Bが顔を見合わせてから ハイケルの後ろへ行く エルムの傷口から血が溢れ 床に血溜りが出来る 隊員Aが表情を顰めて言う
「ひ、酷い怪我だ…っ」
隊員Bがハイケルを見る ハイケルが拘束布をエルムの傷口の手前へ回し言う
「止血する 堪えろ」
ハイケルが拘束布を縛り上げる エルムが痛みに顔を顰める ハイケルが手を離し イヤホンを押さえて言う
「マイク少佐 任務完了だ すぐに救護班を呼んでくれ」
イヤホンにマイクの声が届く
『了解っ …ですが、少々お待ちを!ロックの解除に そちらの駐屯地の電源が足りないので 今 電源車を向かわせています!』
ハイケルが表情を落として言う
「…了解 急がせろ」
ハイケルがエルムを見る 隊員Bがエルムの傷口を見て表情を顰めて言う
「すげー… 痛そう…」
エルムは強く目を閉じ痛みに耐えている 隊員Aが表情を哀れませて言う
「マシンガンで銃撃された上 傷口を引き裂かれて曲げられているんだ 痛いなんてモンじゃ…」
隊員Bが青ざめて言う
「うえぇ~っ 聞いてるだけで 俺 気絶しそう…っ」
ハイケルが言う
「通常であるなら 攻撃を受けた時点で 精神防衛本能から とっくに意識を喪失している …だが そうはならなかった お陰で マシーナリーを倒す事が出来た」
隊員Aが言う
「…けど 今は 救護班が来るまで このまま 痛みに耐え続けなきゃならないなんて…」
隊員Bが言う
「せめて 痛みだけでも和らげてあげられたら良いのに…」
ハイケルがハッとする 隊員AとBが同時に気付いて言う
「そうかっ!」 「モルヒネだっ!」
ハイケルが隊員AとBを見る 隊員Bがモルヒネ携帯キットを取り出し開けると 表情を困らせて言う
「け、けど 俺 使った事無いよっ!?これ どうしたら良いのっ!?」
ハイケルが隊員Bから携帯キットを奪って言う
「貸せっ」
ハイケルがモルヒネを注射器にセットしエルムを見る 隊員Aと隊員Bが見ている ハイケルがエルムの怪我の近くにモルヒネを打つ作業を繰り返し 3本を打ち終えて言う
「これで良い筈だ」
隊員AとBがハイケルを見てからエルムを見る エルムが徐々に苦しみから解放され目を開く 隊員Aと隊員Bがホッとして顔を見合わせ苦笑する ハイケルが言う
「マシーナリーを素手で押さえるとは… 流石は悪魔の兵士だな… だが、助かった 礼を言う …隊員たちが残っていたとは 知らなかった」
隊員AとBがハイケルを見る エルムが言う
「礼ならば その2人へ言え お前だけでは 照準が定まらなかった 第二作戦は失敗に終わっていただろう」
隊員AとBが驚き顔を見合わせる ハイケルが言う
「…そうだな」
エルムが言う
「ザキルへ依頼し 対策を強化させろ 現状のままでは お前は3打目を撃てない」
ハイケルが言う
「ザキルはまだ ロンドスの助手だ 依頼をするなら…」
エルムが言う
「問題ない MT77は そのザキルが製作した銃だ ロンドスは承認をしただけだ」
ハイケルが言う
「…そうなのか?」
エルムが言う
「確認は取っていない だが分かる ロンドスが作ったにしては 詰めが甘い …だが、お前には… それで良い…」
ハイケルが言う
「それは?」
ハイケルのイヤホンにマイクの無線が入る
『ハイケル少佐!お待たせしましたっ!電源車が到着!ロックの解除を行います!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「マイク少佐 了解だ」
防御扉のランプが緑に変わると扉が開き 隊員たちが言う
「少佐ぁーっ!」
ハイケルが隊員たちを見て言う
「負傷者の救護を急げ」
救護班が言う
「了解っ!」
救護班が駆け付ける ハイケルがエルムへ向いて言う
「先ほどのは どう言う… っ!」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Bが衝撃を受けて言う
「あーっ!エルム少佐がーっ!」
隊員Aが苦笑して言う
「違うよ バイちゃん 眠ってるだけだ」
隊員Bが呆気に取られて言う
「え?…あ、何だー びっくりしたー」
ハイケルが言う
「…モルヒネの麻酔効果だろう 脳に近い位置だ 規定量では 少し多かったか」
救護班がハイケルへ向いて言う
「出血が酷い為 輸血と増血剤の投与を行ってから 運びます」
ハイケルが頷く 隊員Aが苦笑して言う
「悪魔の兵士か… ははっ 確かに 普段は少佐よりクールで それこそ 戦うロボットみたいだったけど やっぱり 人だったんだな?」
隊員Bが苦笑して言う
「とーぜんっ 戦うロボットであるマシーナリーは 痛みなんて感じないし!眠る事も無いんでしょー?」
隊員Aが言う
「そうだな?それに… 眠ってる時は 意外と優しそうな顔してるし?」
隊員Bが笑んで言う
「えー?俺思うけど エルム少佐は 起きてる時だって 優しいよー?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「え!?」
ハイケルが隊員Bを見る 隊員Bが隊員Aへ向いて言う
「だって?いっつも少佐や俺たちの事 助けてくれるじゃん!流石 元国防軍レギスト機動部隊 隊長ー!」
ハイケルが呆気に取られた後苦笑する 隊員Aが苦笑して言う
「そうだな!何しろ レギストの隊長は元も現も 勘違いされるほど 言動が堅いからなぁ 素直じゃ無いって言うか 可愛くないって言うか」
ハイケルが衝撃を受ける 隊員Bが笑って言う
「あっははっ!アッちゃん チョー面白れー!その現隊長である 少佐の目の前でそんな事言ったら 減給決定なのにー!」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「げぇえ!し、しまった…」
隊員Aがぎこちなくハイケルへ振り返る ハイケルが言う
「アラン隊員の意志は理解した よって 本人の希望通り」
隊員Aが慌てて言う
「いやぁあっ!しょ、少佐ぁー!今のはっ 何かの間違えで!…あ!そうだっ!ほらっ!モルヒネの幻覚作用とかっ!?」
ハイケルが言う
「私は 自分に投与した覚えは無い」
隊員Aが言う
「いやぁあっ!きっとっ モルヒネは 投与した本人にも 作用が生じるとかって言いますし!?」
ハイケルが呆気に取られて言う
「…そうなのか?」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「え!?信じた!?あ、はいっ!そうそう!そう言いますから 使用には厳重な注意を!」
隊員Bが言う
「あー!アッちゃん 少佐に嘘教えてるー!」
ハイケルが表情を顰めて言う
「嘘なのか?」
隊員Aが慌てて言う
「え!?いやっ!?それはその…っ 嘘も方便って言いますし!」
ハイケルが不満そうに言う
「嘘は嫌いだ よって アラン隊員を 国防軍への虚偽抵触の罪で 3ヶ月間3割の減給と 駐屯地周回1000週の罰を与える」
隊員Aが呆気に取られて言う
「そ、そんなぁ~…」
ハイケルが間を置いて微笑して言う
「…冗談だ」
隊員Aが衝撃を受ける ハイケルが言う
「私は それほど単純な嘘を信じるほど 可愛くは無いんだ」
隊員Bが笑う
「さっすが 少佐ぁー!チョー面白れー!あっはははっ!」
隊員Aが脱力して言う
「少佐ぁ~… こんな時にまで 勘弁して下さいよぉ~…」
隊員Aがガクッとうな垂れる ハイケルが微笑する 隊員Bが笑う
「にひひっ」
救護班が担架に乗せたエルムを運んで行く ハイケルが視線で追った後言う
「国防軍レギスト機動部隊 作戦を終了する 総員 国防軍レギスト駐屯地へ 帰還せよ」
隊員たちが笑み敬礼して言う
「了解っ!少佐ぁっ!」
ハイケルが微笑する
【 国防軍レギスト駐屯地 医療室 】
医者が言う
「打撲と左のあばら骨にヒビが入っていますが 入院やこれと言った治療はしなくても良いでしょう ただし… くれぐれもっ!1週間の任務は勿論 訓練も禁止です!」
ハイケルが表情を顰めて言う
「1週間もっ!?」
医者がカルテを書きながら言う
「体を壊したいのなら 止めはしませんよ?」
ハイケルが視線をそらして言う
「…了解」
医者が苦笑して言う
「とりあえず3日後に一度来て下さい 様子を確認して 期間を縮められそうなら お伝えをしますから」
ハイケルが立ち上がって言う
「感謝する」
医者が微笑して言う
「くれぐれも お大事に」
ハイケルが立ち去る
ハイケルが医療室を出て通路を歩くと前方の病室の扉が開きエルムが出てくる ハイケルが衝撃を受ける エルムがハイケルに気付き顔を向ける ハイケルが言う
「エルム少佐 何処へ行く気だ?」
ハイケルがエルムの下へ行く エルムが言う
「帰還する」
エルムが歩き出す ハイケルが言う
「待て」
エルムが立ち止まり僅かに視線を向ける ハイケルが言う
「お前は1週間の任務及び訓練の禁止所ではない 1週間以上の入院治療が必要だ」
エルムが言う
「この腕は再生不可能だ 治療の必要は無い」
ハイケルが言う
「切断をするにしても 最低1週間の入院と5日の静養が必要だ それに 輸血や増血剤の投与した位では」
エルムが言う
「確かに 血は足りていない だが 必要も無い」
ハイケルが言う
「どう言う意味だ?」
エルムが歩き出す ハイケルが追って言う
「待てっ その状態で 何処へ行くのかと訊いている ヴォール・ラゼル・ハブロスの屋敷へ戻っても 警備などは」
エルムが言う
「無理だな」
ハイケルが言う
「ならば 治療を受け 警備に立てる状態まで 回復させてから戻るべきだ」
エルムが言う
「そうだな それは正しい だが、私には任務がある」
ハイケルが驚いて言う
「…まさか」
ハイケルが立ち止まる エルムが立ち止まって言う
「ハイケル少佐 礼を言う」
ハイケルが驚く エルムが言う
「私がお前であったなら 迷いなく退避していた だが、お前は お前の隊員たちと共に残り戦った …お陰で 私が この任務を遂行出来る」
ハイケルが微笑して言う
「”当然だ”」
エルムが言う
「そうか やはり お前は甘い」
ハイケルが衝撃を受ける エルムが立ち去る ハイケルが表情を顰め間を居て言う
「可愛く無い奴だ」
ハイケルが苦笑し立ち去る
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
エルムが部屋へ入って来て 暗い部屋の中を進む エルムβが椅子に座りベッドを見ている エルムが横に立ち言う
「帰還した」
ベッドの上でラゼルがゆっくり目を開き微笑して言う
「お疲れ様でありました 少佐… お怪我を?」
エルムが言う
「右腕を負傷した 再生不可能だ」
ラゼルが苦笑して言う
「申し訳ありません 少佐 自分は もう…」
エルムが言う
「問題ない デコイも全て失った 片腕であっても 機動力は こいつよりはマシだ」
椅子に座ったエルムβは意識なく視線を落として居る ラゼルが微笑して言う
「そうですか それでしたら… …少佐」
エルムが言う
「何だ 軍曹」
ラゼルが言う
「どうやら お別れの様であります…」
エルムが言う
「了解」
ラゼルが微笑して言う
「そう言って下さる少佐に 看取って頂けるのでしたら… 自分は 安心であります…」
エルムが言う
「そうか なら良いんだ」
ラゼルが言う
「少佐… どうか… 少佐は…」
ラゼルが目を閉じる エルムが視線を下げ 自分の左手を見る ラゼルがエルムの左手を握っている エルムがそれを確認してから 自分の手をラゼルの手から抜き そのままラゼルの手首に触れて言う
「20時19分 ヴォール・ラゼル・ハブロスの死亡を確認」
エルムがその手をラゼルの顔近くへ持って行き 一瞬止めてから ラゼルの側頭部へ触れ視線をサイドテーブルへ向ける サイドテーブルに小さな道具が置かれている エルムが目を細めて言う
「任務を開始する」
エルムが小さな道具を手に取り 先ほどまで手を当てていたラゼルの側頭部へ道具を当てる エルムが目を細めると 小さな火薬の音がする 椅子に座っているエルムβが顔を上げ 立ち上がる
【 ハブロス家 アースの部屋 】
アースがノートPCを操作して息を吐いて言う
「犠牲は少なくなかったが マルック駐屯地が残ってくれた事は不幸中の幸いだった… …また帝国は マシーナリーを送ってくるのだろうか?政府は人を送ったと言っていたが やはり明日早くにもミックワイヤー長官へ確認を…」
アースがコーヒーを取ろうと手を伸ばし ふと気付いて顔を向けると エルムβが立っている アースが驚いて言う
「エ、エルム少佐っ!?…いや デコイの方か」
アースが一度息を吐いてから 気を取り直して言う
「とは言え エルム少佐?例え意識の無い人形であろうと その人形を通し 貴方本体の意識とは 繋がっているのだろう?そして ここは私個人の部屋 いくら祖父上の遣いだとしても ノック位はしてもらいたい」
エルムβが言う
「『悪かったな』」
アースが表情を顰め溜息を吐く エルムβが不器用に片腕を差し出し 握られていた手を開く アースが疑問しエルムβの手に乗せられている物を見て言う
「これは?これを私へ届ける様にと?」
アースが手を向けると エルムβが手の平を逆さまにして アースの手にマイクロチップの入った透明なケースを落とす アースがそれを見て疑問する エルムβが言う
「『アース・メイヴン・ハブロス お前に アールスローン戦記の原本を託そう』」
アースが驚き エルムβへ言う
「これがっ アールスローン戦記の原本っ!?」
エルムβが一歩下がって言う
「『20時19分 ヴォール・ラゼル・ハブロスの死亡を確認』」
アースが驚き思わず席を立って言う
「祖父上が!?」
エルムが言う
「『任務完了』」
アースが言う
「待てっ エルム少佐っ!」
エルムβが青い炎を纏い一瞬にして白い灰になる アースが呆気に取られてから 慌てて部屋を出て行く
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 】
エルムが言う
「任務完了だ 軍曹」
エルムが間を置いて視線を向ける ベッドの上にラゼルが目を閉じている エルムが僅かに目を細めてから言う
「…国防軍レギスト機動部隊 作戦を開始する」
エルムが銃を抜き 国防軍のその銃を見てから振り返る 周囲にエルムの隊員たちの幻覚が見える
【 ハブロス家 ラゼルの屋敷 玄関前 】
アースが走って来て 周囲を見ながら言う
「この時間に 警備を行うエルム少佐が 居ないとはっ!?」
アースが玄関のノブに手を掛けると 室内から銃声が1発響く アースが驚き慌ててドアを開け 通路を走り ラゼルの部屋の扉を開け言う
「エルム少佐っ!?…っ!」
アースが驚き息を飲む アースの前方 エルムが銃を持った手を下ろすと 人形の様に倒れる アースが呆気に取られる
【 国防軍レギスト駐屯地 ハイケルの職務室 】
ハイケルが言う
「君の怪我は 大した事は なかったのか?」
軍曹が言う
「はっ!盾を貫いて自分の腕まで到達したとは言え 弾丸そのものの威力は 盾に当たった時点で 抑えられていた様でして!腕の表面に浅い怪我を負った程度なので 2日ほど様子を見れば 訓練を行っても良いとの事でありますっ!」
ハイケルが言う
「そうか …羨ましい限りだ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はっ!?」
ハイケルが顔を背けて言う
「エルム少佐だ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はぇっ!?エ、エルム少佐が う、羨ましいとは…?」
ハイケルが言う
「医務室を出てすぐに エルム少佐と遭遇した …こちらが 1週間の任務及び訓練の禁止を受けているにも拘らず 奴は片腕を再生不可能な状態にしていながらも 半日と置かずに出て行った… ふんっ …悪魔の兵士であるなら 怪我の治療さえ不要なのだろう」
軍曹が困って言う
「あ、あの…っ」
ハイケルが言う
「当然だな?何度でも蘇るほど丈夫な体なんだ おまけに あのマシーナリーを素手で押さえ 苦痛による意識の喪失も無い… そして、あれほど強力な銃を 合計で6発も撃ち 持ち堪えた… 機動隊員として 完璧だ …私も悪魔の兵士であったなら…」
軍曹がハッとして言う
「その事でありますがっ!少佐っ!」
ハイケルが言う
「どうした?軍曹?」
軍曹が表情を困らせつつ言う
「その…っ 自分は…っ 出来ればっ お伝えをしたくなかったのでありますがっ …やはりっ お伝えをしない訳には 行かなくなって来たかと…っ」
ハイケルが言う
「何だ?」
軍曹が言う
「少佐っ!実はっ!少佐は…っ!」
軍曹の携帯が鳴る 軍曹が呆気に取られる ハイケルが一瞬疑問した後言う
「防長閣下の任務かもしれないだろう?出たまえ」
軍曹が表情を困らせて言う
「は、はぁ… では 失礼を致します…」
ハイケルがノートPCへ視線を向ける 軍曹が少し下がりながら携帯を取り出し ディスプレイを見て軽く驚いて言う
「うん?兄貴から…?」
ハイケルが反応して視線を向ける 軍曹が携帯を着信させ耳に当て 間を置いて驚いて言う
「…え?祖父上がっ!?」
ハイケルが気付き視線をそらす 軍曹が言う
「…そうか では 最期はエルム少佐だけが看取り… …え? …それはどう言う意味なのだ?エルム少佐は 悪魔の兵士である そのエルム少佐が し、…死ぬなんて事はっ!?」
ハイケルが驚き軍曹を見る
【 マスターの店 】
TVでニュースがやっている キャスターが言う
『本日最初のニュースです 昨夜20時19分 元国防軍総司令官でありました ヴォール・ラゼル・ハブロス様が 老衰の為 お亡くなりになりました ヴォール・ラゼル・ハブロス様は 女帝陛下の親兵である 陛下の盾 国家家臣防長の任命を頂いていた事もあり 葬儀には…』
老紳士が静かに言う
「ハブロス総司令官が お亡くなりになったか…」
老紳士が視線を落とす マスターが気付いて言う
「現総司令官も ハブロス総司令官ですが ヴォール・ラゼル・ハブロス様を そうお呼びになるとは …やはり?」
老紳士が気付き苦笑して言う
「…フォッフォッフォ 気付かれておられましたか マスター …流石ですね?」
マスターが微笑して言う
「やはり 国防軍に関わる お方でしたか」
老紳士が微笑しコーヒーを持って言う
「もうずっと昔の事です それこそ ヴォール・ラゼル・ハブロス様が 総司令官で居られた頃の…」
老紳士がコーヒーを飲む マスターが微笑する 老紳士がコーヒーを離し一息吐く TVからキャスターが言う
『共に 同日 昨夜20時25分頃 元国防軍17部隊隊長 エルム・ヴォール・ラゼル少佐が お亡くなりになりました』
マスターが驚きTVへ振り返り 数歩TVへ近付く TVからキャスターが言う
『死因は 頭部損傷 拳銃による自殺であったと断定 ヴォール・ラゼル・ハブロス様の訃報を聞き駆け付けた ヴォール・ラゼル・ハブロス様の孫である アース・メイヴン・ハブロス現国防軍総司令官が 1発の銃声を確認 直後を目撃されたと言う事で…』
マスターが呆気に取られる 老紳士が苦笑し目を閉じて言う
「やはり… エルム少佐は 追ってしまわれたか… お寂しかったのでしょうな?」
マスターが驚き老紳士を見る
【 墓地 】
ハイケルがハブロス家の豪華な墓標を見て 一箇所で視線を止め目を細める 軍曹が言う
「エルム少佐は 祖父上と養子縁組をしておりましたので お名前の記載場所は下げられますが 結果として同じ墓標の下に 眠る事になられます」
ハイケルが言う
「姓を持たない3構想の名だ 親とされる者が亡くなり 12時間を経過した後では 養子の縁は抹消される… その前に手を打ち ハブロス家の豪華な墓に入ろうとは 下賎な奴だ …さぞかし 寝心地が良いだろう」
軍曹が苦笑して言う
「祖父上は エルム少佐の身元引き受けの欄に ご署名もされておりましたので 例え 12時間を経過し エルム少佐のお名前が1構想へ戻られていたとしても 同じ結果になられたかと」
ハイケルが言う
「だが、そうとなれば ここに記される名は 変えられていた …3構想の名に拘る辺りが 世代の違いか」
軍曹が苦笑して言う
「少佐 流石にそれは… そもそも エルム少佐を養子にしたのは 祖父上のご希望であったと言う話ですので エルム少佐ご自身は 拘っては居られなかったかと」
ハイケルが言う
「そうなのか …では 何故自殺をした?それらの他に 奴が自ら命を絶つ理由など…」
軍曹が困って言う
「は… はぁ… それは 確かに…」
ハイケルが言う
「それとも ヴォール・ラゼル・ハブロスは 自身が死んだ後 12時間以内に 自分の後を追う様にと 命令していたのか?」
軍曹が慌てて言う
「それはありませんかとっ!」
ハイケルが言う
「だろうな」
軍曹が表情を落とす ハイケルが墓標を見て言う
「何度でも蘇る 悪魔の兵士だろう?さっさと蘇って見せろ」
ハイケルが一輪の花を投げる 沢山の花が置かれている墓標の中 エルムの名の近くに花が落ちる 軍曹がハイケルの投げた花を見る ハイケルが言う
「ふん…っ だが、不死身の兵士とはいえ 歳を取ると 蘇れなくなるそうだな 70歳で引退か」
軍曹が言う
「あ… それは…」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う
「エルム少佐の… 悪魔の兵士の年齢ではなく 祖父上のご年齢の事で」
ハイケルが言う
「そうなのか?」
軍曹が視線を落として言う
「はい… 悪魔の兵士は 元は アールスローン戦記の原本を 身に持つ者を守る事が 使命でありまして… その原本を所持する者が 歳を取って寿命を迎えるのであれば 悪魔の兵士は その役目を終える訳でありますので」
ハイケルが言う
「なるほど それで蘇らなくなるのか …ふっ 面白い話だ」
軍曹が呆気に取られる ハイケルが背を向けて歩き出して言う
「それがアールスローン戦記の原本の物語か」
軍曹が苦笑し言う
「はっ そうであります!」
軍曹がハイケルに続く
【 警察留置所 】
メルフェスが視線を落とし独房の中に居る 警官1がやって来て言う
「カルメス囚人 出ろ」
メルフェスが視線を向ける 警官1が牢の鍵を開けて言う
「ミックワイヤー長官が お前をお呼びだ」
メルフェスが視線を強める
ミックワイヤーが椅子に座っている メルフェスが警官1に連れられやって来る ミックワイヤーが視線を向ける メルフェスが正面の椅子に座る ミックワイヤーが言う
「カルメス元長官 …いえ、元外交長 帝国の事を 教えて頂けませんか?」
メルフェスがミックワイヤーを一瞥してから視線をそらす ミックワイヤーが言う
「先日 国防軍マルック駐屯地に マシーナリーの大群が押し入りました それを受け 我々アールスローン政府は 帝国へ人を送りましたが それっきり 連絡が付かなくなりました」
メルフェスが言う
「むやみに人など送っては 帝国のご機嫌を損ねるだけですよ」
ミックワイヤーが言う
「ではどうしろと?」
メルフェスが言う
「手土産でも用意しては如何です?」
ミックワイヤーが言う
「生憎 帝国が どの様なものを好まれるのか 私には分かりかねます それに 危害を加えて来たのはあちらです 我々政府はその抗議として 人を送りました」
メルフェスが言う
「では 痛み分けですね アールスローンが帝国からの使者を破壊したのなら 帝国も こちらからの使者を破壊されるでしょう」
ミックワイヤーが驚いた後 表情を顰めて言う
「こちらは平和的解決を求めていますっ その我々へ 帝国は 殺人機械を送り込んで来たのですよ!?」
メルフェスが言う
「殺人機械とは 失敬ですね… マシーナリーとて指令を受けていない状態であれば… こちらが敵意を示さない限り 攻撃などはしませんよ 国防軍マルック駐屯地へ押し寄せたマシーナリーも ただ、アールスローンの地を 探索にやって来ただけなのでは?」
ミックワイヤーが言う
「馬鹿なっ 国防軍マルック駐屯地では 多くの兵士が死傷しましたっ その彼らが 無駄死にだったとでも仰るのかっ!?」
メルフェスが言う
「帝国は 戦っているのですよ… 今も尚 アールスローンの 為に…」
ミックワイヤーが呆気に取られる メルフェスが言う
「だから彼らは 力を欲し 力を探す… アールスローンの力は 何処に眠らされているのか… ペジテの姫が得た力は 今は何所で眠っているのか…?…それを手土産にすれば 帝国は 喜んで和平を結んでくれるでしょう」
ミックワイヤーが視線を強めて言う
「とても信じられん…」
メルフェスが力なく笑う
「ックックック…」
ミックワイヤーが表情を困らせる 警官1が言う
「ミックワイヤー長官 カルメス囚人は 精神疾患を抱えていますので」
ミックワイヤーが警官1を見て言う
「そうか… 分かった もう良い」
警官1が言う
「はっ」
警官1がメルフェスを連れて言う
「よし、カルメス囚人 部屋へ戻れ」
メルフェスが微笑して言う
「お前たちは あの攻長に騙されているのだ… 奴は攻撃の兵士ではない… 奴は… アールスローン戦記の悪魔の兵士は レギストにっ!」
警官1が相手にしないで言う
「分かった分かった カルメス囚人 部屋へ戻って アールスローン戦記でも 読んでいなさい」
メルフェスが部屋を出て行く ミックワイヤーが見送った後席を立つ
【 国防軍総司令部 総司令官室 】
アースが言う
「そうですか カルメス元長官も…」
ミックワイヤーが疑問して言う
「カルメス元長官 ”も” とは?」
アースが言う
「カルメス元長官より以前… まだ私の父が 国防軍総司令官であった頃の 対する政府の長官 アミレス長官が」
ミックワイヤーが言う
「あぁ… そうでしたね アミレス長官も 精神疾患が原因で 長官の任を抹消されましたね」
アースが言う
「実は ミックワイヤー長官」
ミックワイヤーが顔を上げて言う
「はい?」
アースが言う
「公式にはしていませんが 私の父である ヴォール・アーケスト・ハブロスが 国防軍総司令官の任を抹消されたのも 同じ事が原因なのです」
ミックワイヤーが驚いて言う
「同じ事…!?そう だったのですか…?」
アースが言う
「そして、ずっと気になっていた事なのですが …それら 精神疾患を伴い 任を抹消された3名は皆 一度帝国へ向かい 戻ってから 何らかの事件を起こした者たちなのです」
ミックワイヤーが呆気に取られて言う
「それはっ 本当ですかっ!?」
アースが言う
「ただの偶然であると 言ってしまえば それまでの話ですが その彼らの起こした事件が 皆 アールスローン戦記の原本に関わる事で」
ミックワイヤーが言う
「…では カルメス元長官が言っていた様に 帝国は アールスローン戦記に記された 攻撃の兵士と守りの兵士を アールスローンの力として 求めていると?」
アースが言う
「断言は出来かねますが… それから こちらは憶測ですが ラミリツ・エーメレス・攻長閣下の… 彼の兄である メイリス元長官もカルメス元長官と共に 以前の内から 帝国と関わりがあったのでは無いかとも?」
ミックワイヤーが言う
「政府の外交は 帝国の相手が主なものと言って 過言ではありません そして、帝国には 我々アールスローン政府が そうしなければならないだけの力がある その帝国を相手にしてきた彼らが 皆…」
アースが言う
「メイリス元長官から 直接 話を聞けたら良いのですが」
ミックワイヤーが言う
「メイリス元長官は 今も ハブロス総司令官のお屋敷に?暴行を受けた後遺症で 意識が戻られないと伺っていますが」
アースが言う
「彼は 一足先に メイリス家の屋敷へ移され 今も治療を続けているそうです …そして、先日まで居られました 攻長閣下も 私どもの祖父の葬儀の後 メイリス家の屋敷へと戻られました」
ミックワイヤーが言う
「そうですか…」
【 メイリス家 シェイムの部屋 】
ベッドの上にシェイムが眠っている 点滴や医療機材が周囲に置かれている ラミリツが遠くからそれを見て 表情を落として言う
「ただいま戻りました 兄上…」
ラミリツがゆっくりシェイムの横まで来て シェイムの顔を見てから視線をそらして言う
「なんだ… 僕も同じ事やってるや?…エルムの事 笑えなかったね?」
ラミリツが苦笑しM82を取り出し両手で持って見ながら言う
「てっきり これからは 拳銃の訓練でもやるんだと思ってた… なのに」
M82に涙が落ちる ラミリツがM82を握り締めて言う
「なんで… なんで死んじゃうんだよ…っ アイツら助けて 無事に戻ったって聞いたから 安心してたのに…っ ラゼル様が これからも ずっと僕を守る様にって 命令してたのに… なんで… 一番重要な命令 無視するなよっ」
ラミリツが泣いた後 涙を拭い気を落ち着かせてから シェイムを見て息を吐く
【 マスターの店 】
店の来客鈴が鳴る マスターが顔を向けて言う
「いらっしゃいま… よう、ハイケル」
ハイケルが言う
「…ああ」
マスターがコーヒーを淹れながら言う
「なんだか色々あったが とりあえず 無事に戻ったか」
ハイケルがカウンター席に座って言う
「そうだな」
マスターが苦笑しコーヒーを出す マスターが言う
「それで?」
ハイケルがコーヒーを持って言う
「1週間の任務及び訓練の禁止だ」
マスターが軽く笑って言う
「最初に言う事がそれかよ?」
ハイケルがコーヒーを飲んで言う
「悪かったな」
マスターが自分の分のコーヒーを淹れながら言う
「相変わらず レーベット大佐の真似か?」
ハイケルが言う
「レーベット大佐の真似ではなかった」
マスターがコーヒーを飲もうとして疑問してハイケルを見る ハイケルが言う
「そのレーベット大佐は エルム少佐の真似をしていたんだ」
マスターが呆気に取られる ハイケルが言う
「だからずっと違和感があった 大佐のお言葉にしては 品が無過ぎる …以上だ」
ハイケルがコーヒーを飲む マスターが苦笑して言う
「なるほどな?元を聞いたから 分かったって事か」
マスターがコーヒーを飲む ハイケルが言う
「…で、ここへ来たのは」
マスターが苦笑して言う
「ああ、用意しておいたぜ」
マスターが言って棚の奥からディスクを取り出して言う
「俺が苦労に苦労を重ねて作り上げた お前の マスタートップシークレット~!」
ハイケルが言う
「個人能力データと言え」
マスターが苦笑して言う
「コイツを元に 今度はお前専用の銃を作るのか 凄いよなぁ フルオーダーメイドって奴だ」
ハイケルが言う
「そうではあるが 俺にはエルム少佐のような 超人的な筋力がある訳ではない 俺のデータを元に作りはするが 誰もが使いこなせる銃になるだろう」
マスターが気付いて言う
「ん?うん… そうなんだよなぁ?」
マスターが考える ハイケルが言う
「どうした?」
マスターが言う
「あ… いや、別に」
ハイケルが疑問する マスターがディスクをハイケルへ渡す ハイケルが受け取って言う
「礼を言う」
マスターが微笑して言う
「いやぁ とっくに国防軍レギスト駐屯地情報部を引退した俺が アールスローンを守るレギスト様のお役に立てるとは 光栄だね!」
ハイケルが言う
「情報部に戻ってくれば もっと役に立つんだ」
マスターが苦笑して言う
「っはは 相変わらず 嬉しいね?…考えて置くよ」
ハイケルがマスターを見る マスターが言う
「で?そいつを ロンドス殿の孫 お前専属の銃技師である ザキル殿の所へ 届けなきゃならないんだろ?」
ハイケルが言う
「あ、ああ… …そうだな」
ハイケルが立ち上がる マスターが微笑して言う
「1週間も禁止を食らったんなら また今度は ゆっくりしに来いよな?」
ハイケルが出入り口へ向かっていた足を止めて言う
「対帝国への作戦を考慮する為に 寄らせてもらう」
マスターが言う
「ああ …情報を集めて置く」
ハイケルが横目にマスターを見てから微笑し 店を出て行く
【 国防軍レギスト駐屯地 訓練所 】
軍曹が言う
「よぉおーしっ!では総員!次は 各自のメインアーム訓練所にて 能力の向上に励むのだっ!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!了解っ!」
隊員たちが各々走って向かう 軍曹が隊員Xへ向いて言う
「では 自分らも 早速っ」
隊員Xが笑んで言う
「はっ!90キロの重石を背負って 駐屯地周回を開始するでありますっ!」
隊員Xが90キロの重石を背負う 軍曹が言う
「おおっ!遂に90キロへ到達したかっ!心強いぞ ゼクス隊員っ!」
隊員Xが言う
「はっ!自分も軍曹と同じ盾を持てるよう 全力で励むでありますっ!」
軍曹が喜んで言う
「よぉおしっ!では 自分も 負けては居られないのであるっ!」
軍曹が100キロの重石を背負う 隊員Xが衝撃を受けて言う
「おおっ!?流石軍曹っ!遂に100キロへ到達をっ!」
軍曹が言う
「うむ!では 参るぞっ!ゼクス隊員!自分に続けーっ!」
隊員Xが言う
「はっ!軍曹に続きますっ!」
軍曹が走り出そうとした瞬間 軍曹の携帯が鳴る 軍曹が衝撃を受け携帯を取り出しながら言う
「むっ!?折角 気合を入れたと言う所に…」
軍曹がディスプレイを見て呆気に取られる
【 国防軍レギスト駐屯地 応接室 】
窓の外で隊員Xが1人で走っている 軍曹がそれを見てから振り返って言う
「突然 国防軍レギスト駐屯地へやって来るとは 一体何用であるのか?兄貴」
アースがソファに座っていて アールスローン戦記の原本 マイクロチップの入ったケースを テーブルに置いて言う
「ここへ来たのは こちらを調べる為だった… 訳だが」
軍曹が疑問し アースの向かいの席に座って言う
「これは… 一体何であるか?」
軍曹がマイクロチップを見て頭を捻っている アースが言う
「知らないのか?」
軍曹がアースを見て言う
「当然なのだ 俺は 機械工学やその辺りの事は さっぱりなのだ」
アースが自身の頭を軽く示して言う
「お前の頭の中に入っている物だぞ」
軍曹が疑問して言う
「はぇ?」
アースが言う
「これが アールスローン戦記の原本だ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「こ、これがっ!?」
アースが言う
「これを脳核の一部へ入れる事により その者は このマイクロチップに記録されているデータを 読み取る事が可能となるだそうだ」
軍曹が呆気に取られる アースが言う
「ただ、その読み取り方は 組み込まれた者によって それぞれ異なるらしい ある者は目を閉じるだけでその内容を読み取る事が出来 また、ある者は歌を歌おうとすると おのずとその内容を 歌い上げる事もあったとか」
軍曹が呆気に取られる アースが言う
「お前は単純だから アールスローン戦記の原”本”と聞き 素直に白い本へ 映し出す方法となったのか?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「な!?何故その事を 兄貴が…っ!?」
アースが苦笑して言う
「広い屋敷とは言え 毎夜呻きながら同じ事をやっていれば 私の目にも入る」
軍曹が苦笑し頭を掻いて言う
「う… うむ… いつもイヤホンを付けている為 兄貴に見られていたとは 気付かなかったのだ…」
アースが苦笑して言う
「そうだろうな 私がすぐ後ろに居ても 気付かないのだからな?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「す、すぐ後ろまでっ!?…で、では 兄貴も一緒に 原本を読んでいたのであるか?」
アースが言う
「…いや、残念ながら 私の目には ただの白い本に 白いページにしか見えない 原本を読み取っているのは お前だけなのだろう」
軍曹が呆気に取られる アースが言う
「そこで私も 祖父上から頂いた この原本を私自身に… と、考えたのだが 残念ながら これを埋め込む事が出来るのは 人体の脳の形成がなされる以前 つまり 産まれる前でなければ不可能との事だった …それで分かった この原本を”与えられる”のでは無く”託される”者が ハブロス家の当主になると言う それがどう言う意味なのかを な…?」
軍曹が悩んで言う
「う…うむ…?」
アースが言う
「とは言え 帝国との戦いはもう始まっている そうとなれば 今、このアールスローン戦記の原本に眠る アールスローンの力の在り処を 読み解く事が出来るのは アーヴィン… お前しか居ないんだ」
軍曹がアースを見る アースが言う
「アーヴィン!どうか私に教えてくれ アールスローンの力 悪魔の兵士が眠る その場所をっ!」
軍曹が衝撃を受けてから 困って視線を逸らして言う
「え!?あ、いや その… そちらの… 悪魔の 兵士は…」
アースが言う
「国防軍レギスト機動部隊は …いや、この国防軍レギスト駐屯地は その悪魔の兵士と共に戦う為に 存在していると言っても過言では無いっ お前も知っているだろう?あのエルム少佐だ 彼は 我々の先代における悪魔の兵士であり レギスト機動部隊隊長にして この国防軍レギスト駐屯地の全ての力を使い 帝国と戦い アールスローンを守った!」
軍曹が俯いて言う
「…そうなのだ だから 兄貴っ!やはり レギスト機動部隊の隊長はっ」
アースが言う
「レギスト機動部隊の隊長はっ 悪魔の兵士にしか賄えないっ!そうとなればっ」
軍曹が目を瞑り悔やみながら言う
「そうなのだっ!だから やはりっ!」
アースが気合を入れて言う
「今こそっ!お前の持つ アールスローン戦記の原本からっ 現代の悪魔の兵士が眠る その場所を読み解くのだっ!アーヴィンっ!」
軍曹が思わず言い掛けてから 衝撃を受けて言う
「はっ!了解…っ!…って?はえ!?」
軍曹が音楽イヤホンを付け 白い本をテーブルに置く アースが言う
「私が祖父上から伺った話では 自身が調べたいと想う項目を 強く意識に留め 原本を読もうとすれば 読まれるのだとか?」
軍曹が表情を困らせて言う
「う… うむ…」
アースが身を静めて言う
「分かったら教えてくれ お前がその場所を見付け出すまで 私はここに居る」
軍曹がアースを見て言う
「で、では …兄貴も一緒に読んではくれぬか?」
アースが疑問する 軍曹が表情を困らせて言う
「俺は元々 文章を読み解くのは 得意ではないのだ… おまけに 原本の言葉は 何とも堅いものが多く…」
アースが表情を落として言う
「そうだな… 私も原本の内容を目にする事が 出来るのであれば… それこそ 昔の様に お前へ読んで聞かせてやる事も出来るのだがな?」
軍曹が苦笑した後言う
「そう言えば 昔は良く兄貴に …うん?いや?しかし?マスターや少佐は 自分と一緒に?…あっ もしやっ!」
軍曹が音楽イヤホンを外して言う
「兄貴も自分と一緒に!音楽を聞いていれば 見えるのやもしれん!以前 ラミリツ攻長を助けに向かった時も この様にして 誘拐犯の者へ音を聞かせたのだ」
アースが呆気に取られる 軍曹が音楽プレイヤーと音楽イヤホンをテーブルへ置き 再生を押す デスメタルミュージックが音漏れして聞える アースが衝撃を受け表情を顰めて言う
「アーヴィン… ハブロス家の者として そう言う音楽は聴かない様にと…」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「い、今はっ その事に対しては 目を瞑って欲しいのであるっ …と言う事でっ!」
軍曹が急いで白い本を手に取りページを開いて意識を集中させる 白いページに文字が浮かび上がってくる アースが驚いて言う
「み、見えるっ 私の目にもっ!?」
軍曹が微笑して顔を上げると アースの姿が無くなっている 軍曹が呆気に取られ疑問すると アースが軍曹の隣に座り本を覗き込んで言う
「これが ハブロス家の家宝っ アールスローン戦記の原本か 素晴らしい!」
アースが嬉しそうに原本のページをめくる 軍曹が微笑する
【 ロンドスの工房 】
PCモニターにデータが表示されている ザキルが考えながら言う
「う~ん…」
ハイケルがザキルを見てから他方を見る ハイケルの視線の先 ロンドスがMT77を分解している ハイケルが言う
「その銃は 貴方が作った物ではなかったそうだな?」
ロンドスが笑って言う
「フォッフォッフォ… 流石は少佐です すぐに気付かれてしまいました」
ハイケルが言う
「奴は貴方が作った銃を使い 長年戦ってきたのだろう そうとなれば 同じ者に作られる銃の持つ癖には すぐに気付く」
ロンドスが微笑して言う
「いえ 少佐はこの銃を撃つ以前に 気付かれていたのです」
ハイケルが疑問して言う
「どう言う意味だ?」
ロンドスが作業を続けながら言う
「恐らく 少佐はこの銃を手に取った時点で気付き それで私に訊いたのです 銃の出来を… 普段の少佐でしたら 私へその様な質問はなさいません 少佐は銃の出来ではなく ザキルがハイケル少佐の銃技師として どうかと言う事を 私に訊いていたのです」
ハイケルが言う
「…それで 貴方は何と答えたんだ?」
ロンドスが苦笑して言う
「しっかりとデータを取り それなりの破壊力を持つ銃を作られると 私が自信を持って ハイケル少佐へ紹介出来ると お答えしました その最終確認として ザキルの作ったMT77を 少佐ご本人が試して下さいました …その 少佐からのお答えは」
ハイケルが言う
「”詰めが甘い” と」
ロンドスが笑って言う
「フォッフォッフォ …流石は少佐です はっきりと仰って下さいました」
ハイケルが視線を逸らして言う
「だが、それで良いと …私には合う とは どう言う意味だ?」
ロンドスが言う
「少佐はデコイを使い 銃を撃つ事が出来ました しかし、ハイケル少佐には それは出来ません」
ハイケルが言う
「だから 身を壊す程の銃を作らない その甘さが良いと言う事か?」
ロンドスがMT77の解体を終えて言う
「そうかもしれません 少佐ご本人では無い私には 真意は分かりかねますが…」
ハイケルが不満そうに言う
「何故 そう言う重要な所を いつも中途半端に言うんだっ 奴は!?…余計な事はハッキリと言っておきながら」
ロンドスが苦笑して言う
「少佐は感情を制限されているせいで 伝えたくとも伝えられない 事があるのですよ」
ハイケルが言う
「感情を制限?」
ロンドスがMT77を箱へ入れながら言う
「戦いを行う兵士として 情は戦力の喪失を招きます 怒りも悲しみも憎しみも然り 冷静な判断力を失うそれらの情は 強くならない事が好ましい …という考えの下 作られたのがエルム少佐の個体だそうです 戦いの兵士としては相応しいですが 人としては 寂しいものです」
ハイケルが呆気に取られて言う
「作られた…?」
ザキルが頭を抱えて言う
「う~っ 爺ちゃんっ やっぱ このデータじゃ どれも無理だよ!エルム少佐のデータとは 何もかも違っててー!」
ロンドスが微笑して言う
「フォッフォッフォ そうじゃ ハイケル少佐は感情も力も通常の人と何も変わらん エルム少佐とは違うのじゃ」
ハイケルが表情を顰めて言う
「当然だ そもそも 私は悪魔の兵士ではなく 通常の兵士だ 奴と同じに考える事自体 間違っていると気付け」
【 国防軍レギスト駐屯地 応接室 】
軍曹が睡魔に襲われ眠りそうになる 軍曹の頬がつねられ 軍曹が痛がって目を覚まして言う
「いだだだだっ!い、痛いのだっ 兄貴」
軍曹が隣のアースを見る アースが白い本を見ながら言う
「寝るんじゃないっ これで何度目だと…」
軍曹が表情を困らせて言う
「うぅ~… そうは言っても 俺はどうしても… そもそも 悪魔の兵士は 少佐で 眠ってなど…」
アースがハッとして言う
「あったぞっ!アーヴィンっ!」
軍曹が驚いて言う
「えぇえっ!?」
アースが言う
「そうか、国防軍の駐屯地は そう言う事で 妙な偏りが…」
軍曹が慌てて言う
「あ、あったとはっ!?一体 何があったと言うのだっ!?兄貴っ!?」
アースが言う
「寝ぼけているのか アーヴィンっ!?今 我々が探しているのは 我々の世代が必要とする 悪魔の兵士が眠る その場所だっ」
軍曹が驚いて言う
「そ、それが… あったと…?」
アースが言う
「個人的にはもっと読んでいたい所だが 今は急がねばならない アーヴィン レギストを動かすぞ!」
軍曹が言う
「ま、待ってくれ 兄貴 今のレギスト機動部隊は先日の戦いのせいで」
アースが言う
「分かっている 隊長のハイケル少佐を始め 副長であるお前も負傷している だが今回は 戦いをメインとする作戦ではない 我々の仲間 レギストの真の隊長となる 悪魔の兵士を!…お前を守る 攻撃の兵士を迎えに行く作戦だ 後のレギストの隊長となるからには 現レギストのお前たちが迎えに行くのが 筋というものだろう?」
軍曹が視線を落として言う
「レギストの 真の隊長…」
アースが苦笑して言う
「何も ハイケル少佐を除名すると言っている訳ではない 必要とあれば 一時的に隊長の座を 悪魔の兵士へ預け 副長となるか 隊員となるか レギストが帝国との戦いを行う以上 お前もそろそろ 機動部隊を離れる事も考えるべきだろう?」
軍曹が慌てて言う
「自分はっ 皆と共に戦うのだっ!重要な戦いであるのなら 尚更なのだっ」
アースが苦笑して言う
「そうか… とは言え 今は悪魔の兵士を目覚めさせる時だ アーヴィン 国防軍レギスト機動部隊 出動だ!」
軍曹が言う
「りょ… 了解…」
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツがタオルを首に掛けシャワーを浴びた様子で来て言う
「やっぱ 走るのだけは苦手だなぁ エルムが居た時は 無理やり走らされて 何とかなってたけど 1人だと無理みたい」
ラミリツが気付き視線を向け苦笑して向かいながら言う
「エルムが悪いんだからね?僕を置いて ラゼル様の所へ行っちゃうんだもん 愛用の銃だけ渡して 自分の身は自分で守れ とか言うつもりだったんでしょ?ふふ…っ」
ラミリツがM82に触れ表情を悲しませ 首にかけていたタオルで溢れる前の涙をふき取って言う
「あぁ… もう泣かないって決めたんだ 僕は政府の剣 攻長だもんね 政府の代表として… 国防軍と共同する為 レギストと一緒に戦わなきゃいけない だけど… 今のままじゃ カッコ悪くてあいつ等の所へなんて行けないし …でもさ?あいつには沢山仲間が居るのに こっちは1人だなんて不公平だよ …ねぇ エルム やっぱ蘇って来て 僕と一緒に戦ってよ?…ねぇ?良いでしょ?」
ラミリツが苦笑してM82を弄ぶ 受信機が起動して アナウンスが聞える
『緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ 繰り返す 緊急指令 緊急指令 国防軍17部隊 直ちに 戦闘装備を行い 車両収納所へ集合せよ』
ラミリツが反応して受信機を見て言う
「17部隊… レギストの召集だっ まさか またマシーナリーの襲撃っ!?」
ラミリツが携帯を操作して着信を確認して言う
「ミックワイヤー長官っ!また 何処かに 帝国からの襲撃がっ!?」
携帯からミックワイヤーの声が聞える
『え?…いえっ こちらでは 確認されていません!』
ラミリツが呆気に取られて言う
「…え?それじゃ 別の事件って事…?」
ラミリツが間を置いてから苦笑して言う
「し、失礼… どうやら 別の事件だったみたい 帝国が関係しないのなら 立ち入らない事にしているから」
ラミリツが携帯を切ろうとする ミックワイヤーが慌てて言う
『あ、しかし 攻長閣下っ』
ラミリツが疑問し 携帯を耳に当て直して言う
「ん?何?」
ミックワイヤーが言う
『帝国に関係する事として 一つお伺いしたい事がありまして… 今 こちらのお電話をお借りしても 宜しいでしょうか?』
ラミリツが言う
「うん、良いけど?」
【 レギスト車内 】
隊員Bが言う
「えー?それじゃ 何で武装招集なのでありますかー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「一応の備えだ ともすれば 悪魔の兵士は あのエルム少佐の様な奴である事も 予想される」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが言う
「そうとなれば 目覚めと同時に 大量のデコイを引き連れ MT90でも放つ… かも しれないだろう?」
軍曹が苦笑して言う
「しょ、少佐 流石にそれは有りませんかと… それに、先ほど兄貴が読み解いた所によりますと 悪魔の兵士は2世代居て 両者の性格は異なると 書かれていたそうであります」
ハイケルが言う
「そうなのか?」
隊員Bが隊員Aへ向いて言う
「アッちゃん アッちゃん それじゃ 俺たちの世代の悪魔の兵士って どんな奴かな?」
隊員Aが笑んで言う
「そうだなぁ どんな奴でも良いけど エルム少佐より人らしい奴だと良いなって 俺は思うよ」
隊員Bが言う
「人らしい奴ってー?」
ハイケルが隊員Aを見る 隊員Aが隊員Bへ向いて言う
「だってさ、あのMT77だって 俺とバイちゃんと少佐の3人で やっとだっただろ?あんな凄い銃を1人で撃てちゃうエルム少佐は… 確かに心強くはあったけど 同じ部隊の仲間としては ちょっと遠い存在で 正直 一緒には戦えないなって 俺は感じたんだ」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Bが言う
「そう言えばそうだねー エルム少佐が隊長だったら 俺も一緒に戦ってるって感じはしないと思うー ずっと前の 俺たちと少佐の関係みたいでー?そうそう!ホント遠過ぎるって感じだよねー」
隊員Aが言う
「だろ?だから俺は 一緒に戦うんだったら やっぱりこの前みたいに 力を合わせて戦える隊長の方が 俺は好きだよ」
隊員Bが呆気に取られて言う
「アッちゃん それって…」
隊員Aが疑問して言う
「ん?」
隊員Bが笑んで言う
「少佐へのプロポーズーッ!?」
隊員たちが噴き出す 軍曹が慌てて言う
「バ、バイスン隊員っ!」
隊員Aが赤くなって慌てて言う
「なっ 何言ってるんだよっ!?バイちゃんっ!」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ」
ハイケルが言う
「軍曹」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「は、はっ!少佐ぁっ!」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「プロポーズとは 何だ?」
全員が衝撃を受けて言う
「「「えっ!?」」」
【 メイリス家 通路 】
ラミリツが通路を歩きながら携帯に言う
「兄は帝国へは行って無いんだ でも、終戦当時なら 外交を取り仕切っていた カルメス殿と一緒に 父が行ったよ」
携帯からミックワイヤーの声が聞える
『攻長閣下のお父様が?』
ラミリツが言う
「うん… それで… 結果として そのお陰で 次の長官に兄が 攻長に僕が就任する事になった けど…」
ラミリツが部屋の前に辿り着き ドアを見て溜息を付いて言う
「今思えば 全部そのせいだよね…」
携帯からミックワイヤーの声が聞える
『は?…それは』
ラミリツが気を切り替えて言う
「いや、何でも無い とにかく 兄は行ってないから もし話が聞けたとしても 帝国の情報は…」
ラミリツがドアを開き 驚いて呆気に取られる 携帯からミックワイヤーの声がする
『そうですか… では帝国の情報は』
ラミリツが叫ぶ
「兄上っ!?」
ラミリツが携帯を落とし走って行く 携帯からミックワイヤーの声がする
『ん?どうしました?攻長閣下?…攻長閣下!?メイリス元長官が どうかなされたのですか!?』
【 政府警察本部 】
ミックワイヤーが携帯に必死に呼びかける
「攻長閣下っ!?攻長閣下っ!」
警官1が言う
「長官?」
ミックワイヤーが警官1へ向いて言う
「何かあったらしい… メイリス邸の警備は今 何処の警備部隊が行っている?」
警官1が言う
「メイリス邸の警備は ラファム地区の警備小隊が受け持っている筈です すぐに連絡を取ります!」
ミックワイヤーが頷いて言う
「うむ、頼む …大事で なければ良いのだが」
警官1が無線機に呼びかける
「ラファム地区 警備小隊 応答を こちら 政府警察本部」
無線機から声が聞える
『こちら ラファム地区警備小隊』
警官1が無線機に言う
「そちらで警備を行っている メイリス邸に 何か異常は無いか?」
無線機から声が聞える
『こちらで警備を行っている メイリス邸外部に 異常はありません!』
警官1がミックワイヤーへ向いて言う
「長官 メイリス邸外部に 異常は無い との事ですが」
ミックワイヤーが言う
「では 直ちに屋敷内へ声を掛け 攻長閣下の様子を伺えと 伝えてくれ 失礼かもしれないが 何かがあった事は 間違いない」
警官1が頷いて言う
「分かりました」
警官1が無線機へ伝えている ミックワイヤーが携帯を見る 警官2が顔を出して言う
「ミックワイヤー長官 宜しいでしょうか?」
ミックワイヤーが振り向いて言う
「うん?…ああ、どうした?」
ミックワイヤーが警官2の下へ行く 警官2がPCモニターを示して言う
「3時間前に 政府警察本部のデータへ アクセスされた記録なのですが」
ミックワイヤーが言う
「多いな… 3時間前と言うと 丁度データ処理の担当が変わる時間か アクセスログが多くなるのは致し方ない」
警官2が言う
「はい ただ、それにしては ログのダブリが多いので 気になって確認をしたのですが その中に」
ミックワイヤーが言う
「うん?」
警官1が言う
「長官!メイリス邸で 事件発生です!」
ミックワイヤーが驚いて言う
「何っ!?どうした!?攻長閣下はご無事かっ!?」
警官1が言う
「攻長閣下はご無事です!しかし メイリス邸で御静養されていた メイリス元長官がっ!」
ミックワイヤーが言う
「メイリス元長官がどうしたっ!?」
警官1が言う
「行方不明になられましたっ!」
ミックワイヤーが驚いて言う
「何だとっ!?」
警官2が言う
「長官っ!先ほどのアクセスログの中に そのメイリス元長官の IDがあったのです!」
ミックワイヤーが驚いて警官2を見る 警官2が言う
「もしやっ メイリス元長官の失踪に 何か関係がっ!?」
ミックワイヤーが携帯を操作して言う
「攻長閣下へ お知らせするっ」
ミックワイヤーが携帯の呼び出しを聞きながら言う
「どうか出て下さいっ 攻長閣下…っ!」
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツが机を叩いて言う
「何でっ!?まさか またっ!?今度は誰が兄上を…っ!?」
ラミリツが俯き 表情を悲しませている 携帯が鳴る ラミリツが顔を上げ携帯を見てから落ち込んで言う
「何をしても… 結局 なんにもならないじゃないか…っ 祖父上も父上も兄上も… 皆 僕を置いて…っ」
ラミリツが携帯から視線をそらすと 視線の先にM82が見え 不貞腐れて言う
「エルムだってっ 僕を置いて!」
ラミリツがM82を掴んで 床へ叩き付けようとすると ラミリツが思い出す
【 回想 】
ラミリツが落ち込んで言う
『…でも不思議なんだ 優しかった 祖父上が亡くなった時は凄く悲しくて それは当たり前だったけど …怖かった父上が亡くなった時も 僕はやっぱり 悲しかった… だから 不思議だと思うんだ ずっと怖くて 嫌いだって思ってたのに…』
エルムが言う
『私には 祖父や父と言う者は無いが 私は 自分の部隊の隊員も 別の部隊の隊員も 同様に守った』
ラミリツが疑問して言う
『別の部隊の隊員まで 自分の部隊の隊員と 同様に?…何で?自分の部隊の隊員の方が 大切でしょ?普通』
エルムが言う
『私にとっては どちらも同じだ 私は 仲間を守る為に 戦っていた』
ラミリツが言う
『仲間を… …じゃぁ 僕が同じ様に悲しかったのは 結局どっちも 僕の家族だったから… かな…?』
エルムが言う
『だから お前も 戦う事を選んだ』
ラミリツが言う
『え?』
エルムが言う
『お前に残された家族を シェイム・トルゥース・メイリスを守れるのは お前だけだ』
ラミリツが呆気に取られて言う
『僕が… 兄上を?はは…っ 何だか 想像付かないよ 僕が兄上を守るだなんて』
ラミリツが苦笑する エルムが言う
『お前ならば 可能だ』
ラミリツが驚く
【 回想終了 】
ラミリツが視線を強め M82を握り締めると 携帯を着信させて言う
「ミックワイヤー長官 悪いけど 力を貸して欲しい」
【 政府警察本部 】
ミックワイヤーが言う
「こちらこそ申し訳ありませんっ!今、警備小隊の者に確認を取らせています メイリス邸への不審者の侵入や その他 全ての出入りを確認させ メイリス元長官の行方を…っ」
警官1が振り返って言う
「長官っ!確認が取られました!」
ミックワイヤーが携帯に言う
「今、確認が取られました 少々お待ち下さい」
ミックワイヤーが警官1へ向く 警官1がミックワイヤーへ伝える ミックワイヤーが驚く
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツが服を着替えている 置かれている携帯からミックワイヤーの声が聞える
『お、お待たせ致しましたっ 攻長閣下っ』
ラミリツが顔を向け 携帯を取って耳に当てる 携帯からミックワイヤーの声が聞える
『申し訳ありません… とても 申し上げ難いのですが…』
ラミリツが言う
「どうかしたの?」
ラミリツが攻長の剣を手に取る ラミリツが通話内容に呆気に取られて言う
「そんなっ!?…そんなの有り得ないよっ!?兄はずっと寝たきりだったんだ それなのにっ!?いきなり自分の足で歩くなんて事 出来る筈が無いっ」
携帯からミックワイヤーの声がする
『私もその様に思うのですが 警備の者は 間違いなく その様にと… 故に 驚きはしたものの お声を掛ける事は出来なかったと』
ラミリツが視線をそらして言う
「それじゃ…?…っ …まさかっ!?」
ラミリツが視線を泳がせる 携帯からミックワイヤーの声が聞える
『更に 申し上げ辛いのですが 先ほど 政府警察本部のデータアクセスログを確認した所 …メイリス元長官の IDが使われた形跡が見付かり そのIDがアクセスしたデータと言うのが…』
ラミリツが驚いた後 怒りを忍ばせて言う
「分かった… 彼なら やりかねない事だよ」
携帯からミックワイヤーの声が聞える
『攻長閣下…っ』
ラミリツが掴んでいた攻長の剣を手放し 視線を変え その先におかれていた物を手に取り服へしまい M82を銃フォルダーに入れ 気を引き締めて言う
「僕が行く ミックワイヤー長官 手遅れにならない為にも 急ぎの車を貸してもらいたい」
携帯からミックワイヤーの声がする
『警備小隊の緊急車両を出します!攻長閣下 どうか… 宜しくお願い致しますっ!』
ラミリツが言う
「了解 …任せてくれっ」
ラミリツが通話を切り 部屋を出て走って行く
【 政府警察本部 】
ミックワイヤーが携帯を見つめる 警官1が言う
「長官っ 警機を招集しますかっ!?」
警官1と警官2がミックワイヤーを見つめる ミックワイヤーが顔を上げて言う
「いや ここは… 攻長閣下へお任せしよう」
警官1が慌てて言う
「しかしっ!もしもの事があれば 折角築かれた 我々政府と国防軍の協力体制に 取り返しの付かない亀裂がっ」
警官2が言う
「それだけではありません!もしもの事が起きれば 政府は アールスローンを帝国へ売り渡したと言われても 間違いではないでしょう!警機を向かわせておけば 最悪 我々も手を打ったと言えます」
ミックワイヤーが言う
「我々が行うべき事は 国防軍と協力し 信頼を持って 共に戦う事だ …そして、攻長閣下であるならば きっと それをやり遂げて下さるだろう この一件は 我々政府の代表である 攻長閣下へ お任せをする!」
警官1と2が顔を見合わせてから心配げに頷く
【 国防軍レファム駐屯地 】
レギスト隊員たちがハイケルを先頭に歩いている 隊員Bが言う
「アッちゃん アッちゃん?緊急指令で出動したのに 移動に40分以上掛かるとかってー?スゲー緊張感無くなった感じしないー?」
隊員Aが苦笑して言う
「今回は緊急指令とは言え 事件や何かじゃないから サイレンを鳴らさないで 2つ分の駐屯地を移動したんだ 40分で着いたのだって早い位だろ?」
隊員Cが言う
「国防軍の駐屯地は 何処も隣り合う駐屯地までの移動時間を 通常30分で行ける様になってるんだ それを考えたら2つ分で40分は十分早いな」
隊員Aが言う
「それもやっぱり サキの兄さんからの情報か?」
隊員Cが言う
「いや、これは 国防軍入隊試験の時に」
隊員Aが思い出して言う
「ああ…っ そう言えば そんなのがあったな …え?あれ30分だったのか!?俺 間違えたし…」
隊員Aが苦笑する 隊員Cが笑う 隊員Bが考えて言う
「あれー?でも確か 俺が前に少佐から聞いた話では 通常移動時間では20分 緊急時は10分だって… ですよねー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「それは国防軍の駐屯地同士では無く 国防軍レギスト駐屯地からの話だ」
隊員Aと隊員Cが呆気に取られて言う
「「え…?」」
隊員Bが笑って言う
「あー そうでしたー!にひひっ」
隊員Aが隊員Cへ言う
「国防軍の駐屯地同士より 国防軍レギスト駐屯地からの時間の方が早いって どう言う事だ?」
隊員Cが考える ハイケルが言う
「私も聞いた話だ 実際に自分で調べた訳ではないが そうとあっても地図上で見る限りでは 頷ける話だ」
隊員Cが気付いて言う
「言われてみればば 国防軍の駐屯地って 妙にいびつだなって思ってたんだが そう言う理由なら 分かる気がする 国防軍レギスト駐屯地から 1つ分を20分で換算すれば…」
隊員Aが考える 隊員Bが疑問してから微笑して言う
「別に良いじゃん?そんなに一杯考えなくってもー 俺たちの国防軍レギスト駐屯地からは 20分が正解ーって事!」
隊員Cが苦笑して言う
「ま、そうだな?俺たちの駐屯地からなら1区間20分だ」
隊員Aが言う
「あ、それじゃ 俺正解だったかも?」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「げっ!じゃ、俺間違えた?」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
ハイケルが言う
「機動部隊の入隊筆記試験での点数は 気にする必要は無い あれはただ やっているだけだ」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが言う
「重要なのは 身体能力試験の結果と共に 情報伝達能力試験の結果 後は 面接だ 従って 機動部隊の試験から 筆記試験を外すべきだと長年言っているが 未だに受け入れられない」
軍曹が苦笑して言う
「少佐 それは… 国防軍のダブルトップシークレットの情報でありますので…」
隊員Bが言う
「あー!そう言えば 俺 入隊試験の時 寝坊して筆記試験 受けそびれたでありますー 少佐ぁー!忘れてたー」
隊員たちが驚き 隊員Cが言う
「まじでっ!?」
ハイケルが言う
「そうだったのか… 私は バイスン隊員は 筆記試験を受けず 実技のみで入隊試験に臨んだものだと思い その頃から 期待していた」
隊員Aが衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?入隊前から!?」
隊員Bが喜んで言う
「さっすが 少佐ぁー!やっぱ チョー面白れー!」
隊員Aが呆れて言う
「流石少佐… なんて無茶苦茶な…」
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 】
ハイケルを先頭に レギスト隊員がマスタートップシークレット入り口前へやって来ると 衛兵がハイケルを見て一度微笑してから 気を切り替え 敬礼して言う
「お帰りなさいませっ!ハイケル少佐っ」
ハイケルが疑問する 隊員たちが顔を見合わせる ハイケルが間を置いて言う
「…総司令官より 特別任務を受けた 国防軍レギスト機動部隊 隊長ハイケル少佐と 同じく隊員59名は 国防軍レファム駐屯地 マスタートップ シークレットへ向かう 認証を」
ハイケルがIDカードを出すと衛兵が言う
「認証は不要です ハイケル少佐」
ハイケルが疑問して言う
「何故だ?マスタートップシークレットへの接触には 例え総司令官であっても 認証が必要だ」
衛兵が言う
「国防軍のマスタートップシークレットではありましても 例えば 家主が家へ戻るのに 認証などは必要ないでしょう?」
ハイケルが言う
「どう言う意味だ?」
衛兵が軍曹を見る 軍曹が視線をそらす ハイケルが軍曹を見てから間を置いて言う
「…では 通してくれ」
衛兵が敬礼して言う
「はっ 了解!」
衛兵が道を譲る ハイケルが衛兵を横目に見てから先へ向かう 隊員たちが顔を見合わせてからハイケルに続く 衛兵が隊員たちを見送り微笑して警備に戻る
ハイケルと隊員たちが長く緩い下り坂を歩く 隊員たちが周囲を見渡し 隊員Bが言う
「この道何処まで続いてるんだろー?」
隊員Cが言う
「ずっと下り坂でかなり来たから そろそろなんじゃないか?」
隊員Fが言う
「斜角から換算して 今は大体地上から地下8メートルは行ってるから 階数で言えば 地下3階から4階へって所だな」
隊員Bが言う
「わー フッちゃん 凄いー そんな計算出来るんだぁ?」
隊員Fが言う
「ああ… 実は 俺は元々警空に入るつもりで勉強しててさ?距離とか角度とかって そう言う計算ごとは得意なんだ」
隊員Aが驚いて言う
「え!?警空にっ!?」
隊員Bが言う
「えー?なんでなんでー?」
隊員Fが苦笑して言う
「戦闘機が好きだったんだ そいつを使いこなして アールスローンを守りたいって… けど、アールスローンを守る為に戦うとなると それは 政府警察じゃなくて 国防軍だろ?でも国防軍には 空を管轄する部隊が無いもんだから… で、流れ流れて レギストに …でも、今は良かったと思ってるよ」
隊員Cが言う
「何でだよ?まだ、19部隊とかなら分からなくも無いが レギスト機動部隊じゃ 戦闘機とは無縁じゃないか?」
隊員Fが苦笑して言う
「ああ、そう言った 戦闘機とは無縁だけど この最新の銃に触れられるだろ?それも ただ最新って訳じゃない 選ばれた …俺らレギストだけが手にする事の出来る 特別な武器だっ」
隊員FがM90に触れる 隊員Aが笑んで言う
「はっはーん な~るほど~?フレッド隊員の趣味が分かって来たぞー?」
隊員Fが笑う
「あっははっ それは言うなって?」
隊員たちが笑う ハイケルが横目に見聞きしていて微笑する 軍曹がハイケルを見ていて微笑する 前方に扉が見えて来る ハイケルが視線を向ける 隊員たちが気付いて 隊員Aが言う
「お?ついに到着か?」
隊員Bが喜んで言う
「俺らの世代の 悪魔の兵士に ご対ー面ー!」
ハイケルが扉の装置を見て言う
「生態識別セキュリティだ 手の平の静脈を検出するタイプだろう 軍曹 悪魔の兵士を従える 守りの兵士の出番だ」
軍曹が苦笑しながら言う
「は… はぁ…」
軍曹がおもむろに装置の前に立ち 認証パネルに手の平を押し付ける 装置が起動しモニターに 名前が表示され 扉が開く 隊員たちが期待して扉の先を見る 軍曹が扉を押さえると ハイケルが向かい 隊員たちが続いて扉を抜けると 隊員Bが言う
「えー!?」
隊員Cが表情をゆがめて言う
「まだ… 続くのか…」
隊員たちの視線の先 同じ下り坂が続いている ハイケルが言う
「行くぞ」
ハイケルが先行する 隊員たちが言う
「了解っ!」 「少佐に続けー!」
隊員たちが笑う ハイケルと隊員たちが歩く
後方の隊員たちが歩きながら言う
「何だか同じ道を歩き続けるのって ダルイよな?」
「これなら まだ、駐屯地周回60周の方が良いぜ」
「この際 皆で訓練がてら 走っちまうってのは どうなんだろ?」
「先に何があるか分からない時は むやみやたらに突っ込まないのが原則なんだよ」
「後は あれだろ?」
「ああ…」
「あれって?」
隊員が小声で言う
「少佐は先日の任務の時 怪我してるんだ 任務も訓練も ホントは禁止なんだぜ?」
隊員が言う
「え?じゃぁ…」
隊員たちが前方のハイケルの様子を伺う ハイケルが黙って歩いている 軍曹が心配して言う
「少佐 お体は 大丈夫でありますか?」
ハイケルが言う
「問題ない」
軍曹が一度視線を落としてから言う
「少し休まれては?」
ハイケルが言う
「歩いているだけだ 休む必要は無い」
軍曹が表情を困らせて言う
「しかし… 自分も経験がありますが あばらにヒビが入った状態では 3日経っても歩く事さえ苦しい事で …それに、ここは 緩やかとは言え 下り坂でありますし」
ハイケルが言う
「…そうだな」
軍曹が言う
「では」
ハイケルが言う
「だが 気になるんだ」
軍曹が疑問して言う
「は?気になる… とは?」
ハイケルが言う
「あの衛兵の言葉だ」
軍曹が言う
「衛兵の…?」
ハイケルが言う
「私は この場所は勿論 国防軍レファム駐屯地自体 来たのは初めてだ …だと言うのに」
隊員Bが言う
「あれー?そうなのでありますがー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「ああ」
隊員Aが言う
「けど、あの衛兵 間違いなく 少佐に」
隊員Cが言う
「ああ、俺も気になってた 例え しょっちゅう来てる場合でも 別の駐屯地に所属する …それも 部隊長に対しての挨拶なら どう考えても お疲れ様 だよな?普通」
ハイケルが言う
「この場所が マスタートップシークレットである以上 その警備に就く者が 間違えであの様な事を言う筈も無い …そして、この道 私は …知っているような気がする」
隊員たちが疑問し顔を見合わせてから 隊員Aが苦笑して言う
「それじゃ やっぱり?」
ハイケルが言う
「私の記憶は 一度見たものを 忘れる事は決して無い だが、その時点での 私の意識があったかどうかの問題は あるが…」
隊員たちが呆気に取られて顔を見合す 隊員Fが言う
「それじゃ 知っている様な気がするだけの デジャヴュとか…?」
隊員Bが言う
「デジャヴュって?」
隊員Aが言う
「一度も経験した事が無いのに いつかどこかで経験した事があるような そんな感じがする事だよ」
隊員Cが言う
「既視感とも言うな 何だか見た事があるって感じだ」
隊員Bが言う
「へぇ~皆良く知ってるねー で、そんな感じー でありますかー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「デジャヴュは記憶能力の一時的なバグだ 様々な見解があるが 私は記憶に残っている物事の 前後を間違える事も無い だが この道を通った その前後の記憶が 思い出せない」
隊員Bが言う
「”この道を通った その前後の”?」
隊員Aが言う
「それじゃ やっぱり以前に この道を通ったんじゃ」
ハイケルが気付いて言う
「そう…だな…?そうだ 通った事がある なのに何故 こんなに記憶が曖昧なんだ…?私が国防軍に入隊してからの事で 曖昧な記憶などは 1つも無いのだが」
軍曹がハイケルの話を聞いていて心苦しい表情を見せる 隊員Fが言う
「あ、でも ここを抜ければ ハッキリするかもしれませんよ?少佐?」
ハイケルが顔を上げる 隊員たちの前に扉がある 隊員Aが言う
「今度こそ!」
隊員Bが言う
「ご対ー面ー!」
ハイケルが言う
「軍曹」
軍曹が言う
「りょ、了解…」
軍曹がセキュリティ処理をする 隊員Aと隊員Bが表情を明るめる 軍曹が意を決しドアを開ける ハイケルが踏み込むと 隊員Aと隊員Bが飛び込んで 隊員Aが言う
「よーし!っとー…」
隊員Bが言う
「えー…」
隊員Cと隊員Fが続き 隊員Cが言う
「ま、まじか…」
隊員たちの前に広い円形の場所がある 隊員Aが表情を落とす 隊員Bが首を傾げる 隊員Fが気付いて言う
「あ、でもほら次の扉は すぐそこだぜ?」
隊員A、B,Cが気付き喜んで駆け寄り言う
「次こそっ!」
「ご対ー面ーっ!」
「どんな奴でも!来いっ!」
ハイケルが扉へ向かい視線を強めてから 軍曹へ振り返る 軍曹がハイケルの視線に顔を向けた後 セキュリティ端末の下へ向かう 隊員Aが隊員Cへ笑んで言う
「んな事言って エルム少佐並みの 悪魔の兵士が現れたら どうするんだよ?サキ?」
隊員Cが衝撃を受ける 隊員Bが笑んで言う
「にひひっ まずは サッちゃんで 新しい銃の試し撃ちをどうぞー」
隊員Cが怒って言う
「それは どう言う意味だよっ!?バイスン隊員っ 後、好い加減 サッちゃんやめろってのっ!」
隊員Bが言う
「だって 悪魔の兵士だよー?こんな所に閉じ込められてたら ストレス一杯だろうから せめて持参したM90でも どっかーん!て撃って すっきりさせてあげないとー」
隊員Cが怒って言う
「その標的に 俺かよっ!?」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
隊員Aが笑う 軍曹がセンサーの前で立ち止まっている ハイケルが隊員たちを見ていた状態から軍曹へ向き直って言う
「どうした 軍曹」
軍曹が反応し慌てて言う
「あっ いえっ その…っ」
ハイケルが言う
「隊員たちも楽しみにしている この先に 悪魔の兵士が居るというのなら 私も気になる 早く開けてくれ」
軍曹が意を決してから言う
「はっ!自分は…っ!…少佐がそうと仰るのでしたら ここを開けますっ …しかし、どうか その前に1つ 伺わせて下さい 少佐っ」
ハイケルが言う
「何だ 軍曹」
隊員たちが軍曹を見る 軍曹が言う
「少佐は… 以前 エルム少佐の事が 羨ましいと仰いましたが… そのお気持ちは 今もお変わりは無いので ありましょうかっ?」
隊員たちが驚き顔を見合わせる ハイケルが言う
「そうだな 変わりは無い 当然だろう?エルム少佐の強さは ここに居る多くのレギスト隊員たちも目にしている」
隊員Aが隊員Bへ言う
「エルム少佐は 確かに凄いけど… まさか 少佐が羨ましいと思ってただなんて 意外だったな?」
隊員Bが言う
「だよねー!少佐は今でも十分強いのに!」
ハイケルが隊員Bへ向いて言う
「私の力は 常人並みだ 悪魔の兵士であった エルム少佐とは まったく異なる」
隊員Bが呆気に取られる 隊員Aが苦笑して言う
「少佐が常人だったら 俺らどうなるんだ?」
ハイケルが言う
「技術が足りていないだけだ 知識の追加と 訓練によって いくらでも追い付くだろう」
隊員Bが喜んで言う
「はーっ!少佐ぁー!俺は少佐を目指して 頑張るでありますーっ!」
隊員Aが苦笑して言う
「俺も頑張るけど 少佐に追い付くのは 厳しいって バイちゃん」
隊員Bが言う
「えー?」
ハイケルが微笑してから軍曹へ向いて言う
「これで良いか?軍曹」
軍曹が正面を向き直って言う
「はっ!有難う御座います 少佐っ!自分は… やはり 何処までも 少佐に付いて行く所存でありますっ!」
軍曹が識別パネルに手の平を突き付ける 扉のロックが解除される ハイケルが扉を見る 軍曹が向かい扉を開ける ハイケルが向かう 隊員A、B、Cに続きFが駆け込み 隊員Bが言う
「今度こそ ご対ー面ー ん?あれー?少佐ぁ?」
隊員Bが正面奥に居るハイケルβに疑問し その横を見て驚き その逆を見て更に驚いて言う
「え?え…?えぇえーっ!?しょ、少佐が いっぱいっ!?」
隊員Bが真横を見ると 隊員Aが呆気に取られている 隊員Cが言う
「な、なぁ…?これって まさか…?」
隊員Fが言う
「エルム少佐の… デコイと同じ?」
隊員Bが疑問してから言う
「えー?それじゃ 少佐ぁー?」
隊員Bの視線の先 ハイケルが正面を見据えて言う
「…そう言う事か 軍曹 君が何を躊躇していたのか 理解した」
隊員Bが言う
「少佐ぁー?それじゃ 少佐が 俺たちの世代の 悪魔の兵士でありますかー?少佐ぁー?」
隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
ハイケルが軍曹へ向いて言う
「どうなんだ 守りの兵士殿?バイスン隊員の質問は 私の質問でもある 共に レギスト機動部隊… いや、国防軍の多くの者たちの質問でもある 答えろ」
軍曹が言う
「は… はっ!少佐こそ 自分たちの世代の …悪魔の兵士であるとっ 自分は そう思います!」
ハイケルが言う
「思うとは?これを見ての感想か?」
軍曹が言う
「いえ、それも ありますがっ …少佐には 悪魔の兵士を示す 神の刻印が左胸に…っ」
隊員AとBが気付き 隊員Bが言う
「えー?でも 少佐のタトゥーは アールスローンの国印じゃないけどー?」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う
「複製のアールスローン戦記に描かれている あの刻印は アールスローン国へ身を捧げるという 政府の攻長の証であり 悪魔の兵士の刻印は 今は無きペジテ国の国印 なのであります…」
ハイケルが言う
「なるほど 理由とされるモノが2つも揃うのであれば 可能性としては…」
軍曹が表情を困らせて言う
「しょ、少佐っ どうかっ その…っ」
ハイケルが言う
「だが、解せない部分は多い」
軍曹が言う
「は… はぇ?」
ハイケルが言う
「私が悪魔の兵士であるのなら 同じく悪魔の兵士であった あのエルム少佐との差は何だ?」
軍曹が表情を困らせて言う
「そ、それは…っ」
ハイケルが言う
「今更言うまでも無いが 私と奴との能力の差は歴然だ データ上に置いても その差は 新たな銃火器を作り上げる 妨げとなっている」
軍曹が言う
「それは その…」
ハイケルが気付いて言う
「うん?そう言えば 今回の任務は 悪魔の兵士を眠りから覚ます事が 目的だったな?それは言い換えれば 私の眠らされている能力を 覚ますと言う事か?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「いえっ それは…っ 真に言い辛いのでありますがっ 少佐の能力は 眠っては居られないかと… むしろ!しっかりと 目覚めておられるかと!」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「むっ!?…そうか 残念だ …では 話を戻すが 私とエルム少佐 その2人の悪魔の兵士の 差は何だ?」
軍曹が言う
「その… 悪魔の兵士は 2世代居られ 少佐はその 初世代であり あのエルム少佐が 2世代目でありまして…」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ… そうか… たった1つの世代の差が 随分と大きかったようだな …だが、それなら何故 私の前のエルム少佐が 2世代目なんだ?奴が2世なら 私は…」
軍曹が言う
「それはっ …悪魔の兵士は 初世代目と2世代目が 交互に使われている との事でありまして…っ」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「ぐっ…!…なるほど 2世代目までしか居ない者を 交互に使うとなれば… 時代により世代が逆になる事は否めない…」
ハイケルが顔をそらす 隊員Bが気付いて言う
「あー!だから 2世代目のエルム少佐の方が 1世代目の少佐より 強かったのでありますね!身長も高かったし!」
ハイケルが衝撃を受ける 隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
隊員Bが疑問して言う
「えー?でも それって普通だし?子供の方が 親より身長 高くなったりするでしょー?」
隊員Aが慌てて言う
「そ、それはそうだけど…っ!」
隊員Bが言う
「だから 気にする事無いでありますー!少佐ぁー!少佐は小さいけど チョー足速いし!」
隊員Aが慌てている ハイケルが言う
「身長を含む肉体的な差は 知識と訓練では補い切れない部分だ …だったら 尚更 何故 初世代の悪魔の兵士を 改良しない?」
軍曹が困って言う
「うー… それがぁ~ 悪魔の兵士は元々 遥か昔の ロストテクノロジーとか言われる物なので 現代の技術では 全く持って 手に負えないそうで…」
ハイケルが言う
「改良は したくとも出来ないと言う事か…」
軍曹が落ち込んで言う
「は… 残念ながら その様でして…」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「うっ… そうだな ”残念ながら” 残念だ…」
軍曹が言う
「真に 不甲斐なく 申し訳ありません 少佐…」
軍曹が頭を下げる ハイケルが衝撃を受け言う
「ぐっ… いや、こちらこそ 悪かったな ”不甲斐なく” て…」
隊員たちが顔を見合わせて言う
「な、なぁ?俺ら… どう反応したら良いんだっ?」
「すげー 難しい 所だ」
ハイケルがサブマシンガンを用意する 軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁあーっ!?少佐ぁーっ!?」
ハイケルがサブマシンガンを放つ 隊員たちが驚く 軍曹が慌てて言う
「しょ、少佐ぁーっ!どうか お止め下さいっ!いくらご自身の出生に ショックを受けようともっ!ここに居る少佐のデコイたちは 大切なーっ!」
サブマシンガンの攻撃で装置が壊れ 10体のハイケルβたちが床に倒れる ハイケルがサブマシンガンを止めて言う
「何を慌てている 軍曹」
軍曹が衝撃を受けて言う
「は、はぇ!?少佐?じ、自分は 少佐が ご自分のご出生を知り ご乱心なされたのかと…」
ハイケルが言う
「何故 私が 乱心する必要がある?」
軍曹が言う
「はえ!?」
ハイケルが言う
「確かに ”残念ながら” 初世代の私が お前たちの世代の 悪魔の兵士であった事は ”真に 不甲斐なく 申し訳ありません” と思ってはいるが」
軍曹が汗を掻く 隊員Nが言う
「なぁ…?少佐は 軍曹に言われた事 凄く怒ってるんじゃないか?」
隊員Eが言う
「あ、ああ… 何か 俺も 少佐が何だったって話より 今は軍曹の身の危険を感じる…」
隊員たちが軍曹を見る 軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?じ、自分はっ 決して エルム少佐より 劣る 少佐を悪く言うつもりは!?」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが瞬時に怒り 軍曹にM82を突き付けて言う
「軍曹 私は 乱心したようだ 許せ」
軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「なぁあーっ!?しょ、少佐ぁーっ!どうか お気を確かにっ!」
隊員たちが慌ててハイケルを取り押さえる 軍曹が困る ハイケルが言う
「はーなーせーっ!」
隊員たちが押さえ付けながら言う
「しょ、少佐ーっ!どうか 堪えて下さいーっ」
「軍曹は 決して悪気が有って 言った訳では!」
隊員Xが言う
「そうでありますっ!軍曹はただ!素直に本当の事を言ってしまう だけなのでありますっ!」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが隊員Xの頭にM82を押し付けて言う
「ゼクス隊員 お前から逝くか?」
隊員たちが慌ててハイケルを押さえ付ける 隊員Xが軍曹の前で泣きながら言う
「軍曹ーっ!自分はっ 自分はっ!」
軍曹が泣きながら言う
「おおーっ!ゼクス隊員!気持ちはよく分かるのだっ!自分も 何も間違った事は言っていないのに 何故か 守られるはずの少佐に 命を狙われたのであるっ!」
隊員ABCFが呆れている ハイケルが気を取り直して言う
「…では 目的のものは 覚醒させた これくらい居れば 総司令官も任務の達成と認識するだろう」
軍曹が衝撃を受けて言う
「は、はぇ?目的のもの?覚醒?総司令官が?」
ハイケルが振り返って言う
「総司令官からの指令は 悪魔の兵士を眠りから目覚めさせる事だ 奴らは 眠っていただろう?あれを起して 連れ帰る事が任務で正しいのではないか?」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが不満そうに言う
「私のデコイを使い 総司令官が何をするつもりなのかは 想像も付かないが… あのエルム少佐の時と同様であれば このデコイたちは私と同等の戦力を持っている …そうとなれば 例え 不甲斐なくとも 用途はいくらかあるだろう」
ハイケルが視線をそらして言う
「出来れば 私自身の目に付かない場所で 使用してもらいたいものだ」
軍曹が言う
「あ、あの… 少佐 真に申し上げ辛いのでありますが…」
ハイケルが言う
「気にするな 軍曹 もはや 何を言われても 私が正気で乱心する事は無い」
隊員Aが言う
「やっぱり正気だったんだ…」
隊員Cが言う
「少佐の冗談が 半端なく上達してるんじゃねーか?」
隊員Bが笑んで言う
「さっすが 少佐ぁー!」
軍曹が言う
「ではお伝え致しますが …ご自身のデコイを遠隔操作出来るのは 優秀なエルム少佐の世代 2世代目の悪魔の兵士だけであります」
ハイケルが銃撃されたかの様に衝撃を受ける 隊員たちが呆気に取られる ハイケルがM82を自分の頭に突きつけて言う
「死んで詫びる」
軍曹が慌ててハイケルを取り押さえて言う
「しょ、少佐ぁーっ!どうか お気を確かにっ!」
ハイケルが言う
「そいつらの分だけ 蘇れば良いんだ!」
軍曹が慌てて言う
「少佐ぁー!そちらの方法も自分は分かりませんですし!少佐もご存知ではあられないかとっ!?」
ハイケルが軍曹を横目に見て言う
「当然だ!だが 心配するな 軍曹!あの世で ”優秀なエルム少佐の世代 2世代目の悪魔の兵士” に聞いて来る!」
隊員たちが呆気に取られ顔を見合わせる 隊員Bが噴き出して笑って言う
「ぷーっ!あっはははっ!やっぱ 少佐 チョー面白れー!」
隊員Aが苦笑して言う
「ああ… なんか ここに来た瞬間は スゲー遠い人に感じちまったけど 一瞬で元に戻った気分だ」
隊員Cが苦笑して言う
「って言うか 本当に少佐が あのエルム少佐と同じ 悪魔の兵士なのか?」
隊員Fが小声で言う
「同じじゃ無くて ちょっと 劣るんだろ?」
ハイケルが言う
「聞えているぞ フレッド隊員」
隊員Fが衝撃を受ける 隊員Xが言う
「ちょっと じゃなくて 自分は かなり だと思うであります!」
ハイケルがM82を隊員Xへ放つ 隊員Xが慌てて盾を構える 盾に銃弾が防がれる 隊員Xが軍曹に泣きながら言う
「軍曹ーっ!?」
軍曹が驚き慌てる 隊員たちが笑う ハイケルが言う
「国防軍レギスト機動部隊!任務終了!帰還するっ!」
隊員たちが敬礼して言う
「はっ!」 「了解っ 少佐ぁー!」
隊員Bが言う
「それで、少佐ぁー?この哀れな 少佐のデコイたちは どうするのでありますかー?」
ハイケルが言う
「放っておけ その内 燃えて灰になるのだろう?」
軍曹が言う
「それが 真に…」
ハイケルが気付いて言う
「もう良いっ 人並みに腐ってミイラにでもなってくれれば 一個体としては 奴より上だ!」
隊員AとCが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「少佐のデコイミイラが10体…」
隊員Aが苦笑して言う
「せめて連れ帰って 土に埋めてやりましょうよ?少佐…」
ハイケルが言う
「今は生きているかもしれないだろう?」
隊員Aが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「あー そうだったー」
隊員Cが言う
「生き埋めにする訳にもいかねーし…」
ハイケルが言う
「だが、動きもしない …ならば せめて楽にしてやるか」
ハイケルがサブマシンガンを持つ 隊員たちが衝撃を受けて言う
「えぇえーっ!?」
「しょ、少佐ぁー!?」
途端 館内にサイレンが鳴り響く 隊員たちが驚き顔を見合わせてから携帯を取り出そうとする ハイケルが周囲を見渡し向かう 隊員Aが言う
「あっ 駄目だ ここは圏外だ」
隊員Cが言う
「国防軍の駐屯地内なのに 圏外だなんて…?」
ハイケルが固定電話を使っている 軍曹が言う
「その為に 固定式の通信電話が…?」
隊員Bが言う
「さっすが少佐ぁー!ご自宅の事は 良くご存知でー!」
隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
ハイケルが言う
「国防軍のトリプルトップシークレット以上の施設では 情報漏えい防止の観点から 意図的に外部からの通信類の電波は遮断されている …国防軍の筆記試験では お前たち2人共 そろって不正解だったな」
隊員ACが衝撃を受け 隊員Bが笑って言う
「にっひひ アッちゃんも サッちゃんも 駄目だなぁー?」
隊員ACが怒って言う
「「お前が言うなっ!」」
ハイケルが電話に言う
「こちらは国防軍レギスト機動部隊隊長 ハイケル少佐だ 現在 国防軍レファム駐屯地マスタートップシークレットに接触中 この警報は何だ?」
【 国防軍レファム駐屯地 正門前 】
辺りにサイレンが鳴り響いている 正門前に国防軍の隊員2人が倒れている レファム駐屯地の隊員たちが攻撃を行っている 正門が壊されていて マシーナリー2が周囲を射撃する マシーナリー3が周囲を確認する マシーナリー2が後ろを振り返る マシーナリー2とマシーナリー3が複数進入して行く
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 入り口 】
衛兵たちが対マシーナリー固定式マシンガンを放っている 衛兵が携帯で言う
「こちら 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト入り口 レファム駐屯地の部隊防御を破り マシーナリーがやって来たっ!これより自爆装置を使用し マスタートップシークレトの入り口を閉鎖する!」
携帯からハイケルの声がする
『待てっ!内部には まだ レギストの隊員たちが居るんだっ!マスタートップシークレットの自爆装置を使用しては 全員生き埋めになるっ!』
衛兵が言う
「例え隊員たちが生き埋めになろうと ハイケル少佐!あなたを蘇らせる事は出来ますっ!どうかしばらく 隊員たちと共に眠っていて下さい!」
携帯からハイケルの声がする
『私の事など どうでも良い!隊員たちを巻き込む事は出来ないっ!我々には マシーナリーを破壊する力がある!レギストを信じ 入り口を明け渡せ!』
衛兵が言う
「それは出来ませんっ!悪魔の兵士は アールスローンの最後の希望!我々は 何があろうと!…申し訳ありません お許しを!ハイケル少佐!」
携帯からハイケルの声がする
『止めろぉおっ!』
衛兵が強く目を閉じ 装置のスイッチを押そうとする 一瞬の後 衛兵が疑問して目を見開く 衛兵の手からスイッチが無くなっている 衛兵が驚くと同時に倒れる シェイムが携帯を拾い上げて言う
「ハイケル少佐 以前の借りは お返ししました… フッ… 最も 私にとっても 好都合でしたが」
携帯からハイケルの声がする
『…その声はっ お前はっ!』
シェイムが携帯を切り 衛兵の横へ置くと 視線を向ける マシーナリーたちが マスタートップシークレトの入り口をミサイルで破壊する
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 内部 】
レギスト隊員たちが 通路を走っている ハイケルと隊員A隊員FがMT77をセットしている ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「お前たちは マシーナリーの種類と数を確認次第 すぐに戻れ」
イヤホンに隊員たちの声が聞える
『了解っ!』
隊員Aが言う
「少佐っ もし、あの3番目のマシーナリーが来たら…っ」
ハイケルが言う
「MT77は 常人では2発が限界だ 3発目をM90で代用するにしても どちらも全てジャストショットでなければ 意味を成さない」
隊員Fが表情を困らせて言う
「俺らじゃ 撃てたとしても ジャストショットなんて 出来る訳が無い やっぱり 少佐じゃないと…」
隊員Xが言う
「それなら 自分たちで 武器を押さえ 少佐が照準を合わせて撃てば良いって 事では?」
隊員Bが呆気に取られてから喜んで言う
「さっすが ゼクちゃん!」
隊員Aが言う
「そうか!この前もそうやって!」
ハイケルが言う
「だが MT77の反動は決して軽いものではない 3発を放てば 例え 複数人で支えていようとも お前たちまで… …私があのデコイを使えて居れば…」
ハイケルが後方に見える扉を見る 隊員Fが笑んで言う
「この期に及んでは そんな事 言ってられないですよ!少佐!」
隊員Cが言う
「それに 少佐は怪我を負った身で 作戦をやらなきゃいけないんだし 俺らで出来る事は 何でもやらないとな?」
隊員たちが顔を見合わせ微笑してハイケルへ向く 隊員たちが言う
「そうですよ!少佐!」 「今度は俺たちだって 一緒に戦います!」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Dが言う
「それに このMT77って 複数人で支えるのに 丁度良い形してるし」
ハイケルが気付く 隊員Aが言う
「ああ、そうなんだよ お陰でこの前も 思ってたより しっかりと支えられてさ?」
ハイケルが言う
「お陰で 私は大した衝撃も受けず 3打目を撃つ事が出来た… …そうだな この様な細工を施す位なら スライド機能を施し装填をフルオートにした方が よっぽどジャストショットには 向いている …最初から 私のための銃だったのか」
無線イヤホンに隊員たちの声が聞える
『少佐っ!マシーナリーを確認しました!』
『種類は 2番目と3番目の奴です!特に2番目のマシーナリーが 大量にっ!』
ハイケルがイヤホンを押さえて言う
「了解 すぐに戻って来い」
無線から隊員の声がする
『了解っ!』
ハイケルが出入り口を見る 隊員たちがMT77を持って立ち上がる
【 国防軍レファム駐屯地 正門前 】
白バイがサイレンを鳴らしながら到着する ラミリツが飛び降りて言う
「ありがと 助かったよ 君は公務に戻ってくれ」
白バイ隊員が言う
「し、しかしっ 攻長閣下っ!?この駐屯地の様子は!?ただ事では…っ!?」
ラミリツが周囲を見渡してから言う
「あ~ これは… そう!レギストの特別訓練だから 気にしないで?」
白バイ隊員が驚いて言う
「えっ!?」
ラミリツが言う
「嘘だと思うなら ミックワイヤー長官に聞いてごらんよ?じゃぁね!…言っとくけど 変に騒いだら 君 恥かくよ?」
ラミリツが走り去る 白バイ隊員が呆気に取られてから言う
「訓練… か… やっぱり レギストは凄いんだなぁ… …さて、公務に戻らないと」
白バイ隊員が去る
ラミリツが駐屯地内を走りながら言う
「えっと こういう時は 複数のマシーナリーの跡を追えば… だったよね?」
ラミリツが銃ホルダーに触れる ラミリツが分かれ道を 路面の様子を見て判断して向かう
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 入り口 】
ラミリツが息を切らせつつ到着し周囲の様子に驚き表情を落として言う
「これ皆… 兄上のせいで…?」
ラミリツが地面に倒れている隊員たちの間を過ぎ 出入り口を覗く ラミリツが周囲を伺いつつ一歩中へ入り 壁面を見て言う
「えっと… 地上1.5メートル …この辺 かな?」
ラミリツが言いながら壁に耳を当てる ラミリツが耳を澄ますと 銃声が聞える ラミリツがハッとして言う
「M90の銃声… 間違いない この先にレギストが…っ アイツらが居る!そこに… きっと 兄上も…っ!?」
ラミリツが視線を強め 走り始めようとして 立ち止まって言う
「…そう言えば ファームまでは 入り口から5キロあるんだっけ?5キロか… 全力で走らないと 間に合わない かな…?」
ラミリツが表情を顰めて斜面を見てから 閃いて言う
「…うん?そうだっ!」
ラミリツが一度出入り口の外へ出てから戻って来て言う
「どうせ 半分以上先まで 到達されちゃってるだろうし… これ位なら 丁度良い傾斜だよっ きっと!」
ラミリツがマシーナリーの車輪が着いた板を地面へ落とす
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 内部 】
ハイケルが言う
「第3マシーナリーだっ!A班を除く 総員 退避っ!」
隊員たちが 退避する ハイケルが言う
「A班っ!」
隊員Aと隊員BがMT77を構えて 隊員Bが言う
「準備完了でありますっ!少佐ぁーっ!」
ハイケルがA班の場所を確認してから M90を放つ マシーナリー3がM90の弾丸を弾いてから ハイケルをロックオンする ハイケルがA班の下へ向かう マシーナリー3がハイケルを追って マシンガンを放つ ハイケルがA班の構えるMT77の下へ行き着き MT77の照準を合わせる マシーナリー3がハイケルへマシンガンを放つ 隊員Xがハイケルたちの前で盾を構え表情を顰めて堪える ハイケルが視線を強め言う
「行くぞっ1打目!」
隊員ABが支えに力を加える ハイケルが引き金を引く MT77が放たれる ハイケルが装填を行い言う
「2打目っ!」
隊員ABが支えに力を加える ハイケルが引き金を引く MT77が放たれる ハイケルが装填を行い言う
「3打目っ!」
隊員ABが支えに力を加える ハイケルが引き金を引く MT77が放たれる マシーナリー3が動きを止め脱力して倒れる ハイケルが言う
「無事かっ?」
隊員ABが苦笑し 隊員Bが言う
「体中ビリビリしてるけど 無事であります~ 少佐ぁ~」
隊員Aが言う
「途中で軍曹が支えてくれなかったら ビリビリ所じゃなかったな?」
ハイケルが驚き視線を向けると 軍曹が苦笑して言う
「も、申し訳ありません 少佐… しかし、やはり自分には 隊員たちを置いて 後方で待機するというのは…っ」
ハイケルがマシーナリーの音に気付いて言う
「分かった …総員 後室へ退避だっ」
隊員たちが言う
「了解っ!」
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 上階 】
ラミリツが簡易スケードボードを巧みに操り斜面を滑降して来る ラミリツが気付いて言う
「うん?あれは RTD330マシーナリーの残骸…」
ラミリツが簡易スケードボードを巧みに操り 残骸を回避して振り返りつつ言う
「そろそろかな…?エルムと違って アイツらじゃ 330でも手こずりそうだし…」
ラミリツが前方を見ると 扉が壊されている ラミリツがそれをも越え 滑降を続けながら言う
「でも良いや?せっかく 良い感じに勢いが付いて来たから このまま行っちゃお!…もし見られたら エルムや兄上にも 怒られそうだけど?…ふふっ」
ラミリツが滑降して行く
【 国防軍レファム駐屯地 マスタートップシークレト 内部 】
ハイケルが照準を合わせ言う
「3打目っ!」
隊員NMVが歯を食いしばってMT77を支える ハイケルが視線を強め引き金を引く MT77が放たれる 隊員MNVが言う
「「「ぬぅうっ!」」」
ハイケルが言う
「無事かっ?」
隊員MNVが苦笑して言う
「は… ははっ な、何のこれし き~…」
「痺れたぁ~」
「あばばばば…っ」
隊員MNVが倒れる ハイケルが言う
「そのまま 寝ていろ」
軍曹が立ち上がって振り返る ハイケルが視線をマシーナリーへ向けて言う
「後3体…」
ハイケルが歩こうとして倒れそうになる ハイケルが驚くと 軍曹が押さえて言う
「少佐っ!」
ハイケルが苦痛に表情を顰めてから言う
「すまん 問題ない」
軍曹が心配しつつも黙る ラミリツの声がする
「何処が 問題ないって 状態なんだろうね?」
ハイケルが驚き 軍曹が振り返って言う
「その声はっ まさかっ!?」
ラミリツがマシーナリー3の後方に飛び上がり プラズマセイバーを振りかざして叫ぶ
「やぁあーっ!」
プラズマセイバーがマシーナリー3の頭部を切り落とす ハイケルと軍曹が驚く ラミリツが着地すると 空かさず振り返って言う
「420は右っ!」
ラミリツがプラズマセイバーをマシーナリー3のボディ右に突き刺す マシーナリー3が動きを止め間を置いて脱力し倒れる ラミリツが気軽に言う
「後2体なら 何とか出来る?それとも そっちも手伝ってあげた方が良いのかな?」
ハイケルと軍曹が呆気に取られる ラミリツが疑問すると マシーナリー3がラミリツをロックオンする ラミリツが気付いて言う
「あ、ずるいの?戦意を見せないで 僕にロックオンさせる作戦?…ホントそう言う ズル賢い所って 悪魔の兵士らしいよね?エルムもアンタもさ?」
ハイケルが衝撃を受け言う
「…奴と 一緒にするなっ」
ハイケルがM90をマシーナリー3へ放つ 軍曹が衝撃を受けて言う
「しょ、少佐ぁーっ!?」
マシーナリー3がラミリツへのロックオンをハイケルへ移行する ラミリツが言う
「ふふっ 作戦通り!…ホント単純だよね?悪魔の兵士って?」
ハイケルと軍曹が衝撃を受ける ラミリツが言う
「でも助かったー フルチャージじゃないプラズマセイバーだと 420の相手は1体が限界なんだ?だから 残りの2体は そっちで やって置いてよね?それじゃ!」
ラミリツが去る 軍曹が衝撃を受け言う
「は、はぇっ!?ラ、ラミリツ攻長!?」
隊員AがBCと共にMT77を構えて言う
「少佐っ!A班+隊員C 準備出来ましたっ!」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「隊員Cって誰だよっ!?俺かあっ!?」
ハイケルが怒りを押し殺して言う
「軍曹っ 動ける隊員をたたき起こして 意地でも もう1体分のMT77を用意しておけっ」
軍曹が衝撃を受け言う
「りょ、了解でありますっ 少佐…」
ハイケルがA班と隊員Cの用意したMT77を連射している 軍曹が呆れの汗を掻きつつ慌ててMT77を持って走る
ラミリツがセキュリティロックを見て視線を強める 顔の横に銃弾が掠める ラミリツが視線を向け振り返る ラミリツの振り返った先 ハイケルが消炎の上がる銃を向けていて言う
「それ以上先へは 行かせられない」
ハイケルの後方で 隊員Xと軍曹が痺れて居て 隊員Xが言う
「軍曹…っ やはり 自分と軍曹の2人だけで 3連射を押さえるのは 流石に 痺れるであります~っ」
軍曹が言う
「ぬぅう~ 確かに あばらの2、3本逝ったやもしれんが 何のこれしきぃ~っ」
ラミリツがハイケルへ言う
「あのさ?そう言う事は こうなる前に言いなよ?」
ラミリツが言って 扉を押すと セキュリティロックの破損した扉が開く ハイケルが驚く ラミリツが言う
「初世代のアンタの方が デコイの数は少ないんだよ?エルムでさえ ギリギリだったのに 大丈夫なの?」
ハイケルが呆気に取られる 軍曹が表情を険しくして部屋へ駆け込む ハイケルが言う
「軍曹」
隊員たちが顔を見合わせ 部屋へ駆け込む ラミリツがハイケルを見ると ハイケルがラミリツを睨んでから部屋へ入る
ハイケルが入ると 軍曹が叫ぶ
「少佐のデコイに何をしたのだっ!?」
ハイケルが顔を向け驚く ハイケルβたちが銃を持ち軍曹へ向けている ハイケルが軍曹を見る 軍曹が上階を見上げて叫ぶ
「答えよっ!メイリス元長官っ!」
ハイケルが驚き軍曹の視線の先を見る 上階にシェイムが居て微笑して言う
「何をした とは 酷い言い様ですね?私は… 捨て置かれた彼らに 命を与えてあげたのですよ?」
軍曹が言う
「命をっ!?」
隊員Bが言う
「えーっ さっきまで 何言っても反応しない 少佐のデコイミイラになる予定だった 少佐のデコイたちがーっ!?」
ハイケルβたちが隊員Bへ銃口を向ける 隊員Bが衝撃を受けて言う
「あーっ!ごめんなさいでありますっ 少佐ぁー!俺はただ 冗談でっ!」
銃声が1発鳴る 皆が驚く ハイケルβの1体が倒れる 拳銃を撃った姿のハイケルが言う
「やはり介錯しておくべきだった 敵の手に落ち 私の隊員へ武器を向けるなど …同じ姿をしているのでは 尚更 気分も悪い」
ハイケルが次々銃を放つ ハイケルβたちがハイケルを標的にして戦いを開始する ハイケルが回避する 軍曹が隊員たちへ言う
「少佐を援護せよっ!」
隊員Xが言う
「了解っ 軍曹っ!」
他の隊員たちが困って言う
「えぇえっ!?そう言われてもっ!」
「ど、どれが 本物の少佐だかっ!?」
ハイケルが攻撃し ハイケルβが被弾して倒れる 白い液が流れる 隊員Bが言う
「あー!分かった!血の色が白い奴が 偽物の少佐だよー!」
隊員Aが慌てて言う
「そんなの 撃って見ないと 分からないじゃないかっ!?バイちゃんっ!」
隊員Bが言う
「えー?それじゃー… 少佐ぁーっ!?」
ハイケルが隊員Bの声に振り向く 隊員Bが言う
「チャーンス!」
隊員Bがサブマシンガンを放つ ハイケルが慌てて回避する ハイケルの頬に弾丸がかすり 赤い血が伝う 隊員Bが言う
「ねー?これなら 分かるでしょー?にひひっ!」
隊員Aが慌てて言う
「そ、それは そうだけどっ!」
ハイケルが言う
「バイスン隊員 感謝する」
隊員Bが言う
「はーっ!少佐ぁー!これぞ 肉を切らせて骨を絶つーでありますー!少佐ぁー!」
隊員Fがライフルを構えて言う
「ちょっと 違うけど ナイスアシスト!バイスン隊員っ!」
隊員Fがライフルの照準を合わせて言う
「すみませんっ 少佐っ!」
隊員Fが引き金を引く 銃声が鳴り ハイケルβが倒れる
シェイムの目下 ハイケルβたちが次々と倒されて行く シェイムが表情を顰めて言う
「これが… アールスローンの力だと言うのか?悪魔の兵士は 通常の人を 超える存在ではなかったのか?」
ハイケルβが全て倒される ハイケルがシェイムを見上げる シェイムが言う
「ならば…」
シェイムが装置のレバーに手を掛ける 軍曹が疑問して言う
「メイリス元長官 何をするつもりだ!?」
シェイムが微笑して言う
「見たら分かるでしょう?装置全体と繋がる このレバー …ご丁寧に 記載されてますよ?"リセット"とね?」
ハイケルが僅かに驚く 軍曹が慌てて言う
「何故 そのような事をしようとするのかっ!?メイリス元長官っ 貴方は 一体何が望みなのだっ!?」
シェイムが言う
「私の望み?そうですね 少し前の私であったなら アールスローン戦記の原本 とでも 言っていたでしょう …しかし これが 国防軍のマスタートップシークレットであったと言うのでは もう 必要も無いのかもしれませんが」
シェイムがレバーへ視線を向ける 軍曹が慌てて言う
「だだだっ だったらっ!そのレバーから 手を離して欲しいのであるっ!」
シェイムが言う
「それは出来ませんね?」
皆が驚く シェイムが微笑して言う
「我々の使命は アールスローンの力 悪魔の兵士を 全て消し去る事ですから」
軍曹が焦って言う
「なぁあっ!?そのような事をしてはっ!アールスローンを守る 悪魔の兵士が 居なくなってしまうではないかっ!」
シェイムが言う
「大いに結構 これで 我ら帝国の …勝利だ」
シェイムがレバーの安全バーを握る ラミリツが言う
「動くなっ!」
皆が声の方へ顔を向ける ラミリツがM82を構えていて言う
「それ以上 少しでも動かせば お前を射殺する」
軍曹が驚いて言う
「ラミリツ攻長っ!?」
シェイムが苦笑して言う
「エーメレス 誰に銃を向けている?お前に私が撃てるのか?」
ラミリツが言う
「試してみたいのなら とめないけど?」
シェイムが笑って言う
「ッフフフ 面白い ハブロス家で 悪魔の兵士 エルム少佐に可愛がられ 国防軍へと寝返ったか?」
ラミリツが言う
「何とでも言いなよ 僕はもう… 決めたんだ」
ラミリツが狙いを定める シェイムが視線を強めて言う
「…そうだ 悪魔の兵士は2人居る こちらの悪魔の兵士の他にも もう1人の悪魔の兵士が …強い力を持つ そちらこそっ」
ハイケルが視線を強める ラミリツが言う
「もう1人の方まで狙うって言うのなら 尚更 例え兄弟でも容赦はしない」
シェイムが微笑して言う
「撃てる筈がない お前の負けだ エーメレス」
ラミリツが狙いを定めている 隊員たちが見つめている 軍曹が表情を困らせている ハイケルがラミリツへ向き視線を強める 一瞬の沈黙 シェイムがレバーを下ろそうとする ラミリツが視線を強め引き金を引く 重い銃声 シェイムが悲鳴を上げる
「ぐあぁっ!」
ラミリツが驚いて言う
「な…っ なんでっ!?」
ラミリツの銃を ハイケルが掴み上げている シェイムがレバーを押さえていた腕に負った傷を押さえつつ 再びレバーへ手を伸ばそうとする 隊員Bがサブマシンガンを放ちながら言う
「このぉーっ!」
隊員Bのサブマシンガン弾丸が シェイムとレバーの間の壁に当たり続ける ハイケルが隊員たちへ叫ぶ
「捕らえろっ!」
隊員たちがシェイムの居る場所へ向かう道を探し走り始める シェイムが表情を顰め逃げ出す ラミリツが呆気に取られる ハイケルがラミリツの持つ銃を見て気付いてから 苦笑して言う
「”上出来だ”」
ラミリツがハイケルの手を払って言う
「この銃に触るなよっ それに 全然 上出来じゃないっ!外したんだ!アンタのせいでっ!」
ハイケルが言う
「私が邪魔をしなければ お前は確実に メイリス元長官を射殺していた …M82で この距離での命中 流石は エルム少佐の教えか」
ラミリツが言う
「銃は教わってない …一言だけ」
ハイケルが驚いて言う
「一言…?」
外でMT77の銃声が聞える ハイケルが驚いて顔を向ける 隊員たちが部屋へ戻って来て言う
「少佐ー すみませんっ 逃げられましたー!」
ハイケルが言う
「MT77の銃声がしたが?」
隊員Aが苦笑して言う
「2番目のマシーナリーと3番目のマシーナリーが来て 撃ってみたら 2番目の奴は1撃で倒せました!」
隊員Fが言う
「MT77の1撃は M90のジャストショット5発と同等の威力の様であります!少佐!」
ハイケルが言う
「そうか…」
ラミリツが言う
「どうするんだよっ!アンタが邪魔したせいで 逃げられたじゃないかっ!?」
ハイケルが言う
「そうだな だが 良いんだ」
ラミリツが怒って言う
「良い訳ないだろうっ!?アンタのデコイだけじゃないっ これから作られる エルムの方にまで被害が出たら どうするんだよっ!?ホント 甘いよっ!アンタの方は!」
ハイケルが言う
「ここに居たのが 私ではなく エルム少佐であっても 同じ様にしていただろう」
ラミリツが言う
「エルムはアンタとは違う!」
ハイケルが言う
「確かに 奴と私では 能力やその他の違いは大きい だが、同じ事がある …だから 分かる」
ラミリツが言う
「アンタにエルムの 何が分かるって言うんだよ?アンタなんかより 僕の方がよっぽどっ!」
ハイケルが言う
「シェイム・トルゥース・メイリスは お前の家族だ お前が守るべき存在の筈だ」
ラミリツが驚く ハイケルが言う
「だが、お前があの様にしてくれなければ 私のデコイは全てリセットされていたのだろう ラミリツ・エーメレス・攻長閣下 …礼を言う」
ラミリツが間を置いて視線を逸らして言う
「…”当然だ”」
ハイケルが反応して苦笑する 隊員Aと隊員Bが苦笑する ラミリツがぷいっとそっぽを向く ハイケルが隊員たちへ向き直って言う
「任務完了 国防軍レギスト機動部隊 国防軍レギスト駐屯地へ 帰還する」
隊員たちが言う
「了解!少佐ぁーっ!」
【 国防軍総司令本部 総司令官室 】
アースが言う
「国防軍のマスタートップシークレットは 総司令官であっても 平時は閲覧を許されない機密事項 そこへ ハイケル少佐が 直接マスタートップシークレットへ接触した事により 封は解かれ ようやく 閲覧が可能となった」
軍曹が言う
「では その様な場所に どうして?」
ラミリツが言う
「僕はミックワイヤー長官に聞いたんだ メイリス元長官のIDで 政府警察のデータベースにアクセスした跡があって そのデータに レギストや悪魔の兵士の事 それに、初代の方の悪魔の兵士が 国防軍レファム駐屯地の地下で作られてるって事が 記載されてたんだって」
軍曹がアースを見る アースが考えて言う
「帝国との戦いは 表沙汰にはされていなくとも 遥か昔から行われている事だ 従って レギストやそれらの情報が 以前の内に 政府へ知られていたという可能性は 十分に有り得る」
軍曹が言う
「国防軍のデータベースからは消されてしまうのに 政府の方に残っているのでは 危険なのであるっ 何故 悪魔の兵士の情報を 国防軍から消してしまうのか!?」
アースが言う
「それは 悪魔の兵士そのモノが 存在を許されない者であるから だろう」
軍曹が呆気に取られて言う
「は…?」
ラミリツが言う
「そんなの 当たり前 これが帝国との戦いがない それこそ平時って状態なら ハブロス総司令官は 国防軍のトップとして 責任を取らされて逮捕される所だよ」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はっ はぇっ!?」
ラミリツが苦笑して言う
「ま、ラゼル様みたいな 責任の取り方もあるんだろうけどね?」
軍曹が疑問して言う
「ラ、ラミリツ攻長!?それは一体どう言う!?」
アースが言う
「その攻長閣下は 一体何を何処まで ご存知なのだろうか?エルム少佐や 我々の祖父から 随分と伝え聞いているようだが?」
軍曹がラミリツを見る ラミリツが言う
「僕が聞いたのは 2世代目の悪魔の兵士の話しだけだよ 初世代の方は少しだけ エルムより どれだけ劣ってるかって感じ」
軍曹が衝撃を受ける アースが言う
「そうは言われようとも どちらの悪魔の兵士も 基本とされる事は同じ 人工的に作り出した 兵器… 戦いの為の道具なのだからな」
軍曹が驚いてアースを見る アースが言う
「その生産場所である 国防軍レファム駐屯地のマスタートップシークレットには 初世代の… ハイケル少佐の方のデコイしかなかった もしや 攻長閣下は もう片方の生産場所についても ご存知なのでは?」
軍曹が困惑しつつ視線を落とす ラミリツが視線を強めて言う
「知ってたら なに?」
アースが微笑して言う
「もちろん その場所を教えて頂きたい」
軍曹が驚いてアースを見る アースが言う
「初世代のハイケル少佐では エルム少佐のようにデコイを使いこなす事は出来ない そして 悪魔の兵士 本人たちの身体能力の差も大きなものだ 従って レギストの隊長には 今回も エルム少佐と同じ 2世代目の悪魔の兵士を使用し そのレギストを持って帝国と戦うのが…」
軍曹が叫ぶ
「その様な言い方はっ やめて欲しいのだっ!」
アースが軍曹を見る 軍曹がアースを見て怒って言う
「少佐もっ!エルム少佐もっ!2人とも 悪魔の兵士であろうと 自分たちと同じ人なのだっ!戦いの道具などでは 決してないのであるっ!そして!自分たちの世代の レギストの隊長は やはり 少佐なのだっ!自分たちは これからも 少佐と共に戦うのであるっ!」
軍曹が怒りのままに部屋を出て行く
【 国防軍レギスト駐屯地 医務室 】
ハイケルが衝撃を受けて言う
「3日間っ!?」
ベリハースが言う
「ええ、とりあえず 3日間の入院です」
ハイケルが不満そうに言う
「たかが打撲と あばらにヒビが入った位で 入院とはどう言う事だ!?この前は 1週間のっ」
ベリハースが言う
「1週間の任務及び訓練の禁止 と 申しましたのに 3日後の検査で悪化させてきて 何を言っているんですか?ハイケル少佐っ」
ハイケルが言う
「そ… それは 急な任務が…っ」
ベリハースが言う
「任務は禁止とっ」
ハイケルが言う
「任務とは言え 戦闘行為はない 予定だったんだ」
ベリハースが言う
「予定は予定ですからね 武装をして行く時点で 予定は変更となる可能性もある訳ですよ ハイケル少佐」
ハイケルが言う
「それはそうだが… 戦わなければ 私が全員殺される所だったんだ」
ベリハースが言う
「全員助ける事も大切ですが 元となる1人が死んでしまっては 意味が無いでしょう?」
ハイケルが言う
「問題ない 何度でも蘇る …予定だ」
ベリハースが言う
「予定は予定ですから まずは 一人一人を 大切に生きましょうかね?ハイケル少佐」
ベリハースがカルテを書く ハイケルが間を置いて言う
「…知っていたのか?」
ベリハースが言う
「何のお話でしょうか?悪魔の兵士さん?」
ハイケルが言う
「何故知っていた?」
ベリハースが言う
「それは 私が この国防軍レギスト駐屯地の 軍医だからです」
ハイケルが言う
「何故黙っていた?」
ベリハースが言う
「教えると 一人一人を大切にしませんからね …エルム少佐の様に」
ハイケルが視線をそらして言う
「また、奴のせいか」
ベリハースが苦笑して言う
「とは言いましても 私も そのエルム少佐が何度でも蘇った などという話は 先日ご本人を目にするまで 信じる事は出来ませんでしたよ 私は医者ですから 死んだ人間が蘇るだなんて話を信じていては やっていけません」
ハイケルが言う
「奴を見て 何が分かったんだ?」
ベリハースが言う
「正直驚きました まず、どう見てもあの体は 70代の肉体ではありません 細胞組織の様子からしても 30代と言えるものでした ただ… その体に流れる血液の方は 紛れも無く70代のもの」
ハイケルが呆気に取られ言う
「悪魔の兵士が蘇るには 以前の体に流れていた血液を 新たな体に入れると言う事なのか?」
ベリハースが言う
「残念ながら、私は蘇る方法というものは知りません 私が聞いたのは エルム少佐が この国防軍レギスト駐屯地に居た頃に 同じくこの駐屯地で軍医をしていた 私の父から 様々な重度の怪我を負われたエルム少佐を治療した その治療法でしたから 医者として それだけの怪我を負えば どの様な後遺症が残るかを知った上で 先日の あのエルム少佐を見て 驚いた訳です」
ハイケルが言う
「奴には それらによる後遺症は無かったと」
ベリハースが言う
「ええ 後遺症所か それらの傷跡さえありませんでした」
ハイケルが言う
「奴は私よりも 格段に優秀な悪魔の兵士なんだ それこそ 怪我の跡さえ完治させてしまうのかもしれないぞ?」
ベリハースが軽く笑って言う
「っはは… 擁護する訳ではありませんが エルム少佐が それ程 ハイケル少佐より優れている と言う事は無いと思いますよ 細胞の様子を見る限り 少佐が今仰ったような 驚異的な回復力などはありませんでした そもそも それほど強力な回復力があっては それは がん細胞になりえます」
ハイケルが軽く驚く ベリハースが言う
「ただ、筋肉細胞の量は 常人の3倍近くありました 怪力の持ち主でしょう?」
ハイケルが衝撃を受けて言う
「それだっ!それが何よりもっ!」
ベリハースが苦笑して言う
「しかし、筋力の差など それこそ 隊員たちで力を合わせれば いくらでも補える事でしょう?ハイケル少佐」
ハイケルが呆気に取られる ベリハースが微笑して言う
「貴方は1人で戦うわけではないのですから 貴方1人の力などより もっと 大切な事があるはずです」
ハイケルが呆気に取られて言う
「もっと大切な?…それは?」
ベリハースが言う
「今度こそ しっかり入院をして 怪我を完治 させる事です!」
ハイケルが衝撃を受ける ベリハースが怒って言う
「隊長の貴方が いつまでも怪我人では 隊員たちも安心して戦えないでしょう!?体ばかりではなく 少しは頭も お使い下さいっ!」
ハイケルが衝撃を受け言う
「わ… 悪かったな…」
【 国防軍レギスト駐屯地 射撃場 】
隊員たちが集まっていて言う
「あー それからやっぱ!グリップは縦方向の方が!」
「言えてる言えてる!それから 出来れば…」
軍曹が入って来て言う
「む?メインアームの異なる者まで 第1射撃場に集まるとは?一体何をやって居るのだ?」
隊員Xが振り向いて言う
「あ!軍曹!」
隊員たちが振り向く 軍曹が隊員Xの下へ来て言う
「ゼクス隊員 今日は自分と共に 走り込みを行うと」
隊員Xが言う
「はっ!そちらは こちらが終了してから 就業時間を押してでも 行いますので!」
軍曹が隊員たちの中心を覗き込んで言う
「ゼクス隊員が 走りこみを中断してまで 優先するとは?皆も一体… む?」
ザキルがノートPCから顔を上げ 軍曹を見ると慌てて立ち上がって言おうとする
「あ!初めまして!このた… びがっ!?」
ザキルが軍曹の額に頭をぶつけ痛がって言う
「いってぇ~っ!」
軍曹が驚いて言う
「のぉお!?だ、大丈夫であるか!?少年っ!?」
ザキルが涙目で言う
「すっげ~ 石頭…っ」
隊員Aが言う
「軍曹 この少年が あのMT77を作った 銃職人のザキル殿であります」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なんとっ!あの強力な銃を作ったのが この年端も行かぬ少年であったとはっ!」
ザキルが苦笑しながら言う
「この度は 帝国との戦いに専属銃技師として おー… おえつらいいー頂きまして?あれ?えっと… おー お誂え頂きまして?」
軍曹が呆気に取られてから気を取り直して言う
「お?おお!そうであるのかっ!流石は 帝国との戦いを主にする 国防軍レギスト駐屯地なのだっ!いつの間にやら その様な者まで 誂えていたとはっ!自分はまったく持って 知らなかったのである!」
ザキルが言う
「あ、はいっ!それは 我々との契約は 国防軍とは異なり えっと…」
ザキルがメモを取り出して言う
「あぁ そうそう… ハイケル・ヴォール・アーヴァイン様との 個人契約と言う事で」
沈黙が流れる ザキルが疑問して言う
「ん?あれ?間違えたかな?えっと… うん、ハイケル・ヴォール・アーヴァイン様との 個人契約 でありますので!」
隊員たちが呆気に取られている 隊員Cが隊員Aへ向いて言う
「ハイケル… ヴォール・アーヴァイン様って…?」
隊員Aが言う
「ま、まさか…?」
隊員Bが喜んで言う
「おおー!軍曹ぉー!いつの間に 少佐を 軍曹のお子さんに されていたのでありますかー!?軍曹ぉー!?」
隊員たちが叫ぶ
「「「なぁあーーっ!?」」」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 外 】
軍曹が走って来て慌てて扉をノックして言う
「少佐ぁあー!アーヴァイン軍曹でありますーっ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 内側 】
ハイケルがカルテを片手に呆気に取られている 軍曹が慌てて扉を開けて言う
「少佐ぁーっ!緊急事態のため!お返事を待たずして 失礼致しますっ!少佐ぁあーっ!」
軍曹がハイケルの横に来ると ハイケルがぎこちなく軍曹へ向いて言う
「ぐ… 軍曹…?これは 一体どう言う…?」
【 マスターの店 】
マスターが爆笑して言う
「ぶはーっはははははっ!あーははっ あーはははははっ」
軍曹が困って言う
「あ、あのー… マスター…」
ハイケルが言う
「死にたい」
軍曹が衝撃を受けてハイケルを見る ハイケルがコーヒーを飲む マスターが必死に笑いを抑えている 軍曹が困りマスターとハイケルを交互に見る ハイケルが銃を取り出して言う
「ちょっと蘇って来る」
軍曹が衝撃を受けて言う
「しょ、少佐ぁーっ!?」
軍曹が慌ててハイケルの銃を持つ手を押さえて言う
「そのような事で 蘇っておられては デコイがいくつあってもーっ!」
マスターが息を切らせつつ言う
「はぁー はぁー… そうだぞー?ハイケル そんな事で死んでたんじゃ 泣き虫なお父様が 泣いちゃうだろー?…プクッククククク…」
マスターが腹を抱えて笑う ハイケルが言う
「ここで蘇れば 今日から3日間の入院も なくなるんだ」
軍曹が慌てている マスターが笑いを落ち着かせて言う
「それじゃ その蘇る方法って奴も 分かったのか?」
軍曹が言う
「い、いえ…」
ハイケルが言う
「それ らしき方法なら 入手した」
マスターが表情を困らせて言う
「”らしき” じゃなぁ?それこそ あのエルム少佐の様に 本当に死んじまったら 困るだろう?」
ハイケルが言う
「そのエルム少佐は 肉体の年齢と血液の年齢が異なっていたらしい …と言う事は」
マスターが苦笑して言う
「デコイの方に 元の血液を入れれば良いって事か?そんな簡単な事で 人が蘇ったりするのかねぇ?」
ハイケルが言う
「だから ”らしき方法” だと言っているだろう」
マスターがコーヒーを入れながら言う
「大体 悪魔の兵士が 蘇るって事は 元の奴と同じ能力になるんだろ?それは つまり 見た目だけじゃなくて 知識も付随していなければ意味が無い訳だし そうとなったら 必要なのは血液より むしろ脳みそだと俺は思うね?」
ハイケルが言う
「なるほど… だからエルム少佐は 頭を打ち抜いて死んだのか」
マスターが言う
「とは言ってもな?脳みその移植なんて 聞いた事も無いぜ?それに 多分今の医療技術では無理だろう」
ハイケルが言う
「それを行う事が 出来るのではないのか?悪魔の兵士なら」
マスターが言う
「例え 悪魔の兵士が それに耐えうるとしても その作業をやるのは 現代の医師だろ?そうとなれば やっぱり必要なのは 医療技術って事になる」
ハイケルが考える 軍曹が視線を泳がせて困る マスターが軍曹を見て言う
「それはそうと… とんでもない息子を 持たされる事になったなぁ?アーヴィン君」
ハイケルが飲みかけていたコーヒーを噴き出しそうになる 軍曹が衝撃を受けマスターを見る マスターが笑って言う
「それこそ まだ結婚もしてないのに たった3歳違いの息子を持たされるだなんて おまけに その子は 悪魔の兵士で…?プククッ」
ハイケルが怒ってコーヒーカップを叩き置く 軍曹が困って言う
「は、はぁ… 自分も その… 今日の先程まで そのような事になっている などと言う事は 全く知らなかった訳で…」
ハイケルが軍曹へ視線を向けて言う
「では 親とされる君の同意無しに行われた 勝手な手続きと言う事になるのだろう そのような物ならば 君が無効届けを一枚書けば済む話だ」
軍曹が視線を落として言う
「は… はぁ それは そうなのでありますが…」
ハイケルがコーヒーを飲む マスターが苦笑して言う
「けどなぁ… 今ここで アーヴィン君がハイケルを自分の籍から除外したとしたら それこそ 最下層の階級すら持てない 悪魔の兵士はどうなるのか…」
軍曹が慌てて言う
「マ、マスターっ!」
ハイケルが言う
「…なるほど そう言う事か」
軍曹が言う
「しょ、少佐っ!?」
ハイケルが言う
「そうだな 少なくとも帝国との戦いが終わるまでは 今のまま 養子としてでも 人権を有していた方が良さそうだ」
軍曹が驚き 視線を落とす マスターが言う
「そう言う事 …それに、その帝国と戦う銃火器の製造買取は ハイケル・ヴォール・アーヴァイン殿の名で契約されているんだろ?って事は その支払いは 当然 お父様の?」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが微笑して言う
「そうか… 同じく最下層の階級にして 悪魔の兵士であった あのエルム少佐が 手に入る銃火器を 全て取り揃える事が出来たというのも こう言う事だったのか」
軍曹が困惑してハイケルを見る マスターが笑んで言う
「良かったなー?ハイケル 良いお父様に 引き取って頂いてー」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが言う
「ああ これで帝国との戦いに専念出来る 何しろ マシーナリーより恐ろしい 金と言う敵に怯える必要は無くなったのだからな そちらは宜しく頼んだぞ お父様?」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が困惑して言う
「はぇ!?えっ えっとぉ… その… 銃火器の支払いなどの事は どうでも良いのでありますが 自分はっ その…っ」
ハイケルがそっぽを向いて言う
「”銃火器の支払い など の事は どうでも良い”か… 流石はハブロス家のお父様だ 特注の銃も 悪魔の兵士も いくらでも買えるのだな?」
マスターが言う
「こーら?ハイケルー?そんな可愛くない事言ってると 返品されちまうぞ?」
ハイケルが言う
「ふんっ どうせ買うなら 2世代目の悪魔の兵士を買えば良いんだ その方が これから作る特注の銃にも レギストの隊員たちにも よっぽど持て囃されるだろう」
軍曹が言う
「そんな事は 無いのでありますっ!」
ハイケルが軍曹を見る 軍曹が言う
「その特注の銃を作るザキル殿も その銃を使い 少佐と共に戦おうと言うレギストの隊員たちもっ 皆!少佐の事を自分たちの隊長として認め 慕っているのでありますっ!その中の誰一人としてっ 自分たちと共に戦うのが 2世代目の悪魔の兵士の方が 良かった等と言う者は居りませんっ 勿論 自分もその1人でありますっ!ですからっ!」
ハイケルが呆気に取られ言う
「軍曹…」
軍曹がハイケルへ向いて言う
「ですからっ どうか!」
マスターが呆気に取られた状態から微笑する 軍曹が言う
「どうかっ さっさと病室に戻りっ!治療に励んで頂きたいとっ!」
ハイケルが衝撃を受ける マスターが苦笑する 軍曹が表情を悲しめて言う
「それからっ もう二度とっ ご冗談でも ご自分の命を無駄にしようなどとは 言って頂きたく無いのでありますっ!例え何度でも蘇られるとしてもっ それは…っ もしかしたら それは少佐ではない少佐なのかも しれないのでありますっ エルム少佐のお話では 死んだ者と蘇る者は 物理的には別の者であると 仰っておられましたっ もし そうなのだとしたら 自分は…っ」
軍曹が視線を落とす ハイケルが考える マスターが言う
「物理的には別の者… かぁ… それじゃ やっぱり 血液だけ入れた 別のお前… お前のデコイの1体が 今のお前の様に動けるようになるって事なのか…?」
ハイケルがマスターを見る マスターがハイケルを見て苦笑して言う
「もし 本当に そんなんだとしたら 俺もやっぱり 嫌だな?」
ハイケルが疑問する マスターが微笑して言う
「俺の知ってるハイケルは 今のお前だし 逆に お前が知ってる俺も 今のお前が今まで見てきてくれた俺だろ?それが 別のハイケルになっちまうんじゃ 詰まらなくなっちまうじゃないか?」
ハイケルが呆気に取られる マスターが言う
「だから アーヴィン君の言う通り 今のお前を 大切にしてくれよな?お前は ただの 戦いの道具なんかじゃないんだ」
軍曹が微笑しハイケルを見る ハイケルが呆気に取られた状態から 苦笑して言う
「そうだな… 今の俺には お前と言う友人も居る それに たった3歳違いの お父様まで出来た所だ」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが言う
「あぁ そちらは 蘇っても変わらないか …とにかく 例え人権のない 作られた物であったとしても 人として生きてきた間に得たものはある それらの為にも 無駄に死ぬ事は 止める事にする」
マスターと軍曹が微笑する ハイケルが言う
「…それに よく考えてみれば これから蘇る奴らが 今の俺よりも勝っているとは 思えないからな?」
軍曹が衝撃を受ける ハイケルが言う
「当然だろう?あんな所でただ寝ている奴らになど 負けてたまるか」
マスターが苦笑して言う
「おいおい 自分と張り合ってどうするんだ… お?」
ハイケルが立ち上がって言う
「では 早速 入院して来る そろそろあのベリハース院長にも 本気でキレられそうな所だ さっさと蘇ってしまおうと 考えていたのだが 作戦を変更する」
ハイケルが出口へ向かう マスターが呆れて言う
「本気だったのか… ああ、それじゃ」
ハイケルが出口の前で立ち止まって振り返る マスターが微笑して言う
「たった3日じゃ 見舞いにも行けそうにないが お大事にな?」
ハイケルが言う
「ああ、可能な限り 大事にしてみるつもりだ」
ハイケルが扉を開け出て行く マスターが苦笑して言う
「可能な限り ねぇ… 本当に分かってるんだか」
軍曹が微笑し立ち上がって言う
「では、マスター!自分は 精一杯 少佐をお守り致しますのでっ!どうか ご安心をっ!」
マスターが苦笑して言う
「ああ、これからも引き続き アーヴィン君の息子さんを よろしくな?」
軍曹が衝撃を受ける マスターが笑う 軍曹が困って言う
「マ、マスターっ!?」
マスターが笑っている 軍曹が困っている
【 ハブロス家 アースの部屋 】
軍曹が驚いて言う
「はぇっ!?では 少佐を自分の養子にしたのは…」
アースが言う
「ああ、元々は 帝国との戦いに利用する その銃の資金元になる事が理由だった …とは言え 私もその理由を祖父上から伺った時には 可笑しいと思いはしたのだが それでも 祖父上からの御命令であった為 仕方なく書類を揃え行ったんだ」
軍曹が視線を落として言う
「そ、そうであったのか… 自分はてっきり その… 人権のない少佐を そのままにして置いては…」
アースが言う
「それこそ 最下層の者であっても 人である以上は人権を有している それは このアールスローン国外の者であっても例外ではない しかし、悪魔の兵士が 人の手により作られた 物 であっては 当然そこに人権などは存在せず 更には これが平時であったなら その存在さえ許されない者 従って その様な彼らを守るには 相応の力を持った 所有者が必要だ」
軍曹が視線を強める アースが苦笑して言う
「…と、この様な話を お前に聞かせれば 当然怒って部屋を出て行くだろうと思い あの場では わざとその様に言って お前を部屋から 追い出したのだが」
軍曹が呆気に取られアースを見る アースが苦笑してタバコに火をつけて言う
「フー… まさか 政府の攻長閣下まで それを理由に ご退室されてしまうとは 私の計算ミスだったな」
軍曹が驚いて言う
「ラミリツ攻長が?」
アースが言う
「ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は お前と同様に人の良い祖父上の下へ入り込み 悪魔の兵士に関する情報を聞き出した …従って 今度は それを 私が聞き出してやろうと思っていたのだが」
軍曹が怒って言う
「兄貴っ!ラミリツ攻長は その様な卑怯な者ではないのだっ!ラミリツ攻長は 政府の剣としてっ 自分たちと共にっ!」
アースが言う
「その攻長閣下は 国防軍総司令官である この私に 2世代目の悪魔の兵士が眠る その場所を教えては下さらなかった」
軍曹が疑問する アースが言う
「昼間も言ったが 国防軍のマスタートップシークレットは 総司令官であっても 封が解かれるその時まで 全ての情報が伏せられてる マスタートップシークレットが何処にあるのかさえ 調べる事は出来ないんだ」
軍曹が言う
「う… うむ…」
アースが言う
「しかし、国防軍がその様な状態であるにも拘らず 政府の方は逆だ 政府の攻長 ラミリツ・エーメレス・攻長閣下は 我々がやっと知りえた 1世代目だけに留まらず 2世代目の悪魔の兵士が眠る その場所までをも知っている …これがどれ程危険な事か お前にも分かるだろう?」
軍曹が言う
「う… うむ…?」
アースが言う
「では 分かったな?アーヴィン?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はあっ!?」
アースが呆気に取られて言う
「わ… 分からなかったか…」
アースが頭を押さえる 軍曹が慌てて言う
「あ、いや、その…っ すまんっ 兄貴… も、もう少し 簡単に…っ?」
アースがテーブルを叩き立ち上がって言う
「アーヴィン!直ちに 攻長閣下より 2世代目の悪魔の兵士が眠る その場所を 聞き出して来いっ!命令だっ!」
軍曹が思わず敬礼して言う
「はっ!了解… い?」
軍曹が呆気にとられて叫ぶ
「えぇええーっ!?」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】
ハイケルがベッドに寝ていて言う
「…暇だ」
ハイケルが体勢を変えて言う
「思い起こせば 入院などをしたのは初めてだ しかもこんな軽症で… これなら1週間の任務及び訓練の禁止を受けていた方が よっぽど… いや、しかし あの任務に行かなかったら 色々と…」
ドアがノックされ ハイケルが疑問する ドアの外から隊員Bの声が聞える
「少佐ぁー!バイスン隊員とその他 レギスト隊員 代表8名でありまーす!」
ハイケルが呆気に取られる ドアの外から隊員Aの声が聞える
「けど、そう言うと バイちゃんは レギスト隊員の代表に 入らないって事にならないか?」
ドアの外から隊員Bの驚いた声が聞える
「えー?それじゃー もう1回ー 少佐ぁー!レギスト隊員代表 バイスン隊員と その他も レギスト隊員代表の… でも、こうすると なんか 面倒だしー?」
ドアの外から隊員Cの声が聞える
「そんなのどうでも良いだろ!?だったら最初からっ!」
ハイケルが苦笑して上体を起こして 言う
「レギスト隊員代表 バイスン隊員と 同じく8名であるなら 入れ」
ドアの外で隊員たちが衝撃を受け 隊員Bがドアを開けながら言う
「そうそう!これが正解ー!って事で 少佐ぁー!失礼しますでありまーす!」
隊員Aが苦笑して言う
「まったく 調子良いんだから バイちゃんは」
隊員Bが笑う
「にひひっ」
隊員たちが病室に入り敬礼する ハイケルが言う
「ついでに 医療施設内では 基本敬礼は不要とされている」
隊員たちが衝撃を受けて 敬礼を解除する ハイケルが言う
「それで 私に何か用か?」
隊員Aが隊員たちへ視線をむけつつ言う
「あー… えっと その…っ」
隊員Bが笑み ハイケルの横へ来て言う
「はーっ!それは もっちろーん!俺たちは 少佐のお見舞いに参りましたー!少佐ぁー!」
ハイケルが言う
「見舞い?…駐屯地内の医療施設への入院に 見舞いは不要だぞ」
隊員Bが笑顔で言う
「はーっ!そう言う事なので!お見舞いの品とかは 無いのでありまーす!少佐ぁー!」
隊員たちが衝撃を受ける ハイケルが苦笑して言う
「そちらは調べたのだな?」
隊員Bが言う
「はーっ!さっき ベリハース院長にお伺いしましたー!ついでに 少佐は本当は入院なんてしなくても良いだけど そうでもしないと言う事を聞かない 困った悪魔の兵士なので 無理やり入院させる事にしたー って情報も聞いてきましたー!少佐ぁー?」
隊員たちが衝撃を受け隊員Aが慌てて言う
「バ、バイちゃんっ!」
ハイケルが言う
「それは私の方でも 予測していた事だ 気にするな」
隊員Bが言う
「はーっ!って 事で 俺たちは そんな少佐へ 今日の報告でありまーす!」
ハイケルが言う
「報告?」
隊員Aが言う
「はい、今日あの… MT77を製作した 銃職人のザキル殿が MT77の改良型を作るので その基本とするデータを取りたいと この駐屯地へお越しになったんです」
ハイケルが言う
「ああ… そう言えばそうだったな …の割には 私の下へは顔を出さなかったが」
隊員Cが言う
「少佐のデータの方は既に入手しているので 今度は その少佐と共に戦う隊員である 俺たちのデータを欲しいって」
ハイケルが疑問して言う
「お前たちの?」
隊員Fが言う
「それで 少佐も軍曹も居らっしゃらなかったので バックス中佐へお伺いした所 対帝国との戦いに使用する銃に必要なら 俺たちのデータを保存してる 情報部のデータを そのまま渡してしまって良いと言われたので マイク少佐にお願いして 以前取った俺たちの能力データを 渡して頂きました」
ハイケルが言う
「そうか… お前たちの個人データとなれば 私の一存だけではなしえなかった事だ 偶然ではあったが バックス中佐へ尋ねてくれた事は 結果として良かった」
隊員Bが言う
「それで それで!少佐ぁー!」
隊員Aが苦笑して言う
「バイちゃん 少佐は入院治療中なんだから 報告事項は短くするようにって 院長から言われただろ?」
隊員Cが言う
「ザキル殿へ 俺たちのデータを渡したって言う 重要事項はお伝えしたから もう退散だな?」
隊員Bが不満そうに言う
「えー」
隊員Aが苦笑して言う
「シャワールームで話せない分 今、話したいのは分かるけど」
隊員Bが表情を落として言う
「うんー…」
ハイケルが言う
「問題ない ベリハース院長からの ”少佐は本当は入院なんてしなくても良いだけど そうでもしないと言う事を聞かない 困った悪魔の兵士なので 無理やり入院させる事にした” との機密情報を入手した ついでに その様な状態で入院などさせられているせいで 暇を持て余していた所だ」
隊員たちが焦りの汗を掻く ハイケルが言う
「…いや、それこそ バイスン隊員の その話の続きは シャワールームで聞いても良いかもな」
隊員Bが喜んで言う
「じゃ そうしましょうかー!少佐ぁー!」
隊員Aが慌てて言う
「駄目だろっ!?」
ハイケルが隊員Aを見る 隊員Aが衝撃を受けて慌てて言う
「あっ!いやっ!そのっ!俺はっ バイちゃんに言ったのでありましてっ 決して少佐へ言った訳ではっ!」
隊員Fが苦笑して言う
「まぁ シャワーくらい浴びに行っても 良いかもしれませんが なるべく安静にして 早く部隊へ戻ってきて下さい 少佐」
ハイケルが呆気に取られる 隊員Nが苦笑して言う
「そう言う事ですよ 少佐」
隊員Aが言う
「いくら悪魔の兵士でも 耐久力は普通だって エルム少佐も言ってましたし」
隊員Bが言う
「えー?そうなのー?」
隊員Aが慌てて言う
「言ってたじゃんっ!バイちゃんっ!?」
隊員Bが苦笑して言う
「ひににっ」
ハイケルが言う
「そうだな …そのエルム少佐とは違い お前たちには苦労を掛けるが」
隊員Bが言う
「全ー然 苦労なんて 何にも無いでありますー!少佐ぁー!」
ハイケルが呆気に取られて隊員Bを見る 隊員Bが笑んで言う
「だって 皆 今日は そのお陰で チョー楽しかったしー!俺はそっちの方を ご報告したくって お見舞いに来たのでありますー!少佐ぁー!」
ハイケルが疑問し言う
「どう言う意味だ?」
隊員Aが苦笑して言う
「もー しょうがないな バイちゃんは そこまで言っちゃったんじゃ 全部報告せずには帰れないじゃないか」
隊員Bが笑んで言う
「にひひっ だってー 俺1人だと報告 難しいんだもんー」
隊員たちが顔を見合わせて苦笑する
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツがデスクの椅子に座っていて言う
「はっきり言って 幻滅!あれが ホントに元国防軍総司令官であった ラゼル様の孫である 現国防軍総司令官の言う事?」
軍曹がデスクの前に立っていて 表情を困らせて言う
「は… はぁ… その…」
メイドがやって来て言う
「失礼致します」
メイドが紅茶を1つ応接テーブルへ置いて言う
「どうぞ」
軍曹が振り返って言う
「う… うむ…」
メイドがラミリツのデスクへ紅茶を置く ラミリツが不満そうに紅茶を一口飲む メイドがドアの前で礼をして立ち去る 軍曹がそれを見送った後ラミリツを見る ラミリツが言う
「飲めば?ラゼル様が ご愛飲されてた紅茶だよ?」
軍曹が呆気にとられて言う
「あ… ああ そう言えば… 道理で懐かしい香りが…?」
軍曹が応接テーブルに置かれた紅茶を見てから ラミリツを見る ラミリツが言う
「別に 好きじゃないんだったら良いけど …そう言えばアンタ いつも食後の飲み物は コーヒーにしてるもんね?…見た目は似てても 好みは違うんだ?」
ラミリツが紅茶に角砂糖をひとつ入れる 軍曹が呆気にとられてから言う
「あ… いや~?以前は良く紅茶の方を 飲用していたのだが 最近は マスターの店で コーヒーを飲んでいるせいか…」
ラミリツが言う
「ふーん?僕は逆 ラゼル様やエルムと一緒に 紅茶ばっか飲んでたから なんか 癖になっちゃって」
ラミリツがスプーンで紅茶を軽くかき混ぜる 軍曹が言う
「おおっ では 逆ではあるが 自分も マスターや少佐と コーヒーばかりを飲んでいた為 癖になってしまったらしいのだ ラミリツ攻長とは逆でも同じなのだ!」
ラミリツが言う
「けど、言っとくけど エルムの方の …2世代目の悪魔の兵士が眠る場所は 教えないから」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?」
ラミリツが紅茶のカップを置いて言う
「どうせアンタの兄上 ハブロス総司令官から その場所を聞き出して来いって 言われて来たんだろ?」
軍曹が慌てて言う
「な、何故それをっ!?」
ラミリツが言う
「アンタと違って 馬鹿じゃないから 分かるんだよ 普通」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが言う
「だから 屋敷に入れはしたけど それ飲んだら 帰ってよね?」
軍曹が困って言う
「あ… いや… その…っ」
ラミリツが紅茶を一口飲んでから言う
「ああ… コーヒーの方が良いって言うなら 替えさせるし」
軍曹が困って言う
「いや、そうではなくて…っ ラミリツ攻長」
ラミリツが言う
「そう言えば 忘れてた アンタに頼みがあったんだ」
軍曹が反応して言う
「む?自分に頼みとは 何だろうか?」
ラミリツが言う
「国防軍総司令本部へ行ったのも 本当は それ伝えるつもりだったのに アンタの兄上があんな事言うもんだから すっかり忘れちゃって帰って来ちゃったんだよ だから アンタが伝えといて 頼みって言うか これ 命令だから?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「め、命令… 自分は 兄貴にも ラミリツ攻長にも 命令をされているが …自分は確か 防長閣下であった様な…?」
軍曹が首を傾げる ラミリツが言う
「何か言った?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「い、いやっ!何もっ!」
ラミリツが言う
「じゃぁ ちゃんと聞いて 理解してから帰るんだよ?良い?」
軍曹が言う
「う、うむ… そんなに難しい事なのであろうか…?難なら メモを取って…」
ラミリツが言う
「メモは駄目 そもそも そう言うものを消してきたって 報告なのに また 情報を残したら 意味がないだろ?」
軍曹が疑問して言う
「む?そ、そうなのか…?ではっ しっかと聞いて 理解してから 帰るのだっ!」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】
隊員Bが言う
「それから!それから!えーっと なんだっけ?あの 支える所のー」
隊員Nが言う
「グリップだよ グリップ!」
隊員Bが言う
「ああ そう!それそれ!それは 縦方向にした方が良いとかってー それナッちゃんが言ったら ザキル君チョー良い情報だって!それにしたら 押さえに回る隊員の数を増やせるから もっと反動を抑えることが出来るって 張り切ってましたー!」
ハイケルが言う
「そうか… では ベリハース院長が言っていた通り これでエルム少佐との筋力の差は 解消されるのかもしれない」
隊員Nが言う
「それから フッちゃん隊員のデータが凄いってな?」
隊員Bが言う
「あー!そうそうー!」
ハイケルが疑問して言う
「フレッド隊員のデータが どうかしたのか?」
ハイケルが隊員Fを見る 隊員Fが衝撃を受ける 隊員Bが言う
「フッちゃんは 元々 警空のパイロット目指していたから えーと… なんだっけ?何か 色々チョー凄くってー!」
隊員Nが言う
「そうそう!」
ハイケルが疑問して言う
「色々とは?」
ハイケルが隊員Fを見る 隊員Fが衝撃を受け慌てて言う
「あっ いやっ そんな 色々なんて言う程のものではなくっ」
隊員Aが苦笑して言う
「フレッド隊員の 数値計算能力なら 戦闘機の目標拘束システムを使って 機動部隊の銃であっても 少佐のジャストショットと同じ事が 出来るかもしれないらしいんです」
ハイケルが呆気に取られて言う
「そうなのか?」
隊員Fが慌てて言う
「あっ い、いやっ でもっ そのっ!ザキル殿もっ まだ 作ってみないと 分からないと…っ それに 今までにない事なので 実用にこぎつけるまでは かなり時間が掛かるとも 言ってましたんで…っ」
隊員Aが言う
「けど それで本当に 少佐と同じ様に ジャストショットが出来る様になったら 凄いよなー 小銃メインアームチームのヒーローだよ フレッド隊員は」
隊員Fが慌てて言う
「いやっ だから まだ…っ その銃が出来るとも 決まってない訳だから そんなに 期待させないでくれよ アラン隊員?」
隊員Cが苦笑して言う
「なーにも 謙遜する事ないだろ?今後 レギストで少佐の期待を貰えるのは フレッド隊員で決まりだな?」
隊員Fが言う
「だからっ そんなプレッシャー掛けるのは やめてくれって サッちゃんっ」
隊員Cが衝撃を受けて言う
「サッちゃん 言うなっ!」
隊員たちが笑う ハイケルが隊員たちを見て微笑する ドアがノックされ ベリハースが入って来て言う
「こらこら 君たち?面会時間はとっくに過ぎているだろう?それに ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐は」
ハイケルが衝撃を受け羞恥心を堪える 隊員たちが笑いを堪える ベリハースが続けて言う
「軽症とは言え 入院患者なんだから 面会は短時間に終わらせる様にと 言った筈だね?」
隊員たちが軽く頭を下げつつ言う
「は… はい…」 「すみません…」
ハイケルが言う
「私が暇潰しの為に 話でもしていろと命じただけだ 彼らに責任はない」
隊員たちがハイケルを見る ベリハースが苦笑して言う
「でしたら その彼らへ そろそろ退室するようにと 命じて下さいね?少佐?」
ハイケルが言う
「了解」
ベリハースが部屋を出て行く 隊員たちが顔を見合わせる
【 ハブロス家 アースの部屋 】
軍曹が言う
「…と言う事で!政府のデータベースや その他 政府の関連する施設のデータベースからは 初世代の悪の兵士に関する情報 及び レギストの情報は 全て消去させたと言う事なのだ!更には それらのデータが再び入力される事の無いように 常に監視を行わせると!しかし、既にその情報を知ってしまった者たちの 頭の中や 個人の記憶装置などに関しては どうしても処理が行き届かないので 今後も相応の対策を 取って欲しい!…との事である!兄貴っ!」
アースが言う
「よしっ 簡単とは言え 長い言葉を良く覚えて来たな アーヴィン?」
軍曹が衝撃を受けてから言う
「う、うむ…」
アースが言う
「で?お前にとってはキャパオーバーな それらの情報を入力された事により お前は私からの 大元の命令を忘れて 帰って来てしまった訳か…」
軍曹が衝撃を受ける アースが溜息を付いて言う
「流石はメイリス家の… いや、アーヴィンと長くを共にしてきた攻長だ たった半年とは言え アーヴィンを使いこなす術を 得られてしまったらしい」
軍曹が表情を困らせて言う
「あ… いや、兄貴?その… いくら俺でも そこまで馬鹿ではないのだが…?」
アースが言う
「そうだったのか?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「うぐっ!じ、自分は 確か 防長閣下で… それなりに…」
アースが言う
「冗談だ アーヴィン」
軍曹がアースを見て言う
「は?はぁ…?」
アースが苦笑して言う
「ただ、攻長閣下からのご命令は しっかりとこなしてくれた様だが お前の兄であり 国防軍総司令官でもある 私からの命令は 無視なのか?」
軍曹が言う
「あ、いや それは勿論 訊いてはみたのだが… いや、訊く前から 断られてしまったのだ」
アースが言う
「ならば せめて その理由位は 訊いて来て欲しかったのだが …お前の事だ あの攻長閣下に 嫌だ と一言言われれば 追求は出来なかったのだろう?」
軍曹が表情を困らせて言う
「う… うむー…」
アースが溜息を吐いて言う
「まったく… 何処までも優し過ぎるというのは やはり 困ったものだ …祖父上も同じだったが」
アースがタバコに火を付けようとする 軍曹がふと思い出して言う
「しかし、その…」
アースが軍曹を見て言う
「うん?」
軍曹が言う
「そんなに心配などしなくとも!ラミリツ攻長は 自分たちの… 国防軍の敵には ならないのである!」
アースが表情を顰めて言う
「…何故 そうと言い切れる?」
軍曹が言う
「それは なんと言うか…」
軍曹の脳裏に記憶が蘇る (ラミリツが紅茶を飲んでいる様子 その奥のデスクの端に エルムのM82が大切に置かれている) 軍曹が視線を泳がせてから言う
「ラミリツ攻長は… 祖父上やエルム少佐の事を 本当に!…まるでご自分の家族の様に!大切に思って下されているのだ!そのラミリツ攻長が 自分たちを裏切るような事は!」
アースが怒ってデスクを叩く 軍曹が驚いてアースを見る アースが言う
「アーヴィンっ!お前は忘れたのかっ?彼の兄である メイリス元長官が 何をしたのかをっ!」
軍曹が言う
「そ、それは 分かっているが…」
アースが言う
「過去の事だけではない!今回とて 奴のせいで どれ程の人命が失われた事かっ!」
軍曹が言う
「そ、それは もちろん 分かっているっ!しかし ラミリツ攻長は!そのメイリス元長官をっ …ご自分の兄君へ銃を向けてまで 少佐のデコイを守ってくれたのであるっ!」
アースが悪笑んで言う
「フッ… 詭弁だな?」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?」
アースが言う
「それが 奴らメイリス家の作戦だと 何故気付かないんだ アーヴィン」
軍曹が驚いて言う
「はあっ?…さ、作戦?」
アースが言う
「メイリス家の連中なら 親兄弟に銃を向ける事など 大した事ではないのだろう」
軍曹が呆気に取られて言う
「そんなっ!兄貴っ!?」
アースが言う
「奴らはそう言う人間なんだっ …まだ 物である 悪魔の兵士の方がマシだ 彼らは決して裏切らず 命がけで主を守ってくれるからな?」
軍曹が怒って言う
「兄貴っ!いくら兄貴でも その様な言い方はっ ラミリツ攻長にも 少佐たちにも 失礼なのだっ!」
アースが怒って言う
「我々の父上はっ!あのメイリス家のっ!…奴らの父親に 裏切られ 心を壊されたのだぞっ!?」
軍曹が呆気に取られて言う
「ち… 父上の事に メイリス家が関わったと?」
アースが言う
「父上は国防軍の代表として 帝国との和平を取り持つ為に 帝国へ向かい… 戻ってからは別人の様に変わってしまった …それらは全て 父上の唯一無二の親友だと思われていた メイリス家の彼らの父 ソロン・フレイス・メイリスによる 画策のせいだっ!」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?か、画策…?父上がラミリツ攻長の父上様に 何かされたと言うのか?父上が帝国から戻ってから お変わりになってしまった事は もちろん自分も知っているっ し、しかし それに?」
アースが言う
「ならば 教えてやろう アーヴィン」
軍曹がアースを見る アースが言う
「当時 国防軍総司令官であった父上と共に 帝国へ向かったのは 政府の長官であったアミレス長官 そして 外交を取り仕切っていたカルメス外交長と 後1人 それが 政府警察のメイリス警察長だった」
軍曹が驚いて言う
「メイリス… 警察長っ!?」
アースが言う
「ハブロス家は 祖父上の代に エルム少佐とレギスト そして 警機を率いるメイリス隊長と力を合わせ 帝国との戦いに勝利していた …従って その次世代であった 父上と政府警察の メイリス警察長は 良き友人でもあったんだ だから父上は 帝国へ向かうに当たっての 政府側のその顔ぶれに 不満は無かった …政府の者であろうとも メイリス警察長を信じていたんだっ」
軍曹が言う
「そのメイリス警察長に 父上が 裏切られたと言うのか?」
アースが言う
「そうだっ!そもそも父上は 国防軍からの護衛を付けられない状態で 帝国へなど行く予定ではなかったっ それなのに メイリス警察長が この同行を拒めば 国防軍の主権を奪われると脅迫し …結果としてっ」
軍曹が表情を困らせて言う
「し、しかし… 確か父上は 帝国へは連れて行かれない 国防軍の隊員の代わりとして 既に国防軍を脱退していたエルム少佐の小隊を 祖父上から借り受け 連れて行った筈であるっ お陰で 父上は逃げ戻る事が出来たとっ」
アースが言う
「そうだな 最初からエルム少佐とその小隊… デコイたちを連れて行っていれば 父上はご無事であっただろう …だが 祖父上はそうはさせて下さらなかった そのせいで帝国から救出された父上は すでに 精神崩壊状態だったんだ」
軍曹が表情を落として言う
「う…うむ…」
アースが言う
「お前も覚えているだろう?帝国から戻った父上は ともすれば お前の持つアールスローン戦記の原本を渡せと叫び散らしたり 国防軍のデータを漁り散らしたり… とても 総司令官の任務を行えるような状態ではなかった 当然 国防軍の長である 総司令官の位を剥奪され 果てには 自室のベッドに縛り付けられ…」
軍曹が視線を落として言う
「だが それは全て帝国へ行った事が原因なのだ アミレス長官も 帝国から戻って… そちらは詳しくは知らんが 政府の長官としての行動が取られないようになったと …しかし 例え メイリス警察長が 父上を帝国へ誘ったとあったとしても それは…」
アースが言う
「帝国から戻ったアミレス長官も アールスローン戦記の原本を求め 国防軍のデータベースへ不正アクセスを行ったりしていた このハブロス家へ入り込もうとして衛兵に捕まった事もあった そして、あのカルメス元長官まで 結果として同じ… 帝国へ行った者は皆 精神に異常をきたし アールスローン戦記の原本を得ようと 行動を起こす …だが メイリス警察長だけは違っていた」
軍曹が驚いてアースを見る アースが言う
「帝国へ行ったにも拘らず 彼だけは アールスローン戦記の原本を求める行動は起さなかった …おかしいと思わないか?アーヴィン?」
軍曹が言う
「う、うむ それは… 確かに?」
アースが言う
「これは推測だが メイリス警察長が無事であった理由 それは …自分ではなく 代わりに シェイム・トルゥース・メイリスを 向かわせていたのではないだろうか?」
軍曹が驚いて言う
「な、なんとっ」
アースが言う
「父親であった ソロン・フレイス・メイリス警察長が 次の政府長官を見据え 息子のシェイム・トルゥース・メイリスを自分の代わりに 帝国へ向かわせていた… だから 結果として帝国へ行かなかった父親は無事で 帝国へ向かった息子は 後の現代で あのような事件を起こした」
軍曹が納得して言う
「なるほど…」
アースが言う
「そして、恐らく 無事であった父親は 帝国で何が起きたのかを餌に 外交を取り仕切っていた当時のカルメス外交長を揺すり 彼らと共に 帝国へ向かった事も理由にこじ付け 階級の下るメイリス家でありながらも 政府の長の座を得る事となった」
軍曹が呆気に取られる アースが言う
「それを裏付けるものとして カルメス家は 事あるごとに メイリス家と手を組み 様々な事業を行っている …高位富裕層のカルメス家が 上位富裕層のメイリス家へ多くの貸しを作る形でばかりだ」
軍曹が気付いて言う
「うむ… うん?そう言えば 帝国で起きた事というのは 一体何であったのだろうか?メイリス元長官がカルメス元長官を揺すっていたとしたら それは 誰かに知られてはマズイ情報と言う事であろうか…?今回の情報を消したのと同じ様に…?」
アースが言う
「そうだな 国防軍としても ハイケル少佐のマスタートップシークレットに関わる情報が 手玉に取られる様な事があれば その何者かに揺すられる可能性はある」
軍曹が言う
「おお!では、ラミリツ攻長は やはり我々の味方と言う事で!」
アースが言う
「しかし、今回の場合なら 難しくはあるが マスタートップシークレットの場所を 移動させる事が可能だ」
軍曹が驚いて言う
「なんとっ!?あの地下の施設を であるか!?」
アースが言う
「他にも 簡単なものであるなら 警備を強化するなどの処置や 偽の情報を作り 翻弄すると言う手段を取る事も出来る 攻長閣下がお前へ伝えた 今後も相応の対策を 取って欲しい と言うのは そう言った事を示している」
軍曹が衝撃を受けて言う
「のぉあっ!す…凄いのだ 自分にはまったく… さっぱり…」
アースが言う
「で、分かったか?アーヴィン?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はぇ!?」
アースが軍曹を強く見て言う
「メイリス家は 元々 そう言った薄汚い連中なんだ ラミリツ攻長も 何時お前を裏切り ともすれば アールスローン戦記の原本を奪おうと 2世代目の悪魔の兵士が眠る マスタートップシークレットを餌に 我々を揺すって来るとも分からない」
軍曹が表情を落として言う
「じ… 自分は そんな事は…」
アースが言う
「良く考えるんだ アーヴィン お前にとって 誰が味方なのか 敵なのかを」
軍曹が表情を困らせて言う
「う… うむ…」
アースが言う
「下がって良い」
軍曹がアースを見てから 部屋を出て行く
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】
ハイケルがベッドに寝ていて目を開き 天井を見る ハイケルが間を置いて言う
「…暇だ」
ハイケルが溜息を吐く
【 マスターの店 】
軍曹がコーヒーを前に考え込んでいる マスターが遠目に見てから苦笑して言う
「一部隊の軍曹ならともかく 高位富裕層のお方や 果ては 防長閣下ともなると 色々と悩みも多いんだろうな?」
軍曹が衝撃を受け 表情を困らせて言う
「あ…っ いえ… その…」
マスターが軍曹のコーヒーを下げ 代わりに紅茶を置く 軍曹が疑問する マスターが微笑して言う
「喫茶店は何も コーヒーだけ置いてる訳じゃないんだぜ?気分を癒したり 落ち着かせたり… そう言った効果は 紅茶の方が高いと言われてるんだ」
軍曹が感心して言う
「ほぉー そうなのでありますか …だから 祖父上は紅茶ばかりを 飲用されていたのだろうか?」
軍曹が紅茶の香りに気付いて言う
「ん?あ、これは 祖父上が昔好まれていた…」
軍曹が角砂糖を取ろう伸ばした手を止め 横の氷砂糖を1スプーン入れ かき混ぜてから一口飲む マスターが微笑して言う
「ほぉー 流石 通だねー?当然の様に 氷砂糖をチョイスされるとは」
軍曹が気付き照れ隠しに苦笑して言う
「あ、いやっ これはーっ 祖父上がいつもその様に していらしたのを 見ていたものでありまして…!その…っ 自分の知識と言う訳では…」
マスターが言う
「いや、そういうものなんだろう?自分が生まれ育った環境で 自然と身につく知識や教養… その違いって奴が その人の元の品格 果ては 人格にも影響を及ぼす だから やっぱり 階級ってものが 消えないんだろうなぁ…?」
軍曹が視線を落として言う
「は… はぁ…」
マスターが気付き苦笑して言う
「けど別に それが全て 悪いってもんでもないだろ?」
軍曹がマスターを見る マスターが言う
「品格や人格はもちろん大切だが 結局 その自分が 何をやるかって言うのは 自由なんだし… 昔は考えられなかったかもしれないが 今じゃ階級が下であっても 上の方々のそれらを真似して 目指して頑張ってみたりする者もいる その逆も… あったりするのか?はははっ」
マスターが皿を拭く 軍曹が考えてから言う
「その… マスター?」
マスターが疑問して言う
「ん?」
軍曹が言う
「例えばその… 下とは言わずとも 一番上から1つ下辺りの者が 一番上を目指すとしたら… その… たった その程度の事の為に 自分の家族や兄弟を… 親友を 利用したりするような事は… あるのでありましょうか…?」
軍曹が視線を落とす マスターが気付き 皿を置いて言う
「うん …それは あるだろうね」
軍曹が驚いてマスターを見る マスターが言う
「むしろ そう言う 一番上に近い人ほど 最後まで悪あがきをしたりするよ …どうあっても 一番を取りたい …ってね?」
軍曹が表情を落として言う
「…そうで ありますか… では…」
マスターが言う
「だからこそ 富裕層の方は 常に気を張って その地位を守り 奪われないように 傷付けられないようにって 他に目を光らせている …どれ程信頼する者であっても 最後の最後まで気は抜かない …そんなんだから ご自分の精神を病まれてしまう事も 多いんだろうな…?」
軍曹がマスターを見る マスターが苦笑して言う
「それから、それを回避する為に 階級にわざと差を持たせて 友人を作るって言うのも聞く話だ …君と初めて会った時に まず俺が考えたのはそれだった」
軍曹が慌てて言う
「そんなっ!自分は…っ!」
マスターが苦笑して言う
「ああ、俺の思い過ごしだったって事は 話をしてたら すぐに分かったよ」
軍曹が苦笑する マスターが言う
「その代わり 次はすげー 心配になったなぁ?」
軍曹が疑問して言う
「へ?心配?」
マスターが言う
「こんな馬鹿なお方が あのハブロス家の?おまけに 防長閣下で…?」
軍曹が衝撃を受け落ち込んで言う
「うっ!そ、それは… 真に 申し訳なく…」
マスターが笑って言う
「っははははっ 冗談 冗談 ごめん、悪かった 今のは 俺の失言だ 大変失礼を …防長閣下?」
マスターが頭を下げる 軍曹が衝撃を受け慌てて言う
「のあっ!?い、いえっ!自分が馬鹿で 困り者である事はっ 間違いないのでありますのでっ どうかっ!」
マスターが軍曹の様子を伺い見て 苦笑して言う
「おいおい ここまで言われても 怒らないのか?ホント筋金入りに優しいんだなぁ アーヴィン君は?」
軍曹が言う
「は… はぁ?自分はそのー… 自分が優しいのかどうかは 良く分からないのでありますが …兄や 富裕層の方々に関しましては… 正直 恐ろしいと感じる事があります」
マスターが軍曹を見る 軍曹が視線を落として言う
「特に兄は… 兄弟であり 仲良く話す時もありますから そう言った時は 例え何かを注意されたとしても 恐ろしいと感じる事はないのでありますが… 家の事や 国防軍の事を話す時の兄は… なんと言うか とても人として 冷たい印象が強く… …しかしっ」
軍曹がマスターを見て言う
「兄がハブロス家や国防軍を守る為にっ そう言った世界にて戦っていると言うのであれば!自分はもちろんっ 協力したいと思っているのであります!…しかし その 相手が…」
マスターが言う
「うん… そうか… なら、アーヴィン君が協力するのに 何も お兄様と同じ手法を取る必要は無いんだ」
軍曹が軽く驚いて言う
「はぇ…?」
マスターが言う
「アーヴィン君のお兄様が… ハブロス総司令官が 冷たく… 冷徹に立ち向かう方であるのなら 尚更 弟のアーヴィン君は逆に 今のまま 何の画策も無く向かって行くって言うのも 良いんじゃないかな?それこそ 何も疑わず 相手を信じて」
軍曹が驚き慌てて言う
「なぁあっ!?い、いやっ マスターっ?それではっ!…いくら自分でも その様な事をしては 相手の思うがままに されてしまうと言う事が 分かるのでありましてっ!」
マスターが苦笑して言う
「それじゃ それこそ?アーヴィン君が 全力で頭を使って 相手に惑わされないように!…ってしたら それは 叶うのかい?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「いえっ!無理でありますっ」
マスターが言う
「だろぉ?」
マスターが自分用のコーヒーを淹れながら言う
「そもそも 富裕層方の そう言った騙し騙されの世界ってのは複雑で ちょっとやそっとじゃ手に負えるものじゃない 彼らは元々そう言う世界に生まれ 生きているんだ… そこへ新たに参戦しようと 今度は 全てを信じきれる 君のような者が来る …って言うのは 向こうにとっても 逆に扱いが難しい …冷静沈着な ハブロス総司令官と 真逆の アーヴィン防長閣下 …これは ひょっとして 最強のコンビなんじゃないか?」
軍曹が不思議そうに言う
「は、はぁ…?本当に それで上手く行くのでありましょうか?自分がコロッと騙され 兄の足を引っ張ってしまうのでは?」
マスターが言う
「ま、普通ならそうかも知れないが 君には 高位富裕層ハブロス家の力だけじゃない 国防軍の力もあり 更には あの!」
軍曹が言う
「あ、”あの”?」
マスターが言う
「レギストの仲間たちを率いる 現在 入院中の 悪魔の兵士 ハイケル・ヴォール・アーヴァイン少佐が居るんだ!君に恐れるものは 何も無ーいっ!…と?プッ…ククク」
マスターが笑う 軍曹が衝撃を受けて言う
「うっ!…マ、マスター?なんと言いましょうか?自分は 今 とてもっ 心強いような!…そうでないような?ふ、複雑な心境であります!」
マスターが笑って言う
「あっはははっ やっぱ カッコ付かないよなぁ?まずは あいつが早く退院してくれないとな?」
軍曹が苦笑して言う
「あは… は はい!…あ、それと マスター!」
軍曹が立ち上がる マスターが疑問して言う
「うん?」
軍曹が笑んで言う
「自分には 少佐やレギストの仲間たちと共に マスターも居られます!本日もお陰さまで!自分は とても安心出来ましたっ!真に 有難う御座います!」
マスターが一瞬呆気に取られた後 微笑して言う
「ああ!いつでも 来てくれたまえ!何しろ 喫茶店は憩いの場だからな?」
軍曹が敬礼して言う
「はっ!有難う御座います!マスター!では 本日はこれにて 自分は 失礼致します!」
軍曹が立ち去って行く マスターが苦笑して言う
「憩いの場に敬礼とは… 流石は 元国防軍レギスト駐屯地情報部 兼 喫茶店マリーシア だな?…さて」
マスターが店のドアに準備中の札を掛け PCへ向かいながら言う
「ここからは 憩いの場から一転 帝国様の情報を 伺ってみますかねぇ?」
【 国防軍レギスト駐屯地 病室 】
隊員Bがドアをノックして 開けながら言う
「少佐ぁー!休暇出隊のバイスン隊員と 同じく…!あれー?」
隊員Bがキョロキョロする 隊員Aが後ろから入って来て言う
「こら バイちゃんっ いくら休暇出隊でも ノックの後の返事を待つのは 礼儀で… うん?」
隊員Nが言う
「どうしたー?流石のバイちゃん隊員も 少佐に怒られ… ん?」
隊員Fが心配げに言う
「お、おい?どうした?何で皆 そんなにっ!?」
皆が部屋へ入り 呆気に取られる 隊員Bが言う
「少佐ぁー?居ないでありますかー?少佐ぁー?」
隊員たちが周囲を見渡した後 顔を見合わせ疑問する
【 マスターの店 】
店の来客鈴が鳴る マスターが反応し振り返りながら言う
「あ、申し訳ない 今日はもう …て うん?ハイケル?」
ハイケルが店のドアを押さえていて言う
「1つ どうしても 教えて欲しい事がある」
マスターが気を取り直して言う
「どうしたっ?」
ハイケルが言う
「人は…」
マスターが神妙になる ハイケルが言う
「暇過ぎて 死んでしまうと言う事も あるのだろうか?」
マスターが転ぶ ハイケルが真剣に言う
「明日になったら そのせいで 俺が死んでいるのではないかとっ …心配になって眠れなくなった」
ハイケルがカウンター席に座っている マスターが飲み物を用意しながら言う
「まったく 高位富裕層の防長閣下が 高貴なお悩みに苦しんでいる時に それに仕える筈の 悪魔の兵士は 入院してるだの 暇が理由で命の心配をしてるだの…」
ハイケルがムッとして言う
「悪かったな 大体 お前も 俺を大切にしろと 言っていただろう?あれは嘘だったのか?」
マスターが苦笑して言う
「嘘なんかじゃないが… ま、お前にとっては 切実な悩みだったのか?」
ハイケルが言う
「当然だ 戦いの中で死ぬのならまだしも 入院中のベッドの上で 暇が理由で死んだなどとなったら 死んでも死に切れないだろう?」
マスターが軽く笑って言う
「なら 死にきらずに引き返して 今のお前のままで 蘇って来なさい ハイケル君」
マスターがハーブティーを出す ハイケルがマスターを見たまま言う
「可能であるのなら 切実にそうしたいものだ… …うん?」
ハイケルが自分に出されたものに疑問する マスターが苦笑して言う
「まぁ そっちのお悩みの答えは 残念ながら調べてやれないが… とりあえず 暇が理由で …痴呆になったってならまだしも 死んでしまった って言うのは聞いた事が無いから 安心して これでも飲んで 病室へ帰りたまえ」
ハイケルが疑問して言う
「紅茶か?」
マスターが微笑して言う
「ハーブティーだ これはその中の カモミールティー 鎮静作用や不眠改善作用があるって言うから 今のお前に丁度良いだろ?」
ハイケルが言う
「ほぅ?」
ハイケルがティーカップを一度持ってから間を置いて いくつかある砂糖の種類に視線を向ける ハイケルがカップを置き 粉砂糖の入ったビンを豪快にカップへ流し込む マスターが衝撃を受けて言う
「なあっ!?」
ハイケルがスプーンでかき混ぜた後 ハーブティーを一口飲み 衝撃を受けて言う
「甘いっ」
マスターが呆れて言う
「あのなぁ… ただのハーブティーに そんなに砂糖を入れたら 当たり前だろっ?」
ハイケルが不満そうに言う
「お前の事だ また 俺に苦いものを飲ませようとしているのかと思ったんだ…」
ハイケルが不満そうにハーブティーを口へ進める マスターが呆気に取られた後笑って言う
「あっはははっ そう言えば昔 珍しく風邪を引いたお前に 風邪の特効薬だって言う 漢方薬をコーヒーに混ぜて飲ませたっけなぁ?今考えると あれ 大間違えだったわぁ?」
ハイケルがハーブティーを噴き出す マスターが笑う
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
軍曹が表情を困らせて言う
「あ… あのー… ラミリツ攻長?」
ラミリツが紅茶のカップに角砂糖を縦に5個積み 6個目を積もうとすると 下位の角砂糖が溶け出し傾いて崩れる ラミリツが言う
「あぁっ …もうっ 声掛けるなって 言っただろっ!?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「うっ!うむ… それは すまん… しかし 自分は そのー…」
ラミリツが不満げに 紅茶をスプーンでかき混ぜる 軍曹が表情を顰めて言う
「コーヒーならまだしも… 流石に 紅茶へ角砂糖6個は 少々多いのでは なかろうかと… そのー 折角の 高級紅茶メッシタールティーの 繊細な味も 分からなくなってしまうのだ」
ラミリツが言う
「メッシタールじゃなくて メッスシタール …高級とか 高位のって意味を表す スを抜いたら 折角の名前と味が 馬鹿みたいじゃないか?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「うっ うむ… それは すまん… しかし、ラミリツ攻長 流石にその紅茶に 砂糖6個は…」
ラミリツが紅茶を一口飲んで衝撃を受けて言う
「甘ぁあっ!」
軍曹が苦笑して言う
「それはそうなのだ… そもそも メッシタール… あ、メッスシタールティーには 最初から 角砂糖1つ分の砂糖が 入れられて出されるものなのだ」
ラミリツが言う
「へぇー?良く知ってるじゃん?他の事は全然知らないのに?」
軍曹が苦笑して言う
「う、うむ… それは 昔 その話を聞いた時 自分は その… 最初の砂糖を入れるのは 誰なのであろうか?と考えたものであるから たまたま 覚えていたのだ」
ラミリツが言う
「そんなの 紅茶を入れた メイドか執事に決まってるだろ?分かれよ?普通」
軍曹が不思議そうに言う
「ふむ… やはりそうであるのか… では 初めてそのメッシタールティーを作ったのは やはり メイドか執事であったのだろうか?その様な作法のある紅茶は 他にはないのである」
ラミリツが言う
「メッスシタールっ」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが言う
「まぁ… そう言えば 誰なんだろうね?考えた事無かったや…」
軍曹が言う
「ふむ…」
ラミリツが紅茶を一口飲み 衝撃を受けて言う
「甘ぁあっ」
軍曹が衝撃を受けた後 軽く笑って言う
「その様な悪戯をするからである 祖父上が言っていたのだ 例え 富裕層であろうが無かろうが 食べ物や飲み物は 粗末にしてはいけないのである …それから 食事やお茶は 楽しく取るようにと!しかし 楽しくと言っても 悪戯で楽しむのは 間違えなのだ」
ラミリツが軍曹を見た後 視線を逸らして言う
「アンタが居たから 何となく 思い出してやっちゃったんだよ… …だから これはアンタのせい だから これはアンタが飲んで!命令!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「はぇっ!?」
ラミリツがカップを軍曹へ向ける 軍曹が受け取り紅茶をじっくり見て 表情を顰めて言う
「さ、砂糖6個… いや、その実は7個が入った… どう見ても甘そうな… しかも カップの底には 今だ溶けてもおらない砂糖まで 見えているのだが… 最近無糖コーヒーに 慣れてしまった自分に これを? …のわーっ!?」
ラミリツがスプーンで紅茶をかき混ぜて言う
「それじゃ これは ちょっとだけ 僕も責任取って サービス …言っとくけど エルムは 砂糖が溶け残ってても そのまま飲んでたんだからね?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えぇえっ!?こ、これを あのエルム少佐がっ!?」
ラミリツがエルムの真似をして言う
「”問題ない”」
軍曹が衝撃を受けた後 苦笑して言う
「…あまり似ていないのだ」
ラミリツが衝撃を受け そっぽを向いて言う
「ふんっ」
軍曹が微笑した後 頭をひねって考えて言う
「それにしても あのエルム少佐が… 実は これほどの甘党であったとは…」
ラミリツが軍曹の分の紅茶を取って言う
「エルムは 味覚が無いんだって」
軍曹が驚いてラミリツを見る ラミリツが紅茶を一口飲んで言う
「だから ラゼル様とのお茶の時間を無駄にしない為に 砂糖でエネルギー補給するんだって …ホント そう言う考え方 エルムらしいよね?」
軍曹が呆気に取られた後 苦笑から笑顔になって言う
「うむっ!やはり ラミリツ攻長は 祖父上やエルム少佐の事が 大好きなのである!自分は嬉しいのである!」
ラミリツが呆気に取られる 軍曹が紅茶を一気飲みする 軍曹が衝撃を受け叫ぶ
「甘ぁああーっ!」
軍曹が強烈な甘さに表情を顰めている ラミリツが呆気に取られた状態から笑い出す 軍曹がラミリツの笑顔に呆気に取られる ラミリツが笑ったまま言う
「何それ?そんなの 今更 当たり前だろ?」
軍曹が驚く ラミリツが笑って言う
「砂糖7個分だよ?甘いに 決まってるじゃない?やっぱ アンタ 馬鹿だよ?っははははっ!」
ラミリツが笑っている 軍曹が呆気に取られた後笑って言う
「そ、それは勿論 自分も 分かっていたのだが っははははっ…」
軍曹がラミリツに取られた紅茶を奪い返して一気飲みする ラミリツが衝撃を受けて叫ぶ
「あー!それ僕のっ!」
軍曹が満足そうに言う
「では やはり飲み物で悪戯をしては いけないのである!」
ラミリツが怒って言う
「もー!絶対 仕返ししてやるんだからね?」
軍曹が衝撃を受け慌てる
「はぇっ!?し、仕返し!?そ、それは 困るのだ… あ!それに 祖父上が 食べ物や飲み物ではと!」
ラミリツが言う
「それじゃ 食べ物や飲み物以外で!…うーん 何が良いかなぁ…?ねぇ?痛いのと熱いの どっちが良い?選ばせてあげる!」
軍曹が衝撃を受けて言う
「えっ!?そ、それは どちらも 嫌なのだが… と、言うか」
ラミリツが言う
「どっちかっ!」
軍曹が困って言う
「えっ!?う うーん…」
ラミリツがじっと見ている 軍曹が焦りの汗を掻き観念して言う
「で、ではっ!百歩譲って!熱い方で!」
ラミリツが言う
「じゃ、痛い方ね?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なんとーっ!?」
【 国防軍レギスト駐屯地 通路~病室 】
ハイケルが通路を歩きながら言う
「砂糖を入れすぎたせいで カモミールティーとやらの味は確認出来なかったが 鎮静作用とやらのせいか 少し眠くなって来た …このまま残りの入院日数も 眠り続けてしまえば良いんだ」
ハイケルがドアノブを掴んで言う
「流石に 30時間以上の睡眠持続は無理か…」
ハイケルが溜息を吐きつつドアを開けると 隊員Bの声が聞こえ出す
「じゃー!そこからは 少佐にお願いして どっかーん!って!…ん?」
ハイケルが病室の中を見て呆気に取られて言う
「…なっ?」
ハイケルの視線の先 隊員ABFNが すっかり和んでいる 隊員AとFが衝撃を受け 慌てて立ち上がって敬礼して言う
「あっ!しょ、少佐っ」 「す、すみませんっ!少佐っ!自分は止めたのですがっ!」
隊員Bが笑顔で言う
「おっかえりなさーい!少佐ぁー!」
隊員Nが笑って言う
「少佐 遅いから 折角持ってきた お見舞いの饅頭 全部食っちゃいましたよー?」
隊員BがNへ言う
「ナッちゃん!あの饅頭って奴 チョー旨かったよー!あれ何処で売ってるのー?」
隊員Nが言う
「旨いだろー?うちの爺ちゃん家 大和菓子屋やってんだよ」
隊員Bが衝撃を受け驚いて言う
「えー!スゲー!大和菓子って チョー高級なお菓子だよね!?アールスローンじゃ 富裕層の中でも 上の方の人じゃないとー?」
ハイケルが言う
「…今日は 休暇である為 報告事項は無いと思ったのだが?」
隊員Bが言う
「はー!少佐ぁー!報告事項は なーんにも無いでありまーす!少佐ぁー」
隊員Nが言う
「そうでありまーす!」
隊員BとNがスナック菓子を食べる 隊員AとFが衝撃を受け 隊員Fが言う
「す、すげぇ… バイスン隊員だけなら 兎も角 ナクス隊員まで まるで友人の家みたいに 堂々と…」
隊員Aが苦笑して言う
「場所も場所だけど なにしろ 少佐の前でってのが 凄いよな…?」
隊員Fと隊員Aがハイケルを見る ハイケルが呆気に取られた後 隊員Aと隊員Fを見て言う
「それで?」
隊員Aと隊員Fが衝撃を受ける ハイケルが隊員BとNを見て言う
「報告事項は無いのに 何故ここへ?」
隊員Bがスナック菓子を食べながら言う
「それはとーぜーん?少佐のお見舞いでありまーす!」
隊員Nが飲み物を飲みながら言う
「って言うか トレーニングの後に 皆でどっか集まろうって話になったのが 先じゃなかったっけ?」
隊員Bが気付いて言う
「あー そうだったかもー?」
隊員Aが言う
「そうしたら バイちゃんが その前に皆で少佐の お見舞い2日目に行こうって」
隊員Fが言う
「そうしたら 更に ナクス隊員が それじゃぁ きっと昨日と同じ位 遅くまで話に明け暮れてしまうんじゃって 話になり…」
隊員Bが言う
「だったら 少佐と一緒に 集まりしちゃおうよー!って事で 色々買って来たんでありまーす!少佐ぁー!」
隊員Nが苦笑して言う
「流石に病室じゃ アルコール禁止って事で 先日20を迎えたアッちゃん隊員と 年長フッちゃん隊員は 嫌がってましたけどねー?ケケケッ」
隊員Aと隊員Fが衝撃を受けて言う
「「なぁあっ!そ、それはっ!」」
隊員Bが笑う
「にひひっ ナッちゃん ナイスー!」
隊員Bと隊員Nが片手でハイタッチをする 隊員Aと隊員Fが衝撃を受けて言う
「「ナクス隊員っ!」」
ハイケルが隊員Aと隊員Fへ向いて言う
「それは悪かったな」
隊員Aと隊員Fが衝撃を受け 慌てて言う
「い、いえっ!」 「そ、そもそも 病室で集まりしちゃおうって言うのが 間違ってますから…」
ハイケルが室内に進み入り制服を掛けベッドへ腰掛ける 隊員Bが言う
「えー?何で何でー?入院して 病室に1人で居ても 詰まんないじゃーん?…ですよねー?少佐ぁー?」
ハイケルが言う
「そうだな」
隊員Fが苦笑して言う
「いや… そもそも 安静にするって言うのは ある意味 そう言う事でもあったり…」
隊員Nが言う
「けど、暇すぎるって言うのも 辛くないですかー?少佐?」
ハイケルが言う
「その通りだな」
隊員Aが苦笑して言う
「だからって 当然 暇すぎても 人間死にはしないけど」
ハイケルが衝撃を受け視線を逸らす 隊員Fが言う
「うるさ過ぎて 憤死するって事は あるかもしれないしな?」
ハイケルが隊員Fを横目に見て言う
「そうなのか?」
隊員Fが表情を困らせて言う
「えっ!?いやぁ… 実際に うるさい事に腹を立てて 死んだってのは 聞いたこと無いですけど…」
隊員Aが苦笑して言う
「まぁ 憤死って言葉があるくらいだから 無い事は無いんじゃないか?」
隊員Fが言う
「うん… まぁ そうだろうなぁ?」
ハイケルが考える 隊員Bが言う
「あー それじゃぁさー?やっぱり 逆の 寂しくて死んじゃうって事も あるんじゃない?ほら たまに聞くじゃん?えっとぉー?」
隊員Nが言う
「あ、もしかして バイちゃん隊員 孤独死の事 言おうとしてる?」
隊員Bが閃いて言う
「あー!そうそうー!それそれー!さっすが ナッちゃんー!」
隊員Nが笑う 隊員Aと隊員Fが苦笑し 隊員Aが言う
「バイちゃん それは 寂しくって死んじゃうんじゃ無くて」
隊員Fが苦笑して言う
「その人が死んだ時に 周りに人が居なくて 発見が遅れたりするって事だよ」
隊員Bが言う
「えー?なんだー そうなのー?」
隊員Nが言う
「あー それじゃぁさ?さっき 話してた この病室が防音設計になってる ってのは 最初の方の憤死防止の為かな?」
ハイケルが反応して言う
「防音設計なのか?」
隊員Fが言う
「そうらしいです ベリハース院長が 昨日面会時間が過ぎてるのに 俺らがいる事に気付かなかったって言うのも どうやら そのせいだったらしくて」
ハイケルが思い出して言う
「そう言えば 私がここへ戻った時も 外部からお前たちの声は聞こえなかったな」
隊員Bが楽しそうに言う
「だから 思いっきり喋れて 集まりにも丁度良いのでありまーす!少佐ぁー!」
隊員Bがスナック菓子を食べる 隊員Nが笑って言う
「ホントだよな 昨日なんて あの後寄った店で バイちゃん隊員の声が うるさ過ぎるからって 追い出し食らったもんな?」
隊員Bが衝撃を受けて言う
「えー?あれ俺の声じゃなくて ナッちゃんの声のせいだよー」
隊員Nが言う
「いやっ 絶対 バイちゃん隊員のせいだね」
隊員Bが言う
「ナッちゃんだってー!」
隊員Nが言う
「バイちゃん隊員だって!」
隊員Bが言う
「ナッちゃんだよー!」
隊員Nが言う
「バイちゃん隊員だ!」
隊員Aが苦笑して言う
「2人の声だったんだと思うけどなぁ?」
隊員Fが言う
「俺もそう思う」
隊員Bが怒って言う
「あー!アッちゃん 酷いー ビフォアーバーストショットの相方である 俺の味方してくんないのー?」
隊員Aが苦笑して言う
「え?う うーん…」
隊員Nが言う
「フッちゃん隊員は 当ー然 俺の味方だよな?」
隊員Fが衝撃を受けて言う
「え?いつの間にっ?」
ハイケルが言う
「ならば問題ない この病室の事は知らなかったが 私の執務室の方も 防音設計になっている 騒ぎたいのなら 好きに使え」
隊員たちが反応し 隊員Bが喜んで言う
「さっすが 少佐ぁー!」
隊員Nが言う
「それなら これからは店から追い出される心配も なくなるな?」
隊員Bが言う
「これで 安心ー!」
隊員Nが笑んで言う
「うんうん!」
隊員Bが言う
「じゃー 明日の集まりはここでー」
隊員Nが言う
「明後日からは 少佐の執務室でー」
隊員BとNがハイタッチをして言う
「「いっえーい!」」
隊員BとNが笑う 隊員Aと隊員Fが顔を見合わせて言う
「あー…?」 「えっと…?」
ハイケルが言う
「無理に来てくれなくても良いのだが?」
隊員Aと隊員Fが衝撃を受け 慌てて言う
「ぬあっ!いやっ!」
「決して そう言う訳ではっ!」
ハイケルが苦笑して言う
「冗談だ」
隊員AとFが衝撃を受ける 隊員BとNが言う
「さっすが 少佐ぁー!」 「ナイスショーット!」
隊員BとNが笑う 隊員AとFが顔を見合わせ苦笑する ハイケルが隊員たちを見て微笑する
【 メイリス家 トレーニングルーム 】
軍曹が悲鳴を上げる
「イタタタタタタァッ!痛いのであるっ ラミリツ攻長ーっ!」
ラミリツが不満げに言う
「はぁ?この位で?…もっとさぁ?こー…」
軍曹が悲鳴を上げる
「ぎゃぁあーっ!」
ラミリツが押し込む 軍曹が両足を器具に固定された状態で 前屈した背を押し下げられている 軍曹が顔を左右に振って言う
「ギブッギブッ!ラミリツ攻長っ!自分は体が硬いのであるっ!そんなに押されては!あ、足がぁーっ!」
ラミリツが気付いて言う
「あぁ そっか 前屈って慣れるまでは 足の方の筋肉が引っ張られて痛いんだったけ?忘れた それじゃー」
ラミリツが器具の開脚レバーを回す 軍曹が衝撃を受け悲鳴を上げて言う
「ぎゃぁあーっ ラミリツ攻長っ!自分は 体が硬いとーっ!いだだだだだだーっ!」
ラミリツが呆気に取られて言う
「あれ?もう回らないや… アンタホントに体硬いんだね?言っとくけど…」
ラミリツが軍曹を見る軍曹が表情を顰め痛がって言う
「柔軟が体に良いとは 分かっていてもっ 痛いものは 痛いのであるーっ」
ラミリツが一瞬表情を困らせ視線を逸らして言う
「そー …じゃぁ もう 良いや 許してあげる」
ラミリツが器具のボタンを押す 軍曹の足を固定している器具が解除され軍曹がバランスを崩して転ぶ ラミリツが言う
「体が硬いとさ?怪我とかもしやすいんだよ?それから 怪我の度合いも 柔らかい方が軽症で済んだりするんだ」
軍曹が足を擦りながら言う
「う… うむー… それは 聞いた事が有るには有るのだが 腕立てや腹筋などと違って 柔軟やストレッチというものは …なんと言うか 気合が入らなぬ為 やろうと思っても なかなか 続かないのである…」
ラミリツが言う
「レギスト機動部隊の訓練で いつも 柔軟とかストレッチとか やらないの?」
軍曹が気付いて言う
「うん?うむー… そう言えば やらないのである そう言った事は 各個人で行ってから集合するのだ」
ラミリツが言う
「へー それじゃ 続かないかもね 警機の訓練じゃ どっちも集合してからやるもんだから」
軍曹が反応して言う
「言われてみれば 確かに…」
ラミリツが言う
「ま、良いや 紅茶の仕返しは 気が済んだし …好い加減 諦めて帰れば?」
軍曹が周囲を見渡していた状態から反応して言う
「はぇ?諦めて …とは?」
ラミリツが柔軟の途中で顔を上げて言う
「はぁ?アンタまた 自分が何しにここに来たか 忘れたの?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「あっ いやっ 自分は別に 今日も昨日も ラミリツ攻長を尋ねたその理由を 忘れた訳ではないのだが」
ラミリツが疑問して言う
「へー?そうだったんだ?」
軍曹が笑んで言う
「もちろんである 自分は馬鹿であるが まだ若いのであるっ 祖父上の様に物忘れがひどくなったりは していないのである!」
ラミリツが軽く笑って言う
「ラゼル様は全然 良い方だよ 僕の祖父上なんて すっごくひどくて 最後の方の頃なんて 僕以外の孫の名前 忘れちゃってたりしてたもん」
軍曹が言う
「では ラミリツ攻長のお名前だけは お忘れには ならなかったと言う事であるか?」
ラミリツが言う
「だって 僕のミドルネームは 祖父上の娘であった 母上と同じだもの 忘れないでしょ?」
軍曹が言う
「なんと!そうであられたのか」
ラミリツが言う
「アンタも ファーストネームは ラゼル様と同じだろ?…でもさ 不思議だよね?」
軍曹が言う
「む?何が不思議であるのか?」
ラミリツが柔軟を続けながら言う
「父親側の名を継ぐならファーストネームで 母親側の名を継ぐならミドルネームで って仕組みの方は 知られてるけどさ?何でそれが 次男なんだろうね?」
軍曹が反応し考える ラミリツが言う
「名前を継がせるんなら 当然 当主と同じで 長男にするべきだと思わない?」
軍曹が言う
「その理由は 自分は知っているのだ」
ラミリツが衝撃を受け 驚いて言う
「えぇえっ!?嘘ぉっ!?」
軍曹が微笑して言う
「嘘ではないのだ!自分もラミリツ攻長と同じく 不思議に思い ずっと以前に 父上に伺ったのだ そうした所… あまり良い話ではあらぬのだが 富裕層の長男は 昔から 家同士の争いで命を奪われる事が多く 最終的に生き残る可能性が高いのが 2番目以降の子供だった事が由来し 現代でも 習慣だけが残ってしまっているそうである」
ラミリツが言う
「ふーん そうだったんだ …あのさ?」
軍曹が疑問する ラミリツが言う
「アンタたちの父上様 ヴォール・アーケスト・ハブロス様って」
軍曹がハッとする ラミリツが言う
「うちの父上と ずっと昔 親友だったの 知ってる?」
軍曹が真剣に言う
「う、うむ… 実は先日 兄貴に伺ったのだ」
ラミリツが言う
「そぅ …それで 今も 本当に 生きてんの?」
軍曹が驚いてから言う
「う、うむ…」
ラミリツが視線を逸らして言う
「ふーん そうだったんだ …なんか流石に聞けなくてさ ラゼル様には …後 エルムにも」
軍曹が言う
「あ… しかし、その… ラミリツ攻長…?」
ラミリツが言う
「知ってるよ ご病気なんでしょ?」
軍曹が視線を落として言う
「う、うむ…」
ラミリツが言う
「うちの父上がさ 死ぬ直前に言ってたんだよね 最後にもう一度だけ会って もう一度 本人から 理由を聞きたかったって…」
軍曹が驚いてラミリツを見る ラミリツが軍曹を見て言う
「アンタは自分の父上と 普通に話せた?うちの父上は 凄く怖くて …ハッキリ言って 戦闘記録レコーダーの声とか聞くと それが父上だって思えない位 性格違うんだよ …まぁ 兄上はそーいう所 ちょっと似てるけど」
軍曹が驚いて言う
「戦闘記録レコーダーっ!?」
ラミリツが軍曹を見て言う
「何驚いてるの?当然だろ?アンタたち国防軍だって 任務の時の無線通信は 全部録音してるだろ?」
軍曹が衝撃を受けて言う
「全部っ!?」
ラミリツが言う
「あ、そうそう でも 警機の方でも 国防軍と合同任務に当たった時の 一部の記録に関しては 一定期間の保存の後 廃棄する事になってるよ 悪魔の兵士に関する奴ね」
軍曹が驚く ラミリツが言う
「だから 凄く残念だけど レギストだった頃のエルムと 警機隊長だった うちの祖父上が一緒に任務をした 帝国との戦いの記録は 消されちゃってるんだ」
軍曹が言う
「そ、そうであったのか…」
ラミリツが言う
「でもさ 警機の戦闘記録レコーダーの監視セキュリティは 厳重で安心なんだけど その時の任務で無線を聞いていた 各個人の記憶の方は消せないからね そう言う所で どうしても 情報は残されてしまう事があるんだよ」
軍曹が言う
「う… うむ…」
ラミリツが言う
「だから、政府の方は出来るだけの事はするから そっちはそっちで ちゃんとやってよね?アンタの悪魔の兵士である 初世代目のアイツの方がどうなったって 僕はどうでも良いけどさ?」
軍曹が衝撃を受ける ラミリツが続けて言う
「エルムの方の 2世代目の悪魔の兵士の方は ちゃんと 守って欲しいから」
軍曹が苦笑して言う
「で…では… やはりその場所を 教えて頂けなければ?」
ラミリツがエルムを真似して言う
「”問題ない 総司令官が マスタートップシークレットに対する命令として指示を出せば 担当の者は 自ずと任務を遂行する”」
軍曹が衝撃を受けた後苦笑する ラミリツが首を傾げて言う
「うーん… やっぱ ちょっと違うなぁ エルムが言うと もっと…?」
軍曹が微笑して言う
「ラミリツ攻長は ラミリツ攻長なのだ エルム少佐を 真似する必要は無いのである!」
ラミリツが言う
「僕が僕の好きな人の真似をしたって 僕の勝手だろ?」
軍曹が言う
「それはそうであるが… ラミリツ攻長は エルム少佐と違って 折角 言葉に抑揚を与える事が出来るのであるからにして 何も エルム少佐の様に冷徹に話さなくとも」
ラミリツが言う
「それこそ逆 僕は冷徹さが足りないんだって 昔良く父上に怒られた …どんな時でも 冷徹にあれって」
軍曹が言う
「う、うむ… それはー 中々難しい事である 折角人として 感情があるのに 冷たくあれとは それこそ冷たいのである… そして 冷徹と言えば やはり自分の印象は…」
軍曹がエルムを連想する ラミリツが言う
「僕が思う冷徹は やっぱ 父上や兄上かな」
軍曹が苦笑して言う
「確かに 自分も 自分の兄が冷徹である時を 連想出来はするが… その兄とて 優しい時もあるのだ!よって やはり 冷徹とはー!」
ラミリツが言う
「あのさー 何度も言おうとしないで欲しいんだけど エルムは冷徹なんかじゃないんだ ただ 感情が制限されてるだけだもん 本当は凄く優しいんだから」
軍曹が呆気に取られる ラミリツが言う
「そう言えば 父上も アンタの父上様と話している時は 優しかったよ やっぱ 親友だったからなんだろうね?」
軍曹が驚いた後間を置いて言う
「む?…あの ラミリツ攻長?」
ラミリツが柔軟を終えて言う
「なに?」
軍曹が言う
「話を聞いていると まるで ラミリツ攻長は ラミリツ攻長の父上様と 自分らの父が会話をしていた それを聞いた事がある様に聞こえるのだが?」
ラミリツが言う
「そうだけど?」
軍曹が考えて言う
「いや、そんな筈は無いのだ 自分らの父が帝国へ行ったのは 自分がまだ 子供の頃で 正直 帝国と言う物が何であるのかさえ 理解が出来ない程 幼い頃だったのだ 従って その自分より年下であるラミリツ攻長は 帝国へ向かう前の ラミリツ攻長の父上様と 自分らの父が会話をしていた それを聞いたとしても…」
ラミリツが言う
「だから さっきも言っただろ?僕が聞いたのは 全部 レコーダー記録の方だよ」
軍曹が疑問して言う
「む?で、では… 警機の戦闘記録レコーダーに 非戦闘員であった 自分らの父の声が?」
ラミリツが気付いて言う
「あぁ そっか ゴメン それは違うや」
軍曹が驚いて言う
「うむ?」
ラミリツが言う
「警機のじゃなくて 僕の父上が 個人的に記録してた方 そっちに 帝国へ行った時のと その前後を含む記録が 残されてるんだ」
軍曹が驚いて言う
「なぁあっ!?帝国へ行った時の記録がっ!?」
ラミリツが言う
「そ、だから そこに一緒に記録されてるんだよ 2人の会話もね?」
軍曹が衝撃を受け驚いて言う
「なんとーっ!?」
ラミリツが微笑して言う
「ふふっ 驚いたでしょ?」
軍曹が言う
「お、驚いたなんてものでは…っ」
軍曹が思い出して言う
「…はっ で、では ラミリツ攻長っ!お願いなのだっ!その記録を 自分の兄へも聞かせて欲しいのであるっ!帝国の情報は 国防軍にとっても必要でっ!もしかしたら 父上のご病気を治すのにもっ!」
軍曹がラミリツを見つめる ラミリツが言う
「うーん… そうだね 良いよ?」
軍曹が喜んで言う
「おお!流石 ラミリツ攻長なのだっ!やはり ラミリツ攻長は 自分たちの味方でっ!」
ラミリツが言う
「じゃぁさ?取引」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?」
ラミリツが言う
「前にラゼル様に聞いた事があるんだ アンタの父上様ヴォール・アーケスト・ハブロス様が ご病気になられる以前 帝国へ行く直前に ラゼル様とお話した時の記録を アンタの兄上 アース・メイヴン・ハブロス総司令官が 今も持ってるんだって」
軍曹が驚いて言う
「なっ なんとっ!?じ、自分はそんな事は知らなかったのであるっ 自分も… ご病気になられる以前の父上のお声は 是非とも聞きたかったのだが… 何故兄貴は 自分へ教えてはくれなかったのだろうか…?」
ラミリツが言う
「それは勿論 聞かれたらマズイ事があるんだろ?普通」
軍曹が言う
「う、うむ…」
ラミリツが言う
「でも、僕は聞きたい」
軍曹が驚いて言う
「え?」
ラミリツが言う
「もしかしたら それで アンタたちの父上様が 僕らの父上を裏切った 本当の理由が 分かるかもしれないからっ」
軍曹が驚いて言う
「なっ!?じ、自分らの父が ラミリツ攻長たちの父上様を 裏切ったっ!?…あ、兄貴と言っている事が 逆なのだ…」
ラミリツが不満そうに言う
「はぁ?それ… どう言う事だよっ!」
ラミリツが軍曹に怒りの視線を向ける 軍曹が慌てる
【 ハブロス家 アースの部屋 】
ラミリツが立っていて言う
「先に言っとくけど 渡すのはコピーだから」
アースがデスクの椅子に座っていて 苦笑して言う
「そちらは当然でしょう?…その様にして カルメス元外交長を?」
ラミリツが言う
「そうだよ」
アースが苦笑する
「フフフ… 随分と素直ですね?メイリス家ご出身の 攻長閣下」
軍曹が衝撃を受け困って言う
「あ、あのっ 兄貴?ラミリツ攻長は 折角 帝国の情報を提供してくれるのであるからにして… そ、その様な敵対的な言葉は やめて欲しいのだが…」
アースが言う
「まさか 帝国へ行った際の記録が残されていたとは… それは現在帝国と戦う国防軍は勿論 政府警察にとっても 大きなヒントとなるもの …何故 今までお隠しを?やはり?」
軍曹が困る ラミリツが言う
「これがあったお陰で メイリス家が政府の長になれたからね?」
軍曹が衝撃を受ける アースが苦笑して言う
「あっはははっ 攻長閣下の剣がこれほど鋭いとは 間違ってご自分の身を傷付けられない様 ご注意をされた方が宜しいのでは?富裕層の戦いでは うっかり真実を述べた者が負けとなる」
軍曹がアースを見る ラミリツが言う
「今は帝国との戦いの時だ そんな下らない事は どうでも良いんだよ」
軍曹が驚いてラミリツを見る アースが僅かに驚いた後 苦笑して言う
「…メイリス家がどうなっても良いと?攻長とは言え 任を解かれれば 元の家に戻るしかない そのメイリス家を大切になさった方が宜しいのでは?」
ラミリツが言う
「そっちは兄がやるべき事だったけど もう無理だからね 今更僕が継げるものでもないし それに」
ラミリツがメモリースティックを3つデスクへ放って言う
「これ聞いたら 余計 …ラゼル様の言う通り 階級なんて 無くなっちゃえば良いと思うよ」
アースが疑問して言う
「3つ?…私の知る限り アールスローンからの使者であった 我々の父や 政府のアミレス長官 その他2名が 帝国へ入国して 逃げ戻ったまでの間は 束の間であったと その短い時間の記録が これ程に?」
ラミリツが言う
「帝国の記録があるのは その真ん中の奴 後の2つは 帝国へ行く前と後の記録だよ アンタがアンタの弟に 僕らの父が 裏切り者だとか言ってるって聞いたから その2人の…」
アースが一瞬呆気に取られてから苦笑して言う
「攻長閣下?私は 国防軍総司令官として 今後の帝国との戦いの為の その資料としての物の提供を お願いしただけだが?」
ラミリツが言う
「あっそ… なら良い こっちの2つは コイツに聞かせるから」
ラミリツが言って2つのメモリースティックを回収する アースが一瞬呆気に取られ 視線を逸らしてから 思い出して言う
「ああ… それでは こちらも 取引の物を」
アースが言って デスクからメモリースティックを取り出して言う
「こちらは コピーではなく オリジナルですが もはや不要ですので 返却の必要もありません」
軍曹が衝撃を受けて言う
「なぁあっ!?あ、兄貴!?それには ご病気になられる以前の 父上のお声が残されているとっ!」
アースが言う
「しかし、攻長閣下 この記録に残されているものは その程度のものです 我々の父と祖父が 自分たち家族の語らいをした… 本当に この程度のもので 取引は成立されるのですか?」
ラミリツが言う
「物の価値なんて 人それぞれでしょ?僕がそれを アンタがこれを 聞きたいんだから それで成立だよ」
アースが言う
「分かりました …では そちらを聞いた後の抗議には 一切耳を貸しませんが 宜しいですね?」
ラミリツがアースのメモリースティックを取って言う
「”問題ない”」
ラミリツが背を向け退室する アースが鼻で笑った後メモリースティックをPCへセットする 軍曹が困ってラミリツとアースを交互に見た後 ラミリツを追って言う
「ラ、ラミリツ攻長 お送りするのだ!待ってくれーっ」
軍曹が部屋を出て行く アースがそれを見送ってから視線をPCへ向ける
【 国防軍レギスト駐屯地 通路~病室 】
ベリハースが歩いてきて気付いて言う
「うん?病室から明かりが…」
ベリハースがノックをしてからドアを開けて言う
「ハイケル少佐 消灯時間はとっくに過ぎており… なっ!?」
ベリハースの視線の先 隊員たちが床で雑魚寝していて ハイケルがベッドに寝ている ベリハースが呆気に取られた後 苦笑して言う
「やれやれ… レギストの隊長は 隊員に好かれると聞いていたが …こう言う事ですか?…父上?」
ベリハースが微笑し 首にかけている聴診器に触れてから 病室の電気を消しドアを閉める
【 ラミリツ家 玄関前 】
玄関前に ハブロス家の高級車が止まる ドアが開けられるとラミリツが降りる 軍曹が車内から言う
「では!ラミリツ攻長 お疲れであったのだ!またー…」
ラミリツが言う
「待って」
軍曹が疑問する ラミリツが振り返って言う
「これ 聞かなくて良いの?アンタの兄上が オリジナルだって言ってたよ?ここで聞かないと アンタ一生聞けないだろ?」
ラミリツがメモリースティックを見せる 軍曹が言う
「あ… う、うむ それは確かに…?」
ラミリツが言う
「それに ハブロス総司令官が 要らないって言った方にだって アンタらの父上様の声 入ってるんだ …だから 持って行ってあげたのに アンタの兄上 ホント冷徹だね?」
軍曹が呆気に取られた後 苦笑して言う
「兄貴も本当は聞きたかったのである!しかし、国防軍総司令官として 冷徹を装っていただけなのだ!それから、ラミリツ攻長の エルム少佐の真似も さっきはとても似ていたのである ラミリツ攻長もやはり 冷徹を装っていたのである!」
ラミリツが気付いて言う
「あ… そっか?ふーん…?もしかしたら エルムもそうだったのかな…?」
ラミリツが気を取り直して言う
「ま、良いや とにかく 早く来なよね?…別に?聞きたくないなら良いけどさ?」
ラミリツが屋敷へ向かって行く 軍曹が衝撃を受け 慌てて追いかけて言う
「じ、自分は 誰が何と言おうと 聞きたいのだっ!冷徹を装うのは 無理なのであるっ!」
ラミリツが密かに微笑する
【 メイリス家 ラミリツの部屋 】
ラミリツがノートPCに メモリースティックをセットして 操作しながら言う
「あ、やっぱ ぴったりだ これならきっと」
軍曹が疑問する ラミリツが操作しながら言う
「日時が丁度だから アンタの兄上から貰った あれのおかげで 僕の持ってたメモリースティックを補えそう これならきっと 話が繋がる筈だよ」
軍曹が呆気に取られたまま言う
「ほお…?」
ラミリツがノートPCを操作した後 メモリースティックを抜いて 軍曹へ向ける 軍曹が疑問して受け取る ラミリツが言う
「はい アンタにあげるよ それ」
軍曹が驚いて言う
「なんとっ!?」
ラミリツが言う
「これで完了 全部聞くと 結構長いから 座れば?」
軍曹が気付きソファを見て言う
「う、うむ… では失礼するのである」
軍曹がソファに座ると ラミリツがノートPCを見て エンターを押す スピーカーからフレイスの声がする
『今回の帝国行きだが 悪いが私は 政府の代表である あの2人を守らねばならない… 従って アーク 君の事は守ってやれないんだが…』
ラミリツが言う
「この声が うちの父上の声」
軍曹が言う
「ほお?なるほど 確かに… どちらかと言うと ラミリツ攻長の 兄上殿のお声に近い感じがするのだ」
ラミリツが一瞬視線を逸らしてから言う
「え?…そんな筈は」
軍曹が疑問して言う
「うむ?何か…?」
スーカーからアーケストの声がする
『何を言う フレイス?私は国防軍の総司令官 そして 父は陛下の盾 守りの兵士でもある その私に 警機上がりのお前の守りなど必要ないな?』
ラミリツが気を取り直して言う
「いや、別に?で、こっちが」
軍曹が気付いて言う
「うむっ!何やら 自分の兄の声に 良く似ているのだ!」
ラミリツが苦笑して言う
「そぉかなぁ?喋り方はそうかもしれないけど 声の方は 僕には アンタの方が似てる って思うけど?」
軍曹が言う
「と言う事は…」
スピーカーからアーケストの声がする
『…なんなら そちらの政府の2人さえ 守ってやろうか?』
ラミリツが言う
「そ、これが アンタたちの父上様の声だよ」
軍曹が反応し視線をラミリツからスピーカへ向け 微笑して言う
「おお…っ これが 父上のお声であるのか!なんとっ ご病気になられる以前は これほどにハツラツと!」
ラミリツが微笑した後 スピーカーへ向く
【 過去 】
≪ 通路の中 ≫
フレイスが表情を顰めて言う
「例え あのレギストを従える国防軍の総司令官であろうとも ヴォール・ラゼル・防長閣下の子息であろうとも 君自身は 何の訓練も受けていない ただの御曹司だろう?」
アーケストが苦笑して言う
「言ってくれるな フレイス?しかし その通りだ 従って 何も私が守ってやろと言う訳ではない 私やその他を守ってくれるのは 後ろの兵士だ」
アーケストの一歩後ろに エルムβが歩いている フレイスが表情を顰めて言う
「うん 君の専属護衛として 新たに従えた兵士だったか?君へ宛がわれたと言うからには それなりの者だとは思うが しかし 本当に彼が1人だけで 大丈夫なのか?それに アーク 帝国への和平条約に 国防軍の隊員は連れて行かれない だから 私が警機の隊員を君の警護へ回せる様 何とか出来ないものかと考えているのだが」
アーケストが笑って言う
「必要ない この者さえ居ればな?どうしても実力が気になると言うのなら 一度手合わせでもしてみれば良い 言っておくが この者の強さは 尋常では無いぞ?何しろ彼は… 悪魔の兵士 そのものなのだからな?」
フレイスが不満げに言う
「悪魔の兵士?アールスローン戦記か… しかし 例え ペジテの姫が悪魔から貰った兵士 …攻撃の兵士であろうとも 帝国の王子が持つ 攻撃の兵士には 敵わないのだろう?その帝国へ行くというのに 君の護衛がその様な者では心配だ …アーク やはり 私が警機の隊員を」
アーケストが言う
「何を言う フレイス?少なくとも このアールスローン国内で この者を越える兵士など存在しない そして 何より 護衛に必要とされる忠誠心は それこそお前が目指していた ペジテ王の両碗の騎士 その者と言った所だ」
フレイスが反応して言う
「ペジテ王の両碗の騎士…っ」
アーケストが言う
「それに比べ 警機の隊員など… 私はそちらの方が心配だとも?」
フレイスが怒って言う
「アーク 君がそこまで言うのならっ!その騎士と一度手合わせをしてみせようっ!さあ!そちらの兵士!剣を抜けっ!」
フレイスが剣に手を掛ける アーケストが言う
「とは言え 生憎 剣は持たせていないがな?」
フレイスが衝撃を受けて言う
「…うっ!?」
アーケストが笑って言う
「はははっ 相変わらずだな?フレイス?」
フレイスが言う
「か、からかったのか!?私は君が両碗の騎士と言ったから!?…あっ それも まさか 最初から!?私は 本気で君を心配しているというのにっ!アーク!?」
アーケストが笑って歩く フレイスが追い駆けて行く エルムβがアーケストとフレイスを見る
≪ ハブロス家 ラゼルの屋敷 ≫
アーケストが言う
「父上 ご無沙汰を致しております」
ラゼルが微笑して言う
「うむ やはり同じ敷地内であっても 別の屋敷に居るのでは 会う機会も減ってしまうな?」
アーケストが言う
「国防軍総司令官の任と共に ハブロス家の全権をお預け頂けた事 光栄に思っております 今後はどうか その私が ハブロス家の良き当主となる事を ご期待下さい ヴォール・アーケスト・ハブロス 誠心誠意 邁進いたします事を誓います」
ラゼルが笑って言う
「ほっほっほ お前に喜んでもらえたなら 私も嬉しいが あまり力み過ぎる事も無い様にな?私に出来る事が有ったら いつでも声を掛けなさい」
アーケストが微笑して言う
「では、早速なのですが 父上」
ラゼルが言う
「うむ 何かな?アーク?」
アーケストが言う
「アールスローンと帝国との終戦から20年 間もなく終戦当時に交わされた 両国の和平条約の期限が近づいているとの事 その和平条約の継続の為にも 政府の長がこの度 帝国へ赴くとの事でございます」
ラゼルが反応して言う
「うん?帝国との和平条約に長官が…?いや、それらの話し合いは カルメス外交長が執り行っていた筈である それに 政府の長官が同行すると?」
アーケストが言う
「はい、そちらのカルメス外交長が 帝国から一度 その様な機会を得たいと 前々から言われていたのだとか」
ラゼルが考えながら言う
「ふむ…」
ラゼルの前に紅茶が出される ラゼルが目を閉じ考えてから紅茶に角砂糖を1つ入れてかき混ぜる アーケストが言う
「しかし、そのカルメス外交長の話によりますと 帝国が対話を求めているのは アールスローンの女帝に次ぐ有力者との事 そこへ 政府の長官だけを連れて行くというのは 如何なものであるかと 政府の重役会議にて話題に上がったのだとか そして 私に話が…」
ラゼルが紅茶からスプーンを上げ軽くカップへ当ててから言う
「少佐」
アーケストが視線を向ける 視線の先エルムが扉の近くに居て言う
「怪しいな」
ラゼルがスプーンをコースターへ置いて言う
「やはりそう思われますか」
アーケストが視線を強めて言う
「何が怪しいと?」
エルムが言う
「国防軍の新たな総司令官となった お前が狙われていると言う事だ」
アーケストが言う
「それは今に始まった事ではない だからお前を 私の護衛に付けているのだろうっ」
エルムが言う
「そうだな」
アーケストが息を吐いて言う
「出来る事なら 私からの言う事を何一つ聞かない 主に仕えると言う事が まったく分かっていない お前などの… まして操り人形などを 私の護衛に付けたくは無いんだ それでも 他の者より力があるから 仕方なく従えてやっているのだぞっ」
エルムが言う
「悪かったな」
アーケストが表情を怒らせる ラゼルが言う
「申し訳ありません 少佐」
エルムが言う
「問題ない」
アーケストが言う
「父上っ この人形に 私の言う事を聞くようにと命じて下さいっ」
ラゼルが表情を困らせて笑う
「ほっほっほ」
アーケストが言う
「父上っ!そうして頂けなければっ 帝国内にて 何らかの問題が発生した際は如何するのですっ!?今のまま この人形が 私の命令を聞かない様ではっ!」
ラゼルが言う
「少佐の隊員を 帝国へ連れて行く事は 出来ないのだよ アーク」
アーケストが驚いて言う
「そちらは?一体何故ですっ?この人形たちは あの帝国のマシーナリーさえ 倒すことが出来るのでしょう?それが一緒であると思い 私は安心して…っ」
ラゼルが言う
「アーク、残念だが少佐の小隊隊員を動かせるのは こちらのアールスローンの国内だけなのだ それに 万が一どうしても必要とあって 帝国内で動かそうと思うのなら 少佐ご本人が一緒に向かわねば不可能なのだ」
アーケストが言う
「でしたらっ!どうか この度の帝国訪問の間だけ エルム少佐を 私の護衛にお貸し下さいっ!」
ラゼルが苦笑して言う
「うむ… 私としては 大切な息子の身の上だ 少佐にお頼みしたい気持ちは山々なのだが 以前の戦いで 帝国は少佐の情報を多く手に入れてしまっている この状態で 少佐を帝国へ向かわせる事は とても危険な事なのである」
アーケストが不満そうに言う
「その危険な場所へ 私はこれから向かうのですっ 父上っ!父上は エルム少佐と私の どちらがっ!?」
エルムが顔を向けて言う
「軍曹 私は 君が命令するのであれば ヴォール・アーケスト・ハブロス総司令官を 帝国の者より死守する事が可能だ」
ラゼルが苦笑して言う
「では そのアークの死守と共に 少佐ご自身も 最悪 蘇る事が可能な状態にて お戻り頂くと言うのは?」
エルムが言う
「無理だな」
アーケストが驚く ラゼルが苦笑して言う
「そう言う事だ アーク …今回の 帝国行きは 断りなさい」
アーケストが驚いて言う
「なっ!?しかしっ これを断れば 国防軍がっ!」
ラゼルが言う
「国防軍が 政府の下であろうとも その様な事は どうでも良いではないか?」
アーケストが驚く ラゼルが微笑して言う
「これからの帝国との事は 全て 次なる政府の剣へと お任せしなさい」
アーケストが言う
「次なる 政府の剣… 父上は 前々から 次の政府の長は メイリス家の者 と!?」
ラゼルが軽く笑って言う
「っほっほっほ そう きっとそうなるだろう… 次の攻長には 遂に メイリス家の 彼らが成し得るのだろう」
エルムが言う
「当然だ」
ラゼルが微笑んで紅茶を飲む アーケストが不満そうに言う
「帝国の事を政府へ任せ 次の政府の長となる メイリス家へ… アイツが 国防軍より力を持った 政府の長官にっ!?」
ラゼルが紅茶に角砂糖を1つ入れ かき混ぜながら言う
「これで長く続いた 高位富裕層だけの国家家臣も終わる 私は昔から 階級だの何だのというもので 人を格付けするものが大嫌いだった メイリス家が政府の剣となり 長官となるのであれば アールスローン国の在り方も変わって行くだろう… きっと より良い国へとなって行く 少佐とレギストの皆が 守って下された国であります」
エルムが言う
「君が守った国だ」
ラゼルが笑って言う
「これからは皆で守り 作って行く国であります」
エルムが言う
「そうだな」
アーケストが沈黙する ラゼルが微笑して言う
「ほっほっほ… 少佐 少佐もどうか 紅茶をお飲み下さい 今日はとても美味しく入っております」
エルムが言う
「私に味覚は無い 味が良いのなら 尚更 君が飲むべきだ」
ラゼルが紅茶をカップへ注ぎながら言う
「紅茶の味は 味覚だけではなく 嗅覚と… 何しろ気分の良さで 美味しく変わるそうであります それは 食事も同じだとか …ですから どうか 少佐も ご一緒に」
エルムが言う
「…了解」
エルムが席に座る ラゼルが微笑む アーケストが視線をそらす
≪ 警察本部 警察長室 ≫
フレイスが驚いて言う
「え!?メイリス家が 次期 政府の攻長にして長官!?あっははははっ!アーク 相変わらず ハブロス家は 言う事が極端で面白いな」
フレイスが笑う アーケストが呆気に取られてから不満げに言う
「面白いだと?では お前は本気で考えていないのか?お前が政府の長となれば それは 我々ハブロス家と同等か もしくは…っ」
フレイスが苦笑して言う
「考える筈も無い 防長閣下から その様に仰って頂けた事は光栄だが メイリス家が 攻長や長官の座に付くなんて事は 在り得ない話だ」
アーケストが言う
「では お前は 例え その様な機会を得ようとも それを望まないと言うのか?」
フレイスが言う
「望むも何も 考えた事もない そもそも警察長であるメイリス家の私が 今回警護する 政府の要人は誰だと思っているんだ?あの2人の家が在る限り メイリス家にそのような事が起きる事はないだろう?彼らはメイリス家より遥かに…」
アーケストが言う
「そうとは言い切られない アミレス家に関しては 今回の帝国への和平条約が 万が一失敗にでも終わるような事があれば 失脚すると言う事は十分ありえる そして もう1人 帝国との外交を取り仕切る 歴代の外交長といわれるカルメス家は 外交長であるからこそ 政府に存在する事を許されている そうとなれば 今回の結果次第では その2者が除かれる事となり… それこそ次は 帝国との戦いに 政府として最大限に力を発揮した メイリス家へ と…」
フレイスが言う
「例え その2つの家がそうとなろうとも 国防軍の君だって 知っている筈だ 我々政府の内で カルメス家から我らメイリス家までの間には 高位富裕層の方はもちろん メイリス家より上位の政府重役たちが複数居られる」
アーケストが言う
「それは そうだが…」
フレイスが苦笑して言う
「君の父上様である あのヴォール・ラゼル・防長閣下が 階級を嫌う方だという事は知ってるよ だから その話は きっと 防長閣下が そうであれば良いと 思われた アールスローン国の 在るべき姿なんだろう?」
アーケストが言う
「ふむ… 当人であるお前が そうと言うのであれば… …そうだな 父上らしいか」
フレイスが言う
「そんな事より アーク 君は 本当に良いのか?」
アーケストが言う
「私が とは?」
フレイスが言う
「今度の帝国行きさ 国防軍総司令官である 君が来ないとなれば 国防軍は これからは 政府の下になってしまう …本当に 君はそれで良いのか?政府に身を置く 私が言ってしまうのも難だが アールスローンを帝国から守ったのは 間違いなく 国防軍だろう?それなのに…」
アーケストが視線を落として言う
「その事か… あぁ そうだな 生憎 そのお前が以前に言った通り 行き先が帝国である以上 国防軍は その帝国と戦った国防軍の隊員たちを 連れてはいかれない そうとなれば…」
フレイスが苦笑して言う
「だから 君の護衛を連れて行くのだったろう?そうそう、その護衛の兵士だが 聞いたぞっ アーク!何で隠していたんだ?」
アーケストが疑問してフレイスを見る フレイスが笑んで言う
「あの方が アールスローンを帝国から救った 元国防軍レギスト機動部隊隊長 エルム少佐なんだってっ!?」
アーケストが表情を落としたまま言う
「あ… ああ…」
フレイスが軽く笑って言う
「何で教えてくれなかったんだっ?もちろん それは 公には出来ない事だろうが …親友の私に位 教えてくれても良かっただろうっ!?」
アーケストが表情を困らせ言う
「だが お前にとっての エルム少佐は 父上様の仇だろ?」
フレイスが呆気に取られてから 苦笑して言う
「何言ってるんだ 仇なんかじゃない 戦友だ!父上は エルム少佐の率いるレギスト共に 警機を率いて戦ったんだ」
アーケストが言う
「しかし エルム少佐は 戦地で君の父上様を助けなかったそうではないか?そのせいで君の父上様は 戦死されてしまった …あのエルム少佐の事だ 任務遂行の為なら どんな非情な事でも 平気で行う」
フレイスが言う
「きっと そうせざる何か理由があったんだ そうでなければ 父上の率いていた警機の隊員たちが レギストを許す筈がない」
アーケストが言って視線をそらす
「どうだかな…」
フレイスが苦笑して言う
「それから… いくらなんでも そんな言い方はないだろ?アーク エルム少佐は 養子縁組とは言え 君の家族じゃないか?」
アーケストが怒って言う
「何を 馬鹿なっ!」
フレイスが驚く アーケストが嫌悪感を示して言う
「あれは!物だ!戦いを行う人形なんだっ 父上は それの所有者であるだけだっ」
フレイスが呆気に取られて言う
「な…っ …何を言っているんだ?エルム少佐が 人形だなんて …いや、確かに 人形の様に 感情の見えない方ではあるが」
アーケストが言う
「お前は何も知らないんだっ!エルム少佐はっ!…悪魔の兵士は アールスローン戦記の原本を 所有する者を守るための道具だっ!父上がいる限り 何度死んでも蘇り その 父上の命令ならば どの様な事も行うっ!君の父上様は そんな物を人と信じたせいで 殺されたのだろうっ!」
アーケストが立ち去る フレイスが呆気に取られて言う
「悪魔の兵士が… エルム少佐が 物…?」
フレイスが アーケストの出て行ったドアを見る
≪ 帝国 入り口前 ≫
フレイスがメルフェスとアミレスへ敬礼する アミレスがフレイスを見て言う
「警機の隊員を 連れて来なかったのかっ!?」
フレイスが言う
「はっ!カルメス外交長より 昨夜 その様に ご連絡を頂きました!」
アミレスがメルフェスを見る メルフェスが苦笑して言う
「何も恐れる事はありません 長官 私はそれこそ 戦争の最中であっても 帝国へは和平交渉のため何度も1人で訪れました 帝国はその私を いつも丁重にもてなして下されていたのです そこへ 例え国防軍の者ではなくとも 戦争の最中 帝国の者へ武器を向けた 警機の部隊を連れて入る等と言うのは その頃の私への恩を仇で返すと言うものです …それに」
メルフェスがフレイスを見てから言う
「武勇に高名な メイリス警察長が御同行されるのです もし、万が一の事でもあろう時には メイリス警察長が 我々をお守り下されるでしょう」
フレイスが苦笑して言う
「いや… 戦地で戦った父ならまだしも 私は帝国のマシーナリーとは 対面した事もありません 従って もし、本当に その様な場面に出くわしてしまった際には 私は出来うる限りの時間稼ぎを致しますので その間に お二人には ご自分の足でここまで逃げ戻って頂く事しか」
アミレスが表情を顰める メルフェスが笑って言う
「っはははは… いや、失礼 時間稼ぎですか… それこそ 1分でも稼がれれば大したものでしょう」
フレイスが苦笑して言う
「そうですね…」
アミレスが視線を落とす フレイスが言う
「ですので アミレス長官っ どうか 帝国との和平を!」
アミレスが慌てて言う
「あ、ああ!もちろんっ 締結させて…」
メルフェスが微笑して言う
「お任せ下さい」
アミレスが呆気に取られた後微笑して言う
「お、お任せします カルメス外交長」
3人が笑う そこへ高級車がやって来て止まる フレイスに続き2人が振り向く フレイスがハッとして言う
「まさかっ」
車のドアが開かれ アーケストが降り立つ フレイスが言う
「アークっ 何故っ!?」
アーケストがフレイスを横目に見てから メルフェスへ言う
「カルメス外交長 ご連絡を 有難う御座いました」
フレイスが呆気に取られてから メルフェスを見る メルフェスが微笑して言う
「飛んでもない これから帝国とアールスローンは和平を結ぶと言うのに 以前に拳を交えた 国防軍の総司令官が 今も帝国を敵視していただなんて 私も驚きました」
フレイスがアーケストを見る アーケストが微笑して言う
「カルメス外交長は 帝国がアールスローンをどの様に思い 見ているのかと言う事を 私へ教えて下されたのです お陰で どうやら私は 国防軍の者として 帝国を誤解していたのだと言う事に 気付かされた訳です」
メルフェスが軽く笑って言う
「っははっ それこそ ハブロス総司令官の思っておられたような帝国であったなら その帝国へ何度も足を運んでいた私は とっくに皆さんの前から 姿を消してしまっていたでしょう」
アーケストが言う
「私の中にあった帝国は 常にアールスローンの敵国であり 話も出来ない野蛮な国であると その様に思い込んでいたのです アールスローンの防衛を司る者として お恥ずかしい限りで」
メルフェスにつられ アミレスが笑う フレイスが言う
「いや… 国の防衛を司る 国防軍であるなら それくらいの気構えであっても良いと 私は思いますが」
アミレスが言う
「おやおや 今度は 政府警察の警察長へ ご説明をして頂かねば ならないかな?カルメス外交長?」
メルフェスが笑って言う
「それはまた… そんな事を 今ここでしていては 時間に遅れてしまいます 遅刻は厳禁 これは アールスローンも帝国も同じです」
アミレスが言う
「では メイリス警察長へのお話は 和平条約が結ばれた後にでも ゆっくりと」
フレイス以外の者が笑い メルフェスが道を示して言う
「はい それでは 早速 参りましょう」
アミレスとアーケストが頷き メルフェスを先頭に入って行く フレイスが一度視線を落とし イヤホンの調子を確認してから追う
続く
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