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3章

嗚呼、私のウィザードさま 「ウィザード様とお父さん」

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翌朝 マリアの部屋

マリアが目を覚ますと 伸びをしながら言う
「う~ん」

マリアが息を吐きながら思う
(はぁ… 昨日の夜もまた 色々考えちゃった 今日が休みで良かった… だって もし)

マリアが時計を見て苦笑して言う
「もう お昼だもんね?」

マリアがベッドを出る


リビング

マリアがやって来て棚を見る 棚に書類は無い マリアが息を吐いて思う
(書類が無くなってる… きっと お母さんが 今日 お役所に提出して)

マリアが周囲を見てから思う
(この家の所有者が 私になって…)

マリアが言う
「でも 何も変わらない…」

マリアがソファに座り視線を落として思う
(本当に 変わらないのかな?…あ、表札作らなきゃね?えっと?お母さんの旧姓って 何だっけ?聞いた事…)

マリアが言う
「無いかも…」

マリアが息を吐いて思う
(そうよね お父さんに関係しそうな話題は いつも 避けていたんだから お母さんの旧姓も 聞いた事無かった…)

マリアが言う
「これじゃ 作れないなぁ…」

マリアが思う
(お母さんが帰って来るのを待って 聞かないと)

マリアが言う
「今日も お母さんは 奉者のお仕事に行ってるんだよね?」

マリアが思う
(それじゃ 聞くのは 夜になっちゃうなぁ それで 明日… でも?私 明日は仕事だし… どうしよう?)

マリアがふと気付いて言う
「って、それより?」

マリアが立ち上がり玄関へ向かいながら思う
(折角のお休みなんだから ウィザード様に会わないと?昨日は あの”お話”をしたし 今日は… 今日はもう)

マリアが玄関を開け 外の空気に気を和らげてから言う
「いつもの ウィザード様に 会えるから!」

レイの声が聞こえる
「マリアー!」

マリアが微笑して振り返ると レイが降り立って言う
「こんにちは だな!マリア!」

マリアが言う
「はい こんにちはです ウィザード様」

レイが言う
「今日は マリア 仕事は休みなんだよな?これから何処かに行くのか?行くなら 連れてってやるぞ?」

マリアが言う
「はい お仕事はお休みですけど 何処にも行く予定は無いです …でも お茶の時間には ちょっと早いですよね?」

レイが言う
「そうだな!それじゃ 俺と一緒に たまには 空の散歩にでも行くか?マリア?」

マリアが一瞬呆気に取られて思う
(空の散歩… なんだか丁度良いかも?)

マリアが微笑して言う
「はい!是非 お願いします!」

レイが言う
「よし!それじゃ 早速 行くぞ!マリア!」

レイがマリアを包み 風に消える


上空

レイとマリアが上空に現れる マリアが眼下に広がる風景に呆気に取られて言う
「わぁ~」

マリアが思う
(こうして 空から地上を見るのは 2回目だけど でも)

マリアが言う
「以前と違って 自分の住んでいる町を 空から見るのは 不思議な感じです!なんと言うか…」

マリアが思う
(自分がいつもやっている事は どれも とっても小さな事みたい 仕事も 悩みも… 全部)

マリアがレイを見て苦笑して言う
「ウィザード様は いつも こんな雄大ゆうだいな景色を 見ているんですね?」

レイが言う
「そうだな!外に居る時は いつも見てるよ!」

マリアが街を見て苦笑して思う
(そっか… だから いつも あんなに元気なのね?悩みなんて ある筈も無い どんな悩みも ここから見れば …あの人々と 同じくらい小さく思えるみたい …でも 昨日までは そんなウィザード様でも…)

マリアが苦笑する レイが言う
「それで 何処へ行こうか?マリア?何処か行きたい所はあるか?」

マリアが言う
「え?」

レイが言う
「俺はいつも そこら辺を飛び回ってれば 色んな風の声が聞こえるけど マリアは聞こえないだろう?だったら 何処かへ行った方が 面白いだろ?」

マリアが言う
「そうなんですか そうですね?では…?」

マリアが思う
(本当は こうして地上を見ているだけでも いつもと違って 十分楽しいけど でも 折角 ウィザード様が 気を使ってくれているんだから 何処か…?)

レイが言う
「マリアは この町以外には 行った事は無いのか?他の町は 他の町で ちょっと景色が違ってて 面白いかもしれないぞ?」

マリアが言う
「あ、でも 私 自分の住む町を 空から見るのは 初めてなので?ですから こちらで十分 面白いですよ?」

レイが言う
「ん?そうか!マリアは知っている場所を 空から見るのが 面白いのか!」

マリアが微笑して思う
(そうよね?見慣れている筈の町も いつもと違って こうして空の上から見られるなんて)

レイが気付いて言う
「あ、それなら マリア!以前 マリアと俺で行った場所へ 行ってみるか?」

マリアが疑問して言う
「え?私とウィザード様で…?」

マリアが思う
(えっと?そんな所あったっけ?先日の休みに行った ライトストリートなら すぐそこに見えているし…?)

レイが言う
「俺がウィザードだった時に マリアは奉者だった時に 2人で 行っただろう?アウターサイドの村へ 灯魔儀式をやりにさ?」

マリアが気付いて言う
「あ…っ」

マリアが思う
(そうだった…っ そう言えば…)

レイが言う
「どの村だって この町の管轄だよ マリアが奉者として ウィザードの俺を連れて行くって言う 仕事をした 懐かしい場所だろ?」

マリアが微笑して言う
「そうですね 懐かしいですね?」

マリアが思う
(私は 奉者としては失格だったけど 各村へ ウィザード様を連れて言った事は事実で …それで灯魔儀式は ”マキのウィザード様”とは違って いつも軽々成功して 灯魔神館の管理人さんたちには お礼を言われていたっけ…?)

レイが言う
「それじゃ いくぞ?マリア?」

マリアが思う
(あの灯魔神館がある場所を 空から見られるのは 確かに面白いかも?)

マリアが微笑して言う
「はいっ ウィザード様!」

レイとマリアが風に消える


エリーム村 上空

レイが言う
「はい 到着!ここが 最初の灯魔儀式をした場所だぞ!マリア!」

マリアが微笑して言う
「では エリーム村ですね?」

レイが言う
「エリーム村か よく覚えてるな マリアは!流石マリアだよな!」

マリアが言う
「ウィザード様 その 流石マリア って言うのは?」

レイが言う
「だって マリアにとっては 灯魔儀式に俺を連れて行くことが 奉者としての仕事だったんだから 仕事熱心なマリアは 流石!よく覚えてるんだなーってさ!」

マリアが言う
「なるほど…」

マリアが思う
(確かにそうかも?沢山あった 灯魔依頼の書類を 1枚1枚読んで それで 灯魔の場所を決めていたのよね 最初の頃は… だから 余計 このエリーム村の事は良く覚えてる 灯魔依頼の書類にあった あの心の込められた文章 ”どうか エミール村の灯魔台に力を与えて下さい ウィザード様のお力で この村の人々を救って下さい”)

マリアが言う
「今も あの灯魔台には 火の灯魔が灯っていて その力が しっかり周囲に 結界を張って 村の人々を守ってくれて いるんですよね?」

マリアが思う
(ウィザード様が灯した 火の灯魔が)

マリアが微笑する レイが言う
「そうだな!魔力の追加供給をしなくたって 一年位は 余裕で持つよ!」

マリアが振り返って言う
「一年位?それでは その頃には もう一度… あ、いえ?”魔力の追加供給”を しなくては いけないでのすよね?」

レイが言う
「ああ!そうだな!けど それは この町のウィザードの仕事だよ!もう俺は この町のウィザードじゃないからな!」

マリアがハッとして言う
「そ、そうですか… …そうですよね?」

マリアが思う
(それじゃ その力は 一年後には ”マキのウィザード様”が…)

レイが言う
「心配しなくて ここは 火の灯魔だから あの”弱っちいウィザード”でも 大丈夫だよ マリア!」

マリアが衝撃を受けて言う
「よ、弱っちいって 言わないで下さいっ 確かに ウィザード様より 弱いかもしれないですけどっ!?」

マリアが思う
(可哀想… いや、駄目よね?そんな事 私が 言ったら?だから…)

マリアが言う
「わ、私の大切な ”友人のウィザード様”なんですからっ」

レイが言う
「そうか マリアがそう言うなら もう言わないよ」

マリアがホッとして言う
「はい… そうしてあげて下さい」

マリアが思う
(ごめんね マキ… でも これで 良いよね?)

レイが言う
「それじゃ その ”使えない ウィザード” がさぁ?」

マリアが衝撃を受けて言う
「それは もっと悪いですからっ!!」


ラフム村 上空

レイとマリアが現れ レイが言う
「はい 到着!ここが最後!俺とマリアが行った 最後のアウターサイドの村だな!」

マリアが言う
「最後のアウターサイドの… そうですね 最後のアウターサイドの村 確か…」

レイが言う
「ラフム村 だったか?マリアに伝える為に 名前を覚えていた村の1つだけど 何か言い辛い名前だったから 覚えてるよ」

マリアが苦笑して言う
「そ、そうですよね?確かにちょっと 言い辛いですよね 発音が難しいと言うか…」

マリアが思う
(私も 確かに 覚えてる でも 最後の方の灯魔儀式の場所は ウィザード様に任せちゃってたのよね?私は… 私はそう 仕事が忙しくて 灯魔神館へ灯魔儀式の予定を 伝える連絡程度しかしてなくって… だから ここ以外の 各村の名前さえ覚えてない 私… 奉者のお仕事は 全然駄目だったなぁ)

マリアが軽く息を吐く レイが言う
「ん?マリア 少し疲れたか?」

マリアが気付き言う
「あ、いえっ そう言う訳では…っ」

レイが言う
「無理しなくったって良いんだぞ?マリアは 空の散歩は慣れてないんだから 俺が 地上の散歩に慣れてないのと一緒で 疲れちゃったんだろ?少し下へ降りるか?」

マリアが苦笑して言う
「そ、そうですね では 少し…」

マリアが思う
(この お空のお散歩は 慣れない私であっても 疲れなんかはしないけど でも 言われてみれば?ちょっと 地上が懐かしくなって来たかな?)

レイが言う
「それじゃ 折角だから そこの灯魔神館にでも入るか?」

マリアが言う
「え?入れるんですか?」

レイが言う
「ああ、もちろん!だって…」

マリアが思う
(そっか?私は休職中とは言え 奉者で… あ、でも ウィザード様は…?)

レイが言う
「ほら 他の奴らだって 見物に行ってるだろ?」

マリアが軽く驚いて言う
「え?」

マリアが思う
(見物って…?)

マリアがレイの示す先を見る 灯魔神館へは 家族連れや個人の旅行者の様な人々が 自由に入っている

マリアが言う
「そう言えば?他の灯魔神館にも 出入りしている人たちが居て… 服装的にも どう言った方なのかな?って思っていましたが… え?”見物”って?」

レイが言う
「灯魔台の灯魔は 普通の奴らにとっては 唯一 魔法を見られる場所だからな?」

マリアが呆気に取られて言う
「あ…っ」

マリアが思う
(確かに?)

レイが言う
「俺もたまに 何となく見に行くけど 普通の奴らは 楽しんで見てるみたいだよ?魔法だ魔法だって あのライトストリートで 俺を見ていた連中みたいに 物珍しいんだろ?」

マリアが思う
(ウィザード様 気付いてたんだ…?それはそうよね?人気ブランド店の 風の噂を 聞ける位なんだから 私の耳でも聞こえた声なんて… それでも)

レイが言う
「それなら 俺たちだって 見に行っても良いだろ?何しろ ここの灯魔作業は 俺たちがやったんだからな?」

マリアが微笑して言う
「そうですね!それに ここの灯魔台には 一番難しい魔法である 風の灯魔をしたんですから!」

レイが言う
「そうだな!流石 良く覚えてるよ マリアは!」

マリアが思う
(覚えてますよ… だって 最後のアウターサイドの村は ウィザード様のお得意な風の魔法で これで 安心だって 思ったのだから…)

マリアが微笑して言う
「それでは 行きましょう!ウィザード様!」

レイが言う
「ああ!行こう!マリア!」

レイとマリアが風に消える


灯魔台神館

レイとマリアが神館の前に現れる マリアが建物を見て思う
(こうして見ると 懐かしい… たった1ヶ月ちょっと前の事なのに)

マリアが神館の入り口付近を見る 多くの観光客が入って行っているが 一瞬 観光客の居ない風景が見える

マリアが苦笑して言う
「私たちが 以前来た時は この辺りには 誰も居なかったですが… 今ではそれが 嘘みたいですね?ウィザード様?」

マリアが振り向くと 一瞬レイが以前のウィザードの姿に見える マリアが一瞬息を飲む

レイが言う
「そうだな!灯魔作業がされた村は 何処も ちょっとした観光地になるらしいぞ?それもあって 各村は 灯魔儀式を早くやれって 急かすんだよな?そいつらにとっては 村興しみたいなもんか?」

レイがマリアを見て疑問する

マリアがハッとして顔を逸らして言う
「か、各村の灯魔台の灯魔は この世界を守る結界を張っているんですから…っ そんな 観光名所みたいにされちゃうのは ちょっと…!?なんと言ますか…っ」

レイが言う
「あははっ 相変わらず マリアは固いよな?俺は 別に良いと思うけどな?」

マリアが反応して言う
「そ、そうですか…?では その灯魔作業をした ウィザード様が良いと言うのでしたら…」

レイが言う
「じゃ とりあえず 見に行こうぜ?…って 言っても 何も変わってないんだけどな?巡礼者の代わりに その観光の連中が 居るって事以外はさ?」

レイが灯魔神館へ向かう

マリアが思う
(え?それじゃ…?)

マリアが疑問しつつ レイを追う


灯魔神館 受付

レイとマリアが入って来ると マリアがハッとして受付嬢を見て思う
(あっ!?えっと…?あの人だったかな?この神館に 灯魔儀式をしに来た時に お話した…?)

受付嬢がレイとマリアを見て 微笑して言う
「どうぞ 灯魔台の観覧はご自由に そちらの通路を 真っ直ぐ行った先で御座います」

マリアが思う
(違う人… だったかな?あぁ 駄目だわ 全然覚えてない でも 向こうも気付いてないって事は やっぱり違うのよね?それなら)

マリアがレイを見て思う
(それに きっと分からないよね?この人が ”あの” ウィザード様だったなんて…)

レイがマリアを見て言う
「ん?どうした?やっぱり やめるのか?」

マリアが一瞬驚いた後慌てて言う
「え?い、いえっ!?行きます!ちゃんと 見ますよっ!?」

レイが疑問する 受付嬢が微笑して言う
「大丈夫ですよ お客様?灯魔台に灯されている魔法は 安全な物ですから 触れたとしても 怪我をする事も ありませんので」

マリアが気付いて思う
(そう言えば 以前 リナが言ってたっけ?それで リナやリナのお父さんも 灯魔台を見るのが好きだって… そっか?)

マリアが微笑して思う
(普通の人が触れられる 唯一の魔法… 皆見たいって 触れてみたいって思う… そうかもしれない 私も 実際に触れた事はないし)

マリアが言う
「…それなら 安心ですね?行きましょう!」

レイが苦笑して言う
「ああ なんだ マリアは そんな事を心配してたのか?その灯魔をやった 俺が居るのに?」

マリアが衝撃を受ける 受付嬢が疑問する

マリアがレイの腕を掴んで 慌てて言う
「そ、それは 今は 良いですからっ!早く行きましょう ウィザード様っ!」

レイがマリアに引っ張られつつ言う
「ん?あ、ああっ 分かったけど マリアっ!?そんなに急がなくても 灯魔台は逃げないぞ?マリア!?」

レイとマリアが走って去る 受付嬢が軽く笑う


灯魔台

マリアがレイを引っ張って来て到着すると 周囲の様子に思わず声を漏らす
「わぁ… 凄い人…」

マリアが微笑して言う
「ウィザード様が灯魔をした 灯魔台は 大人気ですね?…って?ウィザード様?」

マリアが振り返った先 レイがマリアの後ろで息を整えつつ言う
「はぁ はぁ… マリアは凄いな?こんな長い距離走って… 平気で居られるなんて… さ?」

マリアが疑問して言う
「え?あれ位で 疲れちゃったんですか?ウィザード様…?」

マリアが思う
(確かに 受付から この巡礼者スペースまでは 思っていたより有ったけど… それでも 200メートルも無かったよね?)

レイが言う
「俺 途中で 倒れるかと思ったよ?いや、マリアが居なかったら 倒れてたな?」

マリアが衝撃を受けて言う
「え!?あれ位で 倒れないで下さいっ!」

マリアが灯魔台に向き直って言う
「あんな すごい事を出来る人が… そんな事を言ってたら 恥ずかしいじゃないですか?」

マリアの視線の先 人々が灯魔台を見たり 灯魔台の灯魔に手をかざしたりしている

マリアが微笑する後ろで レイが言う
「俺にとっては あの程度の灯魔作業に比べたら 今走って来た事の方が よっぽど凄い事だったよ」

マリアがレイへ向いて言う
「ウィザード様っ!?」

マリアが苦笑して言う
「もう…」

マリアが思う
(でも 私たちが 魔法を使えない事が当然の様に ウィザード様にとって 魔法を使える事が当然なら …そう言う違いなのかな?)

マリアが言う
「それでは 私は 皆さんと同じ様に ちょっと あの灯魔を見て来ますから ウィザード様は 少し休んでいて下さい?」

レイが言う
「うん そうするよ 俺は 自分がやった灯魔なんか触ったって 何も面白く無いからな?」

マリアが苦笑した後 灯魔台へ向かう


マリアがやって来ると 灯魔台の灯魔に触れていた子供たちが楽しんで言う
「魔法 魔法!」 「まほー!」

マリアが微笑し自分も灯魔に触れて思う
(わぁ… ホントに不思議な感じ 機械的に空気を送り出しているのとは違う 何て言うか… 生きている感じがする …私が触れようとすれば 風も 私の手を確認するみたいに)

マリアが微笑して言う
「向こうも 私が 不思議なのかな?」

マリアが思う
(これこそ 魔法ね?風にも意志があるみたい… 面白い)

マリアが灯魔台から手を離すと 手に僅かに風が残り 消えて行く マリアが呆気に取られると 子供たちが言う
「魔法だー」 「お姉ちゃんも 魔法使ったー」

子供たちが笑う マリアが微笑して思う
(あぁ そう言う事ね?)

マリアが子供たちを見る 子供たちが手に残る風を楽しんでいる

マリアが軽く笑って言う
「まるで 風の魔法を 使っているみたいだものね?」

子供たちが楽しんでいる マリアが微笑すると 後方でスーツ姿の大人たちが言う
「補助装置にも 灯魔力が残っている …これは 相当 能力の高いウィザードの仕事だ」

マリアが反応して振り返る スーツ姿の大人たちが言う
「うむ、ただでさえ 難しい 風の灯魔に加え この魔力の高さ… これほど 優秀なウィザードが居るなら この町は安全だな?開拓事業を進めるか?」

マリアが衝撃を受けて思う
(観光客かと思ったら 事業者の人だったのね…)

スーツ姿の大人たちが言う
「いや、しかし 今 ウィザードたちは皆 大灯魔台の灯魔儀式に臨んでいるからな?この灯魔作業をしたウィザードが ずっとこの町に居るとも限らないぞ?それこそ 優秀なウィザードとして神に選ばれて 消えてしまうかもしれない」

マリアが驚く スーツ姿の大人たちが言う
「ではやはり 隣町にするか?隣町のウィザードは 永在ウィザードだって話だ 各地の灯魔状況も良い評価で…」
「いや、隣町は 既に 大手が数社付いている 我々では難しいだろう この町の様な 穴場を探すしかない…」

マリアが思う
(神に選ばれる…?でも 大丈夫よね?”お母さんのウィザード様”だけじゃなくって ウィザード様は それこそ ウィザードじゃなくて 魔法使いになっちゃたんだから… 神様に選ばれて消えちゃう事も その 認定式に出る事だって もう… 無いんだから?)

マリアが苦笑して思う
(大体 あの人は 最初から 神様に選ばれる事なんて 望まない… ”マリアのウィザード様”だもの!)

マリアがホッとしてからその場を去り 元来た道を戻って歩きながら思う
(だからずっと 同じこの地上に居る… お空の散歩が得意でも 私を置いて 天国になんか 行かないよね?)

マリアが視線を向け 一瞬呆気に取られてから 微笑して向かう

マリアの視線の先 レイが杖を横にして浮かべ 椅子代わりにして座り 近くに居る子供たちに風の魔法を使って楽しませている

マリアが近くへ行き微笑すると レイが気付いて言う
「あ、終わったのか?マリア?」

レイが言って立ち上がると共に 風の魔法が弱まり 子供たちが言う
「あー!魔法 無くなっちゃったー?」 「魔法はー?ねー 魔法ー?」

マリアが微笑して言う
「子供たちに 魔法をご披露してたんですね?」

レイが言う
「こいつらが 魔法魔法って うるさくってさ?」

子供たちが言う
「魔法使ってー もういっかいー 魔法ー」 「魔法魔法ー 魔法使いー!」

レイが言う
「もう 終わりー」

マリアが軽く笑う 子供たちが言う
「もっとー」 「もっと魔法ー」

マリアが言う
「もう少し 遊んであげたらどうですか?この子達にとっては 折角の機会ですし?」

レイが言う
「けど、これやってると キリが無いんだよ こいつらの相手している間に 別の奴が来ちゃうからさ?」

マリアが苦笑して言う
「あぁ 確かにそうですね?」

レイが子供たちへ向いて言う
「だから 終わりー」

子供たちが不満を漏らす マリアが軽く笑う

レイが言う
「それで この後はどうしようか マリア?何処か行きたい所はあるか?まだ少し時間があるからな?」

マリアが言う
「そうですね?3時までは もう少し…」

マリアが考えて思う
(でも もう 灯魔神館は全部回っちゃったし… 他に ウィザード様と一緒に行った所は…)

マリアの脳裏に大灯魔台神館が思い浮かぶ マリアが思う
(…でも あそこはちょっと…)

マリアが考えている隣を スーツ姿の大人たちが通り過ぎながら言う
「…だが ここの前に寄った リテス村の灯魔は良くなかったが… 同じ この町なのに…」
「では 別のウィザードが…?」

マリアが思う
(リテス村…?確か この村から 北にある村の名前よね?そこの灯魔が 良くなかったって…?)

マリアがハッとして言う
「あ、あの…っ ウィザード様!?もし可能でしたら 一箇所 連れて行って頂きたい 場所があるのですが」

レイが言う
「ん?もちろん 良いぞ!マリアは 何処に行きたいんだ?」

マリアが言う
「ここから北にある リテス村の灯魔神館と言う場所で…」

マリアが気付いて思う
(あっ!でも移動魔法は 一度行った場所じゃないと無理だって…?だから いつも 灯魔儀式への行きは 車で…)

マリアが言おうとすると レイが言う
「ここから北にある村の 灯魔神館だな?…うん、分かった!それじゃ 行こう マリア!」

マリアが言う
「え?あ、でも…?」

レイがマリアを包んで言う
「もう 走るのは大変だからさ?まずは外まで一気に行っちゃうぞ?」

マリアが言う
「は、はい…?」

レイの杖が光り レイとマリアが風に消える 子供たちが騒ぐ


上空

レイとマリアが現れ レイが言う
「ここから北だな?…うん やっぱり あの灯魔台だ」

マリアが言う
「一度も行った事の無い 灯魔神館ですが 分かるんですか?」

レイが言う
「ああ、分かるよ だって そこの神館の灯魔台には 一応 灯魔がされているからさ?その魔力を感じるんだよ」

マリアが言う
「なるほど…?」

マリアが思う
(私たちが 見に行くって言うのは ちょっと 失礼かもしれないけど… マキ ごめんね?私、やっぱり さっきの話が気になって…)

レイが言う
「それじゃ マリア あの ”貧弱なウィザード” が灯魔した 灯魔神館へ行くぞ?」

マリアが衝撃を受けて怒って言う
「ですからっ その失礼な言い方は 止めて下さいっ!ウィザード様っ!」


リテス村 灯魔神館

レイとマリアが現れる レイが言う
「はい 到着!多分 ここが その リテス村って所だろ?」

マリアが周囲を見渡し 灯魔神館の表札を見て言う
「はい どうやらそうみたいです 有難う御座います ウィザード様」

レイが言う
「礼には及ばないよ さぁ 行こう マリア 俺たちの代わりに この町を任せた あの”軟弱ウィザード”の…」

マリアが言う
「”軟弱”も駄目ですっ!」

レイとマリアが灯魔神館へ向かう


灯魔台

マリアが呆気に取られて言う
「あ…」

マリアが周囲を見ながら思う
(さっきの灯魔台とは違って 補助装置に灯魔が残っていない… それに 何より…)

マリアが灯魔台を見て言う
「何だか… 今にも消えてしまいそう…」

レイがマリアの横に来て言う
「ああ、消えちゃうだろうな?」

マリアが驚いて言う
「えっ!?」

レイが言う
「まず やり方が間違ってるんだよ 灯魔台は 燭魔台と同じ様に 灯魔するんじゃ駄目なんだ」

マリアが言う
「そんなっ!?それじゃ…っ!?」

レイが言う
「今はまだ灯魔台が 込められた魔力を増幅してるから 何とか持ってるけど それも もう少ししたら 消えちゃうよ」

マリアが言う
「そんな… では どうしたら良いんですか?」

レイが言う
「そうだな?自分で考えるしか ないんじゃないか?今なら 大灯魔台の灯魔儀式をやってるんだし 別の町の灯魔儀式とは違って そっちなら 自由に見学に行けるからさ?それを見て分からなければ 終わりだな」

マリアが言う
「お、終わりって…?」

レイが言う
「あんまりにも 灯魔台の灯魔の持ちが悪いと 巡礼者の奴らに除名されるんだよ それはそうだよな?自分たちの町や村を守る ウィザードがそんなんじゃ 安心出来ないだろ?」

マリアが言う
「それはっ そうかもしれませんが…」

マリアが表情を落として思う
(”マキのウィザード様”だって きっと 頑張っているのに… それに 大灯魔台の灯魔儀式をしている 他のウィザードの方々だって…)

レイが言う
「さて、こんなの見てても 詰まらないだろ?マリア?観光客もいないしさ?あと少し時間があるけど どうする?まだ何処か行きたいなら 何処でも」

マリアがハッとして言う
「それなら…っ ウィザード様 もし可能でしたら!?」

レイが言う
「うん!何処へ行きたいんだ?マリア?」


大灯魔台神館 外

レイとマリアが現れ レイが言う
「はい 到着!ここが この前 俺たちが見に行かなかった時に 灯魔された大灯魔台だぞ~?マリア」

マリアが言う
「有難う御座います ウィザード様」

レイが言う
「礼には及ばないよ!それにしても マリアはやっぱり」

マリアが苦笑して言う
「”マリアはやっぱりマリア”ですか?ウィザード様?」

レイが言う
「いや、灯魔儀式が好きなんだな~?って思ってさ?」

マリアが呆気に取られて言う
「え?あ…」

レイが言う
「だって 俺がマリアと 初めて話したのも 灯魔儀式だもんな?それも 大灯魔台のさ?」

マリアが苦笑して言う
「そうですね でも 14年前は 灯魔を心配して来た訳では なかったと思いますが」

レイが言う
「そうか そうだよな?流石のマリアも 6歳くらいの子供の頃じゃ 仕事を大好きになんか なってないか?」

マリアが呆気に取られた後苦笑して言う
「…それはそうですね?」

レイが言う
「それじゃ 今は 仕事が大好きな マリアの為に あの”出来損ないウィザードたち”の 仕事を 確認しに」

マリアが衝撃を受け 怒って言う
「ですからっ!あのウィザードの皆さんたちの事も 悪く言わないであげて下さいっ!ウィザード様!」

レイが向かいながら言う
「そうか!マリアは やっぱり優しいな?マリアが言うなら しょうがないから そうしてやるか」

マリアが苦笑して言う
「もう…」

マリアが追い掛けながら言う
「大体 ウィザード様は 優しいのか 優しくないのか どちらなんですか?」

レイが言う
「どちらでも良いぞ?マリアの好きな方で良いよ!」

マリアが言う
「ですから そう言う問題ではなくて」

レイが言う
「俺にとっては そう言う問題だよ?俺は マリアが…」

マリアが言う
「ですから そうではなくて…っ」

レイとマリアが神館へ入って行く


自宅 前

レイとマリアが現れ レイが言う
「はい 到着!」

マリアが言う
「はい 有難う御座います 時間も お茶の時間に ピッタリですね?」

マリアが玄関へ向かう レイが言う
「そうだな!大灯魔台は 見学スペースより先には行けないから 遠くから一目見るだけだったな?詰まらなかったか?マリア」

マリアが言う
「いえ ちゃんと 灯魔が成功したって事が 分かったんで 十分でしたよ?」

マリアが玄関の鍵を開ける レイが言う
「そうか まぁ あの大灯魔台の属性は 火だったんだから 一番簡単な 火の灯魔を6回やるくらいなら あの…」

マリアが慌てて言う
「”7人のウィザード”で!」

レイが言う
「そうそう!その”7人のウィザード”でも 大丈夫だよ!それくらい出来るように 計算されているだろうからさ?」

マリアが苦笑して言う
「やっぱり 法魔帯の色で ですかね?」

マリアが玄関ドアを開ける レイが言う
「ああ、そうだな?」

マリアが言う
「それなら良かったです… 今回は ウィザード様も ”お母さんのウィザードさま”も 居なかったんですから ちょっと心配だったんです」

レイが言う
「やっぱり マリアは 仕事熱心だよな?」

マリアが苦笑して言う
「もう 奉者じゃないですから 灯魔儀式にウィザード様を 連れて行くお仕事は しないですよ?」

レイが言う
「そっか?それじゃ もう 大灯魔台の灯魔儀式に行く事も 無いのか?」

マリアが一瞬止まってから 微笑して言う
「そうですね きっと… もう無いですよね?」

マリアが思う
(ウィザード様とは ずっと地上で 一緒に居るんだから…)

マリアが微笑して言う
「さ、ウィザード様!入って 3時のお茶にしましょう?」

レイが言う
「うん!」

レイとマリアが家に入る


リビング

レイがソファに座っている

マリアがティーセットを持って来て言う
「お待たせしました」

マリアがテーブルにティーセットを置いて ポットにお湯を入れながら言う
「こうして ウィザード様と このお家でお茶を飲むのは…」

マリアがお湯を入れ終えて ソファに座る レイが向かいのソファに座っていて言う
「えっと 3回目か?」

マリアが疑問して言う
「は、はい… そうですね?」

マリアが思う
(あれ?どうして今日は?)

レイがポットに魔法を掛けながら言う
「やっぱ俺は この家で マリアと一緒に 仲良くお茶を飲むのが 一番落ち着くよ!外だと 何となく?まず 色んな声が聞こえて来て うるさいんだよな?それに」

マリアがレイを見ている レイが言う
「マリアも この家で飲む方が 好きだろう?」

マリアが言う
「え?えっと… そ、そうですね?」

マリアが疑問して思う
(あれ?なんでだろう?ウィザード様が 私と一緒に居て 隣に座らないだなんて?それこそ ”外”以外の時は すぐに…)

レイが言う
「マリアは マリアのお母さんと住む この家が大好きなんだろ?だったら やっぱり お茶もこの家で飲む方が 旨いんじゃないか?」

マリアが思う
(この家が大好き?うん そうだと思う 会社からはちょっと遠いけど お母さんも ”お母さんのウィザード様”のお部屋まで 遠いだろうけど それでも 14年前だって やっぱり この家から通うって お母さんはそう決めたんだよね?それは この家が …ううんっ お母さんは お父さんの事が ”受け入れられなかった”って言ってたから …だから?)

レイが紅茶をカップに注ぎ言う
「はい、マリア」

レイがマリアの側のテーブルに紅茶を置く マリアが呆気に取られてレイを見る

レイが自分の分の紅茶を入れ カップを持ち マリアの視線に疑問して言う
「ん?どうかしたのか?マリア?」

マリアがハッとして言う
「い、いえっ?…有難う御座います」

レイが言う
「どういたしまして!ウィザードじゃなくたって 自分が大好きな奴には 自分が魔法を掛けた お茶を出すのは 普通だよ!俺たちはな?」

レイが紅茶を飲む マリアが言う
「そうなんですか… では 頂きます」

レイが言う
「うん!」

マリアが紅茶を飲んで言う
「美味しい」

レイが微笑して言う
「うん!美味しい!やっぱ マリアと一緒に飲む お茶は すげぇ美味しいよ!」

レイが紅茶を飲む マリアが思う
(でも やっぱり おかしい… 紅茶はいつもと同じで 美味しいけど どうして今日は?ウィザード様は 向かいの席に?折角 外ではなくて お家でお茶を 飲んでいるのに?いつもなら… 今日は いつもみたいに ”仲良く” しないの?)

マリアが言う
「あ、あの?ウィザード様?」

レイが言う
「うん?何だ?マリア?」

マリアが思う
(あぁ… でも ”どうして 今日は 隣に来ないんですか?どうして 抱き付かないんですか?” だなんて とてもじゃないけど 言えない… だから…)

マリアが苦笑して言う
「ウィ… ウィザード様が 私の 向かいの席に座っているのって… 何だか 久し振りですね?えっと… 確か 2回目ですか?」

マリアが思う
(そうよね?あの時… 魔法使いになったウィザード様と 再会した あの日 あの喫茶店で お茶を飲んだ時以来…)

レイが気付いて言う
「ああ、そう言えば 2回目だな?あの時は 外だったし それに マリアを守るのは 俺じゃないんだって 思ってたからさ?」

マリアが言う
「え?あ…」

マリアが思う
(そうだった あの時はウィザード様に 誤解をさせちゃったのよね?私が ”お母さんのウィザード様”の 奉者になりたがっているんだ って…)

レイが言う
「けど あの時マリアが俺に ”マリアのウィザード様”で 居て良いって言ってくれたからさ?それからは俺 また 出来るだけ マリアの近くに居られるようにしていたんだけど?でも マリアはやっぱり いつも忙しいから  短い時間に 魔力を移そうと思うと 出来るだけ身体を近付ける方が良くって?」

マリアが驚いて思う
(――えっ?今 何て…?魔力を移そうと思うと?身体を近づける方が…!?それじゃ…っ)

マリアが言う
「それじゃっ もしかして!?…いつも 私に 抱き付いていたのは?その…っ ”魔力を移す為” だったんですかっ!?」

マリアが思う
(そんなっ まさかっ!?)

レイが言う
「ああ そうだよ?そうしないと マリアの身に何か有った時 助けられないからな?」

マリアが思う
(嘘っ!?それじゃ…っ!)

マリアが呆気に取られて言う
「それじゃ… ずっと… あの ”ウィザードであった時” …も?」

レイが言う
「もちろんだよ マリア!ウィザードなら 尚更!自分の奉者を守れなかったら 笑い者だからな?」

マリアが言葉を失う

レイが言う
「それに 俺は ウィザードであろうが 魔法使いであろうが ”マリアのウィザード様”だからさ?マリアの事は必ず守るって!けど 俺 実は 結構ヒヤヒヤしてたんだよな?マリアは人前で抱き付くなって言うし この家の前でも やっぱり嫌だって言うからさ?このままじゃ マリアに嫌われちゃうかと思って?それに 魔力を移そうと思うと やっぱり時間が足りないんだよ それで 俺は その お守りを作る事にしたんだ!」

マリアが言う
「え!?こ、これっ!?」

マリアがネックレスを見る

レイが言う
「ああ、俺はデカイ魔力の割りに それを制御する精神力は低いからさ?お守りを作るとか そう言う細かい作業は 一番苦手で 自信も無かったんだ けど、万が一 マリアにマリアのお父さんみたいな事が起きたら 取り返しが付かないからな?だから 思い切ってやってみたら 上手く行ったよ!頑張れば出来るもんだよな?ははっ」

レイが紅茶を飲む マリアが思う
(そんな… どうしよう?また…)

マリアが視線を落として思う
(また 私の ”勘違い”だった…)

マリアが俯いて思う
(ウィザード様は ただ私に魔力を移す為に ”仲良く”していただけ… そうよ?良く考えれば ウィザード様は このネックレスをくれた時から いつもの送り迎えで 私に抱き付いては来なくなったもの だから 今のこの状態こそ 私とウィザード様の 正しい姿…)

マリアがレイを見る レイはテーブルを挟んだ先のソファに座っている

マリアが視線を落として思う
(あぁ 何だろう…?何だか とっても 遠い… 同じこの部屋に居るのに… 一緒に 仲良く… お茶を飲んでいる筈なのに…?)

レイが紅茶を飲み終わり お替りを注ぐついでに マリアのカップを見て 紅茶を継ぎ足してから 自分のカップを持て ソファに身を静めて飲み 嬉しそうにマリアを見る

マリアが思う
(抱き付く所か そんな遠くに居たら もう… 手も届かないわ…)

マリアが手を握りしめる

レイが疑問して言う
「マリア?」

マリアがハッとする

レイが心配して言う
「どうかしたのか?マリア?何だか 凄く辛そうだ 何かあったのか?」

マリアが困って言う
「い、いえ…」

マリアが思う
(言えない… 隣に座って貰えないのが 抱き付いて貰えないのが 寂しいだなんて… 今まであれだけ 嫌がって来たのに ウィザード様は ただ魔力を移そうとしていただけなのに… それに 嫌われるかもしれないだなんて 心配までさせて置きながら…っ 私は…)

マリアが紅茶を飲んで思う
(何だか 急に 1人ぼっちに されちゃったみたい… お母さんも こんな感じなのかな?)

マリアが思い出す

ソニアが苦笑して言う
『お母さん 一人になっちゃったわ お母さんの両親は もう亡くなっているし 兄弟とも 疎遠になってしまっているから やっぱり ちょっと 寂しいわね?』

マリアが思う
(お父さんと別れて 私とも 姓が別になって… 私には 疎遠も何も 兄弟なんていないし …ウィザード様も 傍には居なくて 私… やっぱり お母さんと同じ姓に してもらおうかな?だって そうしないと 私 本当に 1人に…?)

マリアが思い出して言う
「あ、あのっ ウィザード様?」

レイが言う
「ん?どうした?マリア」

マリアが言う
「その… 先日 話辛い事を 無理して お話して頂いたのに それを蒸し返す様で 申し訳ないのですが」

レイが言う
「マリアのお父さんの話か?俺は構わないぞ?」

マリアが苦笑して言う
「有難う御座います では お言葉に甘えて もう少し ウィザード様が知っている限りの 私の父の事を 教えてもらっても 良いですか?私… 当時は5歳だったので 殆ど父の事を覚えていなくて だから何でも… ちょっとした事でも良いので?」

レイが言う
「うん 俺も その頃は マリアと同じ位の歳で それに あんまり 人と話したりとか その… ”探求者”って奴らが 何を目的にしているのかも 分からなかったからさ?それに、あいつらは 昔も今も 俺たちみたいな 魔法を使う奴の事が嫌いなんだよ」

マリアが言う
「え?」

レイが言う
「だから余計 近付かなかったんだけど でも 一度だけ そいつらに ”何をしたいんだか知らないけど アウターに行ったら 危ないぞって” 忠告をしたんだ ”結界の中に居るべきだ”って そしたら 連中は 魔法使いの格好していた俺に 文句を言って来てさ?けど、そんな中で ”いくら魔法使いでも 子供相手に そんな事は言うな”って 庇ってくれたのが マリアのお父さんだったよ」

マリアが驚く

レイが言う
「それで、こんな所に居ないで 親の所に帰れって 言われたっけ?まぁ 俺は その頃から 親なんて この世に居なかったから 言われた通りにする事は 出来なかったけどさ?その3日後位だったかな?異常魔力の強い日があって 連中は 喜んで向かって行ったよ あの頃の俺には 理解出来なかったけど 今なら きっと あいつらは 異常魔力の強い時こそ その”元”って奴が すぐ近くにあるって 思ったのかもな?…それで 次の日 戻って来た連中の中に マリアのお父さんは居なかったよ」

マリアが言葉を失っている

レイがマリアを見て言う
「俺が知ってるのはそれだけだ 連中が魔法の使える範囲で 野生動物の群れに遭遇してたなら 助けてやれただろうけど 俺は連中の事 そこまで見てなかったし 助けてやろうって気も やっぱり無かったな?でも 1つ分かる事として」

マリアがレイを見る

レイが言う
「奴らが探している 異常魔力の元って言うのは 連中みたいのが 向かって行って 辿り着けるほど 近くになんか 無いんだよ そいつは もっと遠くにあって …でも 異常魔力は 結界のすぐ外まで来るんだ」

レイが苦笑して言う
「だから 外へ出るなって… 言ったんだけどな?」

マリアが言葉を失っていた状態から 微笑して言う
「有難う御座いました ウィザード様」

レイがすまなそうに言う
「ごめんな マリア」

マリアが顔を左右に振ってから思う
(ウィザード様が 謝る必要なんて 全く無い きっと探求者の人たちは 警告を聞いても 未来の為にって… 自分たちに出来る事を やりたかったんだと思う… それが 例え 手の届かないものであっても)

マリアが定期券入れの写真を思い出して思う
(お父さんは 当時は小さな魔法使いだった ウィザード様を見て もしかしたら 私の事を思い出したのかもしれない… それで 親の下へ帰りなさいって… でも それなら 自分こそ 私とお母さんの居る この家に帰って来てくれたら良かったのに そうしたら私は 1人になんてならなかった… お母さんとも)

マリアが肩の力を抜く レイがふと気付いて言う
「…あ?マリア?」

マリアが疑問してレイを見る レイが言う
「あのさ?今 この家の前に マリアのお母さんが…」

マリアが一瞬疑問した後 慌てて言う
「えっ?お母さんがっ!?」

インターフォンが鳴る 

マリアがハッとして思う
(えっ!?どうしようっ!?お母さんが 帰って来ちゃったっ!?)

マリアが思わず立ち上がって思う
(でもっ!今ここには ウィザード様がっ!…べ、別に そのっ 何も悪い事は 無いんだけどっ!?)

インターフォンがもう一度鳴る

マリアが慌てて玄関へ向かいながら言う
「は、はいっ!?お、お母さんっ!?」

玄関の外からソニアの声がする
「マリア?そこに居るかしら?鍵を開けてもらいたいのだけど お母さん 手がふさがってて…」

マリアが慌てて言う
「う、うんっ!」

マリアがドアを見て思う
(でもっ!?この家に ウィザード様が居る時に お母さんが入ったりしたら…っ お母さんの入る この家に”悪い魔力”が居るって ”お母さんのウィザード様”が 怒って来ちゃうんじゃっ!?)

レイが疑問して言う
「鍵を開ければ良いのか?」

マリアがハッとしてレイを見て思う
(あっ!”悪い魔力”がっ!)

レイが軽く杖を動かすと 玄関ドアの鍵が開く

マリアが衝撃を受けて思う
(あっ!だ、駄目ーっ!)

レイが杖を更に動かすと 玄関ドアが開く マリアがハッとして振り向く

ソニアが言う
「あら、ありがとう 気が効くわね?」

マリアが言う
「あっ!お母さんっ!今 お母さんが入ったらっ!」

マリアが思う
(”お母さんのウィザード様”が…っ)

マリアが一瞬向かおうとした動作を止め 目を丸くして驚いて言う
「…えっ?」

ソニアがマリアを見た後 レイを見て微笑して言う
「まぁ 本当に丁度良かったわ?風の魔法使いさんも居るって事は 今は2人で3時のお茶を 飲んでいたんじゃないかしら?お母さんたちも それに ご一緒させてもらおうと思って?」

マリアが呆気に取られて思う
(お、”お母さんのウィザード様”が… ウィザードさまが… こ、この家に… き… き… 来たっ!?)

ソニアの隣にウィザードが居る

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