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番外編)欲望のバレンタイン5*

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 同じ形状のもの二つが細いコードで繋がれたそれは、由岐によって吸盤のふち部分に薄くクリームのようなものを塗られる。


「な、なんだよ、それ…………?」
「さぁ、なんだと思います? 翔李さんの乳首には、きっとお似合いですよ」


 そう言って楽しそうに微笑んだ由岐は、俺の熟れた乳首にそのドーム状の吸盤を被せるように乗せた。
 スポイトを摘んで軽く押し付けられると、由岐がスポイトから手を離した途端に吸盤の中の空気が抜ける。それを繰り返すことによって吸引された乳首が更にツンといやらしく尖って、なんとも見るに堪えない恥ずかしい様相になった。


「やっ、やめ……っ! こんなの、駄目だって……!」


 片方が装着された時点で、あまりの恥ずかしさに耐えかねて俺は身をよじる。けれども両手を首の後ろに拘束されて由岐に馬乗りになられたままの俺が逃げることは、当然敵わない。あっさり押さえつけられて反対側にも同じものを装着され、吸盤の内側で、由岐の手の動きに合わせてツンとピンクの小さな実が尖る。


「ふふふ、なぜです? とてもよくお似合いですよ。僕の思ったとおりでした」


 そう笑った由岐は、おもむろに小さなコントローラーを取り出した。





 室内にはブーンという小さな低音が響いている。その音源は俺の胸の上、先程装着された玩具の中だ。
 どうやらドーム状の吸盤の内側には金属製の小型ローターが仕込まれていたらしい。吸盤に吸い上げられて尖った乳頭に、僅かにその振動が当たっている。チリチリとしたその甘美な刺激は、間違いなく快楽ではあったものの、上り詰めて達するには程遠い。

 俺はそのくすぐったさにも似た細やかな振動を、唇を噛み締めながら耐えていた。


「んん……っ、ぁ……ッ、かなで……っ、これもうヤダ……ぁっ」
「ふふ、いい眺めです。ココでそんなに感じて、女の子みたいですよ?」


 そう言って、由岐がカチカチになった俺のペニスにちょんと触れる。


「うう……っ、ひぁ……ッ!」


 敏感になりきったそこは、もはや触れられるだけでもたまらなかった。
 散々体を煽られた俺は、そこへの刺激が欲しくて欲しくて堪らない。なのに、今日の由岐はなぜだかほとんどそこへ触れてくれない。

 イキたくてもイケない淡い胸の快楽は、気持ちいいを通り越してもはや辛かった。



「かなでぇ、頼む……ッ、も、イキたい……っ」
「まだ駄目です。今日はおしおきなんですから、ペニスでイッたら意味がないでしょう? 貴方が自分にタチができるなどと二度と勘違いしないように、しっかり可愛がってあげなくちゃいけませんからね」


 半泣きで縋る俺を、由岐はそう言ってあっさりとかわす。既に先走りでびっしょりと濡れたそこは、ようやく生え揃った下生えまでもを濡らしていた。


「ああ、そうだ。中に何か挿れてあげましょうか?」
「……!! あ、やぁ……っ」
「ほら、いい子です。力を抜いて」


 そう俺をなだめた由岐が引き出しから取り出したのは、いつかの小ぶりなローターだった。

 これは俺が由岐と初めて関係を持ったあの日、由岐の指示で俺が購入して持参してきたものだ。
 あの日も確か、俺は執拗に乳首に愛撫を受けて、そして…………。


「っ、あ……っ!」


 俺の意識が少しだけそれていた間、コンドーム越しにローションをまとわされたそれは、由岐によって菊花の中心に押し付けたられた。軽く押された途端それはつるりと俺の中に入り込んで、熱い粘膜の中に冷たいプラスチックの感触を伝える。
 

「懐かしいですよね、これ。覚えていますか?」
「そ、それは……」
「あれ? 忘れちゃいました? ……じゃあ、体で思い出してみます? ふふっ……」


 俺が覚えていることに気がついている様子の由岐は、わざとそう小さく笑ってローターのスイッチを入れる。続けてローターのコードに沿って中指を蕾の中心に突き立てると、チュッと俺の膝頭に口づけを落とした。
 つつ……と一瞬だけ窄まりの皺をなぞる指の感触があって、次に感じた感覚は内側だった。ごく浅いひだの内側をくにくにと弄ばれて、しなやかな由岐の指の感触に俺は悶える。

 やがてヌプリと奥へ侵入してきた由岐の指は、中にあった小さなローターを捉えると、ある一点に押し付けるように揺らした。


「あっ!? ……んんん! ……やだ、かなでっ、や……ッ、そこは……っ!」
「嘘ばっかり。本当は嫌じゃないでしょう? 今まで過去にココで何度イッたと思っているんです?」
「あ……ああ……ッ! 違、ぁっ……!」


 由岐の日頃の的確な攻めですっかり慣らされたそこは、今や軽く弄られただけでも狂おしいほどの快楽が滲んだ。腹の中側から蕩け出た快楽が麻薬のように下半身を毒して、ビクビクと括約筋を震わせる。


「やぁっ、やっ、……だ、めッ……。かなでっ、……かなで……っ!!」
「気持ちいいですか? 可愛いお尻の穴がひくひくしていますよ」
「気持ち、いい……ぁぁっ!」


 ローションの滑りで中を捏ねられて、クチクチと粘質で卑猥な音が寝室に響く。執拗にそこを嬲られて、両足がガクガクと震え始める。悪戯にふにふにとそこを揺らすように押されて、堪らずに俺の腰は浮いた。


「あ……あ、あぁ……ッッ、そこっ、ばっかり……、ンンッ……!」
「思い出してくれました……?」


 俺がコクコクと頷くと、由岐は嬉しそうに目を細めた。


「そろそろ素直になりませんか? 僕達はもう、なんですから」
「あ……」


『そろそろ素直になりませんか? 僕達は所詮、セフレ関係なんですから』


 これは、由岐と俺が初めて繋がったあの日の由岐の言葉だった。
 ここに来てようやく由岐の欲しがっている言葉に気がついた俺は、快楽で痺れる唇を開く。


「かなで……ッ、それ……気持ちいいけどイケなくてやだ……ッ。かなで、の……がっ、中に欲しい……ッ……」
「翔李さんは一体どこに、僕の何がほしいんですか? はっきり言ってくれないと、分からないです」


 言葉でそう俺を焦らしながら服を脱いだ由岐が、その美しい裸体を晒しながら分かりきったことを俺に問う。
 俺の顔を覗き込むように覆い被さった由岐の頬は、ほんのりと紅潮していた。長いまつ毛に縁取られた大きな瞳に、俺の姿が映るのが見える。
 ドキドキと心臓が高鳴るのは、快楽のせいだけではないだろう。


「あ……その、かなで、の………………、あぁ……っ!!?」
「ほら、翔李さんが早く言わないから」


 由岐の細められた瞳の中には、悪戯っ子ともサディスティックとも取れる光が見える。それらを宿した瞳の由岐は、手の中の二つのコントローラーを摘んで俺に示した。
 続いて聞こえたのは、カチカチ……という小さな操作音。
 聞こえたと同時に体内にあるものと胸元にあるもの、双方の玩具の振動が突然強くなって、俺は更に仰け反った。
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