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3章 罪
今日の天気は晴れ時々目玉
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「よく来たな、二人共!!」
「さぁ、僕達のブラックコーヒーの準備は出来てるよ。二人の甘いデートの様子、ちゃ~んと見せてよね」
今日は7月1日。
昨日まで桜薬市を覆っていた雨雲は嘘のように晴れ、今日は青空から厳しい日差しが注がれていた。
最寄りのバス停に付いた俺とファナエルを待ち構えていたのは、二人して仁王立ちしているやけにテンションの高い始と斬琉だった。
「いや~にしても晴れて良かったな。今日は一日快晴らしいぞ」
「まぁ地元にある古臭い遊園地のチケットだけど、僕達からの誕生日プレゼントって事で‥‥‥周りのカップルを誘爆する勢いでイチャイチャしてきなよ」
「これペアチケットだけど、私も貰って良かったの?」
「良いの良いの、ファナエルさんにはうちの秋にぃがお世話になってるから」
「これからも秋良と仲良くしてやってくれ」
ファナエルに向かって深々と頭を下げる始と斬琉。
お前らは一体俺の何なんだよ。
「というか、何でお前らそんなにテンション高いんだよ」
「何でって、そりゃ僕達は秋にぃと長い付き合いだし~」
「中学三年ぐらいからひねくれだしたお前が今こうやって可愛い彼女とデートしてるのを見ると、こうもなっちまうもんなのさ」
「あの時は酷かったよね~。僕と始っちがどれだけ苦労したことか」
「おいやめろ!!ファナエルの前で昔の話すんな!!」
ニンマリとした顔を浮かべる二人。
心でもシンクロしているのか、同時に俺の肩をツンツンしながらマシンガンの様に言葉を放つ。
それも言わなくても良い過去の話まで。
「全く‥‥‥‥‥‥‥まぁでもありがとな。今の俺が有るのはお前らのおかげだ」
「え?秋良お前今なんて?」
「あの秋にぃがデレた‥‥‥ちょっとちょっと、ファナエルさんと付き合って丸くなったんじゃない?」
「う、うるさいな。俺はただ思った事をだな」
「顔真っ赤になってるじゃん。ねぇ秋にぃもう一回言って、ワンモアプリーズ!!」
よっぽど俺が感謝するのが珍しいのか、それともただからかいたいだけなのか。
斬琉は俺の両肩を掴んでぐわんぐわんと体をゆらして懇願する。
こうなった斬琉は諦めが悪い。
面倒臭くなってきたこの状況をどう抑えようか。
そんな事を考えていたその時、俺の体がどこかへ引き寄せられる。
引き寄せられた先には俺の腕を強く握るファナエルが待っていた。
「ハジメ君もキルちゃんも、アキラとすっごく仲が良いのは分かったけど‥‥‥もうアキラは私のものだから」
「ヒューッ、秋にぃ愛されてる~。それじゃぁ僕たちはお暇させてもらうね」
斬琉の台詞を最後に、二人は素早くバス停から退散する。
ちらっとスマホを見ると、バスが到着するまで残り一分を切っている所だった。
「悪いな、騒がしい奴らで」
「ううん。いいの」
ちょっと嫉妬しちゃったけどと言いながら髪を揺らす彼女の顔は満面の笑みだった。
少し、俺の腕を掴む力が強くなっている様な気はするけど。
「あ、そうだ。バスが付く前にアキラへの誕生日プレゼント渡さないと」
ファナエルはそう言うと、小さなバッグの中から一つの茶色い袋を取り出した。
袋の中には銀色の腕輪が二つ入っている。
腕輪の中心にはファナエルの瞳によく似た緑色の宝石が埋め込まれていた。
「せっかくだからアキラとお揃いの物身に着けたいなと思って……重いかな?」
「そんな事ないない。こんなに綺麗な腕輪、嬉しいよ」
「良かった。お金の事は気にしないでね天使の特権みたいなものだから」
俺が心配しそうなことに杭を差す様に彼女は微笑んだ。
ファナエルがそう言ってくれるなら余計な心配はしないでおこう。
右腕に渡された腕輪を付けてみる。
少しひんやりする。
「ねぇアキラ、私の腕にも付けて」
ファナエルはそう言って左腕を俺の方へ差しだした。
未だに女性の肌を触るのは緊張するけど、出来るだけスマートにやってみよう。
あんなにキラキラしてるファナエルの目を見たら、恥ずかしいだの緊張するだの言ってられなくる。
きっとファナエルは誰になってこういう事をしてほしかったんだなと感じながら俺はゆっくりと彼女の左腕に腕輪を通した。
「これでお揃いだね」
「そうだな」
少し照れながら言葉を交わしていると、ちょうどいいタイミングでバスが到着する。
俺達はお揃いの腕輪を付けている手を握り合って、後ろの方の席に腰かけた。
『本日は桜薬バスをご利用いただきありがとうございます』
バスのアナウンスが流れる。
俺は窓の外を見て、これから何をしようかとぼんやり考えていた。
窓の外に映る雲に違和感を感じたのもちょうどこのタイミングだった。
「なぁ、ファナエル。あの空ちょっと変じゃー」
『今日のTEん木はひzyoうに####す。午後カラはアME#########ガーガー………』
バスのアナウンスが聞くからに異常な音を出す。
それに合わせて快晴だった空は雲ではない緑色の何かに覆われ、辺りは一瞬で薄暗くなるのだった。
『今日の天気は晴れ時々目玉……絶好の、【ハネナシ】探し日よりになるでしょう』
「さぁ、僕達のブラックコーヒーの準備は出来てるよ。二人の甘いデートの様子、ちゃ~んと見せてよね」
今日は7月1日。
昨日まで桜薬市を覆っていた雨雲は嘘のように晴れ、今日は青空から厳しい日差しが注がれていた。
最寄りのバス停に付いた俺とファナエルを待ち構えていたのは、二人して仁王立ちしているやけにテンションの高い始と斬琉だった。
「いや~にしても晴れて良かったな。今日は一日快晴らしいぞ」
「まぁ地元にある古臭い遊園地のチケットだけど、僕達からの誕生日プレゼントって事で‥‥‥周りのカップルを誘爆する勢いでイチャイチャしてきなよ」
「これペアチケットだけど、私も貰って良かったの?」
「良いの良いの、ファナエルさんにはうちの秋にぃがお世話になってるから」
「これからも秋良と仲良くしてやってくれ」
ファナエルに向かって深々と頭を下げる始と斬琉。
お前らは一体俺の何なんだよ。
「というか、何でお前らそんなにテンション高いんだよ」
「何でって、そりゃ僕達は秋にぃと長い付き合いだし~」
「中学三年ぐらいからひねくれだしたお前が今こうやって可愛い彼女とデートしてるのを見ると、こうもなっちまうもんなのさ」
「あの時は酷かったよね~。僕と始っちがどれだけ苦労したことか」
「おいやめろ!!ファナエルの前で昔の話すんな!!」
ニンマリとした顔を浮かべる二人。
心でもシンクロしているのか、同時に俺の肩をツンツンしながらマシンガンの様に言葉を放つ。
それも言わなくても良い過去の話まで。
「全く‥‥‥‥‥‥‥まぁでもありがとな。今の俺が有るのはお前らのおかげだ」
「え?秋良お前今なんて?」
「あの秋にぃがデレた‥‥‥ちょっとちょっと、ファナエルさんと付き合って丸くなったんじゃない?」
「う、うるさいな。俺はただ思った事をだな」
「顔真っ赤になってるじゃん。ねぇ秋にぃもう一回言って、ワンモアプリーズ!!」
よっぽど俺が感謝するのが珍しいのか、それともただからかいたいだけなのか。
斬琉は俺の両肩を掴んでぐわんぐわんと体をゆらして懇願する。
こうなった斬琉は諦めが悪い。
面倒臭くなってきたこの状況をどう抑えようか。
そんな事を考えていたその時、俺の体がどこかへ引き寄せられる。
引き寄せられた先には俺の腕を強く握るファナエルが待っていた。
「ハジメ君もキルちゃんも、アキラとすっごく仲が良いのは分かったけど‥‥‥もうアキラは私のものだから」
「ヒューッ、秋にぃ愛されてる~。それじゃぁ僕たちはお暇させてもらうね」
斬琉の台詞を最後に、二人は素早くバス停から退散する。
ちらっとスマホを見ると、バスが到着するまで残り一分を切っている所だった。
「悪いな、騒がしい奴らで」
「ううん。いいの」
ちょっと嫉妬しちゃったけどと言いながら髪を揺らす彼女の顔は満面の笑みだった。
少し、俺の腕を掴む力が強くなっている様な気はするけど。
「あ、そうだ。バスが付く前にアキラへの誕生日プレゼント渡さないと」
ファナエルはそう言うと、小さなバッグの中から一つの茶色い袋を取り出した。
袋の中には銀色の腕輪が二つ入っている。
腕輪の中心にはファナエルの瞳によく似た緑色の宝石が埋め込まれていた。
「せっかくだからアキラとお揃いの物身に着けたいなと思って……重いかな?」
「そんな事ないない。こんなに綺麗な腕輪、嬉しいよ」
「良かった。お金の事は気にしないでね天使の特権みたいなものだから」
俺が心配しそうなことに杭を差す様に彼女は微笑んだ。
ファナエルがそう言ってくれるなら余計な心配はしないでおこう。
右腕に渡された腕輪を付けてみる。
少しひんやりする。
「ねぇアキラ、私の腕にも付けて」
ファナエルはそう言って左腕を俺の方へ差しだした。
未だに女性の肌を触るのは緊張するけど、出来るだけスマートにやってみよう。
あんなにキラキラしてるファナエルの目を見たら、恥ずかしいだの緊張するだの言ってられなくる。
きっとファナエルは誰になってこういう事をしてほしかったんだなと感じながら俺はゆっくりと彼女の左腕に腕輪を通した。
「これでお揃いだね」
「そうだな」
少し照れながら言葉を交わしていると、ちょうどいいタイミングでバスが到着する。
俺達はお揃いの腕輪を付けている手を握り合って、後ろの方の席に腰かけた。
『本日は桜薬バスをご利用いただきありがとうございます』
バスのアナウンスが流れる。
俺は窓の外を見て、これから何をしようかとぼんやり考えていた。
窓の外に映る雲に違和感を感じたのもちょうどこのタイミングだった。
「なぁ、ファナエル。あの空ちょっと変じゃー」
『今日のTEん木はひzyoうに####す。午後カラはアME#########ガーガー………』
バスのアナウンスが聞くからに異常な音を出す。
それに合わせて快晴だった空は雲ではない緑色の何かに覆われ、辺りは一瞬で薄暗くなるのだった。
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