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2章 ファナエル=???
コードネームはジャッジメント
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「もう、一体どうやったらこんな怪我するの?」
「いてて、いやーちょっと盛大に転んでな」
「ただ転んだだけでこんな怪我するとは思えないけど」
斬琉は怪訝そうな顔をしながら俺の傷に消毒液を塗る。
時刻は昼を過ぎた午後4時半、下校途中だった斬琉に拾われて家まで帰って来た俺は、彼女に尋問されながらの軽い治療を受けていた。
超能力組織『シンガン』の事や鳥頭の怪異の事、俺の身体に異変が起こっていてその原因がファナエルである事……それら全てを彼女に伝える訳にはいかず、俺は適当な言い訳をしながら治療を受けていた。
体の傷はと言うと、はるか上空から落下し盛大に地面にぶつかったというのにかすり傷しかついていない。
普通は骨折していないとおかしいのだが……この程度の怪我で住んでいるのは明らかに不可解なことだ。
不可解な点と言えばもう一つ気になることが……俺の右腕が無傷である事だ。
数分前まで、猛烈な痛みと共に銀色の髪の毛を生やしていたあの右腕がまるで何もなかったかのように綺麗な状態で姿を現している。
いずれの怪我の状態も、普通の人間だった頃の俺の身体ではありえない。
愛した人間を無理やり自分と同じ超能力者にする……そう言っていた氷雨達の言葉を身をもって実感していた。
今はあの黒いガムを口に含んでいるから症状が治まっているが、それを吐き出してしまえばまた他人の心の声が頭に響いてくるのだろう。
とりあえず、今俺がやらなきゃいけないことはファナエルと話をすることだ。
こんなことを言えばまた氷雨達に怒られるかもしれないが……ファナエルが望むなら、俺は自分の体が超能力者になろうが何になろうが受け入れるつもりだ。
だからその意思をちゃんとファナエルに伝えて、氷雨達シンガンの事も教えないといけない。
そう思って俺はポケットの中にあるスマホを取り出そうと手を動かした。
「ちょっと、秋にぃ動かない!!絆創膏が綺麗に張れないでしょ」
「わざわざ絆創膏なんて張らなくても大丈夫だって」
「こんなに目立つ傷を顔につけといてな~に言ってるんだか」
斬琉は呆れ顔でこちらを見ながら、スマホを取り出そうとしていた俺の腕を抑える。
そんな彼女の言葉を否定したのは、リビングの奥からアイスを持って現れた一人の女子高生だった。
「いや、顔の傷は強者の証。このまま残しておいた方が良いと私は提唱する」
「……るるちゃんはぶれないねぇ。さすがの僕でもびっくりするよ」
「割り切り姫ほどじゃない。私はまだまだ下っ端戦闘員の身だ」
るると呼ばれた少女はフンス、と腕を組みながら斬琉に返答していた。
「氷菓子を恵んでくれて感謝する」と言ってアイスを頬張る彼女に対し、斬琉は「たかだか150円ぽっちのアイスおごっただけで大げさだねぇ」と声を返しながら絆創膏を俺の頬に張った。
「なぁ、斬琉……あの子は友達か?」
「ん、そうだよ。ほら、この前秋にぃに写真を見せた癖の強い転校生だよ」
そういやそんな事言ってたな。
るると呼ばれた少女をジィっと見てみると、左目には眼帯、制服にはいかにも中二病チックなアイテムがいくつか縫い付けられている……癖が強いどころの話ではない様な気がするが、まぁ高校生なんだからこういう事する人も居るよなと無理やり自分を納得させる。
「てか、割り切り姫ってなんだよ」
「何って、僕のあだ名だけど?」
斬琉は何食わぬ顔でそう言うと、制服のポケットから緑色のサイコロを取り出した。
「るるちゃんが僕と友達になりたいっていうから、このサイコロ振って偶数が出たら友達になってあげるって言って、それ以来割り切り姫って呼ばれるようになった」
「えぇ……と言うか、始とレンタル彼女してるって話もそうだけどお前そのサイコロで自分の行動決めすぎだろ」
「人生を壮大なギャンブルに仕立て上げ、割り切った命題には情熱を持って取り組む。その姿を見た時、斬琉のあだ名は『割り切り姫』しかないと私は考えた」
アイスを全部食べ終わったのか、るるは斬琉の隣に立ってやや興奮気味に斬琉の絶妙にダサいあだ名を決めた理由を語り始めた。
「因みに私のあだ名はジャッジメントだ」
「あ、そうなんだ……それじゃぁ俺ちょっと用事があるから」
そう言ってスマホを握り、この場を離れようとする。
俺はいち早くファナエルに俺の身体の事を伝えないといけないんだ。
妹の友達とは言えあんな茶番に付き合っている道理はない。
「それなら、この眼帯に封印している私の魔眼を見てもらってからにしよう」
「いや、俺本当に急いでてな」
「私の所属している組織、『シンガン』の中でも最も強大な私の魔眼の力をな」
「……は?お前今なんてー」
俺の制止を待つ前に、彼女はつけてあった眼帯をバッと取り除く。
そこにあったのは、赤い宝石がねじ込んであるのではないかと勘違いしてしまうほどの異質な左目があった。
彼女はその左目に手をチラリとかざす。
「レイジネス・シン」
一瞬、視界が赤く染まったかのような感覚に襲われた。
今すぐこの場から逃げてファナエルに連絡を取らないと、そう考えているのに体が動かない。
それも何かに拘束されているのではなく、思考を行動に移すのがものすごく面倒に感じてしまうのだ。
「私の魔眼に侵された物はみんな怠惰な生き物へ変貌する。攻撃をしようと計画を考えても体を動かすのがだるくなり、あきらかに異常な状況に巻き込まれても違和感を覚えることすら面倒になる……これが私の魔眼に宿った能力」
彼女は勝ち誇ったような笑みを浮かべて今俺の身に起こっている状況を説明する。
そんな彼女の説明が真実であることを表しているのは目の前にいる斬琉の態度だった。
彼女は明らかに異常なこの状況を一切気にしていない。
あくびをしながらソファーの上で横になり、俺とるるの会話なんて気にもせずいつもと変わらぬ様子でスマホをいじり始めている。
「ボスからターゲットを逃がしたと聞いたときは少し焦ったけど、私が書けておいた保険が役に立ったようで良かった」
「保険って……それで妹に近づいたのか」
「下っ端であれど私もシンガンのエージェント。出来ることはやりつくすまで」
彼女はそう言って自分のスマホを取り出し、電話をかける。
それとほぼ同時刻、、俺のスマホにも電話の着信が入った。
画面に表示されている相手はファナエルだ。
「こちらジャッジメント、ターゲットを発見した。至急にこの座標まで瞬間移動してくれると助かる」
るるの声を右から左に流し、俺はファナエルからかかってきた連絡を取るために必死になって指を動かす。
どこか体が重くて「まぁいいや」と言う感情が何度も頭の中で逡巡している……それでも俺は彼女に伝えないといけないんだ……俺はファナエルは見捨てない、絶対に受け入れるって。
だってそうじゃないとー
「よう、さっきぶりだな。元気してたか?」
あと少しで指がスマホを触るというその瞬間、俺は何者かに肩を揺らされる。
パタンと手元から床へ落ちていくスマホ。
気づけば俺の目の前には、さっきまで鳥頭と戦っていた雄二の姿があった。
「悪いが氷雨の頼みだ、お前をこのまま連行させてもらう」
彼のその声を聞いたが最後、俺の身体は見知らぬ場所へと瞬間移動させられたのであった。
「いてて、いやーちょっと盛大に転んでな」
「ただ転んだだけでこんな怪我するとは思えないけど」
斬琉は怪訝そうな顔をしながら俺の傷に消毒液を塗る。
時刻は昼を過ぎた午後4時半、下校途中だった斬琉に拾われて家まで帰って来た俺は、彼女に尋問されながらの軽い治療を受けていた。
超能力組織『シンガン』の事や鳥頭の怪異の事、俺の身体に異変が起こっていてその原因がファナエルである事……それら全てを彼女に伝える訳にはいかず、俺は適当な言い訳をしながら治療を受けていた。
体の傷はと言うと、はるか上空から落下し盛大に地面にぶつかったというのにかすり傷しかついていない。
普通は骨折していないとおかしいのだが……この程度の怪我で住んでいるのは明らかに不可解なことだ。
不可解な点と言えばもう一つ気になることが……俺の右腕が無傷である事だ。
数分前まで、猛烈な痛みと共に銀色の髪の毛を生やしていたあの右腕がまるで何もなかったかのように綺麗な状態で姿を現している。
いずれの怪我の状態も、普通の人間だった頃の俺の身体ではありえない。
愛した人間を無理やり自分と同じ超能力者にする……そう言っていた氷雨達の言葉を身をもって実感していた。
今はあの黒いガムを口に含んでいるから症状が治まっているが、それを吐き出してしまえばまた他人の心の声が頭に響いてくるのだろう。
とりあえず、今俺がやらなきゃいけないことはファナエルと話をすることだ。
こんなことを言えばまた氷雨達に怒られるかもしれないが……ファナエルが望むなら、俺は自分の体が超能力者になろうが何になろうが受け入れるつもりだ。
だからその意思をちゃんとファナエルに伝えて、氷雨達シンガンの事も教えないといけない。
そう思って俺はポケットの中にあるスマホを取り出そうと手を動かした。
「ちょっと、秋にぃ動かない!!絆創膏が綺麗に張れないでしょ」
「わざわざ絆創膏なんて張らなくても大丈夫だって」
「こんなに目立つ傷を顔につけといてな~に言ってるんだか」
斬琉は呆れ顔でこちらを見ながら、スマホを取り出そうとしていた俺の腕を抑える。
そんな彼女の言葉を否定したのは、リビングの奥からアイスを持って現れた一人の女子高生だった。
「いや、顔の傷は強者の証。このまま残しておいた方が良いと私は提唱する」
「……るるちゃんはぶれないねぇ。さすがの僕でもびっくりするよ」
「割り切り姫ほどじゃない。私はまだまだ下っ端戦闘員の身だ」
るると呼ばれた少女はフンス、と腕を組みながら斬琉に返答していた。
「氷菓子を恵んでくれて感謝する」と言ってアイスを頬張る彼女に対し、斬琉は「たかだか150円ぽっちのアイスおごっただけで大げさだねぇ」と声を返しながら絆創膏を俺の頬に張った。
「なぁ、斬琉……あの子は友達か?」
「ん、そうだよ。ほら、この前秋にぃに写真を見せた癖の強い転校生だよ」
そういやそんな事言ってたな。
るると呼ばれた少女をジィっと見てみると、左目には眼帯、制服にはいかにも中二病チックなアイテムがいくつか縫い付けられている……癖が強いどころの話ではない様な気がするが、まぁ高校生なんだからこういう事する人も居るよなと無理やり自分を納得させる。
「てか、割り切り姫ってなんだよ」
「何って、僕のあだ名だけど?」
斬琉は何食わぬ顔でそう言うと、制服のポケットから緑色のサイコロを取り出した。
「るるちゃんが僕と友達になりたいっていうから、このサイコロ振って偶数が出たら友達になってあげるって言って、それ以来割り切り姫って呼ばれるようになった」
「えぇ……と言うか、始とレンタル彼女してるって話もそうだけどお前そのサイコロで自分の行動決めすぎだろ」
「人生を壮大なギャンブルに仕立て上げ、割り切った命題には情熱を持って取り組む。その姿を見た時、斬琉のあだ名は『割り切り姫』しかないと私は考えた」
アイスを全部食べ終わったのか、るるは斬琉の隣に立ってやや興奮気味に斬琉の絶妙にダサいあだ名を決めた理由を語り始めた。
「因みに私のあだ名はジャッジメントだ」
「あ、そうなんだ……それじゃぁ俺ちょっと用事があるから」
そう言ってスマホを握り、この場を離れようとする。
俺はいち早くファナエルに俺の身体の事を伝えないといけないんだ。
妹の友達とは言えあんな茶番に付き合っている道理はない。
「それなら、この眼帯に封印している私の魔眼を見てもらってからにしよう」
「いや、俺本当に急いでてな」
「私の所属している組織、『シンガン』の中でも最も強大な私の魔眼の力をな」
「……は?お前今なんてー」
俺の制止を待つ前に、彼女はつけてあった眼帯をバッと取り除く。
そこにあったのは、赤い宝石がねじ込んであるのではないかと勘違いしてしまうほどの異質な左目があった。
彼女はその左目に手をチラリとかざす。
「レイジネス・シン」
一瞬、視界が赤く染まったかのような感覚に襲われた。
今すぐこの場から逃げてファナエルに連絡を取らないと、そう考えているのに体が動かない。
それも何かに拘束されているのではなく、思考を行動に移すのがものすごく面倒に感じてしまうのだ。
「私の魔眼に侵された物はみんな怠惰な生き物へ変貌する。攻撃をしようと計画を考えても体を動かすのがだるくなり、あきらかに異常な状況に巻き込まれても違和感を覚えることすら面倒になる……これが私の魔眼に宿った能力」
彼女は勝ち誇ったような笑みを浮かべて今俺の身に起こっている状況を説明する。
そんな彼女の説明が真実であることを表しているのは目の前にいる斬琉の態度だった。
彼女は明らかに異常なこの状況を一切気にしていない。
あくびをしながらソファーの上で横になり、俺とるるの会話なんて気にもせずいつもと変わらぬ様子でスマホをいじり始めている。
「ボスからターゲットを逃がしたと聞いたときは少し焦ったけど、私が書けておいた保険が役に立ったようで良かった」
「保険って……それで妹に近づいたのか」
「下っ端であれど私もシンガンのエージェント。出来ることはやりつくすまで」
彼女はそう言って自分のスマホを取り出し、電話をかける。
それとほぼ同時刻、、俺のスマホにも電話の着信が入った。
画面に表示されている相手はファナエルだ。
「こちらジャッジメント、ターゲットを発見した。至急にこの座標まで瞬間移動してくれると助かる」
るるの声を右から左に流し、俺はファナエルからかかってきた連絡を取るために必死になって指を動かす。
どこか体が重くて「まぁいいや」と言う感情が何度も頭の中で逡巡している……それでも俺は彼女に伝えないといけないんだ……俺はファナエルは見捨てない、絶対に受け入れるって。
だってそうじゃないとー
「よう、さっきぶりだな。元気してたか?」
あと少しで指がスマホを触るというその瞬間、俺は何者かに肩を揺らされる。
パタンと手元から床へ落ちていくスマホ。
気づけば俺の目の前には、さっきまで鳥頭と戦っていた雄二の姿があった。
「悪いが氷雨の頼みだ、お前をこのまま連行させてもらう」
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