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111.お似合いじゃない?
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いつのまにか眠りに落ち、目が覚めるとベッドの中だった。当て布もしてある。ひえー介護か。こっちのほうがよっぽど恥ずかしいわ。
温かい体が両隣にある。アルのほうを向いたら、抱き込まれた。まぶたが開き、私を見て幸せそうに優しく微笑む。何かが違ってた。霧が晴れたみたいな、そんな感じ。
「体は?大丈夫か?」
「うん、大丈夫みたい」
額に触れるだけの優しいキスをして、私を抱き寄せ静かに息を吐く。耳に頭にいくつもキスが降ってきた。
「ユウ、愛している。俺の妻、俺のユウ」
『俺のユウ』って言った。あのことがあってから初めて聞いた。一緒に住んでたときはいつも言ってた。私を抱くたびに何度も囁いた。鼻の奥がツンとして涙が出る。アルにそう言われるのが好きだった。いつも嬉しそうに言うから。ちゃんと受け止められてなかったけど、私の帰れる、私を受け入れてくれる場所があるみたいで嬉しかった。胸が痛い。
涙が止まらない。
「・・アルが・・捨てた」
「・・・ユウ」
自分のせいだって分かってる。でも拒絶されるのは悲しかった。居場所を失くしてしまったのが悲しかった。一人きりになったのが悲しかった。ずっと悲しかったの、アル。
ただ泣いて、涙はずっと止まらなかった。アルは静かに私を抱きしめてた。
鼻水まみれで顔が気持ち悪くなり、布を探すとアルが渡してくれた。顔を拭いて鼻をかんでサッパリする。顔を上げてアルを見ると辛そうな顔をしてた。ごめん。ああ、でも、これで私は本当に前を向けた気がする。泣いてようやくスッキリしたみたい。アルに抱き付くと、強く抱きしめ返された。
「大事にして。ずっと死ぬまで、大事にして」
「・・する。死ぬまでずっと大事にする。ユウ、俺の妻」
ぎゅうぎゅう抱きしめて、顔を擦り付けるので苦しい。背中をトントン叩いて苦しいと言うと緩めてくれた。この人達はいつまでたっても力加減を覚えないな。まったく困った人達で、なんか笑ってしまう。
「そろそろ力加減覚えてよ」
笑いながら言うと、アルもくしゃりと笑った。
背中にベルがくっついてきた。こっちもぎゅうぎゅう抱き付いてる。わざとか?わざとなのか?
「もーベルまで」
ベルのほうを向き、眉を下げてるベルを笑いながら抱きしめる。
「大事にしてね、ベル」
「うん、する。ユウ、大事にするよ。俺の妻だもの」
二人に挟まれて抱き合う。満たされて幸せな朝だ。
このまま幸せに微睡みたいけど、血が漏れたら困るので交換せねば。あーあ、ロマンチックはほんの一瞬だからロマンチックなんじゃない?
「ねえ、ユウ、体は平気?昨日、アルに酷いことされてなかった?」
「平気だし、されてないけど。私、途中で寝ちゃったけど、寝たあとでなんかしたの?」
「・・いいや」
「だって、血塗れだったよ」
「生理だからね」
「あんなに血が出るの?」
「うん、人によるけど私は多い方」
「ユウ、可哀想。俺、あんまり血が多いのは苦手なんだ。アルは解体好きだけど」
「獲物を手に入れたって満足感があるんだ」
「・・・私は獲物にされたの?」
「・・そう。・・ははっ、獲物にした。ユウは俺の獲物なんだ」
よく分かんないけど、そういう趣味なんか。だから血まみれで大満足か。それで喜ぶならいいけどさ。二人して、なんと見事な性癖でしょうか。さすが双子よ。
「どうしようベル、獲物にされた」
「でも、俺はユウに食べられる獲物だから。ユウは俺を食べるでしょ」
「まあねえ。それならいいのかな?」
私達は喋りながら起き上がって身支度をする。水汲みに行ったり、葉っぱ摘みに行ったり、必要なことをする。こうして生活して生きて行く。良いことも悪いこともあって、それでも帰る場所があって、抱き合う人がいて、ずっと一緒に過ごしていく。冬ごもりの支度で忙しくなるし、放っておくと着替えしないで臭くなるし、困った夫達に面倒臭いと思いながら付き合ったり、私だって雑だったり、無神経なところあるし、失敗したり我儘言って面倒をかける。
夫達を好きで、好きな人から好かれて大事にされて、私は幸せなんじゃないだろうか。甘いだけじゃ済まないし、挫けたりもするな、きっと。結婚生活って言うし、生活なんだから、こんな感じでやってくんじゃないかな。まあ、たまに文句言いつつ、笑って過ごしていければいい。ポンコツな私と面倒な夫達なら、お似合いってもんでしょ。
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最終回は明日になりました。
エピローグ追加です。
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いつのまにか眠りに落ち、目が覚めるとベッドの中だった。当て布もしてある。ひえー介護か。こっちのほうがよっぽど恥ずかしいわ。
温かい体が両隣にある。アルのほうを向いたら、抱き込まれた。まぶたが開き、私を見て幸せそうに優しく微笑む。何かが違ってた。霧が晴れたみたいな、そんな感じ。
「体は?大丈夫か?」
「うん、大丈夫みたい」
額に触れるだけの優しいキスをして、私を抱き寄せ静かに息を吐く。耳に頭にいくつもキスが降ってきた。
「ユウ、愛している。俺の妻、俺のユウ」
『俺のユウ』って言った。あのことがあってから初めて聞いた。一緒に住んでたときはいつも言ってた。私を抱くたびに何度も囁いた。鼻の奥がツンとして涙が出る。アルにそう言われるのが好きだった。いつも嬉しそうに言うから。ちゃんと受け止められてなかったけど、私の帰れる、私を受け入れてくれる場所があるみたいで嬉しかった。胸が痛い。
涙が止まらない。
「・・アルが・・捨てた」
「・・・ユウ」
自分のせいだって分かってる。でも拒絶されるのは悲しかった。居場所を失くしてしまったのが悲しかった。一人きりになったのが悲しかった。ずっと悲しかったの、アル。
ただ泣いて、涙はずっと止まらなかった。アルは静かに私を抱きしめてた。
鼻水まみれで顔が気持ち悪くなり、布を探すとアルが渡してくれた。顔を拭いて鼻をかんでサッパリする。顔を上げてアルを見ると辛そうな顔をしてた。ごめん。ああ、でも、これで私は本当に前を向けた気がする。泣いてようやくスッキリしたみたい。アルに抱き付くと、強く抱きしめ返された。
「大事にして。ずっと死ぬまで、大事にして」
「・・する。死ぬまでずっと大事にする。ユウ、俺の妻」
ぎゅうぎゅう抱きしめて、顔を擦り付けるので苦しい。背中をトントン叩いて苦しいと言うと緩めてくれた。この人達はいつまでたっても力加減を覚えないな。まったく困った人達で、なんか笑ってしまう。
「そろそろ力加減覚えてよ」
笑いながら言うと、アルもくしゃりと笑った。
背中にベルがくっついてきた。こっちもぎゅうぎゅう抱き付いてる。わざとか?わざとなのか?
「もーベルまで」
ベルのほうを向き、眉を下げてるベルを笑いながら抱きしめる。
「大事にしてね、ベル」
「うん、する。ユウ、大事にするよ。俺の妻だもの」
二人に挟まれて抱き合う。満たされて幸せな朝だ。
このまま幸せに微睡みたいけど、血が漏れたら困るので交換せねば。あーあ、ロマンチックはほんの一瞬だからロマンチックなんじゃない?
「ねえ、ユウ、体は平気?昨日、アルに酷いことされてなかった?」
「平気だし、されてないけど。私、途中で寝ちゃったけど、寝たあとでなんかしたの?」
「・・いいや」
「だって、血塗れだったよ」
「生理だからね」
「あんなに血が出るの?」
「うん、人によるけど私は多い方」
「ユウ、可哀想。俺、あんまり血が多いのは苦手なんだ。アルは解体好きだけど」
「獲物を手に入れたって満足感があるんだ」
「・・・私は獲物にされたの?」
「・・そう。・・ははっ、獲物にした。ユウは俺の獲物なんだ」
よく分かんないけど、そういう趣味なんか。だから血まみれで大満足か。それで喜ぶならいいけどさ。二人して、なんと見事な性癖でしょうか。さすが双子よ。
「どうしようベル、獲物にされた」
「でも、俺はユウに食べられる獲物だから。ユウは俺を食べるでしょ」
「まあねえ。それならいいのかな?」
私達は喋りながら起き上がって身支度をする。水汲みに行ったり、葉っぱ摘みに行ったり、必要なことをする。こうして生活して生きて行く。良いことも悪いこともあって、それでも帰る場所があって、抱き合う人がいて、ずっと一緒に過ごしていく。冬ごもりの支度で忙しくなるし、放っておくと着替えしないで臭くなるし、困った夫達に面倒臭いと思いながら付き合ったり、私だって雑だったり、無神経なところあるし、失敗したり我儘言って面倒をかける。
夫達を好きで、好きな人から好かれて大事にされて、私は幸せなんじゃないだろうか。甘いだけじゃ済まないし、挫けたりもするな、きっと。結婚生活って言うし、生活なんだから、こんな感じでやってくんじゃないかな。まあ、たまに文句言いつつ、笑って過ごしていければいい。ポンコツな私と面倒な夫達なら、お似合いってもんでしょ。
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