94 / 139
93.愛されているようだ Side エーミール
しおりを挟む
2話投稿 2/2
____________
Side エーミール
ユウナギが回復して、様子がおかしいながらも元気になった。
炭焼きに保護され、落ち着いたのかまた幸せそうに笑った。
炭焼きの家の子どもになったから戻らない、と言った。
他の夫達が全員ユウナギを愛していても関係ない?炭焼きのためにこの国に残るのか?先に私が保護したら残ると言ってくれたか?
神殿はユウナギに合わないようだ。私達が理由ではないけれど、それでも無力感は拭いきれない。
まだ夫でいたいか聞かれ、胸に痛みが走った。泣くと言われても、幸せを願われても、私の望みはそうではない。夫でいてくれと縋ってほしかった。
私を傷つけたと謝ったが、違う。傷ついたのは自分の無力さ故だ。
私と話すのが楽しいと言われ、私との時間に楽しみを見出していると思うと、胸が弾んだ。
また、双子だ。酷い仕打ちをされたのに気にかける。
グラウで花を咲かせ、双子で萎れ、炭焼きで安定した。私は?
私を好きだと言って穏やかに、自然に楽しそうに笑った。花が咲いたような笑顔に似て、炭焼きのせいだとしても、私のことでそんな笑顔を見せたことに、胸が突かれて抱きしめた。好きだと言うときはいつも楽しそうに笑う。私を好きでいることは楽しいことなのだろうか?胸が苦しい。
グラウと仲良く昼食をとった話をグラウの部署の奴から聞いた。昼食を食べる時間がないほど睦まじく過ごしたのだと思い、嫌味を言うと呆れた顔をされ、何でもないように流された。
呆れて流される、気楽な対応が嬉しい。私が嫌味を言っても、甘えを見透かして笑ったり呆れたりして、子供のように扱われるのが心地よい。
特別なことをする約束も覚えていた。
私の日に手を出されないようにグラウに釘をさしておく。ユウナギは困ったような顔をしていた。我儘を聞き過ぎだ。
ユウナギは食事に喜び、私にグラウの相談をした。
グラウはいったい何をやっているんだ。妻に負担を強いて。いや、ユウナギの気遣いを独占されているようで気分が悪い。
が、ユウナギが私に相談とは、私を頼っているということだ。相談内容は面白くないが話はきちんと聞く。
ユウナギが私に贈り物をくれた。
ユウナギが考えて、手を掛けて、私のために作ってくれた。絹を使ったのは私の立場を考えてのことだろう。買っただけじゃない、私のために手を動かしてくれた。
私の心配も気遣いも全部分かって受け止めてくれていた。
相手の挙動を窺う用心深さからきていると分かっている。しかし、気付いてもらえるのは、なんと嬉しいことだろう。気遣いは当たり前のものとして振り向きもされなかったから。
縋ってほしいという願いは叶った?本当に?
ユウナギが私を必要として、求めている。私を?
私と同じ熱さでなくてもいい。私は望まれたかった。私は愛されたかった。
私を愛していいかと聞く。ユウナギ、愛されるのは怖い。願っているのに、叶った途端に壊れそうで。愛し愛されてから捨てられるのは怖い。私が欲しいのは幻ではない。もう幻は嫌だ。
ユウナギが私を大事な物のように扱い、優しく抱く。私の甘えを受け止めて叶えてくれる。
私のことを考え私のために試してくれる。
嬉しくて、ゾクゾクした。年下の妻に鳴かされて、悶えて、受け止めてもらうのは。年下の妻の手のひらの上で官能を味わわされるのは、羞恥にまみれ興奮を煽った。
達したあとは羞恥だけが残り、何も言えなかったのに子供のように優しく世話をしてくれた。恥ずかしく嬉しく心地よかった。
愛の言葉など口だけならいくらでも言えるのに、ユウナギの顔を見ると喉に詰まったように言えなくなる。からかうように笑うことを、愛し気に細める目も、優しい指も、私を引き付けるのに。
想うたび言えなくなる。こんな年上で、愛を乞うなど。
それなのに、優しく微笑む。微笑んで私を抱きしめる。分かっていないのに、分かられているような錯覚に陥る。
ユウナギはただ、私のことを考えて、私のためだけにしてくれた。
誰がしてくれた?ただ、貪られていただけなのに。私だって同じ。駆け引きで優位に立つために考えただけ。
倒れたときの話を聞いた。
ユウナギは危うい。恵まれた育ちと、森に住む差異が分かっていない。次があった時は私がことを運ぶ。
私のことも大事?本当に?気遣いだけではなく?
贈り物も、優しく抱くことも、私の満足を気遣うことも、約束を覚えていることも、すべて私のためだ。
グラウの腕の中から私を見る。グラウに謝罪して私は後回しだ。
面白くないので口付ける。逃がさず、強引にしたら諦めたのか、応え始めた。奪ったみたいでゾクリとし、そのまま押し倒したい衝動にかられた。
私の欲望も軽やかにかわされ、それは心地よく、少しの寂しさが残る。
また明日の朝会えるのに、ユウナギに抱かれていたい。腕の中に私を抱いていてほしい。
夜、優しく抱かれた。睦言を囁かれ、ユウナギの初めてをもらった。
朝、二人で抱き合った。ユウナギが連れて行ってと言った。
これではまるで愛されているようだ。
私は、愛している?愛している。もう引き返せない。
____________
Side エーミール
ユウナギが回復して、様子がおかしいながらも元気になった。
炭焼きに保護され、落ち着いたのかまた幸せそうに笑った。
炭焼きの家の子どもになったから戻らない、と言った。
他の夫達が全員ユウナギを愛していても関係ない?炭焼きのためにこの国に残るのか?先に私が保護したら残ると言ってくれたか?
神殿はユウナギに合わないようだ。私達が理由ではないけれど、それでも無力感は拭いきれない。
まだ夫でいたいか聞かれ、胸に痛みが走った。泣くと言われても、幸せを願われても、私の望みはそうではない。夫でいてくれと縋ってほしかった。
私を傷つけたと謝ったが、違う。傷ついたのは自分の無力さ故だ。
私と話すのが楽しいと言われ、私との時間に楽しみを見出していると思うと、胸が弾んだ。
また、双子だ。酷い仕打ちをされたのに気にかける。
グラウで花を咲かせ、双子で萎れ、炭焼きで安定した。私は?
私を好きだと言って穏やかに、自然に楽しそうに笑った。花が咲いたような笑顔に似て、炭焼きのせいだとしても、私のことでそんな笑顔を見せたことに、胸が突かれて抱きしめた。好きだと言うときはいつも楽しそうに笑う。私を好きでいることは楽しいことなのだろうか?胸が苦しい。
グラウと仲良く昼食をとった話をグラウの部署の奴から聞いた。昼食を食べる時間がないほど睦まじく過ごしたのだと思い、嫌味を言うと呆れた顔をされ、何でもないように流された。
呆れて流される、気楽な対応が嬉しい。私が嫌味を言っても、甘えを見透かして笑ったり呆れたりして、子供のように扱われるのが心地よい。
特別なことをする約束も覚えていた。
私の日に手を出されないようにグラウに釘をさしておく。ユウナギは困ったような顔をしていた。我儘を聞き過ぎだ。
ユウナギは食事に喜び、私にグラウの相談をした。
グラウはいったい何をやっているんだ。妻に負担を強いて。いや、ユウナギの気遣いを独占されているようで気分が悪い。
が、ユウナギが私に相談とは、私を頼っているということだ。相談内容は面白くないが話はきちんと聞く。
ユウナギが私に贈り物をくれた。
ユウナギが考えて、手を掛けて、私のために作ってくれた。絹を使ったのは私の立場を考えてのことだろう。買っただけじゃない、私のために手を動かしてくれた。
私の心配も気遣いも全部分かって受け止めてくれていた。
相手の挙動を窺う用心深さからきていると分かっている。しかし、気付いてもらえるのは、なんと嬉しいことだろう。気遣いは当たり前のものとして振り向きもされなかったから。
縋ってほしいという願いは叶った?本当に?
ユウナギが私を必要として、求めている。私を?
私と同じ熱さでなくてもいい。私は望まれたかった。私は愛されたかった。
私を愛していいかと聞く。ユウナギ、愛されるのは怖い。願っているのに、叶った途端に壊れそうで。愛し愛されてから捨てられるのは怖い。私が欲しいのは幻ではない。もう幻は嫌だ。
ユウナギが私を大事な物のように扱い、優しく抱く。私の甘えを受け止めて叶えてくれる。
私のことを考え私のために試してくれる。
嬉しくて、ゾクゾクした。年下の妻に鳴かされて、悶えて、受け止めてもらうのは。年下の妻の手のひらの上で官能を味わわされるのは、羞恥にまみれ興奮を煽った。
達したあとは羞恥だけが残り、何も言えなかったのに子供のように優しく世話をしてくれた。恥ずかしく嬉しく心地よかった。
愛の言葉など口だけならいくらでも言えるのに、ユウナギの顔を見ると喉に詰まったように言えなくなる。からかうように笑うことを、愛し気に細める目も、優しい指も、私を引き付けるのに。
想うたび言えなくなる。こんな年上で、愛を乞うなど。
それなのに、優しく微笑む。微笑んで私を抱きしめる。分かっていないのに、分かられているような錯覚に陥る。
ユウナギはただ、私のことを考えて、私のためだけにしてくれた。
誰がしてくれた?ただ、貪られていただけなのに。私だって同じ。駆け引きで優位に立つために考えただけ。
倒れたときの話を聞いた。
ユウナギは危うい。恵まれた育ちと、森に住む差異が分かっていない。次があった時は私がことを運ぶ。
私のことも大事?本当に?気遣いだけではなく?
贈り物も、優しく抱くことも、私の満足を気遣うことも、約束を覚えていることも、すべて私のためだ。
グラウの腕の中から私を見る。グラウに謝罪して私は後回しだ。
面白くないので口付ける。逃がさず、強引にしたら諦めたのか、応え始めた。奪ったみたいでゾクリとし、そのまま押し倒したい衝動にかられた。
私の欲望も軽やかにかわされ、それは心地よく、少しの寂しさが残る。
また明日の朝会えるのに、ユウナギに抱かれていたい。腕の中に私を抱いていてほしい。
夜、優しく抱かれた。睦言を囁かれ、ユウナギの初めてをもらった。
朝、二人で抱き合った。ユウナギが連れて行ってと言った。
これではまるで愛されているようだ。
私は、愛している?愛している。もう引き返せない。
0
お気に入りに追加
804
あなたにおすすめの小説
マイナー18禁乙女ゲームのヒロインになりました
東 万里央(あずま まりお)
恋愛
十六歳になったその日の朝、私は鏡の前で思い出した。この世界はなんちゃってルネサンス時代を舞台とした、18禁乙女ゲーム「愛欲のボルジア」だと言うことに……。私はそのヒロイン・ルクレツィアに転生していたのだ。
攻略対象のイケメンは五人。ヤンデレ鬼畜兄貴のチェーザレに男の娘のジョバンニ。フェロモン侍従のペドロに影の薄いアルフォンソ。大穴の変人両刀のレオナルド……。ハハッ、ロクなヤツがいやしねえ! こうなれば修道女ルートを目指してやる!
そんな感じで涙目で爆走するルクレツィアたんのお話し。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
性欲の強すぎるヤクザに捕まった話
古亜
恋愛
中堅企業の普通のOL、沢木梢(さわきこずえ)はある日突然現れたチンピラ3人に、兄貴と呼ばれる人物のもとへ拉致されてしまう。
どうやら商売女と間違えられたらしく、人違いだと主張するも、兄貴とか呼ばれた男は聞く耳を持たない。
「美味しいピザをすぐデリバリーできるのに、わざわざコンビニのピザ風の惣菜パンを食べる人います?」
「たまには惣菜パンも悪くねぇ」
……嘘でしょ。
2019/11/4 33話+2話で本編完結
2021/1/15 書籍出版されました
2021/1/22 続き頑張ります
半分くらいR18な話なので予告はしません。
強引な描写含むので苦手な方はブラウザバックしてください。だいたいタイトル通りな感じなので、少しでも思ってたのと違う、地雷と思ったら即回れ右でお願いします。
誤字脱字、文章わかりにくい等の指摘は有り難く受け取り修正しますが、思った通りじゃない生理的に無理といった内容については自衛に留め批判否定はご遠慮ください。泣きます。
当然の事ながら、この話はフィクションです。
つがいの皇帝に溺愛される幼い皇女の至福
ゆきむら さり
恋愛
稚拙な私の作品をHOTランキング(7/1)に入れて頂き、ありがとうございます✨読んで下さる皆様のおかげです🧡
〔あらすじ〕📝強大な魔帝国を治める時の皇帝オーブリー。壮年期を迎えても皇后を迎えない彼には、幼少期より憧れを抱く美しい人がいる。その美しい人の産んだ幼な姫が、自身のつがいだと本能的に悟る皇帝オーブリーは、外の世界に憧れを抱くその幼な姫の皇女ベハティを魔帝国へと招待することに……。
完結した【堕ちた御子姫は帝国に囚われる】のスピンオフ。前作の登場人物達の子供達のお話。加えて、前作の登場人物達のその後も書かれておりますので、気になる方は、是非ご一読下さい🤗
ゆるふわで甘いお話し。溺愛。ハピエン🩷
※設定などは独自の世界観でご都合主義となります。
◇稚拙な私の作品📝にお付き合い頂き、本当にありがとうございます🧡
【R-18】悪役令嬢ですが、罠に嵌まって張型つき木馬に跨がる事になりました!
臣桜
恋愛
悪役令嬢エトラは、王女と聖女とお茶会をしたあと、真っ白な空間にいた。
そこには張型のついた木馬があり『ご自由に跨がってください。絶頂すれば元の世界に戻れます』の文字が……。
※ムーンライトノベルズ様にも重複投稿しています
※表紙はニジジャーニーで生成しました
身代わり婚~暴君と呼ばれる辺境伯に拒絶された仮初の花嫁
結城芙由奈
恋愛
【決してご迷惑はお掛けしません。どうか私をここに置いて頂けませんか?】
妾腹の娘として厄介者扱いを受けていたアリアドネは姉の身代わりとして暴君として名高い辺境伯に嫁がされる。結婚すれば幸せになれるかもしれないと淡い期待を抱いていたのも束の間。望まぬ花嫁を押し付けられたとして夫となるべく辺境伯に初対面で冷たい言葉を投げつけらた。さらに城から追い出されそうになるものの、ある人物に救われて下働きとして置いてもらえる事になるのだった―。
【完結】王宮の飯炊き女ですが、強面の皇帝が私をオカズにしてるって本当ですか?
おのまとぺ
恋愛
オリヴィアはエーデルフィア帝国の王宮で料理人として勤務している。ある日、皇帝ネロが食堂に忘れていた指輪を部屋まで届けた際、オリヴィアは自分の名前を呼びながら自身を慰めるネロの姿を目にしてしまう。
オリヴィアに目撃されたことに気付いたネロは、彼のプライベートな時間を手伝ってほしいと申し出てきて…
◇飯炊き女が皇帝の夜をサポートする話
◇皇帝はちょっと(かなり)特殊な性癖を持ちます
◇IQを落として読むこと推奨
◇表紙はAI出力。他サイトにも掲載しています
伯爵令嬢のユリアは時間停止の魔法で凌辱される。【完結】
ちゃむにい
恋愛
その時ユリアは、ただ教室で座っていただけのはずだった。
「……っ!!?」
気がついた時には制服の着衣は乱れ、股から白い粘液がこぼれ落ち、体の奥に鈍く感じる違和感があった。
※ムーンライトノベルズにも投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる