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81.謝らねば

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しばらくすると寝息が聞こえ始めた。寝つきの良いミカはすぐ眠る。

一日中交尾したら、そりゃ疲れますって。私は吐きそう。罪悪感で。『ユウは魔法使いが一番好き、魔法使いのところに住んだほうがいい』って言うことは、私の態度があからさま過ぎの、頭お花畑だったってことでしょ。そりゃあ、キレるわ。私だってキレるって。
他の男のとこから帰って来てウキウキしてるとか、最悪過ぎて言葉もない。

アルは、いつも愛してほしいって言う人。きっと、私のやりかたじゃ愛されてる感が足りなかったんだろう。愛情足りてないのに、他の男で浮かれるとか、アアアアアアア、助けてハーピー。
一番て言うからには、アルは一番好きでいてほしかったのかな。そうだよね、まあ、恋人や夫婦では自分が一番好かれたいって思うよね。この国の結婚制度と個人の心情は別だしね。

つまり、平等に好き!感を出せなかった私が原因。違うな。全員に『あなたが一番好き』と言うのがベスト対応か?それだな。今度からそうしよう。でも、私、演技派じゃないんだよなー。いや、今はそうじゃない。アルとベルだ。ベルはアルが一番だから、私のことは特に気にしないだろう。アルだよ、アル。

魔法使いのところへ行ったほうがいいって、そう言ってたから、捨てられたと思って、怖くて、それ以上聞けなかった。でも、聞かなきゃいけなかったんだろうな。
アルは物凄く傷ついた?私がアルを傷付けた。どうしたら少しでも軽くなるだろう?アルは一度会いにきてくれた。私からも会いに行かなきゃ。怖い。物凄く怖いけど、きっと、必要なこと。

明日、起きたら相談しよう、そうしよう。

気は重かったけど、肉体疲労には勝てず熟睡したらしい。ミカはとっくに起きて水汲みに行ったようだ。その体力はどこからくるんでしょうか。
ベッドから起きて身支度をする。腰が痛い。腰が痛いってあからさまだよね。ぐはっ。

水瓶を洗ってミカを待っていると、バケツを両手に持って帰って来た。

「おはよう、ミカ。水汲み、ありがとう」
「おはよう、ユウ。ふふ、俺も使うもの」

バケツを地面に置いて、嬉しそうに私の額にキスをした。洗った水瓶を元の場所に戻して水を入れる。汲んできた水でお湯を沸かしお茶を入れ、二人で椅子に座った。

「あのね、アルのとこに謝りに行きたいんだけど、行っても良い?」
「・・・・・行ってほしくない。行ってほしくないけど、ユウは気にするんだね。俺も一緒に行く」

強い、挑むような顔で前を見て言った。初めて見る男くさい顔。色んな初めてがあるなぁ。立ち上がってミカの頭を抱きしめると強く抱きしめ返された。

「カッコいい男の人の顔してた。」
「・・ええ、・・かっこいい?えええ・・・初めて言われた。・・へへ、嬉しい」
「一緒に行ってくれるのありがとう。見守ってくれるんだね」
「・・・うん。俺の家の子だから、俺が守るんだ」

ミカのつむじにキスをして頬をのせた。
頼もしいな。きっと本当に守ろうとしてくれる。きっと助けてくれる。ちゃんと信じれるし、たぶん、助けを求めることもできる。
ミカが顔を上げて私を見る。クルリとした丸い目で、私を見上げて微笑み、つられて私も微笑む。笑ってるだけなのに、好きだって言われてるみたい。私も好き。ふふふっ、好きだよ、ミカ。

「・・・ユウってば、俺、おかしくなっちゃう」
「ミカの家の子なんだから、これからずっとだよ」
「・・ああーもう、嬉しい。すごくだよ、ユウ。俺、すごく嬉しい」

私の胸元に顔を擦り付ける。

「俺、頑張る。仕事頑張るね。お昼一緒に食べよう」
「あ、今日のお昼はオリヴァと約束した。ごめん」
「・・わかった、いいよ。だって夜は一緒だから。ね、ユウ?」
「うん。夜は一緒」

すごく嬉しそうに笑って、私を抱きしめる。
それから準備して出掛けるミカを見えなくなるまで見送った。ミカは振り返り振り返り歩いて、手を振って行った。

ミカを見送って、私は幸せに包まれているのに、アルを思い出すと悲しかった。アルは、アルの幸せはどこかなぁ。どこでもいいから、アルが幸せでありますように。
明るい朝の日差しが眩しくて滲んだ涙をぬぐった。

気を取り直してオリヴァを呼ぶ。そういえば、『あなたが一番好き』対応をしていくんだった。オリヴァのこと一番好きかな?よく分かんないや。アルとのことがあって、なんか気持ちが落ち着いたのかも。

ぼんやり考えてるとオリヴァが現れた。
朝の透明な光が輪郭を縁取り、オリヴァが眩し気に目を細めて笑う。
天使降臨。優勝。あなたが一番です。死ぬ。おかしい、眩し過ぎる。昨日は普通な感じで落ち着いたと思ったのに、今日はなんでこんなに麗しいの?表情?雰囲気?なんなの?
私の挙動不審さに、オリヴァが訝しんで眉を寄せる。

「どうした?」

んがっんぐっ。その眉も、すべてが、すべてがイイ。

「・・・見惚れた。麗し過ぎて。オリヴァは、女神?」
「・・・・女神ではない。・・見惚れた?私に?」

少し首をかしげて聞くオリヴァを見逃せなくて目をつぶれない。目が離せない。ただただ見つめてると、思い切り抱きしめられた。

「ユウナギ、会いたかった」
「・・・・・オリヴァ」
「私のことが最初から好きだと言った。ユウナギ、本当に?」
「本当」
「・・ユウナギ、今日は昼食の約束だ」
「うん。約束した」

私は昔のロボット漫画か。スピーカー音声のほうがましな応答するわ。
抱きしめられたまま、オリヴァの部屋へ移動する。口を抑えていた私の手をはずして、両手を握ったオリヴァの唇が私の唇に触れた。途端、体中が粟立ち背筋が震えた。握られた手に掴まってないとふらふら倒れそうだ。

オリヴァの舌が私の中ぜんぶを確かめるように、舐めまわしていく。腰をきつく抱き寄せられ、後頭部に回った手が逃がさないと言ってるみたいで胸が震えた。キスだけなのに声が漏れて、体中に巻き起こる痺れに翻弄されオリヴァにしがみつく。
オリヴァが固くなったペニスを私の下腹に擦り付ける振動が奥に響いた。このまま揺らされて流されたい。体が疼いてオリヴァを欲しがってる。

「オリヴァ、ダメ、・・・欲しくなる」
「ああ、ユウナギ、欲しい。昼まで待てない」

私をテーブルに押し付けてスカートを強引に捲り上げ、自分のズボン紐を乱暴に解いて硬くトロトロに濡れたペニスを取り出した。細く長い指で、下着からすでに濡れそぼった膣口を露出させられ腰が浮いてしまう。オリヴァは片足の膝裏を掬い上げ亀頭を差し入れてから、呻き声とともに根元までゆっくりと埋め込んだ。
密着した部分が熱くて熱くて、動かしてもないのに震えが体中を満たした。

「ユウナギ、会いたかった。会いたかった。ユウナギ」

私の理性は溶けオリヴァに縋り、熱を欲して疼いていた体は、埋め込まれた快感に欲深く吸い付いてうねった。オリヴァは小さく叫び何度か打ち付けると、腰を掴む手に力を込めて奥に押し付け、私の耳元で荒い息をする。
私を抱きしめ顔を擦りつけて、切なそうなか細い声をだした。

「私を一人にしないでくれ。ユウナギ、あなたがいないのは耐えられない」
「うん。一緒にいる、オリヴァ。・・・好きだよ」
「好きじゃ足りない。私の半身、私の妻。ユウナギ、あなたが欲しい」

私の腰を抱えこみ、繋げたまま奥を抉るように突き上げを繰り返し始める。

「オリヴァ、ダメ、これ、あ、ああ、ふぁっ、くぅぅあっ・・・んんん、ぐぅっっ、あぐっ、うくっぐっ」

思わず仰け反って、テーブルに背を預けた。オリヴァが揺らす腰からの刺激がいくども弾け、手を噛んで悲鳴を耐える。体は跳ね、掴るところのないテーブルで藻掻いた。バタつく足をオリヴァの腰に絡ませると、突き上げが大きくなり、水音が響く。

「あっはぁっ、ユウナギっ、あああっ、くっぅっぅぅ、っうぅふっ」

オリヴァが大きく震え、しばらくして呻き声を上げ終わると弛緩して私の上に倒れ込んだ。
私をきつく抱きしめ、小さな声で何度も名を呼ぶ。抱きしめ返して名を呼び、、できるだけ優しく頭を撫でた。

オリヴァにはたくさん心配かけたな。熱出して会えなかったし。

「オリヴァ、お昼一緒に食べようね」
「・・・ああ」
「じゃあ、エーミールのところ行こうかな」
「・・・・・・」

面白くなさそうな顔で起き上がると、私の手を引いて起こし、抱きしめた。

「あいつがいないと、もっとゆっくりできるのに」
「もっとゆっくり、何するの?」

笑って聞くと、ふっと笑んで耳元で『続き』と囁き、耳にキスをした。耳にかかる息と甘い囁きがくすぐったくて笑ってしまう。オリヴァの首を抱き寄せ、お返しに囁く。

「ゆっくりするなら夜が良い」

言って笑うと、頬を挟まれてキスをされた。唇を啄んで舌が入り込む。オリヴァの息が熱くて、呼吸が乱れ声が出てしまう。オリヴァの両手を引っ張って外し、息を整えた。

「オリヴァ、もうダメです。オリヴァと違って、私はすぐ治まらないんだから」
「私も治まらない。ユウナギが誘った」
「ええー、そんなことないでしょ」
「ある。いつも誘われる」
「言いがかりだよ、それ。ふっ、またお昼に。エーミールのところまで送って」

笑い合って手を繋ぎエーミールのところに飛ぶ。笑いながら消えるオリヴァに手を振った。


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