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74.発見される

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3話投稿 3/3


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うつらうつらしていたら、声が聞こえた気がした。薄く目を開けるとミカちゃんが見えた。

「ユウっ!」

ミカちゃんが走ってる。焦った顔で。そんなに焦らなくても良いのに。私は熱が出て怠いから、ちょっと寝てるだけだよ。大丈夫だよの意味で笑って見せる。なんでミカちゃんがいるんだろう?ここはミカちゃんの場所だった。そうか。間違った。

「ユウ、ユウ、なんでっ」
「寝てるだけ」
「熱がある」
「少しね」
「ユウ、俺の家に行くよ。ユウが嫌でも、連れて行く」

怖い顔でそう言うと、ミカちゃんはおんぶの形で私を担ぎ上げた。ミカちゃんが怖いので大人しくする。ホッとしたのも事実。ミカちゃんの背中は温かくて、一人じゃなくてホッとした。

「カバンがあるの」
「あとで取りに来るよ。先にユウを連れて行く」

ミカちゃんの背中に揺られていると、いつの間にかミカちゃんちに着いていた。私の服を脱がしてベッドに押し込み掛布で包んだ。私は目を瞑ってウトウトして、家の中の音に安心してた。
ミカちゃんはコップに何か苦い飲み物を入れてきて、無理矢理飲まされた。また、私を掛布に包んで頭を撫でる。目を瞑った私の頬にキスが降ってきて、なんだか安心して、涙が出て、眠ってしまった。

少しして目を覚ますと、もう夜で枕元にミカちゃんがいて、目が合うと頭を撫でてくれた。それでまた眠った。
たまに起きて苦いお茶を飲んだり、ポリッジを少し食べたり、体を拭いてもらったり、ウトウトしながら過ごした。もう一人じゃなくて、お世話をしてもらって、困ったことは無くて、安心して微睡んだ。
しばらくあとで目が覚めるとすっきりしていて、思い切り伸びをした。隣に暖かい体があり、優しい目をしたミカちゃんが手を伸ばして頬を撫でる。優しい手が嬉しくて、ミカちゃんの手を握り締めて頬ずりをした。

「熱が下がったね」
「うん、看病してくれてありがとう」
「いつでもするよ。ユウはもう、俺の家に住むんだから」
「なんで?」
「俺がユウを見つけたんだから、ユウは俺の家の子になるんだ」

優しく話をされて、みるみる涙が溢れ両手で目を覆った。
良いの?とは聞けない。良いって言うから。断れない。一人でできるなんて言えない。看病されたのに。こうして助けられて守られて、すっかり安心したのに。追い出されたら、次の家って、都合良過ぎない?そんなこと、ミカちゃんをバカにしてるみたいじゃない?でも、優しくされたいとも思ってる。心配して優しくして庇って欲しいと思ってる。アルを傷付けたのにどこかに逃げ込みたいと思ってる。どうしようもなく浅ましい人間は私です。

両手で顔を覆って泣いていると、ギュッと抱きしめられた。息が耳にかかる。

「離さない。ユウが嫌でも離さない。俺はユウがいないと苦しい。苦しくて苦しくて真っ暗になる。倒れてるユウを見つけた俺の気持ち、分かってない」

初めて聞く、硬くて暗い声は少し怖かった。真っ暗を含んだ声だった。

「俺は離さない。ユウ、逃げないで。俺を真っ暗にしないで」

私の知らないミカちゃんの腕の中にすっぽり包まって、じっとしていた。このままミカちゃんに奪われたかった。無茶苦茶に。私の抵抗なんか物ともしないで。そうして強制的にミカちゃんの物になって、言い訳にしたかった。仕方なかったって。
ミカちゃんは自分の気持ちを真っ直ぐ言ってるのに、私は都合の良い言い訳を探してた。一人で頑張らなくていい言い訳を。庇護に入る言い訳を。

胸が震えるまま、息をゆっくり吐き出す。両手を顔から離して見たミカちゃんは、見たことが無い男の人の顔をしていた。ミカちゃんの頬を撫でる。
もう、ミカちゃんじゃない。ミカだ。こんな顔をしてたんだ。私達はまだまだ知らないことだらけ。だってまだ知り合ったばっかりだから。
ミカ、離さないって言ってくれた。まだ言ってくれる。いつまで言ってくれる?
涙がまた溢れる。バカなことを考えた。そんな約束できるわけないのに。欲しい言葉を言ってもらったところで、私が信じなければ意味無いのに。
微笑んだ。誤魔化すために。自分のバカな考えを隠すために、口角を上げた。

ミカの顔が歪む。不穏な感じがするのに、目が潤んで涙が零れた。

「ユウ、俺、ユウを傷つけるよ。ユウ、俺を許さないで、俺といるんだよ」

ミカが唇を襲った。口中を蹂躙して、痛いくらい舌に吸い付く。私の両手は押さえ付けられ身動きができなかった。ミカは乳房に噛み付き乳輪を吸い上げ、乳首を舌で扱く。乱暴で強引で力強くて、逃げられなかったけど、私が望んだことだった。私は体を跳ね上げ、力を込めて思う様抵抗して、ミカが易々と押さえ付けるのを喜び、声を上げる。嫌とダメを繰り返し、暴れ、蹂躙されることに興奮した。ミカが押し入った時、待ち焦がれたものが与えられた喜びで体が震え、思い切り吸い付き、すぐに昇りつめた。

ミカが声を上げ、熱を放っていく。私の中に。もっと、ミカが欲しかった。私の声は嬌声に変わり、ミカを呼ぶ。ミカの腕の中で与えられる喜びに体が痺れた。ミカが私を呼ぶ。何度も。ミカが私を押さえ付ける。私を捕まえていてくれる。離さないでくれる。本当に?本当に。ずっと?ずっと。私が何度も聞き、ミカが何度も答える。ミカが強く私を抱く度、打ち震えて涙が流れた。

嵐に攫われて、波間で眠った

目が覚めると、ミカの暖かな体が私を包んでいて、静かな寝息が頭の上から聞こえた。体を捻じってミカの方を向き、鼻の頭をにキスをした。瞑ったまぶたのまつ毛が濃いこと、髭の剃り残しがあること、首にあるホクロ、クルクルした太めの髪を初めて見たように感じて、ミカの顔一つ一つを触って確認した。

ミカはミカで、彼の考えで生きていて、一人の男で、この大きな体で私を抱いて、大きな手で私を触る。それは全部、彼の動きで、この唇から出る言葉も、彼の思いで、彼の言葉。
そんな当たり前のことを今気づいたように感じて、不思議な気分だった。私は自分が支配してると思ってたんだろうか?自分の思い通りになると?バカだ。勘違いバカ女だ。ミカはミカで、私がどうのこうのできるわけじゃない。彼は私と違う人間で、彼は彼だけの物だ。
私も私だけの物。私の考えで動く。その考えが怪しいのは否めないけど。ははは。仕方ない。健全な精神は不在だから。

ミカの顔を指でフニフニしてたら、くすぐったそうに笑ってミカが目を開け、私を強く抱き寄せた。

「くふっユウ、くすぐったいよ」

私も笑って、ミカの顔にキスを落としていく。クスクスとミカが笑い、大きな手が私の背中を撫でる。
私の額にミカが額を合わせ、目を覗き込んだ。

「もう、俺のユウだ。離さない」

私はくすぐったくて、笑って、頷いた。ミカは嬉しそうに笑い、私を抱きしめる。ミカの腕の中で私も笑った。
夜の中、ミカに包まれて眠った。暖かくて優しいミカの体は揺りかごみたいに私を守って、寝息は側にいる証で、心地よく眠りを誘った。


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