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3.事情聴取
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片付けが終わって、アルがお茶を出してくれた。お礼を言って一口飲む。ハーブティーかな、あったかくてホッとする。
あ、イベントでお菓子買ったんだ。ご飯のお礼にお茶うけだ。飴がけアーモンドだよ!うーん、三粒ずつでいいかな。みみっちいのよ、私。もう買えそうにないし。アルとベルの手に三粒ずつ乗せる。
「お菓子どうぞ。苦くないよ。口に合わなかったら私食べるし」
「・・・」
あら、疑ってる。思い切って食べると・・・テッテレー、うまい!まさにそんな感じの顔をして、驚いてる。
「美味しい!美味しいものもあるんだね!」
失礼だな、おい。あまりに嬉しそうなので、私の分から一粒ずつ追加で渡した。感謝していいよ!
一息ついてベルが私を見る。
「じゃあ、話そうか」
わあ~尋問開始~。
「えーと、住んでたのは遠い国で、気付いたら森の中にいて、知り合いも誰一人いない。話をした限りだと、この国のことも何も知らない、ってことかな?」
「うん」
「うーん、言葉は通じるしなあ」
「・・・遠い国だから違う言葉を使うと決まってるわけじゃない」
「まあ、そうか。で、暮らしていくために働きたい、と」
「知り合いいないと難しいかな?住む場所もないし住み込みで働けるところが希望」
「住み込みかー。ますますあれだよね。住み込むならそこの店主と結婚することになると思う」
「えっ、なんで?結婚?」
「女性が一人で歩いてたら攫われるよ。それで、誰かの結婚相手になるか娼館で働くか。女性は貴重だから」
「うーん?・・・女性は貴重って、少ないってこと?」
「そう。もともと少ないんだけど、何年か前に流行り病で結構死んじゃってさ。女性は必ず夫を持つようにって御触れが出てる。最低五人」
「えぇ・・・うーん、じゃあ、結婚でいいかな。娼館は嫌だし」
「うん、それがいいよ。夫の条件はある?条件が合えば知り合い紹介できるよ」
ベルがニコニコしながらうなずいてるけど、なんだかなー営業かけられてるみたいだわ。怪しい奴に後見人付けておこうってトコかな。変な人じゃないと良いんだけど。五人いるなら好みが一人くらい、いて、欲しい!どうなの、この国。おしり拭き葉っぱだしな、文化摩擦すごいかも。
「条件かぁ。優しくて静かで穏やかで、話し合いができる。あと、食事の仕方がきれいな方がいいな。思いつくのはこれくらい。でも実際に会って話さないとわかんないかも」
「・・・ユウの家は裕福なの?・・砂糖菓子持ってるし、スプーン使うし、服もキレイで、食事の仕方が条件とか」
「全然、普通だけど。私の国はこれが普通。それに、食事の仕方って言うけど、アルとベルの食べ方はきれいでしょ」
「俺達はある程度、教育受けてるからね。うーん・・・ユウはいくつ?子供いる?」
「あ、私、26歳。ベルは?えーと、それで、結婚と妊娠は経験なし、処女でもなし。これでも大丈夫かな?」
「そ、そっか。俺達は23だよ。26で妊娠出産ないと、貴族とか大店は難しいかな。そういうとこは、若いか子供できるか、どっちか必要だから。後妻なら大丈夫かも。ユウの国はユウみたいな人が多いの?」
「うーん、そうだね。10代で結婚する人は少ないし、30代で初婚も結構いる。死ぬまで結婚しない人もそこそこいるよ。一夫一妻制だし。こっちはいくつで成人して結婚するの?」
「女の人も結婚しないの?多いの?だいぶ違う。こっちは、成人は15で、女の子の結婚もほぼ同時だよ。成人を待って結婚するから。大体、20過ぎたら子供二人くらいはいるかな」
妊娠は必須かぁ。産めよ増やせよ政策実施してるしね、重要だよね。この国生きづらいかも。あ、違う国に行くという手もあるか!閃いてるね、私!
「ねぇ、結婚しなくてもいい国ってあるかな?女の人多くて」
「え、他の国?うーん、ここいらはどこも女の人は少ないかな。多く生まれる国もあるけど、そういうとこは輸出品にされるし」
わーお、人身売買。
・・・あーなんで、なんでこんな所に飛ばされて。一人じゃ暮らせないなんて酷過ぎない?悔しい。辛い。キツイ。悲しい。俯いてたら鼻の奥がツンとして涙が出てきた。バカバカしい、泣いたってどうにもならない。涙を拭いて歯を食いしばって口の端を上げる。
「・・・ごめん。話の続きはまた明日でいいかな?」
「そうだね。また明日にしよう」
「あの、寝る前に体拭きたいからお湯貰っていい?」
「・・ああ。用意する」
アルが竈にかかったままの鍋をつかみ、お湯を桶に注ぐ。桶を奥の部屋に運ぼうとした所で声をかける。
「アル、部屋の中だとお湯をこぼしそうだから、外で拭きたいんだけどいいかな?」
「・・・わかった」
桶を外に出すアルを見てから自分の用意をする。手ぬぐいをカバンから出そうと開けたら、イベントの戦利品も目に入った。そういえば手作り石鹸とオイルも買ったんだっけ。バラ、ジャスミン、ゼラニウム。使うか。いや、石鹸はすすぎ用のお湯も必要。顔だけ石鹸でいくか。葉っぱ入りの水をもらおう。
アルにお礼を言って外にでる。
サッサと服を脱ぎ、頭を桶に突っ込み、悔しさでを込めてザブザブ洗う。手ぬぐいをお湯に浸しながら体を拭った。顔を石鹸で洗ってお湯でゆすぎ、葉っぱの水で再度ゆすぐ。
あ、歯ブラシないぜ。手ぬぐいを指に巻いて歯をこする。最後に手ぬぐいと下着を洗う。ああ、替えのパンツがない。服もないからこれを着るしかない。歯ブラシもない。クソ、クソだな!
オイルを顔と髪に塗ってから服を着た。あーもう嫌だ。疲れた。寝たい。
怒りと苛立ちがジリジリと胸の内を焦がす感情のままに、お湯をぶちまけた。
「お湯どうもありがとうございました。桶はどこにしまえばいいかな?」
家の中に戻ってにっこり笑いながらお礼を言う。忘れずに言うよ。知らない山の中で反感買うとか恐ろしすぎだろ。にっこり。
「・・・そのまま乾かすから、竈の近くに置いておいて」
「はい」
ベルにいい返事をして桶を竈の近くに置いた。苛立ちは隠せるかわかんないけど、表面上だけでも友好的に行かないと。
「どこで寝たらいいかな?外でも床でも、邪魔にならない場所を教えてくださいな」
「・・・俺達と一緒で良ければベッドで。嫌だったら、ベッドのそばの床に毛皮を敷く」
「ベッドを借りるのは申し訳ないので、床で寝ます」
「ああ、こっちだ」
アルがベッドの足元に毛皮を敷いて、掛布を渡してくれた。毛皮だってー、猟師かよっ!頭の中でツッコミつつ、アルにお礼を言ってから横になって、掛布の中で蹲った。この中では泣いていい。隠れたから大丈夫。
・・・なんで、なんでなんで、何なの。なんで、こんなことになってんの。押し殺した声の代わりに涙が流れる。噛み締め過ぎた奥歯が痛むころ、緞帳が降りてきて意識は暗闇に溶けた。
あ、イベントでお菓子買ったんだ。ご飯のお礼にお茶うけだ。飴がけアーモンドだよ!うーん、三粒ずつでいいかな。みみっちいのよ、私。もう買えそうにないし。アルとベルの手に三粒ずつ乗せる。
「お菓子どうぞ。苦くないよ。口に合わなかったら私食べるし」
「・・・」
あら、疑ってる。思い切って食べると・・・テッテレー、うまい!まさにそんな感じの顔をして、驚いてる。
「美味しい!美味しいものもあるんだね!」
失礼だな、おい。あまりに嬉しそうなので、私の分から一粒ずつ追加で渡した。感謝していいよ!
一息ついてベルが私を見る。
「じゃあ、話そうか」
わあ~尋問開始~。
「えーと、住んでたのは遠い国で、気付いたら森の中にいて、知り合いも誰一人いない。話をした限りだと、この国のことも何も知らない、ってことかな?」
「うん」
「うーん、言葉は通じるしなあ」
「・・・遠い国だから違う言葉を使うと決まってるわけじゃない」
「まあ、そうか。で、暮らしていくために働きたい、と」
「知り合いいないと難しいかな?住む場所もないし住み込みで働けるところが希望」
「住み込みかー。ますますあれだよね。住み込むならそこの店主と結婚することになると思う」
「えっ、なんで?結婚?」
「女性が一人で歩いてたら攫われるよ。それで、誰かの結婚相手になるか娼館で働くか。女性は貴重だから」
「うーん?・・・女性は貴重って、少ないってこと?」
「そう。もともと少ないんだけど、何年か前に流行り病で結構死んじゃってさ。女性は必ず夫を持つようにって御触れが出てる。最低五人」
「えぇ・・・うーん、じゃあ、結婚でいいかな。娼館は嫌だし」
「うん、それがいいよ。夫の条件はある?条件が合えば知り合い紹介できるよ」
ベルがニコニコしながらうなずいてるけど、なんだかなー営業かけられてるみたいだわ。怪しい奴に後見人付けておこうってトコかな。変な人じゃないと良いんだけど。五人いるなら好みが一人くらい、いて、欲しい!どうなの、この国。おしり拭き葉っぱだしな、文化摩擦すごいかも。
「条件かぁ。優しくて静かで穏やかで、話し合いができる。あと、食事の仕方がきれいな方がいいな。思いつくのはこれくらい。でも実際に会って話さないとわかんないかも」
「・・・ユウの家は裕福なの?・・砂糖菓子持ってるし、スプーン使うし、服もキレイで、食事の仕方が条件とか」
「全然、普通だけど。私の国はこれが普通。それに、食事の仕方って言うけど、アルとベルの食べ方はきれいでしょ」
「俺達はある程度、教育受けてるからね。うーん・・・ユウはいくつ?子供いる?」
「あ、私、26歳。ベルは?えーと、それで、結婚と妊娠は経験なし、処女でもなし。これでも大丈夫かな?」
「そ、そっか。俺達は23だよ。26で妊娠出産ないと、貴族とか大店は難しいかな。そういうとこは、若いか子供できるか、どっちか必要だから。後妻なら大丈夫かも。ユウの国はユウみたいな人が多いの?」
「うーん、そうだね。10代で結婚する人は少ないし、30代で初婚も結構いる。死ぬまで結婚しない人もそこそこいるよ。一夫一妻制だし。こっちはいくつで成人して結婚するの?」
「女の人も結婚しないの?多いの?だいぶ違う。こっちは、成人は15で、女の子の結婚もほぼ同時だよ。成人を待って結婚するから。大体、20過ぎたら子供二人くらいはいるかな」
妊娠は必須かぁ。産めよ増やせよ政策実施してるしね、重要だよね。この国生きづらいかも。あ、違う国に行くという手もあるか!閃いてるね、私!
「ねぇ、結婚しなくてもいい国ってあるかな?女の人多くて」
「え、他の国?うーん、ここいらはどこも女の人は少ないかな。多く生まれる国もあるけど、そういうとこは輸出品にされるし」
わーお、人身売買。
・・・あーなんで、なんでこんな所に飛ばされて。一人じゃ暮らせないなんて酷過ぎない?悔しい。辛い。キツイ。悲しい。俯いてたら鼻の奥がツンとして涙が出てきた。バカバカしい、泣いたってどうにもならない。涙を拭いて歯を食いしばって口の端を上げる。
「・・・ごめん。話の続きはまた明日でいいかな?」
「そうだね。また明日にしよう」
「あの、寝る前に体拭きたいからお湯貰っていい?」
「・・ああ。用意する」
アルが竈にかかったままの鍋をつかみ、お湯を桶に注ぐ。桶を奥の部屋に運ぼうとした所で声をかける。
「アル、部屋の中だとお湯をこぼしそうだから、外で拭きたいんだけどいいかな?」
「・・・わかった」
桶を外に出すアルを見てから自分の用意をする。手ぬぐいをカバンから出そうと開けたら、イベントの戦利品も目に入った。そういえば手作り石鹸とオイルも買ったんだっけ。バラ、ジャスミン、ゼラニウム。使うか。いや、石鹸はすすぎ用のお湯も必要。顔だけ石鹸でいくか。葉っぱ入りの水をもらおう。
アルにお礼を言って外にでる。
サッサと服を脱ぎ、頭を桶に突っ込み、悔しさでを込めてザブザブ洗う。手ぬぐいをお湯に浸しながら体を拭った。顔を石鹸で洗ってお湯でゆすぎ、葉っぱの水で再度ゆすぐ。
あ、歯ブラシないぜ。手ぬぐいを指に巻いて歯をこする。最後に手ぬぐいと下着を洗う。ああ、替えのパンツがない。服もないからこれを着るしかない。歯ブラシもない。クソ、クソだな!
オイルを顔と髪に塗ってから服を着た。あーもう嫌だ。疲れた。寝たい。
怒りと苛立ちがジリジリと胸の内を焦がす感情のままに、お湯をぶちまけた。
「お湯どうもありがとうございました。桶はどこにしまえばいいかな?」
家の中に戻ってにっこり笑いながらお礼を言う。忘れずに言うよ。知らない山の中で反感買うとか恐ろしすぎだろ。にっこり。
「・・・そのまま乾かすから、竈の近くに置いておいて」
「はい」
ベルにいい返事をして桶を竈の近くに置いた。苛立ちは隠せるかわかんないけど、表面上だけでも友好的に行かないと。
「どこで寝たらいいかな?外でも床でも、邪魔にならない場所を教えてくださいな」
「・・・俺達と一緒で良ければベッドで。嫌だったら、ベッドのそばの床に毛皮を敷く」
「ベッドを借りるのは申し訳ないので、床で寝ます」
「ああ、こっちだ」
アルがベッドの足元に毛皮を敷いて、掛布を渡してくれた。毛皮だってー、猟師かよっ!頭の中でツッコミつつ、アルにお礼を言ってから横になって、掛布の中で蹲った。この中では泣いていい。隠れたから大丈夫。
・・・なんで、なんでなんで、何なの。なんで、こんなことになってんの。押し殺した声の代わりに涙が流れる。噛み締め過ぎた奥歯が痛むころ、緞帳が降りてきて意識は暗闇に溶けた。
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